説明

物体表面の質感計測装置およびそれを用いた紙葉類識別装置

【課題】実用的な感度および速度で、物体表面の質感を計測することが可能な質感計測装置を提供する。
【解決手段】紙葉類識別装置10は、触覚センサ200と、触覚センサ200および質感計測部30を有する質感計測装置とを備える。質感計測部30は、紙幣70が搬送路60を移動するのに伴って、触覚センサ200からの抵抗値を計測し、データ処理部36は、たとえば、計測データの時間変化を高速フーリエ変換して周波数成分を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体表面の凹凸を計測することで物体表面の質感を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ロボットに人間の触覚と同様の機能を与えるための集積多軸触覚センサの実用化が期待されている。
【0003】
たとえば、少子高齢化が進み、日本における労働力人口の減少により、介護者の負担・人手不足の増大が懸念されている。これらを軽減するために、ロボットによる介護支援、労働力提供が期待されている。このようなロボットは本来人間が行っていた介護や柔軟物の取り扱いといった器用な仕事を行うため、人間の指先のように鋭敏な触覚機能が必要となる。
【0004】
人間の触覚は静止した状態では100μm以下の粗さが判別できないが、指先を能動的に動かすアクティブタッチにより対象物体表面のマイクロメータオーダの凹凸を知覚し、紙質の違いや材料表面の仕上げを認識できる(たとえば、非特許文献1を参照)。
【0005】
従来このような表面の微細な凹凸を計測する技術は、表面粗さ計測とよばれ、1)接触式と2)光学式とに分かれる。
【0006】
接触式とは、針を物体表面に押しつけて走査し、物体表面の凹凸に伴い生じる針先の上下の動きを拡大して検知するものであり、製品として販売されている(たとえば、非特許文献2、非特許文献3を参照)。
【0007】
針式の場合、針の先端を一定の力で対象に押しつける必要があり、針の先端が微細なため、対象物体を傷つける恐れがある。
【0008】
一方で、光学式とは、レーザ等を対象物体表面に照射し、反射光から表面の粗さを計測するものであり、これも製品として販売されている(たとえば、非特許文献4を参照)。
【0009】
光学式の場合、対象物体を微細に計測することは可能であるが、対象が透明であると反射光が得られないために、計測できない。
【0010】
なお、表面粗さの定義については、日本工業規格に以下のとおり規定されている。
【0011】
JIS B0601:表面粗さパラメータの定義
B0633:表面性状:輪郭曲線方式-評価の方法及び手順
B0651:表面性状:輪郭曲線方式-触針式表面粗さ測定機の特性
また、従来、銀行等の金融機関は、利用者の入力操作に応じて、入金取引や出金取引等の各種取引を処理する現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)を店舗等に設置している。ATMは、周知のように、入金取引や出金取引等にかかる紙幣について、その真偽や金種を識別する紙幣識別ユニットを設けた、紙幣処理装置を有している。
【0012】
紙幣処理装置は、たとえば、金種別カートリッジと、入出金口と、を結ぶ紙幣搬送路を有し、この紙幣搬送路に沿って紙幣を搬送する。紙幣識別ユニットは、この紙幣搬送路に沿って搬送している紙幣の画像を読み取るイメージセンサを有する。紙幣識別ユニットは、このイメージセンサを用いて読み取った紙幣の画像を用いて、紙幣の種別や真偽を識別する。
【0013】
なお、紙幣の種別や真偽を、上述した画像だけでなく、その紙幣から読み取った磁気パターンや、検出した厚さ等も用いて識別する紙幣識別ユニットもある。
【0014】
ただし、紙幣等の種別や真偽の判定については、誤判定の確率を最小化するという意味でも、紙幣等の有する様々な物理的性質をチェックすることが望ましい。
【0015】
しかしながら、従来、このような物理的性質の検出方法としては、光、より一般的には、電磁波の透過率や反射率、磁気成分の検出、紙の厚さの検出等が、採用されるにとどまっている(たとえば、特許文献1を参照)。
【0016】
上述したように、紙の表面粗さを検出する技術そのものは存在するものの、上述したような紙幣の種別や真偽を識別するというような応用については、十分な検討がなされているとは言えない状況である。
【0017】
たとえば、特許文献2(特開2002−139392号公報)には、紙葉類の質感検出装置及び紙葉類の処理装置が開示され、これは、紙送りローラに圧電素子を組み込み、ローラの接線方向の力を計測して、紙幣表面の凹凸に伴う摩擦力の変化を検知するとの構成を有している。しかしながら、ローラ全体に係る摩擦力の検知であり、紙面の微細な領域の質感の検知を行っているわけではない。したがって、特許文献1に開示の技術は、あくまで、紙幣の損耗を測定し、損耗した紙幣と損耗していない紙幣に分類するという目的に対するものである。
【0018】
また、特許文献3(特開2008−39540号公報)には、音叉型の水晶振動子を備えた触覚センサを用いて、水晶振動子が紙表面に接触する前後のインピーダンス差△Rから、紙の表面粗さを評価する評価方法および評価装置が開示されている。しかし、針式の表面粗さ計測装置であり、微細計測が可能であるが、上述した紙幣の識別等のような応用を考えたときには、実用的な速度で表面粗さを検出することが難しい。
