説明

物入れ用ロック機構の操作装置

【課題】ハウジングに対する操作部材、ロック解除部材およびスプリングの組付け性を改善するとともに、操作部材とロック解除部材との連動関係や復帰力といった機能はこれまでどおりに維持する。
【解決手段】操作部材30をスプリングSの弾性による復帰力に抗して作動させることにより、これに連動するロック解除部材40の作動によって物入れのロック機構を解除する形式の操作装置であって、操作部材30とロック解除部材40とは、一方の作動方向を直交方向へ変換して他方に伝えるために互いに斜面で突き合わせた方向変換部50を備えている。この方向変換部は、操作部材とロック解除部材とが斜面に沿って相対的にスライド可能で、かつ、相互を一体的に結合可能である。スプリングSは、操作部材30のセット部38に組付けられ、この操作部材とハウジング24との間において復帰力を発揮するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用グローブボックス等で代表されるような物入れを閉じた状態でロックするロック機構を解除するための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の操作装置は、例えば特許文献1にも開示されているように、装置のハウジングに対して操作部材とロック解除部材とが互いに直交する方向へ往復作動するように組込まれている。操作部材をハウジング内に押込む方向へ操作することにより、その作動に連動してロック解除部材がハウジング内から突出する方向へ作動し、物入れのロック機構が解除され、物入れを開くことができる。
操作部材には、ロック解除部材側からスプリングの弾性による復帰力が作用しており、この復帰力に抗して操作部材を操作することになる。そして、このスプリングは、ロック解除部材とハウジングのスプリング受けとの間に組付けられるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−104192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように構成された操作装置においては、ロック解除部材をハウジングに組込む際に該ハウジングのスプリング受けが障害となり、これを避けるためにロック解除部材を円弧軌跡で組込まなければならない。また、復帰力を発揮させるスプリングは、ハウジングに組込まれた状態のロック解除部材とスプリング受けとの間に組付けるため、作業者の技術力ならびに専用工具などが必要となり、作業性がわるい。
なお、スプリングの組付け性を改善するために、このスプリングを操作部材とハウジングとの間に設けることが考えられる。しかし、スプリングの組付け箇所を操作部材とハウジングとの間に単純に変更しただけでは、スプリングによる復帰力がロック解除部材に作用しなくなり、操作部材とロック解除部材との連動関係が成り立たなくなる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ハウジングに対する操作部材、ロック解除部材およびスプリングの組付け性を改善するとともに、操作部材とロック解除部材との連動関係や復帰力といった機能はこれまでどおりに維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
ハウジングに対して操作部材とロック解除部材とが互いに連動し、かつ、互いに直交する方向へ往復作動するように組込まれ、操作部材をスプリングの弾性による復帰力に抗して作動させることにより、これに連動するロック解除部材の作動によって物入れのロック機構を解除する形式の操作装置であって、操作部材とロック解除部材とは、一方の作動方向を直交方向へ変換して他方に伝えるために互いに斜面で突き合わせた方向変換部を備えている。この方向変換部は、操作部材とロック解除部材とが斜面に沿って相対的にスライド可能で、かつ、操作部材を組込むことでロック解除部材と一体的に結合可能である。スプリングは、操作部材の外側で開放されたセット部に組付けられ、この操作部材をハウジングに組込むことにより、操作部材とハウジングとの間において復帰力を発揮するように構成されている。
【0007】
より好ましくは、ハウジングに対し、ロック解除部材に次いで操作部材を組込む際に、この操作部材を所定のストロークでハウジング内に押込む作動と、それに連動するロック解除部材の作動とにより、方向変換部において操作部材とロック解除部材とが一体的に結合されるように構成されていることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、ハウジングに操作部材およびロック解除部材を組込むにあたって何ら制約を受けることがなく、これらを共に直線軌跡で組込むことができ、また、復帰力を発揮させるためのスプリングは操作部材のセット部に前もって組付けておくことができ、それによって操作装置の組付け性を改善することができる。
そして、スプリングが操作部材とハウジングとの間において復帰力を発揮するとともに、操作部材とロック解除部材とが方向変換部において一体的に結合されるので、操作部材とロック解除部材との連動関係およびスプリングによる復帰力といったこれまでの機能を維持することができる。
【0009】
また、ハウジングに対して操作部材を組込む際に、操作部材をハウジング内に一度押込むだけで、操作部材とロック解除部材とが方向変換部において一体的に結合されることにより、この結合作業が操作装置の組付け性に支障をきたすのを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両用グローブボックスとその周辺を表した正面図。
