説明

燐光OLEDのためのホスト物質

【課題】燐光OLEDのためのホスト物質を提供する。
【解決手段】新規なアリールケイ素及びアリールゲルマニウムホスト物質を記載している。これらの化合物は、OLEDの発光層中のホストとして用いられた場合に、そのOLEDデバイス特性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0002】
本発明は、OLEDにおいてホスト物質として用いるために適した化合物、特にアリールゲルマン及びアリールシラン基を含む化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対してコスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0004】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0005】
燐光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0006】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式Iの構造を有する。
【化1】

【0007】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0008】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0009】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0010】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0011】
配位子が発光物質の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変えうる。
【0012】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップのより近くに現れる。
【0013】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0014】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
式Iの化合物を提供する。
【化2】

式中、Ar及びAr′は独立に、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾフランからなる群から選択され、これらは任意選択によりさらに置換されていてもよい。ZはSi及びGeから選択される。Lは単結合であるか、又はアリール、アミノ、又はこれらの組み合わせを含み、且つLは任意選択によりさらに置換されていてもよい。
【0018】
AはZに直接結合した基であり、且つ、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、アザジベンゾセレノフェン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、これらは任意選択により、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、その置換は任意選択により、Zに直接結合した基と縮合していてもよい。
【0019】
Bは、カルバゾール、アザカルバゾール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される基を含み、任意選択で、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、その置換基は任意選択により前記のカルバゾール又はアザカルバゾール基と縮合していてもよい。
【0020】
一つの側面では、Aは以下のものからなる群から選択される。
【化3】

【0021】
一つの側面では、Bは以下のものからなる群から選択される。
【化4】

及びYは独立に、O、S、及びSeからなる群から選択され、X〜X10は独立にCR′及びNからなる群から選択され、各ベンゾ環は多くても1つのNを含む。R′は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。Rは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アミノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
一つの側面では、Lは以下のものからなる群から選択される。
【化5】

【0023】
一つの側面では、Lは単結合である。別の側面では、Lは、Zに直接結合した少なくとも1つのフェニルを含む。
【0024】
一つの側面では、Ar及びAr′はフェニルである。別の側面では、Ar、Ar′は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの基で置換されている。
【0025】
一つの側面では、上記化合物は化合物1〜化合物11からなる群から選択される。
【0026】
第一のデバイスを提供する。一つの側面では、その第一のデバイスは有機発光デバイスを含み、さらに、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置され、下記式:
【化6】

を有する化合物を含む有機層を含む。
Ar及びAr′は独立に、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾフランからなる群から選択され、これは任意選択によりさらに置換されていてもよい。ZはSi及びGeから選択される。Lは単結合であるか、又はアリール、アミノ、もしくはそれらの組み合わせを含み、且つ、Lは任意選択によりさらに置換されていてもよい。
【0027】
Aは、Zに直接結合する基であり、且つ、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、アザジベンゾセレノフェン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、これらは任意選択により、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、その置換は任意選択により、Zに直接結合した基と縮合していてもよい。
【0028】
Bは、カルバゾール、アザカルバゾール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される基を含み、任意選択で、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、その置換基は任意選択により前記のカルバゾール又はアザカルバゾール基と縮合していてもよい。
【0029】
一つの側面では、上記有機層は発光層であり、式Iの化合物はホストである。別の側面では、有機層はさらに発光ドーパントを含む。一つの側面では、発光ドーパントは以下のものからなる群から選択される少なくとも1つの配位子を有する遷移金属錯体である。
【化7】

【化8】

式中、R、R、及びRはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。
【0030】
、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、R、R、及びRのうち2つの隣接置換基は任意選択により結合して縮合環を形成していてもよい。
【0031】
一つの側面では、発光ドーパントは下記式を有する。
【化9】

Dは5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり、且つ、R、R、及びRは独立に、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表す。R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。X−Yは別の配位子を表し、nは1、2、又は3である。Rは任意選択により環Dに連結していることもできる。
【0032】
別の側面では、上記デバイスは、非発光層である第二の有機層をさらに含み、且つ、式Iを有する化合物はその第二の有機層中の物質である。
【0033】
一つの側面では、第二の有機層は阻止層であり、且つ、式Iを有する化合物は第二の有機層中の阻止性物質である。
【0034】
一つの側面では、第二の有機層は電子輸送層であり、且つ、式Iの化合物は第二の有機層中の電子輸送物質である。
【0035】
一つの側面では、第一のデバイスは消費者製品である。別の側面では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は有機発光デバイスを示す。
【図2】図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
【図3】図3は、式Iの化合物を示す。
【図4】図4は、式Iの化合物を組み込んだサンプルのOLEDデバイス構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくつかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非放射機構、例えば、熱緩和も起こりうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0038】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0039】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999) (“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄に、より詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0040】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含みうる。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0041】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F−TCNQでドープしたm−MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報に、より詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0042】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0043】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0044】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0045】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0046】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0047】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0048】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0049】
式Iの化合物を提供する。
【化10】

式中、Ar及びAr′は独立に、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾフランからなる群から選択され、これらは任意選択によりさらに置換されていてもよい。ZはSi及びGeから選択される。Lは単結合であるか、又はアリール、アミノ、もしくはこれらの組み合わせを含み、且つLは任意選択によりさらに置換されていてもよい。
【0050】
AはZに直接結合した基であり、且つ、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、アザジベンゾセレノフェン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、これらは任意選択により、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、その置換は任意選択により、Zに直接結合した基と縮合していてもよい。
【0051】
Bは、カルバゾール、アザカルバゾール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される基を含み、任意選択で、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、その置換基は任意選択により前記のカルバゾール又はアザカルバゾール基と縮合していてもよい。
【0052】
「アリール」基は芳香族である、全てが炭素の基であり、これはその中に1つ以上の縮合環を含んでいてもよい。単なる例示として且つ限定することなく、例示のアリール基は、フェニル、ナフタレン、フェナントレン、コランヌレン(corannulene)などであることができる。「ヘテロアリール」基は少なくとも1つのヘテロ原子を含む「アリール」基である。単なる例示として且つ限定することなく、例示のヘテロアリール基は、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、アザコランヌレン(azacorannulene)などであることができる。「アリール」及び「ヘテロアリール」基の両方とも、他の部分に対してそれらを結合させる複数の結合点を有することができる。
【0053】
一つの態様では、Aは以下のものからなる群から選択される。
【化11】

