説明

物品を成形するためのポリマー組成物及び方法

本発明は、(a)第1のポリマー成分;(b)プロピレンエラストマー又は実質的に線状の若しくは線状のエチレンポリマーを含む第2のポリマー成分;及び(c)少なくとも1種の強化材のブレンドを含んでなるポリマー物品に関する。このポリマー物品は望ましくは、以下の特性:ソフトタッチな感触、低光沢の外観又は高い表面耐久性の1つ又はそれ以上を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、米国仮特許出願第60/981,658号(2007年10月22日出願)の利益を請求する。あらゆる目的のためにこの特許出願を引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる。
発明の分野
本発明は、改質ポリオレフィン組成物及びそれに関わる方法に関する。より詳しくは、本発明は、成形後に高品質の表面外観及び/又は改善された耐久性を提供するブレンドされたポリオレフィン材料に関する。具体的には、本発明は、以下の特性:低光沢、良好な光沢均一性、耐久性の高い表面品質及びソフトタッチな触感のうち1つ、2つ、3つ又は更には全てを有する、カラー物品の成形に適したポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
望ましい性質を示す、コストがより低い又はその両者であるポリマー組成物を開発するために多くの取り組みが行われている。一部の用途では、以下の性質:ポリマー物品の触感特性、低光沢表面外観又は耐久性の1つ又はそれ以上の改善が望ましい。例えば車両搭乗者は種々の自動車内装品と接触するので、自動車内装品には、ソフトタッチな触感(tactile sensation)を有し、耐久性があり且つ頻繁な接触や引掻きに耐える材料を用いるのが望ましい。ソフトタッチな感触(feel)、低光沢の外観及び高い表面耐久性を与える方法には、オーバーモールド、塗装又は他の技術によって成形品の上部に機能材料の二次層を適用する多段階プロセスの使用がある。ソフトタッチな感触、低光沢の外観及び高い表面耐久性を与える他の方法は、目的とする性質に適合するように熱可塑性材料を改質することである。
【0003】
先行技術のポリマー組成物及びこれらの組成物の形成方法の例は、特許文献1〜5に記載されており、あらゆる目的のためにこれら全てを引用することによってその全体を特別に本明細書中に組み入れる。
【0004】
特許文献6〜10(これら全てを引用することによってその全体を特別に本明細書中に組み入れる)は、改善された機械的性質を有する軟質熱可塑性樹脂及びポリプロプロピレンとのブレンドであることができる、低級α−オレフィン(LOA)と第2のα−オレフィンとのブロック(即ち塊状)コポリマー(即ち、LOA/α−オレフィンインターポリマー、例えばエチレン/α−オレフィンインターポリマー)を記載している。
【0005】
特許文献11〜17(これら全てを引用することによってその全体を特別に本明細書中に組み入れる)は、軟質熱可塑性樹脂であることができる線状の又は実質的に線状のエチレンポリマー(S/LEP)及びS/LEPを含むポリマーブレンドを記載している。
【0006】
特許文献11、12及び15は(これら全てを引用することによって本明細書中に組み入れる)は、軟質熱可塑性樹脂であることができるポリプロピレンエラストマー及びプロピレンエラストマーを用いたポリマーブレンドを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,300,419号
【特許文献2】米国特許第6,949,605号
【特許文献3】米国特許第6,498,214号
【特許文献4】米国特許出願公開公報第2005/0288393号
【特許文献5】PCT国際特許出願公開公報WO2007/025663A1
【特許文献6】米国特許出願公開公報第2007/0010616号
【特許文献7】PCT出願PCT/US2005/008917(2005年3月17日出願)
【特許文献8】PCT国際特許出願公開公報WO2006/102155A2(2006年3月15日出願)
【特許文献9】PCT国際特許出願公開公報WO2006/101966A1(2006年3月15日出願)
【特許文献10】PCT国際特許出願公開公報WO2006/101932A2(2006年3月15日出願)
【特許文献11】PCT国際特許出願公開公報WO2003/040201A1(2002年5月6日出願)
【特許文献12】米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2002年5月5日出願)
【特許文献13】欧州特許第0495099号(1989年12月12日出願)
【特許文献14】欧州特許出願第129368号(1984年6月5日出願)
【特許文献15】米国特許第6,525,157号(2003年2月25日発行)
【特許文献16】米国特許第6,403,692号(2002年6月11日発行)
【特許文献17】米国特許第5,272,236号(1993年12月21日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
比較的ソフトタッチな感触を示すことができ且つ車両内装の用途において遭遇する状況に耐えることができ、例えば実質的に低光沢、耐擦傷性、耐引掻き性、低温延性、寸法安定性又はそれらの任意の組合せといった性質を示すことができるポリマー組成物、特に成形された熱可塑性ポリオレフィン組成物を提供することが依然として望まれている。望ましい特性を引き続き維持しながら、コストが比較的高い又は高度に処理された(例えばグラフト化された)ポリマー、特殊充填剤若しくは薬剤又は他の比較的コストのかかる追加若しくは代替成分、プロセス、多層構造(例えば被膜)などを使用せずにこのような組成物を提供できれば特に魅力的であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの面において、本発明は、第1のポリマー成分;第2のポリマー成分(前記第2のポリマー成分は、前記第1のポリマー成分に比べて比較的(又は相対的に)軟質の熱可塑性樹脂を含み且つプロピレンエラストマー、実質的に線状の若しくは線状のエチレンポリマー(S/LEP)又は両者からなる群から選ばれ;前記S/LEPは、S/LEPの全重量基準で約40〜約85重量%のエチレン濃度を有する炭素数4〜20のα−オレフィンコモノマーを含み;前記プロピレンエラストマーは、プロピレンと1種若しくはそれ以上の炭素数2若しくは4〜20のα−オレフィンコモノマーを含み且つプロピレンエラストマーの全重量基準で約20重量%未満のコモノマー濃度を有する);及び少なくとも1種の強化材のブレンドを含んでなるポリマー組成物に関する。
【0010】
本発明のこの面は更に、以下の特徴の1つ又は任意の組合せを特徴とすることができる:
ポリマー組成物が約10:42超の第1のポリマー成分対第2のポリマー成分の比を有し、
第1のポリマー成分が組成物の全重量基準で約3〜約70重量%の量で存在する;
第1のポリマー成分が組成物の全重量基準で約3〜約60重量%の量で存在する;
第1のポリマー成分が組成物の全重量基準で約10〜約50重量%の量で存在する;
第2のポリマー成分がS/LEPを含み、第1のポリマー成分対第2のポリマー成分の比が約10:42〜約10:2の範囲である;
前記第2のポリマー成分がプロピレンエラストマーを含み、第1のポリマー成分対第2のポリマー成分の比が約10:42〜約10:2の範囲である;
