説明

物体および生物をマーキングし、または識別するためのセキュリティ要素

本発明は、物体、または人々、動物もしくは植物などの生物をマーキングし、認証し、または識別するためのセキュリティ要素であって、互いに隣接してもしくは互いの上に配置されるかまたは重なり合う、セキュリティマーキングを含み得る材料の1つまたは複数の層を含み、セキュリティ要素の少なくとも1つの層が、裂け目またはクラック、切り込み、摩耗エリアまたは収縮および可能性としての不純物の形態のクラックルパターンを少なくとも局部的に含み、そのクラックルパターンが、セキュリティ指標として一緒にまたは別個に走査および検出され得るセキュリティ要素に関する。本発明は、さらに、かかるセキュリティ要素を生成するための方法、および人もしくは物体を認証するための、または行動を認証、トリガ、継続、実行、および終了するためのセキュリティ要素の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体、特に、文書、有価証券、スタンプ、ラベル、銀行手形、紙幣、身分証明書、身分証明カード、他のIDカード、パスポート、(チップ)カード、アクセスカード、クレジットカード、アクセス制御カード、チケット、運転免許証、車両書類、紙幣、小切手、郵便切手、ラベル、ビネット、絵画、美術品、家具、測定装置、機械部品、機械、車両、カメラ、携帯電話、コンピュータ、コンピュータ状装置、データ記憶媒体、印刷物、本、織物、ファッションアイテムおよびスポーツ用品、技術的装置、工具/道具、紙およびダンボール箱、パッケージングと同様に製品など、または人、動物、または植物などの生物をマーキングし、認証し、または識別するための請求項1のプリアンブル(前提部分、所謂おいて書き部分)に係るセキュリティ要素に関する。本発明は、さらに、このタイプのセキュリティ要素の製造方法、人もしくは物体を認証するための、または行動を許可するためのセキュリティ要素の使用、および物体または生物のラベル付け、認証もしくは識別のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば文書、身分証明カード、パスポートなどのセキュリティ関連物体には、一般に、その物体を特定の人に帰することができる、個別化または個人化された情報を備えたセキュリティ指標が含まれる。簡単な形態では、かかる個人化情報は、画像情報、例えばパスポート写真、バイオメトリック指標あるいは特徴、または例えば人の名前、住所、生年月日などの他の指標あるいは特徴として利用可能である。しかしながら、この情報は、条件付きでのみ保持者の絶対的に確かな識別を可能にし、かつ、大抵大きな労力をかければ、明るみに出すかまたは偽造することが可能である。
【0003】
不正から保護するかまたは物体を耐偽造性にするために、セキュリティ指標が、物体に施されるか、またはその物体中に導入される。しかしながら、偽造用に利用できる可能性があるゆえに、かかるセキュリティ要素の絶対的に確実な割り当ては、これまで未解決な問題のままだった。
【0004】
この種のセキュリティ要素は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、および特許文献7、および特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、および特許文献13に開示されている。最後に言及した米国の特許文献は、インクジェット印刷、すなわち、機械的および/または化学的損傷および不正操作からの保護として、保護コーティングまたは保護膜で保護されることになるインクジェット印刷がブランクに施される方法を開示している。個人化および/または個別化情報は、セキュリティまたはバリュー文書に印刷で記憶される。しかしながら、かかる印刷されたセキュリティまたはバリュー文書は、不正操作からのある程度の保護を提供するだけである。なぜなら、保護ラッカー層は、容易に緩めるか、かつ/または除去することが可能であり、したがって、印刷画像に影響を及ぼすことが可能であるからである。さらに、同一の保護ラッカーを備えた同一の印刷画像を偽物に適用することができ、その結果、偽物は、もはやオリジナルから区別することができない。認証の決定は、不可能かまたは大きな労力をかけてのみ可能である。
【0005】
特許文献14では、文書保護用の画像情報が、文書の少なくとも2つの層に挿入される。画像情報には、電子透かし情報が含まれ、その際、その少なくとも2つの層における電子透かし情報の全体だけが、文書を認証するためのセキュリティ指標を形成する。このシステムもまた、耐偽造性ではない。これらの層は、再び、同一にかまたは一見類似して作製することができる。さらに、身元は、特定の人にはっきりと割り当てることができない。誤陰性、ならびにオペレータのエラー、ユーザのエラーまたは送信関連エラーもまた、引き続き起こり得る。
【0006】
別のタイプのセキュリティ要素が、特許文献15に説明されているが、このセキュリティ要素は、オリジナルと模倣との間の構成比較用のマイクロアセンブリを用いる周知の視覚的マーキングが、2次元または3次元の幾何学的パターンに基づいているという事実を利用する。これらは、常に所定の規則に従って実現され、その結果、これらの選択的に製造されたマイクロアセンブリの模倣が、やはり可能である。
【0007】
特許文献16は、回折構造を備えた、証券用紙、バリュー文書等のためのセキュリティ要素を説明しているが、このセキュリティ要素は、エンボスレリーフ構造、およびエンボスレリーフ構造における回折効果のセキュリティを向上させるコーティング層を有する。レリーフ構造は、コレステロール液晶材料に基づいて形成され、コーティング層は、反射および/または高屈折率層を含む。これらの方法は、原則として、中世から知られているエンボススタンプと、同様に昔から知られている、上に重なるシールスタンプとの組み合わせを扱う。
【0008】
特許文献17は、第1および第2の認証機能を備えた、貴重品の保護用のセキュリティ要素を説明している。第1の認証機能には、ラスタに存在する複数のレンズ形状要素を備えた第1の構成と、第2のラスタに存在する複数の微細構造を備えた第2の構成と、が含まれる。この場合に、第1および第2の構成は、第2の構成の微細構造が、第1の構成のレンズ形状要素を通して見られた場合に、拡大して見えるような方法で配置される。第2の認証機能は、機械的および/または視覚的に検査することができ、かつ第1の認証機能の第1の構成によって影響されない。
【0009】
これらのラスタもまた、構造が読み取られ、それに応じて偽造に再利用されるという点で、偽造可能である。この場合には、次のことを考慮しなければならない。すなわち、偽物は、本物であるという印象を伝達する必要があるだけであり、したがって、1層においてのみの適用が可能であり、この印象を、両方のラスタの組み合わせが、オリジナルの場合と同様にリーダによって読み取られるときに、再現することを考慮しなければならない。結果として、適切なリーダでオリジナルを読み取り、このタイプの偽造層を生成することで十分であり、ひいては、この偽造層もまた、次のオリジナルリーダによってオリジナルとして分類されることになろう。
【0010】
偽造セキュリティの問題にかかわらず、言及したセキュリティ要素の多くは、限られた数のセキュリティマーキングにのみ触れている。セキュリティは、より多くのセキュリティマーキングがセキュリティ要素において組み合わせられるほど、向上させることができる。このタイプのアプローチが、特許文献18に説明されている。セキュリティ要素は、文書のペーパーウェブ、証券用紙、紙幣、パッケージングおよび製品に導入するための光学的に可変なセキュリティ指標に関する。これは、特に、ホログラムを処理するが、そこでは、導電性マーキング物質が支持膜に施されるのに対して、反射層には、物理的手段によって検出可能だが、人間の視覚では認知できない別のマーキング物質が含まれる。少なくとも1つの導電性ポリマー、および金属顔料を含む膜状反射層が、支持膜に施される。回折構造は、その後に硬化したコーティング層にエンボスされることになる。しかしながら、この作製プロセスは、複製からの保護を意味しない。なぜなら、全てのオリジナルが、それらの特定のセキュリティ指標を維持し、これらが、結局再現可能であるからである。
【0011】
人の認証(アクセス制御)用の、またはオリジナルのマーキング用の前述の既存の方法は、一方で、それらが所定の認証ステップからなるので柔軟性がない。他方で、それらには、偽造から保護するためのどんな効果的な機構も含まれない。さらに、既存のシステムは、それらが受信した情報を比較するだけなので、権限保持者が誰かを決定することができない。例えば、ID所持者が実際に権限保持者か否かにかかわらず、IDまたはアクセスカードが、データベースにおけるデータと比較される。誤陰性の場合とは別に、誤陽性の場合もまた、日常的な問題である。例えば、実際の権限保持者が、PINコードまたは秘密コードを忘れた場合に、正しい人が関わっているにもかかわらず、この人はアクセスを拒否される。反対に、例えば、権限のない人が、預金を引き出す権限を与えられていないにもかかわらず、秘密コードを利用して、盗んだデビットカードを用いて現金自動預け払い機で金銭を引き出すことができる(誤陽性)。現在のシステムは、パスワードで保護された、物理的またはバイオメトリックセキュリティ指標に基づいている。しかしながら、このタイプの3つの要因による認証は、誤陰性および他の不一致が発生し続ける可能性があるので、十分ではない。さらに、送信データの一貫性がチェックされず、これは、ハッカーの攻撃を可能にする。身元は、非システム関連要因で照合されるが、これによって、システムベースのエラーが起こり得る。
