説明

物体認識方法及び装置

【課題】 少ない演算量で、被検出対象のデータが混在しても安定して物体の形状を認識することができる物体認識方法、及びこの方法を用いた物体認識装置を提供する。
【解決手段】 移動体周辺に存在する物体の表面形状情報を検出し、この物体の輪郭形状を認識する物体認識方法であって、表面形状情報を構成する標本群から任意の標本を抽出する標本抽出工程#1と、抽出した標本に基づいて形状モデルを定める形状モデル設定工程と、形状モデルに対する標本群の一致度を演算する一致度演算工程と、一致度に基づいて輪郭形状を定める輪郭形状決定工程と、を実施するものであり、標本抽出工程#1は、抽出した標本により形状モデルとして所定の形状が形成可能か否かを判定する概略形状判定工程#14を備え、所定の形状を形成不可と判定した場合には、改めて前記標本を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体周辺に存在する物体の輪郭形状を認識する物体認識装置、及び物体認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置としては、下記に示す特許文献1に記載されたような障害物検知装置がある。この装置は、車両(移動体)の周辺に存在する障害物を検知して警報を発するものである。この発明は、従来の装置が、単に車両と障害物との距離だけを測定して所定距離よりも短い場合にのみ、警報を発するように構成されているのに対してなされたものである。即ち、距離に基づく警報だけでは、運転者にとって車両の周りのどの物体が障害物か判り難いという問題に鑑みてなされたものである。これによると、車両に複数の障害物検知センサを搭載し、障害物までの距離を演算する。これら得られた演算結果より障害物の形状が直線(平板形状)か円形(凸面形状)かを推定して表示する。このように構成することにより、障害物との距離と、障害物の形状とを利用して報知している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−194938号公報(第2−3頁、第1−7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公知技術は、障害物の形状までも推定する点において、利用者にとって有益なものである。しかし、実際の計測においては、検出対象の物体(障害物)以外を検出した検出データが混在することが多い。そして、検出対象物以外の検出データは、ノイズ成分として作用するため、検出対象物の形状推定に際して誤認の原因となることが考えられる。即ち、障害物等の検出対象となる物体を検出する際の安定性が充分とはいえない。また、一般にこのようなノイズ除去の機能を具備すれば、演算量が増え、それに伴って処理時間の増大や装置の大規模化を招くことになる。
【0005】
本願発明は上記課題に鑑みてなされたもので、少ない演算量で、被検出対象のデータが混在しても安定して物体の形状を認識することができる物体認識方法、及びこの方法を用いた物体認識装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る物体認識方法の特徴は、
移動体周辺に存在する物体の表面形状情報を検出し、この物体の輪郭形状を認識する方法であって、
前記表面形状情報を構成する標本群から任意の標本を抽出する標本抽出工程と、
抽出した前記標本に基づいて形状モデルを定める形状モデル設定工程と、
前記形状モデルに対する前記標本群の一致度を演算する一致度演算工程と、
前記一致度に基づいて前記輪郭形状を定める輪郭形状決定工程と、を実施するものであり、
前記標本抽出工程は、抽出した前記標本により前記形状モデルとして所定の形状が形成可能か否かを判定する概略形状判定工程を備え、所定の形状を形成不可と判定した場合には、改めて前記標本を抽出する点にある。
【0007】
本発明は、物体の表面形状情報を検出し、この表面形状情報に基づいて、物体の輪郭形状を認識する方法に係るものである。ここで、表面形状情報とは、移動体から見た物体の表面の形状を示す情報である。表面形状情報の検出には、以下に示すように種々の手段を用いることができる。電波や超音波等を用いた反射型のセンサを用いてもよいし、可視光や赤外光等を利用して画像データを得るイメージセンサ、カメラ(動画、静止画を問わず)を用いてもよい。
【0008】
そして、この表面形状情報を構成する標本群より、輪郭形状を認識する。ここで、標本群とは、表面形状情報を構成する個々のデータの集合体のことをいう。個々のデータとは、例えば、反射型のセンサを用いた場合には、障害物の各場所で反射された信号を受信して得られた各場所に対応した情報である。画像データを利用した場合には、エッジ抽出、三次元変換等の種々の画像処理により得られたデータを用いることができる。このように、検出方法に依らず、物体の表面形状を表すデータを標本として扱い、この標本の集合体を標本群と称する。
【0009】
標本抽出工程では、この標本群より任意に(ランダムに)いくつかの標本を抽出する。そして、これら抽出された標本に基づいて、形状モデル設定工程において形状モデルを定める。この形状モデルを定めるに際しては、抽出した標本より幾何学的に算出してもよいし、予め複数のテンプレートを用意して最適なものに当てはめる方法を用いてもよい。そして、一致度演算工程において、標本群全体がこの形状モデルに対して、どの程度一致するかの一致度を演算する。この演算結果に基づいて、具現化された形状モデルが標本群に適合するものか否かを判定する。そして、この一致度に基づいて、輪郭形状決定工程において、輪郭形状を定める。
【0010】