【0019】
さらに、特許文献4(特開2004−77346号公報)には、触覚センサとそれを用いた表面形態計測システム並びに表面形態計測方法について開示されている。この触覚センサは、ポリマー圧電体フィルムと、このポリマー圧電体フィルムから延設される第1の電気信号線と、ポリマー圧電体フィルム及びこのポリマー圧電体フィルムと第1の電気信号線との接続部を被覆する非導電性の弾性部材と、この弾性部材を固定する基板と、この基板の一部に設置される歪ゲージと、この歪ゲージから延設される第2の電気信号線とを有する構成であって、カンチレバー形状の接触式計測技術である。しかしながら、このような構成では、センサが印可する圧力と対象表面の凹凸による圧力、ならびに、水平動に伴う摩擦力が完全に分離できない。
【0020】
一方で、特許文献5および特許文献6には、湾曲したカンチレバー形状のセンサをエラストマー層で被覆した触覚センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2010−198066号公報
【特許文献2】特開2002−139392号公報
【特許文献3】特開2008−39540号公報
【特許文献4】特開2004−77346号公報
【特許文献5】特開2008−8854号公報
【特許文献6】特開2010−204069号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】宮岡徹: ヒト触覚情報処理の基礎、 計測と制御、 Vol. 47、 pp. 554-560 (2008)
【非特許文献2】触針式表面形状測定器 Dektak 150 http://www.ulvac.co.jp/products/compo/F110008.html、ULVAC社、2011年
【非特許文献3】粗さパラメータ計測ガイド(http://www.accretech.jp/pdf/measuring/sfexplain_1.pdf)、東京精密
【非特許文献4】超高速・高精度レーザ変位計 LK-G5000シリーズ、http://www.keyence.co.jp/henni/laser_henni/lk_g5000/?motive=TOP、キーエンス社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
特許文献5および特許文献6に開示された触覚センサは、高感度で被覆体に加えられる圧力および剪断力の大きさおよび方向を検出することができ、3軸の多軸接触センサとして機能する。しかも、エラストマ層に圧力または剪断力が繰り返し加えられた場合でも、信頼性の高い触覚センサが得られる。
【0024】
しかしながら、触覚センサを用いて、紙葉類の識別が可能な程に、物体表面の質感を計測する可能性についての検討は、いまだなされていない。したがって、どのような構成であれば、このような高感度な質感の計測が可能であるかが、必ずしも明らかではない、という問題があった。
【0025】
この発明の目的は、実用的な感度および速度で、物体表面の質感を計測することが可能な質感計測装置を提供することである。
【0026】
この発明の他の目的は、物体表面の質感計測装置を用いた紙葉類識別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この発明の1つの局面に従うと、物体表面の質感計測装置であって、多軸触覚センサ装置と、前記多軸触覚センサ装置を、被測定物の表面に対して一定の垂直圧力で押し当てつつ、前記表面に平行な方向に指定された速度で、前記多軸触覚センサ装置と前記被測定物とを相対的に移動させるための走査手段と、前記多軸触覚センサ装置からの信号の時間変化を格納するための記憶手段と、前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記多軸触覚センサ装置の静止状態を基準として、移動に伴う前記多軸触覚センサ装置と前記被測定物との間の摩擦力に対応する前記触覚センサ装置の出力を抽出する質感抽出手段とを備える。
【0028】
好ましくは、前記質感抽出手段は、前記多軸触覚センサ装置からの出力の時間変化の周波数成分を抽出するための周波数成分抽出手段を含む。
【0029】
好ましくは、前記質感抽出手段は、前記摩擦力に対応する前記触覚センサ装置の出力として、最大静止摩擦力に達するまでの触覚センサの出力値の変化の大きさと、動摩擦状態での触覚センサの出力値の変化の大きさとを抽出する。
【0030】
好ましくは、前記多軸触覚センサ装置は、複数のセンサ素子を含み、各前記センサ素子は、基板と、前記基板から浮いた傾斜構造を有するカンチレバーと、前記カンチレバーにかかる力を検知するための検知素子とを含み、前記多軸触覚センサ装置は、前記複数のセンサ素子を覆うエラストマ層を備える。
【0031】
この発明の他の局面に従うと、紙葉類を識別するための紙葉類識別装置であって、多軸触覚センサ装置と、前記多軸触覚センサ装置を、前記紙葉類の表面に対して一定の垂直圧力で押し当てつつ、前記表面に平行な方向に指定された速度で、前記多軸触覚センサ装置と前記前記紙葉類とを相対的に移動させるための走査手段と、前記多軸触覚センサ装置からの信号の時間変化を格納するための記憶手段と、前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記多軸触覚センサ装置の静止状態を基準として、移動に伴う前記多軸触覚センサ装置と前記前記紙葉類との間の摩擦力に対応する前記触覚センサ装置の出力を抽出する質感抽出手段と、前記質感抽出手段からの出力に基づいて、前記紙葉類を判別するための識別処理手段とを備える。