【0012】
インテリジェントシステムは、権限保持者自身が、PINコードまたは秘密コードを覚えていない場合に、アクセスできるようにすることを目的としている。なぜなら、権限保持者が、他の偽造不可能な機能に基づいて認証され得るからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】DE 198 101 341
【特許文献2】DE 3 843 076 A1
【特許文献3】EP 1 934 950 A1
【特許文献4】EP 1 748 902 A1
【特許文献5】EP 1 674 286 A1
【特許文献6】EP 1 327 531 A1
【特許文献7】EP 919 916 B1
【特許文献8】US 6,022,429
【特許文献9】US 6,264,296
【特許文献10】US 6,685,312
【特許文献11】US 6,932,527
【特許文献12】US 6,979,141
【特許文献13】US 7,037,013
【特許文献14】DE 10 2008 012 426 A1
【特許文献15】DE 10 2007 020 982 A1
【特許文献16】DE 10 2006 015 023 A1
【特許文献17】DE 10 2005 028 162 A1
【特許文献18】DE 199 28 060 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、耐偽造性セキュリティ指標であって、物体または生物の一意の個別的なマーキング、認証または識別を可能にし、かつ人もしくは物体の認証を可能にするか、または行動の開始、継続、実行もしくは終了を許可する耐偽造性セキュリティ指標を含むセキュリティ要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、請求項1の特徴構成を備えたセキュリティ要素、および請求項21による、物体または生物をマーキングし、認証し、または識別するための方法によって達成される。好ましい実施形態は、従属クレームから得られる。
【0016】
本発明の主な態様は、セキュリティ要素、物体または人の一部である、意図的に導入されたかランダムな表面構造または材料構造の利用からなる。これらには、裂け目およびクラック、切り込み、収縮、摩耗エリアまたは汚損エリアなど、クラックルの形態をした、本発明による地形構造が含まれるが、これらは、既に存在するか、化学的か物理的プロセスもしくは方法によって導入もしくは人工的に生成されるか、またはセキュリティ要素の少なくとも1つもしくは複数の層において操作可能にされる。
【0017】
本出願において、クラックル、クラック、裂け目、切り込み、摩耗エリア、収縮、および/または汚損エリアなど、列挙される表面指標あるいは特徴または材料特性は、用語「クラックルパターン」でまとめられる。
【0018】
したがって、本発明の態様は、裂け目またはクラックの形態をしたクラックル構造の利用である。別の態様は、同様に、一次または二次の乾燥事象の結果として(クラックルのように)発生する可能性がある収縮の利用である。本発明の追加的な態様は、特に、1つまたは複数の層のより小さな/より大きな層状剥離(切り込み)における、別のセキュリティ指標としての表面構造の評価である。さらに、汚損または摩耗エリアもまた、セキュリティ指標として用いることができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、(切り込み、収縮、摩耗または汚損エリアを含む)クラックルパターンの検査および解析に基づいた、物体または生物をマーキングし、認証し、または識別する方法が提供される。
【0020】
本発明は、少なくとも或る領域にて、セキュリティ要素の少なくとも1つの層が、裂け目もしくはクラック、切り込み、摩耗エリアまたは収縮およびそれらの汚損の形態をしたクラックルパターンを有するセキュリティ要素であって、セキュリティ指標として一緒にまたは別個に走査および取得することができるセキュリティ要素を提供する。
【0021】
本発明は、さらに、物体、特に、文書、有価証券、スタンプ、ラベル、銀行手形、紙幣、身分証明書、身分証明カード、他のIDカード、パスポート、(チップ)カード、アクセスカード、クレジットカード、アクセス制御カード、チケット、運転免許証、車両書類、紙幣、小切手、郵便切手、ラベル、ビネット、絵画、美術品、家具、測定装置、機械部品、機械、車両、カメラ、携帯電話、コンピュータ、コンピュータ状装置、データ記憶媒体、印刷物、本、織物、ファッションアイテムおよびスポーツ用品、技術的装置、工具、紙およびダンボール箱、パッケージングの他に製品など、または人、動物もしくは植物などの生物をマーキングし、認証し、または識別するための、かつセキュリティマーキングを含み得る材料の、互いに隣接してもしくは互いの上に配置されたか1つもしくは複数の層かまたは重なり合う層を含むセキュリティ要素であって、少なくとも或る領域におけるセキュリティ要素の少なくとも1つの層において、裂け目またはクラック、切り込み、収縮、摩耗または汚損エリアの形態をしたクラックルパターンが、生成されるか、影響されるか、または操作可能にされ、前記パターンが、セキュリティ指標として一緒にまたは別個に走査および取得可能であることを特徴とするセキュリティ要素を生成するための方法に関する。
【0022】
物体または生物のマーキング、識別および認証とは別に、本発明のセキュリティ要素または方法はまた、行動の認証、開始、継続、実行または終了のために用いることができる。行動は、例えば、プロセスへのアクセス制御またはプロセスを実行するための認証であると理解することができる。
【0023】
クラックル(フランス語:craquele)は、芸術品、絵画、宝石用原石、コーティング層、ガラス面または陶磁器などの物体表面上の裂け目または小さなクラックのメッシュ状の網目を示す。クラクリュール(craquelure)もまた、絵画に関して時々用いられる。特に、美術品の場合には、クラックルは、経年劣化によって引き起こされる場合がある。それはまた、視覚芸術におけるツールのような効果として、人工的に生成されることが多い。
【0024】
油絵、塗面および陶磁器は、乾燥プロセスおよび結合剤の関連する揮発によってクラックルを生じることが多い。技術的な観点から言うと、これらは、乾燥プロセス中の材料の喪失の結果として発生する応力クラックであり、それにより、これは、結合剤に依存し、急速な、または数年にわたる、非常にゆっくりした乾燥プロセスになり得る。後の影響もまた、これらのクラックルに影響する場合がある。例えば、物体が気候変動にさらされる場合に、クラックルは増加する。湿度の変化と共に、基板は膨張する(例えば、木製パネルは幅1メートル当たり約2cmまで)かまたはそれに応じて収縮する。支持材の上の層の膨張係数と支持材の膨張係数とは異なる。反対に、支持材上の層と支持材との間の接着力は非常に強い。これは、水平応力をもたらすが、この力は、層を結びつける力より大きく、その結果、支持材の上のこれらの層における新しい応力クラックにつながる可能性があり、その際、応力クラックは、全ての層または個別の層だけに影響する可能性がある。例えば、異なるペイントまたはコーティングは、環境から水分を全く吸収できないか、またはほんのわずかしか吸収できないので、それらは、湿度が引き起こす基板の膨張動作に十分に適応できない。結果として再び応力およびクラックが発生する。最悪の場合には、一方ではペイント層と、他方では基板との間の結合力が弱すぎる。これは、ペイントの大小様々な剥離につながる場合があり、これは、1層だけかまたはいくつかの層に影響する可能性がある。
【0025】
多くの芸術家が、クラックル仕上げペイント(脆性塗料)を用いるが、これを用いれば、人工的な応力およびそれによる即時的な芸術的クラックル効果を生成することができる。クラックル仕上げペイントは、乾燥プロセス中に収縮し、その結果、微細な裂け目パターンが形成される。その結果、骨董的または歴史的な外観が達成されるはずである。
【0026】
