説明

物体検知システム、物体検知システムの制御方法、制御プログラム、および記録媒体

【課題】物体およびその通過方向を正確に検知するとともに、容易に設置できる物体検知システムを実現する。
【解決手段】本発明の物体検知システム1は、所定の角度幅で通路を横断する方向に走査するレーザを出射する、通路に沿って所定の間隔で配置された2つのスキャン式レーザセンサ51を含む、通路を挟んで配置された2つのセンサユニット15と、2つのセンサユニット15の一方に含まれる2つのスキャン式レーザセンサ51の出力から検知した物体の個数および検知時刻と、他方に含まれる2つのスキャン式レーザセンサ51の出力から検知した物体の個数および検知時刻とを取得するデータ取得部11と、センサユニット15aで検知した物体の個数と通過方向を決定し、センサユニット15bで検知した物体の個数と通過方向を決定し、検知した物体の個数と通過方向を確定する検知部12と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路を通過する物体およびその通過方向を検知する物体検知システム、物体検知システムの制御方法、制御プログラム、および記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、街中の通り等で、ある地点を通過する歩行者の数を計数することが広く行われている。歩行者数の計数を人手により行う場合、一般的には、人が歩行者を目視し、歩行者が通過する度に、カウンタを手動で操作することにより計数を行っている。
【0003】
一方、歩行者の数を自動的に計数する装置として、SICK社のLD−PeCo People Counterが知られている(非特許文献1参照)。SICK社の上記装置は、天井に取り付けられ、天井から地面の方向に対し2本のレーザを出射し、地面を歩いている歩行者を検知することで、検知対象地点を通過した歩行者の数を計数するとともに、その進行方向を判定するものである。
【0004】
SICK社の上記装置について、図7を用いて具体的に説明する。図7は、SICK社の上記装置が歩行者を計数する原理を示す説明図である。なお、図7では、SICK社の上記装置をカウンタ装置71として図示している。図7(a)〜(d)は、それぞれ、歩行者70がカウンタ装置71の下を通過する様子を順に示すものである。まず、図7(a)に示すように、歩行者70が、カウンタ装置71の下(検知対象地点)に差し掛かり、引き続き進行方向に進むと、同図(b)に示すように、まずカウンタ装置71のレーザ75Aで検知される。さらに、歩行者70が進行方向に進むと、同図(c)に示すように、カウンタ装置71のレーザ75Bで検知される。そして、歩行者70が検知対象地点を通り過ぎると、同図(d)に示すように、カウンタ装置71は何も検知しない。これにより、カウンタ装置71は、歩行者70が検知対象地点を通過したということ、および、レーザ75Aからレーザ75Bの方向へ歩行者70が通過したということを認識することができる。
【0005】
また、単に人が通過していることを検知する方法としては、人が一人通過可能な狭い通路において、光を常時、通路を横断する方向に照射し、照射した光が遮られたときに人が通過していると判定する方法がある(例えば、バスの乗降口や駅の自動改札等)。
【0006】
また、特許文献1には、レーザスキャナを用いて人を検知する方法が記載されている。具体的には、計測エリアに対しレーザを出射して、計測エリアに存在する歩行者を検出する方法が記載されている。
【0007】
また、非特許文献2には、レーザスキャナを用いて歩行者を追跡する方法が記載されている。具体的には、複数のレーザスキャナを床面に設置し、床面と平行にスキャンを行うことにより検知した歩行者の足を追跡することにより、駅等の人の流れを判定する方法が記載されている。
【0008】
また、歩行者を検知する方法として、画像カメラ等を用いて撮影した画像から歩行者を検知する方法も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−140790号公報(2002年5月17日公開)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】SICK社 LD−PeCo People Counter 取扱説明書 8010332/QH23/2007-02-05
【非特許文献2】中村克行、他5名「複数のレーザレンジスキャナを用いた歩行者トラッキングとその信頼性評価」、電子情報通信学会論文誌 D-II,J88-D-II,No.7, pp.1143-1152, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来技術では、以下に示す問題を生じる。まず、非特許文献1に記載の構成は、装置を天井に設置するため、設置場所が制限される。また、天井のない場所(例えば道路等)で使用する場合、設置が容易ではない、または、設置することができない。さらに、天井に取り付ける場合は、落下の危険性を回避するために、半定常的かつ安定した設置が必要となる。また、天井に取り付ける場合、臨時に設置する(例えば年に1回だけ設置する)ことに不適である。
【0012】
また、特許文献1に記載された発明は、歩行者を検知するのみであり、歩行者の数や進行方向を判定することができない。
【0013】
また、非特許文献2に記載された方法は、床面に対し平行にスキャンを行うため、オクルージョン(隠蔽)が起こり、歩行者を正確に検知することが困難である。さらに、オクルージョンに対応するためには、歩行者の中に割り込んで多数のレーザスキャナを設置する必要がある。
【0014】
また、画像カメラを用いる方法は、画像データのデータ量が膨大になるとともに、様々な照明条件に対応することは技術的に非常に困難である。また、歩行者のプライバシーを侵害する虞も生じる。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、物体およびその通過方向を正確に検知するとともに、容易に設置できる物体検知システム等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係る物体検知システムは、通路を通過する物体およびその通過方向を検知する物体検知システムにおいて、上記通路を横断する方向に走査するレーザを出射する、上記通路に沿って所定の間隔で配置された2つのレーザセンサを、それぞれ含む、上記通路を挟んで配置された2つのセンサユニットと、上記2つのセンサユニットの一方である第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の当該レーザセンサからの距離、高さ、および検知時刻の組から成る検知情報を取得して、第1記憶部に格納するとともに、上記第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第2記憶部に格納する第1取得手段と、上記2つのセンサユニットの他方である第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第3記憶部に格納するとともに、上記第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第4記憶部に格納する第2取得手段と、2つの上記検知情報の距離、高さ、検知時刻のそれぞれの差が、いずれも所定の範囲内にあるとき、該2つの検知情報が対応するとし、上記第1記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第2記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第1センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第1算出手段と、上記第3記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第4記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第2センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第2算出手段と、上記第1算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組、および、上記第2算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