【0032】
好ましくは、前記質感抽出手段は、前記多軸触覚センサ装置からの出力の時間変化の周波数成分を抽出するための周波数成分抽出手段を含む。
【0033】
好ましくは、前記質感抽出手段は、前記摩擦力に対応する前記触覚センサ装置の出力として、最大静止摩擦力に達するまでの触覚センサの出力値の変化の大きさと、動摩擦状態での触覚センサの出力値の変化の大きさとを抽出する。
【0034】
本発明における触覚センサ装置は、カンチレバーがエラストマ中に埋め込まれた構造をしている。カンチレバーは基板から浮いた傾斜構造を持ち、これにより縦方向にも横方向にも変形可能である。方向の違う微小立体構造を複数個、たとえば、3つ用いることで垂直方向と水平方向2軸の計3軸方向の力成分を計測できる。このセンサを一定の力で対象物に接触させ、能動的に動かした時のセンサ出力の変化を計測する。このとき、摩擦力によりセンサは水平方向の力を受ける。この力は動かし始めてから滑り始めるまで最大静止摩擦力まで増大していき、滑り始めると動摩擦状態に移行するのでセンサに印加される力は減少する。これらの変化は物体の摩擦係数によるため、センサの出力の時間変化を計測することにより摩擦状態を検知することができる。
【0035】
また、物体の表面に微小な凹凸が存在するときは、凹凸にセンサ表面の端が引っかかり水平方向の変形が大きくなっていきある程度まで行くと引っ掛かりが外れ変形が元に戻るということが繰り返される。これはセンサの出力の振動として検出できるため、出力の周波数特性を計測すれば、表面の凹凸による粗さが計測できることになる。
【発明の効果】
【0036】
本発明では、多軸触覚センサを用い、これを能動的に対象物に接触させることで生ずる摩擦や振動を3軸の力ベクトルの大きさと方向の変化として捉えることにより、センサの動きとセンサが対象にかける押し圧力(圧力)を調整しながら、対象物の凹凸や摩擦係数の違いを計測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】紙葉類識別装置10の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】触覚センサ200の構成の一例を説明するための図である。
【図3】複数のセンサ素子を被覆層200で覆った状態を示す斜視図である。
【図4】カンチレバーCL1に接続される出力回路の部分を示す回路図である。
【図5】触覚センサ装置における他の触覚センサの配置の例を示す平面図である。
【図6】触覚センサの他の構成の例を示す図である。
【図7】質感計測の実験のための測定系を示す図である。
【図8】紙の表面全体にインクを印刷したものとしていないものに対する触覚センサの抵抗変化率を示す図である。
【図9】静止摩擦状態から動摩擦状態への移行の様子を示す概念図である。
【図10】測定に用いた1万円札の測定対象領域(検知エリア)を示す図である。
【図11】触覚センサによる抵抗値の時間変化を表す図である。
【図12】図11の抵抗値の時間変化をフーリエ変換して周波数分布として表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態の物体表面の質感計測装置について、図に従って説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
【0039】
なお、以下では、本発明の「物体表面の質感計測装置」を「紙葉類識別装置」に適用した例について説明する。ただし、このような物体表面の質感計測装置は、このような用途に限定されることなく、他の用途にも使用可能なものである。たとえば、物体表面の質感計測装置を、上述したようなロボットの触覚センサとして使用することも可能である。
【0040】
また、物体表面の質感計測装置の計測対象は、紙葉類識別装置を具体例とするので、紙葉類として説明する。ここで、「紙葉類」は、一般には、有価証券、紙幣等を指すが、以下では、紙葉類が紙幣であるものとして説明する。
(紙葉類識別装置の構成)
図1は、紙葉類識別装置10の構成を説明するためのブロック図である。
【0041】
図1において、紙幣70は、搬送路60を図中の矢印の方向に移動する。
【0042】
紙葉類識別装置10は、触覚センサ200と、判別部12とを含む。判別部12は、触覚センサ200からの出力に基づいて、計測対象の質感を計測するための質感計測部30を備える。ここで、触覚センサ200と質感計測部30とで、質感計測装置を構成する。
【0043】
触覚センサ200が、紙幣70に対して、一定の垂直応力で押し当てられた状態で、紙幣70が搬送路を移動することで、紙幣の表面の水平方向について触覚センサ200の出力値が時間とともに変化する。このような垂直応力の値および紙幣70の移動速度は、可変であるものとする。
【0044】
質感計測部30は、触覚センサ200からの抵抗値を計測するための抵抗計測部32と、抵抗計測部32からの計測データを時系列データとして格納するための計測データ記憶部34と、計測データ記憶部34に記憶された抵抗の計測データの時間変化をもとにデータ処理を実行するデータ処理部36とを含む。ここで、データ処理部36が実行するデータ処理は、後段での識別処理に使用するのに適したデータ形式に変換する処理であって、たとえば、平均値や標準偏差の算出処理でもよいし、あるいは、周波数成分を抽出する処理、より特定的には、高速フーリエ変換により周波数成分を抽出する処理などを含む。
