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爪白癬モデルの製造法
説明

爪白癬モデルの製造法

【課題】再現性の高い生体から離れたin vitro爪白癬モデルを提供する。
【解決手段】ヒトを含む動物より採取した非感染爪の爪床側に、予め培養して定量可能な状態に調整した、真菌乃至はその生体構成部分を播種し、水性担体と接することなく、低温高湿度条件で長期間培養し、爪白癬モデルを製造する。前記予め培養して定量可能な状態に調整した、真菌乃至はその生体構成部分は、分生子の分散液であることが好ましく、前記低温高湿度条件は、温度25〜30℃、湿度90〜100%の範囲に存することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪白癬のための抗真菌剤の評価などに有用な爪白癬モデルに関し、更に詳細には、生体から離れた形で製造され、in vitro爪白癬モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
社会の高齢化に伴い、これまでには問題とされなかった疾病が大きな問題となってきている。その一つに高脂血症、高血圧、糖尿病などの複合化された代謝疾患症候群が存するが、これらの広がりに伴い、真菌感染症も重大な疾患に変貌しつつある。即ち、糖尿病などにおいては、創傷治癒性が著しく減じるために、体部白癬、足部白癬或いは爪白癬などの真菌症が、広汎な体部組織の破壊を誘起してしまう現象が知られている。この為、これらの真菌症を完治させることが、代謝疾患症候群の治療には重要なポイントとなっている。これらの真菌症の内、爪白癬は、薬剤の治療効果が低く、且つ、爪白癬に保持された真菌が皮膚の真菌症の再発に繋がることが存するために、特に重大な疾患であると言える。この為、この様な爪白癬の治療剤の開発が望まれているが、開発された薬剤が爪白癬に有効であるか否かは、臨床試験が終わらなければ判らない状況にあった。即ち、適切な爪白癬治療効果の評価モデルが存しなかったと言える。これも爪白癬モデル自信が存しないことに起因する。
【0003】
爪白癬症に対する抗真菌剤の効果を評価する動物モデルとして、動物に真菌を感染させる方法はいくつか報告されているものの(非特許文献1から非特許文献3)、感染までの期間が長く、再現性よく感染モデルが作製出来るといった点では十分ではなかった。これは爪の構造と、白癬菌の宿主、寄生場所の選択特性によるものであると考えられていた。また、爪真菌症については前述のようにいくつかの課題があり、評価期間や再現性の問題があるにもかかわらず、課題を解決するための動物感染モデルの検討はほとんど行われていない。感染モデルの作製方法として、免疫力を低下させ、感染しやすい状態にさせることは報告されている(非特許文献4)。培地上にOリングを介して爪を配置し、Oリングと爪との間に真菌の分生子分散液を存在させて作成するin vitro感染爪モデルは存する(例えば、特許文献1を参照)が、偶発的要素によって左右されやすい、真菌と爪との接触状態に感染が依存することから、その再現性には検討の余地が存した。言い換えれば、再現性の高い生体から離れたin vitro爪感染モデルは得られておらず、再現性の高い検討は保証されていないのが現状であった。
【0004】
一方、爪真菌感染系と温湿度との間には何らかの因果関係が存在することが予測されるが、その因果関係が如何様なものかはつまびらかにはされたいないのが現状である。
【0005】
【非特許文献1】Antimicrobial agents and chemotherapy, 46(12), p.3797-3801 (2002)
【非特許文献2】Microbiol.Immunol.,47(2),p143-146 (2003)
【非特許文献3】Mycoses, 48, p108-113 (2004)
【非特許文献4】Jpn. J. Infect Dis., 60, p.33-39 (2007)
