説明

燃焼設備からの煙道ガスを液化する方法及び設備

エネルギー消費が少なく安定した運転するように設計された、煙道ガスから液体COを生成する方法及びプラント。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、煙道ガスに含まれるCOの液化方法及び装置に関する。
【0002】
燃焼煙道ガスからCOを低温で生成するほとんどの方法は、2つ以上の分離ステージをもつ従来の分離方式を採用している。図1には、そのような設備をブロック図で示す。
【0003】
図1及び2は、CO及び煙道ガス流の様々な箇所の温度及び圧力をいわゆるフラグによって示すものである。各フラグにおける温度及び圧力を下表にまとめる。この温度及び圧力が一例であることは、当業者には明らかである。煙道ガスの組成、外界温度、及び液体COに要求される純度に応じて、温度及び圧力は変動し得る。
【0004】
第1圧縮機1において、煙道ガスが圧縮される。この圧縮は、煙道ガスから大部分の水蒸気、即ち、水を分離する各圧縮ステージ(図示せず)の間に冷却器及び水分離器を複数有する多段式圧縮プロセスによるものでもよい。
【0005】
図1で、参照番号3は煙道ガス流を示している。第1圧縮機1から放出される際、煙道ガスは外界温度よりも極めて高温であり、その後、第1冷却器5によって約13℃まで冷却される。圧力は約35.7バールである。
【0006】
煙道ガス流3に含まれたままの水分は、適切な乾燥プロセス、例えば、乾燥器7内での吸着乾燥によって除去され、次いで煙道ガス流3は第1分離ステージ9へと送られる。第1分離ステージ9は、第1熱交換器11と、第1分離ドラム13とを備える。第1熱交換器11は、煙道ガス流3を冷却する役割を担う。この冷却の結果、煙道ガス流3に含まれるCOは部分的に凝縮される。それにより、煙道ガス流3は、2相混合物として第1分離ドラム13に流入する。そこで、煙道ガス流の液相と気相は重力によって分離される。第1分離ドラム内の圧力は約34.7バールであり、温度は−19℃である(フラグ番号5参照)。
【0007】
第1分離ドラム13の底部で、液体COが抽出され、そして第1減圧弁15.1を介してその圧力が約18.4バールとなるまで膨張する(参照番号3.1参照)。その結果、COの温度は−22℃〜−29℃となる(フラグ番号10参照)。煙道ガスのCO分流3.1は、煙道ガス流3により、第1熱交換器11内で加熱され、蒸発する。第1熱交換器11の出口での分流3.1の温度は約25℃であり、圧力は約18バールである(フラグ番号11参照)。
【0008】
第1分離ドラム13の頭部において抽出された第2分流3.2に着目すると、第1分離ドラム13から抽出された気体状態の分流3.2は第2熱交換器17内で冷却され、部分的に凝縮されることが明白である。その後、2相の混合物としても存在する分流3.2は第2分離ドラム19へ送られる。第2熱交換器17及び第2分離ドラム19が、第2分離ステージ21の主要部である。
【0009】
第2分離ドラム19内で、重力による分流3.2の液相と気相との分離が再び行われる。第2分離ドラム19内での圧力は約34.3バールであり、温度は約−50℃である(フラグ番号6参照)。
【0010】
第2分離ドラム19内の気相、いわゆるオフガス23が、第2分離ドラム19の頭部で抽出され、第2減圧弁15.2内で約17バールに膨張し、約−54℃に冷却される。
【0011】
図面では、オフガスを参照番号23で示す。オフガス23は第2熱交換器17内を流通することによって反流の煙道ガス3.2を冷却する。
【0012】
第2分離ドラム19の底部で、液体COが抽出され、第3減圧弁15.3内で約17バールに膨張し、温度も−54℃に達する(フラグ番号7a参照)。分流3.3も第2熱交換器17へ送られる。そこで、液体COの一部が蒸発し、第2熱交換器17から分流3.3.1が抽出され、第4減圧弁15.4内で約5〜10バールに膨張し、ここでもその温度は−54℃に達し(フラグ番号7b参照)、そして第2熱交換器17に再び送られる。
【0013】
第2熱交換器17内を流通した後、分流3.3.1は再び分流3.3と合流し、第1熱交換器11へ送られる。第1熱交換器11の入口におけるこの分流の圧力は約5〜10バールであり、温度は−22〜−29℃である(フラグ番号14参照)。
【0014】
分流3.3は、第1熱交換器11内で熱を吸収する。これにより、同出口での温度は約−7℃となり、圧力は約5〜10バールである。この第3分流3.3は第1圧縮ステージの第2圧縮機25へ送られる。他方、圧力が約18バールの分流3.1は、図1に示す3段式圧縮機25の第2圧縮ステージへ送られる。
【0015】
第2圧縮機25の複数ステージ間の中間冷却器及び圧縮されるCO用の後段冷却器は図1に示されていない。
