説明

爪およびその周囲の外観の改善剤組成物

【課題】 経口投与により爪及びその周囲の外観を改善するための組成物を提供する。
【解決手段】 L−アスコルビン酸2−グルコシド、N−アセチルグルコサミンおよびコラーゲンペプチドを含有する、経口投与される爪及びその周囲の外観の改善剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪およびその周囲の外観を改善するための組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
爪は、指先を保護し、手・足の機能に欠かすことができない重要な役割を担っているが、それのみならず審美的にも大きな役割を果たしている。爪を美しく見せるために、マニュキュアにより爪を彩ることも広く行われているが、爪および甘皮を含む爪周囲の皮膚が丈夫で美しいことが、マニュキュアの有無にかかわらず美しい指先の前提条件となる。
【0003】
爪およびその周囲の外観を改善するため、爪およびその周囲の保湿や栄養補給のための種々の化粧品が知られており、また新たな処方が種々提案されている(例えば特許文献1〜3)。一方経口投与により爪の外観を改善するため、アミノ酸類、タンパク質類、ビタミン類、コラーゲン類、ミネラル類を配合したサプリメント類も知られている。経口投与による爪外観の改善のための処方として、開発途上のものもある(特許文献4および5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−127358
【特許文献2】特開2006−182674
【特許文献3】特開2004−123638
【特許文献4】特表2006−514055
【特許文献5】特表平10−508313
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、爪およびその周囲の外観を改善するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、L−アスコルビン酸2−グルコシド、N-アセチルグルコサミンおよびコラーゲンを含有する、経口投与される爪及びその周囲外観の改善剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物を経口摂取することにより、爪およびその周囲の審美的外観が改善される。ここで改善される審美的外観には、爪表面のつやの向上、爪の強化、爪のしわの防止甘皮の強化およびさかむけの防止等が含まれる。本発明の組成物は特に、爪の表面の凸凹、縦筋を解消し、滑らかな外観の爪を得るために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】モニターYの本発明の組成物摂取前の左手親指爪部の写真である。
【図1B】モニターYの本発明の組成物3ヶ月摂取後の左手親指爪部の写真である。
【図2A】モニターYの本発明の組成物摂取前の左手人差し指爪部の写真である。
【図2B】モニターYの本発明の組成物3ヶ月摂取後の左手人差し指爪部の写真である。
【図3A】モニターTの本発明の組成物摂取前の左手人差し指爪部の写真である。
【図3B】モニターTの本発明の組成物3ヶ月摂取後の左手人差し指爪部の写真である。
【図4A】モニターNの本発明の組成物摂取前の左手人差し指爪部の写真である。
【図4B】モニターNの本発明の組成物3ヶ月摂取後の左手人差し指爪部の写真である。
【図5A】モニターINBの本発明の組成物摂取前の親指爪部の写真である。
【図5B】モニターINBの本発明の組成物1ヶ月摂取後の親指爪部の写真である。
【図5C】モニターINBの本発明の組成物2ヶ月摂取後の親指爪部の写真である。
【図5D】モニターINBの本発明の組成物3ヶ月摂取後の親指爪部の写真である。
【図6A】モニターKDの本発明の組成物摂取前の親指爪部の写真である。
【図6B】モニターKDの本発明の組成物1ヶ月摂取後の親指爪部の写真である。
【図6C】モニターKDの本発明の組成物2ヶ月摂取後の親指爪部の写真である。
【図6D】モニターKDの本発明の組成物3ヶ月摂取後の親指爪部の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物は有効成分として、L-アスコルビン酸2−グルコシド、N−アセチルグルコサミンおよびコラーゲンペプチドを含有する。
【0010】
本発明において用いられるL−アスコルビン酸2−グルコシドは、L−アスコルビン酸にグルコースが結合した安定型ビタミンCとして知られる化合物であり、化粧品や食品に広く利用されている。下記の構造式で示される化合物である:
【化1】