【特許文献1】特開2001−133449 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、再現性の高い生体から離れたin vitro爪白癬モデルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な実状に鑑みて、本発明者らは、再現性の高い生体から離れたin vitro爪白癬モデルを求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、ヒトを含む動物より採取した非感染爪の爪床側に、予め培養して定量可能な状態に調整した、真菌乃至はその生体構成部分を播種し、水性担体と接することなく、低温高湿度条件で長期間培養することにより、再現性良く爪白癬がin vitroで作成できることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)ヒトを含む動物より採取した非感染爪の爪床側に、予め培養して定量可能な状態に調整した、真菌乃至はその生体構成部分を播種し、水性担体と接することなく、低温高湿度条件で長期間培養することを特徴とする、爪白癬モデルの製造法。
(2)前記予め培養して定量可能な状態に調整した、真菌乃至はその生体構成部分は、分生子の分散液であることを特徴とする、(1)に記載の爪白癬モデルの製造法。
(3)前記低温高湿度条件は、温度25〜30℃、湿度90〜100%の範囲に存することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の爪白癬モデルの製造法。
(4)前記長期間の培養条件は、7日間から14日間の培養であることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の爪白癬モデルの製造法。
(5)前記温湿度条件において、爪床側の湿度が爪甲側の湿度より高いことを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の爪白癬モデルの製造法。
(6)(1)〜(5)何れか1項に記載の爪白癬モデルの製造法で製造されたモデルの爪甲側に抗真菌薬剤を投与し、爪中の真菌の状態をATP産生量を指標に、ATP産生量が大きいときには、生存真菌の量が多く、ATP産生量が低いときには、生存真菌の量が少ないと判別し、投与により生存菌数が減じる程度が高い薬剤ほど抗真菌効果の高い薬剤であると鑑別することを特徴とする、抗真菌薬剤の効果の鑑別法。
(7)(1)〜(5)何れか1項に記載の爪白癬モデルの製造法において、低温高湿度条件で、且つ、爪甲側よりも爪床側の湿度を高く保つための治具であって、爪の水分非透過性に依存して密閉すべき構造を構築する、爪よりも小さい窓部を有する2枚のアタッチメントとアタッチメントと爪とで密閉されるべき空間を有する、水性担体保持可能なチャンバー部とを構成要素とする爪白癬モデル作成用の治具。
(8)前記治具は、爪とアタッチメントとの接触部の間に弾性緩衝体を有することを特徴とする、(7)に記載の治具。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、再現性の高い生体から離れたin vitro爪白癬モデルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の爪白癬モデルは、ヒトを含む動物より採取された、真菌に感染されていない爪を用いて、これに爪を栄養源とする真菌を繁殖させ、in vitroで爪白癬の状態を作り出すことを特徴とする。この様な状態を創出するためには、1)爪に定量的に感染源を接触させること、2)接触した感染源が爪に的確に固定されること、3)固定された感染源が的確に生育することの3つの条件が必要となる。1)のためには、分生子のみを取り出し、播種する分生子の数をコントロールすることにより、実現される。かかる分生子の数は、1×105〜1×109分生子/MLであることが好ましい。2)の条件としては、高湿度に設定し、爪に於ける水分量が十分であることが上げられる。この為には、爪周囲の湿度が90〜100%であることが好ましく、より好ましくは93〜98%であることが例示できる。又、かかる湿度の設定は、真菌の一部、特に好ましくは分生子を播種した部位から、反対側の面に緩やかな水蒸気の流れが生じるように、爪甲側と、爪床側で差が生じるように設定することが好ましい。この為には、分生子などの真菌乃至はその一部を播種した側を水などの水性担体を貯留させたチャンバーなどの密閉構造で密閉し、この系からの水蒸気が爪を通してのみ出入り出来るような状態を作っておくことが好ましい。この様なチャンバーとしては、経皮吸収などの検討に用いられるフランツセルを利用することが出来る。フランツセルの上面は開放系として、恒温恒湿機などに保存して、湿度をコントロールすることが好ましい。又、この様なチャンバーに爪を固定する場合には爪の上下に弾性材料で作成したO−リングを設置しチャンバー水性担体収納部の密閉生を高めることが好ましい。