前記第2のポリマー成分が、全重量基準で、約10〜約45重量%の量で存在する;
前記第2のポリマー成分が、全重量基準で、約10〜約90重量%(例えば約20〜約90重量%)の量で存在する;
前記第2のポリマー成分が、全重量基準で、約20〜約45重量%(例えば約20〜約35重量%)の量で存在する;
前記軟質熱可塑性樹脂が約0.850〜約0.900g/cm3の密度及び約0.2〜約40のメルトインデックス(ASTM D−1238−04に従って190℃,2.16kgで測定)を有するS/LEPを含む;
前記軟質熱可塑性樹脂が約0.860〜約0.880g/cm3の密度及び約0.5〜約10のメルトインデックス(ASTM D−1238−04に従って190℃,2.16kgで測定)を有するS/LEPを含む;
前記S/LEPが、前記ポリマー組成物の全重量基準で、約20〜約35重量%の濃度で存在する;
前記S/LEPが、メルトフロー比I10/I2≦5.63、式
w/Mn≦I10/I2−4.63
によって定義される分子量分布(Mw/Mn)及び約4×106ダイン/cm2より大きいグロスメルトフラクチャー開始時臨界剪断応力を特徴とする;
前記S/LEPが、以下:密度0.85〜0.92g/cm2、極限粘度数(η)(135℃においてデカリン中で測定)0.1〜10dl/g、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)(GPCによって測定)1.2〜4、又は190℃において測定された(荷重10kg下におけるMFR10)対(荷重2.16kg下におけるMFR2)の比(MFR10/MFR2)8〜50(MFR10/MFR2は、例えばASTM D−1238によって190℃においてそれぞれ10kg及び2.16kgの荷重を用いて測定できる)の1つ又は任意の組合せを特徴とする;
前記S/LEPのα−オレフィンコモノマーが、炭素数8のモノマー(例えば1−オクテン)である;
前記第1のポリマー成分対第2のポリマー成分の比が約10:27〜約10:2である;
前記組成物が、組成物にソフトタッチな感触を与える(i)約0.2〜約0.7の範囲の摩擦係数(静摩擦係数)(ASTM D−1894による);(ii)約0.1〜約0.6の範囲の摩擦係数(動摩擦係数)(ASTM D−1894による);又は(i)と(ii)の両方を特徴とする;
前記第1の成分が、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー又はそれらの任意の組合せを含む;
前記第1のポリマー成分が、約1〜約60g/10分のメルトフローレート(ASTM D−1238(230℃,2.16kg)に従って測定)を有する;
前記第1の成分が、前記ポリマー組成物の全重量基準で、約20〜約50重量%の濃度で存在するポリプロピレンホモポリマーを含む;
前記組成物が、約50〜約55g/10分のメルトフローレート(ASTM D−1238(230℃,2.16kg)に従って)及び約1〜約5kJ/m2のシャルピー(CHARPY)(ノッチ付き)衝撃強さ(ISO 179−1/1eA(23℃)による)又は両者を有するポリプロピレンホモポリマーを含む;
前記第2のポリマー成分が、S/LEPを含み、前記S/LEPがエチレン−オクテンコポリマーの全重量基準で、約50〜約70重量%のエチレンを含むエチレン−オクテンコポリマーであり、前記エチレン−オクテンコポリマーが約1〜約30g/10分のメルトフローレート(ASTM D−1238(190℃,2.16kg)に従って測定)を有する;
前記第2のポリマー成分が、約65〜約95のショアー(Shore) A硬度(ASTM D−2240による)を有する;
前記ポリマー組成物が、ポリマー組成物の全重量基準で、約2〜約10重量%の全エチレン濃度を有する;
前記第2のポリマー成分が、プロピレンエラストマーを含み、前記プロピレンエラストマーがプロピレンエラストマーの全重量基準で、約4〜約20重量%のエチレン濃度を有するプロピレン−エチレンコポリマーである;
前記第2のポリマー成分が、プロピレンエラストマーを含み、前記プロピレンエラストマーがプロピレンエラストマーの全重量基準で、約80〜約96重量%のプロピレン濃度を有する;
前記プロピレンエラストマーが低弾性エチレン−プロピレンコポリマー(LEEPコポリマー)である:
前記LEEPコポリマーが以下の特性:融点が上限110℃未満から下限25℃超の範囲;弾性(elasticity)対500%引張弾性率(tensile modulus)の関係が、例えば弾性≦0.935M+12(弾性はパーセントで表し、Mはメガパスカル(MPa)で表した500%引張弾性率である);曲げ弾性率(flexural modulus)対500%引張弾性率の関係が例えば曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50(曲げ弾性率はMPaで表し、MはMPaで表した500%引張弾性率である);融解熱が下限1.0ジュール/g超〜上限125J/g未満;トリアドタクチシティー(triad tacticity)(炭素−13核磁気共鳴(13C NMR)によって測定)が75%超;タクチシティー指数m/rが下限4〜上限12の範囲;全プロピレン挿入中のプロピレンモノマーの2,1−挿入に基づく逆挿入プロピレン単位の比率(13C NMRによって測定)が0.5%超;全プロピレン挿入中のプロピレンモノマーの1,3−挿入に基づく逆挿入プロピレン単位の比率(13C NMRによって測定)が0.05%超;コポリマーの少なくとも75重量%が、ヘキサン中で8℃ずつ昇温させて行った熱分別(thermal fractionation)の2つの隣接温度画分中に可溶であるような分子間タクチシティー;反応性比積r12が1.5未満;分子量分布Mw/Mnが下限1.5〜上限40の範囲;分子量が15,000〜5,000,000;固体プロトン核磁気共鳴(1H NMR)の緩和時間が18ミリ秒(ms)未満;弾性が30%未満若しくは20%未満若しくは10%未満若しくは8%未満若しくは5%未満;又は500%引張弾性率が0.5MPa超(若しくは0.8MPa超若しくは1.0MPa超若しくは2.0MPa超)の1つ又は任意の組合せを有する;
前記プロピレンエラストマーが領域エラー(region-error)エチレン−プロピレンコポリマー(R−EPEコポリマー)であり、前記R−EPEコポリマーが以下の特性の1つ又は任意の組合せを有する:エチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つ約14.6及び約15.7ppmの領域エラーに相当するほぼ等しい強度の13C NMRピークを有する;プロピレン由来の単位が少なくとも約60重量%及びエチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つ約−1.20超の歪度指数Sixを有する;プロピレン由来の単位が少なくとも約60重量%及びエチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つDSC曲線が本質的に変化のないTmeとコポリマー中エチレン量の増加につれて低下するTmaxを有する;プロピレン由来の単位が少なくとも約60重量%及びエチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されるが重量平均分子量が同程度であるプロピレン/エチレンコポリマーよりも多いγ型結晶を示すX線回折パターンを有する;プロピレン由来の単位が少なくとも約60重量%又はエチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つR−EPEコポリマーのエチレン含量が少なくとも約3重量%である場合に約1.4超のB値を有する;