L−アスコルビン酸2−グルコシドは1994年に医薬部外品(美白用化粧品主剤)として、また2004年には食品添加物(栄養強化剤)として、承認を受けている。本願発明において、L−アスコルビン酸2−グルコシドとしては「アスコフレッシュ(登録商標)」(株式会社林原生物化学研究所製)として市販されているものを用いてもよい。
【0011】
本発明において用いられるN−アセチルグルコサミンとしては化学合成されたものであっても生物材料から得られたものであってもよい。生物材料から得られる物である場合、その起源は特に限定されないが、例えば、カニやエビなどの甲殻類から得られたキチンを原料として、特公平5−33037号公報、特開2000−281696号公報等に記載されている方法にしたがって得ることができる。
【0012】
すなわち、カニ、エビなどの甲殻類の殻から調製された多糖類キチンを、酸で部分加水分解して得られるN−アセチルキトオリゴ糖含有混合物に、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素(例えば、リゾチウム、キチナーゼ、キトビアーゼ等)を作用させて分解する方法等により得ることができる。このようにして得られたN−アセチルグルコサミンは化学合成を行っていない天然型であるため、食品としてより安全に摂取することができる。なお、上記のようにして製造された天然型のN−アセチルグルコサミンは市販されており、例えば、商品名「マリンスウィート」(焼津水産化学工業株式会社製)、商品名「Bio−NAG」(ビーエイチエヌ株式会社)などを用いることができる。
【0013】
本発明において用いられるコラーゲンペプチドとは、コラーゲンをタンパク加水分解酵素等で処理して得られるペプチドであり、平均分子量(数平均分子量)が1,000〜10,000のものが好ましく用いられる。原料(コラーゲン)の起源は特に限定されないが、安全性の高い魚類由来のコラーゲンであることが好ましい。
【0014】
本発明においては、遊離アミノ酸含量1質量%以下、ヒ素含量2ppm以下である魚類由来コラーゲンペプチドが好ましく用いられる。このようなコラーゲンペプチドは、特開2003−238597号公報に記載されている方法にしたがって得ることができる。すなわち、例えば、カツオ、マグロ、カジキ、タラ、アジ、サバ、サケ、マス、サンマ、ウナギ、ティラピア、カワハギ、ハタ、オヒョウ、カレイ、ヒラメ、ニシン、イワシ、ティラピア、サメ、エイ、フグ、ブリ、カサゴ、メバル等から得られる魚皮及び/又は魚骨に、水を加えて加熱抽出又は加圧加熱抽出することにより、魚類由来のコラーゲンを抽出する。
【0015】
上記のコラーゲンを含む抽出物を、タンパク加水分解酵素で処理してコラーゲンをペプチド化する。上記タンパク加水分解酵素は特に制限されず、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、あるいはそれらを含有する酵素製剤などを用いることができる。
【0016】
上記の工程で得られた酵素分解物を逆浸透膜処理して濃縮液を回収する。逆浸透膜としては、食塩阻止率が10〜50%のものが好ましく用いられる。このような逆浸透膜としては、例えば、商品名「NTR−7410」、商品名「NTR−7430」、商品名「NTR−7450」(いずれも日東電工製)等が挙げられる。なお、濃縮の際に、適宜加水しながら、元液量の1〜10倍量、好ましくは3〜5倍量の水を加えて液を透過させることが好ましい。加水操作を繰り返すことにより、不純物をより効率よく除去することができ、魚特有の風味を軽減すると共により安全性の高いコラーゲンペプチドを得ることができる。上記のようにして得られた濃縮液(コラーゲンペプチド)は、そのまま用いてもよく、適宜乾燥して粉末化してから用いてもよい。なお、コラーゲンペプチドは各社から市販されており、例えば、商品名「マリンマトリックス」(焼津水産化学工業株式会社製)、商品名「ニッピコラーゲンFCP−A」(株式会社ニッピ製)などを用いることができる。
【0017】
本発明の組成物中のL−アスコルビン酸2−グルコシド、N−アセチルグルコサミンおよびコラーゲンペプチドの配合量としては限定的ではないが、L−アスコルビン酸2−グルコシド1質量部に対して、N−アセチルグルコサミン0.5〜10質量部、好適には約2質量部、およびコラーゲンペプチド1〜50質量部、好適には約10質量部含有されるよう処方すればよい。
【0018】
本発明の組成物は、さらに経口剤に含まれていてもよい公知の水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン、ミネラル類、植物または動物由来の添加物等、任意成分を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の組成物は、経口投与可能ないかなる形態で提供されてもよく、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等の固形製剤;ゼリー剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤等の液状製剤を挙げることができる。散剤は、例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水ケイ酸等の賦形剤と混合して得ることができる。