説明

燻蒸施設

【課題】本発明は、燻蒸剤を無駄にすることなく、また季節および天候に左右されることなく、安定して効率的に被燻蒸物を燻蒸することができる施設を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、気密構造の建屋、その中に設けられた気密構造の内部テントおよび換気装置からなり、内部テント内で車輌を燻蒸する燻蒸施設である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燻蒸施設に関する。さらに詳しくは車輌や食品貨物を燻蒸することができる燻蒸施設に関する。
【背景技術】
【0002】
燻蒸は、植物等に付着した有害生物を無害化することを目的として行われている。また近年、輸出する中古車を燻蒸することを要求する国がある。特に、独自の生態系を有するオセニア諸国では、燻蒸について独自の厳格な基準を設けている。また最近、食品の安全性の点から、有毒な燻蒸剤の使用が敬遠され、無毒でかつ有害生物を無害化できる二酸化炭素による燻蒸が脚光を浴びてきている。
中古車を燻蒸するには、青果物の燻蒸を主に行なう従来型の倉庫を使用することも可能である。しかし、従来型の倉庫は貨物の収容量を多くするため天井が約6m程度で高く、倉庫内に車輌を並べて燻蒸すると倉庫のほとんどの空間部分は無駄になり、薬剤コストの損失が大きいという欠点がある。
また、倉庫に車輌を積み重ねて燻蒸することも可能であるが、特別なラックを作って積み重ねなければならず、ラックの費用、車輌の搬出入に伴う作業性の悪さから実現性に乏しい。
【0003】
また、倉庫燻蒸においては、水分を含有している植物を主な対象とするため、ガス吸着が少なく、倉庫燻蒸用に設置されているガス排気設備は一般に排気能力が小さい。一方、車輌燻蒸においては水分を含まない発泡ウレタン、ゴム、皮などを対象とし、これらは燻蒸ガスと親和性が強く、脱着した場合、高濃度の燻蒸ガスを排出する恐れがある。この脱着ガスを従来の倉庫の排気設備で脱着させるには時間を要する。また外気温度の変化により脱着時間のバラツキが生じ、燻蒸のタイムスケジュールを組むことが難しく実用性に乏しい。特に、低温時においてはこの欠点が極めて顕著となる。また、倉庫には定温にコントロールする空調設備が付いている倉庫はあっても加温設備はない場合が多く、車輌に吸着したガスを脱着するには長時間を必要とする。
【0004】
倉庫燻蒸以外の方法として、従来から木材について行なわれているテント燻蒸がある。テント燻蒸は、無駄な空間が省けて薬剤の無駄が無く、荷役の作業性もよい。車輌についてもテント燻蒸を行なうと、燻蒸空間スペースが少なくて済み、燻蒸コストが安価になり、燻蒸に伴う車輌の移動もスムーズにできて作業性もよいとういう利点がある。
しかし、大量の車輌を並べてテント燻蒸するとき、車輌を傷つけずに、数十メートル四方のプラスチックシートを被せるには、車輌に保護カバーをかける必要がある。また。テントの裾にはガスが漏れないようにテントの周囲全体に砂嚢等を3列以上並べて、テント裾を押さえておく必要がる。従って、テント燻蒸には相当数の作業人数を必要とし、人件費が高くなるという欠点がある。
【0005】
さらに、車輌燻蒸する際には、輸入国で決められた燻蒸の最低温度である11℃を維持する必要があるが、24時間程度かかる燻蒸の間に外気温度が11℃を下回る季節になると燻蒸できなくなる。
このため、テント内を加温する設備を必要とする。しかし、車輌、燻蒸土場を加温するには、時間がかかり、またテントからの放熱も大きく加温コストが極めて高く付く欠点がある。
さらに、テント燻蒸においても脱着用の加温設備がなく、天幕ガスの脱着は、テントを除去して自然脱着に任せざるを得ない。このため天候に左右され脱着時間に見通しが立たず、大量の車輌を燻蒸する際には、タイムスケジュールを組むことができず実用性がほとんどない。
【0006】