【0054】
一つの態様では、Bは以下のものからなる群から選択される。
【化12】

及びYは独立に、O、S、及びSeからなる群から選択され、X〜X10は独立にCR′及びNからなる群から選択され、各ヘテロ芳香族環は多くても1つのNを含む。R′は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。Rは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アミノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。本明細書に開示した化学構造式中の破線は、別の原子と単結合を形成することができるその基上の任意の位置を通しての結合を表す。
【0055】
いくつかの態様では、A基は電子輸送体として働き、連結ユニット(リンカーユニット)(L)及びB基は正孔輸送体として働く。
【0056】
分子の一部を置換基であるとして説明する場合あるいはそうでなければ別の部分に結合している場合には、その名称は、あたかもそれが断片(例えば、ナフチル、ジベンゾフラニル)であるかのように、あるいはそれが完全な分子(例えば、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるかのように記述されうる。本明細書で用いる場合、置換基又は結合した断片(フラグメント)を示すこれらの異なる方法は同じであると理解される。
【0057】
本明細書で用いるように、下記の構造:
【化13】

を含む断片は、DBX基、すなわち、enzo Xとよばれ、式中Xは本明細書に記載した原子又は基のいずれかである。DBX基中、A〜Aは炭素又は窒素からなることができる。
【0058】
一つの態様では、Lは以下のものからなる群から選択される。
【化14】

【0059】
一つの態様では、Lは単結合である。別の態様では、Lは、Zに直接結合した少なくとも1つのフェニルを含む。
【0060】
一つの態様では、Ar及びAr′はフェニルである。別の態様では、Ar、Ar′は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの基で置換されている。
【0061】
本明細書に記載した式Iの新規な化合物は2つの異なる部分である基A及びBを含み、これらはアリールシラン又はアリールゲルマンスペーサーで連結されており、その結果非対称構造をもたらしている。「非対称」とは、上述した基A及びBが異なる構造を有することを意味する。式Iの化合物は、OLEDデバイスに用いられた場合には、多くの有利な特性を有している。第一に、2つの異なる部分を含むことで、その結果得られる化合物のエネルギー準位を微調整することが可能になり、これが隣の層からの電荷注入を容易にし、発光体ドーパントによる電荷捕捉を調節しうる。第二に、この2つの異なる部分が独立に、電子及び/又は正孔輸送性を有するように選択し、双極電界輸送特性(バイポーラ電界輸送特性)をもつ化合物を生じさせることができる。これらの特性は駆動電圧を抑えるだけでなく、電子及び正孔の流れをバランスさせて、より広げられた電荷再結合ゾーンを得ることができる。第三に、上記のアリールシラン及びアリールゲルマンスペーサーは、基A及びBの間の共役を切断し、分子全体に対する高い三重項エネルギーを保ち、それによって効果的に消光(クエンチ)を低減させる。
【0062】
式Iの化合物は、公知の対称な類縁体に対してさらなる利点を有しており、なぜなら、式Iの化合物は結晶化する傾向がより小さいからである。その結果、式Iの化合物は向上した膜の均一性を有し、理論に束縛されないが、これはOLED中での発光体とホスト物質との間の相分離を低減するという結果になると考えられる。式Iの新規な化合物は、OLEDデバイスの性能パラメータ、例えば、発光スペクトル線の形、効率、及び寿命を向上させるために用いることができる。さらに、式Iの化合物は、有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、及び3−フェノキシトルエンに溶解性である傾向をも示し、低コストの照明用途に非常に望ましい溶液加工をしやすい。
【0063】
一つの側面では、上記化合物は以下のものからなる群から選択される。
【化15】

【化16】

【0064】
表1には、選択された式Iの化合物及び比較化合物について、その三重項エネルギーレベルを挙げてある。三重項エネルギーは、77Kにおいて、2−メチルテトラヒドロフラン中の対応する化合物の10−4M溶液で集めた燐光スペクトルの最も高い0−0振電バンド(vibronic band)の最大値から測定した。CC−4はシラン単位を含むが、CC−4はCC−1と実質的に同じ分子三重項エネルギーを有しており、2.76対2.78eVである。対照的に、シラン単位に直接結合したジベンゾチオフェン部分を有する化合物1はより高い三重項エネルギー2.99eVを有しており、これはこの直接結合がジベンゾチオフェン部分の高い三重項エネルギーを保持しうることを示唆している。これはさらに化合物2−4、CC−2、及びCC−3によっても裏付けられており、これら全ては約3.0eVの三重項エネルギーを有する。化合物5は化合物1−4よりも低い三重項エネルギー(2.81eV)を有しており、これは、理論に縛られるものではないが、ビフェニレン架橋を含むビカルバゾール基の存在によって制限されたものであると考えられる。
【0065】
【表1】

【0066】
第一のデバイスを提供する。一つの態様では、その第一のデバイスは有機発光デバイスを含み、さらに、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置され、下記式:
【化17】

