説明

物品の分散整列方法

【課題】 多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、概ね一定量ずつ排出する分散搬送性の向上と、物品を一定方向の姿勢とする方向整列性を付与させること。
【解決手段】 物品の分散整列方法であって、固定床20若しくは移動床30の少なくとも一部の床面に、搬送方向に直交する幅方向に沿って三角鋸歯状の凹凸をなす凹凸部22を設け、複数個の物品を供給し、各物品を凹凸部32の幅方向の凹所に転倒させることにより、各物品の重心を下方に方向整列させるとともに、各物品を搬送方向に直交する幅方向に分散させて一定量ずつ排出させるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品の分散整列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品搬送装置として、特許文献1に記載の如く、多数の棒状材料(11)を、その搬送の途次において1本ずつに分離して次工程に供給する装置であって、前記棒状材料(11)の搬送方向の上流側面が、上方に向かうにつれて搬送方向下流側に変位する階段状に形成された固定床(41)と、前記固定床(41)と平行に隣接位置すると共に、前記棒状材料(11)の搬送方向の上流側面が、上方に向かうにつれて搬送方向下流側に変位する階段状に形成された移動床(42)と、前記移動床(42)の下方に配置され、該移動床(42)をその段部(45)を、前記固定床(41)における段部(43)の上方および下方に往復移動させる往復駆動手段(47)とを備えてなるものがある。この物品搬送装置は、往復駆動手段(47)の駆動により、移動床側の段部(45)が固定床側の段部(43)よりも上方のレベルに向かう際に、その移動床側の段部(45)が、固定床側の段部(43)に載置した棒状材料群から1本の棒状材料(11)を捕捉し、これを固定床側における上段の段部(43)に順次移載するものである。
【特許文献1】実開平7-23731
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の物品搬送装置では、固定床と移動床が平行に隣接位置しており、搬送対象物品たる棒状材料を、搬送方向に直交する方向に並置されている一対の移動床側の段部により捕捉し、これを同じく並置されている一対の固定床側の段部に移載するものになる。従って、物品は一対の移動床の間隔を越える長さ、かつ一対の固定床の間隔を越える長さをもつ長尺物品であることが必要とされる。また、物品の投入姿勢は一対の固定床の段部に受け入れられ得るように、搬送方向に直交する姿勢をとる必要がある。即ち、従来技術では、多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、概ね一定量ずつ排出することができない。また、長尺物品の向きを変化させることができないため、多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、これを一定方向の姿勢に方向整列することもできない。
【0004】
本発明の課題は、多様な寸法形状の物品を自由な姿勢で投入しながら、概ね一定量ずつ排出する分散搬送性の向上と、物品を一定方向の姿勢とする方向整列性を付与させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、複数の固定床の各個を搬送方向に沿って並置し、複数の移動床の各個を各固定床に対し搬送方向の側傍に隣接配置するとともに、各移動床を同時にそれらの床面が隣接する固定床の床面に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返すことで物品を下流に送る物品の分散整列方法であって、複数の各固定床若しくは各移動床の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、固定床若しくは移動床の少なくとも一部の床面に、搬送方向に直交する幅方向に沿って凹凸をなす凹凸部を設け、複数個の物品を供給し、各物品を凹凸部の幅方向の凹所に転倒させることにより、各物品の重心を下方に方向整列させるとともに、各物品を搬送方向に直交する幅方向に分散させて一定量ずつ排出させるようにしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(参考例1)(図1〜図17)
物品搬送装置10は、図1〜図3に示す如く、架台11の一端側から他端側に向かう方向を物品搬送方向とし、その一端側に入口シュート12を設け、入口シュート12の裏面に搬送力を高めるためのバイブレータ13を装備してある。
【0007】
物品搬送装置10は、架台11に設けた支持部材14に複数の固定床20を支持する。物品搬送装置10は、複数の固定床20の各個を搬送方向に沿って並置し、それらの床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて水平をなすように配置している(図10)。このとき、各固定床20の床面21は、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した斜面とされている。固定床20にバイブレータを装備し、搬送力を高めても良い。
【0008】
物品搬送装置10は、架台11に支持した昇降駆動装置15に左右のサイドガイド板16を連結し、架台11に支持したスライド軸17にサイドガイド板16に固定してあるスライド部18をスライド自在に嵌合している。また、架台11とスライド部18の間には、衝撃緩和ダンパ19を介装している。左右のサイドガイド板16は、入口シュート12と固定床20の巾方向の両側に配置されるとともに、複数の移動床30を挟んで備える。複数の移動床30の各個を各固定床20に対し搬送方向の側傍(本実施例では上流側の側傍)に隣接配置する。固定床20と移動床30は一定の間隔を介して搬送方向に沿って交互に配置されるものになる。物品搬送装置10は、昇降駆動装置15により、サイドガイド板16及び移動床30の昇降動作を繰り返す(移動床30を昇降駆動装置15に直に連結し、サイドガイド板16は必ずしも昇降させる必要はない)。即ち、各移動床30を同時にそれらの床面31が隣接する固定床20の床面21に対する上位(図10(A))と下位(図10(B))に位置付ける昇降動作を繰り返す。