一方、二酸化炭素による燻蒸で有害生物を無害化する条件は密閉空間で二酸化炭素濃度が40%以上、燻蒸時間(ガス濃度保持時間)が10〜20日、燻蒸温度が20〜40℃である。
この条件は、通常の燻蒸剤濃度の約2000倍と極めて高く、また燻蒸日数も通常の燻蒸剤の約3〜10倍と長い。従って、この条件を満足する従来型の倉庫は特A級倉庫(ガス保有率85%以上)である。しかし、この倉庫でもガス濃度を保有するのが難しく実用化を困難にしている。また、長時間の温度維持も実用化の弊害になっている。
【0007】
また、テント燻蒸も考えられるが前記のごとく二酸化炭素の燻蒸条件が苛酷で、50m程度の小規模のテント燻蒸では床用シートを敷いて、その上から被覆テントを被せて被覆テントと床用シートを熱溶着したり、ガスシール用ファスナーを使用して、ガスを保有する方法が取られている。しかし、この方法は床用シートが破れやすいため、貨物を積み重ねる際の作業性が極めて悪く、大量貨物の燻蒸には実用性に乏しい。また高価なガスシール用ファスナーを使用すると被覆資材コストが高くなるという欠点がある。
以上のように車輌を燻蒸する場合、倉庫燻蒸の最大の欠点は、倉庫における車輌の収容率が極めて悪いため無駄な燻蒸剤の消費によって、薬剤コストが高く付くという点である。また、テント燻蒸は、季節および天候に左右され、安定したタイムスケジュールどおりの燻蒸ができない欠点がある。このため両者とも車輌燻蒸に用いるのは難しい。
【0008】
また、二酸化炭素による燻蒸の場合、倉庫燻蒸において最大の欠点は、極めて高濃度の二酸化炭素を長時間保有することができる倉庫が皆無に近い。また、テント燻蒸は貨物を積み重ねる際の作業性が極めて悪く大量貨物には実用性に乏しい欠点がある。このため両者とも二酸化炭素燻蒸に用いるのは難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、食品貨物のみならず車輌の燻蒸にも使用することができる燻蒸施設を提供することにある。また本発明の目的は、二酸化炭素燻蒸にも用いることのできる機密性高い燻蒸施設を提供することにある。
具体的には、本発明の目的は、空間部分を有効に利用することができ、燻蒸剤を無駄にすることなく、効率的に多数の車輌を燻蒸することができる設備を提供することにある。
【0010】
また本発明の目的は、断熱性に優れ、季節および天候に左右されることなく、安定して被燻蒸物を燻蒸することができる施設を提供することにある。
【0011】
さらに本発明の目的は、密閉性に優れ、高濃度の燻蒸ガスを長時間保有することができる燻蒸設備を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、被燻蒸物に吸着された燻蒸ガスを短時間に安全な濃度まで脱着できる施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、これらの目的を達成せんとして鋭意研究をかさねた結果、建屋の中に被燻蒸物を収納できる程度の高さを有する内部テントを設置し、その中で被燻蒸物を燻蒸すると、空間および燻蒸剤を無駄にすることなく効率的に燻蒸を行うことができることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
また、本発明者は、建屋とテントとの二重構造とすることにより、季節による気温変動に影響されることなく燻蒸温度を制御できることを見出し、本発明を完成した。
また、本発明者は、内部テントを水シールすることにより高濃度の二酸化炭素を長時間保有することができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、建屋、その中に設けられた内部テントおよび換気装置からなり、内部テント内で被燻蒸物を燻蒸する燻蒸施設である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の燻蒸施設は、内部空間を有効に利用することができ、燻蒸剤を無駄にすることなく、効率的に被燻蒸物を燻蒸することができる。