又、チャンバーに充填する水性担体は、塩などを加えて飽和素性気圧を調整することも出来る。前記水性担体と、採取された爪とは非接触状態に保たれる。この様な状態は後記に示す治具を用いることにより達成される。又、十分に爪内部にまで真菌が固着するためには、培養温度を低温にすることが好ましく、具体的には、温度が25〜30℃であることが好ましく、より好ましくは、26〜29℃であることがより好ましい。又、この温度条件で爪に一様に感染を広げるためには、7日間から14日間の長期間に亘って培養することが好ましく、8日間から12日間の培養がより好ましい。この様に温度を低温に、培養時間を長期間に設定することにより、菌体が、爪に対して均一に、一様な深度で、且つ、深部にまで菌糸を伸ばすようになるからである。斯くして得られた爪白癬モデルは、爪片全体に生存している真菌が一様な深度で広がっており、これに抗真菌剤を塗布し、真菌の生活状況を調べることにより、前記抗真菌剤の作用を鑑別することが出来る。通常、イン・ビトロで爪に均一な真菌感染を起こさせて爪白癬モデルを作成することは困難である。これは生体から切り離した爪が真菌にとって生育しやすい環境ではないことが大きな理由であると考えられる。特に生育に阻害的に働く環境条件としては水分が少ないことが挙げられる。
【0010】
斯くして得られた爪白癬モデルにおける菌の生育状況はATPの産生量を指標に、ATP産生量が多い場合には、生存菌数が多く、産生量が少ない場合には生存菌数が少ないと判別することにより知ることが出来る。ATPの産生量は、爪を生検トレパンなどで打ち抜き、ブラック96穴プレートにおき、「マイクロバイアル・セル・バイラビリティ・アッセー(Microbial Cell viability Assay;BacTiter-Glo社製;以下ATP測定キットと称することもある)」を用いて測定することが出来る。
【0011】
又、真菌の生育状況の確認には、ATP量以外にも、チミジン取込量等の他の対しゃん関連物質の収支を指標とした評価でも鑑別できるし、切片に切り出して染色し、組織学的な検討によっても鑑別できる。前記染色法としては、例えば、PAS染色、ニュートラルレッドによる染色などが好ましく例示できる。
【0012】
斯くして得られた、本発明の爪白癬モデルは均一な深度で均一に真菌が爪に浸潤している特徴を有し、その感染再現性の良いことから爪用抗真菌剤の評価などに用いることが出来る。爪用抗真菌剤の評価は、前記のチャンバーに固定された状態の爪白癬モデルを使用して行う。チャンバーにおいて開放系に配向した爪甲を生理食塩水などで拭いて清浄にし、これに被験体を塗布する。塗布は1〜5回/1日、より好ましくは1〜2回/日行うことが好ましく、塗布に先立って、爪甲部を予め拭き取って清浄に保つことが好ましい。この操作は5〜30日行うことにより、爪の真菌の生育を抑制する作用の強さを鑑別することが出来る。生育の抑制はATP産生量のコントロールに比した抑制率として把握することが出来る。
【0013】
かかる評価は、製剤成分と有効成分との組み合わせ効果を鑑別することにも応用することが出来る。即ち、製剤特性まで含めた抗真菌剤の評価を行うことが出来る。
【0014】
以下に、実施例を挙げて、更に詳細に本発明について説明を加える。
【実施例1】
【0015】
ボランティアより提供されたヒト爪サンプルの中から以下に示す爪の選定基準に合うものを選定した。入手後の爪サンプルは通し番号を付与し,マイクロメーターで厚さを測定した。
【0016】
<爪の選定基準>
1.爪に著しく着色のないもの,目立つ汚れのないものであること。
2.爪が極端に湾曲していないものであること。
3.長さが5mm以上あり,5mm×5mmが2箇所取れるサイズのものであること。
4.ひび割れや亀裂のないもの、欠けていないものであること。
5.極端に厚かったり薄かったりしないものであること。
【0017】
以下の手順に従って、感染のための分生子分散液を作成した。
28℃に設定したテーハー式デジタル孵卵器で培養されているFSDA培地上のトリコフィトン・メンタグロファイテス(TIMM1189株)について,菌糸および分生子の十分な発育を確認した。50mLチューブに0.05%Tween(登録商標)80含有生理食塩液を適量とり、FSDA培地表面に発育した菌糸および分生子を白金耳で擦り,チューブに入れて分生子を浮遊させた。その後、よくピペッティングして均一な懸濁液にし,セルストレーナーでろ過して菌糸を除去したのち分生子濃度を算出し、最終的に1.0×104conidia(分生子)/mLとなるように調整した。