を有する化合物を含む有機層を含む。
Ar及びAr′は独立に、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾフランからなる群から選択され、これは任意選択によりさらに置換されていてもよい。ZはSi及びGeから選択される。Lは単結合であるか、又はアリール、アミノ、もしくはそれらの組み合わせを含み、且つ、Lは任意選択によりさらに置換されていてもよい。
【0067】
Aは、Zに直接結合する基であり、且つ、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、アザジベンゾセレノフェン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、これらは任意選択により、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された基でさらに置換されていてもよく、その置換は任意選択により、Zに直接結合した少なくとも1つのベンゾ基と縮合していてもよい。
【0068】
Bは、カルバゾール、アザカルバゾール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される基を含み、これらは任意選択で、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される基でさらに置換されていてもよく、その置換基は任意選択により前記のカルバゾール又はアザカルバゾール基と縮合していてもよい。
【0069】
一つの態様では、上記有機層は発光層であり、式Iの化合物はホストである。別の態様では、有機層はさらに発光ドーパントを含む。一つの態様では、発光ドーパントは以下のものからなる群から選択される少なくとも1つの配位子を有する遷移金属錯体である。
【化18】

【化19】

式中、R、R、及びRはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。
【0070】
、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、さらに、R、R、及びRのうちの2つの隣接置換基は任意選択により一緒に結合して縮合環を形成していてもよい。
【0071】
一つの側面では、発光ドーパントは下記式を有する。
【化20】

Dは5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり、且つ、R、R、及びRは独立に、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表す。R、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。X−Yは別の配位子を表し、nは1、2、又は3である。Rは任意選択により環Dに連結していることもできる。
【0072】
別の態様では、上記デバイスは、非発光層である第二の有機層をさらに含み、且つ、式Iを有する化合物はその第二の有機層中の物質である。
【0073】
一つの態様では、第二の有機層は阻止層であり、且つ、式Iを有する化合物は第二の有機層中の阻止性物質である。
【0074】
一つの態様では、第二の有機層は電子輸送層であり、且つ、式Iを有する化合物は第二の有機層中の電子輸送物質である。
【0075】
一つの態様では、第一のデバイスは消費者製品である。別の態様では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。
【0076】
〔デバイス例〕
デバイス例で用いた物質の構造は以下に示すとおりである。
【表2】

【0077】
本明細書に記載した比較化合物の構造は以下のとおりである。
【表3】

【0078】
全てのデバイス例は、高真空(<10−7Torr)熱蒸着(VTE)によって作製した。アノード電極は、800Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは、10ÅのLiFとそれに続く1,000ÅのAlからなる。全てのデバイスは、作製後直ちに窒素グローブボックス(<1ppmのHO及びO)中でエポキシ樹脂を用いてシールしたガラス蓋で密封し、吸湿剤をそのパッケージ内に組み込んだ。
【0079】
例及び比較デバイス例で用いたOLEDデバイスの有機積層部は以下の構造を有する:ITO表面から、正孔注入層として100Åの化合物HIL、正孔輸送層(HTL)として300ÅのNPD、発光層(EML)として15質量%のドーパントD1又はドーパントD2でドープした300Åの式Iの化合物(CC−1、CC−2、CC−3、又はCC−4)、阻止層(BL)として50Åの化合物BL又は式Iの化合物、そして電子輸送層(ETL)として400ÅのAlq。デバイス構造を図4に示している。
【0080】
【表4】

【0081】
表2は、ドーパントD1が発光体であるデバイスデータのまとめである。発光効率(LE)、外部量子効率(EQE)、及び電力効率(PE)は1000nitsで測定し、寿命(LT80%)は、20mA/cmの一定の電流密度のもとでデバイスがその初期輝度の80%まで低下するのに要する時間として定義している。いくつかの態様では、シラン架橋を含む化合物は、より高い効率を実証しており、例えば、比較デバイス例1と比較したデバイス例1〜5並びに比較デバイス2及び3である。理論に縛られないが、これらの結果は、シラン架橋による共役の切断と、個々の分子に対する高い三重項エネルギーの保持に、部分的には帰すことができる。加えて、テトラフェニルシラン単位によって導入される立体障害も、固体状態において三重項エネルギーを低下させうる望ましくない分子間の積み重なりを防止することもできる。ホストの高い三重項エネルギーは、発光体上に励起子を効率的に閉じ込め、それによって高い効率がもたらされる。
【0082】
さらに、DBX及びカルバゾール部分の両方を含む非対称シランホスト(すなわち、Z=Siである式Iの化合物)を用いたデバイスは、対称なシランホストを用いたものよりも向上した寿命を有する(デバイス例1〜5対比較デバイス例2及び3)。デバイス例1、2、及び4は、比較デバイス例2の2倍の寿命を有する。寿命のこの向上は電荷の流れをバランスさせることを助ける式Iの化合物の双極性に帰すことができる。理論に縛られないが、バランスのとれた電子/正孔の流れは、電荷再結合ゾーンを広げ、これが励起子の消光を抑制又は低減することによって、高い輝度において高い効率を維持する。広げられた電荷再結合ゾーンはまた、電荷輸送、励起子形成、及び発光の役割をより多くの数の分子がもつことを可能にすることによって、デバイス寿命も長くする。さらに、式Iの化合物は、デバイス例6〜10に示されているように、正孔阻止層に用いることもできる。式Iの化合物はホスト及び正孔阻止層における正孔阻止物質の両方として働くことができるので、光学デバイスにこれらの物質を組み込むことがデバイス作製コストを低減するということも予測される。
【0083】
【表5】

