物品の滅菌処理方法、物品の滅菌処理および保存方法、滅菌処理装置、並びに滅菌処理および保存用容器
【課題】 薬液を用いて所要の物品に滅菌処理を施すに際して、滅菌処理後の乾燥処理を比較的短時間で行え、また、滅菌処理後の物品の滅菌状態を比較的容易かつ確実に維持できるようにする。
【解決手段】 滅菌処理対象の物品を容器1内に収納するセット工程と、薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、容器内から薬液を排出させる薬液排出工程と、洗浄水で物品を洗浄する第1洗浄工程と、アルコールで物品を洗浄する第2洗浄工程と、容器内からアルコールを排出させるアルコール排出工程と、容器内に所定の気体を送給して物品を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【解決手段】 滅菌処理対象の物品を容器1内に収納するセット工程と、薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、容器内から薬液を排出させる薬液排出工程と、洗浄水で物品を洗浄する第1洗浄工程と、アルコールで物品を洗浄する第2洗浄工程と、容器内からアルコールを排出させるアルコール排出工程と、容器内に所定の気体を送給して物品を乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液を用いて物品の滅菌処理を行う滅菌処理方法、滅菌処理および保存方法、滅菌処理装置、並びに滅菌処理および保存用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば医療分野において所要の医療用具等を滅菌処理する場合など、所要の物品に滅菌処理を施す場合、例えば高圧水蒸気や過酸化水素/プラズマガス等を用い、その熱や圧力を利用して滅菌処理する方法が一般に幅広く採用されている。
【0003】
しかしながら、熱や圧力の変化により悪影響を受ける物品の場合には、これらの方法を適用することはできない。
例えば、超音波を利用して被験者の腹部エコー画像等を得る際などに用いられる所謂エコープローブの中には、立体的なエコー画像を得る等のために、プローブ本体内部にオイルを内包したタイプのものが知られている。このようなオイル内包タイプのエコープローブに滅菌処理を施す場合、熱や圧力を利用した滅菌処理方法を採用したのでは、内部のオイルが膨張/収縮するため、エコープローブの特性に大きな悪影響を及ぼすことになる。
【0004】
このような熱や圧力の変動を伴うことなく滅菌処理を行う方法としては、滅菌作用を有する薬液を用いる方法が知られている。例えば特許文献1には、槽内に内視鏡を入れておき、洗浄液または消毒液を槽内に供給して内視鏡を洗浄または消毒するようにした内視鏡洗浄消毒装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−192641号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような薬液を用いた滅菌処理では、槽(容器)内に物品を定置しておき、この容器内に薬液を供給し、一定時間以上にわたって物品全体あるいは物品の所要部分を薬液に浸漬させることで滅菌処理が行われ、その後に薬液を排出させる。この薬液排出後には、少なくとも物品の薬液に接した部分を乾燥させておくことが好ましいのであるが、自然乾燥させたのでは非常に長時間を要することになる。
【0006】
このため、温風あるいは熱風を用いて比較的短時間で乾燥処理が行えるようにすることが考えられるが、この場合には、例えばエアを加温または加熱して温風や熱風として物品および容器内に送給する送給手段が必要となり、滅菌処理装置の全体システムが更に複雑で大掛かりなものとなる。
また、特に、前述のように熱変化によって悪影響を受ける物品の場合には、そもそも温風や熱風を用いることができないので、乾燥処理にどうしても時間がかかるという問題があった。
【0007】
ところで、薬液を用いて行う従来の滅菌処理装置では、滅菌処理対象の物品を収納しておく容器は、滅菌処理システムの1つの固定した構成要素として、システム内の特定箇所に固定して配置されている。また、この容器に薬液や洗浄水等を給排する配管も、容易に外れることがないように、容器に対し極めて強固に結合されるのが一般的である。
そして、滅菌処理を行う際には、容器の蓋を開けて滅菌処理対象の物品を容器内に定置させ、容器の蓋を閉じて滅菌処理が行われる。滅菌処理が終わると、再び蓋を開けて容器内から滅菌処理済みの物品を取り出し、システム外の他の場所に運ばれ、当該物品が使用されるまでそこで保管される。
【0008】
しかしながら、このような従来の方法では、少なくとも滅菌処理後に物品を容器内から取り出す際には、不可避的に滅菌処理済みの物品が外気に触れるので、物品の滅菌状態を維持する上で非常に不利となる。また、物品を保管場所まで運ぶ際にも滅菌状態が損なわれる恐れがある。更に、保管がある程度長期間にわたる場合などには、滅菌状態を良好に維持するために特別な保管方法を講じる必要があり、保管場所に係る設備コストが高くなるという問題も生じる。
【0009】
尚、特に、前述のエコープローブの場合には、被験者(例えば手術後の患者など)の肌に対し外部から押し当てて使用されるものであるので、被験者に外傷があれば、この傷に触れることもあり得る。従って、エコープローブの衛生状態・滅菌状態を、使用のできるだけ直前まで良好に維持することは非常に重要である。また、かかるエコープローブは、例えば切開手術を行った際などに、腹部等の状態(つまり腹部内の臓器の状態)を調べる等のために腹部のエコー画像の撮像に用いることもでき、この場合には患者の腹部内の臓器に直接に触れるので、エコープローブには極めて高い滅菌性が求められる。
【0010】
そこで、この発明は、薬液を用いて所要の物品に滅菌処理を施すに際して、滅菌処理後の乾燥処理を比較的短時間で行え、また、滅菌処理後の物品の滅菌状態を比較的容易かつ確実に維持できるようにすることを、基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本願第1の発明に係る物品の滅菌処理方法は、以下の工程を有することを特徴としたものである。
1)滅菌処理対象の物品を所定の容器内に収納するセット工程と、
2)該セット工程の後に、前記容器内に所定の薬液を供給して前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、
3)該滅菌処理工程の後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液排出工程と、
4)該薬液排出工程の後に、前記容器内に洗浄水を供給して前記物品を洗浄する第1洗浄工程と、
5)該第1洗浄工程の後に、前記容器内に所定のアルコールを供給して前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄工程と、
6)該第2洗浄工程の後に、前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール排出工程と、
7)該アルコール排出工程の後に、前記容器内に所定の気体を送給して前記物品を乾燥させる乾燥工程。
【0012】
本願第2の発明に係る物品の滅菌処理および保存方法は、以下の工程を有することを特徴としたものである。
1)滅菌処理対象の物品を所定の容器内に収納するセット工程と、
2)前記容器内に流体を供給する流体供給管および前記容器内から流体を排出させる流体排出管を接続する配管接続工程と、
3)前記セット工程と配管接続工程とを終えた後に、前記容器内に所定の薬液を供給して前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、
4)該滅菌処理工程の後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液排出工程と、
5)該薬液排出工程の後に、前記容器内に洗浄水を供給して前記物品を洗浄する洗浄工程と、
6)該洗浄工程の後に、前記容器内に所定の気体を送給して前記物品を乾燥させる乾燥工程と、
7)該乾燥工程の後に、前記流体供給管および前記流体排出管を前記容器から取り外し容器を密閉する配管取り外し工程と、
8)該配管取り外し工程の後に、前記物品を収納したままの前記容器を所定の保存場所に移動させ、該容器ごと保存する保存工程。
【0013】
この滅菌処理および保存方法においては、前記洗浄工程の後で前記乾燥工程の前に、前記容器内に所定のアルコールを供給して前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄工程と、該第2洗浄工程の後に前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール排出工程とを行うことが好ましい。
【0014】
以上の滅菌処理および保存方法においては、より好ましくは、前記容器には、前記流体供給管が着脱可能に接続されるコネクタを有する供給管接続部と、前記流体排出管が着脱可能に接続されるコネクタを有する排出管接続部と、が設けられており、前記配管取り外し工程で、前記供給管接続部および排出管接続部から前記流体供給管および流体排出管がそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞する。
【0015】
本願第3の発明に係る滅菌処理装置は、薬液を用いて滅菌処理対象の物品に滅菌処理を施す滅菌処理装置であって、以下の構成要素を備えたことを特徴とする。
1)前記物品を収納する容器と、
2)前記容器内に流体を供給する流体供給管と、
3)前記容器内から流体を排出させる流体排出管と、
4)前記流体供給管を介して前記容器内に前記薬液を供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から滅菌処理後の前記薬液を排出させる薬液給排手段と、
5)前記流体供給管を介して前記容器内に洗浄水を供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から洗浄処理後の前記洗浄水を排出させる洗浄水給排手段と、
6)前記流体供給管を介して前記容器内にアルコールを供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から洗浄処理後の前記アルコールを排出させるアルコール給排手段と、
7)前記流体供給管を介して前記容器内に所定の気体を送給し、前記流体排出管を介して前記容器内から前記気体を排出させる乾燥手段。
【0016】
この滅菌処理装置においては、以下の制御を行う制御手段を備えていることがより好ましい。
1)前記薬液給排手段を駆動制御して、前記物品を収納した容器内に前記薬液を供給し、前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理を行った後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液給排制御と、
2)該薬液給排制御の後に、前記洗浄水給排手段を駆動制御して前記物品を洗浄する第1洗浄制御と、
3)該洗浄制御の後に、前記アルコール給排手段を駆動制御して、前記容器内に前記アルコールを供給し、前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄を行った後に、前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール給排制御と、
4)該アルコール給排制御の後に、前記乾燥手段を駆動制御して、前記容器内に所定の気体を送給し前記物品を乾燥させる乾燥制御。
【0017】
本願第4の発明に係る物品の滅菌処理および保存用容器は、薬液を用いて滅菌処理対象の物品に滅菌処理を施すに際して、前記物品を収納する容器であって、
1)前記物品を出し入れし得る開口を有する本体部と、前記開口を開閉可能に覆う蓋部と、容器内に流体を供給する流体供給管が接続される供給管接続部と、容器内から流体を排出させる流体排出管が接続される排出管接続部とを備え、
2)前記供給管接続部および排出管接続部には、前記流体供給管および流体排出管をそれぞれ着脱可能に接続するコネクタが各々設けられ、
3)前記供給管接続部および排出管接続部から前記流体供給管および流体排出管をそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞する、
ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本願第1の発明に係る物品の滅菌処理方法によれば、所定の薬液を用いて滅菌処理を施すことにより良好な滅菌状態が得られる。また、アルコールを用いて前記第2洗浄を施した後にアルコールを容器内から排出させるが、この排出工程の終了時点では、アルコールが物品の滅菌処理領域に付着し残存している。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、物品の滅菌処理領域が乾燥し易くなる。従って、アルコール排出工程の後に容器内に所定の気体を送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける物品についても、支障なく気体を用いた乾燥処理を行えるようになる。更に、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置の全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0019】
本願第2の発明に係る物品の滅菌処理および保存方法によれば、薬液を用いた滅菌処理を終え乾燥処理された物品は、配管取り外し工程で、流体供給管および流体排出管を容器から取り外し容器が密閉された上で、密閉された当該容器内に収納されたままで所定の保存場所に移動させられ、容器ごと保存されるので、従来のように、滅菌処理を終えた後に再び容器の蓋を開けて滅菌処理済みの物品を取り出す必要はない。従って、滅菌処理済みの物品は、当該物品が使用に供されるまでは外気に触れることはなく、物品の滅菌状態を維持する上で極めて有利である。また、保管がある程度長期間にわたる場合でも、滅菌状態を良好に維持するために特別な保管方法を講じる必要はなく、保管場所の設備コストが嵩むことを回避できる。
【0020】
この滅菌処理および保存方法においては、前記洗浄工程の後で前記乾燥工程の前に、前記容器内に所定のアルコールを供給して物品をアルコールで洗浄する第2洗浄を行うことが好ましい。