組について、上記第1算出手段にて決定した物体と上記第2算出手段にて決定した物体とが同一であるか否かを、上記検知情報の高さおよび検知時刻、ならびに当該検知情報の距離から求めた物体の上記通路上における位置をそれぞれ比較することによって判定し、上記第1算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組と、上記第2算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組から上記同一と判定した物体を除いた物体およびその通過方向の組との和を求める検知確定手段と、を備えていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る物体検知システムの制御方法は、通路を横断する方向に走査するレーザを出射する、上記通路に沿って所定の間隔で配置された2つのレーザセンサを、それぞれ含む、上記通路を挟んで配置された2つのセンサユニットを備え、上記通路を通過する物体およびその通過方向を検知する物体検知システムの制御方法であって、上記2つのセンサユニットの一方である第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の当該レーザセンサからの距離、高さ、および検知時刻の組から成る検知情報を取得して、第1記憶部に格納するとともに、上記第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第2記憶部に格納する第1取得ステップと、上記2つのセンサユニットの他方である第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第3記憶部に格納するとともに、上記第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第4記憶部に格納する第2取得ステップと、2つの上記検知情報の距離、高さ、検知時刻のそれぞれの差が、いずれも所定の範囲内にあるとき、該2つの検知情報が対応するとし、上記第1記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第2記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第1センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第1算出ステップと、上記第3記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第4記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第2センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第2算出ステップと、上記第1算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組、および、上記第2算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組について、上記第1算出ステップにて決定した物体と上記第2算出ステップにて決定した物体とが同一であるか否かを、上記検知情報の高さおよび検知時刻、ならびに当該検知情報の距離から求めた物体の上記通路上における位置をそれぞれ比較することによって判定し、上記第1算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組と、上記第2算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組から上記同一と判定した物体を除いた物体およびその通過方向の組との和を求める検知確定ステップと、を含むことを特徴としている。
【0018】
上記の構成または方法によれば、通路を横断する方向に走査するレーザを出射する2つのレーザセンサを含むセンサユニットが、上記レーザセンサが通路に沿って所定の間隔で配置されるように設置される。
【0019】
そして、上記センサユニットに含まれるそれぞれ2つのレーザセンサそれぞれの出力から、それぞれのレーザセンサが検知した物体の当該レーザセンサからの距離、高さ、および検知時刻の組から成る検知情報が取得される。そして、同じセンサユニットに含まれるレーザセンサの検知情報を比較することによって、センサユニットで検知した物体とその通過方向が決定される。さらに、センサユニットごとに決定した、検知した物体およびその通過方向の和を求めることによって、物体検知システムで検知した物体およびその通過方向が確定される。
【0020】
よって、通路を挟んで両側にレーザセンサが設置されるので、通路の一方側のみにレーザセンサが設置されている場合と比較して、より正確に物体の検知を行うことができる。なぜなら、通路の一方のみにレーザセンサが設置されている場合、複数の物体が並んで通過すると、レーザセンサから見て手前の物体により奥側の物体が隠れてしまい、奥側の物体を検知できなくなる可能性があるところ、通路の両側にレーザセンサを設置すれば、一方側のレーザセンサにより物体を検知できない場合であっても、他方側のレーザセンサにより物体を検知できるためである。
【0021】
また、レーザセンサが通路に沿って2つずつ設置されるので、通過した物体の通過方向を算出することができる。なぜなら、通路に沿って設置されたレーザセンサそれぞれの物体の検知時刻の差から、物体が、2つのレーザセンサのうちの一方から他方の方向へ進行したことを判定できるためである。
【0022】
なお、通路の両側にレーザセンサを設置するので、レーザセンサを天井に設置する場合と比較して、設置場所の制約を減らすことができる。例えば、天井がない場所等であっても、レーザセンサを容易に設置することが可能となる。また、通路の両側に設置するだけであるので、レーザセンサの撤去が容易となる。
【0023】
さらに、レーザを、高い場所から通路を横断する方向に出射するので、オクルージョンが起こりにくく、レーザを床面に平行に出射する場合と比較して、より少ないレーザセンサで物体の検知を行うことができるとともに、処理すべきデータ量を少なくすることができる。
【0024】
また、本発明に係る物体検知システムは、上記検知確定手段が求めた、上記通路を通過した物体およびその通過方向から、所定期間における、上記通路を通過した物体の個数を上記通過方向毎に計数する計数手段を備える構成であってもよい。
【0025】
上記の構成によれば、所定期間における、通過方向毎の物体の検知数を算出することができる。
【0026】
なお、上記物体検知システムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記物体検知システムをコンピュータにて実現させる物体検知システムの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明に係る物体検知システムは、通路を通過する物体およびその通過方向を検知する物体検知システムにおいて、上記通路を横断する方向に走査するレーザを出射する、上記通路に沿って所定の間隔で配置された2つのレーザセンサを、それぞれ含む、上記通路を挟んで配置された2つのセンサユニットと、上記2つのセンサユニットの一方である第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の当該レーザセンサからの距離、高さ、および検知時刻の組から成る検知情報を取得して、第1記憶部に格納するとともに、上記第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第2記憶部に格納する第1取得手段と、上記2つのセンサユニットの他方である第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第3記憶部に格納するとともに、上記第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第4記憶部に格納する第2取得手段と、2つの上記検知情報の距離、高さ、検知時刻のそれぞれの差が、いずれも所定の範囲内にあるとき、該2つの検知情報が対応するとし、上記第1記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第2記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