説明

片側スポット溶接装置及び片側スポット溶接方法

【課題】簡易な構成で溶接品質を容易に管理しつつ良好に溶接可能な片側スポット溶接装置及び片側スポット溶接方法を提供する。
【解決手段】ワークWに片側からのみ電極を当接させて溶接する片側スポット溶接装置1であって、溶接電極11と、アース電極12と、溶接電極11をワークWに向かって加圧するサーボモータ21と、溶接電極11及びアース電極12を経由するように通電させる電源回路31と、ワークWに対する溶接電極11の沈み込み量である変位量を検出する変位量センサ16と、制御部51と、溶接電極11の変位量と溶接後のワークWに形成されるナゲット径Dとが、予め関連付けられたマップと、を備え、制御部51は、目標ナゲット径とマップとに基づいて、目標変位量を算出し、変位量センサ16の検出する実測変位量が目標変位量となるように、サーボモータ21及び電源回路31を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの片側からのみ電極を当てて溶接する片側スポット溶接装置及び片側スポット溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚さ方向において重ねられた複数の金属製のワーク(板状を呈する板金等)を接合する方法として、ワークを加圧しつつ電流を流し、それにより発生する抵抗熱で金属を溶融させて接合するスポット溶接が知られている。
【0003】
このスポット溶接は、電流の流し方の違い等により、様々な種類に分類されているが、ワークの両側から加圧しつつ電流を流す両側スポット溶接と、ワークの片側のみから加圧しつつ電流を流す片側スポット溶接の2つに大別される。
【0004】
ここで、ワークには様々な形状のものが存在することから、複雑な形状を呈するワークが溶接対象となることにより、電極(溶接ガン)をワークの両側から当接させるのが物理的に不可能な場合がある。このような場合は、必然的に片側スポット溶接が用いられることになる。
【0005】
また、このようなスポット溶接の接合強度は、溶接により形成されるナゲット(接合部)の大きさに関係し、平面視におけるナゲットの直径(ナゲット径)が大きくなると、接合強度が高くなる。そこで、溶接品質を管理する一方法として、溶接後のワークのナゲットに超音波を照射し、ナゲット径を推定する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−146928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、超音波の送信機及び受信機が必要となるため、溶接装置が高価となるうえ、溶接の冷却後の別工程において、超音波を送信/受信するので、工程数が多くなり、量産ラインで使用することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、簡易な構成で溶接品質を容易に管理しつつ良好に溶接可能な片側スポット溶接装置及び片側スポット溶接方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、溶接電極の変位量(沈み込み量)とナゲット径(ナゲット大きさ)とが高い相関関係を有するという知見を得た。
【0010】
この知見に基づいて、前記課題を解決するための手段として、本発明は、ワークに片側からのみ電極を当接させて溶接する片側スポット溶接装置であって、前記ワークに片側から当接する溶接電極と、前記ワークに片側から当接するアース電極と、前記溶接電極を前記ワークに向かって加圧する加圧機構と、前記溶接電極及び前記アース電極を経由するように通電させる電源回路と、前記ワークに対する前記溶接電極の沈み込み量である変位量を検出する変位量検出手段と、制御手段と、前記溶接電極の変位量と溶接後のワークに形成されるナゲット大きさとが、予め関連付けられたデータベースと、を備え、前記制御手段は、目標ナゲット大きさと前記データベースとに基づいて、目標変位量を算出し、前記変位量検出手段の検出する実測変位量が前記目標変位量となるように、前記加圧機構及び前記電源回路を制御することを特徴とする片側スポット溶接装置である。
【0011】
このような構成によれば、制御手段が、目標ナゲット大きさ(目標ナゲット径、目標溶接強度)とデータベースとに基づいて、目標変位量を算出する。次いで、制御手段が、変位量検出手段の検出する溶接電極の実測変位量(ワークに対する溶接電極の沈み込み量)が目標変位量となるように、加圧機構及び電源回路を制御する。このように溶接電極の実測変位量を目標変位量とすることでワークを良好に溶接できる。また、高価な超音波の送信機及び受信機は不要で、溶接電極の変位量を検出する変位量検出手段等を付加した簡易な構成で、溶接品質を容易に管理できる。