すなわち、アルコールを用いて前記第2洗浄を施した後にアルコールを容器内から排出させるが、この排出工程の終了時点では、アルコールが物品の滅菌処理領域に付着し残存している。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、物品の滅菌処理領域が乾燥し易くなる。従って、アルコール排出工程の後に容器内に所定の気体を送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける物品についても、支障なく気体を用いた乾燥処理を行えるようになる。更に、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置の全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0021】
また、以上の滅菌処理および保存方法において、より好ましくは、前記容器には、流体供給管が着脱可能に接続されるコネクタを有する供給管接続部と、流体排出管が着脱可能に接続されるコネクタを有する排出管接続部と、が設けられており、前記配管取り外し工程で、供給管接続部および排出管接続部から流体供給管および流体排出管がそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞するので、配管取り外し工程で、流体供給管および流体排出管を容器から取り外し容器を密閉する際には、各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞して容器が密閉される。従って、配管取り外し工程が容易に行え、また、容器は迅速に密閉されるので、滅菌処理済みの物品の滅菌状態を維持する上でより一層有利になる。
【0022】
本願第3の発明に係る滅菌処理装置によれば、薬液を用いた滅菌処理や洗浄水を用いた洗浄処理だけでなく、アルコール給排手段によりアルコールを用いた洗浄処理も行うことができる。
【0023】
この滅菌処理装置において、より好ましくは、前記制御手段を備えることにより、薬液給排制御、第1洗浄制御、アルコール給排制御および乾燥制御の一連の制御を自動で行うことができる。
また、アルコールを用いて第2洗浄処理を施した後にアルコールを容器内から排出させるが、この排出工程の終了時点では、アルコールが物品の滅菌処理領域に付着し残存している。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、物品の滅菌処理領域が乾燥し易くなる。従って、アルコール排出工程の後に容器内に所定の気体を送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける物品についても、支障なく気体を用いた乾燥処理を行えるようになる。更に、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置の全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0024】
本願第4の発明に係る物品の滅菌処理および保存用容器によれば、前記容器には、流体供給管が着脱可能に接続されるコネクタを有する供給管接続部と、流体排出管が着脱可能に接続されるコネクタを有する排出管接続部とが設けられており、供給管接続部および排出管接続部から流体供給管および流体排出管がそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞するので、容器は迅速に密閉され、滅菌処理済みの物品の滅菌状態を維持する上でより一層有利になる。
滅菌処理を終えた物品は、流体供給管および流体排出管を容器から取り外し容器が密閉された上で、密閉された当該容器内に収納されたままで所定の保存場所に移動させて容器ごと保存することができ、従来のように、滅菌処理を終えた後に再び容器の蓋を開けて滅菌処理済みの物品を取り出す必要はない。従って、滅菌処理済みの物品は、当該物品が使用に供されるまでは外気に触れることはなく、物品の滅菌状態を維持する上で極めて有利である。また、保管がある程度長期間にわたる場合でも、滅菌状態を良好に維持するために特別な保管方法を講じる必要はなく、保管場所の設備コストが嵩むことを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、腹部のエコー画像などの撮像に用いるエコープローブの滅菌処理に適用した場合を例にとって、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、かかるエコー画像は、例えば切開手術を行った場合などに腹部等の状態(つまり腹部内の臓器の状態)を調べるのに用いられるもので、切開手術時などに患者の腹部内の臓器に直接に触れるので、そのエコープローブには極めて高い滅菌性が求められる。このエコープローブの場合、好ましくは、立体的なエコー画像を得る等のために、プローブ本体内部にオイルが内包されている。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る滅菌処理装置(以下、適宜、単に「処理装置」或いは「装置」と略称する)の全体構成の概略を模式的に示す説明図である。
本実施形態に係る滅菌処理装置Mは、薬液を用いて滅菌処理対象の物品W(本実施形態では前記エコープローブ)に滅菌処理を施すものであり、図1に示すように、この滅菌処理に際して前記エコープローブWを収納する容器1を備えている。この容器1は、エコープローブWを出し入れさせることができる開口2hを有する本体部2と、前記開口2hを開閉可能に覆う蓋部3とを備えている。尚、エコープローブWの端末側にはコードWdの一端側が固定されている。
【0027】
蓋部3を開いて開口2hからエコープローブWを本体部2の内部に入れ、本体部2の底部2b上に配設された載置台4上に当該エコープローブWを載置した後、蓋部3が閉じられる。本体部2および蓋部3の外周部には、フランジ部2f及び3fがそれぞれ形成されており、このフランジ部2f,3fどうしを衝合させて複数のネジ部材9を用いて両者を結合することにより、本体部2と蓋部3とが密閉される。尚、本体部2の底部2bには、容器1を安定して支持するための脚部5が固定されている。
【0028】
前記蓋部3の上面には、第1配管ラインL1,第2配管ラインL2にそれぞれ接続される第1接続管部6,第2接続管部7が上方に向けて突出するように一体的に設けられている。また、本体部2の底部2bには、第3配管ラインL3に接続される第3接続管部8が下方に向けて突出するように一体的に設けられている。これら第1,第2,第3接続管部6,7,8の先端には、接続用のコネクタとして所謂ワンタッチ・カプラ6C,7C,8Cがそれぞれ固定される一方、第1,第2,第3配管ラインL1,L2,L3の端末には、前記カプラ6C,7C,8Cと組み合わされるワンタッチ・カプラL1C,L2C,L3Cがそれぞれ固定されている。
【0029】
そして、第1接続管部6と第1配管ラインL1とは前記ワンタッチ・カプラ6C及びL1Cを介して、第2接続管部7と第2配管ラインL2とは前記ワンタッチ・カプラ7C及びL2Cを介して、また、第3接続管部8と第3配管ラインL3とは前記ワンタッチ・カプラ8C及びL3Cを介して、それぞれワンタッチで着脱(つまり接続および取り外し)でき、しかも、取り外して接続を解除した際には、ワンタッチ・カプラ6C,7C,8C及びL1C,L2C,L3Cの自動閉塞機構により、第1,第2,第3接続管部6,7,8の先端部および第1,第2,第3配管ラインL1,L2,L3の端末部が、それぞれ自動的に閉塞されるようになっている。
【0030】
尚、このようなワンタッチ・カプラ6C,7C,8C及びL1C,L2C,L3Cとしては、従来公知のものと同様のものが適用可能である。
また、容器1及び第1,第2,第3配管ラインL1,L2,L3の材質としては、後述する薬液,アルコール及び洗浄水に対する耐性を有し、容器1及び配管としての強度や剛性などを付与することができるものであれば、従来公知の種々の材質が適用可能である。
【0031】
前記第1接続管部6,第2接続管部7及び第3接続管部8には、具体的には図示しなかったが、管内の液体の有無を検知する検知センサが設けられており、容器1内に液体を供給する際には、第3接続管部8の検知センサのみならず第1及び第2接続管部6及び7の検知センサも液体の存在を検知することにより、液体が容器1をオーバーフローするまで供給されたことが感知される。一方、容器1内から液体を排出させる際には、第1及び第2接続管部6及び7の検知センサのみならず第3接続管部8の検知センサも液体の存在を非検知状態となることにより、液体が容器1内から完全に排出されたことが感知される。
【0032】
このような検知センサとしては、例えば、従来公知の発光素子と受光素子とを組み合わせたタイプのもの、すなわち、検知対象の配管を挟んで直径方向に対向するように発光素子と受光素子とを配置した検知センサを適用することができる。このタイプの検知センサは、光の屈折率が液体の有無によって変化する特性を利用したもので、発光素子を発光させた際の受光素子の受光レベルにより、管内の液体の有無を検知することができる。
尚、前記第1接続管部6,第2接続管部7及び第3接続管部8の管内の液体の有無を検知するためのセンサとしては、前記タイプのものに限らず、従来公知の種々のタイプの液体検知センサが適用可能である。
【0033】
前記第1配管ラインL1は、基本的には容器1に対して気体(本実施形態ではエア)を給排する配管ラインであり、ワンタッチ・カプラL1Cが取り付けられた側と反対側の端部にはエアポンプAPが接続され、該エアポンプAPとカプラL1Cの間には、エア用の除菌フィルタF1(第1除菌フィルタ)が介設されている。また、この第1除菌フィルタF1とエアポンプAPの間からは、大気に連通する分岐ラインB1(第1分岐ライン)が分岐しており、この第1分岐ラインB1には、エア用の電磁弁SV1(第1電磁弁)が介設されている。
【0034】
第2配管ラインL2は、基本的には容器1の上部から液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)及び気体(エア)を排出させる配管ラインであり、ワンタッチ・カプラL2Cが取り付けられた側と反対側の端部は、排出された前記液体及び/又は気体を受容する外部タンク(不図示)に連通し、この端部の近傍には切換弁KV1(第1切換弁)が介設されている。また、この第1切換弁K1とワンタッチ・カプラL2Cの間からは、逆止弁GV1(第1逆止弁)を介設した分岐ラインB2(第2分岐ライン)が分岐しており、この第2分岐ラインB2の端末側は、切換弁KV3(第3切換弁)に接続されている。前記第1逆止弁GV1は、第3切換弁KV3から第2配管ラインL2側への流体の流れを許容し、その逆向きの流れを禁止するものである。
前記第1切換弁KV1は、第3分岐ラインB3を介して切換弁KV2(第2切換弁)と繋がっており、この第2切換弁KV2は、第1接続管D1,第2接続管D2をそれぞれ介して、後述する第1貯留タンクT1,第2貯留タンクT2に接続されている。
【0035】
第3配管ラインL3は、基本的には容器1の下部から液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)を給排する配管ラインであり、ワンタッチ・カプラL3Cが取り付けられた側から近い順に、排液用のポンプWP3(第3ポンプ),電磁弁SV3(第3電磁弁),前記第3切換弁KV3,第4切換弁KV4,アルコールを貯える貯留タンクT2(第2タンク)が介設されている。また、前記第3ポンプWP3とワンタッチ・カプラL3Cの間からは、逆止弁GV3(第3逆止弁)を介設した分岐ラインB4(第4分岐ライン)が分岐しており、この第4分岐ラインB4は、第5切換弁KV5に接続されている。前記第3逆止弁GV3は、第5切換弁KV5から第3配管ラインL3側への流体の流れを許容し、その逆向きの流れを禁止するものである。
【0036】
前記第1配管ラインL1は、容器1内にエアを供給する際に「流体(エア)供給管」として作用するものである。また、前記第2配管ラインL2は、エアが容器1内を通過する際ならびに容器1内から液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)を排出させる際に「流体排出管」として作用するものである。更に、前記第3配管ラインL3は、容器1内に液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)を供給する際には「流体供給管」として作用する一方、容器1内から液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)を排出させる際には「流体排出管」として作用するものである。
【0037】
前記第5切換弁KV5は、第5分岐ラインB5を介して、薬液を貯える第1貯留タンクT1に繋がっている。この第1貯留タンクT1は、薬液用のポンプWP1(第1ポンプ)を介設した接続管D3(第3接続管)を介して前記第5切換弁KV5に接続されている。本実施形態では、滅菌処理用の薬液として、例えば、強酸性の過酢酸を用いた。
また、本実施形態に係る滅菌処理装置Mには、一端側が電磁弁SV2(第2電磁弁)を介して水道配管(不図示)に連通した配管ラインL4(第4配管ライン)が設けられており、この第4配管ラインL4の他端側は、逆止弁GV2(第2逆止弁),アルコール用のポンプWP2(第2ポンプ)を介して前記第2タンクT2と連通している。前記第2逆止弁GV2は、第2ポンプWP2から第2電磁弁SV2側への流体の流れを許容し、その逆向きの流れを禁止するものである。
【0038】
この第2逆止弁GV2と第2電磁弁SV2の間からは、前記第5切換弁KVに連通する分岐ラインB6(第6分岐ライン)が分岐しており、この第6分岐ラインB6には、水用の除菌フィルタF2(第2除菌フィルタ)が介設されている。この第2除菌フィルタF2としては、好ましくは、非常に除菌効果が高い中空糸フィルタが用いられている。
【0039】
本実施形態に係る滅菌処理装置Mには、具体的には図示しなかったが、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成された制御ユニットが設けられており、前記各ポンプAP,WP1〜WP3、各電磁弁SV1〜SV3及び各切換弁KV1〜KV5等は何れも、この制御ユニットに対して信号授受可能に接続され、制御ユニットからの制御信号により作動制御されるようになっている。尚、本実施形態では、前記各電磁弁SV1〜SV3は電磁式の開閉制御弁であり、各切換弁KV1〜KV5は電磁式の流路切換制御弁である。
