物体の表面の動きを検出する方法および装置
本発明は、物体の表面の動きを検出装置によって検出する方法に関し、該物体は、検出プロセス中に静止状態にあり、かつ検出装置に対して壁の反対側の空間内に位置し、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有する。前記方法は、レーダ信号を送信する段階および物体によって反射されたレーダ信号を受信する段階、ならびに、動きが検出されたならば、加えて、その動きを三次元組み合わせレーダモデルおよびデータモデルにおいて視覚化する段階を含む。本発明はまた、前記方法を実施するための検出装置に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、物体の表面の動きを検出装置によって検出する方法であって、該物体が、検出プロセス中に静止状態にあり、かつ検出装置に対して不透明な壁の反対側の空間内に位置し、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有する方法に関する。本発明はまた、前記方法を実施するための検出装置に関する。特に、本発明は、工業用炉のような密閉プロセス空間内の、たとえば壁/天井の動きを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景および先行技術
極端な条件にある空間内の壁、天井および床を温度、湿度などに関してモニタリングする場合、空間そのものの中にモニタリング機器または計測機器を配置することは推奨できないか、または不可能ですらある。機器がすぐに破損する、またはその耐用寿命が大幅に短くなる危険性は非常に高い。考えられる極端な条件は、たとえば、極端な低温、非常に強い熱、非常に高い圧力、高い空気湿度、化学的に腐食性の物質、人にも機器にも適さない他の環境および/または前記環境条件のいずれかの組み合わせであり得る。このような空間は普通、不透明な壁によって画定されており、それがモニタリングをいっそう困難にする。
【0003】
密接に関連する技術分野および/または解決手段は、とりわけ、敷設された地雷および対人地雷の検出および識別からなる。ここでは、一つまたは二つのトランスミッタが信号を送信し、地中1メートルぐらいの深さまでの、地中の雑多な物体によって反射される信号をレシーバが受信するレーダ技術が使用される。その後、専門家が、反射信号のマッピングを検証し、砂、土壌、粘土、石などの一般的な均質体(homogeneous volume)からの偏差を検出し、またはむしろ識別しなければならない。しかし、この方法の欠点は、恐れられる地雷の正確な場所または深さが不明であり、さらには、地面の構造および特徴が絶えず変化し、それが検出をいっそう困難にするということである。
【0004】
もう一つの密接に関連する技術分野は、中に人がいるかどうかを検出するための、アクセス不可能な密閉空間、たとえば軍の掩蔽壕または取り壊された家屋などのモニタリングである。ここでもまた、一つまたは二つのトランスミッタが信号を送信し、不透明な壁の背後の雑多な物体によって反射される信号をレシーバが受信するレーダ技術が使用される。その後、専門家が、反射信号のマッピングを検証し、人に関連する特徴的なレーダエコーを識別しなければならない。しかし、空間の設計および壁の配置は不明であり、かつ、そのような作業では重要ではないとみなされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、見えない物体の表面の動きを検出するための、既に公知の方法の前記欠点を回避し、改良された方法を提供することを目標とする。本発明の主な目的は、対象物体の表面の動きを明瞭に視覚化する方法を提供することである。これは、未計画で即座に実施するならば非常に費用がかさむ修理および運転停止を計画することができるよう、オペレータが、動きのわずかな示唆があった場合に、物体の表面がどこでどれだけ動いたかを正確に知ることを必要とする。
【0006】
本発明によれば、目的は、独立請求項1で規定する特徴を含む、冒頭で規定した方法によって達成される。第二の局面によれば、本発明は、検出装置には見えない物体の表面の動きを検出するための検出装置に関する。
【0007】
このように、本発明によれば、冒頭で規定したタイプの方法であって、物体および前記空間のデータモデルを生成し、該データモデルを検出装置に含まれる中央処理ユニットに記憶する段階、周波数成分が30MHz〜12.4GHzの周波数範囲内に分布しているレーダ信号をレーダパルスの形態で送信する段階、レーダ信号が物体に入るときおよび物体から出るときそれぞれの誘電ステップからなる反射点で生成された反射レーダ信号を受信する段階、受信された反射レーダ信号を送信されたレーダ信号と比較して、それぞれが該反射点を経由する二つの既知位置の間の距離を伝える相関結果を得る段階、経時的に得られた様々な相関結果を差分解析して表面の特定の反射点の動きを検出する段階、二つの既知位置の、少なくとも三つの互いに別個のセットに属する相関結果の差分解析により、特定の移動した反射点の場所を一義的に決定する段階、物体の表面の動きのレーダモデルを作成する段階、ならびにレーダモデルを前記データモデルにおいて視覚化する段階を特徴とする方法が提供される。
【0008】
本発明の方法および検出装置の好ましい態様は、従属請求項、および以下の好ましい態様の詳細な説明においてさらに見出される。
【0009】
このように、解決が求められる根本的課題は、特に極端な条件に暴露される空間、好ましくは製鋼所の炉などの工業プロセス空間における壁の状態をモニタリングまたは計測することである。考えられる極端な条件は、たとえば、極端な低温、非常に強い熱、非常に高い圧力、高い空気湿度、化学的に腐食性の物質または人にも機器にも適さない他の環境および/または前記環境条件のいずれかの組み合わせであり得る。前記モニタリングはプロセス稼働中にも続行されることが望ましく、それにより、空間内でプロセスが稼働しないときにチェックを行う可能性が排除される。モニタリング機器を空間外に配置し、レーダ信号がトランスミッタから伝搬して空間の壁を透過して物体に当たり、反射して該壁を透過し、レシーバに戻るようにすることによって物体をチェックすることにより、モニタリング機器は、どの部分も極端な環境に置かれないため、そのような方法で完全に防護される。
【0010】
本発明によれば、モニタリングされる物体の位置が分かり、加えて、検出を作動させた動きの前後で、モニタリングされる空間全体が静止状態にあるとみなすことができる。本発明により、物体の表面の動きを検出することができ、それを、モニタリングされる空間の三次元データモデルにおいて視覚化することができる。モニタリングは連続的に実施することができ、検出可能な動きが起こる場合に自動アラームを起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付図面に関連する好ましい態様についての以下の詳細な説明から、本発明の、前記およびその他の特徴ならびに利点についてのより完全な理解が明らかになるであろう。
【0012】
【図1】本発明による検出装置、検出される物体、およびその物体が位置する空間を、上から見た略図である。