【0084】
化合物1〜4は高い三重項エネルギーを有しており、深青色発光体のためのホストとして適していることが注目される。例として、表3は、その発光層が15質量%のドーパントD2でドープされた式Iの化合物を含むデバイスのデータのまとめである。発光効率(LE)、外部量子効率(EQE)、及び電力効率(PE)は1000nitsにおいて測定し、寿命(LT80%)は一定の電流密度のもとで2000nitsのその初期輝度の80%にまで低下するのに要する時間として定義した。
【0085】
デバイス例11〜14も良好な効率を示しており、そのホストの三重項エネルギーが、深青色ドーパントの発光を消光しないように充分に高いことを示唆している。
【0086】
[その他の物質との組み合わせ]
有機発光デバイス中の具体的な層に有用として本明細書に記載した物質は、そのデバイス中に存在するその他の広範囲にわたる物質と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在してもよい広い範囲のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に記載乃至言及した物質は、本明細書に記載した化合物と組み合わせて有用でありうる物質の非制限的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の物質を特定するために文献を容易に参考にすることができる。
【0087】
〔HIL/HTL〕
【0088】
本発明に用いられる正孔注入/輸送物質は特に限定されず、その化合物が通常、正孔注入/輸送物質として用いられる限り任意の化合物を用いることができる。この物質の例には以下のものが含まれるがそれらに限定されない:
フタロシアニン又はポルフィリン誘導体;芳香族アミン誘導体;インドロカルバゾール誘導体;フルオロ炭化水素を含むポリマー;導電性ドーパントを伴うポリマー;導電性ポリマー、例えば、PEDOT/PSS;ホスホン酸及びシラン誘導体などの化合物から誘導される自己組織化モノマー;金属酸化物誘導体、例えば、MoO;p型半導体有機化合物、例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル;金属錯体、及び架橋性化合物。
【0089】
HIL又はHTLに用いられる芳香族アミン誘導体の例には以下の構造のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化21】

【0090】
Ar〜Arのそれぞれは、芳香族炭化水素環式化合物からなる群、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン;芳香族ヘテロ環化合物からなる群、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン;及び、前記の芳香族炭化水素環式基及び前記の芳香族ヘテロ環式基から選択された同じ種類又は異なる種類の基である2〜10の環状構造単位からなり、互いに直接又は少なくとも1つの酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環式基を介して結合された基、から選択される。式中、各Arは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基でさらに置換されている。
【0091】
一つの態様では、Ar〜Arは以下のものからなる群から独立に選択される。
【化22】

【0092】
kは1〜20の整数であり;X〜XはC(CHも含めて)又はNであり;Arは上で定義したものと同じ基を有する。
【0093】
HIL又はHTLに用いる金属錯体の例には以下の一般式のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化23】

【0094】
Mは40より大きな原子量を有する金属であり;(Y−Y)は二座配位子であり、Y及びYは独立に、C、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0095】
一つの側面では、(Y−Y)は2−フェニルピリジン誘導体である。
【0096】
別の側面では、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0097】
別の側面では、Mは、Ir、Pt、Os、及びZnから選択される。
【0098】
さらなる側面では、この金属錯体は、溶液中でFc/Fcカップルに対して約0.6V未満の最小酸化電位を有する。
【0099】
〔ホスト〕
【0100】
本発明の有機ELデバイスの発光層は、発光物質として少なくとも金属錯体を含むことが好ましく、その金属錯体をドーパント物質として用いるホスト物質を含んでいてもよい。ホスト物質の例は特に限定されず、ホストの三重項エネルギーがドーパントの三重項エネルギーよりも大きい限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。
【0101】
ホストとして用いられる金属錯体の例は、以下の一般式を有することが好ましい。
【化24】

【0102】
Mは金属であり;(Y−Y)は二座配位子であって、Y及びYは独立にC、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;且つ、m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0103】
一つの側面では、金属錯体は、
【化25】

である。
【0104】
(O−N)は二座配位子であり、金属をO及びN原子に配位させている。
【0105】
別の側面では、MはIr及びPtから選択される。
【0106】
さらなる側面では、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0107】
ホストとして用いられる有機化合物の例は、以下のものからなる群から選択される:芳香族炭化水素環状化合物、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン;芳香族ヘテロ環状化合物からなる群、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン;並びに、前記の芳香族炭化水素環状基及び前記の芳香族ヘテロ環状基から選択される同じか又は異なる種類の基であり、且つ酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環状基のうちの少なくとも1つを介して又は直接、互いに結合されている2〜10の環状構造単位からなる群。ここで各基は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基でさらに置換されている。
【0108】
一つの側面では、ホスト化合物はその分子内に以下の基のうちの少なくとも1つを含む:
【化26】

【0109】
〜Rは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0110】
kは0〜20の整数である。
【0111】
〜XはC(CHも含めて)又はNから選択される。
【0112】
〔HBL〕
【0113】
正孔阻止層(HBL)は、発光層を離れる正孔及び/又は励起子の数を減らすために用いることができる。デバイスにおけるそのような阻止層の存在は、阻止層をもたない類似のデバイスと比較して実質的に高い効率をもたらしうる。また、阻止層は、OLEDの所望の領域に発光を閉じ込めるために用いることもできる。
【0114】
一つの側面では、HBLに用いられる化合物は、上述したホストして用いられるものと同じ分子を含む。
【0115】
別の側面では、HBLに用いられる化合物は、その分子中に以下の基のうち少なくとも1つを含む:
【化27】

【0116】
kは0〜20の整数であり;Lは補助配位子であり、mは1〜3の整数である。
【0117】
〔ETL〕
【0118】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送できる物質を含むことができる。電子輸送層はその本来的性質(非ドープ)であるか、あるいはドープされていてもよい。ドーピングは導電性を高めるために用いることができる。ETL物質の例は特に限定されず、それらが電子を輸送するために通常用いられる限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。
【0119】
一つの側面では、ETLに用いる化合物は、その分子内に以下の基のうち少なくとも1つを含む。
【化28】

【0120】
は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0121】
Ar〜Arは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0122】
kは0〜20の整数である。
【0123】
〜XはC(CHも含めて)又はNから選択される。
【0124】
別の側面では、ETLに用いられる金属錯体には以下の一般式のものが含まれるがこれらには限定されない。
【化29】

