説明

牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理方法及びシステム

【課題】搾乳場を備えた牛舎で生じる牛の糞尿と洗浄廃水を処理し、処理排出物を牛舎を含む一定の環境域内でほぼ完結して処理できるようにして、環境への負荷を最小限に止めることができるようにする。
【解決手段】循環型処理システム(S)は、牛舎(1)で生じた牛の糞尿を処理する糞尿処理系(2)と搾乳場で生じた洗浄廃水を処理する洗浄廃水処理系(3)を有する。糞尿処理系(2)は糞尿を堆肥製造装置(21)によって堆肥化する工程、堆肥を堆肥乾燥装置(22)によって乾燥させ灰にして土壌改良材をつくる工程及び排ガスを脱臭装置(23)で無臭化して大気に放出する工程を備えている。洗浄廃水処理系(3)は洗浄廃水を濾過装置によって濾過し固形分と液分を分離する工程、液分を曝気処理した液を膜分離装置(31)によって処理し余剰汚泥分と水分に分離する工程及び水分を、堆肥が乾燥するときの排ガスを利用する蒸散装置(32)で加熱し蒸散させる工程を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理方法及びシステムに関するものである。更に詳しくは、搾乳場を備えた牛舎において生じる牛の糞尿と洗浄廃水をトータルで処理し、各種処理排出物の減量化と無臭化を行うと共に処理排出物を牛舎を含む環境域内で利用できるようにしてリサイクル率を高め、処理排出物による環境への負荷を最小限に止めることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業における生産、流通、廃棄の各段階において、自然界に排出する排出物を限りなくゼロに近づけることにより循環型社会の構築を目指すという、いわゆるゼロ・エミッション(zero emission)が提唱されている。例えば、牛、豚、鶏等の家畜を飼育して、食肉の他、乳や卵等を生産する畜産においても、家畜が排泄する糞尿や、使用される各種器械を洗浄することにより生じる洗浄廃水の処理が懸案となっており、ゼロ・エミッションの実現が望まれている。畜産を営む環境域において、環境保全上適切な処理を行うことができる処理システムとしては、例えば、特許文献1記載の処理施設がある。
【0003】
この処理施設は、尿汚水浄化処理施設と家畜糞の発酵堆肥化処理施設を備えている。尿汚水浄化処理施設は、原水槽、調整槽、沈殿槽、膜分離処理を備えた曝気槽、脱水汚泥処理槽及び逆浸透膜処理槽を備えている。また、発酵堆肥化処理施設は、発酵槽用舎屋内に開口した発酵槽、操作部で操作される発酵促進給気系機構、脱臭給気系機構、発酵促進換気機構、水分調節機構及び切返し移送装置を備えている。
【0004】
この施設においては、逆浸透膜処理槽からの養分溶解濃縮水と回収した清浄処理水は、移送手段により水分調節機構の貯水槽に流入するようにしてあり、貯水槽に貯留された養分溶解濃縮水や清浄処理水は発酵堆肥製造施設の発酵槽内に散水される。さらに、脱水汚泥処理槽の脱水機から発酵槽に投入された脱水汚泥は、家畜糞と混合され発酵分解させてコンポスト化される。
【0005】
【特許文献1】特開2000−1387
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載された処理施設には次のような課題があった。
すなわち、処理施設から排出される処理排出物である清浄処理水は、最後には自然界に放流されるようになっている。また、処理排出物であるコンポスト(堆肥)も、自然界において利用する必要がある。つまり、処理施設から排出される各処理排出物は、糞尿を生じた一定の環境域内で処理を完結させることができない。しかも、特にコンポストは、その排出量に対して利用が十分に進まないという構造的な問題があり、結局は前記環境域外の自然界に対して、小さくない環境負荷がかかってしまう。
【0007】
(本発明の目的)
本発明は、搾乳場を備えた牛舎において生じる牛の糞尿と洗浄廃水をトータルで処理し、各種処理排出物の減量化と無臭化を行うと共にリサイクル率を高め、さらに処理排出物を、牛舎を含む一定の環境域内でほぼ完結して処理できるようにして、環境への負荷を最小限に止めることができる、牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
牛舎で生じた牛の糞尿を堆肥化しできた堆肥を加熱し乾燥させて土壌改良材をつくり、前記堆肥の乾燥時に生じる排ガスを無臭化して大気に放出し、
搾乳場で生じた洗浄廃水を生物学的方法で処理し、水分を分離した余剰汚泥は前記糞尿または発酵中の堆肥に混ぜて堆肥化し、前記水分は前記排ガスの熱を利用して蒸散させることを含む、
牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理方法である。
【0009】
本発明は、
牛舎で生じた牛の糞尿を処理する糞尿処理系と、
搾乳場で生じた洗浄廃水を処理する洗浄廃水処理系と、
を備えており、
前記糞尿処理系は、
牛の糞尿を堆肥製造装置によって堆肥化する工程、
できた堆肥を堆肥乾燥装置によって乾燥させ、灰にして土壌改良材をつくる工程、
前記堆肥の乾燥によって生じる排ガスを冷却し脱臭装置で無臭化して大気に放出する工程、
を備えており、
前記洗浄廃水処理系は、
洗浄廃水を廃水処理装置によって処理して水分と余剰汚泥分に分離する工程、
前記水分を前記排ガスの熱を利用して蒸散装置によって蒸散させる工程、
前記余剰汚泥分を前記堆肥製造装置に送って堆肥化する工程、
を備えている、
牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システムである。
【0010】
本発明は、
牛舎で生じた牛の糞尿を処理する糞尿処理系と、
搾乳場で生じた洗浄廃水を処理する洗浄廃水処理系と、
を備えており、
前記糞尿処理系は、
牛の糞尿を堆肥製造装置によって堆肥化する工程、
できた堆肥を堆肥乾燥装置によって乾燥させ、灰にして土壌改良材をつくる工程、
前記堆肥の乾燥によって生じる排ガスを冷却し脱臭装置で無臭化して大気に放出する工程、
を備えており、
前記洗浄廃水処理系は、
洗浄廃水を濾過装置によって濾過し、固形分と液分に分離する工程、
液分を曝気槽で処理し活性汚泥を含む混合液を分離膜を有する膜分離槽によって処理し、水分と余剰汚泥分に分離する工程、
前記分離膜による処理で生じた水分を、前記堆肥を乾燥させるときの排ガスを熱源として利用する蒸散装置で加熱し蒸散させる工程、
を備えており、
前記濾過装置において生じた固形分と膜分離槽において生じた余剰汚泥分を、前記堆肥製造装置で堆肥がつくられるときに糞尿または発酵中の堆肥に混ぜるようにし、前記膜分離槽において生じた水分の一部は前記堆肥に混ぜて堆肥の含水率の調整を行うために使用する、
牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システムである。
【0011】
本発明においては、膜分離槽において生じた水分の一部を脱臭装置へ送って脱臭処理材に含まれる水分の維持または調整のために使用するようにしてもよい。
【0012】
(作用)
本発明の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0013】
牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システム(S)は、糞尿処理系(2)と洗浄廃水処理系(3)による処理を並行して行い、各処理系(2,3)で生じる熱や水分を相互に有効利用することによって、牛舎(1)を含む一定の環境域において、処理排出物をほぼ完結して処理できるものである。
【0014】
糞尿処理系(2)においては、まず、牛舎(1)で飼育されている牛の糞尿を堆肥製造装置(21)へ送り、一旦堆肥化する。できた堆肥は堆肥乾燥装置(22)によって加熱して乾燥させ、灰にする。この乾燥は自燃によって行うようにして燃料の消費を着火時のみとし少なく抑えるのが好ましい。これにより生じた処理排出物である灰は、この環境域内で土壌改良材として使用する。土壌改良材としての灰の利用は、堆肥とは異なり比較的容易である。
【0015】
堆肥を乾燥させることにより生じる高温の排ガスは、洗浄廃水処理系(3)の蒸散装置(32)に送られて、水分を加熱する熱源として利用される。また、排ガスはその際の熱交換により低温になり、脱臭装置(23)へ送られて処理され無臭化される。無臭化したガスは大気へ放出される。
このように、牛舎(1)で生じる糞尿の処理は、排ガスの大気への放出による二酸化炭素による環境負荷はあるが、一定の環境域内でほぼ完結させることができる。
【0016】
洗浄廃水処理系(3)においては、搾乳場において生じる洗浄廃水が濾過装置(35)で固形分(ゴミ分、生汚泥分)と液分に分離される。固形分は、前記堆肥製造装置(21)で堆肥がつくられる工程で糞尿または発酵中の堆肥に混ぜられる。また、液分は曝気処理され、膜分離槽(38)の分離膜で精密濾過されて、水分と余剰汚泥分に分離される。
【0017】
この余剰汚泥分は、脱水処理を行った後、前記堆肥製造装置(21)で堆肥がつくられる工程で糞尿または発酵中の堆肥に混ぜられる。水分は蒸散装置(32)へ送られて堆肥を乾燥させるときに生じる高温の排ガスを利用して加熱されると共に、この際の熱交換によって排ガスの温度を下げる。水分は、加熱されることによって大気中へ効率よく蒸散される。また、水分の一部は必要に応じて堆肥に混ぜられて堆肥の含水率を調整するために使用される。なお、水分の一部は、脱臭装置(23)へ送って脱臭処理材に含まれる水分の維持または調整のために使用することもできる。