【0045】
紙葉類識別装置10は、さらに、計測対象である紙幣の種類(金種等)と関連づけて、種類ごとに予め規定されている測定対象領域についての判定基準値または判定パターン(以下、「判定パターン」と総称する)を予め格納しておくための判定パターン記憶部40と、この判定パターンとデータ処理部36からの出力を比較することで、紙幣の種類あるいは紙幣が真券か偽券かを判別する識別処理部50とを備える。
【0046】
ここで、識別処理部50には、搬送路60において、紙幣70が搬送される速度が図示しない機構により検知され、入力される。これにより、たとえば、データ処理部36からの信号のうち、紙幣70の移動に関連して生成された信号を選択的に抽出することが可能となる。
【0047】
識別処理部50が実行する判別処理は、紙幣の種類の判別あるいは紙幣が真券か偽券かを判別のいずれか一方でもよいし、双方とも判別する構成であってもよい。また、識別処理部50が、上記垂直応力の値および紙幣70の移動速度を制御する構成とすることもできる。
【0048】
なお、後に説明するように、判別部12は、上述した周波数成分だけでなく、触覚センサと対象物(紙)とが静止状態であるときを基準として、触覚センサと対象物(紙)との間の摩擦力に対応する触覚センサの出力値のレベルを、識別処理部50が判別に使用するための情報として出力する摩擦力情報抽出部を設ける構成とすることもできる。このような摩擦力に対応する摩擦力情報抽出部の出力としては、触覚センサの移動開始後に、最大静止摩擦力に達するまでの触覚センサの出力値の変化の大きさと、動摩擦状態での触覚センサの出力値の変化の大きさを出力するものとし、識別処理部50は、予め測定されている紙幣の種類ごとの判断基準と比較することで判別に使用することが可能である。このとき、このような摩擦力を測定するのも、所定の測定対象領域とすることができる。
【0049】
ここで、「測定対象領域」とは、紙幣の種類に応じて、特徴的なパターンが存在する表面の領域を、予め検知エリアとして指定した領域である。
【0050】
図2は、触覚センサ200の構成の一例を説明するための図である。
【0051】
なお、触覚センサ200の構成およびその製造方法については、たとえば、上述した特許文献6(特開2010−204069号公報)に詳しく開示されているので、以下では、その概略を説明する。
【0052】
図2は触覚センサ200を構成する1つのセンサ素子201の構成の一例を示す図であり、(a)は模式的断面図、(b)は模式的平面図である。
【0053】
センサ素子201は、SOI(Silicon On Insulator:絶縁体上シリコン)基板を用いて形成される。SOI基板は、例えば、結晶シリコンからなる基板101、埋め込み酸化膜102 および結晶シリコン膜103を有する。結晶シリコン膜103の厚さは、例えば200nmである。埋め込み酸化膜102は、例えば酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0054】
結晶シリコン膜103には、略U字状のp型ドープ層103aが形成されている。p型ドープ層103aは、熱拡散またはイオン注入により結晶シリコン膜103にホウ素(B)をドープすることで形成される。略U字状のp型ドープ層103aは、互いに平行に延びる一対の脚部とこれらの脚部を連結する連結部とからなる。p型 ドープ層103aの厚さは、例えば100nmである。また、p型ドープ層103aにおけるホウ素の濃度は、例えば0.2原子%(1020/cm3)である。
【0055】
略U字状のp型ドープ層103aの一対の脚部を覆うように結晶シリコン膜103上に、低圧CVD(化学的気相堆積法)およびフォトリソグラフィにより、一対の開口部105を有するSiN(窒化シリコン)からなる絶縁層104が形成されている。絶縁層104の一対の開口部105はp型ドープ層 103aの一対の脚部に重なるように設けられる。
【0056】
真空蒸着法などの金属膜の形成方法とフォトリソグラフィにより、一対の開口部105を含む絶縁層104の領域上にCr(クロム)/Au(金)からなる一対の矩形の電極106が形成されている。
【0057】
また、結晶シリコン膜103上に、p型ドープ層103aに並ぶようにCrからなる略矩形状のたわみ制御層107が形成されている。Crの蒸着の際に、温度上昇によりたわみ制御層107および結晶シリコン膜103が熱膨張する。その後、たわみ制御層107および結晶シリコン膜103が 収縮する。この場合、Crと結晶シリコンとの熱膨張係数の違いにより冷却後には、たわみ制御層107内に残留応力が発生している。
【0058】
たわみ制御層107、p型ドープ層103aの連結部、およびそれらの下の結晶シリコン膜 103の部分が後述するカンチレバーCL1となる。
【0059】
また、エッチングによりカンチレバーCL1の下の埋め込み酸化膜102の領域は除去されている。エッチング液としては、例えば、フッ化水素(HF)を用いることができる。
【0060】