【0040】
尚、後述するように、前記滅菌処理装置Mでは、滅菌処理対象のエコープローブWを収納した容器1内に所定の薬液を満たして滅菌処理が施され、エコープローブWの薬液内への浸漬状態を保った後、所定時間が経過すると、容器1内から薬液が排出されるが、これだけではエコープローブWの表面に薬液が残ることになる。薬液の性質によっては、表面に薬液成分が残留したままでは、滅菌処理済みの物品として使用に差し支えが生じる場合も考えられるので、エコープローブWの表面から薬液成分をできるだけ除去しておくことが一般に望ましい。
【0041】
このように滅菌処理後にエコープローブWの表面に残留した薬液成分を除去する方法としては、洗浄水を用いた洗浄処理を行うことが考えられる。この場合、清浄度の高い逆浸透水を洗浄水として用いる方法も考えられるが、この方法では、逆浸透水を得るための設備が大掛かりなものとなるので、設備コストが嵩むという難点がある。そこで、本実施形態では、後述するように、除菌効果の高いマイクロフィルタ(典型的には中空糸フィルタ)で濾過した水を洗浄水として用いるようにしている。
【0042】
また、洗浄処理を終えて容器1内から洗浄水を排出させても、エコープローブWの表面には水滴が残るので乾燥させる必要があり、この乾燥処理に時間が掛かるという問題があるが、洗浄水による第1の洗浄処理後にアルコールを用いた第2の洗浄処理を施し、その後にアルコールを容器内から排出させることで、このアルコール排出工程の終了時点では、アルコールが物品の滅菌処理領域に付着し残存することとなる。換言すれば、第1の洗浄処理で物品表面に付着残留した洗浄水は、アルコールを用いた第2の洗浄処理を施すことによってアルコールで置換されることになる。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、物品の滅菌処理領域が乾燥し易くなっている。そこで、アルコール排出工程の後に容器内に所定の気体を送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができるようにしている。
【0043】
以上のように構成された滅菌処理装置Mの作動について、添付フローチャートを参照しながら説明する。
まず、容器1の蓋部3をあけて本体部2内に滅菌処理対象の物品W(エコープローブ)を入れ、載置台4上に載置した後に蓋部4を閉じ、ネジ部材9を用いて蓋部3と本体部2とを密閉する。この作業は、容器1が滅菌処理装置Mに組み込まれた状態、つまり、第1接続管部6と第1配管ラインL1とが前記ワンタッチ・カプラ6C及びL1Cを介して、第2接続管部7と第2配管ラインL2とが前記ワンタッチ・カプラ7C及びL2Cを介して、また、第3接続管部8と第3配管ラインL3とが前記ワンタッチ・カプラ8C及びL3Cを介して、それぞれ接続された状態で行っても良く、或いは、容器1を滅菌処理装置Mから取り外した状態で行い、その後に、容器1を滅菌処理装置Mに組み込むようにしても良い。以上のようにして、滅菌処理対象のエコープローブWを容器1内に収納するセット工程が行われる。
【0044】
このセット工程を終えると、装置Mの電源をONし(ステップ#1)、更にスタートスイッチ(不図示)をONすることで(ステップ#2)、装置Mの作動が開始される。
この初期状態では、第5切換弁KV5は、第3接続管D3と第4分岐ラインB4とを連通させる側に切り換えられている。そして、第1ポンプWP1がまず駆動され、第3接続管D3,第5切換弁KV5,第4分岐ラインB4,第3逆止弁GV3及び第3配管ラインL3を順次介して、容器1内に薬液が供給される(ステップ#3)。
【0045】
次に、ステップ#4で、薬液が容器1をオーバーフローするまで供給されたか否かが判定される。これは、容器1内にエアが残存し、薬液による滅菌処理が不十分なものとなることを確実に防止するためである。このステップ#4での判定結果がYESになると、ステップ#5で、第1ポンプWP1の駆動が停止され、所定時間(例えば10分間)だけ、その状態が維持される。この状態では、図2に示すように、容器1内のエコープローブWは、完全に薬液中に浸漬している。このようにして、薬液で滅菌処理する滅菌処理工程が行われる。
尚、このとき、第3電磁弁SV3は閉じられ、且つ、第1切換弁KV1は第2配管ラインL2と第3分岐ラインB3とを連通させる側に、第2切換弁KV2は第3分岐ラインB3と第1タンクT1とを連通させる側に、それぞれ切り換えられており、薬液は、一連の閉ループの管路を通って、容器1と第1タンクT1との間で環流するようになっている。
【0046】
以上の滅菌処理工程が終了すると第3電磁弁SV3が開かれ(ステップ#6)、更に第3ポンプWP3が駆動されることにより(ステップ#7)、容器1内から薬液を排出させる薬液排出工程が行われる。この薬液排出工程では、図3に示すように、容器1内の薬液は、第3配管ラインL3,第5分岐ラインB5を順次介して、更に、第2配管ラインL2,第3分岐ラインB3,第1接続管D1を順次介して、それぞれ排出され第1タンクT1内に回収される。このとき、第3切換弁KV3は第3電磁弁SV3と第4切換弁KV4とを連通させる側に、また、この第4切換弁KV4は第3配管ラインL3と第5分岐ラインB5とを連通させる側に、それぞれ切り換えられている。尚、図2及び図3では、薬液で満たされる管路領域または薬液が流通する管路領域が、図中にハッチング(斜線)を施すことにより明示されている。
そして、ステップ#8で、容器1内の薬液が完全に排出されたか否かが判定され、この判定結果がYESになると第3ポンプWP3の駆動が停止される(ステップ#9)。
【0047】
次に、ステップ#10で、前記第3電磁弁SV3を閉じ、且つ、第1切換弁KV1を第2配管ラインL2と外部タンク(不図示)とを連通させる側に、第5切換弁KV5を第6分岐ラインB6と第4分岐ラインB4とを連通させる側に、それぞれ切り換える。
そして、第2電磁弁SV2を開くことにより、容器1内に洗浄水を供給してエコープローブWを洗浄する洗浄工程が行われる。この洗浄工程では、図4に示すように、第4配管ラインL4,第6分岐ラインB6,第5切換弁KV5,第4分岐ラインB4,第3逆止弁GV3及び第3配管ラインL3を順次介して、第2フィルタF2で濾過されて清浄化された水が、洗浄水として容器1内に供給される(ステップ#11)。尚、この工程では、洗浄水は環流されるのではなく、第1切換弁KV1を通って外部タンク(不図示)内に排出される。
【0048】
次に、ステップ#12で、洗浄水が容器1をオーバーフローするまで供給されたか否か、更に、より好ましくは、このオーバーフロー状態が所定時間(例えば数分間)継続されたか否かが判定される。これは、容器1内に薬液が残存し、洗浄水による洗浄処理が不十分なものとなることを確実に防止するためである。このステップ#12での判定結果がYESになると、第2電磁弁SV2が閉じられる(ステップ#13)。
【0049】
以上のようにして洗浄が終了すると第3電磁弁SV3が開かれ(ステップ#14)、更に第3ポンプWP3が駆動されることにより(ステップ#15)、容器1内から洗浄水が排出される。この洗浄水の排出に際しては、図5に示すように、容器1内の洗浄水は、第2配管ラインL2,第1切換弁KV1を順次介して、更に、第3配管ラインL3,第2分岐ラインB2,第2配管ラインL2,第1切換弁KV1を順次介して、それぞれ外部タンク(不図示)に向かって排出される。尚、図4及び図5では、洗浄水で満たされる管路領域または洗浄水が流通する管路領域が、図中にハッチング(斜線)を施すことにより明示されている。
そして、ステップ#16で、容器1内の洗浄水が完全に排出されたか否かが判定され、この判定結果がYESになると、第3ポンプWP3の駆動が停止され、第3電磁弁SV3が閉じられる(ステップ#17)。
【0050】
以上のような洗浄水を用いた第1洗浄工程(洗浄および洗浄水の排出)が終了すると、次に、ステップ#18で、第1切換弁KV1が第2配管ラインL2と第3分岐ラインB3とを連通させる側に、第2切換弁KV2が第3分岐ラインB3と第2タンクT2とを連通させる側に、第3切換弁KV3が第3電磁弁SV3と第4切換弁KV4とを連通させる側に、第4電磁弁KV4が第3配管ラインL3と第1タンクT1とを連通させる側に、それぞれ切り換えられる。
そして、第2ポンプWP2を駆動することにより、図6に示すように、第4配管ラインL4,第6分岐ラインB6,第5切換弁KV5,第4分岐ラインB4,第3逆止弁GV3及び第3配管ラインL3を順次介して、第2タンクT2内のアルコールが容器1内に供給される(ステップ#19)。このとき、アルコールは、一連の閉ループの管路を通って、容器1と第2タンクT2との間で環流するようになっている。
【0051】
次に、ステップ#20で、アルコールが容器1をオーバーフローするまで供給されたか否か、更に、より好ましくは、このオーバーフロー状態が所定時間(例えば数分間)継続されたか否かが判定される。これは、容器1内にエアが残存し、アルコールによる滅菌処理が不十分なものとなることを確実に防止するためである。このステップ#20での判定結果がYESになると、第2ポンプWP2の駆動が停止される(ステップ#21)。
この状態では、図6に示されるように、容器1内のエコープローブWは完全にアルコール中に浸漬している。このようにして、物品をアルコールで洗浄する第2洗浄工程が行われる。
【0052】
以上の第2洗浄工程が終了すると第3電磁弁SV3が開かれ(ステップ#22)、更に第3ポンプWP3が駆動されることにより(ステップ#23)、容器1内からアルコールを排出させるアルコール排出工程が行われる。このアルコール排出工程では、図7に示すように、容器1内のアルコールは、第3配管ラインL3を順次介して、更に、第2配管ラインL2,第3分岐ラインB3,第2接続管D2を順次介して、それぞれ排出され第2タンクT2内に回収される。このとき、第3切換弁KV3は第3電磁弁SV3と第4切換弁KV4とを連通させる側に、また、この第4切換弁KV4は第3配管ラインL3と第2タンクT2とを連通させる側に、それぞれ切り換えられている。尚、図6及び図7では、アルコールで満たされる管路領域またはアルコールが流通する管路領域が、図中にハッチング(斜線)を施すことにより明示されている。
そして、ステップ#24で、容器1内のアルコールが完全に排出されたか否かが判定され、この判定結果がYESになると第3ポンプWP3の駆動が停止される(ステップ#25)。
【0053】
こうしてアルコール排出工程を終えると、ステップ#26で、第1切換弁KV1が第2配管ラインL2と外部タンク(不図示)とを連通させる側に、また、第3切換弁KVが第3配管ラインL3と第2分岐ラインB2とを連通させる側に、それぞれ切り換えられる。
そして、ステップ#27で、エアポンプAPを駆動することにより、容器1内のエコープローブWを乾燥させる乾燥工程が行われる。この乾燥工程では、図8に示すように、エア用の第1フィルタF1を介して第1配管ラインL1から容器1内にエアが吹き込まれ、このエアは、第2配管ラインL2を介して外部タンク(不図示)に向かって排出される。
【0054】
この乾燥工程は、好ましくは数十分にわたって行われ、これが終了するとエアポンプAPの駆動が停止される(ステップ#28)。
以上により、容器1内に収納されたエコープローブWに対する、薬液による滅菌処理,容器1内からの薬液の排出,洗浄水による第1洗浄,アルコールによる第2洗浄,容器1内からのアルコールの排出,エアによる乾燥の一連の滅菌処理工程が終了する。
本実施形態に係る滅菌処理装置Mでは、前記制御ユニット(不図示)により、薬液給排制御、洗浄制御、アルコール給排制御および乾燥制御の一連の制御が、人手を煩わすことなく自動で行うことができるので、より正確で安定した制御を行える。
【0055】
そして、ステップ#29で、次サイクルの滅菌処理工程に備えて、各切換弁の切換状態を初期状態に復帰させる切換制御が行われる。つまり、第1切換弁KV1が第2配管ラインL2と第3分岐ラインB3とを連通させる側に、第2切換弁KV2が第3分岐ラインB3と第1タンクT1とを連通させる側に、第3切換弁KV3が第3電磁弁SV3と第4切換弁KV4とを連通させる側に、第4切換弁KV4が第3配管ラインL3と第5分岐ラインB5とを連通させる側に、また、第5切換弁KV5が第3接続管D3と第4分岐ラインB4とを連通させる側に、それぞれ切り換えられる。これにより、当該処理サイクルでの滅菌処理装置Mの作動が終了する。
【0056】
その後、容器1の第1接続管部6と第1配管ラインL1とを結合している前記ワンタッチ・カプラ6C及びL1Cの結合、第2接続管部7と第2配管ラインL2とを結合している前記ワンタッチ・カプラ7C及びL2Cの結合、及び第3接続管部8と第3配管ラインL3とを結合している前記ワンタッチ・カプラ8C及びL3Cの結合をそれぞれ解除する配管取り外しが行われ、これにより、滅菌処理済みのエコープローブWを収納したままの容器1が滅菌処理装置Mから取り外し可能となる。
【0057】
こうして容器1を滅菌処理装置Mから取り外した際には、ワンタッチ・カプラ6C,7C,8C及びL1C,L2C,L3Cの自動閉塞機構により、第1,第2,第3接続管部6,7,8の先端部および第1,第2,第3配管ラインL1,L2,L3の端末部が、それぞれ自動的に閉塞される。従って、容器1からの配管取り外し作業が容易に行え、また、容器1は迅速に密閉されるので、滅菌処理済みのエコープローブWの滅菌状態を維持する上でより一層有利になる。
そして、取り外された容器1は所定の保存場所に運ばれる。つまり、滅菌処理されたエコープローブWは、密閉された容器1内に収納された状態で、当該容器1ごと前記保存場所に保存される。
【0058】
このように、滅菌処理を終え乾燥処理されたエコープローブWは、配管取り外し工程で、第1〜第3配管ラインL1〜L3を容器1から取り外し、容器1が密閉された上で、密閉された当該容器1内に収納されたままで所定の保存場所に移動させられ、容器1ごと保存されるので、従来のように、滅菌処理を終えた後に再び容器の蓋を開けて滅菌処理済みの物品を取り出す必要はない。
従って、滅菌処理済みのエコープローブWは、当該エコープローブWが使用に供されるまでは外気に触れることはなく、その滅菌状態を維持する上で極めて有利である。また、保管がある程度長期間にわたる場合でも、滅菌状態を良好に維持するために特別な保管方法を講じる必要はなく、保管場所の設備コストが嵩むことを回避できるのである。
【0059】