前記の少なくとも1種の強化材が、得られる組成物中のガラス繊維が約1〜約2mmの平均繊維長を有するように選択されたガラス繊維を含む;
前記の少なくとも1種の強化材が前記ポリマー組成物の全重量基準で約5〜約40重量%(例えば約10〜約40重量%)の濃度で存在するガラス繊維を含む;
前記ポリマー組成物が無機充填剤を含まない;
前記ポリマー組成物がタルクを含まない;或いは
前記ポリマー組成物が過酸化物を含まない。
【0011】
本発明の別の面は、少なくとも一部が本明細書中に記載したポリマー組成物を含む成形品(molded article)に関する。
【0012】
本発明の方法面は、成形品の一部が本明細書中に記載したポリマー組成物を含む部品(part)の製造方法に関する。
【0013】
本発明のこの面は、以下の特徴の1つ又は任意の組合せによって更に説明できる:
前記方法が、比較的硬質の熱可塑性樹脂の少なくとも一部を含む第1の材料約3〜約60重量部を用意し(例えば供給し);プロピレンエラストマー、実質的に線状若しくは線状のエチレンポリマー(S/LEP)又は両者からなる群から選ばれた比較的軟質の熱可塑性樹脂の少なくとも一部を含む第2の材料約10〜約70重量部を用意し(例えば供給し)(前記S/LEPは、S/LEPの全重量基準で約40〜約85重量%のエチレン濃度を有する炭素数4〜20のα−オレフィンコモノマーを含み、前記プロピレンエラストマーはプロピレンと1種若しくはそれ以上の炭素数2若しくは炭素数4〜20のα−オレフィンコモノマーを含み且つプロピレンエラストマーの全重量基準で約20重量%未満のコモノマー濃度を有する);少なくとも1種の強化材を含む強化材コンセントレートを含む第3の材料約20〜約75重量部を用意し(例えば供給し);前記の第1の材料、第2の材料及び第3の材料をブレンドしてブレンドを形成し;そして前記ブレンドを成形型中で成形して物品を形成する工程を含んでなる;
前記物品が、組成物にソフトタッチな感触を与える(a)約0.2〜約0.7の範囲の摩擦係数(静摩擦係数)(ASTM D−1894によって測定)若しくは約0.1〜約0.6の範囲の摩擦係数(動摩擦係数)(ASTM D−1894によって測定)の一方若しくは両方;又は(b)得られる物品の約5〜約9重量部のエチレン含量、或いは(a)と(b)の組合せを有する材料を含む;
前記の少なくとも1種の強化材がガラス繊維を含み、前記の少なくとも1種の強化材コンセントレートがポリプロピレンを更に含む;
前記の比較的硬質の熱可塑性樹脂が、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー若しくはそれらの任意の組合せである;
前記の少なくとも1種の強化材が、約5mm超の平均繊維長を有するガラス長繊維を含む;
前記の少なくとも1種の強化材が、5mm未満(好ましくは約2mm未満又は更には約0.5mm未満)の平均繊維長を有するガラス短繊維を含む;
前記ポリオレフィン樹脂が、前記強化材コンセントレートの全重量基準で、約20〜約60重量%の濃度で存在する;
前記の少なくとも1種の強化材が、前記強化材コンセントレートの全重量基準で、約30〜約90重量%(例えば約40〜約80重量%)の濃度で存在する;
前記の少なくとも1種の強化材が、前記成形品の全重量基準で、約10〜約40重量%の量で存在する;
前記の比較的軟質の熱可塑性樹脂が、前記成形品の全重量基準で、約10〜約45重量%の濃度で存在するS/LEPを含み且つ前記S/LEPが約0.850〜約0.900の密度及び約0.2〜約40のメルトインデックス(ASTM D−1238(190℃,2.16kg)に従って測定)を有する;
前記の比較的軟質の熱可塑性樹脂が、プロピレンエラストマーの全重量基準で、約4〜約20重量%のエチレンを有するプロピレンエラストマーであり且つ約120℃未満の融解温度を有する;
前記プロピレンエラストマーが約65〜約85のショアー(Shore) A硬度(ASTM D−2240による)を有する;
前記プロピレンエラストマーが約30重量%未満(例えば約14重量%未満)の結晶化度を有する;
前記プロピレンエラストマーが前記の比較的硬質の熱可塑性樹脂の結晶化度よりも低い結晶化度を有する;
前記成形品が、カップリング剤(例えば成形品の全重量基準で、約10重量%未満の濃度で存在するカップリング剤)を更に含む;
前記方法が前記ブレンド工程の前に第1の材料、第2の材料又は第3の材料の2つ又はそれ以上を同時に配合する工程を更に含む;
前記方法が前記ブレンド工程の前に第1の材料、第2の材料又は第3の材料の任意の2つを一緒に配合することを実質的に含まない;
前記方法がポリプロピレンホモポリマー、耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー若しくはそれらの任意の組合せを含む第1の材料を用意し;S/LEP、プロピレンエラストマー若しくは両者を含む第2の材料を用意し;少なくとも1種の強化材を用意し;前記第1の材料、前記第2の材料及び前記強化材を混合してポリマー組成物を形成し;そして前記ポリマー組成物を成形して部品(part)にする工程を含んでなる;
前記ポリマー組成物が組成物にソフトタッチな感触を与える約0.2〜約0.7の範囲の摩擦係数(静摩擦係数)(ASTM D−1894によって測定)若しくは約0.1〜約0.6の範囲の摩擦係数(動摩擦係数)(ASTM D−1894によって測定)の一方若しくは両方を特徴とする;
前記成形工程が前記ポリマー組成物を射出成形する工程を含む;
前記部品をシングルショット成形によって形成する;
前記混合工程が前記強化材を用意する工程の前に前記強化材と少なくとも一部の第1の材料、少なくとも一部の第2の材料若しくは両者とを混合する工程を含む;
前記混合工程が、前記の少なくとも1種の強化材を用意する工程の前に、前記第2の材料を少なくとも一部の前記第1の材料と混合する工程を含む;
前記部品の材料が約1mm超(例えば約1〜約2mm)の平均繊維長を有するガラス繊維を含む;
前記ポリマー組成物が無機繊維を含まない;
前記ポリマー組成物がタルクを含まない;
前記ポリマー組成物がガラス繊維以外のガラス粒子を含まない;
前記ポリマー組成物が過酸化物を含まない。
【0014】
本発明の別の方法面は、ポリプロピレンホモポリマー、耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー又はそれらの任意の組合せを含む第1の材料を用意し;S/LEP、プロピレンエラストマー若しくは両者を含む第2の材料を用意し;少なくとも1種の強化材を用意し、前記第1の材料、前記第2の材料及び強化材を混合してポリマー組成物を形成し;前記ポリマー組成物をペレット化して、熱可塑性樹脂成形機に供給可能なペレット又はグラニュールを形成し;そして少なくとも5kgの前記ペレット若しくはグラニュールを容器中に入れる工程を含んでなる物品の製造方法に関する。
【0015】
本発明のこの面は以下の特徴の1つ又は任意の組合せによって更に特徴付けることができる。
前記方法が前記ポリマー組成物を射出成形する工程を更に含む;
前記射出成形工程がシングルショット射出成形によって物品を形成する工程を含む;