ここで、上述したように、たわみ制御層107内に残留応力が発生している。そのため、埋め込み酸化膜102の上記の領域を除去した場合、たわみ制御層107内の残留応力に起因して、図2に示すように、たわみ制御層107がその下の結晶シリコン膜103の部分とともに上方(基板101と反対方向)に向かって湾曲する。これにより、XY平面において略矩形状でかつ基板101の一面から斜め上方に湾曲するようにカンチレバーCL1が形成される。カンチレバーCL1は支持部Sおよび可動部Rからなる。支持部Sが埋め込み酸化膜102上に支持され、可動部R下の埋め込み酸化膜102が除去されている。
【0061】
センサ素子201においては、略U字形状を有するp型ドープ層103aの一対の脚部に電極106がそれぞれ形成されている。これにより、p型ドープ層103aをピエゾ抵抗素子として機能させることができる。
【0062】
なお、触覚センサ2000の形成前または形成と並行して基板101上に後述する出力回路の一部または全てを形成することとしてもよい。
【0063】
図3は、複数のセンサ素子を被覆層200で覆った状態を示す斜視図である。
【0064】
図3に示すように、複数の触覚センサ素子201〜204を被覆するように枠部材および被覆層(エラストマ層)からなる被覆体110を形成する。
【0065】
ここで、エラストマとしては、特に限定されないが、たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いることができる。
【0066】
このようにして作製されたセンサ素子201においては、略U字形状を有するp型のドープ層103bの一端に電極104aが形成され、他端に電極104bが形成されている。これにより、p型ドープ層103aを、ピエゾ抵抗素子として機能させることができる。
【0067】
被覆体110の表面に圧力または剪断力が加えられると、被覆体110の内部応力が変化し、カンチレバーCL1が変形する。それにより、p型ドープ層103aのピエゾ抵抗が変化することで、歪抵抗素子として機能する。
【0068】
以上のような触覚センサ200の構成では、たわみ制御層107内に残留応力が存在するので、可動部R下の埋め込み酸化膜102の部分を除去することにより残留応力に起因してたわみ制御層107が可動部Rとともに自律的に基板101の一面から斜め上方に湾曲する。それにより、基板101の一面から斜め上方に湾曲するカンチレバーCL1,CL2,CL3,CL4を容易にかつ小型に形成することができるとともにセンサ素子201〜204の構造を簡素化することができる。したがっ て、触覚センサ装置100の小型化および低コスト化が可能となる。
(触覚センサ装置200の出力回路)
図4は、カンチレバーCL1に接続される出力回路の部分を示す回路図である。
【0069】
図4に 示すように、カンチレバーCL1の一対の電極106には、外部抵抗R1,R2,R3が接続され、カンチレバーCL1、外部抵抗R1,R2,R3および直流 電源Eによりブリッジ回路211が構成されている。ブリッジ回路211の出力電圧は増幅器221に与えられ、増幅器221の出力電圧がA/D変換器231に入力される。
【0070】
他のカンチレバーCL2,CL3,CL4にも、図4の出力回路と同様の出力回路が接続される。
【0071】
ブリッジ回路211、増幅器221およびA/D変換器231のうち一部または全てが図3の 基板101の主表面の触覚センサ200が設けられる領域以外の回路領域に形成される。特に限定されないが、たとえば、ブリッジ回路211のみが基板101の回路領域に形成され、増幅器221およびA/D変換器 231が、図1の抵抗計測部32に設けられる構成とすることができる。ただし、たとえば、ブリッジ回路211、増幅器221およびA/D変換器231が基板101の回路領域に形成されてもよい。
【0072】
図5は、触覚センサ装置における他の触覚センサの配置の例を示す平面図である。
【0073】
図5の触覚センサ200が図3の触覚センサ200と異なるのは、触覚センサ200が3つのセンサ素子201,202,203により構成される点である。3つのセンサ素子201,202,203は、互いに120度異なる向きに配置されている。
【0074】
図5の触覚センサ200においては、センサ素子201,202,203にそれぞれ対応する出力値が得られる。X軸方向の剪断力と出力値との関係、Y軸方向の剪断 力と出力値との関係およびZ軸方向の圧力と出力値との関係を予め測定により求める。それにより、圧力および剪断力の大きさおよび方向を検出することができる。
【0075】
図6は、触覚センサの他の構成の例を示す図である。
【0076】
図6(a)は、他の構成例の触覚センサのマイクロカンチレバーの断面構造を示す図である。
【0077】
なお、このような触覚センサの構成については、たとえば、以下の文献に開示がある。
【0078】
文献:Masayuki Sohgawa, Tatsuya Uematsu, Wataru Mito, Takeshi Kanashima, Masanori Okuyama, Haruo Noma: "Crosstalk Reduction of Tactile Sensor Array with Projected Cylindrical Elastomer over Sensing Element", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 50 (2011) 06GM08.