第1センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第1算出手段と、上記第3記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第4記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第2センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第2算出手段と、上記第1算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組、および、上記第2算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組について、上記第1算出手段にて決定した物体と上記第2算出手段にて決定した物体とが同一であるか否かを、上記検知情報の高さおよび検知時刻、ならびに当該検知情報の距離から求めた物体の上記通路上における位置をそれぞれ比較することによって判定し、上記第1算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組と、上記第2算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組から上記同一と判定した物体を除いた物体およびその通過方向の組との和を求める検知確定手段と、を備えている構成である。
【0028】
また、本発明に係る物体検知システムの制御方法は、通路を横断する方向に走査するレーザを出射する、上記通路に沿って所定の間隔で配置された2つのレーザセンサを、それぞれ含む、上記通路を挟んで配置された2つのセンサユニットを備え、上記通路を通過する物体およびその通過方向を検知する物体検知システムの制御方法であって、上記2つのセンサユニットの一方である第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の当該レーザセンサからの距離、高さ、および検知時刻の組から成る検知情報を取得して、第1記憶部に格納するとともに、上記第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第2記憶部に格納する第1取得ステップと、上記2つのセンサユニットの他方である第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第3記憶部に格納するとともに、上記第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第4記憶部に格納する第2取得ステップと、2つの上記検知情報の距離、高さ、検知時刻のそれぞれの差が、いずれも所定の範囲内にあるとき、該2つの検知情報が対応するとし、上記第1記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第2記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第1センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第1算出ステップと、上記第3記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第4記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第2センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第2算出ステップと、上記第1算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組、および、上記第2算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組について、上記第1算出ステップにて決定した物体と上記第2算出ステップにて決定した物体とが同一であるか否かを、上記検知情報の高さおよび検知時刻、ならびに当該検知情報の距離から求めた物体の上記通路上における位置をそれぞれ比較することによって判定し、上記第1算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組と、上記第2算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組から上記同一と判定した物体を除いた物体およびその通過方向の組との和を求める検知確定ステップと、を含む方法である。
【0029】
よって、通路を挟んで両側にレーザセンサが設置されるので、通路の一方側のみにレーザセンサが設置されている場合と比較して、より正確に物体の検知を行うことができるという効果を奏する。
【0030】
また、レーザセンサが通路に沿って2つずつ設置されるので、通過した物体の通過方向を算出することができるという効果を奏する。
【0031】
さらに、通路の両側にレーザセンサを設置するので、レーザセンサを天井に設置する場合と比較して、設置場所の制約を減らすことができるという効果を奏する。また、通路の両側に設置するだけであるので、レーザセンサの撤去が容易となるという効果を奏する。
【0032】
また、レーザを通路を横断する方向に出射するので、オクルージョンが起こりにくく、レーザを床面に平行に出射する場合と比較して、より少ないレーザセンサで物体の検知を行うことができるとともに、処理すべきデータ量を少なくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態を示すものであり、物体検知システムの要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記実施の形態において、物体検知システムが設置された通路を、歩行者が通過する様子を、斜め上方向から見た状態を示す説明図である。
【図3】上記実施の形態において、物体検知システムが設置された通路を、歩行者が通過する様子を、歩行者の進行方向の後方から見た状態を示す説明図である。
【図4】上記実施の形態において、物体検知システムが設置された通路を、歩行者が通過する様子を、上方向から見た状態を示す説明図である。
【図5】上記物体検知システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】上記実施の形態の変形例の原理を示す説明図である。
【図7】従来技術における、物体の検知の原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(物体検知システムの概要)
本発明の一実施の形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本発明に係る物体検知システム1は、概略的に言えば、通路205を通過する物体およびその通過方向を検知するシステムである。なお、本実施の形態では、物体検知システム1が検知する物体として、特に、歩行者を想定して記載するが、本発明はこれに限られるものではなく、自転車、自動車、動物等の移動体であればよい。
【0035】
図2に示すように、物体検知システム1では、通路205を挟むようにセンサユニット(第1センサユニット、第2センサユニット)15a、15bが設置される。そして、センサユニット15aは、2つのスキャン式レーザセンサ(第1レーザセンサ、第2レーザセンサ)51a、51bを含み、センサユニット15bは、2つのスキャン式レーザセンサ(第1レーザセンサ、第2レーザセンサ)51c、51dを含んでいる。そして、スキャン式レーザセンサ51a、51bおよびスキャン式レーザセンサ51c、51dは、それぞれ通路205に沿って配置されており、通路205を横断するようにスキャン(走査)を行う。なお、以下では、センサユニット15a、15bについて、それぞれを区別する必要がないときは、センサユニット15と記載し、スキャン式レーザセンサ51a、51b、51c、51dについてそれぞれを区別する必要がないときはスキャン式レーザセンサ51と記載する。
【0036】
そして、センサユニット15と物体計数装置10とが有線または無線により接続されている。これにより、センサユニット15に含まれるスキャン式レーザセンサ51の出力が物体計数装置10に送信される。物体計数装置10は、スキャン式レーザセンサ51の出力から、物体の検知、およびその通過方向を算出するものである。
【0037】