即ち、任意に抽出した標本にノイズ性の標本が含まれていた場合には、定めた形状モデルと標本群との一致度は低くなる。従って、この形状モデルは標本群に適合しないと判定できる。ノイズ性の標本を含まずに形状モデルを定めた場合には、一致度は高くなる。従って、形状モデルは標本群に適合すると判定できる。このように、少ない演算量で、ノイズ性の標本を除去して対象となる物体の輪郭形状を認識することができる。
【0011】
形状モデルは、標本群よりも遥かに少ない標本数である、任意に抽出された標本より定められている。従って、標本の抽出や形状モデルを定める際に必要となる演算量は少ない。そのため、演算時間も短く、装置も大規模化しない。また、形状モデルに対する標本群の一致度は、各標本の空間上の座標を用いて、幾何学的に演算することができる。従って、この一致度の演算も少ない演算量で行うことができる。さらに、これらの演算量が少ないことより、繰り返し異なる形状モデルを定めて一致度を演算しても総演算量の増大を抑制することができる。その結果、高い精度で輪郭形状を認識することができる。
【0012】
さらに、標本抽出工程は、抽出した標本により形状モデルとして所定の形状が形成可能か否かを判定する概略形状判定工程を備えている。そして、所定の形状を形成不可と判定した場合には、形状モデル設定工程、一致度演算工程、輪郭形状決定工程へ進むことなく、改めて前記標本を抽出する。従って、一致度が低くなることが予想される形状モデルが形成される標本を使用した処理を上流側で終了させることができる。上述したように、本発明に係る物体認識方法は、少ない演算量で、ノイズ性の標本を除去して対象となる物体の輪郭形状を認識することができるものである。ここで、標本抽出工程にさらに概略形状判定工程を備えたことにより、より少ない演算量及び短い時間での物体認識が実現できる。
【0013】
このように、本特徴によれば、少ない演算量で、非検出対象のデータ(ノイズ)が混在しても安定して物体の形状を認識することのできる物体認識が可能となる。
【0014】
ここで、前記所定の形状が、抽出された前記標本の全てにより形成される一つの連続した凸形状であり、前記概略形状判定工程は、この凸形状の成否により前記所定の形状が形成可能か否かを判定すると好適である。
【0015】
本発明を適用して認識しようとする物体の表面形状が、緩やかな膨らみを有したものである場合、これは一つの連続した凸形状に近似できる。そして、連続した凸形状の判定は、抽出した標本の簡単な評価により実現できる。上述したように概略形状判定工程を設けたことにより、下流の工程(形状モデル設定工程、一致度演算工程、輪郭形状決定工程等)の無駄を省くことができるようにしている。従って、この処理の負荷が重かったり、処理に時間を要したりすれば、この工程を設けた意味が薄くなる。しかし、単に凸形状の成否を判定するだけであれば簡単な評価で実現できるので、演算負荷を増やさず、また高速に所定の形状の成否が判定できる。
【0016】
また、前記概略形状判定工程が、抽出された前記標本のそれぞれの座標値を比較することにより、前記凸形状の成否を判定すると好適である。
【0017】
標本の座標値は、それぞれの標本の存在場所を示している。そして、抽出された標本に基づいて形成される形状モデルは、それぞれの存在場所又はその近傍を結ぶことにより得られるものである。従って、それぞれの標本の存在場所を示す座標値を比較すれば、抽出した標本間の相対関係を知ることができる。例えば、直交座標の一方の座標軸の方向への座標の順序に従って、他方の座標軸の座標値を調べる。ここで、一方の座標軸の座標値が、その軸の方向(例えばX軸)の一方向に進行しているとする。このとき、他方の座標軸(例えばY軸)の座標値が、上記一方の軸(X軸)の座標値の変化に伴って、上昇から下降、又は下降から上昇へと転じる変化点を有するとする。この場合、この変化点を頂点部分として、凸形状が成立すると判定することができる。
【0018】
また、前記概略形状判定工程が、抽出された前記標本の隣合う2つを結んで得られる直線の傾きを比較することにより、前記凸形状の成否を判定すると好適である。
【0019】
抽出された標本の隣合う2つを結んで得られる直線の傾きは簡単な計算により得ることができる。抽出された標本により凸形状が形成可能な場合、この傾きは一定の方向へ変化する。例えば、傾きの絶対値が、大きな値から小さな値へと変化し、符号が反転して小さな値から大きな値へと変化する。符号も含めて考えれば、連続して大きな傾きへと変化したり、小さな傾きへと変化することになる。2点間を結ぶ直線の傾きの算出は簡単な計算で可能であり、この傾きの大小比較も簡単な計算で可能である。従って、簡単に凸形状の成否を判定することができる。
【0020】
また、前記標本抽出工程が、乱数生成工程を備え、生成した乱数に基づいて前記標本を抽出するものであり、前記概略形状判定工程が、前記乱数を数値の順番に並べ替える並び替え工程を備え、抽出された前記標本の連続性を、並び替えられた前記順番に応じて確認することにより、前記凸形状の成否を判定すると好適である。
【0021】
乱数を利用して標本群から標本を抽出する場合、各標本は乱数に対応付けされた番号(数値)を属性として有している。この番号は、表面形状情報の検出順や座標位置の順など、一定の規則をもって付されている。乱数は文字通り、不規則な数値である。従って、乱数により指示されて抽出された標本は、そのままでは表面形状情報の並びに沿った順番にはならない。そのため、標本の並びが凸形状となり得るか否かを判定しようとすると、各標本の座標値より標本を並び替えたり、座標値を考慮しながら判定したりする必要が生じる。しかし、上記方法では、乱数を数値の順番に並び替えるので、乱数の数値に対応付けられた各標本も表面形状情報の検出順や座標位置の順などの一定の規則の元に整列する。その結果、例えば隣合う標本同士の座標を比較する場合や、傾きを計算する場合に、対象となる標本を直ぐに特定することができる。その結果、軽い演算負荷で高速に凸形状の成否を判定することができる。