クラックルの場合には、初期収縮クラックおよび経年関連クラックは、基本的に区別され、これらだけが、視覚的にさえ区別可能である。初期収縮クラックが、比較的急速な一次乾燥プロセス中に発生するのに対して、経年関連クラックは、二次乾燥プロセス中またはその後に始まる。初期収縮クラックが、特に目立つ形態を有することが多く、クモ巣状か、同心円状に配向されるかもしくは炎状か、非連続的か、または特定の乾燥ペイント層もしくは保護層(例えばワニス層)に限定されることが多いのに対して、経年関連クラックは、通常、全てのカラー層にわたる。経年関連クラックは、例えば、下層または支持層の変化、移動、収縮または膨張などの外部の影響の結果として発生することが多い。この層の湾曲または膨張動作の減少に依存して、この層または下層もしくは上層における経年関連クラックが発生する場合があり、これはまた、層の局所的なまたは広範囲な分離につながる可能性があり、それは、結局、欠陥として人目につくようになる。かかる場合に、圧裂も発生し、それは、格子構造につながることが多い。層の状態次第で、層が移動する場合には、さらなるクラックが発生する。層が、より多くの経年関連クラックを有するほど、それだけ層は曲げやすくなる。経年関連クラックは、ピクチャの生成中に、いわゆる微小孔および微小断裂に帰することができる。かかる微小孔および微小断裂の選択的な適用によって、選択的な経年関連クラック形成を導入することができる。このように発生されたクラックは、直すことができない。すなわち、既存の経年関連クラックは、かなりのコストをかけてのみ回復でき、事実上不可逆的である。これはまた、通常、前述の初期収縮クラックにも当てはまる。初期収縮クラックにおけるエッジは、経年関連クラックにおけるよりも、一般に(かなり)均一である。クラックル形成につながり得る複合的原因ゆえに、それらの外観は、特に継続的な変更プロセスの場合にも、通常、一意である。
【0027】
クラックルまたは切り込みとは別に、収縮がまた、パターンにつながる場合があり、その際、ここでは、裂け目ではなく隆起部が特有の指標あるいは特徴を表す。それらはまた、結果としてクラックルを形成する可能性がある。しかしながら裂け目またはクラック形成は、全ての場合に発生するとは限らない。かかる収縮は、一般に、一次乾燥プロセス中に発生し、その際、ペイント層は、皮膚のように縮み、したがって反る。これは、裂けた表面を伴ったりまたは伴わずに発生する可能性がある。ここでは、水平張力は、垂直接着力よりも一般に大きく、これは、材料の収縮につながる。半透明物質の収縮は、色変化を通じて視覚的に検出することができる。これは、異なる照明、または傾斜走査角度もしくは上からの走査などの異なる走査角度を用いた解析において、特に明らかになる。収縮はまた、フラットパターン、波パターンまたは溝を形成する可能性がある。これらは、例えば高結合剤密度によって、選択的に生成することができる。状況報告において検出可能なクラックルおよび切り込みならびに他のパラメータとは別に、収縮もまた、セキュリティ指標と見なし、データベースに入力し、かつ物体または人の識別またはマーク用に用いることができる。
【0028】
クラックル裂け目、切り込みまたは収縮は、いくつかの層に影響することが多い特性であり、したがって通常、表面処理の影響をのがれるかまたは引き続き存在する。しかしながら、クラックルパターンならびにその切り込みおよび/または収縮および/または使用の痕跡および/もしくは汚損とは別に、全ての指標を備えた層の上または内部における表面地形全体または材料品質は、追加的なセキュリティ指標として基本的に用いることができる。なぜなら、それがまた、クラックル形成、収縮、または他の指標および剥離または摩耗もしくは汚損エリアにおける継続的な調整ゆえに、経時的にかつ/またはさらなる使用と共に変化するからである。しかしながら、言及したクラックル、切り込みまたは収縮などの容易に取得可能な要素に集中するのが好ましい。したがって、実施形態において、クラックル、切り込み、摩耗および汚損エリアもしくは収縮の代わりに、またはそれらに加えて、1つまたは複数の層の表面地形の他の指標あるいは特徴が、解析および/または取得される。
【0029】
したがって、第1の態様において、本発明のセキュリティ要素には、隣接しておよび/または上下に配置され、かつ1つまたは複数のセキュリティマーキングを含み得る材料で作製された1つまたは複数の層が含まれ、その際、少なくとも1つの層は、セキュリティ指標として走査および取得できるクラック、裂け目、切り込み、収縮、または摩耗エリア(汚損の有無にかかわらず)の形態をしたクラックルパターンを、少なくとも或る領域にて有する。
【0030】
この文脈において用語「物体」は、マーキングされるかもしくは他のアイテムをマーキングするために使用され得るか、またはセキュリティ関連の重要性を有する任意のアイテムと理解される。これらには、例えば、文書、有価証券、スタンプ、ラベル、銀行手形、紙幣、身分証明書、身分証明カード、他のIDカード、パスポート、(チップ)カード、アクセスカード、クレジットカード、アクセス制御カード、チケット、運転免許証、車両書類、紙幣、小切手、郵便切手、ラベル、ビネット、絵画、美術品、家具、測定装置、機械部品、機械、車両、カメラ、携帯電話、コンピュータ、コンピュータ状装置、データ記憶媒体、印刷物、本、織物、ファッションアイテムおよびスポーツ用品、技術的装置、工具、紙およびダンボール箱、パッケージングの他に製品などが含まれる。
【0031】
本発明はまた、既存のクラックル、切り込み、収縮、摩耗または汚損エリアの他に、人工的なクラックル(裂け目またはクラック)、切り込み、収縮、摩耗または汚損エリアの導入および生成を利用して、耐偽造性のセキュリティ指標を生成するか、または既存のセキュリティ指標に影響を及ぼすか、もしくはそれらを操作可能にする。
【0032】
この点において、既存のクラックルパターンはまた、本発明の方法による解析、検査または評価用の対象物またはセキュリティ要素として使用することができる。さらに、これらの構造は、活性化、開始、変更、もしくは促進することができ、またはその生成は、本明細書で説明する本発明の方法を用いて、加速または停止することができる。好ましくは、本発明のセキュリティ要素は、物体自体の層構造を備えた個別の分離可能な物体を表し、その際、例えばプラスチック、紙、布地など任意の材料を、これらの層用の支持体として用いることができる。さらに、その支持体はまた、カラーまたはラッカー層とすることができる。
【0033】
セキュリティ指標層はまた、物体または生物の中に直接導入することができ、それと共に、例えば検査できる2以上の層を1つまたは複数の支持層として形成する。クラックルパターンとは別に、またはその代わりに、導入されたセキュリティ指標層内の他の変化もまた、検査および比較することができる。これらには、とりわけ、例えば顔料などの導入粒子の分解反応、脱色、もしくは分布変化、または不耐性による燃焼反応などの内部的または外部的影響によって引き起こされる顔料組成における変化が含まれる。
【0034】
クラックルパターンは、指紋のように、最終的に特定の起源に帰することができる一意の個別特定構造を表す。既存または人工的に生成されたクラックルパターン、その一部、または特定の期間にわたるその動的な発展を比較することによって、オリジナルを偽造から区別することができる。ちょうど切り込み、収縮、摩耗まま汚損エリアのようなクラックルは、物体および生物(例えば非常に価値のある種馬、植物)にさえ、認識可能なマークとして施すことができ、このようにして生きた透かしのように働く。例えば、追加的な破損および関連するクラックルなどの多数の変化ゆえに、特に導入された指標は、非当事者が検出することはできない。前の状態を復元することも、将来の状態を推測して永続的に複製することもでない。データベースにおける記憶パターンおよび所定の走査領域に基づいて、耐偽造性セキュリティ指標が提供される。
【0035】
クラックルパターンのオリジナルの指標を、クラックル、切り込み、収縮、および摩耗または汚損エリアなどの新しい追加的な指標で周期的に更新することによって、特別なセキュリティを達成することができる。このようにして、全く同じ偽物さえ識別することができる。なぜなら、ある時間後に、新しいクラックル、切り込み、収縮、および摩耗または汚損エリアが追加される(オリジナルおよびまた偽造の両方において、しかしその都度異なっている)とすぐに、偽物は、再びオリジナルと異なるからである。したがって、データベースの連続的な変更および更新が存在する。ハッカーが、記憶データを読み取ることに成功した場合であっても、ハッカーは、クラックルパターンのスナップショットだけを受信することになろう。しかしながら、これらの古いデータは、データベースの進行中の動的な更新ゆえに再びその価値を失い、偽物は、比較的速やかに識別することができる。
【0036】
本発明に関連する用語「クラックルパターン形成層」は、クラックルパターンが形成され得るかまたは既に存在するセキュリティ要素の1つまたは複数の層であると理解される。この点において、クラックル、切り込み、摩耗エリア、または収縮は、いくつかの層を明確に含むことができる(例えば、深い裂け目またはきめの粗い剥離)。したがって、変形において、セキュリティ要素のクラックルパターンが、いくつかの層にわたって延び、その際、層が、それらの構造または組成において同一かまたは異なるようになり得ることが好ましい。
【0037】