上記の構成のように、物体検知システム1は、2つのセンサユニット15を通路205の両側に配置するので、センサユニット15を天井等に設置する場合と比較して、設置場所の制約が少なく、設置および撤去が容易である上に、万一落下しても安全である。
【0038】
さらに、2人の歩行者が重なって歩行し、一方の歩行者の影に他方の歩行者が隠れてしまう状況であっても、物体検知システム1の構成によれば、通路205の両側からスキャンを行うので、2人の歩行者を正確に検知することができる。
【0039】
このように、上記の構成によれば、物体の検知の精度が高く、かつ設置および撤去が容易な物体検知システム1を実現することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、1つのセンサユニット15に含まれるスキャン式レーザセンサ51を2つとして記載するが、センサユニット15に含まれるスキャン式レーザセンサ51の数は複数であれば良く、2つに限られない。
【0041】
(物体検知システムの構成)
次に、図1を用いて、物体検知システム1の構成の概略を説明する。図1は、物体検知システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0042】
図1に示すように、本発明に係る物体検知システム1は、物体計数装置10、およびセンサユニット15a、15bを含む構成である。そして、物体計数装置10は、データ取得部(第1取得手段、第2取得手段)11、検知部12、結果出力部13、および算出データ記憶部14を含む構成であり、検知部12は、算出部21、計数部22、および速度算出部25を含む構成である。なお、速度算出部25は必ずしも含まなくてもよい。また、センサユニット15aは、スキャン式レーザセンサ51a、51bを含み、センサユニット15bは、スキャン式レーザセンサ51c、51dを含む構成である。また、算出部21は、第1算出部23および第2算出部24を含む構成である。
【0043】
物体計数装置10は、スキャン式レーザセンサ51が検知した歩行者の個数の算出、通過方向の決定を行うものであり、パーソナルコンピュータ等によって実現される。なお、物体計数装置10は、図示しない制御部を備えており、データ取得部11、検知部12、および結果出力部13は、制御部によって制御されるものとする。制御部は、RAM(Random Access Memory)等に記憶されている各種プログラムを読み出して、物体計数装置10の各部を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で構成することができる。
【0044】
算出データ記憶部14は、検知部12が検知処理を行うときに用いるデータ、および検知部12が出力したデータを記憶するものであり、第1バッファ(第1記憶部)41、第2バッファ(第2記憶部)42、第3バッファ(第3記憶部)43、第4バッファ(第4記憶部)44、第1検出ログ45、および第2検出ログ46を含むものである。なお、算出データ記憶部14は、RAMなどのメモリ等で実現される。
【0045】
第1バッファ41、第2バッファ42、第3バッファ43、および第4バッファ44はそれぞれ、データ取得部11が取得した、検知した歩行者の高さ、位置(スキャン式レーザセンサ51から歩行者までの距離)、および検知時刻の組である歩行者候補情報(検知情報)を記憶するものである。高さおよび位置の求め方については後述する。第1バッファ41、第2バッファ42、第3バッファ43、および第4バッファ44への歩行者候補情報の格納処理および削除処理については後述する。
【0046】
第1検出ログ45は、第1バッファ41および第2バッファ42に記憶されている歩行者候補情報のうち、第1算出部23によって関連付けられた歩行者候補情報を、検出情報として記憶する。また、第2検出ログ46は、第3バッファ43および第4バッファ44に記憶されている歩行者候補情報のうち、第2算出部24によって関連付けられた歩行者候補情報を、検出情報として記憶する。第1検出ログ45および第2検出ログ46への検出情報の格納処理については後述する。
【0047】
データ取得部11は、スキャン式レーザセンサ51毎に、スキャン式レーザセンサ51の出力から、該スキャン式レーザセンサ51が検知した歩行者の位置、高さ、およびその検知時刻を取得する。これにより、スキャン式レーザセンサ51のそれぞれが検知した歩行者候補の情報(歩行者候補情報)が取得できる。そして、この歩行者候補情報はスキャン式レーザセンサ51毎に算出データ記憶部14に格納し、所定期間、保持する。なお、当該所定期間は、歩行者が、通路205に沿った2つのスキャン式レーザセンサ51をまたいで通過するのに十分な時間である。
【0048】
ここで、歩行者の位置とは、スキャン式レーザセンサ51と歩行者との距離である。より詳細には、スキャン式レーザセンサ51aおよびスキャン式レーザセンサ51bについては、スキャン式レーザセンサ51aとスキャン式レーザセンサ51bとを結ぶ線分の垂直2等分線と平行で、スキャン式レーザセンサ51aまたは51bを通る線上のスキャン式レーザセンサ51から離れる方向(歩行者へ向かう方向)への距離である。同様に、スキャン式レーザセンサ51cおよびスキャン式レーザセンサ51dについては、スキャン式レーザセンサ51cとスキャン式レーザセンサ51dとを結ぶ線分の垂直2等分線と平行で、スキャン式レーザセンサ51cまたは51dを通る線上のスキャン式レーザセンサ51から離れる方向(歩行者へ向かう方向)への距離である。
【0049】
また、歩行者の高さとは、スキャン式レーザセンサ51が検知した点である検知点のそれぞれの高さである。
【0050】
算出部21は、算出データ記憶部14に記憶されている、スキャン式レーザセンサ51ごとの、直前の所定時間(例えば1秒)における、歩行者の位置、高さ、およびその検知時刻から、歩行者の通過方向を決定するものである。より具体的には、まず、センサユニット15のそれぞれに対応するバッファに記憶されている歩行者候補情報から、同一の歩行者の可能性が高い歩行者候補情報同士を関連付ける。これは、歩行者候補情報の、位置、高さ、および検知時刻の差異が所定の値よりも小さいもの同士を関連付けることにより行う。そして、その後、センサユニット15のそれぞれに含まれる2つのスキャン式レーザセンサ51それぞれの検知時刻の前後関係から、上記歩行者の通過方向を決定する。なお、関連付けられた歩行者候補情報は、バッファからただちに削除する。
【0051】
なお、算出部21の第1算出部23が、センサユニット15aに含まれるスキャン式レーザセンサ51の出力について上記処理を行い、第2算出部24が、センサユニット15bに含まれるスキャン式レーザセンサ51の出力について上記処理を行う。つまり、第1算出部23は、第1バッファ41に記憶されている歩行者候補情報と、第2バッファ42に記憶されている歩行者候補情報との関連付けを行い、また、第2算出部24は、第3バッファ43に記憶されている歩行者候補情報と、第4バッファ44に記憶されている歩行者候補情報との関連付けを行う。
【0052】
また、第1算出部23は、上記関連付けた歩行者候補情報を、検出情報として第1検出ログ45に格納する。また、第2算出部24は、上記関連付けた歩行者候補情報を、検出情報として第2検出ログ46に格納する。
【0053】
その後、算出部21は、第1算出部23および第2算出部24がそれぞれ決定した、検知した歩行者およびその通過方向から、物体検知システム1の検知結果としての、歩行者、およびその通過方向を算出する。
【0054】
計数部22は、算出部21が算出した歩行者の個数、その通過方向、および通過時刻(検知時刻)から、所定の期間における、通過方向毎の歩行者の個数を算出するものである。
【0055】
速度算出部25は、算出部21が算出した歩行者の個数その通過方向、および通過時刻から、歩行者の通過速度を算出するものである。
【0056】
なお、物体検知システム1において、歩行者を検知して、その個数と通過方向とを算出する具体的な処理の流れについては後述する。
【0057】
結果出力部13は、検知部12が算出した結果を出力するものである。この結果出力部13の例としては、LCD(液晶ディスプレイ)、CRT(cathode-ray tube)ディスプレイなどの表示装置、スピーカ等の音声出力装置を挙げることができる。また、検知部12が算出した結果を、図示しない補助記憶装置に保存したり、通信ネットワークを介して他のシステムへ送出してもよい。
【0058】