【0016】
第2圧縮機25の出口で、圧縮されたCOの圧力は60バール〜110バールであり、温度は80℃〜130℃である。不図示の後段冷却器内のCOは外界温度まで冷却される。
【0017】
必要に応じて、このCOは、直接配管に供給してもよいし、液化した後第1COポンプ27から、例えば、(不図示の)配管へ送ってもよい。第1COポンプ27は、液体COの圧力を該配管の圧力まで増大するものである。
【0018】
オフガス23の説明に戻ると、このオフガスは第2熱交換器17及び第1熱交換器11内を流通することによって煙道ガス流3の熱を吸収することが分かる。第1熱交換器11の出口でのオフガスの温度は約26℃〜30℃であり、圧力は約26バールである(フラグ番号16参照)。
【0019】
エネルギー回収を最大化するため、オフガス23をオフガス過熱器29で過熱し、その後膨張タービン31又は任意の他の膨張機へ送ることが知られている。ここでは、力学的エネルギーが再利用され、その後、オフガスは外界の圧力にほぼ相当する低圧状態で外界に放出される。
【0020】
図1を使って説明してきたCO液化設備は、比較的簡略で、問題なく稼働する。例えば化石燃料を供給される発電プラントの煙道ガスから液体COを生成する場合のこれらの方法及び設備の欠点は、その高エネルギー需要であり、該発電プラントの正味効率に悪影響を及ぼしてしまうことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、エネルギー需要が少なく、それにより発電プラントを正味効率良く稼働させる、煙道ガスに含まれるCOの液化方法及び設備を提供する。
【0022】
同時に、本方法は簡略化されており、その稼働方法は、障害なく着実な稼働を確保するように好適に調整可能である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の実施形態によれば、これらの利点は、第2熱交換器17から流出した液体COの分流3.2を、圧力が約16.5バールで温度が−47℃の第3分離ドラムへ送ることによって達成される。ここで液相と気相との分離が再び行われ、かなりの部分の液相の圧力が第2COポンプによって増大する(フラグ番号7e参照)。この液相を、膨張後、第2熱交換器を冷却するために使用し得る。但し、この分流の膨張はたった20バールまでのものにしなければならない。こうして、第1分離ドラムからの液相とともに第1熱交換器へ送り、その後第2圧縮機の第2圧縮ステージへ送ることができるようになる。
【0024】
本方法の1つの利点は、後段の分離ステージに存在する液体CO中の少量の液体COのみ、5〜10バールの圧力に膨張させる必要があることである。反対に、かなり大量の液体COを約18バールの圧力に膨張させることも可能であり、この増加分を第2圧縮機の第2圧縮ステージへ注入できる。これにより、上流の発電プラントの正味効率を改善するという直接な効果を有する第2圧縮機25に要求される電力が著しく削減される。プラントに係る請求項8〜10においても同様である。従属請求項の利点も、図2に結び付けて以下説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術に係る煙道ガス由来COの液化設備を示す。
【図2】本発明に係るCO液化設備の実施形態を示す。図2において、同一の構成要素は同一の参照番号を付している。図1に関する記載も同様である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、図面を参照するが、各図では同様の構成要素には同様の番号を付してある。
【0027】
図2を参照すると、第1圧縮機1、第1冷却器5、乾燥器7、第1熱交換器11、及び第1分離ドラム13においての煙道ガス流3の処理は、図1を使って説明した処理と全く同様に行われる。また、気相3.2も、図1で説明したように、第1分離ドラム13の頭部で抽出され、第2熱交換器17を通り、そして第2分離ドラム19へ送られる。第2分離ドラム19内で、分流3.2の2つの相(液相及び気相)は、オフガス流23及び液体COに分割される。第2分離ドラム19の底部で抽出された分流には、図1のように参照番号3.3を付している。
【0028】
図1を使って既に説明したように、分流3.3は、第3減圧弁15.3内で膨張され、圧力が15.5バールになり、これにより−54℃に冷却される。分流3.3は、第2熱交換器17内を流通することによって煙道ガスの分流3.2の熱を吸収し、温度が約−47℃となり(フラグ番号8参照)、そして第3分離ドラム33へ送られる。
【0029】
そこで、部分的に液体で部分的に気体であるCOの圧力は約16.5バールであり、温度は−47℃である(フラグ番号9参照)。
