説明

物品をコーティングする方法および装置

【課題】光学物品(例えば、光学レンズ)をコーティングするのに好適な方法および装置を提供すること。
【解決手段】一局面において、光学物品は、ホルダ内に配置され、コーティング材料のシートは、ノズル(例えば、扇形コータノズル)から、光学物品上に排出されて、光学物品上にコーティングを形成する。さらに、光学物品をコーティングする装置は、光学物品を保持するように構成されたホルダと、ノズルを有し、コーティング材料の非噴霧式のシートを供給するように構成されたフローコーティング塗布器と、該ホルダを、該コーティングシートを通過する所定の経路に沿って移動させて、該コーティング材料を該物品上に塗布して、該光学物品上にコーティングを形成するように構成された移動デバイスとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光学物品(例えば、光学レンズを含むがそれに限定されない)のような物品をコーティングする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のメガネのためのガラスまたはプラスチックレンズのような光学レンズは、今日広く使用される。機能的なコーティングが、これらのレンズの表面に塗布されることにより、該レンズに特定の所望の特性(例えば、若干の例を挙げるならば、向上した擦傷およびスクラッチの耐性、反射防止特性、または偏光特性)を提供し得る。これらのコーティングは、一般的に、スピンコーティング技術を用いて塗布され、該技術において、液体のコーティング材料は、レンズが回転している間に該レンズの中央に堆積される。遠心力が、コーティング材料を回転するレンズの表面上に広げる。レンズは、次に停止され、該コーティング材料は、例えば、加熱または空気乾燥によって、硬化され、コーティングレンズを形成する。
【0003】
たいていの使用に対して適切ではあるが、このスピンコーティング技術は、いくつかの欠点を有する。例えば、このスピンコーティング技術は、レンズ表面にわたって不均一なコーティングの厚さを生じ得、例えば、スピンコーティング技術によって塗布されたコーティングは、コーティングのフローをレンズの中心からレンズのエッジに外側に向ける遠心力によって、レンズのエッジにおいてレンズの中央よりも厚くなり得る。機能的なコーティングに対して、このことはレンズ表面にわたる性能の差を生じ得る。さらに、スピンコーティング技術は、多焦点レンズをコーティングするためには、十分に適してはいない。「多焦点レンズ」とは、1つ以上の焦点処方を有するレンズ、例えば、従来の二重焦点または三重焦点レンズを意味する。これらの多焦点レンズにおいては、一般的に1つの焦点処方と他の焦点処方との間にエッジがあり、その結果として、レンズの表面が一様でない、すなわち、レンズ表面にわたる一様な曲率または平坦性がない。スピンコーティングは、これらの一様でない表面領域において、コーティングフローの溜まり(pooling)または途切れを生じ得る。さらに、従来のスピンコータは、設計において相対的に複雑である。なぜならば、レンズが配置されるホルダは、スピンコーティング処理の間、所定の速度でレンズを回転させることが可能でなければならないからである。さらに、コーティングの前にレンズの回転を開始するため、およびコーティングの後にレンズを停止するために必要とされる時間は、コーティング効率およびスピンコータのスループットを減少させる。
【0004】
それゆえに、従来のスピンコーティングに付随する問題の少なくとも一部を取り除くか、または減少させる、物品(例えば、光学レンズ)をコーティングする方法および/または装置を提供することが有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
光学物品をコーティングする方法は、光学物品をホルダ内に配置することと、加圧下で散布されたコーティング材料の非噴霧式のシートを提供して、該光学物品上にコーティングを形成することとを包含する。1つのこれに限定されない実施形態においては、コーティング材料は圧力コータ(例えば、扇形コータのようなフローコータ)から散布される。
【0006】
光学物品をコーティングする別の方法は、物品をホルダ内に配置することと、扇形コータノズルからコーティング材料の非噴霧式のシートを提供することと、該ホルダを、所定の経路で該コーティング材料に対して移動させ、該光学物品上にコーティングを塗布することとを包含する。一実施形態においては、所定の経路は、直線経路である。別の実施形態においては、所定の経路は、非直線(例えば、曲線)経路である。
【0007】
光学物品をコーティングする装置は、光学物品を保持するように構成されたホルダと、コーティング材料の非噴霧式のシートを供給するように構成されたノズルを有するコーティング塗布器と、該コーティング材料シートを通って該ホルダを移動させて、該コーティング材料のコーティングを、該物品の少なくとも一部分の上に塗布するように構成された移動デバイスとを備える。
【0008】
