説明

物体識別装置および物体識別方法、ならびに物体識別装置を備えた車両

【課題】無線機器などからの電波信号に妨害されること無く、物体からの放射量の検出を正確に行う。
【解決手段】物体から放射される電波領域での放射量を検出する電波イメージング部200と、その放射量の検出信号よりその物体の位置及び形状の情報を抽出する放射強度画像生成部300と、電波イメージング部200内の電波受信素子204の観測周波数帯域を複数の通過帯域に分割する通過帯域可変フィルタ部と、分割された複数の通過帯域毎の検出信号の強度を比較して、無線機器からの電波信号が混在すると判定された通過帯域以外の検出信号を放射強度画像生成部300に処理させる信号記憶演算部203とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体から放射される電波領域での放射量を検出して、その物体の検出を行う物体識別技術、およびこの物体識別技術を用いる乗用車等の車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の車両に搭載される外界認識装置のうち、主に先行車などの車両を検出する装置として、レーダ装置などの反射式の観測装置が用いられている。他方、歩行者を検出する装置として、物体から放射される遠赤外線の放射強度から温度を計測し、人の体温に近い物体の検出を行う遠赤外線カメラが用いられている。
また、ミリ波等の電波領域の放射量を観測する電波イメージング装置(電波受信システム)も使用されている(例えば、特許文献1参照)。このように電波領域での物体の放射量を観測することによって、隠匿携帯した金属の検出や、霧などで視界が良くない状況において周囲の物体の存在判定あるいは識別が可能であり、現在は、セキュリティ用途や航空機の離着陸時の安全装置等として利用が為されている。
【特許文献1】特開2006−322833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
遠赤外線カメラ等の受動式の放射量観測装置は、放射量を観測して放射強度から物体を識別するものである。しかし、受動式の放射量観測装置のうち、電波領域での放射量観測装置である電波イメージング装置を用いた場合、観測する周波数帯域内で動作している他の無線機器が存在すると、その無線機器から送信される電波を物体自身からの放射と誤認してしまい、物体の識別を誤ってしまうという問題があった。
【0004】
すなわち、電波領域での物体からの放射量は、プランクの放射則で計算されるように微小なもので、無線機器から送信される電波は、それと比較して非常に大きい放射となる。そのため、実際には無線機器が存在しているにもかかわらず、高放射率かつ高温度の物体が存在しているものとして観測されるようになり、物体の識別判定において誤認を生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による物体識別装置は、帯域分割手段を有する。この帯域分割手段は、検出対象物体から放射される電波を受信し、複数の放射量観測帯域それぞれに対応する複数の帯域別検出信号を出力するものである。本発明は、さらに、前記複数の帯域別検出信号により表わされる電波放射量を比較することにより、前記検出対象物体以外から放射されている外来電波信号が前記帯域別検出信号のいずれかに混在しているか否かを判定する判定手段を備えている。そして、前記判定手段により前記外来電波信号が混在していると判定された場合には、前記複数の帯域別検出信号から、当該外来電波信号が混在している帯域別検出信号を除外することにより、前記検出対象物体の放射強度に基づく画像を生成し、他方、前記判定手段により前記外来電波信号が混在していないと判定された場合には、前記複数の帯域別検出信号すべてを用いて前記検出対象物体の放射強度に基づく画像を生成するために、画像処理手段を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電波領域での観測周波数帯域を複数の受信周波数帯域に分割し、分割された複数の受信周波数帯域で観測される放射量(放射強度)の比較を行っている。したがって、例えば著しく異なる放射量(放射強度)を示す帯域においては、望ましくない電波を送信している他の無線機器などが存在すると判断して、それ以外の帯域の放射量(放射強度)を用いた物体識別を行うことで、無線機器などからの電波信号に妨害されること無く、物体からの放射量の検出を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[第1の実施形態]
図1〜図8を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態は、乗用車等の車両に搭載された物体識別装置に本発明を適用したものである。
図1(a)は、本実施形態に係る物体識別装置100の構成を示すブロック図であり、図1(a)に示すように、物体識別装置100は、電波イメージング部200と、放射強度画像生成部300と、物体認識処理部400とを有している。また、物体識別装置100には、物体認識処理部400で得られた情報に基づいて車両の走行状態等の制御を行う車両制御装置500が接続され、車両制御装置500には、地図データファイル601を備えたナビゲーションシステム600が接続されている。
【0008】
物体識別装置100において、電波イメージング部200は、一例として、図1(b)に示すように、車両MBのフロントバンパー1の近傍に設置され、車両MBの前方の空間に存在する物体からの電波領域の放射量を検出して、電波領域での放射強度信号を取得する。本実施形態の電波イメージング部200が検出対象とする電波領域の周波数(観測周波数帯域)は、一例として屋外にてより遠距離までの物体観測を行うために大気の伝搬減衰の影響が少ないミリ波帯中の30〜39GHz(波長で10〜7.7mm)である。