【図2】後壁の表面の動きが検出され、データモデル中に配置されたレーダモデルによって表現されている、空間のデータモデルの三次元視覚化の略図である。
【図3】中央ユニットから各トランスミッタに送られるコードシーケンスの一部分を示す図である。
【図4】図3に記載のコードシーケンスに基づいて各トランスミッタから送信されるレーダ信号の一部分を示す図である。
【図5】図3に記載のコードシーケンスが送信されるときに形成されるレーダ信号のスペクトル分布を示す図である。
【図6】送信されたレーダ信号が物体に入るときおよび物体から出るときそれぞれの誘電ステップからなる反射点で反射レーダ信号が生成されることを示す略図である。
【図7】物体表面に当たって反射したときにレーダ信号の偏波が影響を受ける様子を示す図である。
【図8】レシーバによって受信された反射レーダ信号を表す図である。
【図9】図8の受信された反射レーダ信号のレシーバによる解釈を表す図である。
【図10】動きが検出されなかったときに得られる、経時的に均一に分布するノイズの形態のゼロ差分検出を示す図である。
【図11】モニタリングされる物体の表面の動きが検出されたときに得られる差分検出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい態様の詳細な説明
図1には、たとえば工業用炉からなる空間2の近くに配設された、全体で1と指定される、本発明の検出装置の概略が示されている。空間2はシェルを含み、そのシェルによって画定され、検出装置1から見ると、図示する態様におけるシェルは、前壁3、後壁4、第一および第二の側壁5、6、上部7(図2を参照)および床8(図2を参照)からなる。炉の場合、シェルは、好ましくは、金属板9で外部から覆われた耐熱煉瓦からなる。
【0014】
好ましい態様の検出装置1は、中央処理ユニット10、少なくとも三つのトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12を含む。三つのトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12は中央ユニット10に機能的に連結されている。中央ユニット10はまた、情報の記憶、処理および取り扱いのための、検出装置1の他の部分に機能的に連結された独立型コンピュータ(図示せず)を含んでもよいことが指摘されるべきである。検出装置1は、好ましくは、ウルトラワイドバンドレーダ技術タイプ(UWB)であり、かつ物体の表面の動きを検出するように配設される。ここで該物体は、図示する態様例では前記シェルからなり、1.1よりも大きい比誘電率εrを有し、かつ検出プロセス中、すなわち時間計測が進行中である間は静止状態にあるとみなされる。これは、物体の表面の検出される動きが起こったかどうかを決定するための検出プロセスが進行している期間中、モニタリングされる物体の起こりうる自然な動きが検出不可能であるほど小さいことを要する。以下の例では、検出プロセスの時間は30秒と推定され、この時間が結果として物体の自然な動きの速度を10μm/sに制限する。
【0015】
図示する態様例では、本発明の物体は、前壁3、後壁4、第一および第二の側壁それぞれ5、6、上部7および床8からなり、モニタリングされる表面は、特に空間2に向けて内側に面する表面である。もし、壁がなくなったならば、おそらくは、空間2に背を向ける側の後面もまた動くであろう。しかし、物体は、少なくとも計測中は、空間2内に位置する、静止している自立型の物体であり得ることが指摘されるべきである。
【0016】
以下、物体は後壁4からなり、物体の表面は、後壁4の、空間2に向けて内側に面する表面13からなるものと仮定する。検出装置1は、物体4に対して前壁3の反対側に位置する。金属板9にはいくつかの穴14が設けられ、穴14それぞれにトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12が配置されて、レーダ信号が空間2に出入りできるようになっている。一つのトランスミッタ11aおよびレシーバ12を一つの同じ開口部14に配設してもよいことが指摘されるべきであり、それが、点線の円の二つがそれぞれトランスミッタ11b〜cを示し、第三の点線の円がトランスミッタ11aとレシーバ12との組み合わせを示す図2のケースである。点線の各円がトランスミッタとレシーバとの組み合わせを含むユニットからなってもよいことが指摘されるべきである。それぞれが少なくとも一つの反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離であって、二つの既知位置の三つの互いに別個のセットに属する三つの距離によって反射点の場所を一義的に決定するためには、トランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12が一つの直線に沿って位置せず、代わりにトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12の相互配置がたとえば三角形を形成すべきことが重要である。
【0017】
第一の段階は、空間2および物体4のデータモデルを作成することである。これは、たとえば、空間のレーザスキャニングまたは図面に基づく空間のプログラミングによって実施することができ、そのデータモデルが中央ユニット10に記憶される。
【0018】
検出装置1の中央処理ユニット10では、一義的な相関結果を有する2進コードシーケンスが生成され、そのコードの一部分が図3に示され、その長さが検出装置1のシステムゲインを決定する。システムゲインはコードシーケンスの長さに依存し、より長いコードシーケンスがより高いシステムゲインを与える。その関係は線形であり、コードシーケンスの長さの倍増がシステムゲインの倍増を与える。しかし、より長いコードシーケンスでは、同時に、コードシーケンスが送信され、受信されるために要する時間が長くなり、そのことが、使用するのに適切であるコードシーケンスの長さの上限を設定する。たとえば、コードシーケンスの長さは640または1280ビットであることができる。
【0019】
コードシーケンスは連続的に繰り返され、たとえば、光ファイバリンクを介してトランスミッタ11a〜cに供給される。光ファイバの選択は、中央ユニット10とトランスミッタ11a〜cとの間でコードシーケンスがゆがめられるかまたは乱されてはならないという事実によって動機づけされる。
【0020】
トランスミッタ11a〜cは、一つの状態から別の状態への移行におけるコードシーケンスの振幅変化によって生じる短いレーダパルスを含むレーダ信号を送信する(図4を参照)。たとえば、トランスミッタ11a〜cの電場におけるレーダパルスは、コードシーケンスの二次導関数に関連し得る。図5に示すレーダ信号のスペクトル分布は、コードシーケンスのビットレートおよび2進コードシーケンスの構造によって制御される。その際、レーダ信号のスペクトル分布は、ETSI(欧州電気通信標準化機構)によって発行されたいわゆる周波数マスク、すなわち、様々な周波数における許容可能な送信電力のセットに適合するように形成される。レーダ信号は時分割多重化される。すなわち、10秒または650億ビットの間に、第一のトランスミッタ11aからコードシーケンスが多数回送信されるという事実により、各トランスミッタ11a〜cがそれぞれの送信のための時間ウィンドウを割り当てられる。次に、第二のトランスミッタ11bがスイッチを入れられ、送信が繰り返される。次に、第三のトランスミッタ11cがスイッチを入れられ、検出プロセスを含む送信が再び繰り返され、次いで、第一のトランスミッタ11aが新たに起動される。