【図2】グローブボックスのロック機構を表した断面図。
【図3】ロック機構の操作装置を表した外観斜視図。
【図4】操作装置を表した平面図。
【図5】図4のA−A矢視方向の断面図。
【図6】図4のB−B矢視方向の断面図。
【図7】操作装置の構成部材を分解して表した外観斜視図。
【図8】操作装置の操作部材およびロック解除部材のみを表した外観斜視図。
【図9】図8のC−C矢視方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図1で示すように、車両室内のインストルメントパネル10の助手席側に位置するグローブボックス12(物入れ)は、その下部に設けられたピボット軸(図示省略)の軸線回りに回転できるようにインストルメントパネル10に支持されている。また、このグローブボックス12は、図2で示すロック機構16によって閉じた状態に保持されている(図1)。このロック機構16によるロックを解除することにより、グローブボックス12が自重で手前方向へ回転し、ボックス内へのアクセスが可能な開放状態になる。
なお、グローブボックス12の表面部(ドア部)の上隅にあるノブ22を押すことにより、後述する操作装置20の作動を通じてロック機構16のロックが解除される。
【0012】
ロック機構16は、グローブボックス12の内側において図2の左右方向へスライドするように組込まれた第1ロッド16aおよび第2ロッド16bを備えている。これらの両ロッド16a,16bは、ラック・ピニオン16cによって互いに左右逆方向へ同期してスライドするとともに、常時はスプリング等の付勢力を受けて個々の外端部がインストルメントパネル10の孔に係合したロック状態に保持されている(図2)。
【0013】
操作装置20のノブ22が押されると、この操作装置20における後述のロック解除部材40によって第2ロッド16bが図2の左方向へ押され、スプリング等の付勢力に抗して同方向へスライドする。これに同期して第1ロッド16aは図2の右方向へスライドし、結果的に両ロッド16a,16bの外端部がインストルメントパネル10の孔から抜け出てロック機構16のロックが解除される。
【0014】
操作装置20は、ハウジング24と、該ハウジング24に組込まれる操作部材30およびロック解除部材40とを主体として構成されている。
ハウジング24は、操作部材30が組込まれる空間26と、ロック解除部材40が組込まれる空間28とを備えている(図7)。これらの空間26,28は、ハウジング24において互いに直角に位置する外側面でそれぞれ開放されており、かつ、図6に示すようにハウジング24の内部で直角に交差して相互に連通している。なお、操作部材30が組込まれる空間26の内面には、その上下左右において計4個のガイド溝26aが設けられている(図7)。
【0015】
操作部材30は、ハウジング24の空間26に組込まれ、この空間26に沿って往復作動することができる。操作部材30の外面には、その上下左右においてレール部32がそれぞれ設けられている。これらのレール部32は、空間26の各ガイド溝26aに個別に嵌って操作部材30の作動を案内する。
操作部材30は、ハウジング24の空間26に組込まれたときの奥側端部に設定された斜面34を備えている。この斜面34の両側には、それぞれ内側に向けて張り出した係合爪36が設けられている。なお、操作部材30における斜面34の反対側の端部、つまりハウジング24の外側に位置する端部に、操作装置20のノブ22が結合される。
【0016】
図6および図7で示すように、操作部材30は、その一側面(図面で上面)において外側に開放されたセット部38を備えている。このセット部38には、操作部材30およびロック解除部材40に復帰力を付与するスプリングSが組付けられる(図6、図7)。スプリングSは、操作部材30がハウジング24の空間26に組込まれる前に、そのセット部38に組付けられる。そして、操作部材30が空間26に組込まれた状態でのスプリングSは、セット部38の内壁と空間26内のスプリング受け26bとの間に位置し(図6)、ハウジング24と操作部材30との間において復帰力を発揮し得る状態となる。
【0017】
ロック解除部材40は、ハウジング24の空間28に組込まれ、この空間28に沿って往復作動することができる。ロック解除部材40は、ハウジング24の外側に位置する端部において突起部42を備えている。この突起部42は、前述のようにロック機構16のロックを解除するときに、このロック機構16の第2ロッド16bに接触して該第2ロッド16bを押し動かす部分である。
ロック解除部材40は、ハウジング24の空間28に組込まれたときの奥側端部に設定された斜面44を備えている。この斜面44の両側には、係合溝46がそれぞれ設けられている。
【0018】
操作部材30およびロック解除部材40が個々の空間26,28に組込まれた状態において、ハウジング24の内部では操作部材30の斜面34とロック解除部材40の斜面44とが互いに突き合わされる。これらの斜面34,44により、操作部材30およびロック解除部材40における一方の作動方向を直交方向へ変換して他方に伝えるための方向変換部50が構成されている(図6)。
また、方向変換部50においては、斜面34の両係合爪36が斜面44の両係合溝46にそれぞれ係合している(図6、図9)。これにより、操作部材30とロック解除部材40とは、方向変換部50において斜面34,44に沿って相対的にスライド可能で、かつ一体的に結合されている。