顆粒剤は、上記賦形剤のほか、必要に応じ、例えば白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤や、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の結合剤や、カルボキシメチルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤をさらに加え、湿式又は乾式で造粒して得ることができる。錠剤は、上記散剤又は顆粒剤をそのまま、或いはステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤を加えて打錠して得ることができる。また、上記錠剤又は顆粒剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタアクリル酸メチルコポリマー等の腸溶性基剤で被覆し、或いはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油等で被覆し、これらを腸溶性或いは持続性製剤にすることができる。硬カプセル剤は、上記散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填して得ることができる。また軟カプセル剤は、ヒアルロナン又はその塩を、グリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油等に混合し、これをゼラチン膜で被覆して得ることができる。
【0020】
シロップ剤は、白糖、ソルビトール、グルセリン等の甘味剤とヒアルロナン又はその塩とを、水に溶解して得ることができる。また、甘味剤及び水のほかに、精油、エタノール等を加えてエリキシル剤とするか、或いはアラビアゴム、トラガカント、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム等を加えて乳剤又は懸濁剤にすることができる。またこれらの液状製剤には必要に応じ、矯味剤、着色剤、保存剤等を加えることができる。
【0021】
本発明の組成物は、ゼリー剤として提供されるのが好ましい。ゼリー剤としては、「ゼリー状飲料」と呼ばれるゆるいゼリー状の製剤が例示され、上記シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁剤の処方にさらに増粘剤を加えることにより調製することができる。増粘剤としては寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、タラガムおよびグルコマンナン等の食品用に用いられる増粘剤が例示される。
【0022】
本発明の組成物は、一般的な食品加工原料と組合わせて任意の飲食品へ配合し、爪およびその周囲の審美的外観を改善する作用を有する機能性飲食品とすることができる。飲食品の種類としては特に制限されず、例えば、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、ゼリー、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜や、蜂蜜、ローヤルゼリーなどを挙げることができる。
【0023】
本発明の組成物の投与量としては、特に限定的ではなく、対象の年齢、性別、体重、一般的健康状態、爪の状態などによって、適宜設定すればよい。例えば成人男性へ投与する場合に各成分の1日投与量が下記のとおりとなるものが例示される。
L−アスコルビン酸2−グルコシド:0.05〜5g、好ましくは0.16〜0.56g
N−アセチルグルコサミン:0.05〜20g、好ましくは0.3〜1.05g
コラーゲンペプチド:0.1〜30g、好ましくは1.5〜5.4g
【0024】
また本発明の組成物は有効成分、即ちL−アスコルビン酸2−グルコシド、N−アセチルグルコサミン、およびコラーゲンペプチドの合計量の1日投与量が0.1〜150g
好適には0.5〜30g、より好ましくは1〜7gとなるよう、投与すればよい。投与形態は限定的ではなく、1〜3日に1回または1日2回以上に分けて投与すればよい。
【0025】
本発明の組成物は、限定的ではないが好適には1週間以上、好ましくは1ヶ月以上、より好ましくは3ヶ月以上投与することが好ましい。投与期間の上限は特にない。
【実施例1】
【0026】
1包あたりL−アスコルビン酸2−グルコシド0.176g、N−アセチルグルコサミン0.354g、コラーゲンペプチド1.77g含有、基剤9.7gを含有する実施例1の製剤を調製した。基剤は増粘剤(伊那ゲルDJ500、伊那食品工業株式会社製)を基剤全量中3.5質量%含有し、さらに甘味料(マルチトールおよびステビア)、酸味料、フレーバーおよび水を含む、ゆるいゼリー状の製剤である。
【0027】
なお、L−アスコルビン酸2−グルコシドとしてはアスコフレッシュ(登録商標)(株式会社林原生物化学研究所製)、コラーゲンとしてはニッピコラーゲンFCP−A(商品名)(ニッピ株式会社製)およびN−アセチルグルコサミンとしてはBio−NAG(登録商標)(ビーエイチエヌ株式会社製)を用いた。
【0028】
増粘剤として用いた伊那ゲルDJ500は、下記組成である:
【表1】