【0022】
また、上記目的を達成するための本発明に係る物体認識装置の特徴構成は、
物体の表面形状情報を検出する物体検出手段と、前記物体の輪郭形状を認識する形状認識手段とを備え、移動体周辺に存在する前記物体の輪郭形状を認識するものであって、
前記形状認識手段は、
前記表面形状情報を構成する標本群から任意の標本を抽出する標本抽出手段と、
抽出した前記標本に基づいて形状モデルを定める形状モデル設定手段と、
前記形状モデルに対する前記標本群の一致度を演算する一致度演算手段と、
前記一致度に基づいて前記輪郭形状を定める輪郭形状決定手段と、を備え、
前記標本抽出手段は、抽出した前記標本により前記形状モデルとして所定の形状が形成可能か否かを判定する概略形状判定手段を有し、所定の形状を形成不可と判定した場合には、改めて前記標本を抽出する点にある。
【0023】
上記、本発明に係る物体認識方法と同様に、少ない演算量且つ短い演算時間で非検出対象のデータが混在しても安定して物体の形状を認識することのできる物体認識装置を提供することができる。また、少ない演算量であるので、演算装置、例えばマイクロコンピュータや電子回路等の規模も抑制することができる。また、当然ながら、この物体認識装置は上記物体認識方法に関して述べた作用効果、並びに全ての追加的特徴とその作用効果を備えることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔システム構成例〕
以下、本発明の好適な実施形態を、車両が他の車両を認識する場合を例として、図面に基づいて説明する。図1に示すように、移動体としての車両10には、側方に向けた距離センサ1(物体検出手段)が搭載されている。この距離センサ1は、例えばポイントセンサ、即ち、シングルービームセンサや超音波を利用したソナー等である。そして、車両10は、駐停車中の他の車両20(以下、駐車車両と称す。)のそばを図示X方向へ通過する際に、距離センサ1によって駐車車両20までの距離を計測する。駐車車両20は本発明の物体に相当するものである。尚、図1には、簡略のため、車両10の左側方にのみ距離センサ1を設けているが、当然両側方に設けていてもよい。
【0025】
距離センサ1は、車両10の移動に応じて駐車車両20との距離を計測する。このようにして得られた駐車車両20の表面形状情報は、車両10の移動距離に応じた離散的なデータである。尚、車両10の「移動距離に応じて」には、「所定時間間隔に応じて」の意味も含むものである。例えば、車両10が等速で移動する場合には、所定時間間隔に応じて計測すれば、移動距離に応じて測定することになる。移動体10の移動速度、移動距離、移動時間は、線形的に定まる。従って、結果として概ね均等に表面形状情報を得ることができる方法であれば、どのような方法を用いてもよい。このようにして、車両10は物体の表面形状情報を取得する(後述する「物体検出工程」に相当する。)。
【0026】
尚、距離センサ1は移動時間を計測するタイマ、移動距離を計測するエンコーダ、移動速度を計測する回転センサ等の付随するセンサを備えていてもよい。また、これらセンサを別に備え、情報を得るようにしていてもよい。
【0027】
図2は、本発明の実施形態に係る物体認識装置の概略ブロック図である。図2において、形状認識部2(形状認識手段)は、マイクロコンピュータ2A等の電子回路によって構成されている。形状認識部2内の各処理部は、必ずしも物理的に異なる電子回路を示すものではなく、機能としての処理部を示すものである。例えば、異なるプログラムを同一のCPUによって実行することにより、異なる機能を得るような場合も含むものである。
【0028】
図2に示すように距離センサ1によって測定された表面形状情報は、形状認識部2に入力される。入力された表面形状情報は、図1に示すX方向及びY方向を軸とする二次元平面にマッピングされて、標本記憶部2aに記憶される。この標本記憶部2aは、メモリで構成されている。本実施形態においては、マイクロコンピュータ2Aに内蔵する形態を示している。勿論、マイクロコンピュータ2Aとは別体のメモリを用いて、いわゆる外付けの形態としていてもよい。また、内蔵、外付けを問わず、レジスタ、ハードディスク等、他の記憶媒体を用いてもよい。
【0029】
以下、移動体(車両10)周辺に存在する物体(駐車車両20)の表面形状情報を検出し(物体検出工程)、この物体の輪郭形状を認識する(形状認識工程)物体認識方法の詳細について説明する。
【0030】
〔物体検出工程〕
初めに、物体検出工程について説明する。図3に示すように、距離センサ1によって駐車車両20上の表面形状情報Sが計測される。表面形状情報は、本実施形態において駐車車両20のバンパー部の外形形状に沿った形で離散的に得られた計測データである。ここで、これら離散的に得られたデータの一群を標本群S(ラージエス)と称する。標本群Sは、輪郭形状の認識対象となるデータセットである。また、データセットを構成する一点一点のデータを標本s(スモールエス)と称する。
【0031】
標本群Sは、標本記憶部2aの中で、図4に示すようにXYの二次元直交座標上にマッピングされる。尚、説明を容易にするため、図中には全ての標本sを示していない。図4に示した標本中、黒点で示す標本sをインライア、白抜き点で示す標本sをアウトライアと称する。図中、標本s1、s13等はインライアであり、標本s2、s7、s10はアウトライアである。詳細は後述するが、インライアは駐車車両20の輪郭形状を構成する標本である。アウトライアは駐車車両20の輪郭形状から外れたいわゆるノイズ性の標本である。
【0032】
〔形状認識工程(1)〕
以下、図2のブロック図に加え、図7及び図8に示すフローチャートも利用して、得られた標本群Sより、駐車車両20の輪郭形状を認識する手順(形状認識工程)について説明する。