光学レンズをコーティングする別の装置は、レンズを保持するように構成されたレンズホルダと、ロータリデバイスと、該レンズホルダに接続された第一の端部と該ロータリデバイスに接続された第二の端部とを有するアームのようなサポートと、非噴霧式のコーティング材料の扇形形状のシートを供給するように構成されたノズルを有する扇形コーティング塗布器とを備える。該装置は、該ロータリデバイスが、レンズホルダを、コーティングシートを非直線(例えば、曲線)経路で通過させるように構成される。
(項目1)
光学物品をコーティングする方法であって、
光学物品をホルダ内に配置することと、
コーティング材料の非噴霧式のシートを提供して、該光学物品上にコーティングを形成することと
を包含する、方法。
(項目2)
前記光学物品は、光学レンズである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記光学物品は、多焦点レンズである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記多焦点レンズは、二重焦点レンズまたは三重焦点レンズから選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記コーティング材料は、圧力コータから散布される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記コーティング材料は、扇形コータから散布される、項目1に記載の方法。
(項目7)
様々な曲率の複数の光学物品を、前記ホルダ内に配置することを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記コーティング材料を、前記光学物品の進行方向に対して垂直な軸から±45°の範囲内の角度に向けることを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記光学物品を、前記コーティング材料を通過する所定の経路に沿って移動させることを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記所定の経路は、直線経路である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記所定の経路は、曲線経路である、項目9に記載の方法。
(項目12)
項目1の方法によって作成された、光学物品。
(項目13)
光学物品をコーティングする装置であって、該装置は、
光学物品を保持するように構成されたホルダと、
ノズルを有し、コーティング材料の非噴霧式のシートを供給するように構成されたフローコーティング塗布器と、
該ホルダを、該コーティングシートを通過する所定の経路に沿って移動させて、該コーティング材料を該物品上に塗布して、該光学物品上にコーティングを形成するように構成された移動デバイスと
を備える、装置。
(項目14)
前記フローコーティング塗布器は、扇形コータである、項目13に記載の装置。
(項目15)
前記光学物品は、光学レンズである、項目13に記載の装置。
(項目16)
前記移動デバイスは、前記ホルダを、前記コーティングシートを通過する実質的に直線の経路を移動させるように構成される、項目13に記載の装置。
(項目17)
前記移動デバイスは、前記ホルダを、前記コーティングシートを通過する実質的に曲線の経路を移動させるように構成される、項目16に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第一のコーティングデバイスの側面からの概略図(縮尺は正しくない)である。
【図2】図2は、本発明の別のコーティングデバイスの平面図(縮尺は正しくない)である。
【図3】図3は、図2のコーティングデバイスの側面図(縮尺は正しくない)である。
【図4】図4は、多焦点レンズの前面図(縮尺は正しくない)である。
【図5】図5は、図4のレンズの側面からの断面図(縮尺は正しくない)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用される場合、「左」、「右」、「垂直に」、「水平に」、「上に」、「下に」などのような空間的または方向的な用語は、図面に示されるように本発明と関連する。しかしながら、本発明は、様々な代替的な方向性を仮定し得、結果としてこのような用語は限定するように考えられるべきではないことが理解されるべきである。さらに、本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲で使用される寸法、物理特性、処理パラメータ、成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、そうでないことが示されない限り、全ての場合において用語「ほぼ」によって修飾されることが理解されるべきである。従って、そうでないことが示されない場合には、以下の明細書および特許請求の範囲で述べられる数値は、取得されると考えられる所望の特性に依存して変更し得る。