【0029】
モニター30名(男性22名、女性8名)に実施例1の製剤の1日2包経口投与を3ヶ月続けた。投与前後の爪のツヤ、爪の割れおよび傷、伸長速度、爪生え際の皮膚のささくれについて評価した。結果を表に示す。
【0030】
爪のツヤ
【表2】

【0031】
爪の割れ
【表3】

【0032】
爪の伸長速度
【表4】

【0033】
爪生え際の皮膚のささくれ
【表5】

【0034】
また、モニターの感想として下記のものがあった:
・爪に弾力があって割れにくくなった。
・割れは変わらないが、傷が少し減った。
・従来に比べて爪の伸びるスピードが早くなった。特にここ2週ぐらいはしょっちゅう爪を切っている。
・少しよくなった気がする。寒い時にはささくれが出来やすいので、それを考慮するとかなり状態は良い。
・ささくれがよく出来ていたのが気にならない程度になった
・ネイリストの方に、爪のツヤが良くなり、また爪自体が強くなったと言われた。
・爪周りの乾燥がおさまった。
・爪の伸びるスピードかなり早くなった(女性)
・二枚爪、大きく横に亀裂が入り、割れることが減った(女性)
・爪が強くなった(女性)
・二枚爪がなくなった(女性)。
【0035】
さらにモニターのうちの3名(Y、T、N)の爪の状態を図1〜図4に示す。いずれもAが摂取前の撮影、Bが3ヶ月摂取後に撮影したものである。
表1〜4より、本願発明の組成物を3ヶ月摂取することにより、爪およびその周囲の外観が改善されることがわかる。また、図1〜4から爪周囲のささくれ並びに甘皮の状態が本発明の組成物の摂取により改善さることがわかる。また、本発明の組成物の摂取により爪表面のツヤが改善されていることがわかる。
【実施例2】
【0036】
実施例1で用いたものと同じ製剤を用いた。モニター(女性)に実施例1の製剤の1日2包経口投与を3ヶ月続けた。摂取開始前、摂取1、2および3ヶ月目に爪の表面の凹凸を観察した。結果を図5A〜D並びに図6A〜Dに示す。
図6及び図6より、2名のモニター(INBおよびKD)はいずれも投与開始前には爪に縦筋が認められていたが、摂取を続けると徐々に表面の凹凸が減り、摂取3ヶ月目には爪表面がかなり滑らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の組成物は、爪及び爪周囲の皮膚の外観を改善するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−アスコルビン酸2−グルコシド、N−アセチルグルコサミンおよびコラーゲンペプチドを含有する、経口投与される爪及びその周囲の外観の改善剤組成物。
【請求項2】
さらに増粘剤を含有するゼリー剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
3ヶ月以上連続して投与される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
爪の外観を改善するためのものである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
爪表面の凸凹を滑らかにするためのものである、請求項4記載の組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【公開番号】特開2011−42648(P2011−42648A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163006(P2010−163006)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(591119750)岩瀬コスファ株式会社 (16)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】