説明

物品の洗浄方法

【課題】
人体と接触することによって皮脂等の汚れが付着した物品を、安全に、簡便にかつ効果的に洗浄する方法を提供する。
【解決手段】
蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素を含有し、界面活性剤を含有しないマイクロバブル洗浄用組成物、並びにマイクロバブルを含有する洗浄液を用いることを特徴とする、物品の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の洗浄方法、詳しくは、人体と接触することによって皮脂等の汚れが付着した物品を簡便に効果的に洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計、アクセサリー、眼鏡等のように人が直に身につけるものや、人が触れて使用する物品は、汗や皮脂が付着して汚れやすく、カビが発生する場合もある。
このような汚れに対しては、通常、洗剤等を用いて、スポンジやブラシで拭いたりこすったりする洗浄が行われる。
しかしながら、腕時計の金属製ベルト等のように、特に細かく小さく編み込まれた形状を有するものは、表面を拭いただけでは、隙間の奥に入り込んだ内部の汚れまでは除去することができず、すぐにまた発生したカビが表面にまで及んで黒くなってくる場合がある。
【0003】
従来、このような隙間の奥の汚れを洗浄する方法としては、超音波による洗浄方法が知られている。しかしながら、超音波洗浄では、細かい振動が連続して発生し、物品に衝撃を与えるため、たとえ防水加工が施されていても、精密機器である時計本体を超音波洗浄機の水槽内に浸けて、超音波の衝撃にさらすことは避けるべきである。さらに、時計本体のガラス(風防)や裏蓋にひびや傷等が生じていたり、ゴムパッキンが劣化している場合には、超音波の細かい振動によりそこから水が入って、時計が使用不可能になるおそれもある。
よって、腕時計の金属製ベルトを超音波洗浄する場合等においては、時計本体が超音波洗浄機の水槽に浸からないようにしたり、ベルトを時計本体から外してから洗浄する等の注意を要する。
【0004】
本発明に関連して、特許文献1には、蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素を含有するマイクロバブル洗浄用組成物、及びマイクロバブルを含有する洗浄液を用いて洗浄することを特徴とする、人体又は動物のマイクロバブル洗浄方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−94726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、人体と接触することによって皮脂等の汚れが付着した物品を、安全に、簡便にかつ効果的に洗浄する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素を含有するマイクロバブル洗浄用組成物、及びマイクロバブルを含有する洗浄液を用いて、細かく小さく編み込まれた(メッシュ状の)形状を有し、使用により黒ずんでしまった腕時計の金属製ベルトの洗浄を試みたところ、ベルトの黒ずみが消え、ベルトの内部まで効果的に清浄できることを見出し、その知見を一般化することにより本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(5)に記載の物品の洗浄方法が提供される。
(1)蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素を含有し、界面活性剤を含有しないマイクロバブル洗浄用組成物、並びにマイクロバブルを含有する洗浄液を用いることを特徴とする、物品の洗浄方法。
(2)人体と接触することによって汚れが付着した物品の洗浄方法であることを特徴とする(1)に記載の洗浄方法。
【0009】
(3)アクセサリー、眼鏡、腕時計のベルト、万年筆、爪切り、鋏、ボタン、コイン、医療器具、レンズ、食器、おもちゃ及び実験器具からなる群より選ばれる物品の洗浄方法であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の洗浄方法。
(4)蛋白分解酵素の配合量が、組成物全体に対して0.01〜0.5重量%であり、脂肪分解酵素の配合量が、組成物全体に対して0.1〜1.0重量%であるマイクロバブル洗浄用組成物を用いる(1)〜(3)のいずれかに記載の洗浄方法。
【0010】
(5)さらに、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属ハロゲン化物、及びホウ素のアルカリ金属塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属塩を含有するマイクロバブル洗浄用組成物を用いる(1)〜(4)のいずれかに記載の洗浄方法。