【0009】
図1(a)の放射強度画像生成部300は、電波イメージング部200の後述の各電波受信素子で取得された放射強度信号と各電波受信素子の配列番号とから放射強度画像を生成し、放射強度ごとに空間領域をグルーピング(分割)して、物体が存在する領域(空間位置および形状)の情報ならびに物体からの放射量の情報を抽出し、抽出された情報を物体認識処理部400に出力する。物体認識処理部400は、放射強度画像生成部300から出力された物体の空間位置および形状、ならびに放射量の情報から、車両前方に存在する物体の識別を行い、識別結果を車両制御装置500に出力する。
【0010】
図2は、図1(a)に示した電波イメージング部200の構成を示す図であり、図2において、電波イメージング部200は、物体からの電波領域の放射を集光する誘電体レンズ部201と、誘電体レンズ部201により収束された電波を受信するアンテナ206ならびに電波領域の放射量を検出する電波受信素子204をマトリックス状に配置した受信アレイ部202と、受信アレイ部202で受信される周波数帯域を制御する通過帯域制御部205と、受信アレイ部202で観測された放射量(放射強度信号)の帯域毎の記憶と強度比較処理とを行う信号記憶演算部203とから構成されている。
【0011】
図3は、図2に示した電波イメージング部200の一つの電波受信素子204の構成を示す図である。図3において、前方のある方向から放射された電磁波が誘電体レンズ201で集光され、電波受信素子204で受信される。電波受信素子204は、アンテナ部206と、通過帯域可変フィルタ部209と、検波部207と、増幅部208とから構成されている。電波受信素子204は観測帯域に整合されたものとなっており、物体から放射される電磁波中の整合された観測帯域の放射強度信号を出力するものである。通過帯域可変フィルタ部209は、図2の通過帯域制御部205からの通過帯域制御信号を受けて、通過帯域を、図5(a)に示すように、低域通過(通過帯域A)、中域通過(通過帯域B)、高域通過(通過帯域C)と切り替えるか、または図5(b)に示すように、低域の通過帯域Dから高域の通過帯域Hまでの5つの通過帯域に切り替えながら、時分割で放射強度信号を出力することができる。
【0012】
本実施形態の通過帯域可変フィルタ部209は、図4(a)の3分割の通過帯域可変フィルタ209aと、図4(c)の5分割の通過帯域可変フィルタ209bとの間で2段階に切り替え可能に構成されている。
図4(a)の3分割の通過帯域可変フィルタ209aは、誘電体線路の伝送線路中に、高速スイッチング素子の一例としてのPIN型のダイオードDI1,DI2,DI3,DI4を介して所定長さの共振線路DC1,DC2,DC3を組み込んだものである。ダイオードDI1〜DI4のオン、オフを組み合わせて共振線路長を可変にすることで、通過帯域を図5(a)に示すように、全通過帯域(30〜39GHz)、通過帯域A(30〜33GHz)、通過帯域B(33〜36GHz)、および通過帯域C(36〜39GHz)に時系列的に制御することができる。この場合、図4(a)において、共振線路の長さは通過帯域の中心波長の1/2であるため、共振線路DC1の長さa(=4mm)は、通過帯域Cの中心波長8mmの1/2であり、共振線路DC1およびDC2の合計の長さb(=4.35mm)は、通過帯域Bの中心波長8.7mmの1/2であり、共振線路DC1〜DC3の合計の長さc(=4.76mm)は、通過帯域Aの中心波長9.5mmのほぼ1/2である。
【0013】
この結果、通過帯域可変フィルタ209aの通過帯域は、図4(b)に示すように、ダイオードDI1〜DI4をオンにすることで、全通過帯域となり、ダイオードDI2,DI3をオンにして他をオフにすることで、通過帯域A(共振線路長c)となり、ダイオードDI2,DI4をオンにして他をオフにすることで、通過帯域B(共振線路長b)となり、ダイオードDI3,DI4をオンにして他をオフにすることで、通過帯域C(共振線路長a)となる。
【0014】
同様に、図4(c)の5分割の通過帯域可変フィルタ209bは、誘電体線路の伝送線路中に、PIN型のダイオードDI5,DI6,DI7,DI8,DI9,DI10を介して所定長さの共振線路DC5,DC6,DC7,DC8,DC9を組み込んだものである。ダイオードDI5〜DI10のオン、オフを組み合わせて共振線路長を可変にすることで、図5(b)に示すように、通過帯域を全通過帯域(30〜39GHz)、通過帯域D(30〜31.8GHz)、通過帯域E(31.8〜33.6GHz)、通過帯域F(33.6〜35.4GHz)、通過帯域G(35.4〜37.2GHz)、および通過帯域H(37.2〜39GHz)に時系列的に制御することができる。
【0015】
この場合、図4(c)において、共振線路DC5の長さd(=3.94mm)、共振線路DC6の長さe(=4.13mm)、共振線路DC7の長さf(=4.35mm)、共振線路DC8の長さg(=4.58mm)、および共振線路DC9の長さh(=4.85mm)は、それぞれほぼ通過帯域Hの中心波長7.9mmの1/2、通過帯域Gの中心波長8.3mmの1/2、通過帯域Fの中心波長8.7mmの1/2、通過帯域Eの中心波長9.1mmの1/2、通過帯域Dの中心波長9.7mmの1/2である。
【0016】
