説明

燐光性化合物および前記燐光性化合物を用いた電界発光素子

(課題)合成の容易な配位子を用いてオルトメタル錯体を合成することにより、新たな燐光性化合物を提供する。また、前記燐光性化合物を用いて発光効率の高い電界発光素子を提供する。さらには、前記電界発光素子を用いて消費電力の低い発光装置を提供する。
(解決方法)本発明において、一般式[化1]に代表される燐光性化合物を合成する。また、上記燐光性化合物を用いたことを特徴とする電界発光素子を形成する。


なお、より効率よく燐光発光させるためには、重原子効果の観点から、中心金属としては重い金属の方が好ましい。したがって本発明では、上記一般式[化1]において、中心金属Mがイリジウムまたは白金であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、三重項励起状態を発光に変換できる化合物(以下、「燐光性化合物」と記す)に関する。また本発明は、陽極と、陰極と、電界を加えることで発光が得られる有機化合物を含む層(以下、「電界発光層」と記す)と、を有し、なおかつ前記電界発光層が燐光性化合物を含む電界発光素子、および前記電界発光素子を用いた発光装置に関する。
【技術背景】
有機化合物(有機分子)は光を吸収するとエネルギーを持った状態(励起状態)となる。この励起状態を経由することにより、種々の反応(光化学反応)を起こす場合や発光(ルミネッセンス)を生じる場合があり、様々な応用がなされている。
光化学反応の一例として、一重項酸素の不飽和有機分子との反応(酸素付加)がある(例えば、非特許文献1参照。)。酸素分子は基底状態が三重項状態であるため、一重項状態の酸素(一重項酸素)は直接の光励起では生成しない。しかしながら、他の三重項励起分子の存在下においては一重項酸素が生成し、酸素付加反応に至ることができる。この時、前述の三重項励起分子を形成できる化合物は、光増感剤と呼ばれる。
【非特許文献1】 井上晴夫、高木克彦、佐々木政子、朴鐘震、「基礎化学コース 光化学I」(丸善株式会社)、p.106−110)
このように、一重項酸素を生成するためには、三重項励起分子を光励起で形成できる光増感剤が必要である。しかしながら、通常の有機化合物は基底状態が一重項状態であるため、三重項励起状態への光励起は禁制遷移となり、三重項励起分子は生じにくい(通常は一重項励起分子が生じる)。したがって、このような光増感剤としては、一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差を起こしやすい化合物が求められている。言い換えれば、項間交差を起こしやすい化合物は、このような光増感剤としての利用が可能であり、有益と言える。
また、このように項間交差を起こしやすい化合物は、しばしば燐光を放出することがある。燐光とは多重度の異なるエネルギー間の遷移によって生じる発光のことであり、通常の有機化合物では三重項励起状態から一重項基底状態へ戻る際に生じる発光のことをさす(これに対し、一重項励起状態から一重項基底状態へ戻る際の発光は、蛍光と呼ばれる)。燐光を放出できる化合物(燐光性化合物)の応用分野としては、発光化合物として有機化合物を用いた電界発光素子(電界を加えることにより発光する素子)が挙げられる。
有機化合物を発光体として用いる場合、電界発光素子の発光機構はキャリア注入型である。すなわち、電極間に電界発光層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が電界発光層中で再結合して、励起状態の分子(以下、「分子励起子」と記す)を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光する。
このような電界発光素子において、通常、電界発光層は1μmを下回るほどの薄膜で形成される。また、このような電界発光素子は、電界発光層そのものが光を放出する自発光型の素子であるため、従来の液晶ディスプレイに用いられているようなバックライトも必要ない。したがって、極めて薄型軽量に作製できることが大きな利点である。
また、例えば100〜200nm程度の電界発光層において、キャリアを注入してから再結合に至るまでの時間は、電界発光層のキャリア移動度を考えると数十ナノ秒程度であり、キャリアの再結合から発光までの過程を含めてもマイクロ秒以内のオーダーで発光に至る。したがって、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。