【0012】
また、前記片側スポット溶接装置において、前記アース電極は前記ワークに当接後、当該ワークに対して変位せず、前記変位量検出手段は、前記溶接電極と前記アース電極との相対位置を検出することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、変位量検出手段が溶接電極とワークに当接後変位しないアース電極との相対位置を検出することで、溶接電極の変位量を検出できる。
【0014】
また、前記片側スポット溶接装置において、前記溶接電極を保持する溶接電極保持部と、前記アース電極と一体であるシャフトと、を備え、前記変位量検出手段は、前記溶接電極保持部と前記シャフトとの相対位置を検出することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、変位量検出手段が溶接電極保持部とシャフトとの相対位置を検出することで、溶接電極の変位量を検出できる。
【0016】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、ワークの片側からのみ溶接電極及びアース電極を当接させて溶接する片側スポット溶接方法であって、目標ナゲット大きさと、前記ワークに対する前記溶接電極の沈み込み量である変位量と溶接後のワークに形成されるナゲット大きさとが予め関連付けられたデータベースと、に基づいて、前記溶接電極の目標変位量を算出する目標変位量算出ステップと、前記溶接電極の実測変位量が、前記目標変位量となるように、前記溶接電極のワークに対する加圧力と、前記溶接電極及び前記アース電極を経由する通電量と、を制御する溶接ステップと、を含むことを特徴とする片側スポット溶接方法である。
【0017】
このような構成によれば、目標ナゲット大きさとデータベースとに基づいて溶接電極の目標変位量を算出し、溶接電極の実測変位量が目標変位量となるように、溶接電極のワークに対する加圧力と溶接電極及びアース電極を経由する通電量とを制御することにより、簡易な構成で溶接品質を容易に管理しつつワークを良好に溶接できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成で溶接品質を容易に管理しつつ良好に溶接可能な片側スポット溶接装置及び片側スポット溶接方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る片側スポット溶接装置の構成を示す図であり、溶接電極及びアース電極のワークへの当接時を示している。
【図2】溶接電極の変位量(ワークに対する溶接電極の沈み込み量)と溶接後のナゲット径との関係を示すマップ(データベース)である。
【図3】本実施形態に係る片側スポット溶接装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る片側スポット溶接装置の動作を示す図であり、(a)は溶接前(溶接電極及びアース電極の当接前)、(b)は溶接終了時を示している。
【図5】本実施形態に係る片側スポット溶接装置の一動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0021】
≪片側スポット溶接装置の構成≫
図1に示すように、片側スポット溶接装置1は、板状を呈する金属製の第1ワークW1と第2ワークW2とが重ねられてなるワークWの上面側(片側)のみから、ワークWの溶接部位Qに溶接電極11等を当接させてスポット溶接する装置である。
なお、溶接後、溶接部位Qにおける第1ワークW1と第2ワークW2との境界面には、縦断面視で楕円形のナゲットP(接合部)が形成される。また、図1は、溶接電極11等の当接時を示すが、便宜的にナゲットPを記載している。
【0022】
片側スポット溶接装置1は、溶接ガン10と、サーボモータ21(加圧機構)と、電源回路31と、入力装置41と、制御装置50と、を備えている。このような片側スポット溶接装置1は、例えば、溶接ロボットのアームの先端に組み込まれる。
【0023】
<溶接ガン>
溶接ガン10は、+極側の溶接電極11と、−極側の2本のアース電極12と、溶接電極11を保持する溶接電極保持部13と、を備えている。
【0024】
<溶接ガン−溶接電極>
溶接電極11は、丸棒状を呈し、その先端(図1の下端)が、ワークWの溶接部位Qの上面に当接されるものである。溶接電極11の基端部(図1の上端部)は、溶接電極保持部13に挿通され固定されている。すなわち、溶接電極保持部13は溶接電極11を保持すると共に、溶接電極11と溶接電極保持部13とは一体である。
【0025】
<溶接ガン−アース電極>