【0019】
つづいて、ハウジング24に操作部材30およびロック解除部材40を組込む手順について説明する。
まず、操作部材30の上面において外側に開放されたセット部38に、スプリングSを組付ける。このときのスプリングSは、圧縮力を加えることなく自由状態のままでセット部38に組付けることができる。この後、操作部材30をハウジング24の空間26に対して直線軌跡で組込む。これにより、前述のように操作部材30の外面に設けられている各レール部32が空間26の各ガイド溝26aにスライド可能に嵌り合うとともに、スプリングSがセット部38の内壁と空間26内のスプリング受け26bとの間に位置して復帰力を発揮し得る状態となる。
【0020】
操作部材30の組込みと併行してロック解除部材40をハウジング24の空間28に直線軌跡で組込む。この時点でのハウジング24内における操作部材30とロック解除部材40との方向変換部50は、相互の斜面34,44が突き合わされているだけで、斜面34,44の両係合爪36と両係合溝46との係合はなされていない。
そこで、操作部材30を所定のストロークでハウジング24内に押込むことにより、方向変換部50の斜面34,44に沿ってロック解除部材40が空間28から押出される方向(図面の上方向)へ連動する。つまり、斜面34,44の接触位置が相対的に変化し、図6の仮想線で示す位置を越えた時点で、斜面34,44の両係合爪36と両係合溝46とが係合する。この結果、操作部材30とロック解除部材40とが方向変換部50において一体的に結合されたことになる。
【0021】
グローブボックス12のロック機構16を解除するには、前述のように操作装置20のノブ22を押すことで、操作部材30がスプリングSの弾性力に抗してハウジング24の内部に押込まれる。この操作装置20の作動が方向変換部50によって直交方向への作動に変換されてロック解除部材40に伝達され、このロック解除部材40がハウジング24内から突出する方向に作動する。これにより、ロック解除部材40の突起部42がロック機構16の第2ロッド16bに接触して該第2ロッド16bを図2の左方向へ押し動かし、これに同期して第1ロッド16aが図2の右方向へスライドしてロック機構16のロックが解除される。
【0022】
以上の説明から明らかなように、操作部材30およびロック解除部材40は、ハウジング24に対して共に直線軌跡で組込むことができる。そして、スプリングSは操作部材30をハウジング24に組込む前に、この操作部材30のセット部38に組付けておくことができ、これまでのように作業者の技術力や専用工具などを必要としていたのと異なり、作業性が向上する。
また、スプリングSを操作部材30とハウジング24との間に組付けたことによる課題、すなわちスプリングSの弾性力がロック解除部材40に作用しなくなることを、相互を方向変換部50において一体的に結合することで解消している。これにより、操作装置20に必要なこれまでの機能を維持することができる。しかも、方向変換部50における操作部材30とロック解除部材40との結合は、これらをハウジング24内に組込む際に、前述のように操作部材30を所定のストロークでハウジング24内に押込むだけでよく、操作装置20の組付け性は適正に維持される。
【符号の説明】
【0023】
12 グローブボックス(物入れ)
16 ロック機構
20 操作装置
24 ハウジング
30 操作部材
34 斜面
38 セット部
40 ロック解除部材
50 方向変換部
S スプリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに対して操作部材とロック解除部材とが互いに連動し、かつ、互いに直交する方向へ往復作動するように組込まれ、操作部材をスプリングの弾性による復帰力に抗して作動させることにより、これに連動するロック解除部材の作動によって物入れのロック機構を解除する形式の操作装置であって、
操作部材とロック解除部材とは、一方の作動方向を直交方向へ変換して他方に伝えるために互いに斜面で突き合わせた方向変換部を備え、この方向変換部は、操作部材とロック解除部材とが斜面に沿って相対的にスライド可能で、かつ、操作部材を組込むことでロック解除部材と一体的に結合可能であり、スプリングは、操作部材の外側で開放されたセット部に組付けられ、この操作部材をハウジングに組込むことにより、操作部材とハウジングとの間において復帰力を発揮するように構成された物入れ用ロック機構の操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載された物入れ用ロック機構の操作装置であって、
ハウジングに対し、ロック解除部材に次いで操作部材を組込む際に、この操作部材を所定のストロークでハウジング内に押込む作動と、それに連動するロック解除部材の作動とにより、方向変換部において操作部材とロック解除部材とが一体的に結合されるように構成された物入れ用ロック機構の操作装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−103642(P2013−103642A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249653(P2011−249653)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】