支持層として、SOI基盤の活性層Siを用い、絶縁層としてLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により成膜したSi34薄膜、歪みゲージとしてスパッタリングにより成膜したNiCr合金薄膜(ターゲット組成比 Ni:Cr=42:58)、カンチレバーを傾斜させる応力層として真空蒸着により成膜したCr層、および配線としてAuが積層されている。
【0079】
基板からカンチレバーを上方に向かって湾曲させるためには、バッファードフッ酸(BHF)によりSOIウェハの埋込酸化膜層SiO2をエッチングする。これによりCr層の残留応力によってカンチレバー部分が応力に片寄りのあるバイメタル構造となり、自動的にカンチレバーが基板面から持ち上がった構造となる。
【0080】
このBHF液中でのリフト処理の後、純水で洗浄し、さらに基板への貼り付きを防ぐためにエタノールで置換させてから、真空中で乾燥させることで、カンチレバーを含むMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構造が完成する。
【0081】
図6(b)は、乾燥後の触覚センサの1素子の光学顕微鏡写真を示す図である。
【0082】
図6(b)においては、3つのカンチレバーが向かい合っている中央部が、各カンチレバーが持ち上がっている先端部であり、顕微鏡の落射照明光が斜め方向に反射されているために黒く見えている。この複数のマイクロカンチレバー構造を作製した触覚センサ基板上に樹脂製の型枠を用いてエラストマを形成する。この際、素子間の相互作用を分離するために向かい合った3つのカンチレバーを一つのユニットとして凸型形状を構成する。凸部以外は型枠と基板の間は完全に密着していないため、エラストマの原液が入り込みエラストマの薄膜ができ、付着力を高めている。アレイのユニット数、つまり凸部は2×3のアレイであり、それぞれの間隔は2mmである。
【0083】
このような構造を用いた場合も、エラストマ表面に外力が作用すると、エラストマ全体が変形し、その変形に合わせてカンチレバー構造の傾きも変化する。このカンチレバーの傾きはNiCrの抵抗値の変化として電気的に検出できる。
【0084】
この時の3つのカンチレバーの傾き変化はエラストマ表面に作用する垂直方向の圧力、並びに、水平方向の剪断力によって異なるので、カンチレバーの傾き変化から逆に印加された3軸力が求められる。
【0085】
そして、このカンチレバーからの抵抗値から逆演算によってエラストマ表面に作用する圧力と剪断力を算出できる。
【0086】
このセンサの特性を応用し、物体表面の上でこのセンサを面に沿って一定圧力をかけたまま水平に動かし、その出力から対象物体表面の微小な質感計測を評価した結果について以下説明する。
【0087】
人間の指先のアクティブタッチで感じることのできる例として、PPC用紙の印刷の有無による質感の違いと紙幣表面の凹凸の検知を試みた。
(多軸触覚センサによる紙表面の質感の検知)
以下では、以上説明したような触覚センサ、特に、図6に示すNiCrを歪ゲージとする触覚センサにより、印刷のされたコピー用紙および紙幣表面の質感を評価した実験結果を説明する。
【0088】
すなわち、触覚センサは、図6に示すように配置さている結果、3つのマイクロカンチレバーを1素子とすることで3軸力を計測することが可能である。センサ全体でこの素子を複数個、たとえば、2mm毎に配置したアレイ構造を形成し、このアレイ構造の範囲にわたって分布三軸力を計測することができる。
【0089】
図7は、質感計測の実験のための測定系を示す図である。
【0090】
図7に示すように、治具の先端部分に測定したい物質を貼り付けて、Z軸ステージを動かすことで一定の力でセンサ表面に押し付ける。
【0091】
その後、XY軸ステージを動かすことで対象物を動かして、動的な質感計測を行った。このようなZ軸方向への押しつける垂直圧力およびXY軸ステージの移動速度は、制御装置(図示せず)からの制御信号に応じて可変である。
【0092】
また、触覚センサに対象物をZ方向に押し付ける力(垂直圧力)は、ステージに組み込んだ6軸力覚センサ(ニッタ株式会社 UFS2A−05)により計測し、一定の力で押しつけられるように、制御されている。
【0093】
さらに、触覚センサの出力は歪みゲージの電気抵抗値変化をデジタルマルチメーターで計測することにより得る。データのサンプリング周期は60Hzである。
【0094】
なお、上記の例では、触覚センサの方をXY軸ステージで動かしているが、対象物の方を動かしてもよい。
【0095】
(コピー印刷表面の粗さ計測)
触覚センサにプリンタでソリッドインクを印刷したPPC用紙を一定の力で押し当て、3秒間静止した後、センサを固定した電動ステージを1mm/secの速度で動かして滑らせたときの抵抗変化を計測した。
【0096】