【0021】
図6に示すように、レーダ信号の波面が空間2を伝搬して物体4を透過し、レーダ信号の一部分が物体4の前面13、物体4の後面15および金属板9によってそれぞれ反射され、伝搬してレシーバ12に戻る。レーダ信号は、二つの場合、すなわち、レーダ信号が伝わる媒体の比誘電率εが突然に変化する場合、および波面が金属面に達する場合に反射される。反射が媒体の誘電特性の突然の変化に依存する場合、たとえば送信されたレーダ信号が物体4に入る場合および物体4から出る場合それぞれにおいて、レーダ信号波の偏波の方向が回転することがあり、反射されたレーダ信号波は、入射レーダ信号波から偏向する偏波を得る。回転は、たとえば、媒体の形状の配置および/または材料特性に依存し、したがって、予測することはできず、多少なりともランダムであると見なされなければならない。金属面、たとえば金属板9に対して反射が起こる場合、レーダ信号波の偏波の方向の回転はより明確になるが、しかし、この場合でも、たとえば金属面の特性、形状および表面構造に依存して、いくぶん変化することがある。これは、レシーバ12が反射レーダ信号をその偏波の方向にかかわらず処理することができなければならないことを示唆する。したがって、レシーバ12は、反射レーダ信号をその偏波にかかわらず全信号レベルで捕らえるために、円偏波している。同時に、レシーバ12は、偏波を0°〜180°の間で変化させるようレーダ信号を処理するように構成されているが、検出装置1がこの点に関しては明確ではない(図7を参照)。
【0022】
レシーバ12から中央ユニット10までの送信ラインは、好ましくは、レーダ信号の波面をゆがめないよう、大きなバンド幅を有するべきである。好ましくは、レシーバ12と中央ユニット10との間の送信には、ブロードバンド光ファイバリンクが使用される。
【0023】
中央ユニット10において、送信されたレーダ信号が受信された反射レーダ信号と比較される。または、換言するならば、送信されたコードシーケンスの構造/外観が、受信された反射レーダ信号の解釈の構造/外観と比較される。相関器は対称的であり、それは、より明確な相関結果を得るために、相補的レーダ信号の比較が実施されることをも意味する。図8は、レシーバ12によって受信された反射レーダ信号を示す。図9は、図8の反射レーダ信号の、レシーバ12による解釈を示す。
【0024】
検出装置1に含まれる相関器(図示せず)が、送信されたコードシーケンスの全ビットを、受信された反射レーダ信号の解釈の対応部分と比較し、どれくらい多くのビットが一致しているかを相関結果の中で報告する。結果は正規化され、各比較が−1〜+1の間の数字をもたらす。−1または+1に近い結果は、送信されたレーダ信号と受信された反射レーダ信号との良好な一致を示し、少なくとも一定の一致を示すすべての比較の値が合計されて、相関結果における点を形成する。次に、送信されたコードシーケンスおよび受信された反射レーダ信号の解釈を、互いに対して所定の距離、たとえば1ビット、またはたとえば1ビットの1/12ずつ移動させて、より滑らかな移行および相関結果のより高い確度を得る。このように、好ましくは、この操作は、いわゆる12ビットオーバサンプリングにより、すべてのビットに関して、巡回コードシーケンスが「全1回転」動かされるまで繰り返される。相関結果においてマークされたピークを構成する点に至るまでの経過時間が、レーダ信号の送信から反射点で反射されたレーダ信号の受信までの経過時間に合致する。
【0025】
相関器により、0〜100nsの時間間隔の比較が実施される。自由空間において、これは0〜15mのレーダ距離に相当し、その距離は反射点を経由するトランスミッタ11a〜cとレシーバ12との間の距離に等しい。本態様では、自由空間内の物体の個々の反射点に関するレーダ距離確度は約4mmであり、二つの異なる反射点の間の分解能は自由空間内で約92mmであろう。換言するならば、レシーバ12から離れて互いに92mm未満の近さに並んでいる反射点は、確実には互いに区別することができない。しかし、二つの反射点の間の分解能は、レーダ信号が誘電体中を伝搬することを示唆するため、分解能が1/(εr)1/2だけ改善されるということが指摘されるべきである。この比1/(εr)1/2は、レーダ信号が誘電体中を伝搬するときその速度がどれほど低下するのかの目安である。たとえば、εr=3.5の比誘電率を有する特定のタイプの煉瓦の場合、二つの反射点の間の分解能は約50mmになる。少なくとも三つのトランスミッタ位置からレーダ信号を送信し、それぞれのトランスミッタ位置からの、明らかにされたレーダ距離を組み合わせることにより、三次元レーダモデルが、モニタリングされる空間2を描写することができる。すなわち、各反射点は、それぞれが該反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離であって、二つの既知位置の三つの互いに別個のセットに属する三つの距離によって、一義的に決定される。
【0026】
空間2内で実施される工業プロセスが連続的に稼働するならば、検出装置1は、正常と見なされる空間2内の状態を描写する基準レーダモデルを入手できる。基準レーダモデルは複数の相関結果の「平均結果」からなる。レーダモデルに変化が生じるならば、最後の正常な基準レーダモデルが記憶され、検出装置1に含まれる差検出器(図示せず)によって差分解析が実施される。このように、差分解析の目的は、経時的に得られた複数の相関結果を比較して偏差を検出することである。該差分解析は、監視レーダを使用しているときのクラッタのフィルタリングに似ている。
【0027】
相関結果の変化が生じない正常状態では、差検出器は、経時的に均一に分布したノイズの形態でゼロ差検出を提供する(図10を参照)。しかし、物体4の表面13の動きが起こったならば、差検出器は、顕著な差を記録し、差検出を提供する(図11を参照)。このような差は、たとえば、検出装置1に向けて前方に変位する、物体4の表面13の部分によって生じ得る。差検出器からの強いパルス振動が、その事象が起こった点を経由するトランスミッタ11a〜cからレシーバ12までの距離を間接的にマークし、その距離が秒単位で示され、様々な媒体におけるレーダ信号の伝搬速度を知ることにより、距離を読み取ることができる。図10は、第一のトランスミッタ11aからの送信に基づくゼロ差検出を示し、図11は、第一のトランスミッタ11aからの送信に基づく差検出を示す。
【0028】
反射点の正確な場所は、三次元レーダモデルにおいて、三つのトランスミッタ11a〜cそれぞれに基づく差検出から進むことによって識別され、物体4および空間2の三次元レーザスキャンデータモデル中に配置されることにより、動いたものは物体4であって空間2内の他の何かではないことを明らかにする。
【0029】