この結果、通過帯域可変フィルタ209bの通過帯域は、図4(d)に示すように、ダイオードDI5〜DI10をオンにすることで、全通過帯域となり、ダイオードDI9,DI10をオフにして他をオンにすることで、通過帯域D(共振線路長h)となり、ダイオードDI8,DI9をオフにして他をオンにすることで、通過帯域E(共振線路長g)となり、ダイオードDI7,DI8をオフにして他をオンにすることで、通過帯域F(共振線路長f)となり、ダイオードDI6,DI7をオフにして他をオンにすることで、通過帯域G(共振線路長e)となり、ダイオードDI5,DI6をオフにして他をオンにすることで、通過帯域H(共振線路長d)となる。
【0017】
以下に、物体からの放射について説明する。一般的に、ある温度の物体の表面からは、その温度に応じて定まった放射エネルギー(電磁波)が放射されている。物体の放射率をε、ある温度の黒体から放射されるエネルギーをE0 とすると、ある温度の物体から放射されるエネルギーEは、式(1)で表される。
E=ε×E0 …(1)
黒体から放射されるエネルギーについては、プランクの放射則で算出できるが、放射率は、物体の種類、表面状態および測定条件(温度、角度、波長)によって変化することが知られている。物質の放射率は、その物質が放射を吸収する割合に等しく、その物体の反射率と透過率との間には次の関係が成立する。
【0018】
「反射率」+「吸収(放射)率」+「透過率」=1 …(2)
本実施形態の物体識別装置100は、物体からの放射を観測する受動方式であるため、物体の表面性状による影響は少なく、観測される放射量から物体の物性を識別することができる。また、車両用として、悪天候に対応することも可能である。これに対して、従来から使用されているレーダ装置などの能動方式の計測装置では、物体検出のために反射成分の検出を行っているが、反射成分は物体の物性にはあまり依存せず、物体の表面性状などが大きく影響するため、検出される反射量から物体を特定することは難しい。
【0019】
ただし、物体放射は微小な信号であるため、感度を向上させるためには、観測周波数帯域を広帯域化(例えば、数GHz程度に)する必要がある。しかしながら、観測周波数帯域を広帯域化すると、その観測周波数帯域内で他の無線機器が電波を使用している場合が有り得る。このような無線機器が発する電波信号は、通常の物体からの放射量に比べてかなり強いため、そのままでは、無線機器からの電波信号の干渉によって、放射量の大きい物体(高放射率、高温の物体)が存在すると誤認することになる。
【0020】
本実施形態では、そのように観測周波数帯域を広帯域化したことに伴う、無線機器からの電波信号の混入に対する対策として、図4(a)または図4(c)の通過帯域可変フィルタ209aまたは209bを用いて、観測周波数帯域を3つの通信帯域A〜Cまたは5つの通信帯域D〜Hに分割し、他の無線機器から送信される電波信号が観測される通信帯域を検出し、その通信帯域を除いて物体識別を行う。これによって、物体識別装置100を車両などの移動手段に搭載した場合の様々な電波環境の変化に適応させることが可能となる。
【0021】
以下、図5〜図7を用いて、図2に示した電波イメージング部200の観測周波数帯域内で電波信号を出力する無線機器が存在する場合の干渉対策動作を説明する。この動作は、信号記憶演算部203および通信帯域制御部205によって制御されるとともに、電波イメージング部200内の受信アレイ部202を構成するマトリックス状に配置された複数の電波受信素子204において並列に実行される。
【0022】
まず、通過帯域制御部205から電波イメージング部200の通過帯域可変フィルタ部209に観測周波数帯域を3分割に帯域分割する制御信号が入力されることで、図3に示した電波受信素子204のアンテナ部206からの放射量信号が図4(a)の通過帯域可変フィルタ209aに供給されて、観測周波数帯域が図5(a)の3つの通過帯域A〜Cに時系列で分割される。分割された通信帯域毎の放射量信号が、時系列で図2の信号記憶演算部203に出力される。信号記憶演算部203では、各電波受信素子204ごとに分割された観測帯域の放射強度を比較し、強度に変化があるか否かで、物体放射以外の電波信号があるか否かを判定している。
【0023】
図6に帯域分割における信号検出例を示す。図6の事例1は与干渉物体がない場合の信号例である。物体放射の場合は、数GHz程度の周波数変化において、大きな放射強度の変化はないため、通過領域A,B,Cともに同様の値を示す。このときには、通常処理によって、当該電波受信素子204の検出信号として、通過領域A,B,Cの観測値(強度信号)を加算した値が図1(a)の放射強度画像生成部300に出力される。
【0024】
しかしながら、観測周波数帯域内に無線機器の電波信号が存在し、無線機器が電波送信動作を行っている場合には、図6の事例2〜4に示すように通過帯域毎の観測値にばらつきが発生する。これは、無線機器の使用周波数帯域は電波法によって規定されており、帯域幅1GHz以下の周波数領域において信号出力動作を行っているためである。例えば、通過帯域A内で動作する無線機器が存在した場合には、図6の事例2に示すように通過帯域Aで他の通過帯域B,Cよりも大きな放射強度が観測される。各通過帯域毎の放射量観測値を比較することで、多数決原理によって通過帯域Aにおいて物体放射以外の他の無線機器からの電波信号が影響していると判定できる。
【0025】
この場合、通過帯域Aの観測値は物体の識別には不適切な信号であるため、これを除外した(間引いた)通過帯域B,Cの観測値を用いて物体放射量とし、帯域幅が2/3になったことを考慮して、振幅レベルの正規化を行って、後段である図1(a)の放射強度画像生成部300に出力する。その正規化の一例は、通過帯域B,Cの観測値の和を3/2倍にして、他の通常処理が行われた電波受信素子204からの観測値に対して平均値を等しくすることである。また、図6の事例3は通過帯域Bに、事例4は通過帯域Cに、それぞれ物体放射以外の電波信号が存在する場合の信号観測例であり、同様に物体放射以外の電波信号が存在する通過帯域B,Cを除外して物体放射強度を後段に出力する。