【0009】
各移動床30の床面31は、上位において固定床20の床面21より上に突出し、下位において固定床20の床面21より下に没入する。本発明における「没入」とは、移動床30が固定床20の下方に位置することをいい、具体的には、移動床30全体が完全に固定床20の床面21より下方に位置する完全に没入した場合は勿論、移動床30の床面31が下位状態で固定床20の床面21とほぼ同一位置で停止した場合も含まれる。「ほぼ同一位置での停止」とは、図11(A)に示すように、複数の固定床20の床面21の最下部を結ぶ線に対して各移動床30の床面31の下位状態における最高部を結ぶ線との高さ差yが0〜+5mm、もしくは、yが図13、図14に示す物品の最小寸法d又はeの2〜10%のいずれかになるように位置することをいう。尚、図11(B)は、y=約0mmで、移動床30の床面31が下位状態において固定床20の床面21とほぼ同一位置となった状態を示す。尚、図11(C)は、yがマイナス値となり、移動床30の床面31が下位状態において固定床20の床面21に完全に没入した状態を示す。
【0010】
上位に位置付けられた各移動床30の床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて水平をなすように配置する(図10)。このとき、各移動床30の床面31は、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した斜面とされている。移動床30の傾斜斜面は固定床の20の傾斜斜面と同程度でも良いし、物品の搬送力を高めるためには、やや急な角度としても良い。
【0011】
物品搬送装置10は、複数の移動床30の床面31の少なくとも一部の床面31に、搬送方向(図1のL方向)に直交する方向(移動床30の長手方向に沿う方向、図1のW方向)に沿って鋸歯状の如くの凹凸をなす凹凸部32を設け、移動床30の床面31を通過する物品1が凹凸部32のW方向の凹所に押し込んで転倒し、物品1を物品搬送装置10の幅方向(W方向)に分散させるとともに、物品1の重心を下方に方向整列させる。図4の移動床30は床面31に凹凸部32を設けていないが、図5〜図9の移動床30は床面31に凹凸部32を設けている。図5の凹凸部32は三角状(鋸歯状)をなす。図6の凹凸部32は三角状(鋸歯状)をなし、相隣る三角の頂点の高さに差をもたせ、物品1のW方向への転倒性を高めている。図7の凹凸部32は四角柱状をなす。図8の凹凸部32は四角柱状をなし、相隣る四角の頂点の高さに差をもたせ、物品1のW方向への転倒性を高めている。
【0012】
図9は凹凸部32を平板32Aにより形成し、該平板32Aを移動床30に設置したものである。
【0013】
図9(A)の凹凸部32は三角の平板状(鋸板歯状)をなす。図9(B)の凹凸部32は三角の平板状(鋸板歯状)をなし、相隣る三角の頂点の高さに差をもたせ、物品1のW方向への転倒性を高めている。図9(C)の凹凸部32は四角の平板状をなす。図9(D)の凹凸部32は四角の平板状をなし、相隣る四角の頂点の高さに差をもたせ、物品1のW方向への転倒性を高めている。図9(A)〜図9(D)の平板32Aにより凹凸部32を形成する際には、平板32A側を上流側にして設置する。
【0014】
昇降駆動装置15は、昇降速度、加速度、昇降ストロークを変更制御できる電動シリンダ等を用いることができる。昇降駆動装置15は、電動モータの回転を直線運動に変換する機構、又は空圧シリンダ等でも良い。移動床30の床面31が互いに水平配置されているとき、移動床30の昇降速度は、好ましくは30〜400mm/sec、より好ましくは40〜250mm/sec、更に好ましくは50〜150mm/secと調整することで高精度の方向整列が可能となる。特に転倒性を高めたいときは高速にすれば良く、転倒性が高すぎて姿勢が安定しない際や、物品搬送装置10の出口部から次工程への物品1の渡りが不安定な際は、低速にしたほうが良い。移動床30の昇降加速度は、好ましくは0.05〜0.6G、更に好ましくは0.2〜0.4Gである。ここで単位Gは重力加速度9.8m/secの倍数を示す。特に転倒性を高めたいときは高加速度にすれば良く、転倒性が高すぎて姿勢が安定しない際や、物品搬送装置出口部から次工程への物品の渡りが不安定な際は、低加速度にしたほうが良い。昇降速度、加速度、昇降ストロークを変更制御できる電動シリンダ等を用いて、上昇途中で速度を速めたり、減速したりなど、物品の転倒性に応じた速度や加速度の調整を行なうと、更に高精度の方向整列が可能となることがある。また、移動床30を最大上昇点で、例えば0.2〜1.0sec一時停止したり、最下降点で例えば0.2〜1.0sec一時停止することにより、物品1の動きを一瞬停止、安定させることで、更に高精度の方向整列が行なえる場合もある。また昇降ストロークは物品、移動床30、固定床20の大きさや形状によって適宜調整される。一例として、ポリアセタール製で長さ300mmの移動床30を11本有する昇降部を駆動させる装置においては、30Wという非常に小出力のサーボモータで十分であった。
【0015】
以下、物品搬送装置10による物品搬送状態を説明する。
(移動床30の昇降による物品搬送動作)
物品搬送装置10は、図1、図2に示す如く、複数の固定床20の床面21を互いに水平配置するとともに、複数の移動床30の床面31も互いに水平に保ちながら昇降させるようにしたものであり、物品1は各移動床30の昇降動作の繰り返しにより、固定床20と移動床30の床面21、31自体の斜面に沿って滑ることにて搬送される。
【0016】
物品搬送装置10による物品の方向整列及び搬送性は、具体的には、図12に示す如くになる。図12において、gは物品1の重心、rは物品1の回転中心、fは物品1に作用する回転力の作用点であり、物品1はキャップとする。
【0017】
移動床30が最上昇位置にある上昇完了(図12(A))で、キャップ1は相隣る移動床30の間にある。
【0018】
移動床30が下降中(図12(B))、キャップ1は固定床20の床面21を滑りながら移動する。
【0019】