【0125】
(O−N)又は(N−N)は二座配位子であり、金属をO,N、又はN,N原子に配位させており;Lは補助配位子であり;mは、1からその金属に結合できる配位子の最大数までの整数値である。
【0126】
OLEDデバイスの各層に用いられる任意の上述した化合物においては、その水素原子は部分的に又は完全に重水素化されていることができる。
【0127】
本明細書に開示した物質に加えて、及び/又はそれと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質をOLEDに用いてもよい。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLEDに用いてもよい物質の非限定的な例を、以下の表4に列挙している。表4は、非限定的な物質群、各群についての化合物の非限定的な例、及びその物質を開示している参考文献を列挙している。
【0128】
【表6】

【0129】
【表7】

【0130】
【表8】

【0131】
【表9】

【0132】
【表10】

【0133】
【表11】

【0134】
【表12】

【0135】
【表13】

【0136】
【表14】

【0137】
【表15】

【0138】
【表16】

【0139】
【表17】

【0140】
【表18】

【0141】
【表19】

【0142】
【表20】

【0143】
【表21】

【0144】
【表22】

【0145】
【表23】

【0146】
【表24】

【0147】
【表25】

【0148】
【表26】

【0149】
【表27】

【0150】
【表28】

【実施例】
【0151】
本明細書を通じて用いた化学的略号は以下のとおりである。dbaはジベンジリデンアセトン、EtOAcは酢酸エチル、dppfは1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、DCMはジクロロメタン、SPhosはジシクロヘキシル(2′,6′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−3−イル)ホスフィン、THFはテトラヒドロフランである。
【0152】
〔化合物1の合成〕
【化30】

【0153】
100mLのTHF中の9−(3−ブロモフェニル)−9H−カルバゾール(5 g, 15.52 mmol)及び4−ブロモジベンゾ[b,d]チオフェン(4.08 g, 15.52 mmol)の溶液中に、ヘキサン中のn−ブチルリチウム溶液(2.5 M, 21.34 mL, 34.1 mmol)を−78℃で滴下して添加し、1時間撹拌した。ジフェニルジクロロシラン(3.19 mL, 15.52 mmol)をTHF(10 mL)に溶かし、先のリチオ化した混合物に滴下して添加した。この混合物を夜通しで室温まで温まるようにし、水及びNHCl溶液で失活させ、EtOAcで抽出し、NaSO上で乾燥させ、濾過した。溶媒を蒸発させ、固体をDCMから再結晶して化合物1を白色固体として得た(3.4 g, 36%)。
【0154】
〔化合物2の合成〕
【化31】

【0155】
エーテル(70 mL)中のジベンゾ[b,d]チオフェン(4.80 g, 26.1 mmol)の溶液中に、ヘキサン中のn−ブチルリチウム溶液(2.5 M, 9.48 mL, 23.70 mmol)を−78℃で滴下して添加し、その溶液が室温まで温まるようにし、次に35℃のオイルバスで2時間加熱して、ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イルリチウムの赤色溶液を得た。
【0156】
別のフラスコ中で、エーテル(70 mL)中の1,3−ジブロモベンゼン(2.56 mL, 21.20 mmol)の溶液に−78℃で、ヘキサン中のn−ブチルリチウム溶液(2.5 M, 9.48 mL, 23.70 mmol)の溶液を添加し、次にこの温度で3.5時間撹拌してm−ブロモフェニルリチウムの溶液を調製した。このm−ブロモフェニルリチウム溶液を−78℃で、エーテル(70 mL)中のジフェニルジクロロシラン(4.88 mL, 23.70 mmol)の溶液に滴下して添加した。得られた反応溶液をこの温度で2時間撹拌した後、上で調製したジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イルリチウムの溶液を滴下して導入した。得られた溶液を夜通しで室温までゆっくり温まるようにした。それを水で失活させ、エーテルで抽出し、NaSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、残留物を溶出液としてヘキサン/DCM(9/1, v/v)を用いてシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製して、(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)ジフェニルシランを白色粉末として得た(3.84 g, 31%)。
【0157】
【化32】

【0158】
m−キシレン(50 mL)中の(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)ジフェニルシラン(3.4 g, 6.52 mmol)、9H−3,9′−ビカルバゾール(2.4 g, 7.17 mmol)、Pd(dba)(0.119 g, 0.130 mmol)、SPhos(0.107 g, 0.261 mmol)、及びナトリウムt−ブトキシド(1.253 g, 13.04 mmol)の混合物を、140℃に窒素下で夜通し加熱した。室温に冷やした後、それをセライト(登録商標) の短い詰め物を通し、トルエン及びDCMで洗った。一緒にした有機溶液を蒸発させ、残留物を溶離液としてヘキサン/DCM(7.5/2.5, v/v)を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製して、化合物2(4.2 g, 83%)を白色粉末として得た。
【0159】
〔化合物3の合成〕
【化33】

【0160】
−78℃において、エーテル(50 mL)中のジベンゾ[b,d]フラン(4.98 g, 29.6 mmol)の溶液中に、ヘキサン中のn−ブチルリチウム溶液(2.5 M, 9.48 mL, 23.70 mmol)を滴下して添加し、その溶液が室温まで温まるようにし、20時間撹拌して、ジベンゾ[b,d]フラン−4−イルリチウム溶液を得た。エーテル(50 mL)中の1,3−ジブロモベンゼン(2.56 mL, 21.20 mmol)の溶液に−78℃で、ヘキサン中のn−ブチルリチウム溶液(2.5 M, 9.48 mL, 23.70 mmol)の溶液を添加した。この反応溶液をこの温度で3.5時間撹拌した後、−78℃で、エーテル(50.0 mL)中のジクロロジフェニルシラン(4.88 mL, 23.70 mmol)の溶液に添加した。得られた反応溶液をこの温度で2時間撹拌した後、上で調製したジベンゾ[b,d]フラン−4−イルリチウムの溶液を滴下して導入した。この反応混合物を夜通しで室温までゆっくり温まるようにし、その時点で水で失活させ、エーテルで抽出し、NaSO上で乾燥させた。濾過及び溶媒を蒸発させて、残留物を溶出液としてヘキサン/DCM(9/1, v/v)を用いてシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製して、(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)ジフェニルシラン(6.2 g, 52%)を白色粉末として得た。
【0161】
【化34】