【0026】
図6の事例においては、観測周波数帯域を三分割した場合で、かつ無線機器などの与干渉物体が1種類の場合の対応例を示した。しかしながら、無線機器が別々の帯域に2種類以上存在する場合には、図7の事例5〜7に示すように、電波信号が存在する通過帯域を特定できないため、観測周波数帯域をさらに細分化するように通過帯域可変フィルタ部209の制御を変更して対応する。
【0027】
すなわち、図7の事例5は、通過帯域AおよびBに与干渉物体が存在して観測値が大きくなった例であり、図7の事例6は、通過帯域Aに与干渉物体が存在して観測値が大きくなり、通過帯域Bでは観測値が中程度で与干渉物体によるものかどうかが不明な例である。これらの事例において、仮に2つの通過帯域A,Bの観測値を間引いて、通過帯域Cの観測値のみを用いると、帯域が狭くなり過ぎて、物体の識別が可能な放射強度信号が得られないおそれがある。
【0028】
一方、図7の事例7は、全部の通過帯域A〜Cの観測値が大きくなった事例であるが、これが、全部の通過帯域A〜Cにそれぞれ別の与干渉物体からの電波信号が混入していることを示すのか、または例えば式(1)の放射率εが大きい観測対象の物体が存在することを示すのかが判定できない。そこで、事例7においても、観測周波数帯域をより細分化して、細分化した後の全部の通過帯域でも観測値が大きいときには、その観測値は観測対象の物体からの放射強度信号であるとみなして、通常処理(全部の通過帯域の観測値の和を用いる)を行う。他方、細分化した後の通過帯域において、多数決によって観測値が大きい帯域の方が少ないときには、その観測値が大きい帯域の観測値を間引いた処理を行う。
【0029】
本実施形態では、その観測周波数帯域をさらに細分化するために、図2の通過帯域制御部205から図3の通過帯域可変フィルタ部209に対して、図4(c)に示した5分割の通過帯域可変フィルタ209bに切り替えるように制御信号を出力する。これに応じて、図3の電波受信素子204のアンテナ部206からの放射量信号が図4(c)の通過帯域可変フィルタ209bに供給されて、観測周波数帯域が図5(b)の5つの通過帯域D〜Hに時系列で分割される。分割された通信帯域毎の放射量信号が、時系列で図2の信号記憶演算部203に出力される。信号記憶演算部203では、分割された通信帯域D〜Hの放射強度を比較し、一例として多数決原理によって、観測値が大きい観測帯域の数が観測値が小さい通信帯域の数より少ない場合には、物体放射以外の電波信号があると判定して、その観測値が大きい観測帯域を除外して観測を行う。
【0030】
具体的に、図7の事例6は、図5(a)に示すように、通過帯域AとBとの境界部を覆う帯域5Aに無線機器の電波信号がある場合を示している。この場合、観測周波数帯域を3分割から図5(b)の5分割にすることによって、無線機器の帯域5Aは通過帯域E中に入り、通過帯域Eの観測値のみが大きくなる。従って、通過帯域Eの観測値のみを間引くことによって、比較的広い帯域で物体からの放射量を検出することができる。
【0031】
次に、図8のフローチャートを参照して、本実施形態の物体識別装置100による物体識別処理の動作の一例につき説明する。動作を開始すると、ステップS1において、図2に示した電波イメージング部200の受信アレイ部202内の各電波受信素子204において、図5(a)の3分割された通過帯域A,B,Cにおける車両前方からの放射量(放射強度)を観測し、信号記憶演算部203に出力する。次のステップS2では、信号記憶演算部203は、ステップS1で得られた放射強度を通過帯域ごとに比較し、分割された各々の帯域の観測値がほぼ同等であると判断した場合はステップS3に進み、1つの帯域の観測値が他の帯域の観測値より著しく大きいと判断した場合にはステップS4に進み、2つ以上の帯域の観測値が著しく大きい(またはそのうちの一つの観測値が中程度の)場合にはステップS5に進む。
【0032】
ステップS3では、すべての帯域の観測値の加算を行い、電波受信素子204の配列番号とともに図1(a)の放射強度画像生成部300に出力してステップS6に進む。ステップS4では、著しく大きい値が観測される帯域以外の帯域の観測値の加算を行い、帯域が2/3になったことによる強度変化を正規化し、電波受信素子204の配列番号とともに放射強度画像生成部300に出力してステップS6に進む。ステップS5では、帯域の分割数を図5(b)の5分割にしてステップS1に戻る。
【0033】
ステップS6において、放射強度画像生成部300は、信号記憶演算部203から出力された放射強度値と電波受信素子の配列番号とを元に放射強度画像を生成し、放射強度ごとに空間領域をグルーピングして物体認識処理部400に出力する。次のステップS7において、物体認識処理部400では、放射強度画像生成部300から出力された放射強度画像と、放射強度ごとにグルーピングされた空間領域の情報とから物体の識別を行う。次のステップS8において、その物体認識結果を図1(a)の車両制御装置500(車両CPU)へ出力して、動作を終了する。
【0034】
また、ステップS5で通過帯域の分割数を増やした後のステップS2において、再び観測値が大きい通過帯域の数が多くなった場合には、一例として、その電波受信素子204に対応する画像の領域には、無線機器の存在を示す輝度または色の表示を行ってもよい。
本実施形態の物体識別装置100によれば、以下の作用効果を有する。
【0035】
