説明

燐光体混合物及び同混合物を含む蛍光ランプ

赤色発光レアアース燐光体、緑色発光レアアース燐光体及び青色発光レアアース燐光体からなる燐光体混合物であって、前記燐光体の50%サイズが約12〜約15μmである燐光体混合物。前記燐光体混合物は、効率が向上した蛍光ランプに組み込まれる。効率を更に上げるために二重層コーティングを使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロス・リファレンス
本出願は、米国仮特許出願61/174,808号(出願日2009年5月1日)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なイルミネーション蛍光ランプへの応用目的で、レアアース燐光体を使用することは周知である。レアアース燐光体は、典型的にはアクチベーター・イオンとして、少なくとも1種のレアアース元素を含む(例えば、Eu2+、Tb3+、Ce3+)。前記ランプの製造業者は皆、レアアース燐光体を使用して、異なるレベルの光出力(ルーメン)、色温度(CCT)及びCRIを有するランプを生産する。蛍光ランプ用に工業利用される典型的なレアアース燐光体としては、赤色発光Y23:Eu(YOE)、緑色発光La(PO4):Ce,Tb(LAP)、及び青色発光BaMgAl1017:Eu(BAM)が含まれる。また、当業者に知られた他の燐光体としては、緑色発光燐光体については、(Ce,Tb)MgAl1119(CAT)及び(Gd,Ce,Tb)MgB510(CBT)等が挙げられ、青色発光燐光体については、Sr5(PO43:Cl,Eu(SCAp)等が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発光の際にレアアース燐光体を使用することは周知ではあるが、工業上での傾向としては、所与のレベルのルーメン出力を必要とする粉末重量を減らすことを目的として、使用する燐光体のサイズがより小さくなってきている。しかし、エネルギー消費を減らし、それによって温室効果ガス排出を減らす目的で、光源の効率がより高いものを生産するという要求も高まってきている。
【0004】
より効率の高い光源は、より高いLPW(電力入力のワット数に対するルーメン)を有する。より高いLPWを有する蛍光ランプを使用すれば、所与のレベルの光出力のわりには、電気エネルギー(KWh)の消費を減らせるであろう。あらゆるカテゴリーにおいて、消費者による電気エネルギーの消費がより少なくなれば、電力利用における化石燃料の使用量も減少する結果となるであろう。これにより、化石燃料の燃焼によって発生するCO2温室効果ガスの量が次第に減っていくだろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要
本発明は前記工業上の傾向に逆行するものである。そして、本発明は、より高効率の光源、特により高効率の蛍光ランプを得ることを目的として、非常に大きな粒子サイズのレアアース燐光体(本明細書中ではジャンボ燐光体と呼ぶ)を利用する。更に言うと、単層であるジャンボ燐光体で得られた効率の上昇と比べると、二重層であるジャンボ燐光体を使用したときのランプ効率の上昇がより大きいという予想外の事を発見した。
【0006】
本発明の一態様に従って、本発明は、赤色発光レアアース燐光体、緑色発光レアアース燐光体及び青色発光レアアース燐光体からなる燐光体混合物であって、前記燐光体の50%サイズが約12〜約15μmである燐光体混合物を提供する。
【0007】
本発明の別の一態様に従って、本発明は、電極と内表面上に燐光体コーティングを有するガラス・エンベロープとを含む蛍光ランプ(ここで、該エンベロープは密封シールされており、且つある量の水銀及び不活性ガスを含み、燐光体コーティングは、赤色発光レアアース燐光体、緑色発光レアアース燐光体及び青色発光レアアース燐光体からなる燐光体混合物を含み、前記燐光体の50%サイズが約12〜約15μmである)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1A及び図1Bは、それぞれ赤色発光YOEジャンボ燐光体及び標準サイズ燐光体のSEM顕微鏡写真である。
【図2】図2A及び図2Bは、それぞれ緑色発光LAPジャンボ燐光体及び標準サイズ燐光体のSEM顕微鏡写真である。
【図3】図3A及び図3Bは、それぞれ青色発光BAMジャンボ燐光体及び標準サイズ燐光体のSEM顕微鏡写真である。
【図4】図4は、種々の燐光体混合物に関する、100hルーメン出力 vs.粉末重量のグラフである。