本発明の燻蒸施設は、建屋と内部テントとの二重構造を有するので、断熱性に優れ、季節および天候に左右されること無く、安定して被燻蒸物を燻蒸することができる。
本発明の燻蒸施設は、密閉性に優れ、高濃度の燻蒸ガスを長時間保有することができる。
さらに本発明の燻蒸施設は、被燻蒸物に吸着された燻蒸ガスを短時間に安全濃度まで脱着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(建屋)
建屋は、その内部に内部テントを設置できる構造であればよく、構造に特に制限はない。建屋は、風雨、地震などの自然災害に耐え、気密性を有する。建屋はシート、ステートまたはこれら組合せ、並びに支柱からなることが好ましい。建屋は、支柱およびシートよりなるテントであってもよい。シートは難燃シートが好ましい。建屋は、支柱およびスレートより構成された鉄骨スレ−トであってもよい。
建屋は、内部テントを1張り以上設置できる大きさであればよく、内部テントを2張り以上設置できる大きさが好ましい。従って、建屋は、高さ2〜5m、横10〜20m、長さ40〜80mであることが好ましい。建屋は、内部テントの加温を有利に行なうため、天井から太陽熱を取り入れることができる構造であることが好ましい。即ち、天井の少なくとも一部の材質は、太陽光が通りやすい透明に近い材質であることが好ましい。また、建屋の内部壁面に温水管を設置することが好ましい。
【0017】
(内部テント)
内部テントは、底面のない、長方体や立方体などの平行6面体の形状であることが好ましい。図2および図3により、内部テントを説明する。図2は内部テントの一例の斜視図である。図3は、内部テントの一例の展開図である。
内部テントは、図2に示すように、天井部(3)、対向する2つの開閉部(4)および対向する2つの側面部(5)よりなることが好ましい。内部テントは、図3に示すように、天井部(3)の周辺に、対向する2つの開閉部(4)および対向する2つの側面部(5)を一体のシートで切れ目なく形成することが好ましい。天井部(3)の周辺には、フックを取り付け、建屋内で、蚊帳のごとくロープ、ワイヤー、鎖等で吊り下げる構造が好ましい。吊り下げる構造とすることで、燻蒸する車輌または食品貨物の高さに合わせて、天井の高さを調節することが可能となり、無駄なく燻蒸空間を削減することができる。
開閉部(4)は、車輌または食品貨物の搬入および搬出のため、上下に開閉することが好ましい。このため、各開閉部(4)と各側面部(5)との間にはヒダ(7)を有することが好ましい。ヒダは、開閉部(4)の上下の開閉を可能にし、かつ高価な気密用ファスナーを使用せず気密性も担保する。
【0018】
建屋床面と内部テントとの気密性は、建屋床面と内部テントの裾部(8)とを砂嚢、水管等で密閉することにより形成することができる。内部テントの裾部(8)に対応する建屋床面に水溝(6)を設け、内部テントの裾部(8)を水溝(6)の中に入れ、機密性を確保することが好ましい。内部テントの裾部(8)に、金属棒、鎖、錘等の重量物を取り付け水溝(6)に入れることが好ましい。水溝(6)に入れる内部テントの裾部(8)の深さは10cm以上が好ましい。10cmより浅いと燻蒸剤のガス圧および温度による空気膨張により天幕が膨らんでガス漏れを起こす危険性がある。また、水溝に入れる内部テントの裾部の深さが10cm以上であっても気密性は変わらない。
内部テントはガスバリアー性のシートで作られていることが好ましい。シートの燻蒸ガスの透過量は20mg/m・hr以下であり、またシートの厚みは0.03〜0.5mmであり、シートの強度は、引張り強度が15〜220MPa、破断伸度が5〜500%、引き裂き強度が20N以上であることが好ましい。
【0019】