(1)物体識別装置100は、物体から放射される電波領域での放射量を検出する複数の電波受信素子204を有する電波イメージング部200と、その複数の電波受信素子204からの検出信号(放射強度信号)よりその物体の空間位置及び形状の情報を抽出する放射強度画像生成部300と、電波受信素子204の検出信号の観測周波数帯域を複数のより狭い通過帯域A〜CまたはD〜H(受信周波数帯域)に分割する通過帯域可変フィルタ部209と、そのように分割された複数の通過帯域A〜CまたはD〜H毎における電波受信素子204の検出信号の強度を比較することによって、検出対象物体からの放射以外の電波信号が混在する通過帯域があるか否かを判定し、その電波信号が混在すると判定された通過帯域以外の観測周波数帯域の電波受信素子204の検出信号を放射強度画像生成部300に処理させる信号記憶演算部203とを備えている。
【0036】
従って、著しく大きい放射強度を示す通過帯域においては、電波信号を送信する無線機器などが存在すると判断して、それ以外の通過帯域の放射強度を用いた物体識別処理を行うことで、無線機器などからの電波信号に妨害されることが無く、物体からの放射量の検出(観測)を正確に行うことができる。この結果、車両の走行環境などの様々な電波環境に対応することができ、安定した放射物体の識別が可能となる。
【0037】
(2)物体識別装置100において、通過帯域可変フィルタ部209は、その観測周波数帯域を少なくとも3つの通過帯域A〜Cに分割している。従って、通過帯域に無線機器等からの電波信号が存在するか否かを、例えば多数決原理によって判定することが可能となる。
(3)電波受信素子204は、電波領域での放射量を受信するアンテナ部206と、アンテナ部206の検出信号を検波する検波部207とを有し、通過帯域可変フィルタ部209はアンテナ部206と検波部207との間に配置されて、その観測周波数帯域をほぼ均等に3分割または5分割した通過帯域のうち、少なくとも一つの通過帯域の信号を通過させる通過帯域可変フィルタ209a,209bを有する。
【0038】
このように複数の通過帯域の帯域幅をほぼ等しくすることで、他の無線機器からの電波信号による干渉の有無を判断するための放射観測値の強度比較を正確に行えるようになる。
(4)通過帯域可変フィルタ部209は、観測周波数帯域を互いに異なる分割数の2段の通過帯域A〜CまたはD〜Hに分割可能であり、信号記憶演算部203は、その電波信号が混在すると判定された通過帯域が複数個であるときに、通過帯域可変フィルタ部209による観測周波数帯域の分割数を増加させている。
【0039】
これによって、例えば図5(a)に示すように、干渉が発生する電波信号の周波数帯域5Aが、複数の分割された通過帯域A,Bにまたがって存在する場合において、分割数を増やして、図5(b)に示すように、干渉が発生する電波信号の周波数帯域5Aが一つの通過帯域E内に収まるように調整することで、より効果的な干渉帯域の除去が実現できる。その結果、有効に利用できる通過帯域の割合が増加して、物体からの放射量を高精度に検出できる。
【0040】
(5)車両MB(図1参照)は電波領域の受動型の物体識別装置100を備えているため、通常の赤外線カメラ等では識別できない物体の識別が可能になる。
なお、上記の第1の実施形態では、帯域分割数を可変にし、各通過帯域の検出信号を時系列で観測する例を示した。しかしながら、電波の利用環境が既知で図3のアンテナ部206からの検出信号の観測周波数帯域の分割数を固定して良い場合には、図9の電波受信素子204Aで示すように、アンテナ部206からの検出信号を電力分配器210を用いて電力分配し、帯域分割の数だけ帯域通過フィルタ211,212,213、検波部207および増幅部208を設けて、同時に出力して放射強度を比較演算することも考えられる。
【0041】
図9は、観測周波数帯域の分割数を3分割に固定する場合を示し、帯域通過フィルタ211,212,213はそれぞれ図5(a)の通過帯域A,B,Cの信号を通過させるために、低域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、および高域通過フィルタより構成されている。この構成によれば、複数の通過帯域の信号を並列に処理できるため、処理時間が短縮できる。
【0042】
[第2の実施形態]
次に、図10〜図15を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、電波イメージング部200中に通過帯域を制御する通過帯域可変フィルタ部209を備えていたが、この第2の実施形態は、その代わりに遮断帯域を制御する手段を用いて同様の効果を得るものである。以下、図10および図11において、図1(a)および図3に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、図14および図15のフローチャートにおいて、図8のフローチャートに対応するステップには同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
図10は本実施形態の物体識別装置100の構成を示し、図10の物体識別装置100は、図1(a)の第1の実施形態の物体識別装置100に対して、電波受信素子204の代わりに電波受信素子204Bが用いられ、図1(a)の通過帯域制御部205の代わりに遮断帯域制御部215が設けられている点が異なっている。
図11は、図10中の電波受信素子204Bの構成を示し、図11において、アンテナ部206と検波部207との間に所定の複数の周波数帯域(遮断帯域:除去帯域ともいう)の信号を遮断することができる遮断帯域可変フィルタ部214が設けられ、この遮断帯域可変フィルタ部214の遮断帯域(除去帯域)が図10の遮断帯域制御部215からの遮断帯域制御信号によって制御される。また、本実施形態においても、遮断帯域可変フィルタ部214は、第1の分割数(例えば3分割)の遮断帯域と、第2の分割数(例えば5分割)の遮断帯域とを切り替えることができる。