物体のマーキングおよび識別とは別に、本発明のセキュリティ要素はまた、生物、例えば人間、動物、植物をマーキングするのに適している。セキュリティ要素は、スタンプとして、または接着ラベルを介して取り外し可能に、人の手の甲に施すことができる。動物または植物において、セキュリティ要素はまた、オリジナルをマークするために用いることができ、これは、特に繁殖場所において非常に適している。それはまた、例えば生体指標などの他の指標と組み合わせて、物体または生物の確実な確認を保証することができる。
【0038】
本発明のクラックル形成は、物理的、磁気的または化学的に生成または影響され得る。化学的なクラックル形成は、例えば、溶剤もしくは結合剤またはそれらの混合物などの化学物質を関連する層の上または中に導入することによって行われ、これがクラックル形成に帰着する。かかる溶剤または結合剤は、液体またはゲル状形態で用いるのが好ましい。その結果、固体および揮発性(液体)成分は、互いに並んで存在する。液体成分は、蒸発する。すなわち経時的に揮発する。その結果、影響を受けるエリアの体積の低減が発生し、それは、結局、表面張力につながる。材料におけるこの表面張力は、後で形成される裂け目および割れ目の原因であることが多い。乾燥およびしたがって表面張力が増加すると、既存の凝集力は、平坦な表面を結び付けるのには十分ではなくなる。裂け目が形成される。
【0039】
現代の製品とは別に、従来の好ましい結合剤は、例えばアミノ酸ポリマーなど、例えば複合ポリマーである。さらに、動物性にかわ、カゼイン、タンパク質および卵黄などの天然ポリマーが適している。例えばアラビアゴム、トラガカントゴムなど、植物由来のゴムにかなりの数で存在する水溶性ポリマーがまた適している。他の例は、デンプン、グアルゴム、タマリンド種子、および他のアマニである。これらの物質は、主として水彩絵の具に、しかしまた細密画、稿本、および他の着色剤、特に紙に施される着色剤に用いられる。
【0040】
他の好ましい結合剤が、油脂である。乾性油には、多不飽和脂肪酸が含まれ、これは、酸化および重合を促進し、したがって、所望のクラックル形成に有利である。例えばオゾケライト、密蝋、カルナウバ蝋などのワックスまたは樹脂の使用がまた可能である。
【0041】
さらに、全ての非天然着色剤、結合剤、溶剤、または他の使用可能な物質もまた適している。
【0042】
実施形態において、クラックル形成は、層組成の選択に従い、また、上または下に配置される層によっても、開始、促進、または加速することができる。
【0043】
クラックルは、層厚に依存して強度が変化する可能性がある。例えば、クラックルは、層がより厚いエリアではより強く、層厚がより薄いエリアではそれほど強くない場合がある。その際、層厚は、クラックルを生じさせる選択的な設計ツールとして用いることができる。用いられる溶剤のタイプに依存して、この層は、より急速に、またはよりゆっくりと、乾燥する可能性があり、これは、今度は、クラックルパターン形成の速度が影響され得ることを意味する。これは、例えば文書が特定の期間にのみ有効であるべき場合に、利用することができる。データベースにおけるクラックルパターンが、認証されることになるクラックルパターンと違いすぎる場合には、文書は、失効したか、操作されたか、または偽造された。パターン許容誤差は、閾値を用いることによって確立することができる。使用される層組成のタイプに依存して、クラックル効果は、より強くかまたはそれほど強くないようにすることができ、それによって、この期間に影響を及ぼすことができる。物理的または化学的方法に依存して、クラックルは、動的な経年劣化プロセス(変化またはさらなる展開プロセス)を設定されるか、または経ることができる。
【0044】
好ましい実施形態において、人工的なクラックルを生成するために、アスファルト、タール、または瀝青を用いるのが好ましい。
【0045】
ここでアスファルトは、結合剤の瀝青および微細鉱物または顔料の混合物を意味する。アスファルト中で特に好ましいのは、非常に高い瀝青含有量(または低い鉱物含有量)を備えたアスファルト鉱である。瀝青は、自然発生的な混合物、または石油から真空蒸留によって生産される混合物であり、かつ様々な有機物質からなる。タールもまた、瀝青のように結合剤であるが、しかしながら石炭にその起源を有する。瀝青またはタールは、硬化中またはその後で、組成に依存して、その材料特性ゆえにそれ自体収縮するか、クラックルを形成するか、または(例えばアスファルトの場合には)下位または上に重なるカラー層を刺激してクラックルを形成させるかまたは収縮させる。
【0046】
基本的には、任意のタイプの合成または天然アスファルト、タールもしくは瀝青を用いて、個別レベルの応力および乾燥動作に影響を及ぼすことができる。天然および合成アスファルト、タールまたは瀝青は、それらの処理または酸化または蒸留によって影響を及ぼすことができる多くの肯定的な特性を有する。アスファルト、タールまたは瀝青の場合のクラックル形成にとって、3つの要因が本質的に重要である。一方では、材料関連の内部要因があり、それは、瀝青のコロイド構造の化学的組成、および特定のアスファルトにおける鉱物含有量に帰することができる。さらに、例えばアスファルト、タールまたは瀝青の温度関連の物理的状態などの外部要因がある。最後に、コーティングの膜厚もまた影響する。
【0047】
アスファルト、タールまたは瀝青が、加熱により粘性を帯びて液体になるので、この材料は、層として基板に容易に施すことができる。硬化後に、組成に依存して、材料は、可撓性または事実上ほぼガラス硬度の表面になる。アスファルトの使用中の破面は、典型的には貝色を有し、光沢があるが、しかしアスファルトの鉱物含有量に依存して、艶がなく、平滑破壊を有する場合がある。
【0048】
必要に応じて、アスファルト、タールまたは瀝青の融点は、油との混合によって低下させることができる。アスファルトの硬化は、様々な要因に依存する。例えば、鉱物含有量および酸素との直接接触が、硬化プロセスを変化させ得る(例えば、加速する)役割を果たす。この状況はまた、タール、ピッチまたは他の関連物質に関しても同様である。瀝青は、さらに、油またはテンペラなどの結合剤と混合し、カラー層または膜として適切な基板に施すことができる。この点で、人工または天然由来の物質と混合してもしなくても、言及した石油残留物は、クラックルを生成するために用いることができる。
【0049】
既に言及したように、目立って、しばしば放射状の初期収縮クラックを経時的に有する他のカラー層を、アスファルト、タールまたは瀝青層に施すことができる。別の実施形態において、クラックルパターン、例えば人工的なクラックル、剥離または収縮は、着色剤、触媒、溶剤もしくは結合剤、または溶剤および結合剤含有物質、またはそれらの混合物の適用および導入、ならびにそれらの、クラックルパターン形成層または下位もしくは上層における続く蒸発によって、開始され影響される。触媒の導入で、活性化およびそれによるクラックル形成が、例えば照射によって行われ得る。光活性触媒の例が、チタンアパタイトであり、これは、照射または電圧によって活性化することができる。
【0050】
クラックル形成は、溶剤および/または結合剤の使用とは別に、低温および熱作用、乾燥・湿気作用、温度変化、光もしくは酸素処理、超音波、誘導または電圧などの外部の影響によってもまた、活性化、開始、促進、加速、変更または抑制することができる。この場合に、1つまたは複数のクラックルパターン形成層の個別エリアは、これらの効果によって分離することができ、その結果、これらのエリアのクラックルパターンにおける変化は、強度が異なることになる。
【0051】
別の実施形態において、磁気クラックルもまた設けることができる。この場合に、金属顔料または金属層の磁化につながる磁化格子を設けるのが好ましい。微細および粗大金属粒子は、磁化格子によって引きつけられ、その方向に移動する。鉄およびクロミウムならびに他の微細金属小粒を用いることによって、異なるクラックル効果を生成することができる。発生するパターンの偶発性ゆえに高度のセキュリティが存在する。他方において、下位磁化層によってこの偶発性を制限または制御すること、および比較的に選択性のあるクラックルプロセスが進行できるようにすることが可能であり、これは、極端な場合には、文書の正確な年代測定さえも可能にする。
【0052】
別の実施形態において、クラックルパターン形成層は、透明層とすることができ、そこでは、クラックルパターンは、肉眼ではかろうじて検出できるか、または全く検出できず、クラックルパターンは、ある条件下または特別な方法でのみ見えるようになる。例えば、クラックルパターンは、汚損が存在する状態においてか、または微細な裂け目およびクラックに定着する顔料(染色)または金属粉の適用によってのみ、見えるようにすることができる。このタイプのクラックルは、全体として、異なるクラックルが見られるように、その汚損後に通常のクラックルと視覚的に組み合わすことができる。非当事者によって知られていない適切な薬剤を用いた洗浄プロセスが、検査プロセスに先行する場合に、透明層は、洗浄手順によって、任意選択的で結果として損傷されることなく再び見えなくなる。このタイプのパターンは、また適切な角度の選択、正確な光源を用いて、または選択的特定のクラックル色への選択的限定によってのみ、検査プロセス中に見えるようにすることができる。