前記混合工程が前記強化材を用意する工程の前に前記強化材と前記第1の材料の少なくとも一部、前記第2の材料の少なくとも一部若しくは両者とを混合する工程を含む;或いは
前記混合工程が、前記の少なくとも1種の強化材を用意する工程の前に前記第2の材料を前記第1の材料の少なくとも一部と混合する工程を含む。
【0016】
本発明の更に別の面は第1のポリマー成分;第2のポリマー成分(前記第2のポリマー成分は、第2のポリマー成分の約20重量%又はそれ以下の量で存在するエチレン分を含む);及び少なくとも1種の強化材のブレンドを含んでなるソフトタッチな感触のポリマー組成物に関し、前記第1のポリマー成分対前記第2のポリマー成分の比は約5:1〜約1:4.2の範囲であり;前記第1のポリマー成分は前記組成物の約3〜約50重量部の量で存在し;前記第2のポリマー成分は約4〜約20重量%のエチレン含量を有し、前記組成物の約10〜約70重量部の量で存在し且つ第2のポリマー成分は約65〜約95のショアー A硬度(ASTM D−2240による)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般に、本発明は、改質ポリマー組成物、前記ポリマー組成物の形成方法並びに前記ポリマー組成物から形成された、前記方法によって形成された又は前記ポリマー組成物から前記方法によって形成された物品又は部品に関する。有利なことに、前記ポリマー組成物は、望ましい特性を有するソフトタッチな感触を有する部品又は部材を比較的低コストで形成するのに使用できるので、自動車用途の部品(例えば搭乗者が接触しやすい自動車内装部材)として利用するのに魅力的である。前記ポリマー組成物は、典型的には、少なくとも1種の比較的硬質の熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、エチレンコポリマー及びそれらの任意の混合物から選ばれた、約20重量%超の結晶化度を有する少なくとも1種のポリマーを含む熱可塑性ポリマー)を含む第1のポリマー成分;少なくとも1種の比較的軟質の熱可塑性樹脂(例えば熱可塑性ポリオレフィンのような1種若しくはそれ以上のエラストマー)を含む第2のポリマー成分;少なくとも1種の強化材(例えばガラス繊維);並びに任意的に、カップリング剤若しくは架橋剤、架橋助剤、難燃剤、耐着火性添加剤、安定剤、発泡剤、発泡剤活性化剤、着色剤、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ助剤(即ち滑り止め助剤)、流動増進剤、成核剤、清澄剤又はそれらの組合せなどを含むことができる(これらに限定するものではないが)1種若しくはそれ以上の添加剤を含む。本発明の一面において、ポリマー組成物はカップリング剤、架橋剤及び発泡剤を含まないことができる。
【0018】
意外なことに、前記の比較的軟質の熱可塑性樹脂を、これまで使用されている軟質熱可塑性樹脂に比べてより低濃度で用いることによって、望ましく低い硬度及び/又は低い曲げ弾性率を有する強化組成物が得られることがわかった。更に、本発明の強化組成物は、その低温特性(例えば約−20℃の温度における延性)に驚くべき改善が見られる。本発明の強化組成物が更に以下の表面特性:改善された光沢度、改善された耐引掻き性及び/若しくは耐擦傷性、より弾性のあるソフトタッチな感触、高い表面摩擦又はトラ縞模様の排除/低減の1つ又は任意の組合せも有し得ることが観察されたのは予想外であった。更に、この組成物は意外なことに望ましいバルク特性、例えば消音性、高い剛性、高い加熱撓み温度及び/又は高いビカー(Vicat)軟化温度も有することができることが観察されている。このような特性の組合せにより、現在のところ少なくとも2種の材料(例えば良好な表面特性を与える第1の材料と良好なバルク特性を与える第2材料)を必要とする用途においてこの強化組成物を用いてワンショット成形品を製造することが可能となるであろう。
【0019】
本発明の実施に際して適用できる更なる教示は、同時出願された米国特許出願第12/256,301号(2008年10月22日出願;代理人整理番号1062.098(67447A)に対応)に開示されており、これを引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる。前記出願中に記載されたオレフィン系ブロックコポリマー(例えばエチレン/α−オレフィンインターポリマー又はプロピレン/α−オレフィンインターポリマー)の試験方法を、限定するものではなく例示として、本明細書中で使用することができる。
【0020】
第1のポリマー成分/硬質熱可塑性樹脂
ここで、組成物全体から個々の成分により詳細に目を向ける。ここに記載する物品は典型的には、比較的強い、剛性である、耐衝撃性である又はそれらの任意の組合せである少なくとも1種の硬質熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリマーであることができる)を含む第1のポリマー成分を含む。例えばここに記載する熱可塑性ポリマーはポリオレフィン系であることができ、より好ましくはポリオレフィン系ホモポリマーであることができる。第1のポリマー成分は、典型的には、ポリマー組成物の全重量基準で、少なくとも約3重量%、好ましくは少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約15重量%、最も好ましくは少なくとも約20重量%(例えば少なくとも約30重量%)の量で存在する。全ポリマー組成物は、また、典型的には約70重量%未満、より典型的には約60重量%未満、より典型的には約45重量%未満、最も典型的には約40重量%未満の第1のポリマー成分を含む。
【0021】
好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、エチレンコポリマー及びそれらの任意の混合物から選ばれた少なくとも1種のポリマーを含む。限定するものではないが、好ましいポリプロピレンホモポリマーの1つの具体例が、米国特許第7,087,680号に開示されており、あらゆる目的のためにこれを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0022】
ポリプロピレンは一般にイソタクチック型のホモポリマーポリプロピレンであるが、シンジオタクチックポリプロピレン又はアタクチックポリプロピレンのような他の型のホモポリマーポリプロピレンも低濃度(例えばホモポリマーポリプロピレンの全重量基準で約15重量%未満又は更には約5重量%未満)で使用できる。ポリプロピレンは耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー(例えばエチレンとプロピレンを反応させる二次共重合工程が用いられたもの)又はポリプロピレンランダムコポリマー(これもまた反応改質され、プロピレンと共重合されたエチレンを典型的には2〜20重量%、より典型的には2〜7重量%含む)であることもできる。
【0023】