(6)アルカリ金属塩の配合量が、組成物全体に対して80〜99.5重量%であるマイクロバブル洗浄用組成物を用いる(5)に記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人体と接触することによって皮脂等の汚れが付着した物品、特に、細かく小さく編み込んだ形状を有する、腕時計の金属製ベルト等を、安全に、簡便にかつ効果的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の洗浄方法を実施するための装置の一例の構成を示す図である。
【図2】本体1の構成を示す図である。
【図3】実施例1における、腕時計のバンドを洗浄する状態の写真図である。
【図4】実施例1における、腕時計を洗浄する状態の写真図である。
【図5】実施例1における、腕時計のバンドを洗浄する前のマイクロバブル入りの洗浄用組成物の水溶液の写真図である。
【図6】実施例1における、腕時計のバンドを洗浄した後のマイクロバブル入りの洗浄用組成物の水溶液の写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の物品の洗浄方法は、蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素を含有し、界面活性剤を含有しないマイクロバブル洗浄用組成物、並びにマイクロバブルを含有する洗浄液を用いることを特徴とする。
【0014】
本発明の洗浄方法の対象(被洗浄物)となる物品は、水に濡れてもよいものであれば、特に制約はないが、人体と接触することによって皮脂等の汚れが付着した物品であるのが好ましい。
【0015】
物品としては、具体的には、指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアス、イヤリング、ブローチ、タイピン、カフス、髪留め、ストラップ等のアクセサリー;眼鏡、腕時計のベルト、万年筆、爪切り、鋏等の日用品;ボタン;コイン;ピンセット等の医療器具;レンズ;食器;おもちゃ;実験器具;等が挙げられる。
【0016】
本発明の洗浄方法においては、本発明の効果をより発揮することができることから、これらの中でも、細かく入り組んだ形状を有し、隙間の奥に汚れが付着すると、それを除去するのが困難となるような物品が好ましい。
そのような物品としては、腕時計の金属製バンド〔特に、細かく小さく編み込まれた形状(メッシュ状)を有する金属製バンド〕、複雑なデザインを有するアクセサリー等が挙げられる。
【0017】
本発明の洗浄方法によれば、布やブラシで擦ったり、水流では落ちにくい、隙間の奥にまで浸透した汚れを、安全に、簡便にかつ効果的に除去することができる。
なかでも、後述するように、腕時計の金属製バンドは、時計本体が日常防水加工が施されたものであれば、時計本体をバンドから外すことなく、腕時計ごと洗浄することができるため、特に好ましい。
【0018】
〈マイクロバブル洗浄用組成物〉
本発明に用いるマイクロバブル洗浄用組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある。)は、蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素を含有し、界面活性剤を含有しないことを特徴とする。
【0019】
蛋白分解酵素(プロテアーゼ)は、ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素の総称である。
蛋白分解酵素は、特有の作用最適pHを有し、酸性プロティナーゼ、中性プロティナーゼ、アルカリ性プロティナーゼに分類することができる。本発明においては、特に制限なく、これら蛋白分解酵素のいずれも使用することができる。
【0020】
蛋白分解酵素としては、特に制限されないが、例えば、キモトリプシン(chymotrypsin)、スブチリシン(subtilisin)、ペプシン(pepsin)、カテプシンD(cathepsin D)、サーモリシン(thermolysin)、パパイン(papain)、カスパーゼ(caspase)、ブロメライン(bromelain)、アクチニジン(actinidin)、フィチン(ficin)、トリプシン(trypsin)、パンクレアチン(Pancreatin)等が挙げられる。
これらの蛋白分解酵素は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
蛋白分解酵素の具体例としては、商品名で、プロチンAC10F(大和化成社製)、サビナーゼ、アルカラーゼ、エスペラーゼ、デュラザイム(以上、ノボインダストリー社製)、マキサペム、マキサターゼ(ギスト・ブロカーズ社製)、ビオプラーゼ(ナガセ生化学工業社製)等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、優れた洗浄効果を得る上では、少なくともパンクレアチンを用いるのが好ましく、パンクレアチンと他の蛋白分解酵素を組み合わせて用いるのがより好ましい。
【0023】
蛋白分解酵素の配合量は、特に限定されないが、組成物全体に対して、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは、0.2〜0.3重量%である。