【0033】
標本抽出部2bは、標本群S(標本s1〜s13)より任意の標本si(iは標本番号)を数点抽出する(標本抽出工程、図7#1)。どの標本sを抽出するかについてはランダムに定める。好適には乱数を用いる。例えば、マイクロコンピュータ2Aに乱数発生器(不図示)を設け、乱数を生成する(乱数生成工程、図8#11)。あるいは、マイクロコンピュータ2Aが実行する乱数発生プログラムによって標本番号を定めてもよい。そして、生成した乱数を標本番号とする標本siを抽出する(図8#13)。
【0034】
抽出する標本数は、認識したい対象形状によって異なる。例えば直線の認識をする場合には2点であり、二次曲線であれば5点である。本実施形態においては、駐車車両20のバンパー形状を二次曲線に近似し、5点を抽出する(図8#11参照)。このようにして抽出された個々のデータ、標本sの集合は、データセットに対応する概念としてのサブセットである。
【0035】
続いて、このサブセット(ランダムに抽出した標本sの集合体)に基づいて形状モデル設定部2cが形状モデルを定める(形状モデル設定工程、図7#2)。
【0036】
図5は、図4の散布図に示す標本群Sから任意に抽出した標本siより定めた形状モデルL(第一の形状モデルL1)と標本群Sとの一致度を演算する説明図である。この第一の形状モデルL1は、標本s1、s5、s8、s11、s13の5つの標本sに基づいて定められたものである。この形状モデルLは、演算負荷の軽い線形計算により容易に求めることができる。または、予め数種類のテンプレート形状を用意しておき、これらテンプレート形状の中より最適なものを選択するようにして定めてもよい。
【0037】
また、図5に示すように、形状モデルLの接線に対して直交する両方向に所定距離離れた点を形状モデルLに沿って結び、点線B1及びB2を定める。この点線B1及びB2に挟まれた部分が有効範囲Wとなる。
【0038】
次に、一致度演算部2dにおいて、定めた形状モデルLと、標本群Sとの一致度を演算する。具体的には、上記のように定めた有効範囲Wの中に、標本群Sを構成する各標本siが、どの程度含まれるかによって一致度を算出する(一致度演算工程、図7#3)。
【0039】
図5に示した第一の曲線モデルL1に対する有効範囲Wの中には、標本s2、s7、s10のアウトライアを除く全ての標本sが含まれている。従って、第一の形状モデルL1の標本群Sに対する一致度は、77%(10/13)となる。つまり、第一の形状モデルL1は、標本群Sを構成する各標本sにより、高い支持率(77%)で合意(コンセンサス)を得たということができる。
【0040】
次に、主演算部2eにおいて、この一致度が所定のしきい値を超えているか否かを判定する(判定工程、図7#4)。そして、しきい値を超えている場合には抽出したサブセットより定めた形状モデル(第一の形状モデルL1)を認識結果として認定する(認定工程、図7#5)。即ち、第一の形状モデルL1を輪郭形状とする。例えば、しきい値が、75%と設定されているような場合には、第一の形状モデルL1を輪郭形状とする。しきい値を超えていない場合には、図7のフローチャートの処理#1に戻り、再度、別の標本sを抽出して新たなサブセットを構成し、同様の処理を行う。複数回処理#1〜#4を繰り返してもしきい値を超えないような場合には、対象となる物体(駐車車両20等)が無い、と判断する。この回数は、予め規定しておけばよい。
【0041】
尚、本実施形態においては、理解を容易にするために標本群Sを構成する標本sの総数を13ケとしている。しきい値の値(75%)も、本実施形態の説明を容易にするための値である。従って、標本数、一致度の判定しきい値共に、本発明を限定する値ではない。例えば、標本数が多ければ、アウトライアに対するインライアの数は相対的に多くなり、上記の例よりも高いしきい値を設定することもできる。
【0042】
図6に示した形状モデルL(第二の形状モデルL2)では、サブセットとして標本s2、s4、s7、s10、s13が抽出されている。上述したように標本s2、s7、s10は、駐車車両20の輪郭形状から外れたいわゆるノイズ性の標本である。従って、駐車車両20の輪郭形状から見た場合には、アウトライアとなるべき、標本である。そのため、図6に示すように、これらの標本s2、s7、s10を含むサブセットに基づいて定められた第二の形状モデルL2に対する有効範囲Wから外れる標本sが多数存在する。第一の形状モデルL1と同様の方法により一致度を演算すると、その一致度は38%(5/13)となる。つまり、第二の形状モデルL2は、標本群Sを構成する各標本sにより、高い支持率で合意(コンセンサス)を得られていないということになる。
【0043】
上記2つの形状モデルL1及びL2が抽出されるような場合、認識結果となる輪郭形状は第一の形状モデルL1となる。第一の形状モデルL1を定めるに際しては、ノイズ性の標本sである標本s2、s7、s10は、未使用である。これらノイズ性の標本は、アウトライアとして扱われ、除去されたこととなる。即ち、上記説明したような少ない演算量で、非検出対象のデータ(アウトライア)が混在してもこれを除去し、安定して物体の形状を認識することができる。
【0044】
〔従来の形状認識方法との比較〕
このような方法を用いず、標本Sより輪郭形状を算出する方法は従来、種々提案されている。その一つは、最小自乗法である。最小自乗法では、データセットの全ての標本sを用いて、夫々の標本sが同一の重みとなって形状が計算される。その結果、上述したアウトライア(標本s2等)の影響を受けて、本来とは異なった輪郭形状を認識する。輪郭形状を認識した後に、データセット全体との一致度を再確認することも可能ではある。しかし、最小自乗法自体の演算負荷が比較的重い上、この再確認の結果により繰り返し最小自乗法による形状認識を行うとさらに演算負荷を重くすることになる。