移動床30が最下降位置にある下降完了(図12(C))で、キャップ1は下流側の固定床20に制止されて停止する。
【0020】
移動床30が上昇中(図12(D)、(E))、キャップ1の重心gはまず上方にあり不安定であるが、キャップ1が固定床20の頂点を回転中心rとし、移動床30の上昇により作用点fでキャップ1に及ぶ僅かな回転力がキャップ1を回転させてキャップ1の重心gを下方へ移す。
【0021】
移動床30の上昇完了(図12(F))で、キャップ1の重心gのある天面が下方になるまで回転し、方向整列される。
【0022】
移動床30が下降中(図12(G))、キャップ1は固定床20の床面21を滑りながら移動する。
【0023】
移動床30が下降完了(図12(H))で、キャップ1は下流側の固定床20に制止されて停止する。
【0024】
移動床30が上昇中(図12(I)、(J))、キャップ1の重心gは下方にあり、安定である。移動床30の上昇により移動床30がキャップ1に回転力を及ぼす作用点fと、キャップ1の重心gが近く、キャップ1は上方に押し上げられるのみで回転力を生じにくい。
【0025】
移動床30が上昇完了(図12(K))で、キャップ1のもともと重心gがある天面が下方にあり、これ以上の回転を生じない。キャップ1は移動床30の床面31を滑る移動のみになる。
【0026】
尚、移動床30の上昇加速度が大きい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が大きく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が大きくなり、物品1の排出量を増加できる。
【0027】
また、移動床30の上昇加速度が小さい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が小さく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が小さくなり、物品1の排出量を低減できる。
【0028】
(移動床30の凹凸部32による物品搬送動作)
物品搬送装置10において、移動床30の床面31が凹凸部32を有するとき、物品1を物品搬送装置10の幅方向に分散させ、物品1を物品搬送装置10から概ね一定量ずつ排出できる。
【0029】
物品搬送装置10から排出させる物品1にそれらの重心を下方にする方向整列を行ないたいとき、移動床30の床面31を通過する物品1を凹凸部32のW方向の凹所に転倒させ、その重心を下方に方向整列させることができる。
【0030】
凹凸部32を有する各移動床30の床面31は、水平向きでも良いし、搬送力を高めるには搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させれば良い。
【0031】
特に、図13、図14に示す如くの物品1の高さ(h)がその底面長さ(直径d、楕円短径e)に対し大きい場合(h>1.2d、h>1.2e)、移動床30が凹凸部32を有さないときには、図15に示す如く、物品1は同一向きのまま下流へ移動し、重心を下方にする方向整列は困難になる。移動床30が凹凸部32を有するときには、図16に示す如く、物品1が移動床30の床面31を通過するに際して凹凸部32の凹所に押し込み、物品1の重心のあるW方向へ傾斜して転倒し、重心を下方にする方向整列がなされる。
【0032】
物品搬送装置10において、全ての移動床30の床面31が凹凸部32を有すると、物品搬送装置10の幅方向への物品1の分散が一層進み、物品1を物品搬送装置10からより一定量ずつ排出でき、高い分散搬送性を有する。
【0033】
物品1の重心を下方にする方向整列を行ないたいときには、物品搬送装置10における固定床20及び移動床30の設置範囲Lに対し、最下流部より(0.2〜0.4)×L程度上流の位置から上流部の好適範囲に、凹凸部32をもつ移動床30を設置することが好ましい。凹凸部32をもつ移動床30が物品搬送装置10の最下流部にあると、物品1が最下流部でW方向に傾斜し、物品1の排出姿勢が不安定になるからである。ただし、W方向に傾斜したほうが次工程の物品扱いの点から好ましい場合や、特殊な形状の物品でW方向に傾斜したほうが方向整列上都合が良い場合などには、凹凸部32をもつ移動床30を最下流位置のみに設けたり、最下流位置とその上流位置に設けたりする場合もある。物品搬送装置10は、上述の好適範囲の全ての移動床30に凹凸部32を設けても良いし、凹凸部32をもつ移動床30と、凹凸部32をもたない移動床30を混在させても良い。より好ましくは、凹凸部32をもつ移動床30と、凹凸部32をもたない移動床30を交互に配置すると良く、凹凸部32をもたない移動床30により高い搬送力が付与され、凹凸部32をもつ移動床30により物品1の重心を下方にする方向整列が行なわれ、高能力な方向整列がなされる。
【0034】
図17の物品搬送装置10は、直径(d)に対して高さ(h)が小さいキャップ1を搬送したものであり、凹凸部32をもつ移動床30を2回程度通過することにより、大部分(約83〜97%)の物品1を方向整列できる。また、図13、図14に示す如くの物品1の高さ(h)がその底面長さ(直径d、楕円短径e)に対し大きい場合(h>1.2d、h>1.2e)の物品1でも大部分(約83〜97%)の方向整列が可能であった。方向整列の一例として、長さ300mmの移動床30に平均5個のキャップが並ぶ程度供給し、移動床30を1secサイクルで昇降させることにより、直径(d)が34mm、高さ(h)が24mmのキャップ1を成功率約95%、約300個/minで方向整列することができた。
【0035】
(参考例2)(図18〜図20)
参考例2の物品搬送装置10Aが参考例1の物品搬送装置10と異なる点は、図18、図19に示す如く、複数の固定床20の床面21の少なくとも一部の床面21に、搬送方向(L方向)に直交する方向(固定床20の長手方向に沿う方向、W方向)に沿って鋸歯状の如くの凹凸をなす凹凸部22を設け、固定床20の床面21を通過する物品1が凹凸部22のW方向の凹所に押し込んで転倒し、物品1を物品搬送装置10Aの幅方向(W方向)に分散させるとともに、物品1の重心を下方に方向整列させるようにしたことにある。固定床20の凹凸部22は、物品搬送装置10において移動床30に設けた凹凸部32と同様の形状、構造により設けることができ、同様の作用を奏する。