検出装置1からの三次元レーダモデルは、空間2のレーザスキャンデータモデルに適合するよう、予め決められた校正データによって修正されなければならない。これは、レーダ信号が、異なる誘電特性を有する物質の中を伝搬し、そのため異なる速度で伝搬するからである。修正により、空間の三次元レーダモデルと空間のレーザスキャンデータモデルとを合致させることができる。図2には、モニタリングされる空間2および起こった動きが示されている。この場合、後壁4の変形部分がシミュレーションされている。この図はまた、前壁3の背後の三つのトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12の配置を示す。
【0030】
検出装置1は、空間2を連続的にモニタリングし、動きが検出されるならば自動アラームを発する可能性を提供する。空間内の他の場所における所望の動きおよび変化、たとえば空間内で処理される製品の動きについては、それらの検出位置によって遠隔スクリーニングすることができ、または所望であれば別個のプロセスで信号処理することもできる。
【0031】
本発明の可能な変更
本発明は、上記で説明し図示した態様のみに限定されない。したがって、検出装置および検出プロセスは、添付の特許請求の範囲内で可能なすべての方法で変更することができる。
【0032】
三つのトランスミッタおよび一つのレシーバを使用する代わりに、三つのレシーバおよび一つのトランスミッタを使用しても同じ結果、すなわち、二つの既知位置の三つの互いに別個のセットに属する、少なくとも一つの反射点を経由する二つの既知位置の間の、少なくとも三つの距離を得られることが指摘されるべきである。そのうえ、二つのレシーバおよび二つのトランスミッタを使用してもよい。好ましい態様では、三つのトランスミッタおよび三つのレシーバを使用し、それらを、一つのトランスミッタおよび一つのレシーバを含む対として配設してもよい。各対が金属板中の穴の中に配設されると、反射点を経由する二つの既知位置の間の六つの距離を得ることができ、それが検出装置の確度および精度を高める。
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、物体の表面の動きを検出装置によって検出する方法であって、該物体が、検出プロセス中に静止状態にあり、かつ検出装置に対して不透明な壁の反対側の空間内に位置し、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有する方法に関する。本発明はまた、前記方法を実施するための検出装置に関する。特に、本発明は、工業用炉のような密閉プロセス空間内の、たとえば壁/天井の動きを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景および先行技術
極端な条件にある空間内の壁、天井および床を温度、湿度などに関してモニタリングする場合、空間そのものの中にモニタリング機器または計測機器を配置することは推奨できないか、または不可能ですらある。機器がすぐに破損する、またはその耐用寿命が大幅に短くなる危険性は非常に高い。考えられる極端な条件は、たとえば、極端な低温、非常に強い熱、非常に高い圧力、高い空気湿度、化学的に腐食性の物質、人にも機器にも適さない他の環境および/または前記環境条件のいずれかの組み合わせであり得る。このような空間は普通、不透明な壁によって画定されており、それがモニタリングをいっそう困難にする。
【0003】
密接に関連する技術分野および/または解決手段は、とりわけ、敷設された地雷および対人地雷の検出および識別からなる。ここでは、一つまたは二つのトランスミッタが信号を送信し、地中1メートルぐらいの深さまでの、地中の雑多な物体によって反射される信号をレシーバが受信するレーダ技術が使用される。その後、専門家が、反射信号のマッピングを検証し、砂、土壌、粘土、石などの一般的な均質体(homogeneous volume)からの偏差を検出し、またはむしろ識別しなければならない。しかし、この方法の欠点は、恐れられる地雷の正確な場所または深さが不明であり、さらには、地面の構造および特徴が絶えず変化し、それが検出をいっそう困難にするということである。
【0004】
もう一つの密接に関連する技術分野は、中に人がいるかどうかを検出するための、アクセス不可能な密閉空間、たとえば軍の掩蔽壕または取り壊された家屋などのモニタリングである。ここでもまた、一つまたは二つのトランスミッタが信号を送信し、不透明な壁の背後の雑多な物体によって反射される信号をレシーバが受信するレーダ技術が使用される。その後、専門家が、反射信号のマッピングを検証し、人に関連する特徴的なレーダエコーを識別しなければならない。しかし、空間の設計および壁の配置は不明であり、かつ、そのような作業では重要ではないとみなされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、見えない物体の表面の動きを検出するための、既に公知の方法の前記欠点を回避し、改良された方法を提供することを目標とする。本発明の主な目的は、対象物体の表面の動きを明瞭に視覚化する方法を提供することである。これは、未計画で即座に実施するならば非常に費用がかさむ修理および運転停止を計画することができるよう、オペレータが、動きのわずかな示唆があった場合に、物体の表面がどこでどれだけ動いたかを正確に知ることを必要とする。
【0006】
本発明によれば、目的は、独立請求項1で規定する特徴を含む、冒頭で規定した方法によって達成される。第二の局面によれば、本発明は、検出装置には見えない物体の表面の動きを検出するための検出装置に関する。
【0007】
このように、本発明によれば、冒頭で規定したタイプの方法であって、物体および前記空間のデータモデルを生成し、該データモデルを検出装置に含まれる中央処理ユニットに記憶する段階、周波数成分が30MHz〜12.4GHzの周波数範囲内に分布しているレーダ信号をレーダパルスの形態で送信する段階、レーダ信号が物体に入るときおよび物体から出るときそれぞれの誘電ステップからなる反射点で生成された反射レーダ信号を受信する段階、受信された反射レーダ信号を送信されたレーダ信号と比較して、それぞれが該反射点を経由する二つの既知位置の間の距離を伝える相関結果を得る段階、経時的に得られた様々な相関結果を差分解析して表面の特定の反射点の動きを検出する段階、二つの既知位置の、少なくとも三つの互いに別個のセットに属する相関結果の差分解析により、特定の移動した反射点の場所を一義的に決定する段階、物体の表面の動きのレーダモデルを作成する段階、ならびにレーダモデルを前記データモデルにおいて視覚化する段階を特徴とする方法が提供される。
【0008】
本発明の方法および検出装置の好ましい態様は、従属請求項、および以下の好ましい態様の詳細な説明においてさらに見出される。
【0009】