かつシートの強度は引張り強度が15〜220MPa、破断伸度が5〜500%、引き裂き強度は20N以上で加工されている天幕が好ましい。シートの燻蒸ガスの透過量が20mg/m・hrより大きいと燻蒸効果が悪くなり好ましくない。シートの厚みは0.03mm〜0.5mmで、シートの厚みが0.03mm未満であると燻蒸ガスの透過量が大きくなり、また破れやすく、かつ配管を取り付けるフランジの加工が難しくなる。また、0.5mmを超えると天幕の重量が重く好ましくない。シートの強度は引張り強度が15〜220MPaで引張り強度が15MPa未満であると破れやすく、220MPaを超えると汎用シートでなくなりコスト高になる。破断伸度が5%未満であると破れやすく、500%を超えると汎用シートでなくなりコスト高になる。引き裂き強度が20N未満であると破れやすくなり好ましくない。
【0020】
従って、内部テントは、建屋内で吊り下げられ、内部テントの裾部は、内部テントの裾部に対応する建屋床面に設けられた水溝に入れられ、水溝中の水により内部テントの気密が保たれていることが好ましい。また内部テントは、(i)天井部、(ii)対向する2つの開閉部および(iii)対向する2つの側面部よりなり、各開閉部と各側面部との間にはヒダを有し、開閉部は上下に開閉することが好ましい。
内部テントの大きさは、車輌の場合、高さが約2.5m程度で、乗用車を約20〜30台収容できる大きさが好ましい。従って、高さ2〜2.5m、横8〜5m、長さ35〜75mであることが好ましい。食品貨物の場合は、高さが4〜5mで、貨物の形態に応じた大きさが好ましい。
【0021】
(換気装置)
本発明の燻蒸施設は、換気装置を有する。換気装置は、内部テント内のガスを吸入排気する装置である。内部テントのガスを吸入排気できるように、内部テントおよび換気装置が導管で連結されていることが好ましい。建屋内に複数の内部テントを有する場合には、各内部テントは、導管で連結され換気装置に繋がっていることが好ましい。また換気装置は、外部の新鮮な空気をバイパスから取り入れて燻蒸ガスを希釈排気できることが好ましい。
【0022】
(加温装置)
本発明の燻蒸施設は、内部テント内の温度を保持する加温装置を有することが好ましい。内部テント内のガスが加温装置を介して循環できるように、内部テントおよび加温装置が導管で連結されていることが好ましい。
【0023】
(被燻蒸物)
被燻蒸物として、車輌、食品貨物、輸出梱包材などが挙げられる。車輌として、乗用車、バス、オートバイ、トラック、RV車、ライトバンなどが挙げられる。食品貨物とは、ダンボール箱、紙袋、布袋、通気性包装袋、フレコンバック、コンテナなどに入っている、農産物、海産物、これらの加工食品および漢方薬などである。本発明の燻蒸施設は、輸出梱包材および文化財の燻蒸にも使用される。燻蒸の対象となる有害生物として、昆虫網、クモ類などの節足動物、アフリカマイマイ、カタツムリ類などの軟体動物が挙げられる。
【0024】
(燻蒸方法)
本発明は、前述の燻蒸施設で燻蒸することからなる被燻蒸物の燻蒸方法を包含する。
燻蒸は、車輌の場合、車輌の搬入、投薬、排気、脱着、車輌の搬出の順に行うことができる。また食品貨物の場合、食品貨物の搬入、投薬、排気、食品貨物の搬出の順に行なうことができる。
燻蒸剤として、臭化メチル、炭酸ガス、リン化水素、フッ化スルフリルおよびこれらの混合剤が使用できる。車輌の燻蒸剤には臭化メチル剤または臭化メチルおよびフッ化スルフリル混合剤が挙げられる。食品燻蒸には炭酸ガスが好ましいがリン化水素、フッ化スルフリルも使用できる。
投薬は、ボンベより直接投薬できるが、燻蒸剤の気化装置を使って行うことが好ましい。また投薬は、内部テントからもできるが、建屋の外側から導管を使って投薬することが好ましい。排気は内部テント内のガスを吸入排気することにより行うことができる。脱着は加温しながら吸入排気したり、加温しながらガスを循環させることにより行うことができる。
【0025】