【0036】
凹凸部22を有する各固定床20の床面21は、水平向きでも良いが、固定床20の幅に対して物品1の大きさが小さいと、物品1は固定床20の床面21の上で停止して搬送されなくなることがある。そのような際に、搬送力を高めるには搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させれば良い。
【0037】
従って、物品搬送装置10Aは、物品搬送装置10と同様に、移動床30の昇降による物品搬送動作と、移動床30の凹凸部32によると同様の固定床20の凹凸部22による物品搬送動作とを営むことができる、同様に高い分散搬送性を有する。
【0038】
図20の物品搬送装置10Aは、直径(d)に対して高さ(h)が大きいキャップ1を搬送したものであり、凹凸部22をもつ固定床20を2回程度通過することにより、大部分(約83〜97%)のキャップ1を方向整列できる。方向整列の一例として、長さ300mmの移動床30に平均4個のキャップ1が並ぶ程度供給し、移動床30を1.5secサイクルで昇降させることにより、直径(d)が30mm、高さ(h)が40mmのキャップ1を成功率約90%、約160個/minで方向整列することができた。
【0039】
(参考例3)(図21)
参考例3の物品搬送装置10Bが参考例1の物品搬送装置10と異なる点は、複数の固定床20の床面21の少なくとも一部の床面21に、搬送方向(L方向)に直交する方向(固定床20の長手方向に沿う方向、W方向)に沿って鋸歯状の如くの凹凸をなす凹凸部22を設け、更にその上流位置または下流位置に隣接して、複数の移動床30の床面31の少なくとも一部の床面31に、搬送方向(L方向)に直交する方向(移動床30の長手方向に沿う方向、W方向)に沿って鋸歯状の如くの凹凸をなす凹凸部32を設け、それらの前後に配する固定床20と移動床30は何れも凹凸部を設けないものである。固定床20の床面21を通過する物品1が凹凸部22のW方向の凹所に押し込んで転倒したり、移動床30の床面31を通過する物品1が凹凸部32のW方向の凹所に押し込んで転倒したり、更には隣接した凹凸部を有す移動床30の床面31と、凹凸部を有す固定床20の床面21間の相互作用により、物品1を物品搬送装置10Aの幅方向(W方向)に分散させる効果と、物品1の重心を下方に方向整列させる効果を更に高めたものである。
【0040】
従って、物品搬送装置10Bは、物品搬送装置10、10Aと同様の物品搬送動作と、更に高い分散搬送性を有する。
【0041】
ここで、隣接する移動床30と固定床20の凹凸部形状は、同じであっても良いし、異なるものでも良い。また同じ凹凸部形状で、凹凸位置をW方向にずらしても良い。
【0042】
物品搬送装置10Bは、図13〜図16に示すキャップ1を更に高い効果で方向整列できるが、物品1の重心を下方に方向整列した際の姿勢が不安定な物品1の形状または重心位置の際は、方向整列した物品の姿勢を乱すこともある。そのような際は、物品1の形状または重心位置に応じて、例えば昇降速度や加速度を低下させたり、昇降ストロークを小さくしたり、凹凸部の高さの差を小さくするなどの方法にて調整すれば良い。
【0043】
(本発明例)(図22〜図29)
本発明例の物品搬送装置10Cは、図22に示す如く、架台11の一端側から他端側に向かう方向を物品搬送方向とし、その一端側に入口シュート12を設け、入口シュート12の裏面に搬送力を高めるためのバイブレータ13を装備してある。
【0044】
物品搬送装置10Cは、架台11に設けた支持部材14に複数の固定床20を支持する。物品搬送装置10Cは、複数の固定床20の各個の床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する角度θ:例えば5〜35度)(図23)をなすように配置している。このとき、各固定床20の床面21は、それ自体でも、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した斜面とされている。固定床20にバイブレータを装備し、搬送力を高めても良い。
【0045】
物品搬送装置10Cは、架台11に支持した昇降駆動装置15に左右のサイドガイド板16を連結し、架台11に支持したスライド軸17にサイドガイド板16に固定してあるスライド部18(不図示)をスライド自在に嵌合している。また、架台11とスライド部18の間には、衝撃緩和ダンパ19(不図示)を介装している。左右のサイドガイド板16は、入口シュート12と固定床20の巾方向の両側に配置されるとともに、複数の移動床30を挟んで備える。複数の移動床30の各個を各固定床20に対し搬送方向の側傍(本実施例では上流側の側傍)に隣接配置する。固定床20と移動床30は一定の間隔を介して搬送方向に沿って交互に配置されるものになる。物品搬送装置10Cは、昇降駆動装置15により、サイドガイド板16及び移動床30の昇降動作を繰り返す(移動床30を昇降駆動装置15に直に連結し、サイドガイド板16は必ずしも昇降させる必要はない)。即ち、各移動床30を同時にそれらの床面31が隣接する固定床20の床面21に対する上位(図23(A))と下位(図23(B))に位置付ける昇降動作を繰り返す。
【0046】
各移動床30の床面31は、上位において固定床20の床面21より上に突出し、下位において固定床20の床面21より下に没入する。本発明における「没入」とは、移動床30が固定床20の下方に位置することをいい、具体的には、移動床30全体が完全に固定床20の床面21より下方に位置する完全に没入した場合は勿論、移動床30の床面31が下位状態で固定床20の床面21とほぼ同一位置で停止した場合も含まれる。「ほぼ同一位置での停止」とは、図24(A)に示すように、複数の固定床20の床面21の最下部を結ぶ線に対して各移動床30の床面31の下位状態における最高部を結ぶ線との高さ差yが0〜+5mm、もしくは、yが図13、図14に示した物品の最小寸法d又はeの2〜10%のいずれかになるように位置することをいう。尚、図24(B)は、y=約0mmで、移動床30の床面31が下位状態において固定床20の床面21とほぼ同一位置となった状態を示す。尚、図24(C)は、yがマイナス値となり、移動床30の床面31が下位状態において固定床20の床面21に完全に没入した状態を示す。