【0024】
本発明の組成物に用いる脂肪分解酵素は、脂肪を加水分解してグリセリンと脂肪酸に分解する酵素であり、リパーゼともいう。
【0025】
脂肪分解酵素としては、特に制限されないが、例えば、Rhizopus arrhizus起源のリパーゼ、Aspergillus niger起源のリパーゼ、Rhizopus delemar等のカビ由来のリパーゼ;Candida cylindracea等の酵母由来のリパーゼ;Pseudomonas属等の細菌由来のリパーゼ;プレガストリック・リパーゼ又はオーラル・リパーゼ等反芻動物の哺乳期の消化管組織に存在するリパーゼ;ブタ肝臓リパーゼ;等が挙げられる。
これらの脂肪分解酵素は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。より優れた洗浄効果を得る上では、二種以上の脂肪分解酵素を用いることが好ましい。
【0026】
脂肪分解酵素の具体例としては、商品名で、スミチームNLS(新日本化学工業社製)、リパーゼM「アマノ」10、リパーゼM「アマノ」10、リパーゼG「アマノ」50、リパーゼF−AP15、リパーゼAY「アマノ」30G、リパーゼR「アマノ」G、リパーゼT「アマノ」、リパーゼMER「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、ピカンターゼR8000、ピカンターゼA(以上、ロビン社製)、トヨチーム・LIP(東洋紡績社製)、リリパーゼA−10FG、リリパーゼAF−5(ナガセケムテックス社製)、グリンドアミルEXEL639(ダニスコ カルタージャパン社製)、クリアーレンズリポ、リポラーゼ、ライペックス、リポザイム、レジナーゼ、パラターゼ、グリーゼックス、リポパン、ノボザイム435、レシターゼ(ノボザイムズ社製)、リパーゼMY、リパーゼOF、リパーゼPL、リパーゼQLM、リパーゼAL、ホスホリパーゼD(名糖産業社製)、エンチロンAKG(洛東化成工業社製)、ホスホリパーゼA1(三共ライフテック社製)、リポモッド699L、リゾマックスPF(ジェネンコア協和社製)等が挙げられる。
【0027】
脂肪分解酵素の配合量は、組成物全体に対して、通常0.1〜1.0重量%、好ましくは、0.3〜0.8重量%である。
【0028】
本発明の組成物は、マイクロバブルのより優れた洗浄効果を得る観点から、界面活性剤を含有しない。界面活性剤を含有させると、過剰に泡立ち、かえって洗浄効果が低下する場合がある。
一方、超音波による洗浄方法においては、通常、表面張力を打ち消すために界面活性剤が用いられるため、すすぎの操作が必須となる。
本発明の洗浄方法においては、界面活性剤を使用しないため、泡立ちがなく、すすぎがほとんど不要であるため、操作が簡便で、環境に優しい。
【0029】
本発明の組成物は、上述した、蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素に加えて、さらにアルカリ金属塩を含有するのが好ましい。
アルカリ金属塩は、洗浄効果を高め、水(温水)を柔らかく(軟水化)し、また、増量剤としての役目を有する。
【0030】
用いるアルカリ金属塩としては、特に制約されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等のアルカリ金属硫酸塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物;四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸ナトリウム等のホウ素のアルカリ金属塩;ケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩;硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化物;硝酸ナトリウム等のアルカリ金属硝酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;チオ硫酸ナトリウム等のアルカリ金属のチオ硫酸塩;等が挙げられる。
これらのアルカリ金属塩は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明の組成物においては、これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属ハロゲン化物、及びホウ素のアルカリ金属塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するのが好ましく、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びホウ砂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するのがより好ましく、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム及びホウ砂を含有するのが特に好ましい。
【0032】