【0053】
反対に、見えないクラックルは、上記の方法の使用による検査プロセスの前に選択的に見えるようにし、検査プロセス後に全体的または部分的に再び見えなくすることができる。クラックルパターンを備えた別の層が、透明なクラックルパターン形成層の下に配置される場合に、偽造者は、この層を検出し、複製を用いて誤った結果を達成することができるだけである。
【0054】
好ましい実施形態において、クラックルパターン形成またはクラックル形成はまた、可逆的(リバーシブル)にすることができ、その結果、クラックルパターンは、いわば、原状に再設定(後退)され、その結果、クラックル形成プロセスを開始または再び始動することができる。
【0055】
原状の回復は、層の組成によって意図するかまたは防ぐことができる。磁化層の場合には、それは、磁化格子の崩壊または極性反転の助けによって行うのが好ましく、その結果、金属元素の構造が変化するか、または再び分散される。この自然回復プロセスは、次の点において、防止できるのが好ましい。すなわち、金属粒子が、乾燥プロセスゆえに経時的に接着力の増加を示す層に導入され、それが、金属粒子をその特定の位置に多かれ少なかれ強く結合するという点で、防止できるのが好ましい。
【0056】
原状の回復はまた、可逆的な自然回復プロセスによっても行うことができる。例えば、クラックル効果は、熱またはUV光によって部分的または完全に再び除去することができる。また、特別な溶剤の適用または導入によって、例えば、既存の層が溶けるか液化するという点で、クラックルパターン効果を部分的または完全に除去することができ、その結果、表面は滑らかになり、裂け目構造は消える。再設定はまた、導入粒子の再分配によって達成できるが、これは、最初に達成しなければならないのと必ずしも同じ分配である必要はなく、単に、先行する分配ともはや一致しない新しい分配である。かかる再分配の代わりに、またはそれとともに、例えば言及した溶剤を用いて、追加の粒子を新しく導入することができる。
【0057】
セキュリティマーキングの再設定または拡張がまた、既存の層の上に新しい層を施すことによって可能である。新しいセキュリティ指標(例えば、クラックル、切り込み、収縮)を備えた新しい層は、このようにして生成することができる。
【0058】
別の選択肢は、触媒またはガス処理との接触である。セキュリティ要素を備えた一時的に有効な文書は、このように生成することができる。高度の複製セキュリティは、異なる設計、すなわち、特に特定の発行時において、有効なクラックルパターンが、中央データベースに記憶されて検索可能な場合に、固定要素と同様にランダムな要素を含む異なる設計を備えた層を使用することによって達成される。
【0059】
好ましくは、クラックルパターン形成層は、1つまたは複数の下層および/または上層によって被覆される。最上層は、クラックルパターンが、人間の目には見えないか、単に部分的に見えるか、または異なって見えるように形成することができる。実施形態において、クラックルパターン形成層は、クラックルパターン、切り込みまたは収縮を見えるようにするために、特定の波長の光だけを通過させる保護膜によって被覆することができる。
【0060】
セキュリティ要素は、一片の織物などの材料の表面に接着するか、または中に導入できるのが好ましい。
【0061】
最下層は、接着層であるようにできるのが好ましく、この接着層によって、セキュリティ要素は、任意の基板に自己接着的に接着することが可能になる。この層は、セキュリティ要素をもはや除去できないように形成するのが好ましい。別の実施形態において、例えば、特定の温度への加熱後に、予め確立された方法を用いることによってか、または特定の溶剤を用いた処理によってのみ、除去を行い得ることが規定される。
【0062】
異なる層の選択的構築およびその修正によって、人工的なクラックルを選択的に生成することができる。層構造に依存して、典型的なクラックルパターン、例えば、ぎざぎざがあるか、不規則か、またはクモの巣状のクラックルを生成することができる。人工的に損傷されたクラックルは、それらが2つの方向に壊れることが多いので、しばしば矩形構造を有する。層の機械的エンボス加工がまた、人工的なクラックルを生成するために可能である。エンボス加工ダイスまたはレーザをツールとして用いることができる。材料に依存して、スチーム、熱およびウォータージェット技術の使用もまた考えられる。
【0063】
クラックル形成は、超音波の使用によって加速することができる。例えば、恐らく存在する複製が後続の検査において検出されないままであることを防ぐために、読み取りプロセスの後で処理を行うことができる。ポイント超音波源の使用が好ましく、その結果、予め画定されたかまたはランダムに選択されたエリアだけが処理される。これらのエリアが、後続の走査動作に含まれ、かつデータベースが更新されると、この指標を永続的に偽造することは不可能である。追加的なセキュリティが、走査されるエリアの定義された選択によってか、またはアルゴリズムの使用による選択によって達成される。変形において、層の1つは、それが、どんなクラックルパターン形成も受けないように、形成することができる。別の変形は、個別の変化だけを可能にする、したがって例えばクラックルは形成するが収縮も切り込みも形成しない材料からなることができる。
【0064】
別の変形において、最上層の上に位置し、かつそれ自体はクラックルを形成しない最終層を設けることができる。それは、液体またはゲル状材料からなるのが好ましい。この材料は、乾燥前に保護膜によって永続的にかまたは時間的に制限して保護することができ、その際、好ましい実施形態では、保護膜は、セキュリティ指標を活性化するために除去される。別の実施形態において、かかる層は、クラックル自体が人間の目にもはや見えないように、クラックルパターン形成層の上に形成される。可視化は、例えば、赤外線光を用いた検査によって行うことができ、これは、さらに、偽造をはるかに困難にする。さらに、いくらか加熱すれば、この層は、それ自体のクラックルパターンを形成するか、またはその組成、従ってその外観を、変更することができる。材料の組成は、セキュリティ要素を除去するかまたは層を分離する試みにおいて、液体またはゲルの成分が、他の層を破壊するようにするのが好ましく、これは、さらに、偽造セキュリティの改善をもたらす。
【0065】
好ましい実施形態において、最上クラックル層における個別のまたは全ての裂け目は、追加的な隣接保護層によって被覆される。その結果、この保護層によって被覆された裂け目は、保持される。この点において、個別の裂け目は、除外することができ、その結果、それらは、保護エリアとは異なる方法で任意選択的にさらに発展する。このように、固定的な裂け目および動的な裂け目の両方が存在する。偽造者は、今やどのエリアが、ランダムにまたは意図的に保護されているか分からない。偽造者はまた、セキュリティ要素のどのエリア、すなわち、どのクラックル構造が、続いて実行される走査動作(走査)の最終要素であるのか分からない。したがって、特に走査範囲が、各読み取り手順においてわずかにシフトされる場合に、このセキュリティ要素を模倣することは不可能である。
【0066】
本発明のセキュリティ要素でマークされた物体または生物のセキュリティ検査は、一定の時点における、クラックルパターンまたはその一部を示す構造データに基本的に基づいて行われる。これらの構造データは、1つのデータセットまたは複数のデータセットに変換され、これらのデータセットは、1つまたは複数の別個の接続経路を介して、1つまたは複数のデータベースが利用できるようにする。新しい追加データセットは、各検査と共に任意選択的に新たに更新される。新しい検査において、クラックルパターンの少なくとも1つの部分が、この時点からさらに発展するのに対して、別の部分は、静的な特徴構造を有する。それがオリジナルなものであるか偽造されたものであるかは、数回の走査から決定することができる。この場合に、走査エリアは、重複しなくても、または一度もしくは繰り返し重複してもよい。重複エリアとは別に、さらに、重複外の1つの独立した、またはいくつかの独立した検査エリアが、走査および取得される。この場合に、1つまたは複数の検査プロセスによって取得されたセキュリティ指標は、1つまたは複数のデータベースに記憶された指標と比較されて変更されるか、または新しい指標が記憶される。かかる走査に基づいて、クラックルパターンをうまく模倣すること、および特に、より長い期間にわたって検出されないままでいることは事実上不可能である。
【0067】
本発明のセキュリティ要素は、多数の層を有するように構築するのが好ましい。クラックルパターン層とは別に、他のセキュリティ関連層を、クラックルパターン層の上、下、および/または内部に配置することができる。最下層の1つはまた、安定した支持層とすることができる。誤り率は、クラックルパターン層を他のセキュリティ指標と組み合わせることによって、さらに低減することができる。例えば、いわゆる誤陰性は、回避することができる。認証の一部として、状況に関連した、人の柔軟な識別もまた可能になる。