車輌の燻蒸において、初期に吸着したガスは、吸入排気のみで比較的短時間(4時間以内)に脱着できるが、これ以降に吸着したガスを安全な濃度(燻蒸ガスの許容濃度まで)まで脱着するには極めて長い時間(5〜7日)を要する。従って、短時間(2〜3日)に安全な濃度まで脱着するには、吸入排気と加温循環を間歇的に行なうことが好ましい。吸入排気と加温循環を間歇的に行なうことにより脱着効果を極めて効率的の高めることができる。この吸入排気の温度条件は15〜25℃が好ましい。15℃未満では温度による脱着効果が悪く、25℃を超えると脱着効果にそれほど差がなくなり熱量コストが無駄になる。脱着時間は4〜12時間が好ましい。脱着時間が4時間未満では脱着効果が悪く、12時間を超えると脱着効果にそれほど差がなくなり時間が無駄となる。加温循環の温度は30℃〜40℃が好ましい。温度が30℃未満では低残留ガスの脱着効果が悪く、40℃を超えると脱着効果にそれほど差がなくなり熱量コストが無駄となる。間歇回数は2回〜4回が好ましい。2回未満では低残留ガスの脱着効果が悪く、4回を超えると、脱着効果にそれほど差がなくなり脱着時間および熱量コストが無駄となる。
【実施例】
【0026】
〈実施例1〉
1.燻蒸施設を以下のようにして作製した。
(建屋)
ターポリンシート(カボロンターポリン、厚さ:0.35mm、カンボウプラス(株)製)で建設した建屋(1)(長さ:6,300mm、幅:4,600mm、高さ:2,700mm)の骨材の4隅にフックを取り付けた。また、この建屋(1)の床に、建屋(1)の周辺と平行で長辺の長さが4,800mm、短辺の長さが2,100mmの長方形で、幅250mm、深さ300mmの水溝を掘った。水溝には水を満たした。
(内部テント)
次に、燻蒸用のビニールシート(透明塩化ビニールシート、厚み:0.15mm)で図1〜3に示す内部テント(2)を作製した。即ち、ビニールシートを高周波溶熱で天井部(3)、2つの側面部(5)および2つの開閉部(4)の間にヒダ(7)を取り付けて内部テント(2)(長さ:4,800mm、幅:2,100mm、高さ:2,500mm)を作製した。
内部テント(2)の対向する2つの側面部(5)の裾部の3ヶ所および対向する開閉部(4)の裾の2ヶ所に錘を取り付けた。作製した内部テント(2)は、建屋(1)内に4隅をロープで吊るして固定し、対向する2つの側面部分(5)および2つの対向する開閉部(4)の裾部の錘は建屋に掘っている水溝に漬けた。
(換気装置等)
次に、内部テント(2)には外部から空気を取り入れるダンパー付空気吸入口および燻蒸ガスを排気するダンパー付き排気ダクトを取り付け、これにブロワー(シロッコファン:FS−400、昭和電機(株)製)を接続した。
内部テント内に床置型エアコン(S40FVV−W、0.9〜7.7KW、ダイキン工業(株)製)および外部から燻蒸ガスを投薬する配管を設置した。
【0027】
(測定器具)
ガス濃度測定器は、内部テント内の対角線に燻蒸ガス濃度測定配管(内径:4mm、テフロン(登録商標)製)を上部(1)と下部(2)の空間に2箇所および乗用車の上部(3)、下部(4)の2箇所に取り付けた。温度測定器は、自記記録温度計(おんどとり:TR−72S、Thermo Recorder製)を内部テントの外および内部テント内にそれぞれ1箇所取り付けた。また、殺虫効果はガス濃度効果判定用にヒラタコクヌストモドキ成虫100頭を200メッシュ金網付き蓋の容器に入れ、車座席シートの上に設置して評価した。
【0028】
2.乗用車の燻蒸
次に、内部テント(2)の開閉部(4)の一方をロープで吊るしてシートを開けて固定し、乗用車1台(ファミリーカー:1,500cc、長さ:4,365mm、幅:1,695、高さ:1,410mm、マツダ(株)製)の窓を開けて搬入した。その後、内部テントの開閉部(4)の開いているシートを閉めて水溝に漬けて内部テント(2)を密閉した。