本発明に使用する硬質熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン)の分子量、ひいてはメルトフローレートは用途によって異なり得る。本発明において有用なポリプロピレンのような軟質熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、ISO 1133(230℃/2.16kgで試験)に従って測定した場合に、約0.1g/10分超、好ましくは約0.5g/10分超、より好ましくは約3g/10分超、最も好ましくは約5g/10分超であることができる。本発明において有用なポリプロピレンのような軟質熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、ISO 1133(230℃/2.16kgで試験)に従って測定した場合に、約100g/10分未満、好ましくは約80g/10分未満、より好ましくは約60g/10分未満、最も好ましくは約30g/10分未満であることができる。従って、メルトフローレートは、ISO 1133(230℃/荷重2.16kgで試験)に従って測定した場合に、約0.1g/10分〜約100g/10分、好ましくは約0.5g/10分〜約80g/10分、より好ましくは約3〜60g/10分、最も好ましくは約5g/10分〜約60g/10分(例えば約30g/10分〜約60g/10分)であることができる。
【0024】
本明細書中に示されるように、第1のポリマー成分は得られる全組成物への剛性、強度及びことによると更には耐衝撃性の付与を助けるために重要である。従って、選択される材料は望ましくは、魅力的な耐衝撃性を示す。例えば本発明において有用な軟質熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン)のシャルピー(ノッチ付き)衝撃強さ(23℃)は、ISO 179−1/1eAに従って測定した場合に、約0.8kJ/m2超、好ましくは約1kJ/m2超、より好ましくは約1.6kJ/m2超、最も好ましくは約2kJ/m2超(例えば約2.3kJ/m2超、又は更には約4kJ/m2)であることができる。適当な軟質熱可塑性樹脂(例えば適当なポリプロピレン)は、また、ISO 179−1/1eAに従って23℃において測定した場合に、ポリプロピレンのシャルピー(ノッチ付き)衝撃強さ(23℃)が約15kJ/m2未満、好ましくは約12kJ/m2未満、より好ましくは約8kJ/m2未満、最も好ましくは約6kJ/m2未満(例えば約5kJ/m2未満)であることを特徴とすることができる。
【0025】
本発明の好ましい一面において、熱可塑性ポリマーは、ISO 1133(230℃,2.16kg)に従って測定した場合に約1〜約5g/10分のメルトフローレート及びISO 179−1/1eA(23℃)に従って測定した場合に、約3〜約8kJ/m2のシャルピー(ノッチ付き)衝撃強さを有するポリプロピレンホモポリマーを含む。本発明の第2の好ましい面において、熱可塑性ポリマーは、ISO 1133(230℃,2.16kg)に従って測定した場合に約40g/10分〜約60g/10分(例えば約50g/10分〜約55g/10分)のメルトフローレート及びISO 179−1/1eA(23℃)に従って測定した場合に約1〜約5kJ/m2のシャルピー(ノッチ付き)衝撃強さを有するポリプロピレンホモポリマーを含む。本発明の第3のの好ましい面において、熱可塑性ポリマーは、ISO 1133(230℃,2.16kg)に従って測定した場合に約30g/10分〜約55g/10分(例えば約37g/10分〜約47g/10分)のメルトフローレート及びISO 179−1/1eA(23℃)に従って測定した場合に約4〜約12kJ/m2(例えば約5〜約8kJ/m2)のシャルピー(ノッチ付き)衝撃強さを有する耐衝撃性ポリプロピレンコポリマーを含む。
【0026】
本発明において有用な第1のポリマー成分(例えば熱可塑性ポリマー)は、典型的には約1400〜約1800MPa、より限定的には約1500〜約1700MPaの範囲の曲げ弾性率(ISO 178に従って測定);典型的には約20〜約50MPa、より限定的には約30〜約40MPaの範囲の降伏点引張強さ(ISO 527−2に従って測定);約5〜約20%、より限定的には約7〜約15%の範囲の降伏点引張伸び(ISO 527−2による)、又はそれらの任意の組合せを示すことができることがわかる。非常に好ましい一態様において、第1のポリマー成分はプロピレンポリマー、好ましくはポリプロピレンホモポリマー、最も好ましくはイソタクチックポリプロピレン(例えば約5重量%未満のアタクチックポリプロピレンを含むイソタクチックポリプロピレン)を含む。とはいえ、第1のポリマー成分はランダムコポリマー又は更には耐衝撃性コポリマー(既にゴム相を含むもの)をそれでもなお含むことができる。本発明において使用するのに特に好ましいポリプロピレンホモポリマーの例としては、The Dow Chemical Companyから入手可能なH705−03若しくはH734−52又はその両者或いは同様な特性を有する他のものが挙げられる。本発明において使用するのに特に好ましいポリプロピレン耐衝撃性コポリマーの例としては、The Dow Chemical Companyから入手可能なC705−44NA又は同様な特性を有する他のものが挙げられる。
【0027】
第2のポリマー成分/軟質熱可塑性樹脂
第2のポリマー成分は、硬質の第1のポリマー成分より軟質であること(例えばショアー(Shore) Aデュロメーターで低値)、より可撓性である(例えば曲げ弾性率がより低い)こと、結晶化度が低いこと又はそれらの任意の組合せを特徴とする。第2のポリマー成分は典型的には1種又はそれ以上の(比較的)軟質の熱可塑性樹脂を含む。適当な軟質熱可塑性樹脂としては、オレフィン系ブロックコポリマー(例えばエチレン/α−オレフィンインターポリマー若しくはエチレン/α−オレフィンインターポリマーのような低級α−オレフィン/α−オレフィンインターポリマー)、実質的に線状の若しくは線状のエチレンポリマー(S/LEP)、プロピレンエラストマー又はそれらの任意の組合せが挙げられる。本発明の一面において、第2のポリマー成分は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーを含むか又はエチレン/α−オレフィンインターポリマーから本質的になる。本発明の別の面において、第2のポリマー成分は、S/LEPを含むか又はS/LEPから本質的になる。本発明の更に別の面において、第2のポリマー成分は、プロピレンエラストマーを含むか又はプロピレンエラストマーから本質的になる。本発明の更に別の面において、軟質熱可塑性樹脂は前記軟質ポリマーの2種又は3種全てを含む。
【0028】
本明細書中に示されるように、本発明の組成物は、エチレン分を含むことができる、好ましくは少なくとも1種のエチレン含有軟質熱可塑性樹脂(例えば半結晶質のエチレン含有エラストマー)を含む第2のポリマー成分を更に意図する。
従って、第2のポリマー成分は、典型的にはエチレンを含む1種のコポリマー又はそのようなコポリマーの任意の組合せを含む1種又はそれ以上の軟質熱可塑性樹脂を含むことができ、少なくとも一部の軟質熱可塑性樹脂は約40℃より高い温度に相転移(例えばピーク融解温度又はガラス転移温度であるが、好ましくはピーク融解温度)を有する(例えばこのエラストマーの少なくとも一部は結晶質である)。
【0029】
第2のポリマー成分、軟質熱可塑性樹脂又は両者は、約2重量%超、好ましくは約3重量%超、より好ましくは約5重量%超、最も好ましくは約7重量%超(例えば約10重量%超)の結晶化度を有することができる。第2のポリマー成分、軟質熱可塑性樹脂又は両者は、約44重量%未満、好ましくは約40重量%未満、より好ましくは約35重量%未満、最も好ましくは約30重量%未満(例えば約20重量%未満)の結晶化度を有することができる。例えば第2のポリマー成分、軟質熱可塑性樹脂又は両者は、約2〜約44重量%、好ましくは約2〜約40重量%、より好ましくは約5〜約35重量%、最も好ましくは約7〜約30重量%(例えば約10〜約20重量%)の結晶化度を有することができる。