本実施形態では、洗浄水による第1洗浄工程の後で乾燥工程の前に、容器1内に所定のアルコールを供給してエコープローブWをアルコールで洗浄する第2洗浄工程を行うので、薬液を用いた滅菌処理のみの場合に比してより良好な滅菌状態が得られる。
また、アルコールを用いて第2洗浄処理を施した後にアルコールを容器内から排出させるが、この排出工程の終了時点では、アルコールがエコープローブWの滅菌処理領域に付着し残存している。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、エコープローブWの滅菌処理領域が乾燥し易くなる。従って、アルコール排出工程の後に容器1内にエアを送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱したエアを用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける前記エコープローブWについても、支障なくエアを用いた乾燥処理を行えるようになる。更に、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置Mの全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0060】
次に、本発明の滅菌処理に用いる容器の変形例について説明する。尚、以下の説明おいて、前述の実施形態における場合と同様の構成を備え同様の作用をなすものについては、同一の符号を付しそれ以上の説明は省略する。
図13は本発明の実施形態に係る容器の変形例を示す分解斜視図である。この図に示すように、本変形例に係る容器61は、エコープローブWを出し入れさせることができる開口62hを有する本体部62と、前記開口62hを開閉可能に覆う蓋部63とを備えている。
【0061】
蓋部63を開いて開口62hからエコープローブWを本体部62の内部に入れた後、蓋部63が閉じられる。本体部62の上端および蓋部63の外周部には、フランジ部62f及び63fがそれぞれ形成されており、このフランジ部62f,63fどうしを衝合させて複数のネジ部材(不図示)を用いて両者を結合することにより、本体部62と蓋部63とが密閉される。尚、蓋部63の上面には、第1配管ラインL1,第2配管ラインL2をそれぞれ接続させる第1,第2接続管部(共に不図示)取り付けるための孔部H1,H2
が設けられている。
尚、第1〜第3配管ラインL1〜L3の容器61に対する着脱機構は、図1に示したものと基本的は同様である。
【0062】
本変形例では、本体部62内にエコープローブWを収納するに際して、エコープローブWの全ての部位の表面が薬液,洗浄液あるいはアルコールに浸漬されるように、容器61内にハンガー70が配設されている。
すなわち、図1〜図8に示した容器1の場合には、エコープローブWは、本体部2の底部2b上に配設された載置台4上に載置されるので、この載置台4と接触する表面部分では、薬液,洗浄液あるいはアルコールに浸漬され難く、滅菌処理が局部的に不十分なものとなりがちである。
【0063】
そこで、本変形例では、前記ハンガー70にエコープローブWを吊り下げ支持することにより、エコープローブWの全ての部位の表面が薬液,洗浄液あるいはアルコールに浸漬されるようにしている。
図14は変形例に係る容器61に用いられるハンガー70の平面説明図、図15はハンガー70の正面説明図で、また、図16はハンガー70の側面説明図である。更に、図17はエコープローブWを吊り下げ支持した状態を示す前記ハンガー70の全体斜視図、図18はエコープローブWを吊り下げ支持した状態を示す前記ハンガー70の正面説明図である。
これらの図に示すように、前記ハンガー70は、略上下方向に配設された複数の線材と略水平方向に配設された複数の線材とを組み合わせてフレーム体71が構成され、このフレーム体71に、エコープローブWのコードWd(図17及び図18参照)を巻き付けるのに好適な複数の曲折部73aを有するコード保持用線材73が取り付けられている。
【0064】
このコード保持用線材73よりも上側には、フレーム体71の上端において水平方向に配設された一対の水平ロッド線材72が位置しており、この一対の水平ロッド線材72の下方においてフレーム体71の直径方向(つまり、フレーム体71の下部リング線材76の直径方向)に横切るようにしてクロス線材74が配設されている。そして、図17及び図18に示されるように、コードWdを前記複数の折曲部73dに巻き付け、エコープローブWのコードWdが取り付けられた端末部を上方に向けた状態で、当該端末部を前記クロス線材74の中心部74cに支持させることにより、エコープローブWを吊り下げ支持することができる。
このとき、エコープローブWの本体部の何れの部位も容器61の壁面などに接触することがなく、エコープローブWの全ての部位の表面が薬液,洗浄液あるいはアルコールに浸漬されるようになっている。
【0065】
尚、以上の実施態様は、内部にオイルを内包したエコープローブWの滅菌処理についてのものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、その他のタイプのエコープローブについても、更には、エコープローブに限定されることなく、滅菌処理を要する他の種々の物品についても、有効に適用することができるものである。
また、本発明は、以上の実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更や改良を加え得るものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の滅菌処理方法、滅菌処理および保存方法、滅菌処理装置、並びに滅菌処理および保存用容器は、薬液を用いて所要の物品に滅菌処理を施すに際して、滅菌処理後の乾燥処理を比較的短時間で行え、また、滅菌処理後の物品の滅菌状態を比較的容易かつ確実に維持できるようにするものであり、例えば、超音波画像を得るためのエコープローブやその他の医療用具等の滅菌処理などにおいて、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る滅菌処理装置の全体構成の概略を模式的に示す説明図である。
【図2】薬液による滅菌処理工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図3】容器からの薬液の排出工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図4】容器への洗浄水の供給工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図5】容器からの洗浄水の排出工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図6】アルコールによる第2洗浄工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図7】容器からのアルコールの排出工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図8】エアによる乾燥工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図9】前記滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートの一部である。
【図10】滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートの一部である。
【図11】滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートの一部である。
【図12】滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートの一部である。
【図13】本発明の実施形態に係る容器の変形例を示す分解斜視図である。
【図14】前記変形例に係る容器に用いられるハンガーの平面説明図である。
【図15】前記ハンガーの正面説明図である。
【図16】前記ハンガーの側面説明図である。
【図17】エコープローブを吊り下げ支持した状態を示す前記ハンガーの全体斜視図である。
【図18】エコープローブを吊り下げ支持した状態を示す前記ハンガーの正面説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1,61…容器
2,62…(容器の)本体部
3,63…(容器の)蓋部
6…第1接続管部
6C…ワンタッチ・カプラ
7…第2接続管部
7C…ワンタッチ・カプラ
8…第3接続管部
8C…ワンタッチ・カプラ
L1…第1配管ライン
L1C…ワンタッチ・カプラ
L2…第2配管ライン
L2C…ワンタッチ・カプラ
L3…第3配管ライン
L3C…ワンタッチ・カプラ
M…滅菌処理装置
W…エコープローブ
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液を用いて物品の滅菌処理を行う滅菌処理方法、滅菌処理および保存方法、滅菌処理装置、並びに滅菌処理および保存用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば医療分野において所要の医療用具等を滅菌処理する場合など、所要の物品に滅菌処理を施す場合、例えば高圧水蒸気や過酸化水素/プラズマガス等を用い、その熱や圧力を利用して滅菌処理する方法が一般に幅広く採用されている。
【0003】
しかしながら、熱や圧力の変化により悪影響を受ける物品の場合には、これらの方法を適用することはできない。
例えば、超音波を利用して被験者の腹部エコー画像等を得る際などに用いられる所謂エコープローブの中には、立体的なエコー画像を得る等のために、プローブ本体内部にオイルを内包したタイプのものが知られている。このようなオイル内包タイプのエコープローブに滅菌処理を施す場合、熱や圧力を利用した滅菌処理方法を採用したのでは、内部のオイルが膨張/収縮するため、エコープローブの特性に大きな悪影響を及ぼすことになる。
【0004】
このような熱や圧力の変動を伴うことなく滅菌処理を行う方法としては、滅菌作用を有する薬液を用いる方法が知られている。例えば特許文献1には、槽内に内視鏡を入れておき、洗浄液または消毒液を槽内に供給して内視鏡を洗浄または消毒するようにした内視鏡洗浄消毒装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−192641号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような薬液を用いた滅菌処理では、槽(容器)内に物品を定置しておき、この容器内に薬液を供給し、一定時間以上にわたって物品全体あるいは物品の所要部分を薬液に浸漬させることで滅菌処理が行われ、その後に薬液を排出させる。この薬液排出後には、少なくとも物品の薬液に接した部分を乾燥させておくことが好ましいのであるが、自然乾燥させたのでは非常に長時間を要することになる。
【0006】
このため、温風あるいは熱風を用いて比較的短時間で乾燥処理が行えるようにすることが考えられるが、この場合には、例えばエアを加温または加熱して温風や熱風として物品および容器内に送給する送給手段が必要となり、滅菌処理装置の全体システムが更に複雑で大掛かりなものとなる。
また、特に、前述のように熱変化によって悪影響を受ける物品の場合には、そもそも温風や熱風を用いることができないので、乾燥処理にどうしても時間がかかるという問題があった。
【0007】
ところで、薬液を用いて行う従来の滅菌処理装置では、滅菌処理対象の物品を収納しておく容器は、滅菌処理システムの1つの固定した構成要素として、システム内の特定箇所に固定して配置されている。また、この容器に薬液や洗浄水等を給排する配管も、容易に外れることがないように、容器に対し極めて強固に結合されるのが一般的である。
そして、滅菌処理を行う際には、容器の蓋を開けて滅菌処理対象の物品を容器内に定置させ、容器の蓋を閉じて滅菌処理が行われる。滅菌処理が終わると、再び蓋を開けて容器内から滅菌処理済みの物品を取り出し、システム外の他の場所に運ばれ、当該物品が使用されるまでそこで保管される。
【0008】
しかしながら、このような従来の方法では、少なくとも滅菌処理後に物品を容器内から取り出す際には、不可避的に滅菌処理済みの物品が外気に触れるので、物品の滅菌状態を維持する上で非常に不利となる。また、物品を保管場所まで運ぶ際にも滅菌状態が損なわれる恐れがある。更に、保管がある程度長期間にわたる場合などには、滅菌状態を良好に維持するために特別な保管方法を講じる必要があり、保管場所に係る設備コストが高くなるという問題も生じる。
【0009】
尚、特に、前述のエコープローブの場合には、被験者(例えば手術後の患者など)の肌に対し外部から押し当てて使用されるものであるので、被験者に外傷があれば、この傷に触れることもあり得る。従って、エコープローブの衛生状態・滅菌状態を、使用のできるだけ直前まで良好に維持することは非常に重要である。また、かかるエコープローブは、例えば切開手術を行った際などに、腹部等の状態(つまり腹部内の臓器の状態)を調べる等のために腹部のエコー画像の撮像に用いることもでき、この場合には患者の腹部内の臓器に直接に触れるので、エコープローブには極めて高い滅菌性が求められる。
【0010】
そこで、この発明は、薬液を用いて所要の物品に滅菌処理を施すに際して、滅菌処理後の乾燥処理を比較的短時間で行え、また、滅菌処理後の物品の滅菌状態を比較的容易かつ確実に維持できるようにすることを、基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本願第1の発明に係る物品の滅菌処理方法は、以下の工程を有することを特徴としたものである。
1)滅菌処理対象の物品を所定の容器内に収納するセット工程と、
2)該セット工程の後に、前記容器内に所定の薬液を供給して前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、
3)該滅菌処理工程の後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液排出工程と、
4)該薬液排出工程の後に、前記容器内に洗浄水を供給して前記物品を洗浄する第1洗浄工程と、
5)該第1洗浄工程の後に、前記容器内に所定のアルコールを供給して前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄工程と、