【図5】図5は、種々の燐光体混合物に関する、光学密度 vs.粉末重量のグラフである。
【図6】図6は、ジャンボ燐光体混合物 vs.標準混合物に関する、100hルーメン出力 vs.粉末重量のグラフである。
【図7】図7は、ジャンボ燐光体混合物を有する蛍光ランプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の詳細な説明
本発明をより深く理解できるようにする目的で、他の更なる本発明の目的、利点、及び能力を伴いながら、上述の図面と共に以降の記述及び添付した特許請求の範囲について述べる。
【0010】
ジャンボ燐光体:物理的特性
赤色、緑色、及び青色ジャンボ燐光体であるJYOE、JLAP、JBAMは、蛍光ランプで使用される工業上の赤色(YOE)燐光体、緑色(LAP)燐光体及び青色(BAM)燐光体と同一の化学物質を有する。そして、Global Tungsten & Powders Corp(Towanda,ペンシルバニアPA)から入手可能なタイプ2343(YOE)、2212(LAP)及び2464(BAM)が含まれる。比較を行う目的で、これらの燐光体のジャンボ・アナログのアクチベーター・レベル及びピーク発光波長は、工業コントロールと同一となっている。主要な相違点は、粒子サイズとなっている。
【0011】
本明細書で使用するが、全ての粒子サイズ測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置(Malvern)システム上で行った。50%サイズとは、直径を基礎にしたメジアン量であり、即ち、粒子量のうち50%がそのサイズよりも大きく、また、50%がそのサイズよりも小さい。
【0012】
具体的には、音波処理していない(non−sonified)(超音波分散していない)ジャンボ赤色、緑色、及び青色燐光体の50%サイズは約12〜約15μmである。比較すると、標準の赤色タイプ2343燐光体、及び標準の緑色タイプ2212燐光体は、音波処理していない50%サイズが9〜10μmである。標準の青色タイプ2464燐光体は、音波処理していない50%サイズが約7〜約8μmである。こうした標準サイズの燐光体を本明細書ではコントロールとして使用する。
【0013】
標準の工業上の燐光体と比較したジャンボ・レアアース燐光体のSEM写真を図1〜3に示す。
【0014】
T8 Octron(登録商標)蛍光ランプにおけるジャンボ燐光体の性能
同一の酸化アルミニウムC(AOC)プレコートを用いたT8ランプ構成で、粉末重量シリーズ・テスティング(Powder weight series testing)をそれぞれの場合に行った。唯一変更したのは、使用する燐体混合物のみである。3つの混合物について試験を行った:1つは、ジャンボ燐光体を使用し;1つは、OSRAM SYLVANIA Octron(登録商標)・XPSランプ用である標準サイズのレアアース燐光体2343(YOE)、2212(LAP)及び2464(BAM)を使用し;並びに、1つは、OSRAM SYLVANIA Octron(登録商標)・XPランプ用である標準サイズのレアアース燐光体2342(YOE)、2213(LAP)及び2464(BAM)を使用した(該燐光体は、Octron(登録商標)・XPSランプ用に使用される燐光体と比べると、赤色及び緑色発光燐光体に関して粒子サイズがより小さい)。100h色補正ルーメン(100h color corrected lumens)を燐光体混合物粉末重量の関数として図4に示す。
【0015】
図4に提示された情報から幾つかの知見が得られる。達成可能な最大ルーメンは、ジャンボ燐体混合物が最も高い。他の2つの燐光体混合物に関して言うと、達成可能な最大ルーメン出力は、ジャンボ燐光体で可能なルーメン出力と比べると低い。最大ルーメン出力は、最大LPW(lumen per watt)や最大ランプ効率も意味するものではあるが、ジャンボ燐光体混合物の粉末重量が約6gのところで実現される。他の混合物に関して言うと、6gの粉末重量でのルーメン出力は、該混合物の局所的な関連ルーメン最大値に対応する粉末重量での出力と比べると明らかに低い。換言すれば、よりサイズを小さくした燐光体混合物の粉末重量を単に6gまで上昇させるだけでは、最大ルーメンや、ジャンボ燐光体で可能なLPWに到達させることはできないだろう。2343、2212及び2464燐光体の標準燐光体混合物と比べると、ジャンボ燐光体では、ルーメンやLPWにおいて約1.5%のゲインを実現している。
【0016】