アース電極12は、溶接電極11と平行であって、溶接電極11の左右に距離Lを隔て、溶接電極11を対称中心として配置されている。ただし、アース電極12の数はこれに限定されず、3本、4本等に変更してよい。このように変更する場合、複数本のアース電極12を、溶接電極11を中心とする円周上に等間隔で配置すればよい。
【0026】
アース電極12の基端部は、アダプタ14に着脱自在取り付けられており、アダプタ14は、その上部にシャフト14aを有している。よって、アース電極12はシャフト14aと一体である。
【0027】
シャフト14aの上部は、溶接電極保持部13の貫通孔13aに挿通されている。これにより、アース電極12は、溶接電極11の軸方向(図1の上下方向)において、溶接電極保持部13(溶接電極11)と相対位置を可変自在となっている。また、シャフト14aの上端には、シャフト14aが溶接電極保持部13からの脱落を防止するためのフランジ14bが形成されている。
【0028】
溶接電極保持部13とアダプタ14との間には、圧縮コイルばね15が介装されている。圧縮コイルばね15は、アース電極12をワークWに向けて付勢し(図4(a)参照)、溶接中(通電中)、アース電極12をワークWに良好に接触させるものである。ただし、圧縮コイルばね15のばね力は、溶接電極11のワークWへの当接後、溶接が進み溶接電極11がワークWに対して沈んだ、つまり、ワークWに対して下方に変位したとしても、圧縮コイルばね15が縮退し、アース電極12がワークWに対して変位しない弱いばね力に設定されている。
【0029】
<溶接ガン−変位量センサ>
溶接ガン10は、2つの変位量センサ16を備えている。変位量センサ16は、溶接電極保持部13(溶接電極11)と、シャフト14a(アース電極12)との軸方向における相対位置(距離)を検出するセンサである。変位量センサ16は、ブラケット16aを介して溶接電極保持部13に固定されると共に、そのロッド16bが貫通孔13a内を延び、ロッド16bの下端がフランジ14bの上面に当接している。
【0030】
ロッド16bは、シャフト14aに連動して、軸方向においてスライドし、変位量センサ16が、溶接電極保持部13とシャフト14a(アース電極12)との相対位置を検出し、制御部51に出力するようになっている。
【0031】
ここで、溶接電極11と溶接電極保持部13とは一体であり、前記したように、アース電極12はワークWへの当接後、ワークWに対して変位しないから、ワークWへの当接後において、変位量センサ16の検出する変位量は溶接電極11の変位量(ワークWに対する溶接電極11の沈み込み量)と等しくなる。
【0032】
<サーボモータ>
サーボモータ21は、制御部51からの指令に従って、溶接ガン10(溶接電極保持部13)を図1の上下方向に移動させると共に、溶接電極11でワークWの溶接部位Qを加圧する加圧機構である。そして、電圧センサ22が、サーボモータ21の印加電圧を検出し、制御部51に出力するようになっている。したがって、溶接電極11がワークWに当接すると、電圧センサ22の検出する電圧が上昇するので、制御部51が溶接電極11の当接時を検知するようになっている。
【0033】
<電源回路>
電源回路31は、制御部51からの指令に従って、溶接電極11及びアース電極12を経由するように、スポット溶接用の電流を通電させる回路である。電源回路31の+端子は溶接電極11に接続されており、電源回路31の−端子はアース電極12に接続されている。このような電源回路31は、交流電源、インバータ、スイッチング回路等を備えて構成されている。
【0034】
<入力装置>
入力装置41は、オペレータが、目標ナゲット径(目標ナゲット大きさ、目標溶接強度)、ワークWの材質、ワークWの厚さ、溶接部位Qの情報(角部、中央部等)、等を入力する装置であり、キーボード等を備えている。そして、入力装置41は、目標ナゲット径等の入力された情報を制御部51に出力するようになっている。
【0035】
<制御装置>
制御装置50は、制御部51と、記憶部52(データベース)と、を備えている。
【0036】
<制御装置−制御部>
制御部51は、片側スポット溶接装置1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機器を制御し、各種処理を実行するようになっている。
【0037】
制御部51は、入力装置41から入力された目標ナゲット径等と、後記する図2のマップとに基づいて、溶接電極11の目標変位量を算出する機能を備えている。
【0038】
<制御装置−記憶部>
記憶部52は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置で構成されている。そして、記憶部52には、図2のマップ(データベース)が記憶されている。図2のマップは、種々の事前試験によって取得されたものであり、溶接電極11の変位量とナゲット径D(溶接強度、図1参照)とが相関性を有している。すなわち、溶接電極11の変位量とナゲット径(溶接強度)とは、相関式Fの関係を有しており、溶接電極11の変位量が大きくなるにつれて、ナゲット径(溶接強度)が大きくなる関係となっている。