次に、加温機(エアコン)の電源を入れて稼動した。燻蒸ガスの臭化メチルは、臭化メチルボンベ(10kg入り、池田興業(株)製)と気化器(温水式、テクノ化成(株)製)を導管で接続し、建屋(1)の外から内部テント(2)の燻蒸ガス投薬配管を通して導入した。内部テント内の温度が25℃になったら、空気取り入れ口ダンパーと燻蒸ガス排気ダクトダンパーを閉とし、臭化メチルボンベを計量器(50kg台秤、DS−50S、三田計器社会社製)で計量し、1.8kg(天幕容積単位薬量:72g/m)を気化投薬した。
投薬終了後、25℃を保って24時間燻蒸した。燻蒸中、各箇所に取り付けているガス濃度測定配管から臭化メチルガス濃度を経時的に高濃度測定器(オプティカルガス濃度計、F1−21型、理研計器(株)製)で測定した。
【0029】
3.排気
燻蒸終了後、空気取り入れ口のダンパーを開とし、次に排気ダクトのダンパーを開とし、ブロワーを稼動して内部テント内の臭化メチルガスを排気した。内部テント内および車内のガス濃度が抑制濃度(15ppmm)以下になったら排気を終了した。殺虫効果は、車内に設置していた供試虫を容器から取り出し、25℃、70%の容器に24時間保管した後、供試虫の動きを肉眼で観察し、生死の判定を行なう。未処理区の供試虫はテント建屋の中に24時間放置し、供試虫と同様に生死の判定を行った。
【0030】
内部テントおよび車内の臭化メチル濃度の測定結果を表1に示す。殺虫効果を表2に示す。内部テント内の温度および屋外の温度の測定結果を表3に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
〈比較例1〉
1.燻蒸テントを以下のようにして作製した。
実施例1と同じ日時に、アスファルト舗装の上に乗用車1台(ファミリーカー:1500cc、長さ:4,365mm、幅:1,695mm、高さ:1,410mm、マツダ(株)製)の窓を開けて置いた。この乗用車に枠組みを作り、実施例1で用いた燻蒸用のビニールシートと同じ材質のシート(長さ:4,800mm、幅:2,100mm、高さ:2,500mm)を被せ燻蒸テントとした。燻蒸テントの裾部は、砂嚢(長さ:60cm、幅:15cm、重さ:約5kg)を3列に置いて密閉した。
次に、燻蒸テントに、外部から空気を取り入れるダンパー付空気吸入口および燻蒸ガスを排気するダンパー付き排気ダクトを取り付け、これにブロワー(シロッコファン:FS−400、昭和電機(株)製)を接続した。次に、床置型エアコン(S40FVV−W、0.9〜7.7KW、ダイキン工業(株)製)および外部からの投薬配管を設置した。
【0035】
(測定器具)
ガス濃度測定器は、燻蒸テント内の対角線に燻蒸ガス濃度測定配管(内径:4mm、テフロン(登録商標)製)を上部(1)と下部(2)の空間に2箇所および乗用車の上部(3)、下部(4)の2箇所に取り付けた。温度測定器は、自記記録温度計(おんどとり:TR−72S、Thermo Recorder製)を燻蒸テントの外および燻蒸テント内にそれぞれ1箇所取り付ける。また、ガス濃度効果は、ヒラタコクヌストモドキ成虫100頭を200メッシュ金網付き蓋の容器に入れ、車座席シートの上に置いて評価した。
【0036】
2.乗用車の燻蒸
加温機の電源を入れて稼動した。燻蒸テント内の温度が25℃になった後、臭化メチルボンベを計量器(50kg台秤、DS−50S、三田計器社会社製)で計量し、1.8kg(天幕容積単位薬量:72g/m)を気化投薬した。臭化メチルは、臭化メチルボンベ(10kg入り、池田興業(株)製)と気化器(温水式、テクノ化成(株)製)を導管で接続し、燻蒸ガス投薬配管を通して燻蒸テントに導入した。
投薬終了後、25℃を保って24時間燻蒸した。燻蒸中、各箇所に取り付けているガス濃度測定配管から臭化メチルガス濃度を経時的に高濃度測定器(オプティカルガス濃度計、F1−21型、理研計器(株)製)で測定した。
【0037】
3.排気
燻蒸終了後、実施例1と同様にガスを排気し、実施例1と同様に殺虫効果を判定した。燻蒸テントおよび車内の臭化メチル濃度の測定結果を表4に示す。殺虫効果を表5に示す。燻蒸テント内の温度および屋外の温度の測定結果を表6に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