【0045】
また別の方法として、特に直線の認識に好適なハフ(Hough)変換を利用する方法もある。ハフ変換はよく知られているように、直交座標(例えばXY平面)上に存在する直線は、極座標(ρ−θ空間)上では1点で交差する、という性質を利用したものである。その変換式は、
ρ=X・cosθ + Y・sinθ
である。上記式より、理解できるように極座標空間でρやθの範囲を広げたり、細かい分解能を得たりしようとすると、それだけ演算量が増大する。つまり、一次記憶手段としての、メモリは大容量が要求され、計算回数も多くなる。
【0046】
これら従来の演算に比べ、本発明の「表面形状情報を構成する標本群Sから任意に抽出した標本sに基づいて定めた形状モデルLに対する標本群Sの一致度を演算する」方法は、演算量が少なく、必要となるメモリ容量も少ない。
【0047】
上記説明においては、形状モデルLと標本群Sとの一致度を調べ、この一致度が所定のしきい値を超えていれば、その形状モデルLを認識結果とする。つまり、最先にしきい値を超えた形状モデルLがそのまま認識結果となる。これに限らず、単にしきい値を超えただけで直ちにその形状モデルLを認識結果とはせず、複数個の形状モデルLを評価するようにしてもよい。具体的な手順については、以下に説明する。
【0048】
〔形状認識工程(2)〕
図9は、図4の散布図に示す標本群から輪郭形状を認識する方法の他の例を説明するフローチャートである。この方法では、サブセットを複数回抽出して形状モデルLを定め、その中で最も一致度の高かった形状モデルLを認識結果とするようにしている。以下、図9に基づいて、この方法について説明する。但し、処理#1〜#4は図7に示したフローチャートと同様であるので、説明を省略する。
【0049】
図9に示す方法では、サブセットを複数回繰り返して抽出するので、繰り返し回数を一時記憶する。形状認識工程の開始に当たって、まず初めにこの一時記憶する繰り返し回数をクリアする(初期化工程、図8#0)。以下、図7に示した方法と同様に、標本抽出工程(#1)にて、標本群Sよりランダムに標本sを抽出してサブセットを作る。次に、形状モデル設定工程(#2)にて、このサブセットに基づいて形状モデルLを定める。そして、一致度演算工程(#3)にて、形状モデルLと標本群Sとの一致度を演算し、判定工程(#4)にて、一致度が所定のしきい値を超えているか否かを判定する。
【0050】
判定の結果、しきい値を超えていた場合には、先に定めた形状モデルLとこの形状モデルLに対する一致度を一時記憶部(不図示)に記憶する(記憶工程、#41)。次に、この一致度が、さらに高い値に設定した第二のしきい値を超えているか否かを判定する(第二判定工程、#44)。この第二のしきい値は、例えばほぼ満点に近いような高い一致度である。非常に高い一致度を示している場合には、サブセットを繰り返し抽出する必要がないため、この工程が設けられている。第二判定工程(#44)において、第二のしきい値を超えていると判定されると、形状モデル設定工程#2で定めた形状モデルL(=記憶工程(#41)で記憶した形状モデルL)を認識結果とする(認定工程、#5)。
【0051】
判定工程(#4)又は第二判定工程(#44)において、しきい値(第二のしきい値)を超えていないと判定されると、計数工程(#42)へ移行する。つまり、一つの形状モデルLに対する評価が完了したので、繰り返し回数をインクリメントする。
【0052】
次に、繰り返し回数が所定の回数に達したか否か(超えたか否かでもよい)を判定する(離脱判定工程、#43)。所定の回数に達していなければ、標本抽出工程(#1)に戻り、以下判定工程(#4)までを行って、新たな形状モデルLの評価を行う。所定の回数に達していた場合には、記憶されている形状モデルLの内、最も一致度の高かった形状モデルLを選択し、これを認識結果としての輪郭形状とする(認定工程、#51)。ここで、判定工程(#4)において一致度のしきい値を超えたものが一つも無かったような場合には、認定工程(#51)において該当無しと判断する。
【0053】
このように、図7に示す方法、図8に示す方法共に、サブセットに基づいて定めた形状モデルLを輪郭形状と認定している。一般に少ない標本数に基づいて定めた形状モデルLは、正確な輪郭形状を再現するものではない、とも考えられる。しかし、本発明においては、形状モデルLと標本群Sの全標本との一致度を評価している。従って、形状モデルLはほぼ正確に輪郭形状を再現(認識)できていると考えてよい。このように、サブセットを構成する少ない標本数から定めた形状モデルLが輪郭形状を再現できることは、演算量の削減に大きく貢献している。
【0054】
上述したように、形状モデルLをそのまま認識結果として輪郭形状と認定することは、演算量の削減に大きく貢献する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。マイクロコンピュータ2A等、演算手段の能力に余裕のある場合などでは、輪郭形状を再計算してもよい。
【0055】
例えば、一致度がしきい値を超えた形状モデルLを基準とすれば、標本群Sを構成する標本sの夫々をインライア、アウトライアとして定義することができる。認定工程では、このインライア、アウトライアを認定する。そして、インライアと認定された全ての標本sを対象として最小自乗法等を用いて形状を再計算する(再計算工程)。上述したように最小自乗法ではノイズ性の標本sの影響を受けて、形状を正しく再現できない場合がある。しかし、この再計算工程においては、ノイズ性の標本sはアウトライアとして除去されているため、正確な輪郭形状の再現が可能となる。
【0056】
〔標本抽出工程の改良〕