さらに、このような電界発光素子はキャリア注入型の発光素子であるため、直流電圧での駆動が可能であり、ノイズが生じにくい。駆動電圧に関しては、まず電界発光層の厚みを100nm程度の均一な超薄膜とし、また、電界発光層に対するキャリア注入障壁を小さくするような電極材料を選択し、さらにはヘテロ構造(二層構造)を導入することによって、5.5Vで100cd/mの十分な輝度が達成された(例えば、非特許文献2参照。)。
【非特許文献2】 C.W.Tang and S.A.VanSlyke,“Organic electroluminescentdiodes”,Applied Physics Letters,vol.51,No.12,913−915(1987))
こういった薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性から、電界発光素子は次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、自発光型であり視野角が広いことから、視認性も比較的良好であり、携帯機器の表示画面に用いる素子として有効と考えられている。
ところで、このような電界発光素子において見られる発光は、分子励起子が基底状態に戻る際の発光現象である。この時、有機化合物が形成する分子励起子の種類としては、先に述べた光励起の場合と同様、一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)が可能である。また、電界発光素子におけるその統計的な生成比率は、S:T=1:3であると考えられている(例えば、非文献3参照。)。
【非特許文献3】 筒井哲夫、「応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会・第3回講習会テキスト」、P.31(1993)
しかしながら、一般的な有機化合物は室温において、三重項励起状態からの発光(燐光)は観測されず、通常は一重項励起状態からの発光(蛍光)のみが観測される。有機化合物の基底状態は通常、一重項基底状態(S)であるため、T→S遷移(燐光過程)は強度の禁制遷移となり、S→S遷移(蛍光過程)は許容遷移となるからである。すなわち、一重項励起状態のみが通常は発光に寄与する。
したがって、電界発光素子における内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、S:T=1:3であることを根拠に25%とされていた。
また、発生した光は全て外部に放出されるわけではなく、一部の光は電界発光素子の構成材料(電界発光層材料、電極材料)や基板材料固有の屈折率が原因で取り出すことができない。発生した光のうち外部に取り出される率は光の取り出し効率と呼ばれるが、ガラス基板を有する電界発光素子において、その取り出し効率は約20%程度と言われている。
以上の理由から、注入したキャリアが全て分子励起子を形成したとしても、その注入キャリア数に対して最終的に外部に取り出せるフォトンの割合(以下、「外部量子効率」と記す)の理論的限界は、25%×20%=5%と言われていた。すなわち、全てのキャリアが再結合したとしても、そのうちの5%しか光として取り出せない計算になる。
ところが近年、三重項励起状態(T)から基底状態に戻る際に放出されるエネルギー(以下、「三重項励起エネルギー」と記す)を発光に変換できる電界発光素子が相次いで発表され、その発光効率の高さが注目されている(例えば、非特許文献4、非特許文献5参照)。
【非特許文献4】 D.F.O’Brien,M.A.Baldo,M.E.Thompson and S.R.Forrest,“Improved energy transfer in electrophosphorescent devices”,Applied Physics Letters,vol.74,No.3,442−444(1999)
【非特許文献5】 Tetsuo TSUTSUI,Moon−Jae YANG,Masayuki YAHIRO,Kenji NAKAMURA,Teruichi WATANABE,Taishi TSUJI,Yoshinori FUKUDA,Takeo WAKIMOTO and Satoshi MIYAGUCHI,“High Quantum Efficiency in Organic Light−Emitting Devices with Iridium−Complex as a Triplet Emissive Center”,Japanese Journal of Applied Physics,Vol.38,pp.L1502−L1504(1999)
非特許文献4では白金を中心金属とするポルフィリン錯体を、非特許文献5ではイリジウムを中心金属とする有機金属錯体を用いており、いずれの錯体も第3遷移系列元素を中心金属として導入している燐光性化合物である。その中には、先に述べた外部量子効率の理論的限界値5%をゆうに越えるものも存在する。