【0030】
第2のポリマー成分、軟質熱可塑性樹脂又は両者は、全ポリマー組成物の全重量基準で、少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約25重量%、最も好ましくは少なくとも約30重量%の量で存在できる。第2のポリマー成分、軟質熱可塑性樹脂又は両者は、全ポリマー組成物の全重量基準で、約90重量%未満、好ましくは約75重量%未満、より好ましくは約70重量%未満、最も好ましくは約50重量%未満の量で存在できる。
【0031】
SLEP
本明細書中に記載する第2のポリマー成分は、1種若しくはそれ以上のα−オレフィン軟質熱可塑性樹脂(例えばα−オレフィンエラストマー)、例えば1種若しくはそれ以上の線状エチレンコポリマー(LEPとしても知られる)、1種若しくはそれ以上の実質的に線状のエチレンコポリマー(SLEPとしても知られる)又は両者を使用できる。本明細書中で使用する「S/LEP」は典型的にはLEP及び/又はSEPを含む。実質的に線状のエチレンコポリマー及び線状エチレンコポリマー並びにそれらの製造方法は、米国特許第5,272,236号及び第5,278,272号に詳述されており、あらゆる目的のためにこれらの特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0032】
本明細書中で使用する「線状の又は実質的に線状のエチレンポリマー」は、線状の主鎖を有し、一定限度量の長鎖分岐を有するか若しくは長鎖分岐を有さず、狭い分子量分布を有し、狭い組成分布(例えばα−オレフィンコポリマーに関して)を有し又はそれらの組合せである、エチレンと1種若しくはそれ以上のα−オレフィンコモノマーとのコポリマーを意味する。このようなポリマーに関するこれ以上の説明は米国特許第6,403,692号に記載されており、あらゆる目的のためにこの特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0033】
α−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、ジエチル−1−ブテン、トリメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジメチル−1−ペンテン、メチルエチル−1−ペンテン、ジエチル−1−ヘキセン、トリメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ヘプテン、ジメチルオクテン、エチル−1−オクテン、メチル−1−ノネン、エチレン−オクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン及びビニルノルボルネンが挙げられ、アルキル分岐位置は、明記していない場合には、一般にアルケン及びスチレンの3位又はそれより大きい位置番号にある。α−オレフィンは望ましくはC3〜C20又はC3〜C10α−オレフィンである。好ましいコポリマーとしては、エチレン−プロピレン(EP)、エチレン−ブテン(EB)、エチレン−ヘキセン−1(EH)及びエチレンオキシド(EO)ポリマーが挙げられる。ターポリマーの例としては、エチレン/プロピレン/オクテンターポリマー並びにエチレン、C3〜C20α−オレフィン及びジエン(例えばジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ピペリレン若しくは5−エチリデン−2−ノルボルネン)のターポリマーが挙げられる。
【0034】
S/LEPは、少なくとも4個(例えば少なくとも8個)の炭素原子を含む1種又はそれ以上の高級α−オレフィンを含むことができる。例えば適当な高級α−オレフィンは、炭素数4〜約20(例えば8〜約20)の1種又はそれ以上のα−オレフィン、より好ましくは炭素数約8〜約12の1種又はそれ以上のα−オレフィンを含むことができる。限定するものではないが、高級α−オレフィンはブタン、ヘキサン、オクタン又はそれらの任意の組合せであることができる。高級α−オレフィンは1−オクテンを含むか又は1−オクテンから本質的になることができる。限定するものではないが、代表的なS/LEP(例えば、エチレンエラストマーとして有用であることができるS/LEP)は、S/LEPの全重量基準で約50重量%超、好ましくは約55重量%超のエチレンモノマーを含むことができる。代表的なS/LEPは、S/LEPの全重量基準で約85重量%未満、好ましくは約80重量%未満、より好ましくは約70重量%未満のエチレンモノマーを含むことができる。S/LEP中の高級α−オレフィンの濃度は、S/LEPの全重量基準で約12重量%超、より好ましくは20重量%超、最も好ましくは約30重量%超であることができる。例えばS/LEPは、S/LEPの全重量基準で約50重量%超の濃度のエチレンモノマーと約12重量%超(例えば約20重量%超)の濃度の1−オクテンモノマーを含むコポリマーであることができる。適当なS/LEPは、The Dow Chemical CompanyからEngage(登録商標)の名称で市販されている。
【0035】
限定するものではないが、米国特許第5,272,236号(例えばカラム2,第41行〜第51行及びカラム3,第25行〜第3の0行)に記載された代表的なS/LEPは、以下の新規特性:
a)メルトフロー比I10/I2≦5.63
b)式:
w/Mn≦I10/I2−4.63
によって定義される分子量分布Mw/Mn、及び
c)4×106ダイン/cm2より大きいグロスメルトフラクチャー開始時臨界剪断応力
を有する実質的に線状のオレフィンポリマーと特徴付けることができる。
【0036】
このようなポリマーは、エチレンと少なくとも1種のC3〜C20α−オレフィンとのインターポリマーであることができる。メルトフロー比I10/I2はI10(ASTM D−1238(190/10)に従って測定したメルトフローインデックス)とI2(ASTM D−1238(190/2.16)に従って測定したメルトフローインデックス)の比である。これらの「実質的に線状の」ポリマーは、炭素原子1000個当り3個以下の長鎖分岐(ここで1つの長鎖分岐は炭素数が少なくとも約6である)で置換された又は非置換のポリマー主鎖を有することができる。好ましいポリマーは約0.01〜約3個/炭素原子1000個、より好ましくは約0.01〜約1個/炭素原子1000、特に約0.3〜約1個/炭素原子1000個の長鎖分岐で置換されている。このポリマーの多分散指数の測定法は、米国特許第5,272,236号の5欄第18行〜第40行に記載されており、以下の方法に従って行う:ポリマーを、システム温度140℃で操作される3本のリニア混床式カラム(Polymer Laboratories(粒度10ミクロン))を装着したWaters 150C高温クロマトグラフユニットでゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分析する。溶媒は1,2,4−トリクロロベンゼンであり、注入のためにそれを用いてサンプルの約0.5重量%溶液を調製する。流速は1.0ml/分であり、注入サイズは100μlである。分子量の測定を、狭分子量分布ポリスチレン標準(Polymer Laboratoriesから)をその溶出体積と組合せて用いることよって推定する。ポリエチレン及びポリスチレンに適切なMark−Houwink係数(Williams and Word,Journal of Polymer Science,Polymer Letters,Vol.6,(621)1968(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載)を用いて下記式:
ポリエチレン=(a)(Mポリスチレンb
を導くことによって、換算ポリエチレン分子量を算出する。この式において、a=0.4316、b=1.0である。重量平均分子量Mwを式:
w=(R)(wi)(Mi
[式中、wi及びMiはそれぞれ、GPCカラムから溶出するi番目のフラクションの重量分率及び分子量である]
に従って通常の方法で算出する。グロスメルトフラクチャー開始時臨界剪断応力。グロスメルトフラクチャー開始時臨界剪断応力は、米国特許第5,272,236号(例えば4欄第10行〜第45行)に記載された気体押出式流動計(gas extrusion rheometer(GER))によって測定する。気体押出式流動計は、M.Shida、R.N.Schroff及びL.V.CancioによってPolymer Engineering Science,Vol.17,no.11,p.770(1977)、並びにVan Nostrand Reinhold Co.(1982)によって発行されたJohn Dealyのよる”Rheometers for Molten Plastics”の第97頁に記載されている。これら2つの文献を引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる。GER実験は全て、190℃、窒素圧5250〜500psigにおいて直径0.0296インチのL/D20:1のダイを用いて行う。見掛剪断応力vs.見掛剪断速度のプロットを用いて、メルトフラクチャー現象を確認する。Ramamurthy(Journal of Rheology,30(2),337〜357,1986)によれば、ある臨界流速を超える場合、観察される押出物の凸凹は、表面メルトフラクチャー及びグロスメルトフラクチャーの2つの主な型に大別できる。表面メルトフラクチャーは、見かけ上定常流の条件下で起こり、詳細には鏡面光沢の消失からよりひどい「サメ肌」までさまざまである。グロスメルトフラクチャーは非定常流の条件下で起こり、詳細には規則歪(交互の粗い面と滑らかな面、らせん状など)からランダム歪までさまざまである。商業的に受け入れられるためには、(例えばインフレーションフィルム製品においては)、表面欠陥は、ゼロとまではいかなくてもできるだけ少なくなければならない。ここでは、GERによって押出された押出物の表面粗度及び形状の変化に基づく表面メルトフラクチャー開始(OSMF)時臨界剪断速度及びグロスメルトフラクチャー開始(OGMF)時臨界剪断速度を用いる。好ましくは、本明細書中に記載した実質的に線状のエチレンポリマーのOGMF時臨界剪断応力及びOSMF時臨界剪断応力は、それぞれ、約4×106ダイン/cm2超及び約2.8×106ダイン/cm2超である。
【0037】
限定するものではないが、適当なS/LEPの別の例が欧州特許第0495099号(1989年12月12日出願)に記載されており、これを引用することによって本明細書中に組み入れる。欧州特許第0495099号は、(a)エチレン由来の構造単位と(b)炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位を有するS/LEPコポリマーを記載しており、このS/LEPコポリマーは、
(i)密度が0.85〜0.92g/cm3
(ii)135℃においてデカリン中で測定した極限粘度数[η]が0.1〜10dl/g、
(iii)GPCによって測定した重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.2〜4、及び
(iv)190℃において測定した(荷重10kg下でのMFR10)対(荷重2.16kg下でのMFR2)の比(MFR10/MFR2)が8〜50
であることを特徴とする。MFR10及びMFR2は、例えばASTM D−1238によって190℃においてそれぞれ10kg及び2.16kgの荷重を用いて測定できる。
【0038】
S/LEPは任意の適当な触媒系を用いて重合させることができる。例えばエラストマーは、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、活性化非メタロセン金属中心へテロアリール配位子触媒などを含む触媒を用いて重合させることができる。触媒の組合せも使用できる。限定するものではないが、代表的な触媒の1つはメタロセン触媒である。例えばS/LEPは、欧州特許出願第129368号(1984年6月5日出願;Ewenら)(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたメタロセン触媒を含む触媒を用いて重合させることができる。このようなメタロセンは一般式:
(C5R’mpR”5(C5R’m)MeQ3-p及びR”s(C5R’m)MeQ’
[式中、Meは第4b族、第5b族、第6b族金属であり;(C5R’m)はシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり;各R’(同一であることも異なることもできる)は水素、炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール若しくはアリールアルキル基であるか又は2つのR’置換基が一緒に縮合C4〜C6環を形成し;R”は2つの(C5−R’m)環に架橋するC1〜C4アルキレン基、ジアルキルゲルマニウム若しくは珪素、又はアルキルホスフィン若しくはアミン基であり;各Q(同一であることも異なることもできる)は炭素数1〜20のアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール若しくはアリールアルキル基又はハロゲンであり;Q’は炭素数1〜20のアルキリデン基であり;sは0又は1であり;pは0、1又は2であり;pが0である場合には、sは0であり;s=1である場合にはmは4であり;sが0である場合にはmは5であり;Qがアルキル基である場合には、少なくとも1つのR’はヒドロカルビル基である]
の化合物であることができる。
【0039】
S/LEPは約40℃超の温度に相転移(例えばピーク融解温度)を有することができる(例えばS/LEPの少なくとも一部は結晶質である)。S/LEPは約2〜約14%、より好ましくは約3〜約11%、最も好ましくは約4〜約9%の結晶化度を有することができる。
【0040】
S/LEPは、全ポリマー組成物の全重量基準で、典型的には少なくとも約10重量%、より典型的には少なくとも約20重量%、更に典型的には少なくとも約25重量%(例えば少なくとも約30重量%)の量で存在する。第2のポリマー成分はまた、全ポリマー組成物の全重量基準で、典型的には約80重量%未満、より典型的には約75重量%未満、最も典型的には約70重量%未満、場合により約45重量%未満(例えば約35重量%未満)である。
【0041】