このように、解決が求められる根本的課題は、特に極端な条件に暴露される空間、好ましくは製鋼所の炉などの工業プロセス空間における壁の状態をモニタリングまたは計測することである。考えられる極端な条件は、たとえば、極端な低温、非常に強い熱、非常に高い圧力、高い空気湿度、化学的に腐食性の物質または人にも機器にも適さない他の環境および/または前記環境条件のいずれかの組み合わせであり得る。前記モニタリングはプロセス稼働中にも続行されることが望ましく、それにより、空間内でプロセスが稼働しないときにチェックを行う可能性が排除される。モニタリング機器を空間外に配置し、レーダ信号がトランスミッタから伝搬して空間の壁を透過して物体に当たり、反射して該壁を透過し、レシーバに戻るようにすることによって物体をチェックすることにより、モニタリング機器は、どの部分も極端な環境に置かれないため、そのような方法で完全に防護される。
【0010】
本発明によれば、モニタリングされる物体の位置が分かり、加えて、検出を作動させた動きの前後で、モニタリングされる空間全体が静止状態にあるとみなすことができる。本発明により、物体の表面の動きを検出することができ、それを、モニタリングされる空間の三次元データモデルにおいて視覚化することができる。モニタリングは連続的に実施することができ、検出可能な動きが起こる場合に自動アラームを起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付図面に関連する好ましい態様についての以下の詳細な説明から、本発明の、前記およびその他の特徴ならびに利点についてのより完全な理解が明らかになるであろう。
【0012】
【図1】本発明による検出装置、検出される物体、およびその物体が位置する空間を、上から見た略図である。
【図2】後壁の表面の動きが検出され、データモデル中に配置されたレーダモデルによって表現されている、空間のデータモデルの三次元視覚化の略図である。
【図3】中央ユニットから各トランスミッタに送られるコードシーケンスの一部分を示す図である。
【図4】図3に記載のコードシーケンスに基づいて各トランスミッタから送信されるレーダ信号の一部分を示す図である。
【図5】図3に記載のコードシーケンスが送信されるときに形成されるレーダ信号のスペクトル分布を示す図である。
【図6】送信されたレーダ信号が物体に入るときおよび物体から出るときそれぞれの誘電ステップからなる反射点で反射レーダ信号が生成されることを示す略図である。
【図7】物体表面に当たって反射したときにレーダ信号の偏波が影響を受ける様子を示す図である。
【図8】レシーバによって受信された反射レーダ信号を表す図である。
【図9】図8の受信された反射レーダ信号のレシーバによる解釈を表す図である。
【図10】動きが検出されなかったときに得られる、経時的に均一に分布するノイズの形態のゼロ差分検出を示す図である。
【図11】モニタリングされる物体の表面の動きが検出されたときに得られる差分検出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい態様の詳細な説明
図1には、たとえば工業用炉からなる空間2の近くに配設された、全体で1と指定される、本発明の検出装置の概略が示されている。空間2はシェルを含み、そのシェルによって画定され、検出装置1から見ると、図示する態様におけるシェルは、前壁3、後壁4、第一および第二の側壁5、6、上部7(図2を参照)および床8(図2を参照)からなる。炉の場合、シェルは、好ましくは、金属板9で外部から覆われた耐熱煉瓦からなる。
【0014】
好ましい態様の検出装置1は、中央処理ユニット10、少なくとも三つのトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12を含む。三つのトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12は中央ユニット10に機能的に連結されている。中央ユニット10はまた、情報の記憶、処理および取り扱いのための、検出装置1の他の部分に機能的に連結された独立型コンピュータ(図示せず)を含んでもよいことが指摘されるべきである。検出装置1は、好ましくは、ウルトラワイドバンドレーダ技術タイプ(UWB)であり、かつ物体の表面の動きを検出するように配設される。ここで該物体は、図示する態様例では前記シェルからなり、1.1よりも大きい比誘電率εrを有し、かつ検出プロセス中、すなわち時間計測が進行中である間は静止状態にあるとみなされる。これは、物体の表面の検出される動きが起こったかどうかを決定するための検出プロセスが進行している期間中、モニタリングされる物体の起こりうる自然な動きが検出不可能であるほど小さいことを要する。以下の例では、検出プロセスの時間は30秒と推定され、この時間が結果として物体の自然な動きの速度を10μm/sに制限する。
【0015】
図示する態様例では、本発明の物体は、前壁3、後壁4、第一および第二の側壁それぞれ5、6、上部7および床8からなり、モニタリングされる表面は、特に空間2に向けて内側に面する表面である。もし、壁がなくなったならば、おそらくは、空間2に背を向ける側の後面もまた動くであろう。しかし、物体は、少なくとも計測中は、空間2内に位置する、静止している自立型の物体であり得ることが指摘されるべきである。
【0016】
以下、物体は後壁4からなり、物体の表面は、後壁4の、空間2に向けて内側に面する表面13からなるものと仮定する。検出装置1は、物体4に対して前壁3の反対側に位置する。金属板9にはいくつかの穴14が設けられ、穴14それぞれにトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12が配置されて、レーダ信号が空間2に出入りできるようになっている。一つのトランスミッタ11aおよびレシーバ12を一つの同じ開口部14に配設してもよいことが指摘されるべきであり、それが、点線の円の二つがそれぞれトランスミッタ11b〜cを示し、第三の点線の円がトランスミッタ11aとレシーバ12との組み合わせを示す図2のケースである。点線の各円がトランスミッタとレシーバとの組み合わせを含むユニットからなってもよいことが指摘されるべきである。それぞれが少なくとも一つの反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離であって、二つの既知位置の三つの互いに別個のセットに属する三つの距離によって反射点の場所を一義的に決定するためには、トランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12が一つの直線に沿って位置せず、代わりにトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12の相互配置がたとえば三角形を形成すべきことが重要である。
【0017】
第一の段階は、空間2および物体4のデータモデルを作成することである。これは、たとえば、空間のレーザスキャニングまたは図面に基づく空間のプログラミングによって実施することができ、そのデータモデルが中央ユニット10に記憶される。
【0018】
検出装置1の中央処理ユニット10では、一義的な相関結果を有する2進コードシーケンスが生成され、そのコードの一部分が図3に示され、その長さが検出装置1のシステムゲインを決定する。システムゲインはコードシーケンスの長さに依存し、より長いコードシーケンスがより高いシステムゲインを与える。その関係は線形であり、コードシーケンスの長さの倍増がシステムゲインの倍増を与える。しかし、より長いコードシーケンスでは、同時に、コードシーケンスが送信され、受信されるために要する時間が長くなり、そのことが、使用するのに適切であるコードシーケンスの長さの上限を設定する。たとえば、コードシーケンスの長さは640または1280ビットであることができる。