【0068】
クラックルパターン形成層の読み取りは、その上または下に配置された層の特性によって、影響を及ぼすか、または部分的もしくは完全に可能にさえすることができる。
【0069】
セキュリティ要素の1つまたは複数の層のあるエリアは、少なくとも或る領域にて被覆することができる。例えば、半透明もしくは被覆保護層またはワニス層をクラックル層に施すことができ、その結果、例えば、クラックルは、見えないか、単に部分的に見るだけか、またはUV、IRもしくは通常光の下のみで見えるようにさえなる。
【0070】
上下に配置された異なる層が、異なる光波長で走査される点で、別のセキュリティ要因を、実行される走査動作において用いることができる。読み取り手順に依存して、クラックルパターンは、通常光(380〜780nm)、UV光(1〜380nm)またはIR−A1(780〜1100nm)もしくはIR−A2光(1100〜1400nm)で見えるようにすることができる。例えば、最上層は、900nmの波長のIR1光源で走査することができ、その結果、この層のクラックルパターンだけが見えるようにされる。次に、その下の層およびそのクラックルパターンは、例えば1200nmの別の波長で見えるようにすることができる。好ましいIR領域、すなわち、それを用いて異なる走査が実行され、それでも十分に離間された好ましいIR領域は、約780nm〜約1100nm(IR−A1)および約1100nm〜1400nm(IR−A2)に存在する。本発明のセキュリティ要素用に使用できる追加的なセキュリティ要因が、異なる波長および/または測定方法の組み合わせに含まれる。偽造者は、どのエリアが、いつ、どの波長を用いて走査されるか、およびどのクラックルパターンを(または他のセキュリティ指標もしくはセキュリティ指標の組み合わせ)を予想または評価しなければならないかが分からない。
【0071】
好ましくは、層の同じか異なるエリアにおける、裂け目、切り込み、収縮、摩耗および/または汚損エリアならびに任意選択的に他のセキュリティ指標を備えたクラックルパターンが、異なる測定方法またはパラメータで走査および取得され、その際、各測定方法または各パラメータは、それ自体のデータセットを提供することができるが、このデータセットは、一緒にまたは別個に取得され、1つまたは複数の既存データベースにおいて任意選択的に更新される。これによって、データの別個の送信および/または記憶は、無許可の第三者によるデータアクセスの保護を非常に大幅に向上させる。これらのパラメータの確立および測定方法の選択は、柔軟にすることができる。それは、ランダムに、または所定の論理もしくはアルゴリズムに従って、行うことができる。
【0072】
実施形態において、クラックルパターン、特に裂け目、切り込み、摩耗エリア、収縮、汚損エリアは、異なる測定方法またはパラメータを用いて、層の異なるエリアで走査および取得され、その際、各測定方法または各パラメータは、それ自体のデータセットを提供することができるが、このデータセットは、1つまたは複数の任意選択的に独立した伝送経路において、必要に応じて取得され、記憶され、かつ読み取られるか、または1つまたは複数の任意選択的に独立したデータベースにおいて更新され、その際、前のデータセットは、任意選択的に上書きされないが、しかし、タイムスタンプを備えた新しいデータおよび新しいバージョン番号で補足される。
【0073】
別のセキュリティ指標もまた、走査装置用の特定の走査角度、ならびに/または走査用に用いられる光のタイプおよび入射角度(例えば偏光、閃光もしくは斜光、またはそれらの組み合わせ)を選択することによって生成することができる。光または角度の選択に依存して、クラックルパターンの取得されるピクチャは、異なり得る。これはまた、蛍光および他のタイプの光の使用にも当てはまる。
【0074】
したがって、好ましくは、クラックルパターンは、可変走査角度および/または入射角度で走査および取得することができ、その際、走査角度/入射角度および/または走査波長は、追加的なセキュリティ指標としてデータベースに任意選択的に含むことができる。
【0075】
以下の図において本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】クラックル層を備えたセキュリティ要素の基本構造およびその解析/検査/スキャニング(走査)を示す。
【図2】セキュリティ要素を検査するための別の構造および方法を示す。
【図3】上に重なる保護層を備えたクラックル層の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1において、2つのクラックル層10、12が、上下に配置されている。個別のクラックル層10、12は、様々な目立つ裂け目またはクラック14、16、18を形成する。程度次第で、最上層12の裂け目は、単一の裂け目(裂け目18を参照)として下層10へと通過する可能性がある。裂け目16は、乾燥プロセスゆえに、最上層12において発生する可能性がある。かかる裂け目はまた、例えば、下層10の乾燥または収縮11によって発生する可能性がある。当然また、上層が、下層に影響を及ぼし、応力クラックを引き起こす可能性がある。用いられる方法に依存し、このように選択的に裂け目を導入して、クラックルを生成することができる。層が収縮する場合に、それはまた、溝を形成する可能性があるが、これらの溝は、クラックル構造と同様の特徴がある。その結果、クラックル構造とは別に、またはそれに加えて、収縮もまた、セキュリティ指標として用いることができる。
【0078】
個別の層10、12は、データ取得または識別のために様々な測定方法によって走査することができる。この場合に、個別裂け目14、16、18は、本実施形態において示すように、異なる特性および波長の光を用いて、または異なる入射角度/走査角度で走査することができる。このように、波長に依存して、異なる裂け目部分を個別の層10、12において見ることができる。図示の実施形態において、最上層12は、第1の波長22(通常光)で走査され、その結果、前記層12のクラックル裂け目16、18が見えるようにされる。最上層12は、波長20を備えた赤外線だけが通過するように構成される。下層10のクラックル裂け目14は、この第2の波長20(例えば、900nmまたは1200nmのIR光)で見えるようにすることができる。このように得られた構造データを用いれば、模倣することができない耐偽造性のセキュリティ指標が利用可能になる。偽造者は、クラックルパターンの特定のピクチャを生成するために、どの波長で走査を行うべきかが分からない。走査角度または光の入射角度は、別のセキュリティ指標として用いることができる。角度に依存して、クラックルパターンの異なるピクチャが得られる。角度の規定は、別のセキュリティ指標を表す。さらに、角度は、各検査において個別にアルゴリズムを用いて、次の検査用に再計算することができ、続く検査用のデータ取得のために別の走査が行い得る。角度はまた、手動で確立することもできる。さらに、検査結果はまた、クラックルパターンの既存の3D画像と比較することができる。クラックル形成は、簡単な機械的処理または超音波を用いた処理によって、あるエリアで開始、促進または変更することができる。
【0079】
図2において多層セキュリティ要素を見ることができる。個別の裂け目およびクラックが、個別の層においてクラックルとして見える。さらに、最上層4において、使用の痕跡が存在するか、切り込みが発生するか、または被覆されないままの場所を見ることができる。その下の層3には、乾燥、経年劣化または摩耗プロセスによって引き起こされたクラックル裂け目および座屈が見える。検査用に、最初に、データベースからの一致する指標が、第1の検査手順用に走査される(検査1)。この第2の検査において、検査されるエリアが増加され、他のクラックルが取得される(検査2)。第3の検査において、表面の実際の状態が決定され、かつ他の指標、例えば、他のクラックル構造、収縮または表面パターンが、含まれる。既存データベースのこの不断の更新、および後続の検査の検査結果と前の検査の検査結果との比較によって、高度のセキュリティ標準が達成される。検査ステップ1〜3はまた、個別にか、または別のシーケンスで、もしくは他の検査ステップと組み合わせて実行することができる。
【0080】