図10は、図8に示す標本抽出工程(#1)を改良した例を説明するフローチャートである。図10に示すように、乱数生成工程(#11)において、標本群Sの標本sの標本番号に対応する乱数を5つ生成する。次に、この5つの乱数を標本番号順に並び替える(並び替え工程、#12)。生成した乱数は、乱数の性格上、任意の順に現れる。そこで、乱数に対応する標本番号の標本sを抽出する前に、まずこの並び替え工程(#12)にて乱数を並び替える。そして、昇順あるいは降順に並び替えた乱数に対応する標本番号を有する標本sを5つ抽出する(#13)。
【0057】
次に、抽出した5つの標本sによって形成される形状モデルLが、所定の形状となり得るか否かを判定する(概略形状判定工程、#14)。上述したように、駐車車両20のバンパー部の輪郭形状を認識するに際して、このバンパー形状を二次曲線に近似している。二次曲線とは、例えば楕円や放物線であり、楕円や放物線は、連続した凸形状を有するものである。従って、抽出した5つの標本sによって、連続した凸形状を形成することができる場合は、これらの標本sによって楕円や放物線等の二次曲線が形成できる確立が高くなる。概略形状判定工程(#14)では、図10に示すように前処理工程(#14a)にて所定の前処理を行い、凸形状の形成可能性を判定(#14b)している。この概略形状判定工程(#14)を含む、一連の標本抽出工程(#1)について、以下図11〜図14に示す具体例に基づいて詳述する。
【0058】
図11は、表面形状情報を構成する標本群Sと、標本群Sの各標本sの座標を示す図である。図11(a)には、説明を容易にするために、8個の標本sにより標本群Sを構成した例を示している。標本s101〜s108は、XY平面上で特定されており、それぞれ標本番号としてIndexが付されている。本例においてIndexは、標本s101〜s108に対して、1〜8の整数で与えられている。それぞれの標本sは、XY平面上に座標値(x,y)を有している。標本番号(Index)に対応する座標値(x、y)は、図11(b)に示したとおりである。
【0059】
図12は、図10に示す標本抽出工程(#1)により、図11に示した標本群Sから標本sを抽出する例を示す説明図である。図12(a)は、乱数生成工程(#11)により生成した乱数を示している。上述したように、乱数は任意に生成されるので、図に示すように4、6、3、1、7と、昇順・降順に関係なく並んでいる。図12(b)は、並び替え工程(#12)により並び替えた(ソートした)後の乱数を示している。ここでは、図11(a)の左側から右側への並び(X軸方向)と対応させて、1、3、4、6、7の昇順に並び替えている。これは、図1を利用して説明したように、表面形状情報を検出した順にも対応するものである。並び替えた乱数に基づいて、これらの乱数に対応する標本番号(Index)の標本sを抽出した結果が、図12(c)である。
【0060】
以下、並び替え工程(#12)を経て、抽出された標本sの連続性を、並び替えられた順番に応じて確認することにより、凸形状の成否を判定する具体的方法について説明する。
【0061】
〔概略形状判定工程(1)〕
乱数を昇順に並び替えたことにより、この乱数により指定される5つの標本sは、標本番号順に抽出される。ここで、各標本sのX座標を調べると、
s101→s103→s104→s106→s107の順に、
2≦5≦9≦13≦16、
と昇順になっている。従って、X方向に順番に並んでいる。Y座標を調べると、
12≧5≧3≦5≦12、
と一度降順に推移し、次に昇順に転じている。この標本sの座標の評価が、上述した前処理工程(#14a)に相当する。この評価結果により、標本s104を頂点部分として、s101、s103、s104、s106、s107により、凸形状が形成できると推定する(#14b)。このように、抽出された標本sのそれぞれの座標値を比較することにより、凸形状の成否を判定する。
【0062】
〔概略形状判定工程(2)〕
また、下記に示すような方法で、抽出された標本sにより形成される形状モデルの概略形状を判定することもできる。図13に示すように、抽出された標本sの隣合う2つを結んで直線を作る。各標本sの座標値が判っているので、得られた直線の傾きは、簡単な線形計算により算出することができる。例えば、s101とs103とを結んで得られる直線は、
s101=(2,12)、s103=(5,5)
を通る直線であるので、
y=ax+b(a:傾き、b:切片)
に代入すると、
12=2a+b、5=5a+b
となる。この連立一次方程式を解くと、
a=−7/3、b=50/3
となる。この傾きaは、図13に示すa1に相当する。同様に、他の2点間について、傾きa2、a3、a4を計算する。途中の計算は省略するが、それぞれ、
a2=−2、a3=2、a4=7/3
となる。この傾きの計算は、上述した前処理工程(#14a)に相当する。尚、上記計算例では切片bについても解を示したが、後述するように概略形状判定工程(#14)においては、傾きしか利用しないので、切片は求めなくてよい。そのため、さらに前処理工程(#14a)は簡易になる。
【0063】
上述したように、簡単な線形計算(連立一次方程式)により、X軸方向に隣合う標本s間を結ぶ直線の傾きが求まると、この傾きの評価を行う。
a1 ≦ a2 ≦ a3 ≦ a4
となり、次第に傾きが大きくなっている。また、傾きの絶対値を評価すると、
|a1| ≧ |a2| = |a3| ≦ |a4|
であり、傾きの絶対値は次第に小さくなり、途中で大きい方向へ転じている。即ち、次第に緩やな傾きとなり、標本s104の前後で傾きの方向を転じ、以降次第に大きな傾きとなっている。これにより、標本s104付近を頂点部分とする凸形状であることが判定できる(#14b)。
【0064】