【0019】
コードシーケンスは連続的に繰り返され、たとえば、光ファイバリンクを介してトランスミッタ11a〜cに供給される。光ファイバの選択は、中央ユニット10とトランスミッタ11a〜cとの間でコードシーケンスがゆがめられるかまたは乱されてはならないという事実によって動機づけされる。
【0020】
トランスミッタ11a〜cは、一つの状態から別の状態への移行におけるコードシーケンスの振幅変化によって生じる短いレーダパルスを含むレーダ信号を送信する(図4を参照)。たとえば、トランスミッタ11a〜cの電場におけるレーダパルスは、コードシーケンスの二次導関数に関連し得る。図5に示すレーダ信号のスペクトル分布は、コードシーケンスのビットレートおよび2進コードシーケンスの構造によって制御される。その際、レーダ信号のスペクトル分布は、ETSI(欧州電気通信標準化機構)によって発行されたいわゆる周波数マスク、すなわち、様々な周波数における許容可能な送信電力のセットに適合するように形成される。レーダ信号は時分割多重化される。すなわち、10秒または650億ビットの間に、第一のトランスミッタ11aからコードシーケンスが多数回送信されるという事実により、各トランスミッタ11a〜cがそれぞれの送信のための時間ウィンドウを割り当てられる。次に、第二のトランスミッタ11bがスイッチを入れられ、送信が繰り返される。次に、第三のトランスミッタ11cがスイッチを入れられ、検出プロセスを含む送信が再び繰り返され、次いで、第一のトランスミッタ11aが新たに起動される。
【0021】
図6に示すように、レーダ信号の波面が空間2を伝搬して物体4を透過し、レーダ信号の一部分が物体4の前面13、物体4の後面15および金属板9によってそれぞれ反射され、伝搬してレシーバ12に戻る。レーダ信号は、二つの場合、すなわち、レーダ信号が伝わる媒体の比誘電率εが突然に変化する場合、および波面が金属面に達する場合に反射される。反射が媒体の誘電特性の突然の変化に依存する場合、たとえば送信されたレーダ信号が物体4に入る場合および物体4から出る場合それぞれにおいて、レーダ信号波の偏波の方向が回転することがあり、反射されたレーダ信号波は、入射レーダ信号波から偏向する偏波を得る。回転は、たとえば、媒体の形状の配置および/または材料特性に依存し、したがって、予測することはできず、多少なりともランダムであると見なされなければならない。金属面、たとえば金属板9に対して反射が起こる場合、レーダ信号波の偏波の方向の回転はより明確になるが、しかし、この場合でも、たとえば金属面の特性、形状および表面構造に依存して、いくぶん変化することがある。これは、レシーバ12が反射レーダ信号をその偏波の方向にかかわらず処理することができなければならないことを示唆する。したがって、レシーバ12は、反射レーダ信号をその偏波にかかわらず全信号レベルで捕らえるために、円偏波している。同時に、レシーバ12は、偏波を0°〜180°の間で変化させるようレーダ信号を処理するように構成されているが、検出装置1がこの点に関しては明確ではない(図7を参照)。
【0022】
レシーバ12から中央ユニット10までの送信ラインは、好ましくは、レーダ信号の波面をゆがめないよう、大きなバンド幅を有するべきである。好ましくは、レシーバ12と中央ユニット10との間の送信には、ブロードバンド光ファイバリンクが使用される。
【0023】
中央ユニット10において、送信されたレーダ信号が受信された反射レーダ信号と比較される。または、換言するならば、送信されたコードシーケンスの構造/外観が、受信された反射レーダ信号の解釈の構造/外観と比較される。相関器は対称的であり、それは、より明確な相関結果を得るために、相補的レーダ信号の比較が実施されることをも意味する。図8は、レシーバ12によって受信された反射レーダ信号を示す。図9は、図8の反射レーダ信号の、レシーバ12による解釈を示す。
【0024】
検出装置1に含まれる相関器(図示せず)が、送信されたコードシーケンスの全ビットを、受信された反射レーダ信号の解釈の対応部分と比較し、どれくらい多くのビットが一致しているかを相関結果の中で報告する。結果は正規化され、各比較が−1〜+1の間の数字をもたらす。−1または+1に近い結果は、送信されたレーダ信号と受信された反射レーダ信号との良好な一致を示し、少なくとも一定の一致を示すすべての比較の値が合計されて、相関結果における点を形成する。次に、送信されたコードシーケンスおよび受信された反射レーダ信号の解釈を、互いに対して所定の距離、たとえば1ビット、またはたとえば1ビットの1/12ずつ移動させて、より滑らかな移行および相関結果のより高い確度を得る。このように、好ましくは、この操作は、いわゆる12ビットオーバサンプリングにより、すべてのビットに関して、巡回コードシーケンスが「全1回転」動かされるまで繰り返される。相関結果においてマークされたピークを構成する点に至るまでの経過時間が、レーダ信号の送信から反射点で反射されたレーダ信号の受信までの経過時間に合致する。
【0025】
相関器により、0〜100nsの時間間隔の比較が実施される。自由空間において、これは0〜15mのレーダ距離に相当し、その距離は反射点を経由するトランスミッタ11a〜cとレシーバ12との間の距離に等しい。本態様では、自由空間内の物体の個々の反射点に関するレーダ距離確度は約4mmであり、二つの異なる反射点の間の分解能は自由空間内で約92mmであろう。換言するならば、レシーバ12から離れて互いに92mm未満の近さに並んでいる反射点は、確実には互いに区別することができない。しかし、二つの反射点の間の分解能は、レーダ信号が誘電体中を伝搬することを示唆するため、分解能が1/(εr)1/2だけ改善されるということが指摘されるべきである。この比1/(εr)1/2は、レーダ信号が誘電体中を伝搬するときその速度がどれほど低下するのかの目安である。たとえば、εr=3.5の比誘電率を有する特定のタイプの煉瓦の場合、二つの反射点の間の分解能は約50mmになる。少なくとも三つのトランスミッタ位置からレーダ信号を送信し、それぞれのトランスミッタ位置からの、明らかにされたレーダ距離を組み合わせることにより、三次元レーダモデルが、モニタリングされる空間2を描写することができる。すなわち、各反射点は、それぞれが該反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離であって、二つの既知位置の三つの互いに別個のセットに属する三つの距離によって、一義的に決定される。
【0026】
空間2内で実施される工業プロセスが連続的に稼働するならば、検出装置1は、正常と見なされる空間2内の状態を描写する基準レーダモデルを入手できる。基準レーダモデルは複数の相関結果の「平均結果」からなる。レーダモデルに変化が生じるならば、最後の正常な基準レーダモデルが記憶され、検出装置1に含まれる差検出器(図示せず)によって差分解析が実施される。このように、差分解析の目的は、経時的に得られた複数の相関結果を比較して偏差を検出することである。該差分解析は、監視レーダを使用しているときのクラッタのフィルタリングに似ている。