【0039】
なお、図2のマップは、ワークWの材質、ワークWの厚さ、溶接部位Qの情報(角部、中央部等)、溶接電極11の形状(大きさ、材質等)、加圧力、通電電流、通電時間、溶接時間、毎に記憶されている。
【0040】
≪片側スポット溶接装置の動作、片側スポット溶接方法≫
次に、図3〜図5を参照して、片側スポット溶接装置1の動作と、片側スポット溶接方法について説明する。片側スポット溶接方法は、溶接電極11の目標変位量を算出する目標変位量算出ステップと、溶接ステップと、を含んでいる。
【0041】
ステップS101において、制御部51は、目標変位量算出処理を実行する。
具体的には、制御部51は、入力装置41から入力される目標ナゲット径(目標ナゲット大きさ、目標溶接強度)、溶接部位Qの情報(角部、中央部等)、溶接電極11の形状(大きさ、材質等)と、図2のマップ(相関式F)とに基づいて、溶接電極11の目標変位量を算出する(図2参照)。
【0042】
また、制御部51は、目標ナゲット径に基づいて、ブローホールやクラックが形成されないように、加圧力、通電電流、通電時間、溶接時間を算出する。なお、目標ナゲット径が大きくなると、加圧力、通電電流、通電時間、溶接時間が大きく(長く)なる関係となっている。
【0043】
ステップS102において、制御部51は、サーボモータ21を制御して、ステップS101で算出した加圧力F1(図5参照)で、溶接電極11をワークWに当接させる。また、制御部51は、溶接電極11のワークWへの当接後、変位量センサ16を介して、溶接電極11の変位量(沈み込み量)の計測を開始する(図5参照)。なお、溶接電極11のワークWへの当接時は、電圧センサ22を介して検出される電圧の上昇によって検出される(図5参照)。
【0044】
ステップS103において、制御部51は、予備通電処理(溶接ステップ)を実行する。
具体的には、制御部51は、電源回路31を制御し、ステップS101で算出したナゲット形成用の電流値A2よりも小さい予備通電用の電流値A1で通電を開始する(図5参照)。
【0045】
そうすると、溶接電極11、アース電極12が発熱すると共に、ワークWも発熱し軟化する。そして、溶接電極11により第1ワークW1及び第2ワークW2が加圧されることで、溶接電極11と第1ワークW1とが良好に接触し密着すると共に、第1ワークW1と第2ワークW2とも良好に接触し密着する。
なお、このような予備通電は、事前試験等により求められた所定時間にて実行される。
【0046】
ステップS104において、制御部51は、ナゲット形成処理(溶接ステップ)を実行する。
具体的には、制御部51は、加圧力F1を維持しつつ、電流値をステップS101で算出したナゲット形成用の電流値A2に上昇させる(図5参照)。そうすると、第1ワークW1及び第2ワークW2がさらに発熱し、特に、溶接電極11の下方の溶接部位Qにおける温度が非常に高くなる。その結果、第1ワークW1及び第2ワークW2の間において金属原子の拡散が起こり、当該箇所にナゲットPが形成し始める(図1参照)。
【0047】
これに並行して、加圧力F1で加圧される溶接電極11は、ワークWに対して変位、つまり、ワークWに対して沈み込む。これにより、溶接電極11の変位量が大きくなる(図5参照)。なお、アース電極12は、圧縮コイルばね15が縮退するので、ワークWに対して変位しない。
【0048】
ステップS105において、制御部51は、変位量センサ16を介して検出される溶接電極11の実測変位量が、ステップS101で算出した目標変位量以上であるか否か判定する。
【0049】
実測変位量が目標変位量以上であると判定した場合(S105・Yes)、制御部51の処理はステップS106に進む。一方、実測変位量が目標変位量以上でないと判定した場合(S105・No)、制御部51はステップS105の判定を繰り返す。
【0050】
ステップS106において、制御部51は、徐冷処理(溶接ステップ)を実行する。
具体的には、制御部51は、予備通電処理の電流値A1よりも大きく、かつ、ナゲット形成処理の電流値A2よりも小さい電流値A3(A1<A3<A2)で通電させると共に、加圧力F1よりも小さい加圧力F2で加圧する。これにより、ナゲットPの近傍における気孔の発生を抑制し、ブローホールの形成を抑制できる。なお、徐冷処理は、事前試験等によって求められた所定時間にて実行される。
【0051】