【0162】
m−キシレン(50 mL)中の(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)ジフェニルシラン(3 g, 5.93 mmol)、9H−カルバゾール(0.992 g, 5.93 mmol)、Pd(dba)(0.109 g, 0.119 mmol)、SPhos(0.097 g, 0.237 mmol)、及びナトリウムt−ブトキシド(1.1 g, 11.87 mmol)の懸濁液を、140℃で窒素下で夜通し還流させた。室温に冷やした後、それをセライト(登録商標) の短い詰め物を通し、トルエン及びDCMで洗った。一緒にした溶液を蒸発させ、残留物を溶離液としてヘキサン/DCM(7.5/2.5, v/v)を用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー、及びDCMからメタノールでの沈殿によって精製し、化合物3を白色粉末(3.2 g, 91%)として得た。
【0163】
〔化合物4の合成〕
【化35】

【0164】
m−キシレン(50 mL)中の(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)ジフェニルシラン(2.75 g, 5.44 mmol)、9H−3,9′−ビカルバゾール(1.81 g, 5.44 mmol)、Pd(dba)(0.10 g, 0.10 mmol)、SPhos(0.089 g, 0.22 mmol)、及びナトリウムt−ブトキシド(1.05 g, 10.88 mmol)の懸濁液を、140℃で夜通し加熱した。室温に冷やした後、それをセライト(登録商標) の短い詰め物を通し、トルエン及びDCMで洗った。一緒にした溶液を蒸発させ、残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(8/2, v/v)を用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物4を白色粉末(3.5 g, 85%)として得た。
【0165】
〔化合物5の合成〕
【化36】

【0166】
ジオキサン(300 mL)中の1−(3−ブロモ−9H−カルバゾール−9−イル)エタノン(13.80 g, 47.9 mmol)、4,4,4′,4′,5,5,5′,5′−オクタメチル−2,2′−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(14.59 g, 57.5 mmol)、酢酸カリウム(9.40 g, 96 mmol)、dppf(0.585 g, 0.958 mmol)、及びPd(dba)(0.877 g, 0.958 mmol)の混合溶液を、N下で夜通し還流させた。室温まで冷やした後、それを水(250 mL)で希釈し、EtOAc(3×70 mL)で抽出した。有機相を単離し、NaSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、残留物を、溶離液としてヘキサン/EtOAc(9/1, v/v)を用いてシリカ上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、それと同じ溶媒から再結晶して、1−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール−9−イル)エタノン(10.5 g, 65%)を白色結晶として得た。
【0167】
【化37】

【0168】
トルエン(100 mL)及び水(20 mL)中の1−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール−9−イル)エタノン(10.00 g, 29.8 mmol)、1,3−ジブロモベンゼン(17.59 g, 74.6 mmol)、Pd(PPh(0.689 g, 0.597 mmol)、及びKCO(12.37 g, 89 mmol)の混合溶液を、N下で夜通し還流させた。室温に冷やした後、有機相を単離し、溶媒を蒸発させた。残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(1/1, v/v)を用いてシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製して、1−(3−(3−ブロモフェニル)−9H−カルバゾール−9−イル)エタノン(2.5 g, 23%)を白色固体として得た。
【0169】
【化38】

【0170】
トルエン(180 mL)及び水(5 mL)中の1−(3−(3−ブロモフェニル)−9H−カルバゾール−9−イル)エタノン(2.50 g, 6.86 mmol)、9−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル−9H−カルバゾール(2.53 g, 6.86 mmol)、Pd(dba)(0.063 g, 0.069 mmol)、(SPhos)(0.056 g, 0.137 mmol)、及びKPO(4.74 g, 20.59 mmol)の混合溶液をN下で夜通し還流させた。室温に冷やした後、有機溶液を単離した。溶媒を蒸発させて、残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(1/1から1/4, v/v)を用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、1−(3−(3′−(9H−カルバゾール−9−イル)−[1,1′−ビフェニル]−3−イル)−9H−カルバゾール−9−イル)エタノン(3.2 g, 89%)を白色結晶として得た。
【0171】
【化39】

【0172】
THF(50 mL)、水(50 mL)、及びエタノール(50 mL)中の1−(3−(3′−(9H−カルバゾール−9−イル)−[1,1′−ビフェニル]−3−イル)−9H−カルバゾール−9−イル)エタノン(3.30 g, 6.27 mmol)及びKOH(3.5 g, 62.7 mmol)の混合溶液を1時間還流させた。室温まで冷やした後、それを水で希釈し、EtOAc(4×50 mL)で抽出した。有機画分を集め、NaSO上で乾燥させ、濃縮して、白色固体として3−(3′−(9H−カルバゾール−9−イル)−[1,1′−ビフェニル]−3−イル)−9H−カルバゾール(2.6 g, 86%)の沈殿物を生じさせた。
【0173】
【化40】

【0174】
キシレン(150 mL)中の3−(3′−(9H−カルバゾール−9−イル)−[1,1′−ビフェニル]−3−イル)−9H−カルバゾール(2.70 g, 5.57 mmol)、(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)ジフェニルシラン(2.82 g, 5.57 mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(1.071 g, 11.14 mmol)、Pd(dba)(0.102 g, 0.111 mmol)、及びSPhos(0.091 g, 0.223 mmol)の混合物溶液をN下で18時間還流させた。室温に冷やした後、10%NaHCOの水溶液(100 mL)を添加して1時間撹拌した。有機相を単離し、NaSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させて、残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(7/3, v/v)を用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物5(3.3 g, 65%)を白色粉末として得た。
【0175】
〔化合物6の合成〕
【化41】