セキュリティを向上させ、かつ他のセキュリティ指標を生成するための方法は、検査ステップ1〜3の1つの間に異なる波長領域を備えた試験装置を使用するか、または他の検査ステップ(プロセス)で補完することである。図示の波長W1(1〜380nm、UV−A〜UV−C)、W2(380〜780nm、通常光)、W3(780〜1100nm、IR−A1)およびW4(1100〜1400nm、IR−A2)における個別検査プロセスが示されている。IR−A3は、領域1400nm〜1700nmをカバーするが、ここでは示されていない。保護コーティングなどの保護膜は、例えば波長W1、したがってUV光で可視的に走査され、別の方法では目に見えない変化またはパターンを示すことができる。収縮は、通常光(W2)で可視的に走査することができる。これらは、溝によって特徴付けることができるが、これらの溝は、例えば、高結合剤部分に帰することができる。下層のクラックルは、それが、例えば保護コーティングによって被覆または充填されてW2では見えなかった場合に、波長W1またはW3において、保護コーティングの質に依存して、見えるようにして解析することができる。図示のクラックル裂け目は、最下層1まで延びる。上層または下層によって被覆された中間層のパターンを見えるようにするために、赤外線領域(IR)における走査方法を用いるのが好ましい。例えば、波長W3の走査動作において、特に最上層2および3のクラックルパターンは、見えるようにすることができる。下層1のクラックルは、隠されたままである。次に、波長W4における後続の走査動作がまた、最下層1に形成されたクラックルパターンを明らかにする。個別データがデータベースに入力され、好ましくは各走査手順と共に新たに更新される。
【0081】
セキュリティは、走査光の波長だけでなく走査角度も変更されるという点で、さらに向上させることができる。角度に依存して、異なるクラックルパターンまたは収縮パターンが発生し得る。偽造者は、角度も、走査または照射エリアも、波長も全く分からず、その結果、偽造者がセキュリティ検査を通過することは事実上不可能である。さらに、クラックル形成は、例えば超音波によって影響を受ける可能性があり、その結果、密に離間されたサンプリング期間によって、異なるパターンが可能になる。
【0082】
図示の多層セキュリティ要素は、任意の表面に施すことができる。その目的で、前面または裏面の接着面を用いるのが好ましい。
【0083】
図3Aにおいて、クラックル層12は、別の保護層13によって被覆されている。クラックル層12の個別の裂け目16は、このようにして保護される。しかしながら、保護層13はまた、意図的に個別の裂け目を完全に充填するかまたは被覆するために用いることができ(図3Bを参照)、その結果、別のセキュリティ指標が生成される。偽造者は、保護層13によって、どの裂け目がランダムに被覆されたか、およびどの裂け目が意図的に被覆されたかが分からない。被覆エリアは、特定の方法でのみ見えるようにすることができる。
【0084】
例えば、波長の検査および選択は、保護層13の下に配置されたクラックル(または収縮)が、通常光で見えないように行うことができる。保護層13は、クラックルを効果的にシールドする。クラックルパターンは、他の解析方法(例えば、ある波長IR−A1またはIR−A2のIR光)を用いてのみ見えるようになる。クラックルパターンを視覚化するために、紫外線、偏光、蛍光、ルミネセンス、およびx線の使用が考えられ、その際、走査角度および入射角度を変更することができる。
【0085】
図3Cに様々な検査方法が示されている。各検査プロセス中に、既に検査されたがエリアだけでなく、しかしまたデータベースにまだ含まれていない新しい検査エリアの走査に関しても、重複が発生する。このようにして、かつ、継続する周期的更新によって、耐偽造性のセキュリティ媒体が生成される。別の実施形態変形において、独立した追加領域を使用することもでき、または重複は省略することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体をマーキングし、認証し、または識別するためのセキュリティ要素、特に、文書、有価証券、スタンプ、ラベル、銀行手形、紙幣、身分証明書、身分証明カード、他のIDカード、パスポート、(チップ)カード、アクセスカード、クレジットカード、アクセス制御カード、チケット、運転免許証、車両書類、紙幣、小切手、郵便切手、ラベル、ビネット、絵画、美術品、家具、測定装置、機械部品、機械、車両、カメラ、携帯電話、コンピュータ、コンピュータ状装置、データ記憶媒体、印刷物、本、織物、ファッションアイテムおよびスポーツ用品、技術的装置、工具、紙およびダンボール箱、パッケージングの他に製品など、または人、動物もしくは植物などの生物をマーキングし、認証し、または識別するためのセキュリティ要素であって、かつセキュリティマーキングを含み得る材料の、互いに隣接し、もしくは上下に配置された1つもしくは複数の層、または重なり合う層を含むセキュリティ要素において、
前記セキュリティ要素の少なくとも1つの層が、少なくとも或る領域にて、セキュリティ指標として一緒にまたは別個に走査および取得可能であるような、裂け目もしくはクラック、切り込み、摩耗エリア、または収縮および可能性としての汚損エリアの形態をしたクラックルパターンを有し、かつ前記クラックルパターンが、少なくとも或る領域にて、動的変更プロセスを受け、その結果、1つまたは複数の前記特定の層における新しい裂け目やクラックのような前記クラックルパターンにおける変化が生じ、かつ取得され得ることを特徴とするセキュリティ要素。
【請求項2】
前記クラックルパターンが、物理的、磁気的または化学的に生成または影響されることを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項3】
1つまたは複数の前記層におけるクラックルパターン形成が、一次または二次の乾燥、使用もしくは摩耗、熱作用、乾燥・湿気作用、温度変化、光もしくは酸素処理、超音波処理、汚損、洗浄、磁気作用、電磁誘導、電圧、または電流によって生成されるか、影響されるか、または操作可能にされることを特徴とする、請求項1または2に記載のセキュリティ要素。
【請求項4】
クラックルパターン形成が、着色剤、溶剤、もしくは結合剤によって、または溶剤含有物質および結合剤含有物質もしくはそれらの混合物によって生成されるか、影響されるか、または操作可能にされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項5】
前記クラックルパターン形成が、アスファルト、タール、瀝青、油、脂肪、樹脂、ワックス、天然もしくは合成のポリマー、酸化剤もしくは関連物質、またはそれらの混合物によって、生成されるか、影響されるか、または操作可能にされることを特徴とする、請求項4に記載のセキュリティ要素。
【請求項6】
或る層におけるクラックルパターン形成が、その層の上または下に配置された層によって生成されるか、影響されるか、または操作可能にされることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項7】
クラックルパターン形成層が、異なる厚さのエリアを有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項8】
クラックルパターン形成層が、透明で肉眼では見えないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項9】
前記クラックルパターンが、いくつかの層にわたって延び、その際、前記層が、それらの構造または組成において同じかまたは異なり得ることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項10】
個別クラックルのクラック、切り込みまたは収縮などの前記クラックルパターンまたはその一部が、少なくとも或る領域にて化学的または物理的に固定されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項11】
クラックルパターン形成層におけるクラックルパターン形成が可逆的であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項12】
クラックルパターン形成層が、その上に配置された層によって被覆され、人間の目に見えないか、単に部分的に見えるか、または変化して見えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項13】
クラックルパターン形成層が、前記クラックルパターン、切り込み、摩耗エリア、収縮、および/または汚損エリアを可視もしくは不可視にするためか、またはこれらを保護するために、特定の波長の光だけを通過させる保護膜によって被覆されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項14】
クラックルパターン形成層の読み取りが、その上または下に配置された層の特性によって、部分的もしくは全体的に、影響されるか、またはますます可能にされることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項15】
一片の織物のような材料の表面に接着するか、またはその材料内に導入できることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のセキュリティ要素。
【請求項16】