6)該第2洗浄工程の後に、前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール排出工程と、
7)該アルコール排出工程の後に、前記容器内に所定の気体を送給して前記物品を乾燥させる乾燥工程。
【0012】
本願第2の発明に係る物品の滅菌処理および保存方法は、以下の工程を有することを特徴としたものである。
1)滅菌処理対象の物品を所定の容器内に収納するセット工程と、
2)前記容器内に流体を供給する流体供給管および前記容器内から流体を排出させる流体排出管を接続する配管接続工程と、
3)前記セット工程と配管接続工程とを終えた後に、前記容器内に所定の薬液を供給して前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、
4)該滅菌処理工程の後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液排出工程と、
5)該薬液排出工程の後に、前記容器内に洗浄水を供給して前記物品を洗浄する洗浄工程と、
6)該洗浄工程の後に、前記容器内に所定の気体を送給して前記物品を乾燥させる乾燥工程と、
7)該乾燥工程の後に、前記流体供給管および前記流体排出管を前記容器から取り外し容器を密閉する配管取り外し工程と、
8)該配管取り外し工程の後に、前記物品を収納したままの前記容器を所定の保存場所に移動させ、該容器ごと保存する保存工程。
【0013】
この滅菌処理および保存方法においては、前記洗浄工程の後で前記乾燥工程の前に、前記容器内に所定のアルコールを供給して前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄工程と、該第2洗浄工程の後に前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール排出工程とを行うことが好ましい。
【0014】
以上の滅菌処理および保存方法においては、より好ましくは、前記容器には、前記流体供給管が着脱可能に接続されるコネクタを有する供給管接続部と、前記流体排出管が着脱可能に接続されるコネクタを有する排出管接続部と、が設けられており、前記配管取り外し工程で、前記供給管接続部および排出管接続部から前記流体供給管および流体排出管がそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞する。
【0015】
本願第3の発明に係る滅菌処理装置は、薬液を用いて滅菌処理対象の物品に滅菌処理を施す滅菌処理装置であって、以下の構成要素を備えたことを特徴とする。
1)前記物品を収納する容器と、
2)前記容器内に流体を供給する流体供給管と、
3)前記容器内から流体を排出させる流体排出管と、
4)前記流体供給管を介して前記容器内に前記薬液を供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から滅菌処理後の前記薬液を排出させる薬液給排手段と、
5)前記流体供給管を介して前記容器内に洗浄水を供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から洗浄処理後の前記洗浄水を排出させる洗浄水給排手段と、
6)前記流体供給管を介して前記容器内にアルコールを供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から洗浄処理後の前記アルコールを排出させるアルコール給排手段と、
7)前記流体供給管を介して前記容器内に所定の気体を送給し、前記流体排出管を介して前記容器内から前記気体を排出させる乾燥手段。
【0016】
この滅菌処理装置においては、以下の制御を行う制御手段を備えていることがより好ましい。
1)前記薬液給排手段を駆動制御して、前記物品を収納した容器内に前記薬液を供給し、前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理を行った後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液給排制御と、
2)該薬液給排制御の後に、前記洗浄水給排手段を駆動制御して前記物品を洗浄する第1洗浄制御と、
3)該洗浄制御の後に、前記アルコール給排手段を駆動制御して、前記容器内に前記アルコールを供給し、前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄を行った後に、前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール給排制御と、
4)該アルコール給排制御の後に、前記乾燥手段を駆動制御して、前記容器内に所定の気体を送給し前記物品を乾燥させる乾燥制御。
【0017】
本願第4の発明に係る物品の滅菌処理および保存用容器は、薬液を用いて滅菌処理対象の物品に滅菌処理を施すに際して、前記物品を収納する容器であって、
1)前記物品を出し入れし得る開口を有する本体部と、前記開口を開閉可能に覆う蓋部と、容器内に流体を供給する流体供給管が接続される供給管接続部と、容器内から流体を排出させる流体排出管が接続される排出管接続部とを備え、
2)前記供給管接続部および排出管接続部には、前記流体供給管および流体排出管をそれぞれ着脱可能に接続するコネクタが各々設けられ、
3)前記供給管接続部および排出管接続部から前記流体供給管および流体排出管をそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞する、
ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本願第1の発明に係る物品の滅菌処理方法によれば、所定の薬液を用いて滅菌処理を施すことにより良好な滅菌状態が得られる。また、アルコールを用いて前記第2洗浄を施した後にアルコールを容器内から排出させるが、この排出工程の終了時点では、アルコールが物品の滅菌処理領域に付着し残存している。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、物品の滅菌処理領域が乾燥し易くなる。従って、アルコール排出工程の後に容器内に所定の気体を送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける物品についても、支障なく気体を用いた乾燥処理を行えるようになる。更に、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置の全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0019】
本願第2の発明に係る物品の滅菌処理および保存方法によれば、薬液を用いた滅菌処理を終え乾燥処理された物品は、配管取り外し工程で、流体供給管および流体排出管を容器から取り外し容器が密閉された上で、密閉された当該容器内に収納されたままで所定の保存場所に移動させられ、容器ごと保存されるので、従来のように、滅菌処理を終えた後に再び容器の蓋を開けて滅菌処理済みの物品を取り出す必要はない。従って、滅菌処理済みの物品は、当該物品が使用に供されるまでは外気に触れることはなく、物品の滅菌状態を維持する上で極めて有利である。また、保管がある程度長期間にわたる場合でも、滅菌状態を良好に維持するために特別な保管方法を講じる必要はなく、保管場所の設備コストが嵩むことを回避できる。
【0020】
この滅菌処理および保存方法においては、前記洗浄工程の後で前記乾燥工程の前に、前記容器内に所定のアルコールを供給して物品をアルコールで洗浄する第2洗浄を行うことが好ましい。
すなわち、アルコールを用いて前記第2洗浄を施した後にアルコールを容器内から排出させるが、この排出工程の終了時点では、アルコールが物品の滅菌処理領域に付着し残存している。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、物品の滅菌処理領域が乾燥し易くなる。従って、アルコール排出工程の後に容器内に所定の気体を送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける物品についても、支障なく気体を用いた乾燥処理を行えるようになる。更に、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置の全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0021】
また、以上の滅菌処理および保存方法において、より好ましくは、前記容器には、流体供給管が着脱可能に接続されるコネクタを有する供給管接続部と、流体排出管が着脱可能に接続されるコネクタを有する排出管接続部と、が設けられており、前記配管取り外し工程で、供給管接続部および排出管接続部から流体供給管および流体排出管がそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞するので、配管取り外し工程で、流体供給管および流体排出管を容器から取り外し容器を密閉する際には、各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞して容器が密閉される。従って、配管取り外し工程が容易に行え、また、容器は迅速に密閉されるので、滅菌処理済みの物品の滅菌状態を維持する上でより一層有利になる。
【0022】
本願第3の発明に係る滅菌処理装置によれば、薬液を用いた滅菌処理や洗浄水を用いた洗浄処理だけでなく、アルコール給排手段によりアルコールを用いた洗浄処理も行うことができる。
【0023】
この滅菌処理装置において、より好ましくは、前記制御手段を備えることにより、薬液給排制御、第1洗浄制御、アルコール給排制御および乾燥制御の一連の制御を自動で行うことができる。
また、アルコールを用いて第2洗浄処理を施した後にアルコールを容器内から排出させるが、この排出工程の終了時点では、アルコールが物品の滅菌処理領域に付着し残存している。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、物品の滅菌処理領域が乾燥し易くなる。従って、アルコール排出工程の後に容器内に所定の気体を送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける物品についても、支障なく気体を用いた乾燥処理を行えるようになる。更に、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置の全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0024】
本願第4の発明に係る物品の滅菌処理および保存用容器によれば、前記容器には、流体供給管が着脱可能に接続されるコネクタを有する供給管接続部と、流体排出管が着脱可能に接続されるコネクタを有する排出管接続部とが設けられており、供給管接続部および排出管接続部から流体供給管および流体排出管がそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞するので、容器は迅速に密閉され、滅菌処理済みの物品の滅菌状態を維持する上でより一層有利になる。
滅菌処理を終えた物品は、流体供給管および流体排出管を容器から取り外し容器が密閉された上で、密閉された当該容器内に収納されたままで所定の保存場所に移動させて容器ごと保存することができ、従来のように、滅菌処理を終えた後に再び容器の蓋を開けて滅菌処理済みの物品を取り出す必要はない。従って、滅菌処理済みの物品は、当該物品が使用に供されるまでは外気に触れることはなく、物品の滅菌状態を維持する上で極めて有利である。また、保管がある程度長期間にわたる場合でも、滅菌状態を良好に維持するために特別な保管方法を講じる必要はなく、保管場所の設備コストが嵩むことを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、腹部のエコー画像などの撮像に用いるエコープローブの滅菌処理に適用した場合を例にとって、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、かかるエコー画像は、例えば切開手術を行った場合などに腹部等の状態(つまり腹部内の臓器の状態)を調べるのに用いられるもので、切開手術時などに患者の腹部内の臓器に直接に触れるので、そのエコープローブには極めて高い滅菌性が求められる。このエコープローブの場合、好ましくは、立体的なエコー画像を得る等のために、プローブ本体内部にオイルが内包されている。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る滅菌処理装置(以下、適宜、単に「処理装置」或いは「装置」と略称する)の全体構成の概略を模式的に示す説明図である。
本実施形態に係る滅菌処理装置Mは、薬液を用いて滅菌処理対象の物品W(本実施形態では前記エコープローブ)に滅菌処理を施すものであり、図1に示すように、この滅菌処理に際して前記エコープローブWを収納する容器1を備えている。この容器1は、エコープローブWを出し入れさせることができる開口2hを有する本体部2と、前記開口2hを開閉可能に覆う蓋部3とを備えている。尚、エコープローブWの端末側にはコードWdの一端側が固定されている。
【0027】
蓋部3を開いて開口2hからエコープローブWを本体部2の内部に入れ、本体部2の底部2b上に配設された載置台4上に当該エコープローブWを載置した後、蓋部3が閉じられる。本体部2および蓋部3の外周部には、フランジ部2f及び3fがそれぞれ形成されており、このフランジ部2f,3fどうしを衝合させて複数のネジ部材9を用いて両者を結合することにより、本体部2と蓋部3とが密閉される。尚、本体部2の底部2bには、容器1を安定して支持するための脚部5が固定されている。
【0028】
前記蓋部3の上面には、第1配管ラインL1,第2配管ラインL2にそれぞれ接続される第1接続管部6,第2接続管部7が上方に向けて突出するように一体的に設けられている。また、本体部2の底部2bには、第3配管ラインL3に接続される第3接続管部8が下方に向けて突出するように一体的に設けられている。これら第1,第2,第3接続管部6,7,8の先端には、接続用のコネクタとして所謂ワンタッチ・カプラ6C,7C,8Cがそれぞれ固定される一方、第1,第2,第3配管ラインL1,L2,L3の端末には、前記カプラ6C,7C,8Cと組み合わされるワンタッチ・カプラL1C,L2C,L3Cがそれぞれ固定されている。
【0029】