また、イリジウムを中心金属とする有機金属錯体(イリジウム錯体)からなる層と、公知の蛍光性化合物であるDCM2からなる層とを交互に積層することにより、イリジウム錯体で生成した三重項励起エネルギーをDCM2に移動させ、DCM2の発光に寄与させることもできる(非特許文献6)。DCM2の発光は一重項励起状態からの発光(蛍光)であるが、効率よく発生するイリジウム錯体の三重項励起エネルギーを他の分子であるDCM2の一重項励起エネルギーへと利用できる利点がある。これはいわば、燐光性化合物であるイリジウム錯体が、前述した光増感剤と同様の役割を果たし、DCM2の一重項励起状態の割合を増加させているものであるとも言える。
【非特許文献6】 M.A.Baldo,M.E.Thompson and S.R.Forrest,“High−efficiency fluorescent organic light−emitting devices using a phosphorescent sensitizer”,Nature(London),Vol.403,750−753(2000)
非特許文献4〜非特許文献6に示されるとおり、三重項励起エネルギーを発光に変換できる有機化合物、すなわち燐光性化合物を用いた電界発光素子は、従来よりも高い外部量子効率を達成できる。そして、外部量子効率が高くなれば発光輝度も向上する。したがって、燐光性化合物を用いた電界発光素子は、高輝度発光・高発光効率を達成するための手法として、今後の開発において大きなウェートを占めるものと考えられる。
以上のことから、燐光性化合物は項間交差を起こしやすく、なおかつ三重項励起状態からの発光(燐光)を生じやすいため、光増感剤としての利用や電界発光素子への適用が有用であり、期待されている化合物であるが、その数は少ないのが現状である。
数少ない燐光性化合物の中で、非特許文献5や非特許文献6で用いられているイリジウム錯体は、オルトメタル錯体と呼ばれる有機金属錯体の一種である。この錯体は燐光寿命が数百ナノ秒であり、また、燐光量子収率も高いことから、前記ポルフィリン錯体に比べると輝度の上昇に伴う効率の低下が小さい。その意味で、このような重金属を用いたオルトメタル錯体は、燐光性化合物合成のための一つの指針である。
非特許文献5で述べられているイリジウム錯体の配位子の構造は比較的単純であり、色純度の良い緑色発光を示すが、発光色を他の色に変えるためには配位子の構造を変える必要がある。例えば、非特許文献7では種々の配位子およびその配位子を用いたイリジウム錯体が合成されており、いくつかの発光色を実現している。
【非特許文献7】 M.Thompson,S.Lamansky,P.Djurovich,D.Murphy,F.Abdel−Razzaq,S.R.Forrest,M.Baldo,P.E.Burrows,C.Adachi,T.X.Zhou and J.J.Brown,“Phosphorescent Materials and Devices”.The 10▲th▼ International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL’00),35−38
しかしながら、これらの配位子の多くは合成が困難、あるいは合成に要するステップ数が多く、材料自体の価格の上昇にもつながる。オルトメタル錯体において燐光発光させるためには、イリジウムや白金を中心金属として用いる必要があるが、これらの金属原料自体が高価な上に、配位子までもが高価になってしまうことになる。また、色純度の良い青色の発光色も実現されてはいない。
したがって、容易に合成できる配位子を用い、新たなオルトメタル錯体(燐光性化合物)を合成し、多様な発光色を得る工夫も必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、合成の容易な配位子を用いてオルトメタル錯体を合成することにより、新たな燐光性化合物を提供することを課題とする。
また特に、前記燐光性化合物を用いて電界発光素子を作製することにより、発光効率の高い電界発光素子を提供することを課題とする。さらには前記電界発光素子を用いて発光装置を作製することにより、消費電力の低い発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、下記一般式[化9]に示す配位子を用いた場合、第9族元素または第10族元素を中心金属とするオルトメタル錯体(シクロメタル錯体の一種)を形成できることに着目した。