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しない場合には、各数値は、少なくとも報告された有効桁数字を考慮し、通常の丸め技術を適用することによって、解釈されるべきである。さらに、本明細書で開示される全ての範囲は、開始および終了の範囲の値と、その中に包含される任意のサブレンジおよびすべてのサブレンジとを包含することが理解されるべきである。例えば、「1〜10」という規定された範囲は、1という最小値と10という最大値と(を含む)の間の任意のサブレンジおよび全てのサブレンジ、すなわち、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わる、例えば、1〜3.3、4.7〜7.5、5.5〜10などの全てのサブレンジを含むと考えられるべきである。さらに、本明細書で使用される場合、用語「上に形成される」、「上に堆積される」または「上に塗布される」は、表面上に形成、堆積または塗布されるが、必ずしも該表面と接触している必要はない。例えば、基板「上に形成された」コーティングは、形成されたコーティングと基板との間に配置された同一または異なる組成物の1つ以上の他のコーティングを排除しない。本明細書で使用される場合、用語「重合体」または「重合体の」は、低重合体、単独重合体、共重合体、三元重合体(例えば、2つ以上のタイプの単量体または重合体から形成された重合体)をいう。用語「可視領域」または「可視光」は、380nm〜800nmの範囲の波長を有する電磁波放射をいう。用語「赤外線領域」または「赤外線放射」は、800nmより大きく100,000nmの範囲の波長を有する電磁波放射をいう。用語「紫外線領域」または「紫外線放射」は、300nmから380nm未満の範囲の波長を有する電磁波エネルギを意味する。「非噴霧式の」コーティングシートは、複数の個別のコーティング液滴を形成するために、コーティング材料が噴霧されない、すなわち、従来のスプレーコーティング方法のように意図的に空気と混合されないということを意味する。むしろ、コーティング材料は、非噴霧式のコーティング材料の連続的なシートまたは壁を形成するために、加圧下で散布され、例えば、加圧下でノズルから排出される。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「該(the)」は、1つの指示物に明示的、または明確に限定されない限りは、複数の指示物を含む。本発明は、「1つの(a)」、「1つの(an)」または「該(the)」の言葉で記載されるが、1つに明示的、または明確に限定されない限りは、本発明の範囲は、そのように制限されず、「1つ」以上の材料、表面などの使用を含む。さらに、本発明に従って光学物品上に形成されるコーティングは、物品の表面全体上、または該表面の一部(全部より小さい)上に形成され得ることが理解されるべきである。
【0011】
本発明の特徴を組み込んだ例示的な装置がまず記載され、次に、物品をコーティングするためのこれらの例示的な装置の使用が記載される。しかしながら、以下に詳細に議論される特定の例示的な実施形態は、本発明の概略的な概念を記載するために単に提供され、本発明は特定的に記載された実施形態に限定されないことが理解されるべきである。さらに、本発明は、光学物品(例えば、多焦点光学レンズ)をコーティングすることに関して記載される。しかしながら、これは本発明の単なる1つの例示的な使用にすぎない。本発明は、多くのタイプの光学物品(例えば、若干の例を挙げるならば、任意の所望の材料のメガネレンズ、コンタクトレンズ、着色光線レンズまたは望遠鏡レンズ)をコーティングするために使用され得る。
【0012】
1つのこれに限定されない実施形態において、本発明に従って生成される光学物品は、当業者に公知のコーティングされた光学物品に対する、商業的に容認できる「美的な」標準を満たす。少なくとも部分的に硬化されたコーティングされた物品は、視覚的に検出可能な美的な欠点を実質的に有し得ない。コーティングされた光学物品の美的な欠点のこれに限定されない例は、コーティングの穴、しみ、インクルージョン、ひび、コーティングの厚さの不均一性、オレンジピール、リブ付け、しわおよびひび割れを含む。
【0013】
本発明の特徴を組み込んだ第一のコーティングデバイス10が図1に図示される。第一のコーティングデバイス10は、少なくとも1つのコンベヤを有するフレーム構造(例えば、金属のフレーム構造)12を含む。コンベヤは、図1に対して実質的に水平な方向に、アイテムを搬送するように構成され得る。図示される実施形態において、コーティングデバイス10は、第一のコンベヤ14と第二のコンベヤ16とを含む。第一および第二のコンベヤ14、16は、任意の従来の方法で(例えば、ローラまたはホイールによって)、フレーム構造12上に、移動可能に据え付けられ得る。第一および第二のコンベヤ14、16は、同一または異なる速度で移動し得る。
【0014】