アルカリ金属塩の配合量は、通常80〜99.5重量%、好ましくは95〜99重量%である。
本発明の洗浄用組成物が、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム及びホウ砂を含有する場合、炭酸水素ナトリウムの配合量は、組成物全体に対して、好ましくは10〜35重量%、特に好ましくは20〜30重量%であり、硫酸ナトリウムの配合量は、組成物全体に対して、好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%であり、ホウ砂の配合量は、組成物全体に対して、好ましくは10〜35重量%、特に好ましくは20〜30重量%である。
【0033】
本発明の組成物は、さらに、シリカ系乾燥剤を含有するのが好ましい。
乾燥剤は、蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素の力価を安定させる役目を有する。シリカ系乾燥剤としては、サイリシア(多孔質微粉末シリカ)等が挙げられる。
シリカ系乾燥剤の配合量は、通常0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.2重量%である。
【0034】
本発明の組成物には、さらに、必要に応じてその他の成分を添加することができる。
その他の成分としては、上記アルカリ金属塩以外の無機塩、香料、着色剤、防腐剤、抗菌剤、粘性付与剤、薬効成分、その他の洗浄剤に通常使用される添加剤が挙げられる。
【0035】
アルカリ金属塩以外の無機塩としては、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩;炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等のカルシウム塩;ミョウバン;等が挙げられる。これらの無機塩の配合量は、本発明のマイクロバブル洗浄用組成物の奏する効果が損なわれない範囲で、適宜定めることができる。
【0036】
香料としては、例えば、アビエス油、アンゲリカ油、アニス油、バルサム・コパイバ、バジル油、ベイ油、ベルガモット油、バーチ油、ローズ・ウッド油、カヤブテ油、カシア油、アカシア油、シダーウッド油、カモミル油、桂皮油、桂葉油、シトロネラ油、エレミ油、ユーカリ油、ゼラニウム油、ひば油、ひのき油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、ミント油、ネロリ油、ナツメグ油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、パルマローザ油、ポライ油、ローズ油、ローズマリー油、サンダルウッド油、ベチバー油、イランイラン油等の植物精油;リモネン、テルピノーレン、p−サイメン、9−デセノール、ムゴール、ミルセノール、ボルネオール、ベチベロール、t−ブチルシクロヘキサノール、アニソール、アネトール、サフロール、シトラール、シトロネラール、桂皮アルデヒド、アニスアルデヒド、サイクラメンアルデヒド、シトラール、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アセトナフトン、ネロン、ニトロムスク等の合成ムスク、酢酸ゲラニル、酢酸ボルニル、酢酸フェニルエチル、酢酸ミルセニル、安息香酸メチル、桂皮酸メチル、メチルアンスラニル酸メチル、合成オークモス、クマリン等の合成香料;等が挙げられる。
香料の配合量は、通常0〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%である。
【0037】
着色剤としては、染料、天然色素、無機顔料等のいずれもが使用できる。
染料としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色213号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色201号、黄色201号の(1)、黄色203号、だいだい色205号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、青色1号、青色2号、青色205号、紫色201号、褐色201号等が挙げられる。
【0038】
天然色素としては、クロロフィル類、クチナシ類、フラボノイド系、カロチノイド系、キノン系、リボフラビン類が挙げられる。
【0039】
無機顔料としては、二酸化チタン、タルク、カオリン、雲母類、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
これらの着色剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
着色剤の配合量は、通常0〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.2重量%である。
【0040】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