そして本発明者は、一般式[化9]の配位子をオルトメタル化(シクロメタル化の一種)して合成した下記一般式[化1]で表される錯体が、燐光発光できることを見出した。このオルトメタル錯体は、一般式[化9]で表される配位子が極めて容易に合成できるため、将来的に安価に合成できる可能性がある。

(式中、Rはアルキル基、またはアリール基、または置換基を有するアリール基、または複素環残基、または置換基を有する複素環残基を表す。またRは、水素、またはアルキル基、またはアリール基、または置換基を有するアリール基、または複素環残基、または置換基を有する複素環残基を表す。またRおよびRはそれぞれ同一でも異なっていても良く、水素、またはハロゲン元素、またはアルキル基、またはアルコキシル基、またはアリール基、または置換基を有するアリール基、または複素環残基、または置換基を有する複素環残基を表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表し、前記Mが第9族元素の場合はn=2、第10族元素の場合はn=1となる。またLは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、を表す。)
したがって本発明の構成は、上記一般式[化1]で表される燐光性化合物を提供するものである。
なお、より効率よく燐光発光させるためには、重原子効果の観点から、中心金属としては重い金属の方が好ましい。したがって本発明では、上記一般式[化1]において、中心金属Mがイリジウムまたは白金であることを特徴とする。
また、上記一般式[化1]において、配位子Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子であれば何でもよいが、以下の構造式[化2]〜[化8]に示すモノアニオン性の配位子のいずれかが好ましい。これらのモノアニオン性のキレート配位子は、配位能力が高く、また、安価に入手することができるため、有効である。

ところで、本発明の燐光性化合物は、三重項励起エネルギーを発光に変換することが可能であるため、電界発光素子に適用することにより素子の高効率化が可能となり、非常に有効である。したがって本発明では、本発明の燐光性化合物を用いた電界発光素子も含むものとする。
この時、本発明の燐光性化合物は、非特許文献6で述べられたような増感剤として用いてもよいが、非特許文献5で述べられたような発光体としての利用法の方が、発光効率の面でより効果的である。したがって本発明では、本発明の燐光性化合物を発光体として用いた電界発光素子を特徴とする。
なお、このようにして得られた本発明の電界発光素子は高い発光効率を実現できるため、これを発光素子として用いた発光装置(画像表示デバイスや発光デバイス)は、低消費電力を実現できる。従って、本発明では、本発明の電界発光素子を用いた発光装置も含むものとする。
なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子として電界発光素子を用いた画像表示デバイスもしくは発光デバイスを指す。さらに、電界発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)もしくはフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printcd circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または有機発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
本発明を実施することで、新たな燐光性化合物を提供することができる。また、前記燐光性化合物を用いて電界発光素子を作製することにより、発光効率の高い電界発光素子を提供することができる。さらには前記電界発光素子を用いて発光装置や電気器具を作製することにより、消費電力の低い発光装置や電気器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施の形態1における電界発光素子の素子構造を説明する図。
図2は、実施の形態2における電界発光素子の素子構造を説明する図。
図3は、実施の形態3における電界発光素子の素子構造を説明する図。
図4は、発光装置について説明する図。
図5は、電気器具について説明する図。
図6は、本発明の燐光性化合物の吸収・励起・発光スペクトルを示すグラフ。
図7は、本発明の燐光性化合物の吸収・励起・発光スペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
上記一般式[化9]で表される配位子は、下記の合成スキーム[化10]にて合成することができる。

このようにして得られた一般式[化9]の配位子を用いて、本発明の燐光性化合物であるオルトメタル錯体を形成する。この時のオルトメタル化反応としては、公知の合成法を用いればよい。
例えば、イリジウムを中心金属とする本発明の燐光性化合物を合成する際は、中心金属原料として塩化イリジウムの水和物を用い、一般式[化9]の配位子と混合して窒素雰囲気下にて環流することにより、まず塩素架橋の複核錯体を合成する(下記合成スキーム[化11])。次に、得られた前記複核錯体と配位子Lとを混合して窒素雰囲気下にて環流することにより、塩素架橋を配位子Lで切断し、本発明の燐光性化合物を得る(下記合成スキーム[化12])。