【0047】
上位に位置付けられた各移動床30の床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する角度θ:例えば5〜35度)をなすように配置する。このとき、各移動床30の床面31は、それ自体でも、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した斜面とされている(図23)。
【0048】
この移動床配置についての角度θ(θ1)は、固定床配置についての角度θ(θ2)とほぼ同一に一致させたほうが物品搬送時の物品挙動が安定して好ましい。θの値は、物品と固定床20や移動床30との摩擦状態によって適宜調整される。一例として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS等の樹脂製キャップやアルミ製等の金属製キャップ等の物品を、(a)表面を一般的な機械加工にて仕上げたステンレス製やアルミ製等の金属製の固定床20や移動床30、(b)表面を一般的な機械加工にて仕上げたポリアセタールやポリ塩化ビニル等の樹脂製の固定床20や移動床30、(c)更にこれらの表面に滑り性の良いテープ材を貼った固定床20や移動床30にて搬送する場合の角度θは、好ましくは8〜25度、更に好ましくは12度〜20度にすると良い。尚、移動床配置についての角度θ1と、固定床配置についての角度θ2を異なるものとすれば、上流と下流での移動挙動を変化させることも可能である。
【0049】
移動床配置及び固定床配置が水平に対する角度θ、θ1、θ2固定床20の床面21が水平に対する角度α、移動床30の床面31が水平に対する角度βの関係を図25に示す。一般的には、α=0度〜θ2度、β=0度〜θ1度の範囲で適宜に設定される。
【0050】
第1の形態として、一般的な各角度の関係を図25(A)に示す。固定床20の床面21が水平に対する角度αは、移動床配置についての角度θ1に対し、−5〜+15度程度と、ほぼ同等もしくは僅かに大きく設定される。これは、固定床20の床面21において物品を下流の移動床30の床面31へゆっくりと安定的に搬送させるためである。仮に物品が自ら滑ることのない角度であっても、上流からの他物品に押されて搬送される。次に、移動床30の床面31が水平に対する角度βは、固定床20の床面21が水平に対する角度αに対し、+5〜+25度程度と大きく設定される。これは、移動床30の床面31が突出中に、確実に物品を下流の固定床20の床面21へと搬送させるためである。
【0051】
第2の形態として、物品を特にスムースに搬送させたい際の各角度の関係を図25(B)に示す。固定床20の床面21が水平に対する角度αは、移動床配置についての角度θ1と概同一に設定される。更に、移動床30の床面31が水平に対する角度βも、移動床配置についての角度θ1と概同一に設定される。これは、移動床30の床面31が没入時に、物品をガタつかせることなくスムースに下流の固定床20の床面21へ確実に搬送させるためである。従って、移動床30の没入位置は、図25(C)に示すように、移動床30の床面31が固定床20の床面21に対して没入せず、固定床20の床面21と移動床30の床面31が概直線関係をなすことができる位置、もしくは移動床30の床面31が、0.5〜3mm程度極僅かに没入する位置(不図示)とすることが好ましい。
【0052】
物品搬送装置10Cは、複数の移動床30の床面31の少なくとも一部の床面31に、搬送方向(図22のL方向)に直交する方向(移動床30の長手方向に沿う方向、図22のW方向)に沿って鋸歯状の如くの凹凸をなす凹凸部32を設け、移動床30の床面31通過する物品1が凹凸部32のW方向の凹所に押し込んで転倒し、物品1を物品搬送装置10Cの幅方向(W方向)に分散させるとともに、物品1の重心を下方に方向整列させる。移動床30の床面31に設ける凹凸部32は、前述図5〜図8の如くにすることができる。
【0053】
昇降駆動装置15は、昇降速度や昇降ストロークを変更制御できる電動シリンダを用いることができる。昇降駆動装置15は、電動モータの回転を直線運動に変換する機構、又は空圧シリンダ等でも良い。移動床30の床面31が水平に対する角度θ=15度の下り勾配をなすとき、移動床30の昇降速度は、好ましくは50〜250mm/sec、より好ましくは100〜150mm/secである。
【0054】
以下、物品搬送装置10Cによる物品搬送状態を説明する。
(移動床30の昇降による物品搬送動作)
図26の物品搬送装置10Cでは、複数の固定床20の床面21を互いに下り勾配をなすように配置するとともに、複数の移動床30の床面31も互いに下り勾配をなすように配置したものであり、相隣る移動床30のピッチpより小寸法の物品1(図26(A))も、大寸法の物品1(図26(B))も、各移動床30の昇降動作の繰り返しにより搬送される。即ち、移動床30の上昇により、移動床30の床面31が固定床20の床面21上にある物品1を突き上げると、移動床30の床面31自体の傾斜が物品1に下流側への搬送力を付与する。搬送力を付与された物品1は、移動床30の下降により、下流側の搬送方向に沿って下り勾配をなす固定床20の床面21上に移載され、固定床20の床面21自体の傾斜、更には複数の互いに搬送方向に沿って下り勾配をなす固定床20の床面21相互の傾斜に載って滑り、下流側へと搬送される。固定床20の床面21の傾斜に載って滑る過程で、図26(C)に示す如く、下流側の固定床20に引っ掛かっても、移動床30の次の上昇により固定床20から突き上げられ、下流側へと搬送される。図12に示すような、複数の固定床20の床面21を互いに水平配置するとともに、複数の移動床30の床面31も互いに水平に保ちながら昇降させるようにしたものでは、稀に、大寸法の物品1(図26(B))の搬送力が不足する場合があるが、図26の物品搬送装置10Cのように、複数の固定床20の床面21を互いに下り勾配をなすように配置するとともに、複数の移動床30の床面31も互いに下り勾配をなすように配置することにより、十分な搬送力を得ることができる。
【0055】