センサユニット15は、2つのスキャン式レーザセンサ51を備えたユニットである。なお、2つのスキャン式レーザセンサ51の間隔は、本実施の形態では、30cmを想定している。
【0059】
スキャン式レーザセンサ51は、レーザを出射してから跳ね返ってくるまでの時間に応じて、歩行者までの距離を測定するものである。このとき、スキャン式レーザセンサ51は、出射するレーザの方向を所定の角度幅で変更しながらスキャンを行う。本実施の形態では、所定の角度幅は、0.25度であり、90度分の範囲を50msの周期でスキャンしている。そして、スキャン式レーザセンサ51は上記の角度幅でレーザの出射方向を変更しながらスキャンを行い、それぞれの角度毎に得られたデータを出力する。
【0060】
なお、本実施の形態では、スキャン式レーザセンサ51は、通路205を横断する方向にスキャンを行っている。すなわち、スキャン式レーザセンサ51が出射するレーザの軌跡が作成する面(スキャン面)は、通路205を歩行者が通過する方向に対して垂直となる。
【0061】
また、本実施の形態では、スキャン式レーザセンサ51は、通路205を挟んで2つずつ両側に配置されている。
【0062】
(歩行者を検知する方法)
次に、スキャン式レーザセンサ51が歩行者を検知する方法を、図2〜図4を用いて具体的に説明する。
【0063】
図2は、物体検知システム1が設置された通路205を、歩行者(物体)201、202が通過する様子を示す説明図である。図2では、物体検知システム1が設置された通路205を、歩行者201、202が通過する様子を斜め上方向から見た状態を示している。図2に示すように、物体検知システム1のセンサユニット15a、15bは、通路205を挟むように、通路205の両側に設置されている。そして、センサユニット15aに含まれているスキャン式レーザセンサ51a、b51は、スキャン面が通路205を横断するように通路205に沿って配置されている。同様に、センサユニット15bに含まれているスキャン式レーザセンサ51c、51dは、スキャン面が通路205を横断するように通路205に沿って配置されている。また、スキャン式レーザセンサ51aとスキャン式レーザセンサ51cとが、スキャン式レーザセンサ51bとスキャン式レーザセンサ51dとがほぼ対向するように配置されている。なお、スキャン式レーザセンサ51aとスキャン式レーザセンサ51cとが対向するように配置されるとともに、スキャン式レーザセンサ51bとスキャン式レーザセンサ51dとが対向するように配置されることが最も望ましい。
【0064】
そして、センサユニット15は、通路205を歩いている歩行者201、202を検知する。なお、本実施の形態では、スキャン式レーザセンサ51が設置される高さは、歩行者の身長よりもやや高い位置でなければならない。例えば地面から230cmである。
【0065】
そして、本実施の形態では、スキャン式レーザセンサ51が出射するレーザの軌跡が作成するスキャン面は、レーザの出射口を中心とした扇型の領域である。歩行者201、202がスキャン面を通過すると、歩行者のスキャン式レーザセンサ51側の面を、スキャン式レーザセンサ51が捉える。歩行者201、202が通常の速度(時速4km程度)で通過すると、1つのスキャン式レーザセンサ51は、通過中に約7回、スキャンを行うことになる。1回のスキャンにおいて、0.25度の角度間隔でレーザを出射するので、歩行者201、202のスキャン式レーザセンサ51側の面にある体の部分において、数十〜数百点が検知される。
【0066】
ここで、センサユニット15aのみが設置されていた場合、歩行者201を検知することはできるが、歩行者202を検知することができない場合がある。例えば、歩行者201の背が高く、歩行者202の背が低い等、スキャン式レーザセンサ51から見て、歩行者202が歩行者201の影になっている場合である。この場合、本実施の形態のように、センサユニット15aに加えてセンサユニット15bを設置することにより、歩行者202を検知することが可能となるので、図3を用いて説明する。
【0067】
図3は、物体検知システム1が設置された通路205を歩行者201、202が通過する様子を、歩行者201、202の進行方向の反対側から(歩行者の後ろ側から)見た状態を示す図である。図3に示すように、スキャン式レーザセンサ51aから出射されるレーザは、歩行者201に当たるが、歩行者201の影になる歩行者202に当たらない。そのため、スキャン式レーザセンサ51aでは、歩行者201を検知することはできるが、歩行者202を検知することはできない。一方、センサユニット15cから出射されるレーザは、歩行者201および歩行者202に当たる。そのため、スキャン式レーザセンサ51cは、歩行者201、202ともに検知することができる。
【0068】
したがって、歩行者が並んで歩く場合等、通路205の一方の側からスキャンを行うだけでは、歩行者全員を検知できないような場合であっても、本実施の形態のように、通路205の両側からスキャンを行うことにより、正確に歩行者を検知することができる。
【0069】
また、本実施の形態のように、センサユニット15a、15bのそれぞれに、通路205に沿って2つのスキャン式レーザセンサ51を備えることにより、歩行者201、202の進行方向を検知することができるので図4を用いて説明する。
【0070】
図4は、物体検知システム1が設置された通路205を歩行者201、202が通過する様子を、上方から見た状態を示す図である。図4に示すように、歩行者201、202が通路205を図4の下側から上側に進んでいくと、歩行者201、202は、まず、スキャン式レーザセンサ51bおよび51dによって検知される。そして、引き続き、歩行者201、202が進んでいくと、次に、歩行者201、202は、スキャン式レーザセンサ51aおよび51cによって、検知される。これにより、物体検知システム1は、スキャン式レーザセンサ51aおよびb、またはスキャン式レーザセンサ51cおよび51dが、歩行者201、202を検知した検知時刻を比較することにより、歩行者201、202の進行方向を決定することができる。
【0071】
(処理の流れ)
次に、各スキャン式レーザセンサ51の出力から、歩行者の通過方向ごとの検知数(検知結果)を算出するまでの処理の流れについて、図5を用いて説明する。図5は、物体検知システム1において、スキャン式レーザセンサ51の出力から検知結果を算出するまでの処理の流れを示すフローチャートである。なお、以下において、第1算出部23は、センサユニット15aに含まれるスキャン式レーザセンサ51の出力について、第2算出部24は、センサユニット15bに含まれるスキャン式レーザセンサ51の出力について、処理を行う。
【0072】
まず、データ取得部11は、歩行者が通行していないとき、各スキャン式レーザセンサ51の1スキャン分のスキャンデータ(スキャン式レーザセンサ51の出力データ)をそれぞれの角度毎に、背景データとして取得する(S501)。ここで、1スキャンとは、スキャン式レーザセンサ51が、スキャン面を1通りスキャンすることを指す。そして、データ取得部11は、取得した背景データを算出データ記憶部14に格納する。なお、背景データの取得は、歩行者の検知を開始する前に1度だけ行えばよい。
【0073】
さらに、データ取得部11は、スキャン式レーザセンサ51の1スキャン分の出力データから、角度毎に、算出データ記憶部14に記憶されている背景データを減算する(S502)。そして、それぞれの角度毎に、ステップS502にて減算した値が、予め定められた値(基準値)よりも小さいか否かを判定する(S503)。本実施の形態では、基準値は、(−20)cmに設定している。そして、減算した値が基準値よりも小さければ(S503でYES)、当該減算後のデータ(以下、検出データと称する)と検出フラグとを対応付ける(検出フラグを立てる)(S504)。そして、1スキャン分の全ての出力データ(それぞれの角度におけるスキャン式レーザセンサ51の出力データ)について、基準値との比較が終了すると(S505でYES)、それぞれの出射角度における検知点とスキャン式レーザセンサ51との距離であるxと、検知点の高さであるyを算出する(S506)。以降では、x、yの値と検知時刻とが対応付けられたデータを、検知データと称する。
【0074】