なお、本発明で用いる燐光性化合物の合成方法は、上記に示す合成方法に限定されるものではない。
このようにして得られる本発明の燐光性化合物は、上記一般式[化9]で表される配位子の構造を変化させることにより、様々な発光色を得ることができる。その具体例としては、例えば下記構造式[化13]〜[化17]などがある。ただし、本発明で用いる燐光性化合物は、これらに限定されるものではない。


本発明の燐光性化合物は、光増感剤や燐光発光材料として用いることができるが、以下では、本発明の燐光性化合物を電界発光素子に適用する形態について述べる。
本発明における電界発光素子は、基本的には、一対の電極(陽極及び陰極)間に上述した本発明の燐光性化合物(上記一般式[化1])を含む電界発光層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層など)を挟持した素子構成である。
また、電界発光層に用いる本発明の燐光性化合物以外の材料としては、公知の材料を用いることができ、低分子系材料および高分子系材料のいずれを用いることもできる。なお、発光層を形成する材料には、有機化合物材料のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
以下では、本発明の電界発光素子の実施形態について、詳細に説明する。
[実施の形態1]
本実施の形態1では、本発明の燐光性化合物を含む発光層と、低分子系材料からなる正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)および電子輸送層を有する電界発光素子の素子構成について図1を用いて説明する。
図1では、基板100上に第1の電極401が形成され、第1の電極101上に電界発光層102が形成され、その上に第2の電極103が形成された構造を有する。
なお、ここで基板100に用いる材料としては、従来の電界発光素子に用いられているものであれば良く、例えば、ガラス、石英、透明プラスチックなどからなるものを用いることができる。
また、本実施の形態1における第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
すなわち第1の電極101は陽極材料で形成され、ここで用いることのできる陽極材料としては、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。なお、陽極材料の具体例としては、ITO(indium tin oxide)、酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(indium zinc oxide)の他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(TiN)等を用いることができる。
一方、第2の電極103の形成に用いられる陰極材料としては、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。なお、陰極材料の具体例としては、元素周期律の1族または2族に属する元素、すなわちLiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li)や化合物(LiF、CsF、CaF)の他、希土類金属を含む遷移金属を用いて形成することができるが、Al、Ag、ITO等の金属(合金を含む)との積層により形成することもできる。
なお、上述した陽極材料及び陰極材料は、蒸着法、スパッタリング法等により薄膜を形成することにより、それぞれ第1の電極101及び第2の電極103を形成する。膜厚は、10〜500nmとするのが好ましい。
また、本発明の電界発光素子において、電界発光層におけるキャリアの再結合により生じる光は、第1の電極101または第2の電極103の一方、または両方から外部に出射される構成となる。すなわち、第1の電極101から光を出射させる場合には、第1の電極101を透光性の材料で形成することとし、第2の電極103側から光を出射させる場合には、第2の電極103を透光性の材料で形成することとする。
また、電界発光層102は複数の層を積層することにより形成されるが、本実施の形態1では、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、ホールブロッキング層114、および電子輸送層115を積層することにより形成される。
正孔注入層111を形成する正孔注入性材料としては、フタロシアニン系の化合物が有効である。例えば、フタロシアニン(略称:H−Pcと示す)、銅フタロシアニン(略称:Cu−Pcと示す)等を用いることができる。
正孔輸送層112を形成する正孔輸送性材料としては、芳香族アミン系(すなわち、ベンゼン環−窒素の結合を有するもの)の化合物が好適である。広く用いられている材料として、例えば、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)の他、その誘導体である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)、あるいは4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