【0044】
図12は、図11の遮断帯域可変フィルタ部214によって時系列的に設定される3つの遮断帯域D(36〜39GHz)、遮断帯域E(33〜36GHz)、遮断帯域F(30〜33GHz)を示す。なお、図12、図13の帯域D〜Fは、図4(d)および図5(b)の帯域D〜Fとは異なる意味で使用されている。
図12に示すように、遮断帯域を遮断帯域D、遮断帯域E、遮断帯域Fと順次変更した場合、そのときの通過帯域は通過帯域D(30〜36GHz)、通過帯域E,E’(30〜33GHz,36〜39GHz)、通過帯域F(33〜39GHz)と変化することになる。なお、2つに分かれた通過帯域E,E’を以下では単に通過帯域Eと呼ぶ。これらの通過帯域D,E,Fにおける放射強度信号の観測値の強度比較結果を、図13の事例1〜事例4に示す。図13の帯域D〜Fは、図12の通過帯域D〜Fを表している。
【0045】
図13の事例1は、無線機器からの被干渉がなく、全部の通過帯域の信号を使用して通常処理ができる場合であり、事例2は、通過帯域Dに被干渉が生じた結果、通過帯域Eでも観測値が著しく大きくなり、通過帯域Fの観測値を用いて放射画像を生成する場合である。また、事例3は、通過帯域Fに被干渉が生じた結果、通過帯域Dでも観測値が著しく大きくなり、通過帯域Eの観測値を用いて放射画像を生成する場合であり、事例4は、通過帯域Eに被干渉が生じた結果、通過帯域Fでも観測値が著しく大きくなり、通過帯域Dの観測値を用いて放射画像を生成する場合である。
【0046】
図6のように通過帯域を制御する場合と異なり、本実施形態のように遮断帯域を制御する場合には、図13に示すように、一つの分割された通過帯域(例えば通過帯域D)に他の無線機器からの電波信号が混入すると、二つの通過帯域(例えば通過帯域D,EまたはD,F)に影響が出ることがわかる。この場合には、干渉が生じていない他の通過帯域(例えば通過帯域FまたはE)の放射量観測値を使用して、物体の識別処理を行う。
【0047】
本実施形態の処理方式は、例えば予め遮断すべき無線機器の使用周波数帯域が既知である場合に、干渉の有無を検出する処理を簡易にできるという利点がある。
また、遮断すべき無線機器が固定局で、設置場所も既知である場合には、その無線機器の設置場所および使用周波数の情報を図10のナビゲーションシステム600の地図データファイル601に記録しておいてもよい。このとき、図10の物体識別装置100を搭載した車両が、地図データファイル601に記録された無線機器からの干渉が予想される範囲(地域)に進入した場合に、その使用周波数の情報を遮断帯域制御部215に供給し、遮断帯域制御部215は、予め干渉が発生するであろう周波数帯域(図12の遮断帯域D〜Fのいずれか)を遮断することで、干渉の有無を検出する処理を省略することもできる。
【0048】
次に、図14のフローチャートを参照して、図10の第2の実施形態の物体識別装置100による物体識別処理動作の一例を説明する。観測動作開始後、ステップS10において、図10の電波受信素子204Bにおいて遮断帯域を変化させながら放射量の観測を行い、ステップS11において、観測された遮断帯域毎の放射量観測値の強度比較を行い、各遮断帯域を用いた場合の観測値がほぼ同じ場合はステップS12に進み、観測値の平均値を正規化して図10の放射強度画像生成部300に出力し、ステップS6に進む。ステップS11において、観測された放射量観測値中で2つの遮断領域を用いたときに著しく大きい観測値が計測される場合には、ステップS13に進み、著しく大きい観測値以外(小さな放射量が観測される帯域)の観測値を正規化して、放射強度画像生成部300に出力し、ステップS6に進む。ステップS11において、観測された放射量観測値中で1つが他の観測値と比較して著しく大きい場合には、遮断帯域が無線機器からの電波信号の帯域と整合していないと判断してステップS14に進み、遮断帯域を狭帯域化して分割数を1段増やして、ステップS10に戻り再測定を行う。
【0049】
その他の動作は、図8に示したフローチャートの動作と同様であり、無線機器などからの電波信号に妨害されること無く、物体からの放射量の観測を正確に行うことができる。
次に、図15のフローチャートを参照して、本実施形態において、図10の地図データファイル601を用いて物体識別処理を行う場合の動作の一例を説明する。図15において、図14のフローチャートと同一の動作を行うステップは同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。観測動作開始後、図15のステップS21において、図10のナビゲーションシステム600は、GPSシステム(不図示)等から物体識別装置100が搭載されている車両の位置情報を取得する。次のステップS22では、ナビゲーションシステム600は、車両の現在位置と地図データファイル601に記録されている無線機器の所在位置情報とを比較し、車両が無線機器の通信エリアに入っているか否かを判断する。その通信エリアに入っている場合には、ステップS23に進み、入っていない場合には、ステップS10からS11に進み、図14と同様に物体からの放射量を観測する。
【0050】
ステップS23において、ナビゲーションシステム600は、図10の遮断帯域制御部215に当該無線機器の使用周波数の情報を出力し、これに応じて遮断帯域制御部215では、電波受信素子204Bが当該無線機器の使用周波数と干渉する周波数を遮断するように遮断帯域を制御して、放射量観測を行い、ステップS6に進む。