従って、物品搬送装置10Cにあっては、固定床20と移動床30が搬送方向に沿って交互に隣接配置され、しかもそれらの床面21、31が互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置されるものであり、物品1の寸法形状や投入姿勢に関係なく、あらゆる物品1を固定床20の床面21に載せ、移動床30の床面31により突き上げ、上述(a)の搬送動作を行ない、概ね一定量ずつ排出できる。
【0056】
物品搬送装置10Cは、移動床30の昇降動作の1サイクル(最下降位置〜最上昇位置〜最下降位置の1サイクル)において、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間割合を、該固定床20の床面21より下に没入している時間割合より小さく制御することができる。これにより、物品1を移動床30の床面31より突き上げている時間より、物品1を固定床20の床面21に載せて滑らせる時間のほうが長くなり、物品1の排出量を増加できる。
【0057】
尚、移動床30の上昇加速度が大きい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が大きく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が大きくなり、物品1の排出量を増加できる。
【0058】
また、物品搬送装置10Cは、移動床30の昇降動作の1サイクルにおいて、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間割合を、該固定床20の床面21より下に没入している時間割合より大きく制御することもできる。これにより、物品1を移動床30の床面31により突き上げている時間より、物品1を固定床20の床面21に載せて滑らせる時間のほうが短くなり、物品1の排出量を低減できる。
【0059】
尚、移動床30の上昇加速度が小さい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が小さく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が小さくなり、物品1の排出量を低減できる。
【0060】
また、移動床30の上昇時速度の最大値は、搬送物品の重さや固定床配置角度や移動床配置角度θ等によって、所望の速度で安定搬送できるように適宜調整される。一例として、重量4〜10g程度の物品1としてのキャップをθ=15度で搬送する際における移動床30の上昇時速度は、好ましくは、40〜250mm/sec。更に好ましくは、50〜150mm/secである。
【0061】
上記好適値より小さいと、物品1に充分な搬送力を与えることが困難となり、上記好適値より大きいと、物品1の搬送速度も大きくなりすぎて、安定した搬送が不可能となる。
【0062】
次に、物品1の形態と物品搬送装置10Cによる当該物品1の搬送性の関係について説明する。物品搬送装置10Cの搬送対象物品1として、図13、図14に示した、円形キャップ1A、楕円形キャップ1Bを考慮するとき、円形キャップ1Aの最小寸法aを高さhとし、楕円形キャップ1Bの最小寸法aを楕円短径eとする。図13、図14の円形キャップ、楕円キャップにおいて、h、eが最小となる形状例の他に、もちろん円形キャップにおいて円の直径のほうがhよりも小さくなる場合もあるし、楕円キャップにおいてキャップ高さのほうがeよりも小さくなる場合もある。以下の説明はこれら物品1の最小寸法を基準とした説明である。
【0063】
(1)物品搬送装置10Cによる円形キャップ1A(楕円形キャップ1Bも概ね同じ)の搬送性(図27)
【0064】
円形キャップ1Aの良好な搬送性を確保するためには、相隣る移動床30の間隔xを、円形キャップ1Aの最小寸法a(h、e)の0.3〜2.0倍、より好ましくは0.4〜1.5倍とするのが良い(図27(A))。相隣る移動床30の間隔xが上記好適値より過大になると、移動床30が円形キャップ1Aを突き上げず、搬送できない(図27(B))。尚、1.0倍を超える範囲でも、上記好適値内であれば、上流からの物品1に押されることで搬送は可能である。
【0065】
相隣る移動床30の間隔xが上記好適値より過小になると、固定床20や移動床30が円形キャップ1Aの搬送に対する適度な障害物にならず、円形キャップ1Aは固定床20の床面21と移動床30の床面31の上を転がり続けて適度に一旦停止せしめられることがなく、安定排出できない円形キャップ1Aの比率が高くなる(図27(C)、(D))。
【0066】
(2)物品搬送装置10Cによる円形キャップ1A(楕円形キャップ1Bも概ね同じ)の方向整列性(図28)
【0067】
有天面の円形キャップ1Aは、重心側(天面側)が下位となるように方向整列されて排出される。
【0068】
図28において、固定床20または移動床30と円形キャップ1Aの接触部に描かれた点は回転中心rであり、移動床30に描かれた上向きの矢印の終点は、回転力の作用点fである。
【0069】
移動床30が最上昇位置にあるとき(図28(A))が、円形キャップ1Aの方向整列のための回転開始起点となる。
【0070】
移動床30が下降中(図28(B))、円形キャップ1Aは移動しつつ下流への搬送力が付与される。
【0071】
移動床30が最下降位置にあるとき(図28(C))、円形キャップ1Aの回転中心rは固定床20の頂点にあり、回転力の作用点fは移動床30の頂点にある。円形キャップ1Aには下流への搬送力が働いているため、僅かな回転力で回転できる。
【0072】
移動床30が上昇中(図28(D))、円形キャップ1Aは回転移動しつつ、円形キャップ1Aの回転中心rは下流の移動床30の頂点に移動し、回転力の作用点fは同一の移動床30上で下流側に移動する。
【0073】
移動床30が最上昇位置にあるとき(図28(E))、円形キャップ1Aの重心側の天面が下方となるように回転した後、回転は停止し、安定姿勢になる。
【0074】
移動床30が下降中(図28(F))、円形キャップ1Aは固定床20上で滑り移動し、回転しない。即ち、円形キャップ1Aの回転移動により、円形キャップ1Aの重心側を下方とする方向整列がなされた。
【0075】
(移動床30の凹凸部32による物品搬送動作)