発光層113は、先に一般式[化1]で示したオルトメタル錯体を含み、このオルトメタル錯体とホスト材料とを共蒸着することにより形成される。ホスト材料としては公知の材料を用いることができ、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−ビフェニル(略称:CBP)や、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリ−イル)−トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール](略称:TPBI)などが挙げられる。
ホールブロッキング層114を形成するホールブロッキング性の材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いることができる。
電子輸送層115を形成する場合の電子輸送性材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム略称:BeBq)などのキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体や、先に述べたBAlqなどが好適である。また、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、先に述べたOXD−7、TAZ、p−EtTAZ、BPhen、BCPなども電子輸送性材料として用いることができる。
以上により、本発明の燐光性化合物を含む発光層113と、低分子系材料からなる正孔注入層111、正孔輸送層112、正孔阻止層(ホールブロッキング層)114および電子輸送層115を有する電界発光素子を形成することができる。
なお、本実施の形態1においては、発光層113において、本発明の燐光性化合物をゲスト材料として用いており、本発明の燐光性化合物から得られる発光を発光色とする発光素子である。
[実施の形態2]
本実施の形態2では、本発明の燐光性化合物を含む発光層と、高分子系材料からなる正孔注入層を有し、これらを湿式プロセスにて形成する電界発光素子の素子構成について図2を用いて説明する。
なお、基板200、第1の電極201、第2の電極203については、実施の形態1と同様の材料を用いて、同様にして形成することができるため説明を省略する。
また、電界発光層202は複数の層を積層することにより形成されるが、本実施の形態2では、正孔注入層211、発光層212を積層することにより形成される。
正孔注入層211を形成する正孔注入性の材料としては、ポリスチレンスルホン酸(略称:PSS)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(略称:PEDOT)や、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール(略称:PVK)などを用いることができる。
発光層212は、先に一般式[化1]で示した本発明の燐光性化合物をゲスト材料として含む。ホスト材料はバイポーラ性の材料であれば良いが、ホール輸送材料と電子輸送材料とを混合してバイポーラ性としても良い。ここでは、まず、ホール輸送性の高分子化合物(例えばPVK)と上述した電子輸送性材料(例えばPBD)とを7:3(モル比)で同一溶媒に溶かし、さらには本発明の燐光性化合物を適量(5wt%程度)添加した溶液を調製する。この溶液を湿式塗布することによって、発光層212を得ることができる。
以上により、本発明の燐光性化合物を含む発光層212と、高分子系材料からなる正孔注入層211を有し、これらを湿式プロセスにて形成する電界発光素子を得ることができる。
[実施の形態3]
本実施の形態3では、本発明の燐光性化合物と蛍光性化合物の二種類を含む発光層と、低分子系材料からなる正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)および電子輸送層を有する電界発光素子の素子構成について図3を用いて説明する。
なお、基板300、第1の電極301、第2の電極303、正孔注入層311、正孔輸送層312、ホールブロッキング層314、電子輸送層315については、実施の形態1と同様の材料を用いて、同様にして形成することができるため説明を省略する。
本実施の形態の発光層313は、ホスト材料と、第一のゲスト材料である本発明の燐光性化合物と、第二のゲスト材料である蛍光性化合物と、からなる。ホスト材料としては、実施の形態1で述べた材料を用いればよい。
また、第二のゲスト材料としては公知の蛍光性化合物を用いることができ、具体的には、DCM1、DCM2、DCJTB、キナクリドン、N,N−ジメチルキナクリドン、ルブレン、ペリレン、DPT、Co−6、PMDFB、BTX、ABTX等を用いることができる。
本実施の形態34においては、非特許文献6と同様、発光層313において第一のゲスト材料である本発明の燐光性化合物は増感剤として作用し、第二のゲスト材料である蛍光性化合物の一重項励起状態の数を増幅する。したがって、本実施の形態3の電界発光素子は、蛍光性化合物から得られる発光を発光色とする発光素子であり、なおかつ、蛍光性化合物の発光効率を従来の状態に比べて向上させることができる。
【実施例】
[合成例1]
本合成例では、上記構造式[化13]で表される本発明の燐光性化合物の合成法を例示する。まず、3−チオフェンカルボキシアルデヒドとアニリンを等モル量、エタノール中にて4時間環流後、溶媒を留去することによって下記構造式[化18]で表される配位子原料を得た(黄色液状)。