第一のコーティングデバイス10は、コーティングされる物品22をサポートまたは保持するように構成されるホルダ20をさらに含む。特定の一実施形態においては、ホルダ20は、コーティングの間、物品22をホルダ20に保持するように構成された実質的に長方形の金属ホルダであり得る。例えば、ホルダ20は、物品22の底面と相補的な表面を有する窪みまたはカットアウトエリアを備えることにより、物品22がホルダ20内にしっかりと保持され得る。ホルダ20は、物品22を平坦な(または水平な)位置に保持するように、または物品22を斜めに(水平に対してチルトされて、または傾けられて)保持するように構成され得る。受けプラットフォーム26は、フレーム構造12の端部に配置され得、以下にさらに詳細に記載されるように、コーティングの後にホルダ20およびコーティングされた物品22を受け得る。
【0015】
第一のコーティングデバイス10は、塗布器(例えば、圧力コーティング塗布器)をさらに含む。「圧力コーティング塗布器」または「圧力コータ」は、加圧下で塗布器からコーティング材料を押し出すデバイスを意味する。図示される実施形態においては、コーティング塗布器は、フローコータ(例えば、扇形コータ30)であり、コーティング材料の供給源36とフロー伝達する(in flow communication with)ノズル32を備える。コーティング材料および供給源36は、加圧下であり得るか、あるいは供給源36は、コーティング材料を加圧下に維持するために、加圧された流体(例えば、加圧空気)の供給源38とフロー伝達し得る。当業者によって認識されるように、扇形コータノズル32は、非噴霧式のコーティング材料の、扇形形状またはくさび形形状のシートまたはストリーム40を所望の圧力で提供するように形作られ得、かつ/または構成され得る。コーティング分野の当業者に認識されるように、フローコーティングデバイス(例えば、扇形コータ30)は、排出点からサイズ(例えば、幅または直径)において増加するコーティング液体の連続するシートを提供する。扇形コータノズル32は、くさび形または扇形形状のコーティング液体の隙間のない(solid)ストリームを排出する。従来のスプレーコータとは対照的に、フローコータは、排出された液体を噴霧せずに、むしろコーティング液体の隙間のないシートまたはストリームを提供する。
【0016】
扇形コータノズル32は、扇形コータノズル32をコンベヤ14、16に対して移動させるように構成された、移動デバイス42に接続され得る。例えば、移動デバイス42は、ノズル32を上昇させたり、下降させたりし得、ノズル32をコンベヤ14、16の移動方向44に対して左または右に移動させ得、またはノズル32を移動方向44に対してチルトし得る。
【0017】
別のコーティングデバイス52が、図2および図3に示される。コーティングデバイス52は、圧力コーティング塗布器(例えば、上記の扇形コータ30)を含む。さらに、コーティングデバイス52は、コーティングされる物品を以下に記載されるように扇形のコーティング材料40を通過する所定の経路(例えば、曲線または直線でない経路)で移動させるように構成された、移動デバイス54を含む。一実施形態において、移動デバイス54は、回転可能なシャフト58に接続されたモータ56を備える。(例えば、アーム60のような)サポートは、シャフト58に接続される。ホルダ64は、シャフト58に接続された端部と反対の端部または端部近くで、アーム60上で運ばれる。ホルダ64は、上記のホルダ20と類似し得、1つ以上のコーティングされる物品22を保持するように構成され得る。
【0018】
コーティングデバイス10および52の動作が、ここで記載される。まず、コーティングデバイス10を参照して、コーティングされる物品22は、ホルダ20内に配置され得る。本発明の幅広い実践においては、物品22は、任意の所望の形状(平坦、屈曲または平坦および屈曲の部分を有する)であり得、任意の所望の寸法(例えば、長さ、幅または厚さ)であり得る。物品22は、任意の所望の特徴を有する任意の所望の材料を含み得る。例えば、物品22は、可視光に対して透明または半透明であり得る。「透明」とは、0%を超えて100%までの可視光の透過率を有することを意味する。あるいは、物品22は半透明であり得る。「半透明」とは、電磁波エネルギ(例えば、可視光)を通すころは可能であるが、このエネルギを拡散させることにより、視認者の反対側の対象をはっきりと視認できなくすることを意味する。物品22は、透明であり得るか、あるいは赤外光または紫外光を反射し得る。適切な材料の例は、プラスチック(例えば、ポリアクリレートのようなアクリル重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレートなどのようなポリアクリルメタクリレート;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートなどのようなポリアルキルテレフタラート;ポリシロキサン含有重合体;あるいはこれらを調合するための任意の単量体の共重合体またはこれらの任意の混合物)の基板を含むが、これらに限定はされない。
【0019】
これに限定されない一実施形態において、基板は、熱硬化性および熱可塑性の重合体有機材料のような重合体の有機材料(例えば、熱可塑性ポリカーボネート型重合体および共重合体、ならびに有機光学材料として使用されるポリオール(アリールカーボネート)の単独重合体または共重合体)であり得る。