物品搬送装置10Cにおいて、移動床30の床面31が凹凸部32を有するとき、物品1を物品搬送装置10の幅方向に分散させ、物品1を物品搬送装置10から概ね一定量ずつ排出できる。
【0076】
物品搬送装置10から排出させる物品1にそれらの重心を下方にする方向整列を行ないたいとき、移動床30の床面31を通過する物品1を凹凸部32のW方向の凹所に転倒させ、その重心を下方に方向整列させることができる。
【0077】
特に、図13、図14に示す如くの物品1の高さ(h)がその底面長さ(直径d、楕円短径e)に対し大きい場合(h>1.2d、h>1.2e)、移動床30が凹凸部32を有さないときには、図15に示す如く、物品1は同一向きのまま下流へ移動し、重心を下方にする方向整列は困難になる。移動床30が凹凸部32を有するときには、図16に示す如く、物品1が移動床30の床面31を通過するに際して凹凸部32の凹所に押し込み、物品1の重心のあるW方向へ傾斜して転倒し、重心を下方にする方向整列がなされる。
【0078】
物品搬送装置10Cにおいて、全ての移動床30の床面31が凹凸部32を有すると、物品搬送装置10Cの幅方向への物品1の分散が一層進み、物品1を物品搬送装置10Cからより一定量ずつ排出でき、高い分散搬送性を有する。
【0079】
物品1の重心を下方にする方向整列を行ないたいときには、物品搬送装置10Cにおける固定床20及び移動床30の設置範囲Lに対し、最下流部より(0.2〜0.4)×L程度上流の位置から上流部の好適範囲に、凹凸部32をもつ移動床30を設置することが好ましい。凹凸部32をもつ移動床30が物品搬送装置10の最下流部にあると、物品1が最下流部でW方向に傾斜し、物品1の排出姿勢が不安定になるからである。但し、W方向に傾斜したほうが次工程の物品扱いの点から好ましい際や、特殊な形状の物品でW方向に傾斜したほうが方向整列上都合が良い際などには、移動床30を最下流位置のみに設けたり、最下流位置とその上流位置に設けたりする場合もある。物品搬送装置10Cは、上述の好適範囲の全ての移動床30に凹凸部32を設けても良いし、凹凸部32をもつ移動床30と、凹凸部32をもたない移動床30を混在させても良い。より好ましくは、凹凸部32をもつ移動床30と、凹凸部32をもたない移動床30を交互に配置すると良く、凹凸部32をもたない移動床30により高い搬送力が付与され、凹凸部32をもつ移動床30により物品1の重心を下方にする方向整列が行なわれ、高能力な方向整列がなされる。
【0080】
図29の物品搬送装置10Cは、楕円短径(e)に対して高さ(h)が大きいキャップ1を搬送したものであり、凹凸部32をもつ移動床30を2回程度通過することにより、大部分(約83〜97%)の物品1を方向整列できる。方向整列の一例として、長さ300mmの移動床30に平均3個のキャップ1が並ぶ程度供給し、移動床30を1secサイクルで昇降させることにより、楕円短径(d)が36mm、楕円長径(図示せず)が51mm、高さ(h)が46mmのキャップ1を成功率約85%、約180個/minで方向整列することができた。
【0081】
物品搬送装置10Cにあっては、物品搬送装置10Aにおけると同様に、複数の固定床20の床面21の少なくとも一部の床面21に凹凸部22を設けるものでも良い。
【0082】
本発明の物品搬送装置にあっては、固定床20の床面21と移動床30の床面31を水平配置するもの、角度θ1、θ2で下り勾配配置するもののいずれであっても、固定床20の床面21に凹凸部22を設け、かつ移動床30の床面31に凹凸部32を設けることにより、物品1の分散搬送性、方向整列性を一層向上できる。
【0083】
図30は物品搬送装置の変形例を示す模式図である。図30(A)は複数の固定床20、移動床30が互いに水平配置されるもの(参考例)、図30(B)は複数の固定床20、移動床30が互いに下流側に向けて下り勾配配置されるもの(本発明例)である。移動床30の図25に示した角度βについて、他の移動床30のβより大きいβをもつ移動床、小さいβをもつ移動床、床面が水平となるβ=0の移動床を混在させたり、また他の移動床30のβに対し前後逆向きのβをもつ移動床を混在することで(不図示)、物品1の動きを一時停止したり乱すことによって、方向整列性が向上できることがある。同様に固定床20についても、固定床20の図25に示した角度αについて、他の固定床20のαより大きいαをもつ固定床、小さいαをもつ固定床、床面が水平となるα=0の固定床を混在させたり(不図示)、また他の固定床20のαに対し前後逆向きのαをもつ固定床を混在することで(不図示)、同様の効果が得られることがある。
【0084】
図31は物品搬送装置の変形例を示す模式図である。図31(A)は複数の固定床20、移動床30が互いに水平配置されるもの(参考例)、図31(B)は複数の固定床20、移動床30が互いに下流側に向けて下り勾配配置されるもの(本発明例)である。
【0085】
2つ以上の移動床30の床面31の同一部を結ぶ直線部Lを超える高さの床面をもつ移動床を混在したり、又は低い高さの床面をもつ移動床を混在することにより、物品1の動きを一時停止したり乱すことによって、方向整列性が向上できることがある。同様に固定床20についても、2つ以上の固定床20の床面21の同一部を結ぶ直線部を超える高さの床面をもつ固定床を混在したり、又は低い高さの床面をもつ固定床を混在することにより(不図示)、同様の効果が得られることがある。
【0086】
図32は固定床又は移動床の凹凸部の形状の変形例を示す模式図である。例えば、移動床30の凹凸部32を形成する床面31において、図32(A)(斜視図)、(B)(正面図)、(C)(平面図)、(D)(側面図)に示す如く、搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させ、搬送力を高めることができる。固定床20の凹凸部22を形成する床面21においても同様である。
【0087】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、固定床及び移動床の全ての床面に凹凸部を設けても良い。
【0088】