このように、搾乳場で生じる洗浄廃液の処理は、前記糞尿の処理と同様に、牛舎を含む一定の環境域内でほぼ完結させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、搾乳場を備えた牛舎において生じる牛の糞尿と洗浄廃水をトータルで処理し、各種処理排出物の減量化と無臭化を行うと共に処理排出物を牛舎を含む一定の環境域内で利用できるようにしてリサイクル率を高め、処理排出物による環境への負荷を最小限に止めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1は本発明に係る、牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システムの概略説明図、
図2は牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システムを構成する廃水処理装置のフロー図である。
【0020】
牛舎を含む環境域(環境区域)における廃棄物の循環型処理システムS(以下、単に循環型処理システムSと表記する場合がある)は、図1に示すように、搾乳場(符号省略)を付設した牛舎1と、牛舎1で生じる牛の糞尿(排泄物)を処理する糞尿処理系2と、搾乳場で生じた洗浄廃水を処理する洗浄廃水処理系3を備えている。
【0021】
牛舎1においては乳牛が飼育され、搾乳場(パーラーともいう)で搾乳器を使用して搾乳が行われる。搾乳場においては、乳牛の体を洗浄したり、搾乳後に搾乳器を洗浄することにより、大量の洗浄廃液が生じる。
【0022】
糞尿処理系2は、牛舎1から出る糞尿を一旦堆肥化するための堆肥製造装置21を備えている。堆肥製造装置21は、例えばピットに収容した糞尿を移動撹拌機で撹拌して発酵させるものが採用されるが、これに限定するものではない。
【0023】
堆肥製造装置21の後工程には、堆肥製造装置21でつくられた堆肥を乾燥させる堆肥乾燥装置22が設けられている。堆肥乾燥装置22は、堆肥に着火した後は堆肥を自燃させることによって乾燥させるものであり、堆肥は自然に灰になる。この灰は、土壌改良材として使用できる。
【0024】
堆肥乾燥装置22の後工程には、堆肥乾燥装置22における堆肥の乾燥によって発生する排ガスを脱臭する脱臭装置(生物脱臭槽)23が設けられている。堆肥を乾燥させることにより生じる排ガスは、熱、蒸気を含み特有の強い臭気を有している。脱臭装置23は、後述する蒸散装置32で一旦冷却された排ガスの各種臭気成分を分解または吸着して排ガスを無臭化する。脱臭装置23は、例えば脱臭処理材(図示省略)として、微生物を付着させて繁殖させたロックウール、オガ粉(オガクズ)、もみがら等を使用した装置が採用されるが、これに限定するものではない。
【0025】
洗浄廃水処理系3は、搾乳場で生じた洗浄廃水を生物学的方法である活性汚泥法で処理して浄化する廃水処理装置31を備えている。廃水処理装置31の詳細については後述する。
廃水処理装置31の後工程には、水冷式の冷却塔(図示省略)を備えた蒸散装置32が設けられている。蒸散装置32は、前記堆肥乾燥装置22において生じる高温の排ガスを熱源として利用して廃水処理装置31で生じた水分を加熱して蒸散させるものである。
また、蒸散装置32は、冷却塔での熱交換によって排ガスの温度を所要の温度まで低下させる。そして、温度が低下した排ガスは、前記脱臭装置23へ送られて無臭化処理される。
【0026】
前記廃水処理装置31において生じた固形分と脱水された余剰汚泥分は前記堆肥製造装置21で堆肥がつくられる工程で糞尿または発酵中の堆肥に混ぜられる。また、廃水処理装置31において余剰汚泥分の脱水により生じた水分及び分離膜処理により生じた水分の一部は前記堆肥に適宜量が混ぜられて堆肥の含水率の調整が行われる。また、前記水分の一部は、前記脱臭装置23へ送られて脱臭処理材に含まれる水分の維持または調整のために使用される。
【0027】
次に、前記廃水処理装置31の構造の概略を図2を参照して説明する。
33は原水ピットで、原水ピット33には搾乳場で生じた洗浄廃水がそのまま送られて一旦貯留される。34は原水槽で、原水ピット33から送られた原水が曝気処理される。35は濾過装置であるスクリーンで、原水槽34から送られた処理水を濾過する。スクリーン35としては、ウェッジワイヤスクリーンが採用されている。スクリーン35は前処理部を構成し、原水に含まれるゴミ等の固形分を分離する。この固形分は、前記のように堆肥に混ぜられる。