また、徐冷処理において、溶接電極11の実測変位量の増加を防止するため、つまり、溶接電極11の沈み込みを防止するため、ロック機構(図示しない)で溶接電極保持部13を軸方向においてロックする。ロック機構は、例えば、溶接電極保持部13に対して進退するロック片と、ロック片を進退させるアクチュエータとを備えて構成される。
【0052】
≪片側スポット溶接装置の効果≫
このような片側スポット溶接装置1によれば次の効果を得る。
目標ナゲット径(目標溶接強度)に基づいて、溶接電極11の目標変位量を算出し、実測変位量が目標変位量となるように、サーボモータ21等を制御するので、溶接品質を容易に管理しつつ、ワークWを良好に溶接できる。また、主に変位量センサ16のみを追加する簡易な構成であるので、片側スポット溶接装置1を低コストで構成でき、量産ラインにも適用容易である。
【0053】
≪変形例≫
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更できる。
【0054】
前記した実施形態では、アース電極12と一体であるシャフト14aの変位量を検出する構成としたが、その他に例えば、溶接電極11の変位量を直接検出する構成としてもよい。
【0055】
前記した実施形態では、サーボモータ21が溶接ガン10を上下に移動させる構成を例示したが、その他に例えば、制御部51からの指令に従って駆動する油圧機構によって、溶接ガン10を移動させる構成としてもよい。この場合、油圧機構は、例えば、上下方向に延びるピストンを上下させる油圧シリンダと、油圧シリンダに対して油を給排する油圧ポンプとを備えて構成される。そして、油圧センサが前記油圧シリンダに封入された油圧を検出し、この油圧に基づいて、制御部51は溶接電極11の当接時を検知するように構成される。また、エアシリンダ(空圧)によって移動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 片側スポット溶接装置
12 アース電極
13 溶接電極保持部
14a シャフト
16 変位量センサ(変位量検出手段)
21 サーボモータ(加圧機構)
31 電源回路
51 制御部(制御手段)
52 記憶部(データベース)
D ナゲット径(ナゲット大きさ)
P ナゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに片側からのみ電極を当接させて溶接する片側スポット溶接装置であって、
前記ワークに片側から当接する溶接電極と、
前記ワークに片側から当接するアース電極と、
前記溶接電極を前記ワークに向かって加圧する加圧機構と、
前記溶接電極及び前記アース電極を経由するように通電させる電源回路と、
前記ワークに対する前記溶接電極の沈み込み量である変位量を検出する変位量検出手段と、
制御手段と、
前記溶接電極の変位量と溶接後のワークに形成されるナゲット大きさとが、予め関連付けられたデータベースと、
を備え、
前記制御手段は、
目標ナゲット大きさと前記データベースとに基づいて、目標変位量を算出し、
前記変位量検出手段の検出する実測変位量が前記目標変位量となるように、前記加圧機構及び前記電源回路を制御する
ことを特徴とする片側スポット溶接装置。
【請求項2】
前記アース電極は前記ワークに当接後、当該ワークに対して変位せず、
前記変位量検出手段は、前記溶接電極と前記アース電極との相対位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の片側スポット溶接装置。
【請求項3】
前記溶接電極を保持する溶接電極保持部と、
前記アース電極と一体であるシャフトと、
を備え、
前記変位量検出手段は、前記溶接電極保持部と前記シャフトとの相対位置を検出する
ことを特徴とする請求項2に記載の片側スポット溶接装置。
【請求項4】
ワークの片側からのみ溶接電極及びアース電極を当接させて溶接する片側スポット溶接方法であって、
目標ナゲット大きさと、前記ワークに対する前記溶接電極の沈み込み量である変位量と溶接後のワークに形成されるナゲット大きさとが予め関連付けられたデータベースと、に基づいて、前記溶接電極の目標変位量を算出する目標変位量算出ステップと、
前記溶接電極の実測変位量が、前記目標変位量となるように、前記溶接電極のワークに対する加圧力と、前記溶接電極及び前記アース電極を経由する通電量と、を制御する溶接ステップと、
を含む
ことを特徴とする片側スポット溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111633(P2013−111633A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261689(P2011−261689)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】