このようにして、概略形状判定工程(#14)において、5点の標本sが形状モデルLを生成するためのサブセットとして相応しいと判定されると、標本抽出工程(#1)を抜け、形状モデル設定工程(#2)に移行する。図14には、概略形状判定工程(#14)を抜け、評価されたサブセットに基づいて、形状モデルL3を生成した例を示している。
【0065】
〔物体認識装置の他の実施形態〕
以下、上述した物体認識方法を用いた物体認識装置について説明する。図15は、本発明に係る物体認識装置の他の実施形態を示す概略ブロック図である。図1に示した構成例と同様に車両が他の車両を認識する場合の例である。図15に示すように、マイクロコンピュータ2A内に、相対配置演算部3(相対配置演算手段)を備えている。上述したように、形状認識部2において、車両10から見た駐車車両20の輪郭形状、即ちバンパー形状が認識されている。この認識に際して、距離センサ1を用いて駐車車両20の表面形状情報を取得しているため、車両10と駐車車両20との距離情報も同時に得ることができている。相対配置演算部3は、この距離情報と、輪郭形状とを用いて、車両10と駐車車両20との相対配置を演算するものである。
【0066】
ここで、相対配置とは、車両10の各部と駐車車両20の各部との相対位置である。車両10の外形形状は、自己の形状であるため、既知である。そして、車両10から見た駐車車両20の輪郭形状は、上述したように認識できている。これらにより、相対配置演算部3において図16に示すように車両10と駐車車両20との相対配置を演算する。尚、図16では理解を容易にするために、駐車車両20全体を点線で示しているが、実際には認識された輪郭形状Eと、車両10との相対配置を演算する。勿論、他の場所も含めて輪郭形状Eを認識している場合には、全ての相対配置を演算することができる。
【0067】
また、この相対配置を、ディスプレイ等の報知手段に表示してもよい。車両10にナビゲーションシステム等を搭載している場合には、そのモニタを兼用してもよい。表示(報知)に際しては、車両10の外形と、認識した輪郭形状Eとを表示する。あるいは、輪郭形状Eに基づいて駐車車両20の全体をイラストとして表現し、車両10と駐車車両20との相対配置関係を表示してもよい。
【0068】
また、上記のように視覚的に表示することによる報知に限らず、ブザーやチャイム等を用いて、音声(音響を含む)により報知してもよい。ナビゲーションシステムには音声ガイドの機能を備えているものもあり、モニタの利用と同様、この音声ガイドの機能を兼用するようにしてもよい。
【0069】
図15に示すように、本例では車輪速センサ4aや舵角センサ4b等、車両10の移動状態を検出する移動状態検出手段4を具備する形態を示している。移動状態検出手段4からの入力情報を加味すれば、近未来の相対配置を演算することもできる。つまり、輪郭形状Eが認識されている現在の相対配置を知るに留まらず、将来の相対配置関係を推定(予測)することができる。
【0070】
車輪速センサ4aは、車両10の各車輪部(前方右FR、前方左FL、後方右RR、後方左RL)に備えられたセンサである。これは例えば、ホールICを利用した回転センサである。舵角センサ4bは、車両10のステアリングの回転角度やタイヤの回動角度を検出するセンサである。あるいは、前述の車輪速センサ4aの各車輪部での計測結果(左右の車輪の回転数や回転速度の違い)に基づいて舵角を演算する演算装置であってもよい。
【0071】
これらのセンサにより検出した移動状態を加味して、車両10と駐車車両20の輪郭形状Eとの相対位置関係を演算する。舵角センサ4bによって進行方向を推定し、車輪速センサ4aによって進行速度を推定する。そして、車両10の予想軌跡や、駐車車両20の輪郭形状Eと車両10との数秒後の相対配置関係を演算する。図17は、このようにして算出された車両10と駐車車両20の輪郭形状Eとの相対配置関係の一例を示している。符号10Aは車両10の近未来の位置、即ち推定(予測)位置である。
【0072】
〔その他の実施形態〕
上記説明においては、物体検出手段として、図1に示したような車両10の移動に伴って駐車車両20の表面形状情報を検出する距離センサ1を例として説明した。しかし、本発明に係る物体検出手段は、これに限定されることはない。距離センサ1は、車両10の移動に拘らず表面形状情報を出力し、後段の情報処理において、移動距離毎、経過時間毎に選別することも可能である。また、車両10の移動に拘らず駐車車両20に対する広角エリアを走査する走査手段を備え、得られた走査情報に基づいて表面形状情報を検出するものであってもよい。即ち、距離センサ1のようなポイントセンサに限らず、一次元センサ、二次元センサ、三次元センサ等、物体の形状を反映した信号(表面形状情報)を得られるセンサが使用できる。
【0073】
図18には、本発明に係る物体検出手段として一次元センサを用いる場合の例が示されている。ここでは、一次元センサの一例として、スキャン型レーザーセンサを用いている。図18に示すように、センサ位置(走査手段1aの位置)より放射状に物体(駐車車両20)が走査される。物体の各位置からのレーザー波の反射により、距離の分布を計測することができる。レーザー波を発射したときの方位角θをエンコーダ等により検出しておけば、図3に示したものと同様に表面形状情報を得ることができる。そして、XY直交座標にマッピングすることができる。
【0074】
一次元センサの他の例として、超音波方式のレーダ、光方式のレーダ、電波方式のレーダ、三角測量式の距離計等を用いてもよい。
【0075】
二次元センサとしては、水平・垂直方向に走査可能なスキャン型レーダがある。このスキャン型レーダを用いることにより、対象物体の水平方向の形状、垂直方向の形状に関する情報を得ることができる。