【0027】
相関結果の変化が生じない正常状態では、差検出器は、経時的に均一に分布したノイズの形態でゼロ差検出を提供する(図10を参照)。しかし、物体4の表面13の動きが起こったならば、差検出器は、顕著な差を記録し、差検出を提供する(図11を参照)。このような差は、たとえば、検出装置1に向けて前方に変位する、物体4の表面13の部分によって生じ得る。差検出器からの強いパルス振動が、その事象が起こった点を経由するトランスミッタ11a〜cからレシーバ12までの距離を間接的にマークし、その距離が秒単位で示され、様々な媒体におけるレーダ信号の伝搬速度を知ることにより、距離を読み取ることができる。図10は、第一のトランスミッタ11aからの送信に基づくゼロ差検出を示し、図11は、第一のトランスミッタ11aからの送信に基づく差検出を示す。
【0028】
反射点の正確な場所は、三次元レーダモデルにおいて、三つのトランスミッタ11a〜cそれぞれに基づく差検出から進むことによって識別され、物体4および空間2の三次元レーザスキャンデータモデル中に配置されることにより、動いたものは物体4であって空間2内の他の何かではないことを明らかにする。
【0029】
検出装置1からの三次元レーダモデルは、空間2のレーザスキャンデータモデルに適合するよう、予め決められた校正データによって修正されなければならない。これは、レーダ信号が、異なる誘電特性を有する物質の中を伝搬し、そのため異なる速度で伝搬するからである。修正により、空間の三次元レーダモデルと空間のレーザスキャンデータモデルとを合致させることができる。図2には、モニタリングされる空間2および起こった動きが示されている。この場合、後壁4の変形部分がシミュレーションされている。この図はまた、前壁3の背後の三つのトランスミッタ11a〜cおよびレシーバ12の配置を示す。
【0030】
検出装置1は、空間2を連続的にモニタリングし、動きが検出されるならば自動アラームを発する可能性を提供する。空間内の他の場所における所望の動きおよび変化、たとえば空間内で処理される製品の動きについては、それらの検出位置によって遠隔スクリーニングすることができ、または所望であれば別個のプロセスで信号処理することもできる。
【0031】
本発明の可能な変更
本発明は、上記で説明し図示した態様のみに限定されない。したがって、検出装置および検出プロセスは、添付の特許請求の範囲内で可能なすべての方法で変更することができる。
【0032】
三つのトランスミッタおよび一つのレシーバを使用する代わりに、三つのレシーバおよび一つのトランスミッタを使用しても同じ結果、すなわち、二つの既知位置の三つの互いに別個のセットに属する、少なくとも一つの反射点を経由する二つの既知位置の間の、少なくとも三つの距離を得られることが指摘されるべきである。そのうえ、二つのレシーバおよび二つのトランスミッタを使用してもよい。好ましい態様では、三つのトランスミッタおよび三つのレシーバを使用し、それらを、一つのトランスミッタおよび一つのレシーバを含む対として配設してもよい。各対が金属板中の穴の中に配設されると、反射点を経由する二つの既知位置の間の六つの距離を得ることができ、それが検出装置の確度および精度を高める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(4)の表面(13)の動きを検出装置(1)によって検出するための方法であって、物体(4)が、検出プロセス中に静止状態にあり、かつ検出装置(1)に対して壁(3)の反対側の空間(2)内に位置し、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有し、
該方法が、
a) 物体(4)および上記空間(2)のデータモデルを生成し、検出装置(1)に含まれる中央処理ユニット(10)に記憶する段階、
b) 周波数成分が30MHz〜12.4GHzの周波数範囲内に分布するレーダパルスの形態で、レーダ信号を送信する段階、
c) 該レーダ信号が物体(4)に入るとき、物体(4)から出るときそれぞれの、誘電ステップからなる反射点で生成された反射レーダ信号を受信する段階、
d) 該受信された反射レーダ信号を該送信されたレーダ信号と比較して、該反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離を伝える相関結果を得る段階、
e) 経時的に得られた様々な相関結果を差分解析して、表面(13)の特定の反射点の動きを検出する段階、
f) 二つの既知位置(11a〜c、12)の、少なくとも三つの互いに別個のセットに属する相関結果の差分解析により、特定の移動した反射点の場所を一義的に決定する段階、
g) 物体(4)の表面(13)の動きのレーダモデルを作成し、該レーダモデルを該データモデルにおいて視覚化する段階
を特徴とする、方法。
【請求項2】
検出装置(1)と物体(4)とを分け、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有する壁(3)を通して、送信されたレーダ信号および受信されたレーダ信号それぞれが伝搬するという事実を考慮して、相関結果により伝えられた、反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離を修正する段階を特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
パルスの形態で送信される電波が、一義的な相関結果を有する2進巡回コードシーケンスからなることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
レーダ信号が、検出装置(1)に含まれる少なくとも三つのトランスミッタ(11a〜c)から送信され、反射レーダ信号が、検出装置(1)に含まれる一つのレシーバ(12)によって受信されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
レーダ信号が、検出装置(1)に含まれる一つのトランスミッタ(11a〜c)から送信され、反射レーダ信号が、検出装置(1)に含まれる少なくとも三つのレシーバ(12)によって受信されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
検出プロセス中に静止状態にあり、かつ検出装置(1)に対して壁(3)の反対側の空間(2)内に位置し、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有する物体(4)の表面(13)の動きを検出するための検出装置(1)であって、
該物体および空間(2)のデータモデルが記憶される中央処理ユニット(10)、周波数成分が30MHz〜12.4GHzの周波数範囲内に分布するパルスの形態でレーダ信号を送信するための手段(11a〜c)、
該レーダ信号が物体(4)に入るとき、物体(4)から出るときそれぞれの、誘電ステップからなる反射点で生成された反射レーダ信号を受信するための手段(12)、