そして、第1接続管部6と第1配管ラインL1とは前記ワンタッチ・カプラ6C及びL1Cを介して、第2接続管部7と第2配管ラインL2とは前記ワンタッチ・カプラ7C及びL2Cを介して、また、第3接続管部8と第3配管ラインL3とは前記ワンタッチ・カプラ8C及びL3Cを介して、それぞれワンタッチで着脱(つまり接続および取り外し)でき、しかも、取り外して接続を解除した際には、ワンタッチ・カプラ6C,7C,8C及びL1C,L2C,L3Cの自動閉塞機構により、第1,第2,第3接続管部6,7,8の先端部および第1,第2,第3配管ラインL1,L2,L3の端末部が、それぞれ自動的に閉塞されるようになっている。
【0030】
尚、このようなワンタッチ・カプラ6C,7C,8C及びL1C,L2C,L3Cとしては、従来公知のものと同様のものが適用可能である。
また、容器1及び第1,第2,第3配管ラインL1,L2,L3の材質としては、後述する薬液,アルコール及び洗浄水に対する耐性を有し、容器1及び配管としての強度や剛性などを付与することができるものであれば、従来公知の種々の材質が適用可能である。
【0031】
前記第1接続管部6,第2接続管部7及び第3接続管部8には、具体的には図示しなかったが、管内の液体の有無を検知する検知センサが設けられており、容器1内に液体を供給する際には、第3接続管部8の検知センサのみならず第1及び第2接続管部6及び7の検知センサも液体の存在を検知することにより、液体が容器1をオーバーフローするまで供給されたことが感知される。一方、容器1内から液体を排出させる際には、第1及び第2接続管部6及び7の検知センサのみならず第3接続管部8の検知センサも液体の存在を非検知状態となることにより、液体が容器1内から完全に排出されたことが感知される。
【0032】
このような検知センサとしては、例えば、従来公知の発光素子と受光素子とを組み合わせたタイプのもの、すなわち、検知対象の配管を挟んで直径方向に対向するように発光素子と受光素子とを配置した検知センサを適用することができる。このタイプの検知センサは、光の屈折率が液体の有無によって変化する特性を利用したもので、発光素子を発光させた際の受光素子の受光レベルにより、管内の液体の有無を検知することができる。
尚、前記第1接続管部6,第2接続管部7及び第3接続管部8の管内の液体の有無を検知するためのセンサとしては、前記タイプのものに限らず、従来公知の種々のタイプの液体検知センサが適用可能である。
【0033】
前記第1配管ラインL1は、基本的には容器1に対して気体(本実施形態ではエア)を給排する配管ラインであり、ワンタッチ・カプラL1Cが取り付けられた側と反対側の端部にはエアポンプAPが接続され、該エアポンプAPとカプラL1Cの間には、エア用の除菌フィルタF1(第1除菌フィルタ)が介設されている。また、この第1除菌フィルタF1とエアポンプAPの間からは、大気に連通する分岐ラインB1(第1分岐ライン)が分岐しており、この第1分岐ラインB1には、エア用の電磁弁SV1(第1電磁弁)が介設されている。
【0034】
第2配管ラインL2は、基本的には容器1の上部から液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)及び気体(エア)を排出させる配管ラインであり、ワンタッチ・カプラL2Cが取り付けられた側と反対側の端部は、排出された前記液体及び/又は気体を受容する外部タンク(不図示)に連通し、この端部の近傍には切換弁KV1(第1切換弁)が介設されている。また、この第1切換弁K1とワンタッチ・カプラL2Cの間からは、逆止弁GV1(第1逆止弁)を介設した分岐ラインB2(第2分岐ライン)が分岐しており、この第2分岐ラインB2の端末側は、切換弁KV3(第3切換弁)に接続されている。前記第1逆止弁GV1は、第3切換弁KV3から第2配管ラインL2側への流体の流れを許容し、その逆向きの流れを禁止するものである。
前記第1切換弁KV1は、第3分岐ラインB3を介して切換弁KV2(第2切換弁)と繋がっており、この第2切換弁KV2は、第1接続管D1,第2接続管D2をそれぞれ介して、後述する第1貯留タンクT1,第2貯留タンクT2に接続されている。
【0035】
第3配管ラインL3は、基本的には容器1の下部から液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)を給排する配管ラインであり、ワンタッチ・カプラL3Cが取り付けられた側から近い順に、排液用のポンプWP3(第3ポンプ),電磁弁SV3(第3電磁弁),前記第3切換弁KV3,第4切換弁KV4,アルコールを貯える貯留タンクT2(第2タンク)が介設されている。また、前記第3ポンプWP3とワンタッチ・カプラL3Cの間からは、逆止弁GV3(第3逆止弁)を介設した分岐ラインB4(第4分岐ライン)が分岐しており、この第4分岐ラインB4は、第5切換弁KV5に接続されている。前記第3逆止弁GV3は、第5切換弁KV5から第3配管ラインL3側への流体の流れを許容し、その逆向きの流れを禁止するものである。
【0036】
前記第1配管ラインL1は、容器1内にエアを供給する際に「流体(エア)供給管」として作用するものである。また、前記第2配管ラインL2は、エアが容器1内を通過する際ならびに容器1内から液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)を排出させる際に「流体排出管」として作用するものである。更に、前記第3配管ラインL3は、容器1内に液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)を供給する際には「流体供給管」として作用する一方、容器1内から液体(薬液,アルコール若しくは洗浄水)を排出させる際には「流体排出管」として作用するものである。
【0037】
前記第5切換弁KV5は、第5分岐ラインB5を介して、薬液を貯える第1貯留タンクT1に繋がっている。この第1貯留タンクT1は、薬液用のポンプWP1(第1ポンプ)を介設した接続管D3(第3接続管)を介して前記第5切換弁KV5に接続されている。本実施形態では、滅菌処理用の薬液として、例えば、強酸性の過酢酸を用いた。
また、本実施形態に係る滅菌処理装置Mには、一端側が電磁弁SV2(第2電磁弁)を介して水道配管(不図示)に連通した配管ラインL4(第4配管ライン)が設けられており、この第4配管ラインL4の他端側は、逆止弁GV2(第2逆止弁),アルコール用のポンプWP2(第2ポンプ)を介して前記第2タンクT2と連通している。前記第2逆止弁GV2は、第2ポンプWP2から第2電磁弁SV2側への流体の流れを許容し、その逆向きの流れを禁止するものである。
【0038】
この第2逆止弁GV2と第2電磁弁SV2の間からは、前記第5切換弁KVに連通する分岐ラインB6(第6分岐ライン)が分岐しており、この第6分岐ラインB6には、水用の除菌フィルタF2(第2除菌フィルタ)が介設されている。この第2除菌フィルタF2としては、好ましくは、非常に除菌効果が高い中空糸フィルタが用いられている。
【0039】
本実施形態に係る滅菌処理装置Mには、具体的には図示しなかったが、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成された制御ユニットが設けられており、前記各ポンプAP,WP1〜WP3、各電磁弁SV1〜SV3及び各切換弁KV1〜KV5等は何れも、この制御ユニットに対して信号授受可能に接続され、制御ユニットからの制御信号により作動制御されるようになっている。尚、本実施形態では、前記各電磁弁SV1〜SV3は電磁式の開閉制御弁であり、各切換弁KV1〜KV5は電磁式の流路切換制御弁である。
【0040】
尚、後述するように、前記滅菌処理装置Mでは、滅菌処理対象のエコープローブWを収納した容器1内に所定の薬液を満たして滅菌処理が施され、エコープローブWの薬液内への浸漬状態を保った後、所定時間が経過すると、容器1内から薬液が排出されるが、これだけではエコープローブWの表面に薬液が残ることになる。薬液の性質によっては、表面に薬液成分が残留したままでは、滅菌処理済みの物品として使用に差し支えが生じる場合も考えられるので、エコープローブWの表面から薬液成分をできるだけ除去しておくことが一般に望ましい。
【0041】
このように滅菌処理後にエコープローブWの表面に残留した薬液成分を除去する方法としては、洗浄水を用いた洗浄処理を行うことが考えられる。この場合、清浄度の高い逆浸透水を洗浄水として用いる方法も考えられるが、この方法では、逆浸透水を得るための設備が大掛かりなものとなるので、設備コストが嵩むという難点がある。そこで、本実施形態では、後述するように、除菌効果の高いマイクロフィルタ(典型的には中空糸フィルタ)で濾過した水を洗浄水として用いるようにしている。
【0042】
また、洗浄処理を終えて容器1内から洗浄水を排出させても、エコープローブWの表面には水滴が残るので乾燥させる必要があり、この乾燥処理に時間が掛かるという問題があるが、洗浄水による第1の洗浄処理後にアルコールを用いた第2の洗浄処理を施し、その後にアルコールを容器内から排出させることで、このアルコール排出工程の終了時点では、アルコールが物品の滅菌処理領域に付着し残存することとなる。換言すれば、第1の洗浄処理で物品表面に付着残留した洗浄水は、アルコールを用いた第2の洗浄処理を施すことによってアルコールで置換されることになる。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、物品の滅菌処理領域が乾燥し易くなっている。そこで、アルコール排出工程の後に容器内に所定の気体を送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱した気体を用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができるようにしている。
【0043】
以上のように構成された滅菌処理装置Mの作動について、添付フローチャートを参照しながら説明する。
まず、容器1の蓋部3をあけて本体部2内に滅菌処理対象の物品W(エコープローブ)を入れ、載置台4上に載置した後に蓋部4を閉じ、ネジ部材9を用いて蓋部3と本体部2とを密閉する。この作業は、容器1が滅菌処理装置Mに組み込まれた状態、つまり、第1接続管部6と第1配管ラインL1とが前記ワンタッチ・カプラ6C及びL1Cを介して、第2接続管部7と第2配管ラインL2とが前記ワンタッチ・カプラ7C及びL2Cを介して、また、第3接続管部8と第3配管ラインL3とが前記ワンタッチ・カプラ8C及びL3Cを介して、それぞれ接続された状態で行っても良く、或いは、容器1を滅菌処理装置Mから取り外した状態で行い、その後に、容器1を滅菌処理装置Mに組み込むようにしても良い。以上のようにして、滅菌処理対象のエコープローブWを容器1内に収納するセット工程が行われる。
【0044】
このセット工程を終えると、装置Mの電源をONし(ステップ#1)、更にスタートスイッチ(不図示)をONすることで(ステップ#2)、装置Mの作動が開始される。
この初期状態では、第5切換弁KV5は、第3接続管D3と第4分岐ラインB4とを連通させる側に切り換えられている。そして、第1ポンプWP1がまず駆動され、第3接続管D3,第5切換弁KV5,第4分岐ラインB4,第3逆止弁GV3及び第3配管ラインL3を順次介して、容器1内に薬液が供給される(ステップ#3)。
【0045】
次に、ステップ#4で、薬液が容器1をオーバーフローするまで供給されたか否かが判定される。これは、容器1内にエアが残存し、薬液による滅菌処理が不十分なものとなることを確実に防止するためである。このステップ#4での判定結果がYESになると、ステップ#5で、第1ポンプWP1の駆動が停止され、所定時間(例えば10分間)だけ、その状態が維持される。この状態では、図2に示すように、容器1内のエコープローブWは、完全に薬液中に浸漬している。このようにして、薬液で滅菌処理する滅菌処理工程が行われる。
尚、このとき、第3電磁弁SV3は閉じられ、且つ、第1切換弁KV1は第2配管ラインL2と第3分岐ラインB3とを連通させる側に、第2切換弁KV2は第3分岐ラインB3と第1タンクT1とを連通させる側に、それぞれ切り換えられており、薬液は、一連の閉ループの管路を通って、容器1と第1タンクT1との間で環流するようになっている。
【0046】
以上の滅菌処理工程が終了すると第3電磁弁SV3が開かれ(ステップ#6)、更に第3ポンプWP3が駆動されることにより(ステップ#7)、容器1内から薬液を排出させる薬液排出工程が行われる。この薬液排出工程では、図3に示すように、容器1内の薬液は、第3配管ラインL3,第5分岐ラインB5を順次介して、更に、第2配管ラインL2,第3分岐ラインB3,第1接続管D1を順次介して、それぞれ排出され第1タンクT1内に回収される。このとき、第3切換弁KV3は第3電磁弁SV3と第4切換弁KV4とを連通させる側に、また、この第4切換弁KV4は第3配管ラインL3と第5分岐ラインB5とを連通させる側に、それぞれ切り換えられている。尚、図2及び図3では、薬液で満たされる管路領域または薬液が流通する管路領域が、図中にハッチング(斜線)を施すことにより明示されている。
そして、ステップ#8で、容器1内の薬液が完全に排出されたか否かが判定され、この判定結果がYESになると第3ポンプWP3の駆動が停止される(ステップ#9)。
【0047】
次に、ステップ#10で、前記第3電磁弁SV3を閉じ、且つ、第1切換弁KV1を第2配管ラインL2と外部タンク(不図示)とを連通させる側に、第5切換弁KV5を第6分岐ラインB6と第4分岐ラインB4とを連通させる側に、それぞれ切り換える。
そして、第2電磁弁SV2を開くことにより、容器1内に洗浄水を供給してエコープローブWを洗浄する洗浄工程が行われる。この洗浄工程では、図4に示すように、第4配管ラインL4,第6分岐ラインB6,第5切換弁KV5,第4分岐ラインB4,第3逆止弁GV3及び第3配管ラインL3を順次介して、第2フィルタF2で濾過されて清浄化された水が、洗浄水として容器1内に供給される(ステップ#11)。尚、この工程では、洗浄水は環流されるのではなく、第1切換弁KV1を通って外部タンク(不図示)内に排出される。
【0048】
次に、ステップ#12で、洗浄水が容器1をオーバーフローするまで供給されたか否か、更に、より好ましくは、このオーバーフロー状態が所定時間(例えば数分間)継続されたか否かが判定される。これは、容器1内に薬液が残存し、洗浄水による洗浄処理が不十分なものとなることを確実に防止するためである。このステップ#12での判定結果がYESになると、第2電磁弁SV2が閉じられる(ステップ#13)。