【0020】
本明細書で開示された様々なこれに限定されない実施形態と関連する基板として使用され得る、前述の重合体材料のこれに限定されない例は、重合体材料、例えば、米国特許第6,733,887号の9段55行目から17段7行目まで;米国特許第5,658,501号の15段28行目から16段17行目まで;および米国特許第6,352,747号の7段15〜53行目において開示される単量体および単量体の混合物から調合される単独重合体および共重合体を含み、これらの米国特許の開示は、それら全体が本明細書において参考として援用される。
【0021】
これに限定されない一実施形態において、基板はガラス、セラミックおよび重合体有機材料から選択され、光学素子(例えば、平面および視覚補正眼科用レンズ、窓、透明重合体膜、自動車のトランスパレンシィ(例えば、風防ガラス)、航空機のトランスパレンシィ、プラスチックシート材料など)である。本発明のこれに限定されない別の実施形態において、基板は、光学的に透明な重合体のような重合体の有機材料(例えば、光学素子のような光学的適用に適した材料)である。このような光学的に透明な重合体は、広く変化し得る屈折率を有し得る。これに限定されない実施形態の例は、熱可塑性のポリカーボネートのような光学樹脂およびPPG Industriers,Incによって、TRIVEX(登録商標)単量体の組成およびCR−指定(例えば、CR−39(登録商標)単量体組成)の下で販売される光学樹脂の重合体を含み得る。
【0022】
これに限定されない一実施形態において、基板は、コーティングが塗布される予め形成された市販の物品として得られ得、例えば、ガラスおよび/またはプラスチックレンズ、または基板は、直ちにコーティング塗布に進む処理、例えば、レンズのキャストのような処理において生成され得る。これに限定されない別の実施形態において、予め形成されたレンズおよび/またはキャストされたレンズは、表面加工および/または機械加工処理(例えば、前面および/または後面表面加工およびエッジング)に供され、コーティング塗布の前および/または後で、レンズを所望の処方および/または意図されるフレームのサイズに調節し得る。
【0023】
本発明の一局面において、物品22は、多焦点または非多焦点のガラスまたはプラスチックレンズのような光学レンズ(例えば、眼科用レンズ)であり得る。図4および図5に示されるように、多焦点レンズ68は、異なる焦点パラメータのいくつかの領域またはエリアを含む。図4および図5に示される多焦点レンズ68は、第一の焦点領域70、第二の焦点領域72と、第三の焦点領域74とを有する従来の三重焦点レンズとして構成される。当業者によって認識されるように、様々な焦点領域の存在は、レンズ68が不均一または不規則な表面を有する、すなわち、外側表面は、不均一な曲率であることを意味する。従来のスピンコーティング技術は、このような多焦点レンズ68をコーティングするためには十分に適切ではない。なぜならば、様々な焦点領域の存在が、不規則なコーティングの厚さを、特に、コーティング領域70、72および74を分離するエッジ76および78において、引き起こし得るからである。隣接する焦点領域70、72、74の間のこれらのエッジ76、78は、従来のスピンコーティング技術においてレンズ表面にわたるコーティング材料のフローを妨げ得るか、またはレンズ表面上にコーティングの厚さの不規則性を引き起こし得る。しかしながら、本発明の実践は、レンズが不均一な曲率を有する場合であっても、レンズ68の外側表面(図5において示される)にわたる実質的に均一な厚さのコーティング82を有するレンズを提供する。
【0024】
しかしながら、本発明は、多焦点レンズに関して使用することに限定されないことが認識される。本発明はまた、従来の非多焦点レンズ、すなわち二重焦点または三重焦点レンズよりむしろ単一の焦点処方を有するレンズ上でも実践され得る。さらに、本発明は光学レンズに関して使用することに限定されない。本発明の実践においてコーティングされ得る他の光学物品の例は、若干の例を挙げるならば、オートバイのヘルメットバイザー、保護的なスポーツバイザー、ゴーグル、双眼鏡のレンズおよび望遠鏡のレンズを含む。
【0025】
第一のコーティングデバイス10に関する本発明の一局面において、レンズ68は、ホルダ20内に配置され得る。扇形コータ30は、非噴霧式のコーティング材料40の扇形形状のシートを、以下に記載されるような適用パラメータの所望のセットで提供するために作動され得る。コンベヤ14および16は、作動され得、所望の速度にセットされ得、ホルダ20は、第一のコンベヤ14上に配置され得る。第一のコンベヤ14は、ホルダ20を所定の経路(例えば、移動方向44に沿って)で搬送し、コーティング材料を物品22上に塗布するためにコーティング材料のシート40に入れ、第二のコンベヤ16上に搬送し、次いで受けプラットフォーム26に搬送する。当業者によって認識されるように、コーティングされた物品22は、例えば、加熱または他の従来の方法によってさらに処理され得、コーティングされた物品22がホルダ20から取り除かれる前または後に、塗布されたコーティング材料を硬化、または少なくとも部分的に硬化する。フレーズ「少なくとも部分的に硬化」は、コーティングの硬化可能成分の一部ないし全てが硬化される(例えば、反応されるまたは重合化される)コーティングをいう。