さらに、図15のステップS11からS13に移行したときには、新たな無線機器が検出されたため、小さな放射量が観測される帯域の観測値を放射強度画像生成部300に出力するとともに(これに続いてステップS6以降の動作が実行される)、ステップS24に移行して、著しく大きい放射量が観測される2つの通過帯域が重なる領域(すなわち、その無線機器からの電波信号による干渉が観測される遮断帯域)の情報を図10の信号記憶演算部203からナビゲーションシステム600に出力する。これに応じて、ナビゲーションシステム600は、その遮断帯域の情報と現在の車両の位置情報とを地図データファイル601に記録する。従って、この後、車両が同じルートを通過する際には、図15のステップS22において、既知の無線機器の電波送信範囲であることが認識できるため、予め当該無線機器と干渉する周波数帯域を遮断しておくことによって、当該無線機器を検出する動作を省略できる。
【0051】
この第2の実施形態の物体識別装置によれば、第1の実施形態の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
(1)図11に示すように、遮断帯域可変フィルタ部214は、アンテナ部206と検波部207との間に配置されており、観測周波数帯域をほぼ均等に分割した帯域のうち、任意の一つの帯域の信号を遮断する。
【0052】
従って、遮断帯域の帯域幅をほぼ等しくすることで、通過帯域の帯域幅をほぼ等しくすることができ、他の無線機器からの電波信号による干渉の有無を判断するための放射観測値の強度比較を正確に行えるようになる。
(2)ナビゲーションシステム600の地図データファイル601を用いて、予め観測範囲内に存在する無線機器の所在場所と使用周波数帯域が既知である場合には、遮断帯域の設定を当該無線機器の使用周波数帯域に設定している。これにより、干渉の有無を判断する処理を簡易化できる。
【0053】
(3)地図データファイル601に記録されていない新たな無線機器による干渉が有ると判断された場合には、干渉が発生した場所と無線機器の使用周波数帯域を地図データファイル601に記録する。これにより、以降の当該無線機器による電波信号の干渉を効果的に除去することが可能となる。
なお、上記の実施形態では、電波イメージング部200の観測周波数帯域は、屋外にてより遠距離までの物体観測を行うために大気の伝搬減衰の影響が少ない30〜40GHz帯としたが、観測周波数帯域をそれ以外の90〜100GHz帯などに設定してもよい。
【0054】
また、本発明の物体識別装置は、車両のみならず、船舶、航空機等にも適用できるとともに、建物の監視装置、セキュリティ用途の人物識別装置等としても適用できる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0055】
本発明の主たる構成要素と実施形態との対応関係は次の通りである。すなわち、帯域分割手段は通過帯域可変フィルタ部209または遮断帯域可変フィルタ部214に、判定手段は信号記憶演算部203に、画像処理手段は放射強度画像生成部300にそれぞれ対応する。
【0056】
なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項との対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態による物体識別装置を示すブロック図(a)、および、物体識別装置が搭載された車両を示す斜視図(b)である。
【図2】図1(a)に示した電波イメージング部200における受信アレイ部202等の構成を示す図である。
【図3】図2の受信アレイ部202を構成する電波受信素子204の構成を示す図である。
【図4】図3に示した通過帯域可変フィルタ部209の構成および通過帯域を示す図として、3分割の通過帯域可変フィルタ209aの構成を示す図(a)、3分割の通過帯域を示す図(b)、5分割の通過帯域可変フィルタ209bの構成を示す図(c)、および、5分割の通過帯域を示す図(d)である。
【図5】観測周波数帯域を3分割した場合の通過帯域の時間変化を示す図(a)、および、観測周波数帯域を5分割した場合の通過帯域の時間変化を示す図(b)である。
【図6】第1の実施形態において、観測周波数帯域内に1種類の与干渉物体が存在する場合、各通過帯域における信号処理の説明に供する図である。
【図7】第1の実施形態において、観測周波数帯域内に2種類以上の与干渉物体が存在する場合、各通過帯域における信号処理の説明に供する図である。
【図8】第1の実施形態における物体識別装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態における電波受信素子の他の構成例を示す図である。
【図10】第2の実施形態による物体識別装置を示すブロック図である。
【図11】図10に示した電波受信素子204Bの構成を示す図である。
【図12】第2の実施形態において観測周波数帯域を3つの遮断帯域に分割した場合の、通過帯域の時間変化を示す図である。
【図13】第2の実施形態において、観測周波数帯域内に1種類の与干渉物体が存在する場合、各帯域における信号処理の説明に供する図である。
【図14】第2の実施形態における物体識別装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】第2の実施形態において、物体識別装置の地図データファイルを利用した処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
100 物体識別装置