【0041】
粘性付与剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物を調製する方法は、特に限定されない。例えば、上記蛋白分解酵素、脂肪分解酵素、所望によりその他の成分からなる混合物を、公知の撹拌装置、例えば、バートオーミキサー、ナウターミキサー、万能混合攪拌機、リボンミキサー、V字型混合機等を使用して、均一に混合・撹拌することにより粉末体を調製する方法を採用できる。
【0043】
本発明の組成物を使用することにより、物品にこびりついた皮脂やたんぱく質やそれから発生したカビ等を短時間で確実に除去することができる。
また本発明の組成物は、人に対する刺激が少ないため、触れても問題はなく、安心して使用することができる。
【0044】
洗浄液の調製に用いる本発明の組成物の使用量は、水6〜10リットルに対し、通常1〜10g、好ましくは3〜7gである。
【0045】
〈マイクロバブル〉
マイクロバブルは、直径が50μm以下の微細な気泡であり、通常の気泡と異なり、水中で縮小し、消滅(圧壊)する性質を有する。マイクロバブルは、圧壊するときの衝撃波により汚れを除去することができる。また、マイクロバブルはマイナスイオンを帯びており、プラスイオンである汚れと結びついて浮上しながら水中で消滅し、汚れを水面へと浮かび上がらせることができる。マイクロバブルを含有する洗浄液を物品の洗浄に用いると、マイクロバブルは微細なため、物品が入り組んだ形状であっても、内部にまで到達でき、汚れ等を吸着・除去することができる。
【0046】
マイクロバブルを含有する洗浄液を得るためには、通常、後述するマイクロバブル発生装置を用いる。水は表面張力が高いため、通常のバブリングでは100μm以下の気泡を生成させることは不可能である。
【0047】
マイクロバブル発生装置としては、マイクロバブルを発生させることができる装置であれば、特に制約はなく、公知のものを用いることができる。例えば、ベンチュリー管(一部がくびれた構造を有する管)、又はオリフィス板(中心に孔の開いたドーナツ状の板)を内蔵した吐出口内でマイクロバブルを発生させる装置(特開2006−116518号公報、特願2006−77553号等);液体中に配置した本体パイプ内に気体を混合した液体を吐出し、本体パイプ内の下流側に配置した衝突壁に衝突させてマイクロバブルを発生させる装置(特開2005−334869号公報);空気ポンプ等の空気圧送源で、加圧した空気を微細目の網部材又は多孔質板等を通して水中に吹き出してマイクロバブルを発生させる装置(特開2006−68631号公報等);渦巻き水流を作り、この水流で空気を剪断してマイクロバブルを発生させる装置(特開2003−126665号公報等);等が挙げられる。これらの中でも、特願2006−77553号に記載されたマイクロバブル発生装置を用いるのが好ましい。
【0048】
〈洗浄方法〉
本発明の洗浄方法は、上述した本発明の組成物及びマイクロバブルを含有する洗浄液を用いることを特徴とする。
具体的には、清浄な水(又は温水)に適量の本発明の組成物を添加して洗浄液を調製し、この洗浄液にマイクロバブルを含有させたものを用いて、物品を洗浄するものである。
【0049】
前記本発明の組成物及びマイクロバブルを含有する洗浄液を用いて物品を洗浄する方法としては、例えば、
(i)清浄な水(又は温水)に適当量の本発明の組成物を添加して得られる洗浄液をタンク等の容器に入れる。この洗浄液を適当な方法でマイクロバブル発生装置に導入し、該装置内で洗浄液にマイクロバブルを含有させ、このマイクロバブルを含有する洗浄液を物品に向けてシャワーノズルから吐出させて、物品を洗浄する方法、
(ii)洗浄槽内に清浄な水(又は温水)を入れ、ここに適当量の本発明の組成物を添加して洗浄液とする。次いで、この洗浄液中に、マイクロバブル発生装置に連結されたノズルからマイクロバブルを含む水(又は温水)を送り込んで、マイクロバブルを含有する洗浄液を調製し、この洗浄液内に物品を浸漬させて洗浄する方法、
(iii)前記(i)の方法において、シャワーノズルから吐出したマイクロバブルを含有する洗浄液によって物品を洗浄する際、洗浄槽内又は洗浄槽上で物品を洗浄して、洗浄後の洗浄液がタンク等の容器(洗浄槽)に戻るように(洗浄液が循環するように)、物品を洗浄する方法、
等が挙げられる。
【0050】
(iii)の方法を採用する場合においては、洗浄液をフィルターを通過させて汚染物等を除去しながら循環させるのが、洗浄液を効率よく利用できる上で好ましい。
【0051】
また、(i)の方法においては、特に洗浄槽を設置する必要がないため、流し等において、マイクロバブルを含有する洗浄液をシャワーノズルから物品に向けて吐出するだけで、簡便に物品の洗浄を行うことができる。
【0052】
より具体的に、図1に示すごとき装置を用いて物品を洗浄する方法を説明する。
図1に示す洗浄装置は、洗浄する物品を入れる洗浄槽20とマイクロバブル発生部とからなる。
【0053】