図5は、ランプ上で測定されたコーティング層の光学密度を粉末重量の関数として示している。光学密度は、任意の所与粉末重量における可視光の散乱度合いの測定値である。もし、ある混合物が、同じ粉末重量において別の混合物よりも光学密度が高い場合、前者は後者よりも可視光をより散乱させることを示す。そして、このことは光学密度がより高い混合物は粒子サイズがより小さいことを示唆する。図5に提示されたデータから明らかなのは、ジャンボ燐光体混合物は、他の2つの混合物と比較すると最も大きい粒子サイズを有している。このことは、蛍光ランプの実際の環境におけるこれらジャンボ燐光体での効果がより大きいサイズの別途証拠となる。
【0017】
同一のAOCプレコートを用いたT8オクトロン・ランプ構成で、第二の粉末重量シリーズ・テスティングをそれぞれの場合に行った。唯一変更したのは、使用する燐体混合物のみである。2つの混合物について試験を行った:1つは、ジャンボ燐光体を使用し;1つは、Octron(登録商標)・XPSランプ用である標準サイズのレアアース燐光体2343、2212及び2464を使用した。100h色補正ルーメンを燐光体混合物粉末重量の関数として図6に示す。該第二試験で使用される特定の燐光体のロットは図4でのロットとは異なる。
【0018】
図6に提示された情報から幾つかの知見が得られる。達成可能な最大ルーメンは、ジャンボ燐体混合物が最も高い。標準燐光体混合物に関して言うと、達成可能な最大ルーメンは、ジャンボ燐光体で可能なルーメン出力と比べると低い。最大LPW(lumen per watt)や最大ランプ効率は、ジャンボ燐光体混合物の粉末重量が約6gのところで実現される(6gを超える粉末重量を使用すれば、ジャンボ燐光体混合物ではルーメン出力及びLPWが更に増加することが明らかになるが、約6gよりも重い粉末重量を適用するのは実際問題としてより困難になる)。よりサイズを小さくした燐光体混合物の粉末重量を単に6gまで上昇させるだけでは、最大ルーメンや、ジャンボ燐光体で可能なLPWに到達させることはできないだろう。2343、2212及び2464タイプ燐光体の標準サイズXPSランプ燐光体混合物と比べると、ジャンボ燐光体では、ルーメンやLPWにおいて約2.5%のゲインを実現している。
【0019】
二重層ジャンボ燐光体 vs. 単層ジャンボ燐光体
単層の代わりに二層でジャンボ燐光体を適用する効果を評価するために試験を行った。3グループのランプを作成した。コントロール・グループは、OSRAM SYLVANIA Octron(登録商標)XPSランプ用の標準燐光体を単層として使用した。第一試験グループは、単層としてジャンボ燐光体を使用した。一方で、他の試験グループでは同じジャンボ燐光体を使用しているが二層として適用した(ここで、1つの層が他方の層の上に位置し、各層において概ね等しい重量を有する)。第一層を中間焼(intermediate baking)することなく二重層コーティングを適用する方法は当業者に知られており、幾つかの方法のうちの1つによって行うことができる。該方法としては、第二層を付着させる前に第一層を焼くことや、懸濁液中で適切な架橋化学物質を用いることにより第一層を非可用性にすること等が含まれる。該試験の結果については以下表1に示す。
【表1】

【0020】
予想に反して、ジャンボ燐光体を単層から二重層へ変更するアプローチにおいて、ルーメン出力の低下は見られなかった。実際のところは、二重層アプローチを使用することによりルーメン出力の増加が見られた。単層方法と比べると二重層方法では、LPWにおいて少なくとも1%の増加が得られた。ここで、表1中の2つのジャンボ・グループのコーティング重量において0.5gの差があり、二重層の全燐光体重量が単一のジャンボ層の重量と比べると大きくなっている点に留意されたい。しかし、図4および図6に提示されたデータからすると、ジャンボ燐光体粉末重量のこうした違いでは、二重層ジャンボ・システムで見られるLPWの上昇についての説明がつかない。
【0021】
図7は、本発明のジャンボ燐光体混合物を含む燐光体コーティングを有する蛍光ランプの断面図である。ランプは密封シール・ガラス・エンベロープ(17)を有している。エンベロープ(17)の内部には、不活性ガス(例えば、アルゴン、又はアルゴン及びクリプトンの混合物)が低圧(例えば1〜3torr)で充填されており、そして、低蒸気圧水銀を稼動中に提供するのに少なくとも充分な量である少量の水銀が充填されている。電極(12)間で放電が発生し、水銀蒸気を励起し、紫外線照射を発生させる。燐光体コーティング(15)がエンベロープ(17)の内側表面に付着しており、低圧水銀放電によって放出された紫外線照射の少なくとも一部を所望の波長範囲に変換する。燐光体コーティング(15)はジャンボ燐光体混合物を含んでおり、放電によって放出された紫外線照射の刺激を受けて、白色光(赤色、青色、及び緑色の発光の組合せ)を放出する。燐光体コーティングは、単層でも二重層コーティングとしても適用することができる。