また、よく知られた二次元センサとしてはCCD(Charge Coupled Device)や、CIS(CMOS Image Sensor)を利用したカメラ等の画像入力手段もある。このカメラより得られた画像データより、輪郭線情報、交点情報等の各種特徴量を抽出し、表面形状に関する情報を得てもよい。
【0076】
三次元センサについても同様であり、例えばステレオ撮影した画像データ等を用いて、形状に関する情報を得てもよい。
【0077】
〔その他の利用形態〕
以上、本発明の実施形態を、駐車車両20を物体として、この輪郭形状を認識する方法及び装置とこれらの追加的特徴について説明した。この「物体」は、駐車車両や、建造物等の障害物に限らず、道路の走行レーンや、停止線、駐車枠等、種々のものが該当する。即ち、認識対象も立体物の輪郭形状に限定されるものではなく、平面模様の形状認識にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る物体認識装置を搭載した車両が他の車両を認識する場合の例を示す説明図
【図2】本発明の実施形態に係る物体認識装置の概略ブロック図
【図3】図1の駐車車両の表面形状情報を測定した結果を示す図
【図4】図3に示す測定結果を二次元直交座標上にマッピングした散布図
【図5】図4の散布図に示す標本群から任意に抽出した標本より定めた第一の形状モデルと標本群との一致度を演算する説明図
【図6】図4の散布図に示す標本群から任意に抽出した標本より定めた第二の形状モデルと標本群との一致度を演算する説明図
【図7】図4の散布図に示す標本群から輪郭形状を認識する方法の一例を説明するフローチャート
【図8】図7の標本群よりランダムに標本を抽出する工程(標本抽出工程)の詳細を説明するフローチャート
【図9】図4の散布図に示す標本群から輪郭形状を認識する方法の他の例を説明するフローチャート
【図10】図8に示す標本抽出工程を改良した例を説明するフローチャート
【図11】表面形状情報を構成する標本群と、標本群の各標本の座標とを示す図
【図12】図10に示す標本抽出工程により、図11に示した標本群から標本を抽出する例を示す説明図
【図13】図12に示す抽出された標本の概略形状を判定する方法を説明する図
【図14】図13に示す方法により概略形状を判定したサブセットを用いて形状モデルを生成した例を示す図
【図15】本発明に係る物体認識装置の他の構成を示す概略ブロック図
【図16】図15の相対配置演算部により算出された物体認識装置を搭載した車両と他の車両の輪郭形状との相対配置関係の一例を示す図
【図17】図15の相対配置演算部により算出された物体認識装置を搭載した車両と他の車両の輪郭形状との相対配置関係の他の例を示す図
【図18】本発明に係る物体検出手段として一次元センサを用いる場合の例(その他の実施形態)を示す図
【符号の説明】
【0079】
#1 標本抽出工程
#14 概略形状判定工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体周辺に存在する物体の表面形状情報を検出し、この物体の輪郭形状を認識する物体認識方法であって、
前記表面形状情報を構成する標本群から任意の標本を抽出する標本抽出工程と、
抽出した前記標本に基づいて形状モデルを定める形状モデル設定工程と、
前記形状モデルに対する前記標本群の一致度を演算する一致度演算工程と、
前記一致度に基づいて前記輪郭形状を定める輪郭形状決定工程と、を実施するものであり、
前記標本抽出工程は、抽出した前記標本により前記形状モデルとして所定の形状が形成可能か否かを判定する概略形状判定工程を備え、所定の形状を形成不可と判定した場合には、改めて前記標本を抽出する物体認識方法。
【請求項2】
前記所定の形状は、抽出された前記標本の全てにより形成される一つの連続した凸形状であり、前記概略形状判定工程は、この凸形状の成否により前記所定の形状が形成可能か否かを判定する請求項1に記載の物体認識方法。
【請求項3】
前記概略形状判定工程は、抽出された前記標本のそれぞれの座標値を比較することにより、前記凸形状の成否を判定する請求項2に記載の物体認識方法。
【請求項4】
前記概略形状判定工程は、抽出された前記標本の隣合う2つを結んで得られる直線の傾きを比較することにより、前記凸形状の成否を判定する請求項2に記載の物体認識方法。
【請求項5】
前記標本抽出工程は、乱数生成工程を備え、生成した乱数に基づいて前記標本を抽出するものであり、
前記概略形状判定工程は、前記乱数を数値の順番に並べ替える並び替え工程を備え、抽出された前記標本の連続性を、並び替えられた前記順番に応じて確認することにより、前記凸形状の成否を判定する請求項2〜4の何れか一項に記載の物体認識方法。
【請求項6】
物体の表面形状情報を検出する物体検出手段と、前記物体の輪郭形状を認識する形状認識手段とを備え、移動体周辺に存在する前記物体の輪郭形状を認識する物体認識装置であって、
前記形状認識手段は、
前記表面形状情報を構成する標本群から任意の標本を抽出する標本抽出手段と、
抽出した前記標本に基づいて形状モデルを定める形状モデル設定手段と、
前記形状モデルに対する前記標本群の一致度を演算する一致度演算手段と、
前記一致度に基づいて前記輪郭形状を定める輪郭形状決定手段と、を備え、
前記標本抽出手段は、抽出した前記標本により前記形状モデルとして所定の形状が形成可能か否かを判定する概略形状判定手段を有し、所定の形状を形成不可と判定した場合には、改めて前記標本を抽出する物体認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−276985(P2006−276985A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91259(P2005−91259)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】