200 電波イメージング部
201 誘電体レンズ部
202 受信アレイ部
203 信号記憶演算部
204,204A,204B 電波受信素子
205 通過帯域制御部
206 受信アンテナ
207 検波部
209 通過帯域可変フィルタ部
214 遮断帯域可変フィルタ部
215 遮断帯域制御部
300 放射強度画像生成部
400 物体認識処理部
500 車両制御装置
600 ナビゲーションシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物体から放射される電波を受信し、複数の放射量観測帯域それぞれに対応する複数の帯域別検出信号を出力する帯域分割手段と、
前記複数の帯域別検出信号により表わされる電波放射量を比較することにより、前記検出対象物体以外から放射されている外来電波信号が前記帯域別検出信号のいずれかに混在しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記外来電波信号が混在していると判定された場合には、前記複数の帯域別検出信号から、当該外来電波信号が混在している帯域別検出信号を除外することにより、前記検出対象物体の放射強度に基づく画像を生成し、他方、前記判定手段により前記外来電波信号が混在していないと判定された場合には、前記複数の帯域別検出信号すべてを用いて前記検出対象物体の放射強度に基づく画像を生成する画像処理手段と、
を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体識別装置において、
前記帯域分割手段は、時系列的に所定の放射量観測帯域を順次設定することにより、前記複数の放射量観測帯域それぞれに対応する複数の帯域別検出信号を出力することを特徴とする物体識別装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物体識別装置において、
前記帯域分割手段は、前記判定手段により前記外来電波信号が混在していると判定された場合、前記放射量観測帯域の数を変更することを特徴とする物体識別装置。
【請求項4】
請求項1に記載の物体識別装置において、さらに加えて、
前記検出対象物体から放射される電波を受信し、当該電波の受信電力を複数系統に分配する分配手段を備え、
前記分配手段からの各系統出力をそれぞれ入力する複数の前記帯域分割手段は、予め設定されている特定の帯域別検出信号をそれぞれ同時に出力することを特徴とする物体識別装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の物体識別装置において、さらに加えて、
アレイ状に配列された複数のアンテナを備え、
それぞれの前記アンテナの後段に、一つの前記帯域分割手段が接続されていることを特徴とする物体識別装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の物体識別装置において、
前記帯域分割手段は、前記複数の放射量観測帯域それぞれに対応する複数の帯域別検出信号を出力する際に、帯域通過フィルタまたは帯域除去フィルタを用いることを特徴とする物体識別装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の物体識別装置において、
前記画像処理手段は、生成された画像について所定の放射強度ごとに空間領域をグループ分けすることにより前記検出対象物体を識別することを特徴とする物体識別装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の物体識別装置を備えた車両において、
前記複数の放射量観測帯域における特定の観測帯域と干渉する電波を発生する無線機器の位置情報が記録された地図データベースを備え、
前記地図データベースに基づいて前記無線機器が発生する電波と干渉する地理領域内に当該車両が進入したと判定した場合、前記帯域分割手段は、前記複数の放射量観測帯域から前記特定の観測帯域を除去して前記帯域別検出信号を出力することを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項8に記載の車両において、さらに加えて、
複数ある前記放射量観測帯域のいずれかの帯域と干渉する電波が存在している場合、当該電波干渉が生じる地理上の位置情報および観測帯域情報を前記地図データベースに書き込む手段を備えることを特徴とする車両。
【請求項10】
検出対象物体から放射される電波を受信し、複数の放射量観測帯域それぞれに対応する複数の帯域別検出信号を出力するステップと、
前記複数の帯域別検出信号により表わされる電波放射量を比較することにより、前記検出対象物体以外から放射されている外来電波信号が前記帯域別検出信号のいずれかに混在しているか否かを判定するステップと、
前記外来電波信号が混在していると判定された場合には、前記複数の帯域別検出信号から、当該外来電波信号が混在している帯域別検出信号を除外することにより、前記検出対象物体の放射強度に基づく画像を生成し、他方、前記外来電波信号が混在していないと判定された場合には、前記複数の帯域別検出信号すべてを用いて前記検出対象物体の放射強度に基づく画像を生成するステップと、
を備えることを特徴とする物体識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−36625(P2009−36625A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201004(P2007−201004)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】