次に、塩化イリジウム(IrCl・HCl・HO)と2.5等量の構造式[化18]とを、2−エトキシエタノールと水の3:1混合溶媒中で窒素雰囲気下にて18時間環流し、下記構造式[化19]の複核錯体を得た。得られた粉末を濾取し、エタノールおよびアセトンで洗浄した後、風乾した。

さらに、構造式[化19]と3等量のアセチルアセトン、および10等量の炭酸ナトリウムを、2−エトキシエタノール中で窒素雰囲気下にて18時間環流した。溶媒を留去後、ジクロロメタンによるオープンカラムにて精製し、クロロホルム/ヘキサンにて再結晶を行い、目的物である上記構造式[化13]の化合物を得た。
得られた本発明の燐光性化合物(構造式[化13])の吸収スペクトル、励起スペクトル、および発光スペクトル(PL)を図6に示す。図6では、配位子原料(構造式[化18])の吸収スペクトルも合わせて記載した。
図6に示すとおり、吸収スペクトル▲2▼は、配位子原料のスペクトル▲1▼と比較して、長波長側(340nm付近、および350nm〜400nm)にショルダーを有しており、三重項π−π遷移および三重項MLCT遷移を示唆している。励起スペクトル▲3▼の位置は、それら三重項励起の位置と一致しており、三重項励起状態が発光に寄与しているものと考えられる。したがって、本発明の化合物が燐光性化合物であることを示している。また、発光スペクトル▲4▼は、425nm程度にピークを有する青紫色発光であった。
[合成例2]
本合成例では、上記構造式[化15]で表される本発明の燐光性化合物の合成法を例示する。まず、合成例1と同様の手法にて、上記構造式[化19]の複核錯体を得る。
さらに、構造式[化19]と3等量のピコリン酸、および10等量の炭酸ナトリウムを、2−エトキシエタノール中で窒素雰囲気下にて18時間環流した。溶媒を留去後、ジクロロメタンによるオープンカラムにて精製し、クロロホルム/ヘキサンにて再結晶を行い、目的物である上記構造式[化15]の化合物を得た。
得られた本発明の燐光性化合物(構造式[化15])の吸収スペクトル、励起スペクトル、および発光スペクトル(PL)を図7に示す。図7では、配位子原料(構造式[化18])の吸収スペクトルも合わせて記載した。
図7に示すとおり、吸収スペクトル▲2▼は、配位子原料のスペクトル▲1▼と比較して、長波長側(340nm〜370nm付近)に二箇所ピークを有しており、三重項π−π遷移および三重項MLCT遷移を示唆している。励起スペクトル▲3▼の位置は、それら三重項励起の位置と一致しており、三重項励起状態が発光に寄与しているものと考えられる。したがって、本発明の化合物が燐光性化合物であることを示している。また、発光スペクトル▲4▼は、450nm程度にピークを有する青色発光であった。
【実施例1】
本実施例では、画素部に本発明の電界発光素子を有する発光装置について図4を用いて説明する。なお、図4(A)は、発光装置を示す上面図、図4(B)は図4(A)をA−A’で切断した断面図である。点線で示された401は駆動回路部(ソース側駆動回路)、402は画素部、403は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、404は封止基板、405はシール剤であり、シール剤405で囲まれた内側407は、空間になっている。
なお、408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。基板410上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401と、画素部402が示されている。
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
また、カバレッジを良好なものとするため、絶縁物414の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
第1の電極413上には、電界発光層416、および第2の電極417がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極413に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)膜、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
また、電界発光層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、またはインクジェット法によって形成される。電界発光層416には、本発明の燐光性化合物(上記一般式[化1])をその一部に用いることとし、その他、組み合わせて用いることのできる材料としては、低分子系材料であっても高分子系材料であっても良い。また、電界発光層に用いる材料としては、通常、有機化合物を単層もしくは積層で用いる場合が多いが、本発明においては、有機化合物からなる膜の一部に無機化合物を用いる構成も含めることとする。
さらに、電界発光層416上に形成される第2の電極(陰極)417に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF、またはCaN)を用いればよい。なお、電界発光層416で生じた光が第2の電極417を透過させる場合には、第2の電極(陰極)417として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
さらにシール剤405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより、素子基板401、封止基板404、およびシール剤405で囲まれた空間407に電界発光素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール剤405で充填される構成も含むものとする。
なお、シール剤405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
以上のようにして、本発明の電界発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【実施例2】
本実施例では、本発明の電界発光素子を有する発光装置を用いて完成させた様々な電気器具について説明する。
本発明の電界発光素子を有する発光装置を用いて作製された電気器具として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電気器具の具体例を図5に示す。
図5(A)は表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。
図5(B)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2203に用いることにより作製される。
図5(C)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2302に用いることにより作製される。
図5(D)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明の電界発光素子を有する発光装置をこれら表示部A、B2403、2404に用いることにより作製される。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
図5(E)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2502に用いることにより作製される。
図5(F)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2602に用いることにより作製される。
ここで、図5(G)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明の電界発光素子を有する発光装置をその表示部2703に用いることにより作製される。なお、表示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
以上の様に、本発明の電界発光素子を有する発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電気器具に適用することが可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[化1]で表される燐光性化合物。