【0176】
トルエン(150 mL)及び水(50 mL)中の(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)ジフェニルシラン(3.50 g, 6.71 mmol)、9−フェニル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール(2.478 g, 6.71 mmol)、KCO(1.9 g, 13.42 mmol)、及びPd(PPh(0.155 g, 0.134 mmol)の混合溶液を、N下で夜通し還流させた。室温に冷やした後、有機相を単離した。溶媒を蒸発させて、残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(4/1, v/v)を用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物6(3.3 g, 72%)を白色固体として得た。
【0177】
〔化合物7の合成〕
【化42】

【0178】
トルエン(30 mL)及び水(10 mL)中の(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)ジフェニルシラン(3.5 g, 6.92 mmol)、9−フェニル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール(2.56 g, 6.92 mmol)、Pd(dba)(0.127 g, 0.138 mmol)、SPhos(0.114 g, 0.277 mmol)、及びKCO(2.87 g, 20.77 mmol)の混合物を、夜通し100℃に加熱した。室温に冷やした後、有機相を単離した。溶媒を蒸発させて、残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(9/1, v/v)を用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物7(3.3 g, 72%)を白色固体として得た。
【0179】
〔化合物10の合成〕
【化43】

【0180】
ジオキサン(350 mL)中の3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾール(27.5 g,72.5 mmol)、4,4,4′,4′,5,5,5′,5′−オクタメチル−2,2′−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(36.8 g, 145 mmol)、Pd(dba)(0.664 g, 0.725 mmol)、SPhos(1.191 g, 2.90 mmol)、及び酢酸カリウム(17.80 g, 181 mmol)の混合溶液を、薄層クロマトグラフィーが完全な転化を示すまで110℃に加熱した。室温まで冷やした後、反応混合物をセライト(登録商標)の詰め物を通した。溶媒を蒸発させ、粗生成物を、溶離液としてヘキサン/EtOAc(97/3から96/4, v/v)を用いてシリカ上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、9−フェニル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール(10.4 g, 39%)を白色固体として得た。
【0181】
【化44】

【0182】
トルエン(500 mL)及び水(50 mL)中の3−ブロモ−9H−カルバゾール(6.75 g, 27.4mmol)、9−フェニル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール(12.15 g, 32.9 mmol)、Pd(dba)(0.251 g, 0.274 mmol)、SPhos(0.450 g, 1.097 mmol)、及びKPO(25.3 g, 110 mmol)の混合溶液を窒素下で10時間還流させた。室温に冷やした後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、食塩水で洗った。一緒にした有機溶液をNaSO上で乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させて粗生成物を得て、これをDCM/ヘキサン(1/1, v/v, 1200 mL)から再結晶して、9H,9′H−3,3′−ビカルバゾール(6.66 g, 59%)を黄色固体として得た。
【0183】
【化45】

【0184】
m−キシレン(50 mL)中の(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]チオフェン−4−イル)ジフェニルシラン(2.75 g, 5.27 mmol)、9−フェニル−9H,9′H−3,3′−ビカルバゾール(2.154 g, 5.27 mmol)、Pd(dba)(0.097 g, 0.105 mmol)、SPhos(0.087 g, 0.211 mmol)、及びナトリウムtert−ブトキシド(1.013 g, 10.55 mmol)の混合溶液を、窒素下で夜通し還流させた。室温に冷やした後、それをセライト(登録商標)の短い詰め物を通し、トルエン及びDCMで洗った。一緒にした溶液を蒸発させ、残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(3/1, v/v)を用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物10(3.7 g, 83%)を白色粉末として得た。
【0185】
〔化合物11の合成〕
【化46】

【0186】
m−キシレン(50 mL)中の(3−ブロモフェニル)(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)ジフェニルシラン(2.75 g, 5.44 mmol)、9−フェニル−9H,9′H−3,3′−ビカルバゾール(2.222 g, 5.44 mmol)、Pd(dba)(0.100 g, 0.109 mmol)、SPhos(0.089 g, 0.218 mmol)、及びナトリウムtert−ブトキシド(1.046 g, 10.88 mmol)の混合物を、窒素下で夜通し還流させた。室温に冷やした後、それをセライト(登録商標)の短い詰め物を通し、トルエン及びDCMで洗った。一緒にした溶液を蒸発させ、残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(3/1, v/v)を用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物11(3.6 g, 79%)を白色粉末として得た。
【0187】
比較例
〔比較化合物CC−1の合成〕
【化47】

【0188】
トルエン(200 mL)及び水(10 mL)中の4−(3−ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(7.15 g, 21.08 mmol)、9−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾール(7.78 g, 21.08 mmol)、SPhos(0.173 g, 0.422 mmol)、Pd(dba)(0.192 g, 0.211 mmol)、及びリン酸カリウム一水和物(9.71 g, 42.2 mmol)の溶液を、窒素下で夜通し還流させた。室温に冷やした後、有機相を単離し、乾燥するまで蒸発させた。残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(9/1から1/1, v/v)を用いてシリカゲル上でのカラムカラムクロマトグラフィー、ヘプタンからの再結晶、及び減圧下での昇華によって精製して、CC−1(6.4 g, 61%)を白色結晶として得た。
【0189】
〔比較化合物CC−2の合成〕
【化48】

