説明

爪水虫用治療具

【課題】爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができ、爪水虫を効果的に治療することができる爪水虫用治療具を提供する。
【解決手段】爪水虫用治療具1は、ブチルゴム等の弾性部材により有底筒状に形成され、爪水虫治療用の薬剤を内側に配することができる薬剤内包部材10と、内包部材10における開口の周縁部が爪の外表面に密接された状態にて、内包部材10を指に固定することができる固定部材20と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、爪水虫用治療具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
爪水虫とは、手足に存する白癬が拡大し、爪の間に白癬菌が侵食して、爪自体が白癬菌に感染した状態となっている症状をいう。
【0003】
通常の水虫の場合、スプレーや塗り薬のような外用薬を用いて治すことが多いが、爪水虫の場合、外用薬による根治は極めて難しいとされる。爪水虫の場合、外用薬である抗真菌薬の薬剤を爪の外表面に長く滞留させる必要がある。しかしながら、入浴や運動等により、薬剤を長期に渡って爪の外表面に滞留させることは困難である。そのため、例えば、特許文献1には、滞留性能を向上させるための粒剤を配合した薬剤が示されている。しかしながら、かかる薬剤によっても、有効成分を長期に渡って有効に爪の外表面に滞留させることは困難である。
【0004】
そのため、爪水虫を完治するには、一般にラミシールなどの内服薬を3ヶ月から12ヶ月もの長期間服用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2011−51966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の内服薬による治療の場合には、人により薬の副作用があり、胃の不快感、下痢、悪心、腹痛などが起こる場合がある。また、長期間に渡り内服薬を服用する必要があるため、少数ではあるが、肝機能に障害が生じる場合や、貧血となる場合もありうる。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができる爪水虫用治療具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載された爪水虫治療具は、有底筒状に形成され、爪水虫治療用の薬剤を内側に配することができる薬剤内包部材と、この内包部材における開口の周縁部が爪の外表面に密接された状態にて、内包部材を指に固定する固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載された爪水虫用治療具によれば、内包部材の開口が爪に向けられるとともに、開口の周縁部が爪の外表面に密接された状態で、爪水虫治療用の薬剤が内側に配された薬剤内包部材が、固定部材により指に固定される。このように、開口の周縁部が爪の外表面に密接された状態となることにより、内包部材の内側に配された薬剤は、周囲を内包部材と爪とによって密封された状態におかれる。そのため、内包部材の内側に配された薬剤が内包部材から外側に漏れ出すことがほとんどなく、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができる。
【0010】
請求項2に記載された爪水虫用治療具は、請求項1に記載された爪水虫用治療具において、薬剤内包部材の内側には薬剤を含浸することができる含浸部材が配されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載された爪水虫用治療具によれば、薬剤を含浸部材に含浸させた状態で内包部材の内側に保持することができる。このように、含浸部材に薬剤を含浸させて保持することにより、薬剤が内包部材から外側に漏れ出すことを有効に抑止できる。そのため、内包部材の内側に配された薬剤が内包部材から外側に漏れ出すことがほとんどなく、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができる。
【0012】
請求項3に記載された爪水虫用治療具は、請求項2に記載された爪水虫用治療具において、内包部材の周縁部には、含浸部材に含浸された薬剤が周縁部から外側に漏れるのを抑止するリング形状の凸状部が開口を囲んで設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された爪水虫用治療具によれば、周縁部において開口を囲んで設けられたリング形状の凸状部により、含浸部材に含浸された薬剤が周縁部から外側に漏れるのを効果的に抑止することができる。そのため、内包部材の内側に配された薬剤が内包部材から外側に漏れ出すことがほとんどなく、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができる。
【0014】
請求項4に記載された爪水虫用治療具は、請求項3に記載された爪水虫用治療具において、内包部材の開口を概ね塞ぐとともに爪の外表面に当接する含浸シートが、内包部材の周縁部に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載された爪水虫用治療具によれば、内包部材の周縁部に内包部材の開口を概ね塞ぐとともに爪の外表面に当接する含浸シートが設けられている。内包部材の内側に配置された含浸部材に1次的に含浸され保持された薬剤が、この含浸シートにより2次的に保持されるため、内包部材の内側に配された薬剤が内包部材から外側に漏れ出すことがほとんどない。また、爪の外表面に当接する含浸シートに薬剤が2次的に保持されることにより、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができる。