【0030】
第3分離ドラム33の頭部で、気相が抽出され、第4減圧弁15.4内で膨張する。図2で、参照番号3.4は、第3分離ドラム33の頭部で抽出された気体分流を示す。第3分離ドラム33の脚部では、少量の液体分流3.5が抽出され、第5減圧弁15.5内で膨張する。次いで、分流3.4及び3.5は再び合流する。そして、これらの圧力は約5〜10バールとなり、温度は−54℃になる(フラグ番号7d参照)。
【0031】
第3分離ドラム33内に存在した液体COの第6分流3.6としての圧力レベルは、第2COポンプ35によって、約20バールから23バールまでの範囲に増大する(フラグ番号7e参照)。
【0032】
第6減圧弁15.6内で、これまで液体であったCOは膨張し、圧力が約20バールとなり、温度は−45℃になる。第2熱交換器17内の煙道ガス流3.2は、この部分的に液体で部分的に気体のCOによって冷却される。分流3.6の流入温度がオフガス23及び分流3.3の流入温度よりも高いことから、分流3.2は始めに分流3.6によって冷却される。従って、この比較的高い−45℃という温度であっても、分流3.2から熱を吸収することが出来る。図2においても、この事実が写実的に明確に分かる。
【0033】
分流3.6は、第2熱交換器17から約−22℃〜−29℃の温度で流出し、第1分離ドラム13から既に抽出した分流3.1と合流する。第1分離ドラム13内の圧力が約34.5バールであることから、第1分離ドラム13からの液体分流3.1は第7減圧弁15.7内で約20バールに膨張する。これら2つの分流3.1及び3.6は合流し、約−22℃〜−29℃の温度で第1熱交換器11に流入し(フラグ番号10参照)、そして煙道ガス流3から熱を吸収する。温度が約25℃で圧力が約18バールの状態でこれらの分流は第1熱交換器から流出する(フラグ番号11参照)。従って、第2圧縮機25の第2圧縮ステージへ送ることができる。
【0034】
分流3.1及び3.6が第2圧縮機25の第2圧縮ステージへ送ることができることから、第2圧縮機25の第1圧縮ステージへ送る必要のある分流3.3も同様に減圧される。その結果、第2圧縮機25に要求される電力は小さくなる。このことは、本発明に係る設備のエネルギー需要に対してプラスの効果がある。
【0035】
CO液化プラントのエネルギー需要を削減する第2の可能性として、第1熱交換器11から流出した後のオフガス23をオフガス過熱器19内で過熱することだけでなく、膨張タービン31内で膨張した後のオフガス23を第2熱交換器17へ再び送ることも挙げることができる。過熱後のオフガスの温度は約80℃〜約100℃であり、圧力は約26バールである(フラグ番号17参照)。膨張機31内での膨張によって、圧力は2.3バールに減少し、オフガスの温度は−54℃に達する。従って、オフガスを、もう一度煙道ガス流3、即ち、分流3.2の冷却に貢献させることができる。その後、低圧かつほぼ外界と同じ温度のオフガスを外界に放出できる。オフガス23の膨張及び過熱を複数の段階で行うことも可能である(図2に示さず)。
【0036】
これによっても、本発明に係る設備のエネルギー需要がかなり削減される。他方で、多量のオフガス23が煙道ガス流3、即ち、分流3.2の冷却に貢献し、そして膨張機31は、例えば第1圧縮機1又は第2圧縮機25を駆動するために使用し得る力学的仕事を生み出すことになる。総じて、大きな利点にも関わらず、本発明に係る方法及び本発明に係る方法を使用するために必要とされるCO液化設備は、なお比較的簡略な設計であると言うことができる。
【0037】
更なる利点は、分流3.6が、第1分離ドラム13から液相として抽出された分流3.1と合流することが可能な状態の圧力に膨張することである。これにより、この2つの分流を、共通の圧力・温度状態で、第2圧縮機の第2圧縮ステージへ送ることができる。
【0038】
更に、本仕組みにより、煙道ガスの凝縮に対する調整が改善されるのは明らかである。COポンプ35における流速を調節することにより、伝熱のための駆動力、即ち対数平均温度差(LMTD)、が変化する。このように、第2分離ステージ21の性能を調節できる。このことは、COの昇華点及び氷点に近い凝縮温度において稼働する際に特に重要である。
【0039】
上述の効果を最大化させるため、膨張した後であって大気へ放出される前に少なくとも1回は排気ガス(vent gas)をコールドボックスへ再循環させることによって、分離したオフガスからの熱回収を増やすことができる。
【0040】
【表1】

【0041】