【0028】
36は調整槽で、スクリーン35で分離された液分を曝気処理する。調整槽36と前記原水槽34は、浄化槽の前調整部を構成する。
37は曝気槽で、調整槽36で処理された液分を曝気処理する。
38は膜分離槽で、曝気槽37で処理された液分を分離膜(符号省略)で処理し、水分と余剰汚泥分に分離する。本実施の形態では、分離膜として、精密濾過ができる平膜型のMF膜(精密濾過膜)ユニットが採用されているが、UF膜(限外濾過膜)等、他の分離膜を採用することもできる。
曝気槽37と膜分離槽38は活性汚泥処理部を構成する。
【0029】
39は汚泥貯留槽で、膜分離槽38で水分と分離された余剰汚泥分を一旦貯留する。
40は脱水機で、汚泥貯留槽39から送られた余剰汚泥に高分子を混合してベルトスクリーンとローラで圧搾して脱水する。41は搾水ピット、42は高分子タンク、43はリサイクルタンクである。これらは、余剰汚泥脱水部を構成する。
脱水機40で余剰汚泥を脱水してできた脱水汚泥は、前記のように堆肥がつくられる工程で糞尿または発酵中の堆肥に混ぜられる。搾水ピット41に入った搾水は、リサイクルタンク43から前記原水槽34へ戻される。
【0030】
44は膜洗浄液タンクで、定期的に行われる前記膜分離槽38の分離膜の洗浄の際に洗浄液を送る。
45は消毒槽で、膜分離槽38から送られた水分に次亜塩素酸カルシウムを入れて消毒を行う。消毒槽45で消毒された水分は、前記蒸散装置32及び脱臭装置23に送られる。
【0031】
(作用)
本実施の形態に係る循環型処理システムSの作用を図1及び図2を参照して説明する。
糞尿処理系2においては、まず、牛舎1で飼育されている乳牛の糞尿を堆肥製造装置21へ送り、一旦堆肥化する。
できた堆肥は堆肥乾燥装置22へ送られ、自燃によって乾燥させ、灰になる。これにより生じた処理排出物である灰は、この牛舎1を含む一定の環境域内で土壌改良材として使用する。土壌改良材としての灰の利用は、堆肥とは異なり使い切ることは比較的容易である。
【0032】
堆肥乾燥装置22で堆肥を乾燥させることにより生じる高温(300℃程度)の排ガスは、洗浄廃水処理系3の蒸散装置32に送られて熱源として利用される。これにより、蒸散装置32は、廃水処理装置31で生じた水分を加熱して蒸散させる。また、蒸散装置32は、冷却塔での熱交換によって排ガスの温度を例えば100℃以下(前記脱臭装置23内の微生物が死なない温度)にまで低下させる。そして、温度が低下した排ガスは、前記脱臭装置23へ送られて無臭化処理される。無臭化したガスは大気へ放出される。
このように、牛舎1で生じる糞尿の処理は、ガスの大気への放出により二酸化炭素によるある程度の環境負荷はあるが、牛舎1を含む一定の環境域内でほぼ完結させることができる。
【0033】
洗浄廃水処理系3においては、搾乳場において生じる洗浄廃水が廃水処理装置31のスクリーン35で固形分(ゴミ分)と液分に分離される。固形分は、前記堆肥製造装置21の堆肥がつくられる工程で糞尿または発酵中の堆肥に混ぜられる。液分は調整槽36及び曝気槽37で曝気処理される。曝気処理されて活性汚泥を含む混合液の一部は、膜分離槽37へ送られて分離膜で精密濾過され、水分と余剰汚泥分に分離される。なお、活性汚泥を含む混合液の他の一部は曝気槽37の入口側に返送される。
【0034】
前記余剰汚泥分は、脱水機40へ送られて脱水され、脱水汚泥は前記堆肥製造装置21へ送られて堆肥がつくられる工程で糞尿または発酵中の堆肥に混ぜられる。
水分は蒸散装置32へ送られて堆肥を乾燥させるときに生じる高温の排ガスを利用して加熱され、大気中へ蒸散される。また、水分の一部は必要に応じて堆肥製造装置21内の堆肥に混ぜられて堆肥の製造時における含水率を調整するために使用される。ここでの堆肥の含水率は、およそ70〜90%に調整される。
【0035】
さらに、水分の一部は、脱臭装置23へ送られて、脱臭処理材(ロックウール、オガ粉、もみがら等)に含まれる水分の維持または調整のために使用される。
このように、搾乳場で生じる洗浄廃液の処理は、前記糞尿の処理と同様に、牛舎1を含む一定の環境域内でほぼ完結させることができる。
【0036】
つまり、循環型処理システムSは、糞尿処理系2と洗浄廃水処理系3による処理を並行して行い、各処理系で生じる熱や水分等を相互に有効利用することによって、牛舎1を含む一定の環境域において、処理排出物をほぼ完結して処理できるものである。
なお、堆肥乾燥装置22で生じる排ガスまたは蒸散装置32の廃熱は、例えば野菜や花を栽培する栽培ハウスの空気調和を行う熱源としても利用できる。