【0049】
以上のようにして洗浄が終了すると第3電磁弁SV3が開かれ(ステップ#14)、更に第3ポンプWP3が駆動されることにより(ステップ#15)、容器1内から洗浄水が排出される。この洗浄水の排出に際しては、図5に示すように、容器1内の洗浄水は、第2配管ラインL2,第1切換弁KV1を順次介して、更に、第3配管ラインL3,第2分岐ラインB2,第2配管ラインL2,第1切換弁KV1を順次介して、それぞれ外部タンク(不図示)に向かって排出される。尚、図4及び図5では、洗浄水で満たされる管路領域または洗浄水が流通する管路領域が、図中にハッチング(斜線)を施すことにより明示されている。
そして、ステップ#16で、容器1内の洗浄水が完全に排出されたか否かが判定され、この判定結果がYESになると、第3ポンプWP3の駆動が停止され、第3電磁弁SV3が閉じられる(ステップ#17)。
【0050】
以上のような洗浄水を用いた第1洗浄工程(洗浄および洗浄水の排出)が終了すると、次に、ステップ#18で、第1切換弁KV1が第2配管ラインL2と第3分岐ラインB3とを連通させる側に、第2切換弁KV2が第3分岐ラインB3と第2タンクT2とを連通させる側に、第3切換弁KV3が第3電磁弁SV3と第4切換弁KV4とを連通させる側に、第4電磁弁KV4が第3配管ラインL3と第1タンクT1とを連通させる側に、それぞれ切り換えられる。
そして、第2ポンプWP2を駆動することにより、図6に示すように、第4配管ラインL4,第6分岐ラインB6,第5切換弁KV5,第4分岐ラインB4,第3逆止弁GV3及び第3配管ラインL3を順次介して、第2タンクT2内のアルコールが容器1内に供給される(ステップ#19)。このとき、アルコールは、一連の閉ループの管路を通って、容器1と第2タンクT2との間で環流するようになっている。
【0051】
次に、ステップ#20で、アルコールが容器1をオーバーフローするまで供給されたか否か、更に、より好ましくは、このオーバーフロー状態が所定時間(例えば数分間)継続されたか否かが判定される。これは、容器1内にエアが残存し、アルコールによる滅菌処理が不十分なものとなることを確実に防止するためである。このステップ#20での判定結果がYESになると、第2ポンプWP2の駆動が停止される(ステップ#21)。
この状態では、図6に示されるように、容器1内のエコープローブWは完全にアルコール中に浸漬している。このようにして、物品をアルコールで洗浄する第2洗浄工程が行われる。
【0052】
以上の第2洗浄工程が終了すると第3電磁弁SV3が開かれ(ステップ#22)、更に第3ポンプWP3が駆動されることにより(ステップ#23)、容器1内からアルコールを排出させるアルコール排出工程が行われる。このアルコール排出工程では、図7に示すように、容器1内のアルコールは、第3配管ラインL3を順次介して、更に、第2配管ラインL2,第3分岐ラインB3,第2接続管D2を順次介して、それぞれ排出され第2タンクT2内に回収される。このとき、第3切換弁KV3は第3電磁弁SV3と第4切換弁KV4とを連通させる側に、また、この第4切換弁KV4は第3配管ラインL3と第2タンクT2とを連通させる側に、それぞれ切り換えられている。尚、図6及び図7では、アルコールで満たされる管路領域またはアルコールが流通する管路領域が、図中にハッチング(斜線)を施すことにより明示されている。
そして、ステップ#24で、容器1内のアルコールが完全に排出されたか否かが判定され、この判定結果がYESになると第3ポンプWP3の駆動が停止される(ステップ#25)。
【0053】
こうしてアルコール排出工程を終えると、ステップ#26で、第1切換弁KV1が第2配管ラインL2と外部タンク(不図示)とを連通させる側に、また、第3切換弁KVが第3配管ラインL3と第2分岐ラインB2とを連通させる側に、それぞれ切り換えられる。
そして、ステップ#27で、エアポンプAPを駆動することにより、容器1内のエコープローブWを乾燥させる乾燥工程が行われる。この乾燥工程では、図8に示すように、エア用の第1フィルタF1を介して第1配管ラインL1から容器1内にエアが吹き込まれ、このエアは、第2配管ラインL2を介して外部タンク(不図示)に向かって排出される。
【0054】
この乾燥工程は、好ましくは数十分にわたって行われ、これが終了するとエアポンプAPの駆動が停止される(ステップ#28)。
以上により、容器1内に収納されたエコープローブWに対する、薬液による滅菌処理,容器1内からの薬液の排出,洗浄水による第1洗浄,アルコールによる第2洗浄,容器1内からのアルコールの排出,エアによる乾燥の一連の滅菌処理工程が終了する。
本実施形態に係る滅菌処理装置Mでは、前記制御ユニット(不図示)により、薬液給排制御、洗浄制御、アルコール給排制御および乾燥制御の一連の制御が、人手を煩わすことなく自動で行うことができるので、より正確で安定した制御を行える。
【0055】
そして、ステップ#29で、次サイクルの滅菌処理工程に備えて、各切換弁の切換状態を初期状態に復帰させる切換制御が行われる。つまり、第1切換弁KV1が第2配管ラインL2と第3分岐ラインB3とを連通させる側に、第2切換弁KV2が第3分岐ラインB3と第1タンクT1とを連通させる側に、第3切換弁KV3が第3電磁弁SV3と第4切換弁KV4とを連通させる側に、第4切換弁KV4が第3配管ラインL3と第5分岐ラインB5とを連通させる側に、また、第5切換弁KV5が第3接続管D3と第4分岐ラインB4とを連通させる側に、それぞれ切り換えられる。これにより、当該処理サイクルでの滅菌処理装置Mの作動が終了する。
【0056】
その後、容器1の第1接続管部6と第1配管ラインL1とを結合している前記ワンタッチ・カプラ6C及びL1Cの結合、第2接続管部7と第2配管ラインL2とを結合している前記ワンタッチ・カプラ7C及びL2Cの結合、及び第3接続管部8と第3配管ラインL3とを結合している前記ワンタッチ・カプラ8C及びL3Cの結合をそれぞれ解除する配管取り外しが行われ、これにより、滅菌処理済みのエコープローブWを収納したままの容器1が滅菌処理装置Mから取り外し可能となる。
【0057】
こうして容器1を滅菌処理装置Mから取り外した際には、ワンタッチ・カプラ6C,7C,8C及びL1C,L2C,L3Cの自動閉塞機構により、第1,第2,第3接続管部6,7,8の先端部および第1,第2,第3配管ラインL1,L2,L3の端末部が、それぞれ自動的に閉塞される。従って、容器1からの配管取り外し作業が容易に行え、また、容器1は迅速に密閉されるので、滅菌処理済みのエコープローブWの滅菌状態を維持する上でより一層有利になる。
そして、取り外された容器1は所定の保存場所に運ばれる。つまり、滅菌処理されたエコープローブWは、密閉された容器1内に収納された状態で、当該容器1ごと前記保存場所に保存される。
【0058】
このように、滅菌処理を終え乾燥処理されたエコープローブWは、配管取り外し工程で、第1〜第3配管ラインL1〜L3を容器1から取り外し、容器1が密閉された上で、密閉された当該容器1内に収納されたままで所定の保存場所に移動させられ、容器1ごと保存されるので、従来のように、滅菌処理を終えた後に再び容器の蓋を開けて滅菌処理済みの物品を取り出す必要はない。
従って、滅菌処理済みのエコープローブWは、当該エコープローブWが使用に供されるまでは外気に触れることはなく、その滅菌状態を維持する上で極めて有利である。また、保管がある程度長期間にわたる場合でも、滅菌状態を良好に維持するために特別な保管方法を講じる必要はなく、保管場所の設備コストが嵩むことを回避できるのである。
【0059】
本実施形態では、洗浄水による第1洗浄工程の後で乾燥工程の前に、容器1内に所定のアルコールを供給してエコープローブWをアルコールで洗浄する第2洗浄工程を行うので、薬液を用いた滅菌処理のみの場合に比してより良好な滅菌状態が得られる。
また、アルコールを用いて第2洗浄処理を施した後にアルコールを容器内から排出させるが、この排出工程の終了時点では、アルコールがエコープローブWの滅菌処理領域に付着し残存している。周知のようにアルコールは気化し易く、付着残存したアルコールが気化して周囲から気化熱を奪うことにより、エコープローブWの滅菌処理領域が乾燥し易くなる。従って、アルコール排出工程の後に容器1内にエアを送給して乾燥工程を行うことにより、特に加温あるいは加熱したエアを用いなくても、乾燥処理を比較的短時間で行うことができる。これにより、温度や熱の変化によって悪影響を受ける前記エコープローブWについても、支障なくエアを用いた乾燥処理を行えるようになる。更に、気体を加温または加熱して温風や熱風として容器内に送給する送給手段は不要で、滅菌処理装置Mの全体システムが複雑で大掛かりなものとなることを回避できる。
【0060】
次に、本発明の滅菌処理に用いる容器の変形例について説明する。尚、以下の説明おいて、前述の実施形態における場合と同様の構成を備え同様の作用をなすものについては、同一の符号を付しそれ以上の説明は省略する。
図13は本発明の実施形態に係る容器の変形例を示す分解斜視図である。この図に示すように、本変形例に係る容器61は、エコープローブWを出し入れさせることができる開口62hを有する本体部62と、前記開口62hを開閉可能に覆う蓋部63とを備えている。
【0061】
蓋部63を開いて開口62hからエコープローブWを本体部62の内部に入れた後、蓋部63が閉じられる。本体部62の上端および蓋部63の外周部には、フランジ部62f及び63fがそれぞれ形成されており、このフランジ部62f,63fどうしを衝合させて複数のネジ部材(不図示)を用いて両者を結合することにより、本体部62と蓋部63とが密閉される。尚、蓋部63の上面には、第1配管ラインL1,第2配管ラインL2をそれぞれ接続させる第1,第2接続管部(共に不図示)取り付けるための孔部H1,H2
が設けられている。
尚、第1〜第3配管ラインL1〜L3の容器61に対する着脱機構は、図1に示したものと基本的は同様である。
【0062】
本変形例では、本体部62内にエコープローブWを収納するに際して、エコープローブWの全ての部位の表面が薬液,洗浄液あるいはアルコールに浸漬されるように、容器61内にハンガー70が配設されている。
すなわち、図1〜図8に示した容器1の場合には、エコープローブWは、本体部2の底部2b上に配設された載置台4上に載置されるので、この載置台4と接触する表面部分では、薬液,洗浄液あるいはアルコールに浸漬され難く、滅菌処理が局部的に不十分なものとなりがちである。
【0063】
そこで、本変形例では、前記ハンガー70にエコープローブWを吊り下げ支持することにより、エコープローブWの全ての部位の表面が薬液,洗浄液あるいはアルコールに浸漬されるようにしている。
図14は変形例に係る容器61に用いられるハンガー70の平面説明図、図15はハンガー70の正面説明図で、また、図16はハンガー70の側面説明図である。更に、図17はエコープローブWを吊り下げ支持した状態を示す前記ハンガー70の全体斜視図、図18はエコープローブWを吊り下げ支持した状態を示す前記ハンガー70の正面説明図である。
これらの図に示すように、前記ハンガー70は、略上下方向に配設された複数の線材と略水平方向に配設された複数の線材とを組み合わせてフレーム体71が構成され、このフレーム体71に、エコープローブWのコードWd(図17及び図18参照)を巻き付けるのに好適な複数の曲折部73aを有するコード保持用線材73が取り付けられている。
【0064】
このコード保持用線材73よりも上側には、フレーム体71の上端において水平方向に配設された一対の水平ロッド線材72が位置しており、この一対の水平ロッド線材72の下方においてフレーム体71の直径方向(つまり、フレーム体71の下部リング線材76の直径方向)に横切るようにしてクロス線材74が配設されている。そして、図17及び図18に示されるように、コードWdを前記複数の折曲部73dに巻き付け、エコープローブWのコードWdが取り付けられた端末部を上方に向けた状態で、当該端末部を前記クロス線材74の中心部74cに支持させることにより、エコープローブWを吊り下げ支持することができる。
このとき、エコープローブWの本体部の何れの部位も容器61の壁面などに接触することがなく、エコープローブWの全ての部位の表面が薬液,洗浄液あるいはアルコールに浸漬されるようになっている。
【0065】
尚、以上の実施態様は、内部にオイルを内包したエコープローブWの滅菌処理についてのものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、その他のタイプのエコープローブについても、更には、エコープローブに限定されることなく、滅菌処理を要する他の種々の物品についても、有効に適用することができるものである。
また、本発明は、以上の実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更や改良を加え得るものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の滅菌処理方法、滅菌処理および保存方法、滅菌処理装置、並びに滅菌処理および保存用容器は、薬液を用いて所要の物品に滅菌処理を施すに際して、滅菌処理後の乾燥処理を比較的短時間で行え、また、滅菌処理後の物品の滅菌状態を比較的容易かつ確実に維持できるようにするものであり、例えば、超音波画像を得るためのエコープローブやその他の医療用具等の滅菌処理などにおいて、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る滅菌処理装置の全体構成の概略を模式的に示す説明図である。
【図2】薬液による滅菌処理工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図3】容器からの薬液の排出工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図4】容器への洗浄水の供給工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図5】容器からの洗浄水の排出工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図6】アルコールによる第2洗浄工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図7】容器からのアルコールの排出工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図8】エアによる乾燥工程を示す滅菌処理装置の説明図である。