【0018】
ボランティアから提供された爪を水とエタノールで清浄に処置し、図1に示す手順でフランツセルにセットし、これを湿度95%、28℃のインキュベーターで培養した、即ち、つめを中央で2分割し、上下にO−リングをセットし、中央に直径2mmの円形の窓を有するポリテトラフルオロエチレン製の板2枚を用いて上下で窓部を爪が塞ぐ形で固定した。爪床部を上面に向け、分生子分散液(1×104分生子/mL)を10μL爪床部に滴下した。上下をひっくり返し、爪床部が下面になるようにレシーバー部に蒸留水を充填したフランツセルにセットした。この時、蒸留水とセットした爪床部とが接触しないように注意した。これを湿度95%、28℃のインキュベーターで9日間培養した。このものを生検トレパンで打ち抜き、マイクロプレートに置き、これに注射用蒸留水130μLを加え、ATP測定キット混液130μLを更に加え、プレートミキサーで混合し、添加5分後に蛍光分析を行った。検量線を引くために、ATPの標準液(1×10-7〜1×10-11mol/L )を用意し、これも同時に測定した。標準液の発光値から検量線を引き、サンプル中のATP量を定量した。尚、爪の感染状況は感染7日目の状況を図2に示す。一様に、均一な深度で感染していることが判る。
【0019】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、抗真菌医薬の評価に応用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の評価法で使用するチャンバーの構造示す図である。
【図2】本発明の爪白癬モデルの感染状況を示す図である。(図面代用写真)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを含む動物より採取した非感染爪の爪床側に、予め培養して定量可能な状態に調整した、真菌乃至はその生体構成部分を播種し、水性担体と接することなく、低温高湿度条件で長期間培養することを特徴とする、爪白癬モデルの製造法。
【請求項2】
前記予め培養して定量可能な状態に調整した、真菌乃至はその生体構成部分は、分生子の分散液であることを特徴とする、請求項1に記載の爪白癬モデルの製造法。
【請求項3】
前記低温高湿度条件は、温度25〜30℃、湿度90〜100%の範囲に存することを特徴とする、請求項1又は2に記載の爪白癬モデルの製造法。
【請求項4】
前記長期間の培養条件は、7日間から14日間の培養であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の爪白癬モデルの製造法。
【請求項5】
前記温湿度条件において、爪床側の湿度が爪甲側の湿度より高いことを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の爪白癬モデルの製造法。
【請求項6】
請求項1〜5何れか1項に記載の爪白癬モデルの製造法で製造されたモデルの爪甲側に抗真菌薬剤を投与し、爪中の真菌の状態をATP産生量を指標に、ATP産生量が大きいときには、生存真菌の量が多く、ATP産生量が低いときには、生存真菌の量が少ないと判別し、投与により生存菌数が減じる程度が高い薬剤ほど抗真菌効果の高い薬剤であると鑑別することを特徴とする、抗真菌薬剤の効果の鑑別法。
【請求項7】
請求項1〜5何れか1項に記載の爪白癬モデルの製造法において、低温高湿度条件で、且つ、爪甲側よりも爪床側の湿度を高く保つための治具であって、爪の水分非透過性に依存して密閉すべき構造を構築する、爪よりも小さい窓部を有する2枚のアタッチメントとアタッチメントと爪とで密閉されるべき空間を有する、水性担体保持可能なチャンバー部とを構成要素とする爪白癬モデル作成用の治具。
【請求項8】
前記治具は、爪とアタッチメントとの接触部の間に弾性緩衝体を有することを特徴とする、請求項7に記載の治具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−142149(P2010−142149A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321700(P2008−321700)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(507029007)株式会社ポーラファルマ (7)
【Fターム(参考)】