【0037】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る、牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システムの概略説明図。
【図2】牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システムを構成する廃水処理装置のフロー図。
【符号の説明】
【0039】
S 循環型処理システム
1 牛舎
2 糞尿処理系
21 堆肥製造装置
22 堆肥乾燥装置
23 脱臭装置
3 洗浄廃水処理系
31 廃水処理装置
32 蒸散装置
33 原水ピット
34 原水槽
35 スクリーン
36 調整槽
37 曝気槽
38 膜分離槽
39 汚泥貯留槽
40 脱水機
41 搾水ピット
42 高分子タンク
43 リサイクルタンク
44 膜洗浄液タンク
45 消毒槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛舎で生じた牛の糞尿を堆肥化しできた堆肥を加熱し乾燥させて土壌改良材をつくり、前記堆肥の乾燥時に生じる排ガスを無臭化して大気に放出し、
搾乳場で生じた洗浄廃水を生物学的方法で処理し、水分を分離した余剰汚泥は前記糞尿または発酵中の堆肥に混ぜて堆肥化し、前記水分は前記排ガスの熱を利用して蒸散させることを含む、
牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理方法。
【請求項2】
牛舎(1)で生じた牛の糞尿を処理する糞尿処理系(2)と、
搾乳場で生じた洗浄廃水を処理する洗浄廃水処理系(3)と、
を備えており、
前記糞尿処理系(2)は、
牛の糞尿を堆肥製造装置(21)によって堆肥化する工程、
できた堆肥を堆肥乾燥装置(22)によって乾燥させ、灰にして土壌改良材をつくる工程、
前記堆肥の乾燥によって生じる排ガスを冷却し脱臭装置(23)で無臭化して大気に放出する工程、
を備えており、
前記洗浄廃水処理系(3)は、
洗浄廃水を廃水処理装置(31)によって処理して水分と余剰汚泥分に分離する工程、
前記水分を前記排ガスの熱を利用して蒸散装置(32)によって蒸散させる工程、
前記余剰汚泥分を前記堆肥製造装置(21)に送って堆肥化する工程、
を備えている、
牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システム。
【請求項3】
牛舎(1)で生じた牛の糞尿を処理する糞尿処理系(2)と、
搾乳場で生じた洗浄廃水を処理する洗浄廃水処理系(3)と、
を備えており、
前記糞尿処理系(2)は、
牛の糞尿を堆肥製造装置(21)によって堆肥化する工程、
できた堆肥を堆肥乾燥装置(22)によって乾燥させ、灰にして土壌改良材をつくる工程、
前記堆肥の乾燥によって生じる排ガスを冷却し脱臭装置(23)で無臭化して大気に放出する工程、
を備えており、
前記洗浄廃水処理系(3)は、
洗浄廃水を濾過装置(35)によって濾過し、固形分と液分に分離する工程、
液分を曝気槽(37)で処理し活性汚泥を含む混合液を分離膜を有する膜分離槽(38)によって処理し、水分と余剰汚泥分に分離する工程、
前記分離膜による処理で生じた水分を、前記堆肥を乾燥させるときの排ガスを熱源として利用する蒸散装置(32)で加熱し蒸散させる工程、
を備えており、
前記濾過装置(35)において生じた固形分と膜分離槽(38)において生じた余剰汚泥分を、前記堆肥製造装置(21)で堆肥がつくられるときに糞尿または発酵中の堆肥に混ぜるようにし、前記膜分離槽(38)において生じた水分の一部は前記堆肥に混ぜて堆肥の含水率の調整を行うために使用する、
牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システム。
【請求項4】
膜分離槽(38)において生じた水分の一部を脱臭装置(23)へ送って脱臭処理材に含まれる水分の維持または調整のために使用する、
請求項3記載の牛舎を含む環境域における廃棄物の循環型処理システム。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−5601(P2010−5601A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171458(P2008−171458)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 日本工業新聞社 刊行物名 「月刊地球環境」2008年2月号 発行年月日 平成20年1月1日
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【出願人】(500393848)株式会社大建 (1)
【Fターム(参考)】