【図9】前記滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートの一部である。
【図10】滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートの一部である。
【図11】滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートの一部である。
【図12】滅菌処理装置の作動を説明するためのフローチャートの一部である。
【図13】本発明の実施形態に係る容器の変形例を示す分解斜視図である。
【図14】前記変形例に係る容器に用いられるハンガーの平面説明図である。
【図15】前記ハンガーの正面説明図である。
【図16】前記ハンガーの側面説明図である。
【図17】エコープローブを吊り下げ支持した状態を示す前記ハンガーの全体斜視図である。
【図18】エコープローブを吊り下げ支持した状態を示す前記ハンガーの正面説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1,61…容器
2,62…(容器の)本体部
3,63…(容器の)蓋部
6…第1接続管部
6C…ワンタッチ・カプラ
7…第2接続管部
7C…ワンタッチ・カプラ
8…第3接続管部
8C…ワンタッチ・カプラ
L1…第1配管ライン
L1C…ワンタッチ・カプラ
L2…第2配管ライン
L2C…ワンタッチ・カプラ
L3…第3配管ライン
L3C…ワンタッチ・カプラ
M…滅菌処理装置
W…エコープローブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌処理対象の物品を所定の容器内に収納するセット工程と、
該セット工程の後に、前記容器内に所定の薬液を供給して前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、
該滅菌処理工程の後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液排出工程と、
該薬液排出工程の後に、前記容器内に洗浄水を供給して前記物品を洗浄する第1洗浄工程と、
該第1洗浄工程の後に、前記容器内に所定のアルコールを供給して前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄工程と、
該第2洗浄工程の後に、前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール排出工程と、
該アルコール排出工程の後に、前記容器内に所定の気体を送給して前記物品を乾燥させる乾燥工程と、
を有することを特徴とする物品の滅菌処理方法。
【請求項2】
滅菌処理対象の物品を所定の容器内に収納するセット工程と、
前記容器内に流体を供給する流体供給管および前記容器内から流体を排出させる流体排出管を接続する配管接続工程と、
前記セット工程と配管接続工程とを終えた後に、前記容器内に所定の薬液を供給して前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、
該滅菌処理工程の後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液排出工程と、
該薬液排出工程の後に、前記容器内に洗浄水を供給して前記物品を洗浄する洗浄工程と、
該洗浄工程の後に、前記容器内に所定の気体を送給して前記物品を乾燥させる乾燥工程と、
該乾燥工程の後に、前記流体供給管および前記流体排出管を前記容器から取り外し容器を密閉する配管取り外し工程と、
該配管取り外し工程の後に、前記物品を収納したままの前記容器を所定の保存場所に移動させ、該容器ごと保存する保存工程と、
を有することを特徴とする物品の滅菌処理および保存方法。
【請求項3】
前記洗浄工程の後で前記乾燥工程の前に、前記容器内に所定のアルコールを供給して前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄工程と、該第2洗浄工程の後に前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール排出工程とを行うことを特徴とする請求項2記載の物品の滅菌処理および保存方法。
【請求項4】
前記容器には、前記流体供給管が着脱可能に接続されるコネクタを有する供給管接続部と、前記流体排出管が着脱可能に接続されるコネクタを有する排出管接続部と、が設けられており、
前記配管取り外し工程で、前記供給管接続部および排出管接続部から前記流体供給管および流体排出管がそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の物品の滅菌処理および保存方法。
【請求項5】
薬液を用いて滅菌処理対象の物品に滅菌処理を施す滅菌処理装置であって、
前記物品を収納する容器と、
前記容器内に流体を供給する流体供給管と、
前記容器内から流体を排出させる流体排出管と、
前記流体供給管を介して前記容器内に前記薬液を供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から滅菌処理後の前記薬液を排出させる薬液給排手段と、
前記流体供給管を介して前記容器内に洗浄水を供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から洗浄処理後の前記洗浄水を排出させる洗浄水給排手段と、
前記流体供給管を介して前記容器内にアルコールを供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から洗浄処理後の前記アルコールを排出させるアルコール給排手段と、
前記流体供給管を介して前記容器内に所定の気体を送給し、前記流体排出管を介して前記容器内から前記気体を排出させる乾燥手段と、
を備えたことを特徴とする滅菌処理装置。
【請求項6】
前記薬液給排手段を駆動制御して、前記物品を収納した容器内に前記薬液を供給し、前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理を行った後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液給排制御と、
該薬液給排制御の後に、前記洗浄水給排手段を駆動制御して前記物品を洗浄する第1洗浄制御と、
該第1洗浄制御の後に、前記アルコール給排手段を駆動制御して、前記容器内に前記アルコールを供給し、前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄を行った後に、前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール給排制御と、
該アルコール給排制御の後に、前記乾燥手段を駆動制御して、前記容器内に所定の気体を送給し前記物品を乾燥させる乾燥制御と、
を行う制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項5記載の滅菌処理装置。
【請求項7】
薬液を用いて滅菌処理対象の物品に滅菌処理を施すに際して、前記物品を収納する容器であって、
前記物品を出し入れし得る開口を有する本体部と、前記開口を開閉可能に覆う蓋部と、容器内に流体を供給する流体供給管が接続される供給管接続部と、容器内から流体を排出させる流体排出管が接続される排出管接続部とを備え、
前記供給管接続部および排出管接続部には、前記流体供給管および流体排出管をそれぞれ着脱可能に接続するコネクタが各々設けられ、
前記供給管接続部および排出管接続部から前記流体供給管および流体排出管をそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞する、
ことを特徴とする物品の滅菌処理および保存用容器。
【請求項1】
滅菌処理対象の物品を所定の容器内に収納するセット工程と、
該セット工程の後に、前記容器内に所定の薬液を供給して前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、
該滅菌処理工程の後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液排出工程と、
該薬液排出工程の後に、前記容器内に洗浄水を供給して前記物品を洗浄する第1洗浄工程と、
該第1洗浄工程の後に、前記容器内に所定のアルコールを供給して前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄工程と、
該第2洗浄工程の後に、前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール排出工程と、
該アルコール排出工程の後に、前記容器内に所定の気体を送給して前記物品を乾燥させる乾燥工程と、
を有することを特徴とする物品の滅菌処理方法。
【請求項2】
滅菌処理対象の物品を所定の容器内に収納するセット工程と、
前記容器内に流体を供給する流体供給管および前記容器内から流体を排出させる流体排出管を接続する配管接続工程と、
前記セット工程と配管接続工程とを終えた後に、前記容器内に所定の薬液を供給して前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理工程と、
該滅菌処理工程の後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液排出工程と、
該薬液排出工程の後に、前記容器内に洗浄水を供給して前記物品を洗浄する洗浄工程と、
該洗浄工程の後に、前記容器内に所定の気体を送給して前記物品を乾燥させる乾燥工程と、
該乾燥工程の後に、前記流体供給管および前記流体排出管を前記容器から取り外し容器を密閉する配管取り外し工程と、
該配管取り外し工程の後に、前記物品を収納したままの前記容器を所定の保存場所に移動させ、該容器ごと保存する保存工程と、
を有することを特徴とする物品の滅菌処理および保存方法。
【請求項3】
前記洗浄工程の後で前記乾燥工程の前に、前記容器内に所定のアルコールを供給して前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄工程と、該第2洗浄工程の後に前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール排出工程とを行うことを特徴とする請求項2記載の物品の滅菌処理および保存方法。
【請求項4】
前記容器には、前記流体供給管が着脱可能に接続されるコネクタを有する供給管接続部と、前記流体排出管が着脱可能に接続されるコネクタを有する排出管接続部と、が設けられており、
前記配管取り外し工程で、前記供給管接続部および排出管接続部から前記流体供給管および流体排出管がそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の物品の滅菌処理および保存方法。
【請求項5】
薬液を用いて滅菌処理対象の物品に滅菌処理を施す滅菌処理装置であって、
前記物品を収納する容器と、
前記容器内に流体を供給する流体供給管と、
前記容器内から流体を排出させる流体排出管と、
前記流体供給管を介して前記容器内に前記薬液を供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から滅菌処理後の前記薬液を排出させる薬液給排手段と、
前記流体供給管を介して前記容器内に洗浄水を供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から洗浄処理後の前記洗浄水を排出させる洗浄水給排手段と、
前記流体供給管を介して前記容器内にアルコールを供給し、前記流体排出管を介して前記容器内から洗浄処理後の前記アルコールを排出させるアルコール給排手段と、
前記流体供給管を介して前記容器内に所定の気体を送給し、前記流体排出管を介して前記容器内から前記気体を排出させる乾燥手段と、
を備えたことを特徴とする滅菌処理装置。
【請求項6】
前記薬液給排手段を駆動制御して、前記物品を収納した容器内に前記薬液を供給し、前記物品を前記薬液で滅菌処理する滅菌処理を行った後に、前記容器内から前記薬液を排出させる薬液給排制御と、
該薬液給排制御の後に、前記洗浄水給排手段を駆動制御して前記物品を洗浄する第1洗浄制御と、
該第1洗浄制御の後に、前記アルコール給排手段を駆動制御して、前記容器内に前記アルコールを供給し、前記物品を前記アルコールで洗浄する第2洗浄を行った後に、前記容器内から前記アルコールを排出させるアルコール給排制御と、
該アルコール給排制御の後に、前記乾燥手段を駆動制御して、前記容器内に所定の気体を送給し前記物品を乾燥させる乾燥制御と、
を行う制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項5記載の滅菌処理装置。
【請求項7】
薬液を用いて滅菌処理対象の物品に滅菌処理を施すに際して、前記物品を収納する容器であって、
前記物品を出し入れし得る開口を有する本体部と、前記開口を開閉可能に覆う蓋部と、容器内に流体を供給する流体供給管が接続される供給管接続部と、容器内から流体を排出させる流体排出管が接続される排出管接続部とを備え、
前記供給管接続部および排出管接続部には、前記流体供給管および流体排出管をそれぞれ着脱可能に接続するコネクタが各々設けられ、
前記供給管接続部および排出管接続部から前記流体供給管および流体排出管をそれぞれ取り外された際には、前記各コネクタが前記供給管接続部および排出管接続部をそれぞれ自動的に閉塞する、
ことを特徴とする物品の滅菌処理および保存用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−190176(P2007−190176A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10951(P2006−10951)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000106106)サラヤ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000106106)サラヤ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】
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