該反射レーダ信号を該送信レーダ信号と比較して、該反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離を伝える相関結果を得るための手段、
経時的に得られた様々な相関結果を差分解析して表面(13)の少なくとも一つの特定の反射点の動きを検出するための手段、
二つの既知位置(11a〜c、12)の、少なくとも三つの互いに別個のセットに属する相関結果の差分解析に基づいて、特定の移動した反射点の場所を一義的に決定するための手段、
物体(4)の表面(13)の検出された動きのレーダモデルを作成するための手段、および
該レーダモデルを該データモデルにおいて視覚化するための手段
を含むことを特徴とする、検出装置。
【請求項7】
レーダ信号を送信するように配設された少なくとも三つのトランスミッタ(11a〜c)、および反射レーダ信号を受信するように配設された一つのレシーバ(12)を含むことを特徴とする、請求項6記載の検出装置。
【請求項8】
レーダ信号を送信するように配設された一つのトランスミッタ(11a〜c)、および反射レーダ信号を受信するように配設された少なくとも三つのレシーバ(12)を含むことを特徴とする、請求項6記載の検出装置。
【請求項1】
物体(4)の表面(13)の動きを検出装置(1)によって検出するための方法であって、物体(4)が、検出プロセス中に静止状態にあり、かつ検出装置(1)に対して壁(3)の反対側の空間(2)内に位置し、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有し、
該方法が、
a) 物体(4)および上記空間(2)のデータモデルを生成し、検出装置(1)に含まれる中央処理ユニット(10)に記憶する段階、
b) 周波数成分が30MHz〜12.4GHzの周波数範囲内に分布するレーダパルスの形態で、レーダ信号を送信する段階、
c) 該レーダ信号が物体(4)に入るとき、物体(4)から出るときそれぞれの、誘電ステップからなる反射点で生成された反射レーダ信号を受信する段階、
d) 該受信された反射レーダ信号を該送信されたレーダ信号と比較して、該反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離を伝える相関結果を得る段階、
e) 経時的に得られた様々な相関結果を差分解析して、表面(13)の特定の反射点の動きを検出する段階、
f) 二つの既知位置(11a〜c、12)の、少なくとも三つの互いに別個のセットに属する相関結果の差分解析により、特定の移動した反射点の場所を一義的に決定する段階、
g) 物体(4)の表面(13)の動きのレーダモデルを作成し、該レーダモデルを該データモデルにおいて視覚化する段階
を特徴とする、方法。
【請求項2】
検出装置(1)と物体(4)とを分け、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有する壁(3)を通して、送信されたレーダ信号および受信されたレーダ信号それぞれが伝搬するという事実を考慮して、相関結果により伝えられた、反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離を修正する段階を特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
パルスの形態で送信される電波が、一義的な相関結果を有する2進巡回コードシーケンスからなることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
レーダ信号が、検出装置(1)に含まれる少なくとも三つのトランスミッタ(11a〜c)から送信され、反射レーダ信号が、検出装置(1)に含まれる一つのレシーバ(12)によって受信されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
レーダ信号が、検出装置(1)に含まれる一つのトランスミッタ(11a〜c)から送信され、反射レーダ信号が、検出装置(1)に含まれる少なくとも三つのレシーバ(12)によって受信されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
検出プロセス中に静止状態にあり、かつ検出装置(1)に対して壁(3)の反対側の空間(2)内に位置し、かつ1.1よりも大きい比誘電率εrを有する物体(4)の表面(13)の動きを検出するための検出装置(1)であって、
該物体および空間(2)のデータモデルが記憶される中央処理ユニット(10)、周波数成分が30MHz〜12.4GHzの周波数範囲内に分布するパルスの形態でレーダ信号を送信するための手段(11a〜c)、
該レーダ信号が物体(4)に入るとき、物体(4)から出るときそれぞれの、誘電ステップからなる反射点で生成された反射レーダ信号を受信するための手段(12)、
該反射レーダ信号を該送信レーダ信号と比較して、該反射点を経由する二つの既知位置(11a〜c、12)の間の距離を伝える相関結果を得るための手段、
経時的に得られた様々な相関結果を差分解析して表面(13)の少なくとも一つの特定の反射点の動きを検出するための手段、
二つの既知位置(11a〜c、12)の、少なくとも三つの互いに別個のセットに属する相関結果の差分解析に基づいて、特定の移動した反射点の場所を一義的に決定するための手段、
物体(4)の表面(13)の検出された動きのレーダモデルを作成するための手段、および
該レーダモデルを該データモデルにおいて視覚化するための手段
を含むことを特徴とする、検出装置。
【請求項7】
レーダ信号を送信するように配設された少なくとも三つのトランスミッタ(11a〜c)、および反射レーダ信号を受信するように配設された一つのレシーバ(12)を含むことを特徴とする、請求項6記載の検出装置。
【請求項8】
レーダ信号を送信するように配設された一つのトランスミッタ(11a〜c)、および反射レーダ信号を受信するように配設された少なくとも三つのレシーバ(12)を含むことを特徴とする、請求項6記載の検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−513921(P2010−513921A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542720(P2009−542720)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050991
【国際公開番号】WO2008/076066
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509172723)レーダーボラゲット アイ イェーヴレ アーベー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050991
【国際公開番号】WO2008/076066
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509172723)レーダーボラゲット アイ イェーヴレ アーベー (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]