(考察)
1.燻蒸ガス濃度について
実施例1において、燻蒸ガス濃度は、投薬30分で内部テント内および車内の何れの位置もほとんど均一になった。また、燻蒸初期から燻蒸終了までの濃度低下は比較例1に比べ極めて少なかった。この結果より本発明の燻蒸施設のガスの保有性が極めて優れていることが分かる。
2.殺虫効果について
実施例1において、供試したヒラタコクヌストモドキ成虫が全て完全殺虫した。この結果より、本発明の燻蒸施設のガス保有が極めて優れ、殺虫効果に優れていることが分かる。
3.燻蒸温度について
屋外温度が低下しても、建屋(1)内に内部テント(2)を設置すると、内部テント(2)の内温度は、屋外に設置した燻蒸テント(比較例1)に比べ内温の下がり方は低かった。この結果より、建屋(1)内に内部テント(2)を設置したことによる保温効果があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の燻蒸施設は、簡便な装置で多数の車輌または食品貨物を燻蒸することができるので、中古車の輸出産業に大きく寄与できる。また大量の食品貨物を安心・安全に供給することに大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の燻蒸施設の一例の略図である。
【図2】内部シートの一例の略図である。
【図3】内部シートの一例の展開図である。
【符号の説明】
【0044】
1 建屋
2 内部テント
3 天井部
4 開閉部
5 側面部
6 水溝
7 ヒダ
8 裾部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋、その中に設けられた内部テントおよび換気装置からなり、内部テント内で被燻蒸物を燻蒸する燻蒸施設。
【請求項2】
内部テントは、建屋内で吊り下げられ、内部テントの裾部は、内部テントに対応する建屋床面に設けられた水溝中に入れられ、水溝中の水により内部テントの機密性が保たれている請求項1記載の燻蒸施設。
【請求項3】
内部テントは、天井部、対向する2つの側面部および対向する2つの開閉部よりなり、各開閉部と各側面部との間にはヒダを有し、開閉部は上下に開閉する請求項1記載の燻蒸施設。
【請求項4】
内部テントは、ガスバリアー性のシートで、シートの燻蒸ガスの透過量が20mg/m・hr以下であり、シートの厚みは0.03〜0.5mmであり、シートの強度は引張り強度が15〜220MPa、破断伸度が5〜500%、引き裂き強度が20N以上である請求項1記載の燻蒸施設
【請求項5】
建屋は、シート、スレートまたはこれら組合せ、並びに支柱からなる請求項1記載の燻蒸施設。
【請求項6】
建屋は、天井から太陽熱を取り入れることができる構造である請求項1記載の燻蒸施設。
【請求項7】
換気装置は、内部テント内のガスを吸入排気する装置である請求項1記載の燻蒸設備。
【請求項8】
内部テント内の温度を保持する加温装置を有する請求項1記載の燻蒸設備。
【請求項9】
内部テント内のガスが、加温装置を介して循環できるように、内部テントおよび加温装置が導管で連結されている請求項1記載の燻蒸施設
【請求項10】
被燻蒸物が、車輌または食品貨物である請求項1記載の燻蒸施設。
【請求項11】
請求項1記載の燻蒸施設で燻蒸することからなる被燻蒸物の燻蒸方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−131614(P2007−131614A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253929(P2006−253929)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(503235813)テクノ化成株式会社 (3)
【Fターム(参考)】