【0016】
請求項5に記載された爪水虫用治療具は、請求項4に記載された爪水虫用治療具において、内包部材は、弾性部材より形成されるとともに、筒形状の筒部および筒部の一端を塞ぐ底部により形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載された爪水虫用治療具によれば、内包部材が変形自在な弾性部材により形成されるとともに、円筒形状の筒部および筒部の一端を塞ぐ底部により形成されている。そのため、内包部材の底部を指で押すことにより、円筒形状の筒部が太鼓状に膨らみ内包部材の内側に配されている含浸部材を圧縮することができる。そして、底部を押すことにより圧縮された含浸部材から薬剤を染み出すことができ、この染み出した薬剤を含浸シートに染み込ませることができる。そのため、定期的に底部を押すことにより、爪の外表面に当接する含浸シートに薬剤を効果的に補充することができ、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができる。
【0018】
また、爪の外表面に突出して配される内包部材が変形自在な弾性部材により形成されていることにより、内包部材に外側から力が加わったとしても、内包部材はその力を吸収することができ、内包部材が爪から外れることを防止できる。また、爪に接合される固定部材も、変形自在な弾性部材により形成されていることにより、爪の外表面の円弧形状に沿って固定部材が接合することができ、固定部材を強固に爪の外表面に接合させることができる。そのため、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができることができる。
【0019】
請求項6に記載された爪水虫用治療具は、請求項5に記載された爪水虫用治療具において、内包部材の底部の肉厚は、筒部の肉厚に比して薄いことを特徴とする。このように、底部の肉厚を薄肉に設定することにより、底部を指で押したときに筒部が径方向(太鼓状)に拡張し易くなる。そのため、底部を指で押したときに含浸部材から薬剤を効果的に染み出させることができるようになり、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができる。
【0020】
請求項7に記載された爪水虫用治療具は、請求項6に記載された爪水虫用治療具において、内包部材は、ブチルゴムより形成されていることを特徴とする。ブチルゴムは、耐薬品性に優れた材料であり、爪水虫治療用の薬剤を内側に配する内包部材をブチルゴムより形成することにより、内包部材の化学的または物理的な変性を効果的に抑止することができる。
【0021】
請求項8に記載された爪水虫用治療具は、請求項7に記載された爪水虫用治療具において、固定部材は、内包部材の周縁部から外側に向けて一体的に形成されていることを特徴とする。また、請求項9に記載された爪水虫用治療具は、請求項8に記載された爪水虫用治療具において、固定部材は、薄肉の帯状に形成されており、接合面に接着材料が配されていることを特徴とする。
【0022】
このように、固定部材は「いわゆる絆創膏」の構造となっており、内包部材の周縁部から外側に向けて一体的に形成されていることにより、固定部材を指に巻き付けて固定することにより、薬剤を内包した内包部材を強固に長期に渡って爪の外表面に配置し続けることができる。そのため、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、爪水虫治療用の薬剤を長期に渡って爪の外表面に有効に滞留させることができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明の実施形態における爪水虫用治療具の斜視図である。
【図2】 図1において断面A−Aにて示す爪水虫用治療具の断面図である。
【図3】 本発明の実施形態における爪水虫用治療具に薬剤を含浸させる様子を説明する図である。
【図4】 本発明の実施形態における爪水虫用治療具を足の指に装着した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態における爪水虫用治療具1を図1および図2に基づき説明する。ここで、図1は本発明の実施形態における爪水虫用治療具の斜視図であり、図2は図1において断面A−Aにて示す爪水虫用治療具の断面図である。なお、図1および図2に示すように、指に装着される前の爪水虫用治療具1は、台紙Pの上に取り付け配置されている。
【0026】
図1および図2に示すように、爪水虫用治療具1は、ブチルゴム(弾性部材)より形成され、有底筒状の薬剤内包部材10と、薄肉の帯状の固定部材20と、を備えている。
【0027】
薬剤内包部材10は、円筒形状の筒部11と、筒部11の一端を塞ぐ底部12とにより形成されている。そして、筒部11の他端側には、他に比べて肉厚の厚肉部11aが形成されている。また、内包部材10の内側には、爪水虫治療用の薬剤Mを含浸することができるスポンジ(含浸部材)17が配されている。そして、このスポンジ17に薬剤Mを含浸させることにより、薬剤内包部材10は爪水虫治療用の薬剤Mを内側に配することができる。
【0028】
内包部材10において、底部12の肉厚は筒部11の肉厚に比して薄くなるように設定されている。本実施の形態では、筒部11の肉厚は1.0[mm]以上であるのに対し、底部12の肉厚は0.5[mm]以下に設定されている。そして、底部12は筒部11の内側に向けて湾曲して入り込んだ凹形状に形成されている。
【0029】