(式中、Rはアルキル基、またはアリール基、または置換基を有するアリール基、または複素環残基、または置換基を有する複素環残基を表す。またRは、水素、またはアルキル基、またはアリール基、または置換基を有するアリール基、または複素環残基、または置換基を有する複素環残基を表す。またRおよびRはそれぞれ同一でも異なっていても良く、水素、またはハロゲン元素、またはアルキル基、またはアルコキシル基、またはアリール基、または置換基を有するアリール基、または複素環残基、または置換基を有する複素環残基を表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表し、前記Mが第9族元素の場合はn=2、第10族元素の場合はn=1となる。またLは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の燐光性化合物において、前記Mは、イリジウム元素または白金元素であることを特徴とする燐光性化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の燐光性化合物において、前記Lは、下記構造式[化2]に示すモノアニオン性の配位子であることを特徴とする燐光性化合物。

【請求項4】
請求項1に記載の燐光性化合物において、前記Lは、下記構造式[化3]に示すモノアニオン性の配位子であることを特徴とする燐光性化合物。

【請求項5】
請求項1に記載の燐光性化合物において、前記Lは、下記構造式[化4]に示すモノアニオン性の配位子であることを特徴とする燐光性化合物。

【請求項6】
請求項1に記載の燐光性化合物において、前記Lは、下記構造式[化5]に示すモノアニオン性の配位子であることを特徴とする燐光性化合物。

【請求項7】
請求項1に記載の燐光性化合物において、前記Lは、下記構造式[化6]に示すモノアニオン性の配位子であることを特徴とする燐光性化合物。

【請求項8】
請求項1に記載の燐光性化合物において、前記Lは、下記構造式[化7]に示すモノアニオン性の配位子であることを特徴とする燐光性化合物。

【請求項9】
請求項1に記載の燐光性化合物において、前記Lは、下記構造式[化8]に示すモノアニオン性の配位子であることを特徴とする燐光性化合物。

【請求項10】
請求項1に記載の燐光性化合物を用いたことを特徴とする電界発光素子。
【請求項11】
請求項1に記載の燐光性化合物を、発光体として用いたことを特徴とする電界発光素子。
【請求項12】
請求項10に記載の電界発光素子を用いたことを特徴とする発光装置。
【請求項13】
請求項11に記載の電界発光素子を用いたことを特徴とする発光装置。
【請求項14】
請求項12に記載の発光装置を表示部に備えたことを特徴とする電気器具。
【請求項15】
請求項13に記載の発光装置を表示部に備えたことを特徴とする電気器具。

【国際公開番号】WO2004/048395
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554994(P2004−554994)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014816
【国際出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】