そして、以上の計算をスキャンデータの取得ごとに行い、前回のスキャンにおいて検知された歩行者と今回のスキャンにおいて検知された歩行者との位置が類似しているとき(すなわち、差異が所定値よりも小さいとき)、前回のスキャンにおいて検知された歩行者と今回のスキャンにおいて検知された歩行者とは、同一の歩行者であると判定する。そして、この歩行者がスキャン面から消えた(居なくなった)とき、すなわち、検知できなくなったとき、算出データ記憶部14に、上記同一と判定した歩行者についての歩行者候補情報を格納する。歩行者が消えるまで歩行者候補情報の格納しないのは、同一の歩行者を何度もカウントしないためである。
【0075】
上述したように、距離xは、それぞれのセンサユニット15におけるスキャン式レーザセンサ51を結ぶ線分の垂直2等分線と平行でスキャン式レーザセンサ51を通る直線上のスキャン式レーザセンサ51から離れる方向への距離を示し、高さyは、スキャン式レーザセンサ51が検知した点の高さを示す。検出データは、長さを示すデータであるので、x,yは、三角関数を用いて検出データから算出することができる。
【0076】
次に、データ取得部11は、x、y座標を算出した検知データを、yの値が降順になるようにソートする(S507)。そして、ソートした検知データのうち、yの値が最も大きい歩行者候補情報に物体フラグを立てる(S508)。その後、yの値が予め定められた値(身長設定値)を超える検知データについて、ソートされた順に、既に物体フラグが立っている検知データとのxの値の差が予め定められた値(幅の閾値)以下か否かを判定する(S509)。本実施の形態では、身長設定値は100cm、幅の閾値は30cmに設定している。
【0077】
そして、データ取得部11は、既に物体フラグが立っている検知データのxの値との差が幅の閾値以下であれば(S510でNO)、物体フラグを立てない(S511)。一方、幅の閾値よりも大きければ(S510でYES)、物体フラグを立てる(S512)。その後、スキャン毎に時系列に比較を行い、あるスキャンにおいて物体フラグを立てた検知データを取得し、その次のスキャンにおいて対応する物体フラグを立てた検知データを取得できなくなったとき、歩行者の検出をしたものとする。そして、該検知データを歩行者候補情報として、第1バッファ41、第2バッファ42、第3バッファ43、および第4バッファ44のいずれか1つに格納する(S513)。より詳細には、第1算出部23は、スキャン式レーザセンサ51aの出力に対応する歩行者候補情報を第1バッファ41に格納し、スキャン式レーザセンサ51bの出力対応する歩行者候補情報を第2バッファ42に格納する。また、第2算出部24は、スキャン式レーザセンサ51cの出力に対応する歩行者候補情報を第3バッファ43に格納し、スキャン式レーザセンサ51dの出力に対応する歩行者候補情報を第4バッファ44に格納する。
【0078】
ここで、物体フラグが立てられる歩行者候補情報の例について、図3を用いて説明する。図3には、スキャン式レーザセンサ51aとスキャン式レーザセンサ51cとが歩行者201、202をスキャンしている状態が示されている。そして、スキャン式レーザセンサ51aのスキャンによって、a1〜a5までの点が検知されている。また、スキャン式レーザセンサ51cのスキャンによって、c1〜c6までの点がスキャンされている。
【0079】
そして、スキャン式レーザセンサ51aが検知したa1〜a5を、yの値によって降順にソートすると、a1が、yの値が最も大きいので、先頭になる。よって、まず、a1に物体フラグが立てられる。そして、a2以降のxの値と、a1のxの値との差は、幅の閾値dを超えないので、a1以外には物体フラグは立てられない。
【0080】
一方、スキャン式レーザセンサ51cが検知したc1〜c6を、yの値によって降順にソートすると、c1が、yの値が最も大きいので、先頭になる。よって、まず、c1に物体フラグが立てられる。そして、c2以降のxの値と、c1のxの値との差をみると、c4のxの値との差が幅の閾値dを超える。よって、次にc4に物体フラグが立てられる。そして、c5以降については、xの値が幅の閾値dを超えない。よって、c1〜c6については、c1およびc4に物体フラグが立てられる。
【0081】
以上のように、物体フラグは、歩行者の頭頂部付近を検知したときの歩行者候補情報に立てられることになる。
【0082】
次に、算出データ記憶部14の、スキャン式レーザセンサ51毎に、歩行者候補情報を保存する第1バッファ41〜第4バッファ44のデータ構造の例について説明する。第1バッファ41〜第4バッファ44はそれぞれ、例えば、下記の表1に示すデータ構造とすることができる。表1に示す例では、第1バッファ41〜第4バッファ44はそれぞれ、xの値、yの値、検知時刻を対応付けて、歩行者候補情報として、記憶している。なお、表1の各行に相当するデータが、歩行者候補情報となる。
【0083】
【表1】

【0084】
そして、第1算出部23は、第1バッファ41に記憶されている歩行者候補情報のx、y、検知時刻の値と、第2バッファ42に記憶されている歩行者候補情報のx、y、検知時刻の値とを比較することにより、同一の歩行者と考えられる歩行者候補情報の関連付けを行う。そして、第1算出部23は、関連付けた歩行者候補情報を、検出情報として第1検出ログ45に格納し、第1バッファ41および第2バッファ42から削除する(S514)。そして、同一の歩行者と考えられる歩行者候補情報の上記関連付けを行ったとき、歩行者としてカウントし、関連付けた歩行者候補情報から、該歩行者の通過方向を決定する(S515)。
【0085】
同様に、第2算出部24は、第3バッファ43に記憶されている歩行者候補情報のx、y、検知時刻の値と第4バッファ44に記憶されている歩行者候補情報のx、y、検知時刻の値とを比較することにより、同一の歩行者と考えられる歩行者候補情報の関連付けを行う。そして、第2算出部24は、関連付けた歩行者候補情報を検出情報として第2検出ログ46に格納し、歩行者としてカウントするとともに、第3バッファ43および第4バッファ44から削除する(S514)。そして、同一の歩行者と考えられる歩行者候補情報の上記関連付けを行ったとき、歩行者としてカウントし、関連付けた歩行者候補情報から該歩行者の通過方向を決定する(S515)。
【0086】
また、第1算出部23、または第2算出部24によって関連付けがなされずに、第1バッファ41、第2バッファ42、第3バッファ43、および第4バッファ44に格納されたままとなっている歩行者候補情報は、格納されてから所定時間が経過すると削除される。なお、上記所定時間は、歩行者がスキャン式レーザセンサ51aとスキャン式レーザセンサ51bとを、または、スキャン式レーザセンサ51cとセンサユニット15dとを、またがって通過するのに十分な時間である。
【0087】
また、上記関連付けは、所定時間分(本実施の形態では、3秒分)の歩行者候補情報を、スキャン毎に、関連付ける。具体的には、歩行者候補情報のx、yの値、および検知時刻のそれぞれの差が、所定の範囲にあるか否かを判定し、検知された歩行者が同一か否かを判定する。xは距離、yは高さ(身長)を示しているので、例えば、センサユニット15aの場合、スキャン式レーザセンサ51aの出力による歩行者候補情報のx、y、および検知時刻と、スキャン式レーザセンサ51bの出力による歩行者候補情報のx、y、および検知時刻とをそれぞれ比較することにより、同一人物か否かを判定することができる。
【0088】
なお、上述した実施の形態では、2名の歩行者(201および202)を例に挙げて説明しているが、歩行者の数は2名に限定されるものではない。歩行者は何人でもよく、また、それらの通過方向はどちらであってもよい。
【0089】
以上のように、第1算出部23、第2算出部24は、それぞれ、センサユニット15a、およびセンサユニット15bに対応して、検知した歩行者およびその通過方向を決定する。
【0090】
また、歩行者が、後に通過したスキャン式レーザセンサ51の検知時刻(センサーからの消失時刻)を、該スキャン式レーザセンサ51が含まれるセンサユニット15による歩行の検知時刻とする。
【0091】
最後に、算出部21は、第1算出部23が決定した歩行者、および、第2算出部24が決定した歩行者から、物体検知システム1での検知結果としての歩行者を算出するとともに、当該歩行者の通過方向を決定する(S516)。
【0092】
具体的には、算出部21は、少なくとも、第1算出部23が決定した歩行者と、第2算出部24が決定した歩行者との論理和を求めることによって、物体検知システム1での検知結果としての歩行者を算出する。なお、当該算出された歩行者の通過方向は、第1算出部23および第2算出部24が決定した当該歩行者の通過方向である。
【0093】