【0022】
上述したジャンボ燐光体混合物は蛍光ランプ用に特に有用であるが、UV発光LED等の他のUV発生光源と共に使用することもできる。例えば、燐光体混合物は、UV発光LED上にコーティングすることができ、ここで該LEDから放出される波長は180〜260nmの範囲である。また、こうしたUVLEDの幾つかは、必要な熱管理ハードウェアと共に、長方形/正方形レイアウト内に配置することもできる。LEDからのUV照射を可視光照射に変換するジャンボ燐光体混合物の層については、各UVLED上にコーティングしたり、UVLEDとは離れて位置する平面シート上にコーティングしたりできる。
【0023】
現時点で好ましいと考えられる本発明の実施形態を図示及び記述してきたが、添付した特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から離れることなく様々な変更及び改変をここで行うことができる点については、当業者にとって明らかであろう。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色発光レアアース燐光体、緑色発光レアアース燐光体及び青色発光レアアース燐光体からなる燐光体混合物であって、前記各燐光体の50%サイズが約12〜約15μmである燐光体混合物。
【請求項2】
請求項1に記載の燐光体混合物であって、前記赤色発光燐光体がYOE燐光体であり、前記緑色発光燐光体がLAP、CAT、又はCBT燐光体のうち少なくとも1つであり、及び前記青色発光燐光体がBAM又はSCAp燐光体のうち少なくとも1つである燐光体混合物。
【請求項3】
請求項1に記載の燐光体混合物であって、前記赤色発光燐光体がYOE燐光体であり、前記緑色発光燐光体がLAP燐光体であり、及び前記青色発光燐光体がBAM燐光体である燐光体混合物。
【請求項4】
電極と内表面上に燐光体コーティングを有するガラス・エンベロープとを含む蛍光ランプであって、ここで、該エンベロープは密封シールされており、且つある量の水銀及び不活性ガスを含み、前記燐光体コーティングは、赤色発光レアアース燐光体、緑色発光レアアース燐光体及び青色発光レアアース燐光体からなる燐光体混合物を含み、前記各燐光体の50%サイズが約12〜約15μmである蛍光ランプ。
【請求項5】
前記燐光体混合物の粉末重量が5g〜7gである請求項4に記載のランプ。
【請求項6】
前記燐光体コーティングが単層である請求項5に記載のランプ。
【請求項7】
前記燐光体コーティングが二重層である請求項5に記載のランプ。
【請求項8】
前記二重層のうちの第一層の重量が前記燐光体コーティングの40〜60重量%である請求項7に記載のランプ。
【請求項9】
請求項4に記載のランプであって、前記赤色発光燐光体がYOE燐光体であり、前記緑色発光燐光体がLAP、CAT、又はCBT燐光体のうち少なくとも1つであり、及び前記青色発光燐光体がBAM又はSCAp燐光体のうち少なくとも1つであるランプ。
【請求項10】
請求項4に記載のランプであって、前記赤色発光燐光体がYOE燐光体であり、前記緑色発光燐光体がLAP燐光体であり、及び前記青色発光燐光体がBAM燐光体であるランプ。
【請求項11】
前記燐光体混合物の粉末重量が5g〜7gである請求項10に記載のランプ。
【請求項12】
前記燐光体コーティングが単層である請求項11に記載のランプ。
【請求項13】
前記燐光体コーティングが二重層である請求項11に記載のランプ。
【請求項14】
前記二重層のうちの第一層の重量が前記燐光体コーティングの40〜60重量%である請求項13に記載のランプ。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−525478(P2012−525478A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508582(P2012−508582)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/032521
【国際公開番号】WO2010/126869
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(311006504)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】