また、本発明で扱う物品についても、詳細に説明を行なったキャップやその類似形状品に限られるものではない。例えば、軟膏、ハンドクリーム、ヘア用ワックス等を詰めるジャー容器用の直径に対して高さの低いキャップ、直径に対して高さの低い中栓、円形や角張った桶状の物品、単に窪みのある物品などの重心位置に偏りのあるもの等が挙げられる。更に、窪みを有さない円柱、直方体、厚みのある板状体等の中実品でも重心に偏りのあるもの、重心が高さ方向のほぼ中央にある物品でも、その天面と底面にはアールや面取りの状態で差があるもの等、様々な物品に対して方向整列が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は参考例1の物品搬送装置の移動床が没入している状態を示す斜視図である。
【図2】図2は物品搬送装置の移動床が突出している状態を示す斜視図である。
【図3】図3は物品搬送装置を示す正面図である。
【図4】図4は移動床を示す模式図である。
【図5】図5は移動床を示す模式図である。
【図6】図6は移動床を示す模式図である。
【図7】図7は移動床を示す模式図である。
【図8】図8は移動床を示す模式図である。
【図9】図9は移動床の他の例を示す模式図である。
【図10】図10は移動床の昇降動作を示す模式図である。
【図11】図11は移動床の固定床に対する没入状態を示す模式図である。
【図12】図12は物品搬送装置による物品搬送状態を示す模式図である。
【図13】図13は円形キャップを示す模式図である。
【図14】図14は楕円形キャップを示す模式図である。
【図15】図15は凹凸部を備えない移動床を通過する物品を示す模式図である。
【図16】図16は凹凸部を備える移動床を通過する物品を示す模式図である。
【図17】図17はキャップの搬送状態を示す模式図である。
【図18】図18は参考例2の物品搬送装置の移動床が没入している状態を示す斜視図である。
【図19】図19は物品搬送装置の移動床が突出している状態を示す斜視図である。
【図20】図20はキャップの搬送状態を示す模式図である。
【図21】図21は参考例3の物品搬送装置による物品搬送状態を示す模式図である。
【図22】図22は本発明例の物品搬送装置の移動床が突出している状態を示す模式図である。
【図23】図23は移動床の昇降動作を示す模式図である。
【図24】図24は移動床の固定床に対する没入状態を示す模式図である。
【図25】図25は固定床と移動床の角度や配置の関係を示す模式図である。
【図26】図26は物品搬送装置による物品搬送状態を示す模式図である。
【図27】図27は移動床の間隔と搬送性の関係を示す模式図である。
【図28】図28は物品搬送時の方向整列動作を示す模式図である。
【図29】図29はキャップの搬送状態を示す模式図である。
【図30】図30は物品搬送装置の変形例を示す模式図である。
【図31】図31は物品搬送装置の変形例を示す模式図である。
【図32】図32は固定床又は移動床の凹凸部の形状の変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0090】
1 物品
10、10A、10B、10C 物品搬送装置
15 昇降駆動装置
20 固定床
21 床面
22 凹凸部
30 移動床
31 床面
32 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定床の各個を搬送方向に沿って並置し、複数の移動床の各個を各固定床に対し搬送方向の側傍に隣接配置するとともに、各移動床を同時にそれらの床面が隣接する固定床の床面に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返すことで物品を下流に送る物品の分散整列方法であって、
複数の各固定床若しくは各移動床の床面を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置し、
固定床若しくは移動床の少なくとも一部の床面に、搬送方向に直交する幅方向に沿って凹凸をなす凹凸部を設け
複数個の物品を供給し、各物品を凹凸部の幅方向の凹所に転倒させることにより、各物品の重心を下方に方向整列させるとともに、各物品を搬送方向に直交する幅方向に分散させて一定量ずつ排出させる物品の分散整列方法
【請求項2】
全ての各移動床の床面が互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように配置した、請求項1記載の物品の分散整列方法
【請求項3】
固定床及び移動床のうち凹凸部を有しないものの床面を搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜させた、請求項1又は2記載の物品の分散整列方法
【請求項4】
凹凸部を設けた固定床若しくは移動床の床面を搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した請求項1〜のいずれかに記載の物品の分散整列方法
【請求項5】
凹凸部を設けた移動床若しくは固定床と凹凸部を設けない固定床若しくは移動床とを交互に配置した、請求項1〜のいずれかに記載の物品の分散整列方法
【請求項6】
固定床及び移動床の全ての床面に凹凸を設けた請求項1又は2記載の物品の分散整列方法
【請求項7】
凹凸部を設けた移動床面と凹凸部を設けた固定床面とを相互に隣接させ、その前後に配する固定床面若しくは移動床面は何れも凹凸部を設けないものとした請求項1〜4のいずれかに記載の物品の分散整列方法
【請求項8】
凹凸部の相隣る頂点の高さに差をもたせた、請求項1〜7のいずれかに記載の物品の分散整列方法。
【請求項9】
凹凸部が三角形状である請求項1〜8のいずれかに記載の物品の分散整列方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2009−7174(P2009−7174A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228652(P2008−228652)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【分割の表示】特願2007−121902(P2007−121902)の分割
【原出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】