複数の好適な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更を加えたり、本発明の要素を均等物に置き換えたりし得ることが当業者には理解されるであろう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況や材料を本発明の教示に適合させるように多くの変形を行うことができる。したがって、本発明は、この発明を実施するために考えられた最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、添付の請求項の範囲内の全ての実施形態を含むことが意図されている。また、第1、第2などの用語の使用においては、順序や重要性を示すものではない。むしろ、第1、第2などの用語は、1つの要素を他の要素から区別するために使用している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼煙道ガスから液体COを生成する方法であって、
前記煙道ガスを少なくとも2つの分離ステージ(9,21)で部分的に凝縮し、前記少なくとも2つの分離ステージ(9,21)を、膨張したオフガス(23)及び膨張した液体CO(3.1,3.3)によって冷却し、
前記膨張したCOを、後段の前記分離ステージ(21)を通過させた後、追加分離ドラム(33)で液体CO及び気体COに分離し、
前記追加分離ドラム(33)の前記気体CO及び前記液体COの一部を第1圧力レベル(フラグ7d)に膨張させ、前記液体COの残部(3.6)の圧力を第2圧力レベル(フラグ7e)に増大して該残部(3.6)を膨張させ(フラグ7e)、前記後段の分離ステージ(21)内のCOを冷却する、方法。
【請求項2】
前記液体COの残部(3.6)を、約15バールから25バール、好ましくは20バールまでの圧力(フラグ13)に膨張させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前段の前記分離ステージ(9)からの液体CO(3.1)を、前記液体COの残部(3.6)の前記圧力まで膨張させ、
CO流の両方(3.1,3.6)は、前記前段の分離ステージ(9)内の冷却目的に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CO流の両方(3.1,3.6)を、第2圧縮機(25)の第2又は第3ステージに供給する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記煙道ガスを、前記第1分離ステージ(9)に流入させる前に、第1圧縮機(1)内で圧縮し、第1冷却器(5)内で冷却、及び/又は乾燥器(7)内で乾燥する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記後段の分離ステージ(21)からのオフガス(23)を、前記後段の分離ステージ(21)の熱交換器(17)に流入させる前に、約17バールに膨張させるとともに、その温度が約−54℃になる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記オフガス(23)を、前記全ての分離ステージ(21,9)を通過させた後、過熱器(29)内で過熱し、膨張機(31)内で膨張させ、次いで前記後段の分離ステージ(21)の熱交換器(17)に再び供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
燃焼煙道ガスから液体COを生成するプラントであって、
前記煙道ガス(3)を、少なくとも2つの分離ステージ(9,21)、複数の減圧弁(15)、第2COポンプ(35)、追加分離ドラム(33)、及び第2多段式圧縮機(25)で部分的に凝縮する、プラント。
【請求項9】
各分離ステージ(9,21)は、熱交換器(11,17)と、気体COから液体COを分離する分離ドラム(13,19)とを備える、請求項8に記載のプラント。
【請求項10】
少なくとも1つの膨張機(31)及び/又は1つのオフガス過熱器(29)を更に備える、請求項8に記載のプラント。
【請求項11】
第1圧縮機(1)と、第1冷却器(5)と、乾燥器(7)とを更に備える、請求項8に記載のプラント。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−521462(P2013−521462A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555505(P2012−555505)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000263
【国際公開番号】WO2011/107840
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】