【0026】
本発明の幅広い実践において、物品22上に塗布されるコーティング材料は、任意の所望のタイプであり得る。物品22が光学レンズである、これに限定されない一実施形態においては、コーティング材料は、このようなレンズに従来塗布された任意のコーティング材料(例えば、重合体コーティング)であり得る。例えば、コーティング材料は、若干の例を挙げるならば、スクラッチ耐性または擦傷耐性コーティング、反射防止性コーティング、着色光線コーティング、赤外線または紫外線反射コーティング、偏光コーティング、帯電防止コーティングまたは一時的な保護膜を提供するように選択され得る。これに限定されないスクラッチ耐性コーティングの例は、米国特許公開第2004/0096666号(6頁68段落から16頁148段落)と、同2004/0156983号(3頁37段落から4頁56段落)と、米国特許第6,680,125号(2段65行目から10段33行目)とに記載されるが、これらに限定はされない。反射防止コーティングのこれに限定されない例は、米国特許第6,632,535号(69段19行目から74段50行目)と、同6,605,361(2段51行目から10段11行目)と、米国特許公開第2004/0234780号(2頁24段落から3頁50段落および4頁71段落から6頁94段落)と、同2004/0201822号(2頁25段落)とに記載される。一時的な保護コーティングのこれに限定されない例は、米国特許第6,761,784号(3段17行目から7段13行目)に記載される。着色光線コーティングのこれに限定されない例は、米国特許第6,352,747号(4段12行目〜61行目)と、米国特許公開第2004/0207809号(5頁48段落から11頁105段落)と、同2004/0173782号(2頁28段落から19頁195段落)とに開示される。
【0027】
本発明のこれに限定されない様々な実施形態においては、コーティング材料を形成するコーティング組成物の正確な本質は決定的ではない。これに限定されない一実施形態において、コーティング組成物は、膜形成重合体を備える。これに限定されない別の実施形態において、本発明のコーティングされた物品を生成するために使用されるコーティング組成物は、「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、第4版、6巻、669〜760頁に記載される熱可塑性または熱硬化性コーティングを提供するように適合された組成物を備える。このようなコーティングは、透明、半透明または不透明であり得る。これに限定されないさらなる実施形態において、コーティングは、少なくとも部分的な硬化において、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、シラン、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート)、ポリアンヒドリド、ポリアクリルアミドおよびエポキシ樹脂から選択された、重合体コーティングを形成するコーティングである。
【0028】
1つの例示的な適用方法において、ノズル32は、ホルダ20が扇形のコーティング材料40を通過するときに、物品22がノズル32から1インチ〜10インチ(2.5cm〜25cm)の範囲の距離(例えば、2インチ〜7インチ(5cm〜17.7cm)、例えば、3インチ〜6インチ(7.6cm〜15.2cm)、例えば、5インチ(12.7cm))となるように、コンベヤ14および16の上に配置される。コンベヤ14および/または16は、ホルダ20が、扇形のコーティング材料40を通過して、毎分100フィートから毎分1200フィート(毎分30.4メートルから毎分360メートル)の範囲の速度(例えば、毎分100フィートから毎分800フィート(毎分30.4メートルから毎分243.2メートル、例えば、毎分200フィートから毎分700フィート(毎分60.8メートルから毎分212.8メートル)、例えば、毎分300フィートから毎分600フィート(毎分91.2メートルから毎分182.4メートル)、例えば、毎分500フィート(毎分152メートル))で運ばれるような、速度で回転し得る。コーティング材料40は、20センチポアズから400センチポアズ(cp)の範囲の粘性度(例えば、50cpから200cp)で、ノズル32に供給され得る。コーティング材料40は、2psiから30psi(1平方センチメートル当たり140グラムから1平方センチメートル当たり2109グラム)の範囲のノズル圧で排出され得る。