また、筒部11の他端は円環形状の周縁部13により形成される開口14が形成されている。そして、周縁部13には、スポンジ17に含浸された薬剤Mが周縁部13から外側に漏れるのを抑止するリング形状の凸状部(15,16)が開口14を囲んで2重に形成されている。このように、凸状部(15,16)が2重に形成されていることにより、薬剤Mが周縁部13から外側に漏れるのを効果的に抑止することができる。
【0030】
そして、周縁部13には、内包部材10の開口14を概ね塞ぐガーゼ(含浸シート)18が取り付けられている。ここで、ガーゼ18の周縁部13への取り付けは、表面テープなどの接合材料によりガーゼ18の外周部を周縁部13に接合することにより行われる。
【0031】
次に、固定部材20について説明する。固定部材20は、内包部材10の周縁部13から外側に、互いに反対向き向けて一体的に形成されている。そして、固定部材20は、薄肉の帯状に形成され、すなわち、いわゆる絆創膏の構造に形成され、内包部材10の開口(14)側である接合面20aに両面シートなどの接着材料22が配されている。また、固定部材20には、複数の通気孔21が形成されており、この通気孔21により、固定部材20が指に巻きつけられたときに指が蒸れないよう設定されている。
【0032】
最後に、本実施形態の爪水虫用治療具1の使用方法について、図3および図4に基づき説明する。ここで、図3は爪水虫用治療具1に薬剤Mを含浸させる様子を説明する図であり、図4は爪水虫用治療具1を足の指に装着した図である。
【0033】
図3に示すように、台紙Pに取り付け配置されている爪水虫用治療具1において、ガーゼ18側からスポンジ17内に、薬剤容器Cから薬剤Mを含浸させる。このように、爪水虫用治療具1によれば、薬剤Mをスポンジ17に含浸させた状態で内包部材10の内側に保持することができる。
【0034】
そして、図4に示すように、例えば、足Fの指Tに治療具1を装着する場合、台紙Pかた治療具1を取り外した後に、治療具1の内包部材10における開口14を爪Nに押し当て、固定部材20を指Tに巻きつけることにより治療具1は指Tに固定される。また、この固定された状態では、開口14の周縁部13が爪Nの外表面に密接された状態にて、固定部材20により内包部材10は足Fの指Tに固定される。
【0035】
また、図4に示すように、内包部材10の底部12を押すことにより、スポンジ17から薬剤Mを染み出すことができ、この染み出した薬剤Mをガーゼ18に染み込ませることができる。そのため、定期的に底部10を押すことにより、爪Nの外表面に当接するガーゼ18に薬剤Mを効果的に補充することができ、爪水虫治療用の薬剤Mを長期に渡って爪Nの外表面に有効に滞留させることができる。
【0036】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【符号の説明】
【0037】
1 治療具
10 薬剤内包部材
11 筒部
11a 厚肉部
12 底部
13 周縁部
14 開口
15,16 凸状部
17 含浸部材(スポンジ)
18 含浸シート(ガーゼ)
20 固定部材
20a 接合面
21 通気孔
22 接着材料
P 台紙
M 薬剤
C 薬剤容器
F 足
T 指
N 爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成され、爪水虫治療用の薬剤を内側に配することができる薬剤内包部材と、
前記内包部材における開口の周縁部が爪の外表面に密接された状態にて、前記内包部材を指に固定する固定部材と、を備えることを特徴とする爪水虫用治療具。
【請求項2】
請求項1に記載された爪水虫用治療具において、
前記薬剤内包部材の内側には前記薬剤を含浸することができる含浸部材が配されていることを特徴とする爪水虫用治療具。
【請求項3】
請求項2に記載された爪水虫用治療具において、
前記内包部材の周縁部には、前記含浸部材に含浸された前記薬剤が前記周縁部から外側に漏れるのを抑止するリング形状の凸状部が開口を囲んで設けられていることを特徴とする爪水虫用治療具。
【請求項4】
請求項3に記載された爪水虫用治療具において、
前記内包部材の開口を概ね塞ぐとともに爪の外表面に当接する含浸シートが、前記周縁部に設けられていることを特徴とする爪水虫用治療具。
【請求項5】
請求項4に記載された爪水虫用治療具において、
前記内包部材は、弾性部材より形成されるとともに円筒形状の筒部および前記筒部の一端を塞ぐ底部により形成されていることを特徴とする爪水虫用治療具。
【請求項6】
請求項5に記載された爪水虫用治療具において、
前記内包部材の底部の肉厚は、前記筒部の肉厚に比して薄いことを特徴とする爪水虫用治療具。
【請求項7】
請求項6に記載された爪水虫用治療具において、
前記内包部材は、ブチルゴムより形成されていることを特徴とする爪水虫用治療具。
【請求項8】
請求項7に記載された爪水虫用治療具において、
前記固定部材は、前記内包部材の周縁部から外側に向けて一体的に形成されていることを特徴とする爪水虫用治療具。
【請求項9】
請求項8に記載された爪水虫用治療具において、
前記固定部材は、薄肉の帯状に形成されており、接合面に接着材料が配されていることを特徴とする爪水虫用治療具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63235(P2013−63235A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222319(P2011−222319)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(511243244)
【Fターム(参考)】