ソリッドインクによる印刷では、紙表面のインクの厚みは約10μmである。
【0097】
図8は、紙の表面全体にインクを印刷したものとしていないものに対する触覚センサの抵抗変化率を示す図である。図8においては、静止時の抵抗値を0としている。
【0098】
いずれの場合も抵抗値はステージを動かし始めて(3秒後)からしばらく上昇し、最大値を取った後減少する。これは静止摩擦状態から滑りの起きた動摩擦状態への移行を示している。
【0099】
図9は、静止摩擦状態から動摩擦状態への移行の様子を示す概念図である。
【0100】
水平移動の当初は、静止摩擦力が検知され、最大静止摩擦力を超えると、動摩擦状態となる。これに応じて、エラストマ内のカンチレバーに加わる力も変化する。
【0101】
図8において、紙の方がインクよりも抵抗値変化が大きいことは摩擦係数がより大きいことを示している。また、動摩擦状態での抵抗変化の傾向が紙とインクの場合で異なっており、これがテクスチャの差によるセンサ出力の違いを生じさせる原因である。
【0102】
すなわち、触覚センサと紙とをXY軸センサにより、相対的に移動させると、摩擦力により触覚センサは水平方向の力を受ける。この力は動かし始めてから滑り始めるまで最大静止摩擦力まで増大していき、滑り始めると動摩擦状態に移行するのでセンサに印加される力は減少する。これらの変化は物体の摩擦係数によるため、センサの出力の時間変化を計測することにより摩擦状態を検知することができる。
【0103】
言い換えると、触覚センサと対象物(紙)とが静止状態であるときを基準として、最大静止摩擦力に達するまでの触覚センサの出力値の変化の大きさと、動摩擦状態での触覚センサの出力値の変化の大きさにより、測定対象物の表面の質感を定量化することが可能である。
【0104】
(紙幣表面の凹凸計測)
図10は、測定に用いた1万円札の測定対象領域(検知エリア)を示す図である。
【0105】
図9で示したようなソリッドインクでの結果を基に、アクティブタッチを応用した触覚センサによる紙幣の表面のテクスチャの検知に関して行った実験について説明する。
【0106】
図10に示すように、1万円札の裏面右上部は偽造対策として横方向に延びる縞模様を平面の紙の上にインクの盛りによる微小な凹凸形状で構成している。
【0107】
事前に触針式表面形状測定器(Veeco社 dektak3st)で計測した結果、この縞模様は高さ約30μm、幅約500μmである。
【0108】
図7に示した測定系において、この縞模様部分を触覚センサに対して約20gの力で押し付けて1mm/sの速さで動かし、この凹凸形状によるセンサ出力を計測する。
【0109】
図11は、触覚センサによる抵抗値の時間変化を表す図である。
【0110】
また、図12は、図11の抵抗値の時間変化をフーリエ変換して周波数分布として表す図である。
【0111】
図6に示した構成の触覚センサでは、カンチレバーの長手方向の剪断力に対して大きな出力を示す。そこで、図11では、計測の結果、最も高い感度が得られた縞模様に対して平行方向に動かしたとき(図11(a))と垂直方向に動かしたとき(図11(b))のセンサの抵抗値の変化を示し、図12は、それらを高速フーリエ変換(FFT)により変換して求めた周波数特性を示す。すなわち、図12(a)は水平方向の結果であり、図12(b)は垂直方向の結果であって、図12において、縦軸の強度は、任意単位である。
【0112】
ここでは、0s時点でセンサを紙幣面に対して水平に動かし始めている。
【0113】
図12より、縞方向に対して平行方向に動かしたときは特定の周波数で高いピーク値を取ることが無いことが分かる。それに対して、垂直方向に動かしたときは2Hzでピーク値をとることが分かる。これは縞方向に対して平行方向に動かす場合は凹凸を通過せず、垂直方向に動かす場合は幅500μmの凹凸を速さ1mm/sで進むので、1秒に2回凹凸を通過するため、2Hzのピークがあらわれたことに相当する。
【0114】
したがって、本センサを対象表面に接触させて移動させること、つまりアクティブタッチによって、高さ30μm、幅500μmという非常に細かい凹凸形状を検知できることが分かる。
【0115】
つまり、インクによる縞模様の高さは、信号の強度に表れ、周波数ピークは、縞のピッチに依存する。真券における縞のピッチは既知の値であるから、センサの移動速度と検出される周波数ピークとを比較することで、被測定対象が真券であるか否かを判別することが可能となる。
【0116】
以上説明したように、3軸力を検出可能な小型多軸触覚センサを用いてセンサの移動情報を用いて、物体表面の動的な質感計測を実現することが可能である。
【0117】
したがって、図2〜図6で説明したような小型多軸触覚センサによって人間のアクティブタッチを応用した物体の微細な質感計測が可能である。