マイクロバブル発生部の拡大図を図2に示す。図2に示すマイクロバブル発生部10は、本体1、洗浄槽20から洗浄液を本体1内に輸送する吸引管4、洗浄液中のゴミ等を除去するフィルターユニット5、洗浄液及び空気を吸引するスクリューポンプ12、スクリューポンプ12の入口12aに逆止弁13を介して連結されたエアフィルタ14、主に余分な空気を外部に排出する気液分離装置15、本体1から洗浄槽20に洗浄液を輸送する吐出管2、マイクロバブルを発生させるためのオリフィス板を内蔵するノズルユニット7、並びに、吐出管2の先端に配置され、マイクロバブルを含有する洗浄液を吐出する吐出口8から構成されている。
【0054】
先ず、洗浄槽20に水(又は温水)を入れる。ここに、本発明の組成物を、洗浄槽中の水5〜10リットルにつき、5〜6g投入して軽く撹拌する。
【0055】
ここで用いる洗浄用組成物は、具体的には、局方ホウ砂:25重量%、炭酸水素ナトリウム:25重量%、硫酸ナトリウム:50重量%、パンクレアチン:0.1重量%、プロチンAC:0.15重量%、リパーゼ:0.5重量%、サイリシア:0.15重量%、香料:0.2重量%、色素:0.12重量%の各成分を、公知の撹拌装置により撹拌混合して調製したものである。
【0056】
次に、吸引管4の先端を洗浄槽20の底部に設置する。スクリューポンプ12を作動させることにより、洗浄槽20内の洗浄液は吸引管4からフィルターユニット5を通過してスクリューポンプ12内に導入される。それと同時に、エアフィルタ14を介して適量の空気がスクリューポンプ12内に吸引される。
【0057】
洗浄液と空気が導入されたスクリューポンプ12内では、内部で回転するインペラーによって気泡が剪断され微細化されることによって洗浄液中に空気が溶解する。空気が溶解した洗浄液は未溶解の気泡とともにスクリューポンプ12の出口12bから吐出され、気液分離装置15に送られる。この気液分離装置15では、洗浄液への空気の溶解がさらに促されると共に、未溶解の空気が気液分離装置15の上部に設置されたリリーフ弁15aから大気中に排出される。
【0058】
多量の空気が溶解した洗浄液は、気液分離装置15から吐出管2を通って、洗浄槽20の側面底部に沈めた吐出管2の先端に取り付けた吐出口8から吐出され、洗浄槽20に戻される。吐出口8は、洗浄槽20の側面や底部に予め設けられた導入部を介して接続されていてもよい。
【0059】
吐出口8には、ノズルユニット7が取り付けられている。ノズルユニット7には、複数枚のオリフィス板が直列に内蔵されており、オリフィス板を洗浄液が通過するごとに、洗浄液が圧縮膨張され、その過程で洗浄液中に溶解していた空気がマイクロバブルとなって洗浄液中に発生する。そして、そのマイクロバブルを含有する洗浄液が吐出口8から洗浄槽中に吐出される。
【0060】
マイクロバブルを含有する洗浄液が吐出された洗浄槽は、微小な気泡で満たされ、白濁しているかのように見える。マイクロバブルは浮力が小さいため、すぐには水面に上昇せず長時間水中を浮遊するので、効果が持続する。
【0061】
洗浄槽20内の洗浄液がマイクロバブルで満たされたら、スクリューポンプ12の運転を停止してもよいし、運転を継続してもよい。この洗浄槽20内に物品を浸ける。
【0062】
洗浄に要する時間は、マイクロバブル洗浄用組成物の種類や物品の形状、大きさ等にもよるが、通常1分〜数十分程度、好ましくは5〜10分である。
【0063】
洗浄する温度は、特に限定されないが、物品に優しく、優れた洗浄効果が得られる観点から、20〜40℃が好ましい。常温でも十分な洗浄力を発揮できるため、経済的である。
【0064】
なお、マイクロバブル発生部10の本体1内、又は洗浄槽20の適当な場所には、ヒーターユニットを設けてもよい。該ヒーターユニットにより洗浄液を加熱し、洗浄槽20内の洗浄液や吐出口8から吐出される洗浄液の温度を、設定した適温になるように温度制御することができる。
【0065】
マイクロバブルを含有する洗浄液が物品に接触すると、先ず、洗浄槽中に投入した本発明の洗浄用組成物中の蛋白分解酵素、脂肪分解酵素が効果的に働き、物品の表面にこびりついた皮脂等が分解除去される。また、洗浄液に含まれるマイクロバブルが物品の表面で弾けてパルス衝撃が発生し、この超微振動によって、付着した汚れ等を効果的に除去することができる。
さらに、細かく入り組んだ形状を有する物品であっても、マイクロバブルが容易に隙間の奥にまで入り込み、奥の汚れを有効に除去することができる。
【0066】
本発明の洗浄方法によれば、ブラシやスポンジ等で力を入れてこする必要がないため、物品を傷めることがなく、また、隙間の奥の汚れまでも、短時間で安全に確実に簡便に除去することができる。
【0067】
また、超音波洗浄方法と異なり、細かい振動が連続して発生して物品に衝撃を与えるということがない。そのため、腕時計のバンドを洗浄する場合であっても、時計が日常防水加工が施されたものであれば、時計本体をバンドから外したり、時計本体が水槽中に浸からないように気を付ける等の煩わしさなく、腕時計ごと洗浄液に浸けたり、シャワーノズルからマイクロバブルを含有する洗浄液をかけて洗浄することができる。
【0068】