物体をマーキングし、認証し、または識別するためのセキュリティ要素、特に、文書、有価証券、スタンプ、ラベル、銀行手形、紙幣、身分証明書、身分証明カード、他のIDカード、パスポート、(チップ)カード、アクセスカード、クレジットカード、アクセス制御カード、チケット、運転免許証、車両書類、紙幣、小切手、郵便切手、ラベル、ビネット、絵画、美術品、家具、測定装置、機械部品、機械、車両、カメラ、携帯電話、コンピュータ、コンピュータ状装置、データ記憶媒体、印刷物、本、織物、ファッションアイテムおよびスポーツ用品、技術的装置、工具、紙およびダンボール箱、パッケージングの他に製品など、または人、動物もしくは植物などの生物をマーキングし、認証し、または識別するためのセキュリティ要素であって、かつセキュリティマーキングを含み得る材料の、互いに隣接し、もしくは上下に配置された1つもしくは複数の層、または重なり合う層を含むセキュリティ要素を製造するための方法において、
前記セキュリティ要素の少なくとも1つの層に、少なくとも或る領域にて、セキュリティ指標として走査および取得可能であるような、裂け目もしくはクラック、切り込み、摩耗エリア、または収縮および可能性としての汚損エリアの形態をしたクラックルパターンが生成され、影響され、または操作可能にされ、前記クラックルパターンが、少なくとも或る領域にて、動的変更プロセスを受け、その結果、1つまたは複数の前記特定の層における新しい裂け目やクラックのような前記クラックルパターンにおける変化が生じ、かつ取得され得ることを特徴とする、方法。
【請求項17】
自然または人工のクラックルパターンが、その全体または或る領域にて、着色剤、触媒、溶剤、もしくは結合剤、または溶剤含有物質および結合剤含有物質もしくはそれらの混合物を導入することによって、ならびにそれらの、クラックルパターン形成層や上層や下層における引き続いての蒸発によって影響されるか、操作可能にされるか、活性化されるか、開始されるか、生成されるか、導入されるか、加速されるか、増幅されるか、促進されるか、変更もしくは減速されるか、停止されるか、またはキャンセル、したがって可逆的にされることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記クラックルパターンが、少なくとも1つの膜、保護層、またはカラー層、または汚損層によって、完全にまたは或る領域にて、被覆されることを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
自然または人工のクラックルパターンが、UV光、熱、触媒との接触、ガス処理、汚損または溶剤によって生成されるか、影響されるか、または操作可能にされることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
クラックルパターン形成が、一次または二次の乾燥、使用もしくは摩耗、熱作用、乾燥・湿気作用、温度変化、光もしくは酸素処理、超音波処理、汚損、洗浄、磁気作用、電磁誘導、電圧、または電流によって生成されるか、影響されるか、または操作可能にされることを特徴とする、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
クラックルパターン形成が、アスファルト、タール、瀝青、油、脂肪、樹脂、ワックス、天然もしくは合成のポリマー、酸化剤もしくは他の化学物質、またはそれらの混合物によって生成されるか、影響されるか、または操作可能にされることを特徴とする、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
セキュリティマーキングを含み得る材料の、互いに隣接し、もしくは上下に配置された1つもしくは複数の層か重なり合う層、またはそれらの個別エリアを走査および取得することによって、物体をマーキングし、認証し、または識別するための方法、特に、文書、有価証券、スタンプ、ラベル、銀行手形、紙幣、身分証明書、身分証明カード、他のIDカード、パスポート、(チップ)カード、アクセスカード、クレジットカード、アクセス制御カード、チケット、運転免許証、車両書類、紙幣、小切手、郵便切手、ラベル、ビネット、絵画、美術品、家具、測定装置、機械部品、機械、車両、カメラ、携帯電話、コンピュータ、コンピュータ状装置、データ記憶媒体、印刷物、本、織物、ファッションアイテムおよびスポーツ用品、技術的装置、工具、紙およびダンボール箱、パッケージングの他に製品など、または人、動物もしくは植物などの生物をマーキングし、認証し、または識別するための方法において、
少なくとも1つの層で、少なくとも或る領域にて、裂け目もしくはクラック、切り込み、摩耗エリア、または収縮および可能性としての汚損エリアの形態をしたクラックルパターンが、生成されるか、影響されるか、または操作可能にされ、前記パターンが、セキュリティ指標として走査および取得可能であり、このように取得されたデータが、1つまたは複数の任意選択的に分けられた伝送経路にて、1つまたは複数のデータベースと、個別にか、それらの全体にて、比較されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1〜15のいずれか一項に従ってセキュリティ要素が走査および取得されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
検査されるエリアが、セキュリティ要素の1つまたは複数の重なり合うセクションを含むことを特徴とする、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
重なり合う検査エリアの代わりに、またはそれに加えて、1つの独立した、または複数の独立した検査エリアが、走査および取得されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
単数または複数の検査プロセスによって取得された前記セキュリティ指標が、1つまたは複数のデータベースに記憶された指標と比較されて変更されるか、または新しい指標が記憶されることを特徴とする、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
異なる層における前記クラックルパターン、特に前記裂け目、切り込み、摩耗エリア、収縮、または汚損エリアが、異なる波長で走査および取得されることを特徴とする、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
異なる層における前記クラックルパターン、特に前記裂け目、切り込み、摩耗エリア、収縮、または汚損エリアが、偏光、閃光もしくは斜光、UV、IR、x線またはこれらの組み合わせで走査および取得されることを特徴とする、請求項22〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記クラックルパターン、特に前記裂け目、切り込み、摩耗エリア、収縮、または汚損エリアが、異なる測定方法またはパラメータを用いて、1つの層の異なるエリアで走査および取得され、その際、各測定方法またはパラメータが、それ自体のデータセットを提供することができ、このデータセットが、1つまたは複数の任意選択的に独立した伝送経路における1つまたは複数の任意選択的に独立したデータベースにおいて、必要に応じて取得され、記憶され、かつ読み取られるか、または更新され、並びに、前のデータセットが、上書きされないが、タイムスタンプを備えた前記新しいデータおよび新バージョンの番号で補足されることを特徴とする、請求項22〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記クラックルパターン、特に前記裂け目、切り込み、摩耗エリア、収縮、または汚損エリアが、可変走査角度および/または入射角度で走査および取得され、その際、前記走査角度/入射角度、および/または走査波長が、追加的なセキュリティ指標として前記データベースに任意選択的に含まれることを特徴とする、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記クラックルパターン、特に前記裂け目、切り込み、摩耗エリアまたは収縮の代わりに、またはそれとは別に、1つまたは複数の層の表面地形の他の特徴が、解析および/または取得されることを特徴とする、請求項22〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
人または物体を認証するための、または行動を許可、開始、継続、実行および終了するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載のセキュリティ要素の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2012−532776(P2012−532776A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519923(P2012−519923)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004270
【国際公開番号】WO2011/006640
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(510252450)ヒューマン バイオス ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】