すなわち、本実施の形態では、垂直圧力に加え水平方向の剪断力を検出できる多軸触覚センサを用い、これを能動的に対象物に接触させることで生ずる摩擦や振動を3軸の力ベクトルの大きさと方向の変化として捉えることにより、センサの動きとセンサが対象にかける押し圧力(圧力)を調整しながら、対象物の凹凸や摩擦係数の違いを計測することが可能である。
【0118】
また、物体表面の質感は凹凸だけでなく摩擦係数によっても変わってくるのでその双方を検出できる本発明により質感の違いを動的なセンサ出力の変化として検出できる。この検知原理は人間の表面知覚に近い。また、本実施の形態の多軸触覚センサの場合、従来の光学式計測、あるいは、針式計測に比べて、素子の頑強性が高く、またコストも安い。
【0119】
また、このような質感計測を人工的な触覚検知として使用すれば、計測できる最小の形状を飛躍的に小さくできることに加え、摩擦状態も同時に計測できることになり、ロボット用やバーチャルリアリティ方面などへ応用することが可能である。
【0120】
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
10 紙葉類識別装置、12 判別部、30 質感計測部、32 抵抗計測部、34 計測データ記憶部、36 データ処理部、40 判定パターン記憶部、50 識別処理部、60 搬送路、70 紙幣、200 触覚センサ、CL1〜CL4 カンチレバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸触覚センサ装置と、
前記多軸触覚センサ装置を、被測定物の表面に対して一定の垂直圧力で押し当てつつ、前記表面に平行な方向に指定された速度で、前記多軸触覚センサ装置と前記被測定物とを相対的に移動させるための走査手段と、
前記多軸触覚センサ装置からの信号の時間変化を格納するための記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記多軸触覚センサ装置の静止状態を基準として、移動に伴う前記多軸触覚センサ装置と前記被測定物との間の摩擦力に対応する前記触覚センサ装置の出力を抽出する質感抽出手段とを備える、物体表面の質感計測装置。
【請求項2】
前記質感抽出手段は、
前記多軸触覚センサ装置からの出力の時間変化の周波数成分を抽出するための周波数成分抽出手段を含む、請求項1に記載の物体表面の質感計測装置。
【請求項3】
前記質感抽出手段は、前記摩擦力に対応する前記触覚センサ装置の出力として、最大静止摩擦力に達するまでの触覚センサの出力値の変化の大きさと、動摩擦状態での触覚センサの出力値の変化の大きさとを抽出する、請求項1または2記載の物体表面の質感計測装置。
【請求項4】
前記多軸触覚センサ装置は、複数のセンサ素子を含み、
各前記センサ素子は、
基板と、
前記基板から浮いた傾斜構造を有するカンチレバーと、
前記カンチレバーにかかる力を検知するための検知素子とを含み、
前記多軸触覚センサ装置は、前記複数のセンサ素子を覆うエラストマ層を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物体表面の質感計測装置。
【請求項5】
紙葉類を識別するための紙葉類識別装置であって、
多軸触覚センサ装置と、
前記多軸触覚センサ装置を、前記紙葉類の表面に対して一定の垂直圧力で押し当てつつ、前記表面に平行な方向に指定された速度で、前記多軸触覚センサ装置と前記前記紙葉類とを相対的に移動させるための走査手段と、
前記多軸触覚センサ装置からの信号の時間変化を格納するための記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記多軸触覚センサ装置の静止状態を基準として、移動に伴う前記多軸触覚センサ装置と前記前記紙葉類との間の摩擦力に対応する前記触覚センサ装置の出力を抽出する質感抽出手段と、
前記質感抽出手段からの出力に基づいて、前記紙葉類を判別するための識別処理手段とを備える、紙葉類識別装置。
【請求項6】
前記質感抽出手段は、
前記多軸触覚センサ装置からの出力の時間変化の周波数成分を抽出するための周波数成分抽出手段を含む、請求項5に記載の紙葉類識別装置。
【請求項7】
前記質感抽出手段は、前記摩擦力に対応する前記触覚センサ装置の出力として、最大静止摩擦力に達するまでの触覚センサの出力値の変化の大きさと、動摩擦状態での触覚センサの出力値の変化の大きさとを抽出する、請求項5または6記載の紙葉類識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−61201(P2013−61201A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198993(P2011−198993)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】