これに限定されない一実施形態において、扇形のコーティング材料40は、ホルダ20が扇形のコーティング材料40を通過する点において、4インチから10インチ(10.2cmから25.4cm)の範囲の扇形の幅(fan width)(例えば、5インチから7インチ(12.7cmから17.8cm)、例えば、6.5インチ(16.5cm))を有し得る。「扇形の幅」とは、コーティング材料40の扇形形状のシートの横方向の幅を意味する。ホルダ20は、ホルダ20がコーティング材料40の扇形の中心を通過するようにコンベヤ14および16上に配置され得る。しかしながら、これには限定されない一実施形態において、ホルダ20は、コンベヤ14および16上でオフセットされ得、その結果として、ホルダ20が扇形のオフセットで、扇形のコーティング材料40を通過し得る。「扇形のオフセット」とは、扇形のコーティング材料40の中心からのホルダ20の横方向の距離を意味する。これには限定されない一実施形態において、扇形のオフセットは、0.5インチから4インチ(1.3cmから10cm)の範囲(例えば、1インチから2インチ(2.54cmから5.1cm)、例えば、1.5インチ(3.8cm))であり得る。これには限定されない別の実施形態においては、ノズル32が移動方向44に対して一定の角度で配置され得、その結果として、扇形のコーティング材料40が、進行方向44に対して垂直な(すなわち進行方向44から90°の)鉛直軸Vに対して±45°の範囲(例えば、±30°、例えば、±25°、例えば、±20°、例えば、±15°、例えば、±10°、例えば、±5°、例えば、±0°)のコーティング角度90で、ホルダ20に向けられる。例えば、「−25°」とは、ノズル32が、図1において、垂直軸Vから25°だけ左にチルトされることを意味する。「+25°」とは、ノズル32が、図1において、垂直軸Vから25°だけ右にチルトされることを意味する。
【0029】
これに限定されないさらなる実施形態において、前述のコーティングの厚さは、広く変化し得る。1つのこれに限定されない実施形態において、少なくとも部分的に硬化されたコーティングは、1から10,000マイクロメートルまでの厚さを有し得る。これに限定されない別の実施形態において、コーティングの厚さは5から1,000マイクロメートルまでの厚さであり得る。これに限定されないさらなる実施形態において、コーティングの厚さは10から400マイクロメートルまでの厚さ(例えば、30マイクロメートル)であり得る。
【0030】
コーティングデバイス52の動作が、ここで記載される。物品22は、ホルダ64内に配置され得る。扇形コータ30は、非噴霧式のコーティング材料40の扇形形状のシートを提供するために作動され得る。モータ56は、アーム60を回転するように作動されて、ホルダ64を、扇形のコーティング材料40を所定の経路(例えば、図2に特別に示されるような曲線経路)で通過させ得る。一方向に回転する間にホルダ64は、コーティング材料40のシートを、一回または数回通過し得るか、あるいはアーム60はコーティング材料40のシートを一方向に通過し得、次いでモータ56は、ホルダ64を反対の方向にコーティングシートを通過させるように逆転され得る。コーティング堆積パラメータ、コーティングの厚さなどは、コーティングデバイス10に対して上述された通りであり得る。上記の実施形態10におけると同様、物品22はホルダ64内に水平に配置され得る。あるいは、ホルダ64および/または物品22は、チルトされ得るかまたは傾けられ得、その結果として、物品22はコーティング材料40のシートを、水平からある角度(例えば、水平に対して0°から90°までの角度)で通過する。
【0031】
前述の記載において開示された概念から逸脱することなしに、変更がなされ得ることが当業者によって容易に認識される。例えば、本発明の実践において、複数のコーティングが光学物品上に塗布され得る。さらに、ホルダは、コーティングの間に物品を回転させるように構成され得るか、またはホルダは、コーティングの間に回転され得る。さらに、これに限定されない上記の実施形態においては、物品がコーティング材料のシートを通過した。しかしながら、物品を静止したままにして、物品上にコーティングシートを通過させること、またはコーティング処理の間に物品およびコーティング材料の双方を移動させることさえも、本発明の範囲内である。従って、本明細書において詳細に記載された特定の実施形態は、例示のみのためであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲およびその任意の全ての均等物の最大の外延によって与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−22607(P2011−22607A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220069(P2010−220069)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2008−505311(P2008−505311)の分割
【原出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】