さらに、超音波洗浄方法により眼鏡を洗浄する場合、細かい振動によりネジが緩んでしまう場合がある。眼鏡のネジは小さいため、外れると紛失しやすいが、本発明の洗浄方法においては、そのような心配がない。
【0069】
洗浄後は、必要に応じて洗浄液を軽く水で流し乾燥させる。本発明の洗浄方法においては、界面活性剤を用いないため、すすぎを行う必要がほとんどない。
乾燥方法としては、特に制約はなく、物品にもよるが、温風乾燥、自然乾燥、布等で水分を拭き取る等の方法が挙げられる。
【0070】
洗浄ができたことは、マイクロスコープ等で物品を観察することにより、汚れやカビ等が除去されていることで確認することができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
図1に示す装置を使用して、マイクロバブル入りの洗浄用組成物の水溶液を調製し、この水溶液をコップの中に入れ、金属製時計バンドを該水溶液中に浸漬させた。
【0073】
蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素を含有するマイクロバブル洗浄用組成物としては、以下の組成のものを用いた。組成物の使用量は、お湯5〜10リットルにつき、5〜6gとした。洗浄時間は5分、温水温度は30℃とした。
【0074】
〈洗浄用組成物〉
局方ホウ砂:ca.25重量%、炭酸水素ナトリウム:ca.25重量%、硫酸ナトリウム:ca.50重量%、パンクレアチン:0.1重量%、プロチンAC:0.15重量%、リパーゼ:0.5重量%、サイリシア:0.15重量%、黄色系着色料:微量
【0075】
腕時計のバンド部分を洗浄している状態の写真を図3に示す。また、図3に示す腕時計の洗浄前と洗浄後の、マイクロバブル入りの洗浄用組成物の水溶液の写真を図5、図6にそれぞれ示す(図3、図5、図6のカラー写真を別途提出する。)。図6の写真から、洗浄後にはバンドの隙間の奥の方にこびりついていた黒い汚れが洗浄除去されていることがわかる。
【0076】
(実施例2)
図1に示す装置を使用して、マイクロバブル入りの洗浄用組成物の水溶液を調製し、この水溶液をシャワーノズルから吐出させて、腕時計を約5分間洗浄した。洗浄する状態の写真を図4に示す。洗浄後にはバンドの隙間の奥の方にこびりついていた黒い汚れが洗浄除去されていた(図4のカラー写真を別途提出する。)。
【符号の説明】
【0077】
1・・・本体
2・・・吐出管
4・・・吸引管
5・・・フィルターユニット
7・・・ノズルユニット
8・・・吐出口
10・・・マイクロバブル発生部
12・・・スクリューポンプ
12a・・・スクリューポンプ入口
12b・・・スクリューポンプ出口
13・・・逆止弁
14・・・エアフィルター
15・・・気液分離装置
15a・・・リリーフ弁
20・・・洗浄槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白分解酵素及び脂肪分解酵素を含有し、界面活性剤を含有しないマイクロバブル洗浄用組成物、並びにマイクロバブルを含有する洗浄液を用いることを特徴とする、物品の洗浄方法。
【請求項2】
人体と接触することによって汚れが付着した物品の洗浄方法であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
アクセサリー、眼鏡、腕時計のベルト、万年筆、爪切り、鋏、ボタン、コイン、医療器具、レンズ、食器、おもちゃ及び実験器具からなる群より選ばれる物品の洗浄方法であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
蛋白分解酵素の配合量が、組成物全体に対して0.01〜0.5重量%であり、脂肪分解酵素の配合量が、組成物全体に対して0.1〜1.0重量%であるマイクロバブル洗浄用組成物を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項5】
さらに、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属ハロゲン化物、及びホウ素のアルカリ金属塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属塩を含有するマイクロバブル洗浄用組成物を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項6】
アルカリ金属塩の配合量が、組成物全体に対して80〜99.5重量%であるマイクロバブル洗浄用組成物を用いる請求項5に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107128(P2012−107128A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257205(P2010−257205)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(506095777)有限会社ターレス (7)
【出願人】(397016770)東和酵素株式会社 (6)
【Fターム(参考)】