ここで、上述の「論理和を求める」とは、具体的には、第1算出部23が決定した歩行者と、第2算出部24が決定した歩行者とから、第1算出部23および第2算出部24にて決定された歩行者(つまり、同一の歩行者)を求めた上で、第1算出部23にて決定した歩行者と、第2算出部24にて決定した歩行者から上記同一の歩行者を除いた歩行者との和を求めることである。
【0094】
なお、第1算出部23にて決定した歩行者と第2算出部24にて決定した歩行者とが同一であるか否か(つまり、同一の歩行者であるか否か)は、第1検出ログ45および第2検出ログ46に記憶されている検出情報の高さおよび検知時刻、ならびに当該検知情報の距離から求めた物体の通路205上における位置をそれぞれ比較することによって判定する。具体的には、検出情報の高さ、検知時刻、位置のそれぞれの差異が、所定の値よりも小さい場合、当該検出情報で特定される歩行者は同一であると判定する。
【0095】
また、上述では、算出部21は、第1算出部23が決定した歩行者と、第2算出部24が決定した歩行者との論理和を求めることとしたが、第1算出部23が決定した歩行者の通過方向の組と、第2算出部24が決定した歩行者およびその通過方向の組との論理和を求めてもよい。
【0096】
以上のように、ステップS516にて、歩行者およびその通過方向を求めた後は、ステップS502へ戻り、ステップS502〜S516を繰り返し行う。以上が、物体検知システム1における処理の流れである。
【0097】
なお、計数部22が、ステップS516に引き続き、ステップS516にて求めた歩行者およびその通過方向、および歩行者の通過時刻に基づいて、所定期間における、通過方向毎の歩行者の個数を算出してもよい。すなわち、計数部22が、ステップS516にて求めた歩行者のうち、所定期間に一方の方向に通過した歩行者のみを計数した結果と、ステップS516にて求めた歩行者のうち、所定期間に他方の方向に通過した歩行者のみを計数した結果とを、それぞれ算出してもよい。
【0098】
(論理和を求める例)
上述の「論理和を求める」ことについて、図3および図4に示した歩行者201および202を例に挙げて説明する。この場合、センサユニット15aにて歩行者201を検知し、また、センサユニット15bにて歩行者201および歩行者202を検知する。この場合、第1算出部23では、歩行者201が、図4の下側から上側の方向(以下、方向W1と略記する)に向かって通過することを決定するとともに、第2算出部24では、歩行者201および歩行者202が、方向W1に向かって通過することを決定する。
【0099】
続いて、算出部21は、第1算出部23および第2算出部24の両方にて決定された歩行者(同一の歩行者)として歩行者201を求めた上で、第1算出部23にて決定した歩行者201および202と、第2算出部24にて決定した歩行者から歩行者201を除いた歩行者202との和を求める。その結果、物体検知システム1での検知結果として、歩行者201および歩行者202を求めることができる。なお、歩行者201および歩行者202の通過方向は、第1算出部23および第2算出部24にて決定された方向W1とする。
【0100】
次に、3人(それぞれ、歩行者A、B、およびCとする)の歩行者が、通路を同一方向(方向W2とする)に通過している例について説明する。歩行者Bが大人であり、その両横に歩行者Bより背の低い子供である歩行者AおよびCが並んで歩行しているものとする。そして、センサユニット15aにて歩行者AおよびBの2人を検知し、また、センサユニット15bにて、歩行者BおよびCの2人を検知したものとする。この場合、第1算出部23では、歩行者AおよびBの2人が方向W2に向かって通過することを決定するとともに、第2算出部24では、歩行者BおよびCの2人が方向W2に向かって通過することを決定する。
【0101】
続いて、算出部21は、第1算出部23および第2算出部24の両方にて決定された歩行者(同一の歩行者)として歩行者Bを求めた上で、第1算出部23にて決定した歩行者(AおよびB)と、第2算出部24にて決定した歩行者から歩行者Bを除いた歩行者Cとの和を求める。その結果、物体検知システム1での検知結果として、歩行者A、B、およびCを求めることができる。なお、歩行者A、B、およびCの通過方向は、第1算出部23および第2算出部24にて決定された方向W2とする。
【0102】
(歩行者に隠れている歩行者であるか否かの判定)
なお、算出部21にて、歩行者に隠れている歩行者の有無を判定することもできる。具体的には、一方のセンサユニット15のみにて検知された歩行者が、両方のセンサユニット15にて検知された歩行者の影に隠れている歩行者であるか否かを判定する。
【0103】
そこで、この判定方法について、図3に示した歩行者201および202を例に挙げて説明する。この場合、算出部21は、第2算出部24のみにて決定された歩行者202の頭頂部付近の検知点(c4)と、第1算出部23および第2算出部24の両方にて決定された歩行者201の頭頂部付近の検知点(a1またはc1)との位置関係を調べることにより、センサユニット15bから見て歩行者202のセンサユニット15a側に、歩行者201が存在する(つまり、センサユニット15aから見ると、歩行者202は歩行者201によって隠蔽されている)と判定する。
【0104】
より具体的には、第1算出部23および第2算出部24の両方にて決定された歩行者201の頭頂部付近の検知点であるa1またはc1の高さyが、第2算出部24のみにて決定された歩行者A202の頭頂部付近の検知点であるc4と、当該歩行者202を検知したレーザセンサ51cとを結ぶ線分の高さより高い場合、センサユニット15aから見て歩行者202は歩行者201に隠れていると判定する。
【0105】
また、上述した3人の歩行者A、B、およびCが通路を歩行している場合についても、同様である。この場合、算出部21は、第1算出部23のみにて決定された歩行者Aの頭頂部付近の検知点と、第1算出部23および第2算出部24の両方にて決定された歩行者Bの頭頂部付近の検知点との位置関係を調べることにより、センサユニット15aから見て歩行者Aのセンサユニット15b側に、歩行者Bが存在する(つまり、センサユニット15bから見ると、歩行者Aは歩行者Bによって隠蔽されている)と判定する。
【0106】
同様に、第2算出部24のみにて決定された歩行者Cの頭頂部付近の検知点と、第1算出部23および第2算出部24の両方にて決定された歩行者Bの頭頂部付近の検知点との位置関係を調べることにより、センサユニット15bから見て歩行者Cのセンサユニット15b側に、歩行者Bが存在する(つまり、センサユニット15aから見ると、歩行者Cは歩行者Bによって隠蔽されている)と判定する。
【0107】
なお、上述では、歩行者の頭頂部付近の検知点の位置関係を調べることによって歩行者に隠れている歩行者の有無を判定方法について説明したが、歩行者の検知時刻を調べることによって歩行者に隠れている歩行者の有無を判定してもよい。隠している方の歩行者と、隠されている方の歩行者とは、略同一の時刻に検知されるからである。つまり、第1算出部23または第2算出部24のいずれか一方のみにて決定された歩行者の検知時刻と、第1算出部23および第2算出部24の両方にて決定された歩行者の検知時刻とが略同一であるか否かを調べることによって、歩行者に隠れている歩行者の有無を判定してもよい。
【0108】
(効果)
本発明によれば、自動的に通路205を通過する歩行者の数と方向を検知することができるので、歩行者のカウントを、人手を経ずに行うことができる。また、全歩行者の時系列データを記憶することにより、任意の時間の範囲での歩行者数のカウントを容易に行うことができる。
【0109】
さらに、身長を計測することができるので,おおまかに大人と子供の数を把握することができる。
【0110】
また、通路205のどのあたりを歩行者が通行しているのかを認識することができる。よって、商店街などで、人がどのあたりを通行しているのかということも同時に検知できるため、商店街の活性化につなげることもできる。
【0111】
さらに、大学等のオープンキャンパスにおける来訪者の任意の時間間隔における方向別の人数などを計測することが容易となる。
【0112】
また、カメラを用いないので、カメラを用いた場合のように、光量や影の影響を考える必要がない。よって、昼夜を問わず検知が可能である。さらに、カメラのように撮影を行わないので、プライバシーの問題が生じる可能性も低い。
【0113】
さらに、天井等に固定されているものではないので、任意の場所で、必要なときに随時、検知を行うことができる.