【0190】
ジベンゾ[b,d]チオフェン(10 g, 54.3 mmol)をTHF(500 mL)に溶かし、その溶液を−78℃に冷やした。n−ブチルリチウム(40.7 mL, 65.1 mmol, ヘキサン中1.6 M)を次に滴下して添加した。混合物を次に室温まで温め、5時間撹拌した後、−78℃まで再度冷やした。別のフラスコ中で、ジクロロジフェニルシラン(4.5 mL, 21.7 mmol)を10mLのTHFに溶かして、反応混合物に滴下して添加し、これを次に夜通しで室温まで温めた。反応混合物をEtOH(10 mL)で失活させ、全ての溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物にDCM(200 mL)及び水(200 mL)を添加し、層が分離した。水層をさらにDCMで2回洗い、合わせた有機物を水及び食塩水で洗った。減圧下での溶媒の除去により、14.7gの灰白色固体が得られた。この粗生成物を、溶離液としてヘキサン/EtOAc(95/5〜90/10, v/v)を用いてシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、比較化合物CC−2(5.4 g, 45%)を白色固体として得た。
【0191】
〔比較化合物CC−3の合成〕
【化49】

【0192】
THF(50 mL)中の9−(3−ブロモフェニル)−9H−カルバゾール(5 g, 15.52 mmol)の溶液に、n−ブチルリチウム(9.7 mL, 15.5 mmol, ヘキサン中1.6 M)を−78℃で滴下して添加し、混合物を2時間、−78℃で撹拌した。別のフラスコ中で、ジクロロジフェニルシラン(1.5 mL, 7.1 mmol)を10mLのTHFに溶かして、反応混合物に滴下して添加し、これを次に夜通しで室温まで温めた。EtOAc(50 mL)及び水(50 mL)を添加し、層が分離した。水層をEtOAcでさらに2回洗い、一緒にした有機物を水及び食塩水で洗った。溶媒を蒸発させて、残留物を、溶離液としてヘキサン/DCM(7/3, v/v)を用いてシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー、ヘキサンからの再結晶、及び減圧下での2回の昇華(<10−5Torr)によって、CC−3(1.7 g, 33%)を白色結晶として得た。
【0193】
本明細書に記載した様々な態様は例示の目的であり、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した多くの物質及び構造は、本発明の精神から離れることなく、その他の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体的な例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、それは当業者には明らかである。本発明が何故機能するのかについての様々な理論は限定することを意図していないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物:
【化1】

式中、Ar及びAr′は独立に、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾフランからなる群から選択され、これらは任意選択によりさらに置換されていてもよく;
ZはSi及びGeから選択され;
Lは単結合であるか、又はアリール、アミノ、もしくはこれらの組み合わせを含み;
Lは任意選択によりさらに置換されていてもよく;
AはZに直接結合した基であり、且つ、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、アザジベンゾセレノフェン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、これらは任意選択により、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、前記置換は任意選択により、Zに直接結合した基と縮合していてもよく;且つ、
Bは、カルバゾール、アザカルバゾール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される基を含み、それらは任意選択で、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、且つ前記置換は任意選択により前記カルバゾール又はアザカルバゾール基と縮合していてもよい。
【請求項2】
Aが以下のもの:
【化2】

からなる群から選択され、Bが以下のもの:
【化3】

からなる群から選択され、
及びYは独立に、O、S、及びSeからなる群から選択され、
〜X10は独立にCR′及びNからなる群から選択され、各ベンゾ環は多くても1つのNを含み;
R′は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され;且つ、
Rは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アミノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Lが以下のもの:
【化4】

からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Lが単結合である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Lが、Zに直接結合した少なくとも1つのフェニルを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Ar及びAr′がフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Ar、Ar′が独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化5】

【化6】

【請求項9】
有機発光デバイスを含み、さらには、アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードの間に配置され、下記式を有する化合物を含む有機層を含む、第一のデバイス。
【化7】

式中、Ar及びAr′は独立に、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾフランからなる群から選択され、これらは任意選択によりさらに置換されていてもよく;
ZはSi及びGeから選択され;
Lは単結合であるか、又はアリール、アミノ、もしくはこれらの組み合わせを含み;
Lは任意選択によりさらに置換されていてもよく;
AはZに直接結合した基であり、且つ、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、アザジベンゾセレノフェン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、これらは任意選択により、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールセレノ、ピリジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ニトリル、イソニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、且つ前記置換は任意選択により、Zに直接結合した基と縮合していてもよく;
Bは、カルバゾール、アザカルバゾール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される基を含み、それらは任意選択で、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよく、且つ前記置換は任意選択により前記カルバゾール又はアザカルバゾール基と縮合していてもよい。
【請求項10】
前記有機層が発光層であり、且つ、式Iの化合物がホストである、請求項9に記載の第一のデバイス。
【請求項11】
前記有機層がさらに発光ドーパントを含む、請求項9に記載の第一のデバイス。
【請求項12】
前記発光ドーパントが以下のものからなる群から選択される少なくとも1つの配位子を有する遷移金属錯体である、請求項11に記載の第一のデバイス。
【化8】

【化9】

式中、R、R、及びRはモノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ;
、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され;且つ
、R、及びRのうちの2つの隣接置換基は任意選択により結合して縮合環を形成していてもよい。
【請求項13】
前記発光ドーパントが下記式を有する、請求項9に記載の第一のデバイス。
【化10】

Dは5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり;
、R、及びRは独立に、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表し;
、R、及びRのそれぞれは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され;
は任意選択により環Dに連結していてもよく;
nは1、2、又は3であり;且つ、X−Yは別の配位子である。
【請求項14】
非発光層である第二の有機層をさらに含み、且つ、式Iを有する前記化合物が第二の有機層中の物質である、請求項9に記載の第一のデバイス。
【請求項15】
前記第二の有機層が阻止層であり、且つ、式Iを有する前記化合物が前記第二の有機層中の阻止性物質である、請求項14に記載の第一のデバイス。
【請求項16】
前記第二の有機層が電子輸送層であり、且つ、式Iを有する前記化合物が前記第二の有機層中の電子輸送物質である、請求項9に記載の第一のデバイス。
【請求項17】
消費者製品である、請求項9に記載の第一のデバイス。
【請求項18】
有機発光デバイスである、請求項9に記載の第一のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28605(P2013−28605A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−166816(P2012−166816)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】