また、歩行者が通過する速度を算出することができるので、例えば、歩いている歩行者と走っている歩行者等を区別して計数することもできる。
【0114】
(変形例)
上述した実施の形態では、算出部21が第1算出部23および第2算出部24を含む構成とするとともに、第1算出部23が、センサユニット15aに含まれるスキャン式レーザセンサ51の出力を処理対象とし、第1算出部23とは別の第2算出部24が、センサユニット15bに含まれるスキャン式レーザセンサ51の出力を処理対象とするとともに、算出部21が、第1算出部23の決定内容と第2算出部24の決定内容との論理和を求める構成を説明した。しかしながら、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、第1算出部23および第2算出部24を設けず、算出部21が、4つのスキャン式レーザセンサ51の出力を用いて、上述した論理和を求める構成としてもよい。つまり、センサユニット毎に歩行者およびその通過方向を求める処理を行うことなく、4つのスキャン式レーザセンサ51の出力から直ちに、物体検知システム1での検知結果としての歩行者およびその通過方向を求めるようにしてもよい。
【0115】
また、上述した実施の形態では、歩行者の高さ、位置、検知時刻の全てを用いて、歩行者を特定しているが、本発明はこの方法に限定されるものではない。例えば、歩行者の高さおよび位置の少なくともいずれか1つを用いて歩行者を特定してもよい。
【0116】
また、上述した実施の形態では、センサユニット15を地面で支える構成としたがこれに限られるものではない。センサユニット15は、通路205の両側に設置される構成であればよく、天井等から吊り下げられるものであってもよい。
【0117】
また、上述した実施の形態では、4つのスキャン式レーザセンサ51を用いた構成を説明したがこれに限られるものではない。例えば、ビームスプリッターおよび反射ミラーを用いて、一方のセンサユニットにつき1つのスキャン式レーザセンサ51を用いるものであってもよい。
【0118】
図6を用いて説明する。図6は、通路の片側につき、1つのスキャン式レーザセンサ51を用いる場合の原理を示す説明図である。図6に示すように、スキャン式レーザセンサ51のレーザの進行方向にはビームスプリッター61が備えられ、ビームスプリッター61によって反射したレーザの進行方向には、反射ミラー62が備えられている。
【0119】
そして、ビームスプリッター61は、レーザを通過させるとともに、90度の方向へ反射させるものである。また、反射ミラー62は、レーザを90度の方向へ反射させるものである。
【0120】
上記の構成によれば、1つのスキャン式レーザセンサ51から出射したレーザが、ビームスプリッター61を通過したレーザと、ビームスプリッター61および反射ミラー62で反射したレーザとの2本のレーザとなるので、上述した本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0121】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0122】
最後に、物体検知システム1の各ブロック、特に、検知部12の算出部21、計数部22、および速度算出部25は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPU(central processing unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0123】
すなわち、物体検知システム1は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである物体検知システム1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記物体検知システム1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU(microprocessor unit))が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0124】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM(compact disc read-only memory)/MO(magneto-optical)/MD(Mini Disc)/DVD(digital versatile disk)/CD−R(CD Recordable)等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM(erasable programmable read-only memory)/EEPROM(electrically erasable and programmable read-only memory)/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0125】
また、物体検知システム1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(local area network)、ISDN(integrated services digital network)、VAN(value-added network)、CATV(community antenna television)通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE(institute of electrical and electronic engineers)1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(asynchronous digital subscriber loop)回線等の有線でも、IrDA(infrared data association)やリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(high data rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、任意の場所において、通路を通過する歩行者の数、およびその方向を、正確に検知する検知システムに適用できる。特に、駅構内、道路、商店街、遊園地等の交通量調査に用いる検知システムに適用できる。
【符号の説明】
【0127】
1 物体検知システム
11 データ取得部(第1取得手段、第2取得手段)
12 検知部
15 センサユニット
15a センサユニット(第1センサユニット)
15b センサユニット(第2センサユニット)
21 算出部(検知確定手段)
22 計数部(計数手段)
23 第1算出部(第1算出手段)
24 第2算出部(第2算出手段)
41 第1バッファ(第1記憶部)
42 第2バッファ(第2記憶部)
43 第3バッファ(第3記憶部)
44 第4バッファ(第4記憶部)
51 スキャン式レーザセンサ(レーザセンサ)
51a スキャン式レーザセンサ(第1レーザセンサ)
51b スキャン式レーザセンサ(第2レーザセンサ)
51c スキャン式レーザセンサ(第3レーザセンサ)
51d スキャン式レーザセンサ(第4レーザセンサ)
201 歩行者(物体)
202 歩行者(物体)
205 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路を通過する物体およびその通過方向を検知する物体検知システムにおいて、
上記通路を横断する方向に走査するレーザを出射する、上記通路に沿って所定の間隔で配置された2つのレーザセンサを、それぞれ含む、上記通路を挟んで配置された2つのセンサユニットと、
上記2つのセンサユニットの一方である第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の当該レーザセンサからの距離、高さ、および検知時刻の組から成る検知情報を取得して、第1記憶部に格納するとともに、上記第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第2記憶部に格納する第1取得手段と、
上記2つのセンサユニットの他方である第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第3記憶部に格納するとともに、上記第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第4記憶部に格納する第2取得手段と、
2つの上記検知情報の距離、高さ、検知時刻のそれぞれの差が、いずれも所定の範囲内にあるとき、該2つの検知情報が対応するとし、
上記第1記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第2記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第1センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第1算出手段と、
上記第3記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第4記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第2センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第2算出手段と、
上記第1算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組、および、上記第2算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組について、上記第1算出手段にて決定した物体と上記第2算出手段にて決定した物体とが同一であるか否かを、上記検知情報の高さおよび検知時刻、ならびに当該検知情報の距離から求めた物体の上記通路上における位置をそれぞれ比較することによって判定し、上記第1算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組と、上記第2算出手段にて決定した物体およびその通過方向の組から上記同一と判定した物体を除いた物体およびその通過方向の組との和を求める検知確定手段と、を備えていることを特徴とする物体検知システム。
【請求項2】
上記検知確定手段が求めた、上記通路を通過した物体およびその通過方向から、所定期間における、上記通路を通過した物体の個数を上記通過方向毎に計数する計数手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の物体検知システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物体検知システムを動作させる物体検知システムの制御プログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させるための物体検知システムの制御プログラム。
【請求項4】
請求項3に記載の物体検知システムの制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項5】
通路を横断する方向に走査するレーザを出射する、上記通路に沿って所定の間隔で配置された2つのレーザセンサを、それぞれ含む、上記通路を挟んで配置された2つのセンサユニットを備え、上記通路を通過する物体およびその通過方向を検知する物体検知システムの制御方法であって、
上記2つのセンサユニットの一方である第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の当該レーザセンサからの距離、高さ、および検知時刻の組から成る検知情報を取得して、第1記憶部に格納するとともに、上記第1センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第2記憶部に格納する第1取得ステップと、
上記2つのセンサユニットの他方である第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの一方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第3記憶部に格納するとともに、上記第2センサユニットに含まれる2つのレーザセンサの他方の出力から、当該レーザセンサが検知した物体の上記検知情報を取得して、第4記憶部に格納する第2取得ステップと、
2つの上記検知情報の距離、高さ、検知時刻のそれぞれの差が、いずれも所定の範囲内にあるとき、該2つの検知情報が対応するとし、
上記第1記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第2記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第1センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第1算出ステップと、
上記第3記憶部に格納された検知情報のいずれかと上記第4記憶部に格納された検知情報のいずれかとが対応するとき、当該対応する2つの検知情報で特定される物体を、上記第2センサユニットで検知した物体と決定するとともに、当該対応する2つの検知情報のそれぞれに含まれる検知時刻を比較することにより、当該物体の通過方向を決定する第2算出ステップと、
上記第1算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組、および、上記第2算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組について、上記第1算出ステップにて決定した物体と上記第2算出ステップにて決定した物体とが同一であるか否かを、上記検知情報の高さおよび検知時刻、ならびに当該検知情報の距離から求めた物体の上記通路上における位置をそれぞれ比較することによって判定し、上記第1算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組と、上記第2算出ステップにて決定した物体およびその通過方向の組から上記同一と判定した物体を除いた物体およびその通過方向の組との和を求める検知確定ステップと、を含むことを特徴とする物体検知システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−47772(P2011−47772A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195908(P2009−195908)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「第41回計測自動制御学会北海道支部学術講演会 論文集」 発行日 平成21年2月26日 発行所 社団法人計測自動制御学会北海道支部
【出願人】(397022911)学校法人甲南学園 (18)
【Fターム(参考)】