第2のポリマー成分のために選択されるS/LEPは、ASTM D2240−05によるショアー A硬度が少なくとも約25、好ましくは少なくとも約45、より好ましくは少なくとも約55、更に好ましくは少なくとも約60、最も好ましくは少なくとも約65であることができる。S/LEPのショアー A硬度は、約95未満、好ましくは約90未満、より好ましくは約85未満、更に好ましくは約80未満であることができる。例えば、S/LEPの硬度は、約65〜約95、より好ましくは約65〜約85、更に好ましくは約65〜約80の範囲であることができる。
【0042】
第2のポリマー成分用のS/LEPは一般に、ASTM D792−00に従って測定した密度が約0.8〜約0.9g/cm3(例えば約0.855〜約0.895g/cm3)である。適当なS/LEPは少なくとも0.850g/cm3、好ましくは少なくとも0.855g/cm3、より好ましくは少なくとも0.860g/cm3、最も好ましくは少なくとも0.867g/cm3の密度を有することができる。エチレンエラストマーの密度は約0.908g/cm3未満、好ましくは約0.900g/cm3未満、より好ましくは約0.890g/cm3未満、最も好ましくは約0.880g/cm3未満であることができる。密度はASTM D792−00によって測定して求める。
【0043】
適当なS/LEPは、ASTM D−1238−04(190℃,2.16kg)に従って測定されたメルトインデックスが少なくとも約0.2g/10分、好ましくは少なくとも約0.5g/10分、より好ましくは少なくとも約1.0g/10分、更に好ましくは少なくとも約5g/10分であることを特徴とすることができる。S/LEPのメルトインデックスはまた、約60g/10分未満、好ましくは約40g/10分未満、より好ましくは約30g/10分未満、最も好ましくは約10g/10分未満であることができる。例えばメルトフローレートは約0.2〜約60g/10分、より好ましくは約2〜約40g/10分、更に好ましくは約0.5〜約10g/10分の範囲であることができる。
【0044】
プロピレンエラストマー
第2のポリマー成分は、また、ポリプロピレンエラストマーを含むか又はポリプロピレンエラストマーから本質的になることができる。適当なポリプロピレンエラストマーはプロピレンモノマーを、ポリプロピレンエラストマーの重量に基づき、約50重量%超、好ましくは約65重量%超、より好ましくは約70重量%超、最も好ましくは約80重量%超(例えば少なくとも85重量%)の濃度で含むことができる。ポリプロピレンエラストマーは、また、1種又はそれ以上の追加C2〜C12α−オレフィンコモノマー(例えばエチレンを含む若しくはエチレンからなる、又はブテンを含む若しくはブテンからなるコモノマー)を、ポリプロピレンエラストマーの全重量基準で約5重量%超、好ましくは約7重量%超、より好ましくは約9重量%超、最も好ましくは約12重量%超の濃度で含むことができる。例えばコモノマー含量はポリプロピレンエラストマー組成物の約5〜約40重量%、より好ましくは約7〜約30重量%、更に好ましくは約9〜約15重量%の範囲であることができる。ポリプロピレンエラストマーはある程度の結晶化度を有することもできるし、或いは非晶質であることもできる。適当なポリプロピレンエラストマーは、示差走査熱量測定法によって約220℃から約0℃まで約10℃/分の速度で冷却されたサンプルについて約10℃/分の加熱速度で測定された場合に、約130℃未満、好ましくは約115℃未満、最も好ましくは約100℃未満のピーク融解温度を有することができる。
【0045】
プロピレンエラストマーは、好ましくはエチレン、ブテン、ヘキセン及びオクテンから選ばれたα−オレフィンを含む。より好ましくはプロピレンエラストマーはエチレン、ブテン及びオクテンから選ばれたα−オレフィンを含む。最も好ましくはプロピレンエラストマーはエチレン及びブテンから選ばれたα−オレフィンを含む。
【0046】
ポリプロピレンエラストマーはASTM D2240−05によって測定したショアー A硬度(即ちデュロメーター)が少なくとも約40、より好ましくは少なくとも約50、更に好ましくは少なくとも約65であることができる。ショアー A硬度はまた、約97未満、好ましくは約95未満、より好ましくは約92未満、更に好ましくは約85未満(例えば約80未満)であることができる。例えばポリプロピレンエラストマーは約40〜約97、より好ましくは約50〜約95、更に好ましくは約65〜約95のショアー A硬度を有することができる。
【0047】
適当なポリプロピレンエラストマーはASTM D1238(230℃/2.16kg)に従って測定したメルトフローレートが少なくとも1g/10分、好ましくは少なくとも約4g/10分、より好ましくは少なくとも約7g/10分、最も好ましくは少なくとも約10g/10分であることができる。限定するものではないが、ポリマー組成物に適当なプロピレンエラストマーは約1500g/10分未満、好ましくは約150g/10分未満、より好ましくは約100g/10分未満、最も好ましくは約60g/10分未満のメルトフローレートを有することができる。
【0048】
ポリプロピレンエラストマーは少なくともある程度の結晶化度を示すのが好ましい。例えば結晶化度はポリプロピレンエラストマー材料の少なくとも約2重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、更に好ましくは少なくとも約7重量%であることができる。限定するものではないが、適当なポリプロピレンエラストマーは約50重量%未満の結晶化度を有することができる。例えばプロピレンエラストマーの結晶化度は、ポリプロピレンエラストマー材料の約40重量%未満、好ましくは約35重量%未満、より好ましくは約28重量%未満、更に好ましくは約20重量%未満であることができる。一般に、適当なプロピレンエラストマーは、約2〜約50重量%の結晶化度を有することができる。例えばこの結晶化度はポリプロピレンエラストマー材料の約2〜約40重量%、より好ましくは約5〜約35重量%、更に好ましくは約7〜約20重量%の範囲であることができる。
【0049】
プロピレンエラストマーがプロピレンとエチレンとのコポリマーである(即ちコモノマーがエチレンである)場合には、従って、前記から、プロピレンエラストマーを含む得られる好ましい全組成物(即ちポリマー組成物)はエチレン分(総エチレン分)を有することがわかるであろう。例えば一面において、得られる最終組成物中の全エチレン分は、得られる全組成物の約2重量%超、好ましくは約3重量%超、より好ましくは約4重量%超であることができる。本発明のこの面においては、他方において、得られる全組成物中のエチレンの総濃度が全組成物の約35重量%未満、好ましくは約25重量%未満、より好ましくは約20重量%未満、更に好ましくは約10重量%未満であることが一般に期待される。
【0050】
プロピレンエラストマーがプロピレンとC4〜C12α−オレフィン(例えばブテン、ヘキサン又はオクテン)とのコポリマーである場合には、従って、前記から、プロピレンエラストマーを含む得られる好ましい全組成物(即ちポリマー組成物)は総C4〜C12α−オレフィンを有することがわかるであろう。例えば一面において、得られる最終組成物中の全C4〜C12α−オレフィン分は、得られる全組成物の約2重量%超、好ましくは約3重量%超、より好ましくは約4重量%超であることができる。本発明のこの面においては、他方において、得られる全組成物中のC4〜C12α−オレフィンの総濃度が全組成物の約35重量%未満、好ましくは約25重量%未満、より好ましくは約20重量%未満、更に好ましくは約10重量%未満であることが一般に期待される。
【0051】
限定するものではないが、本明細書の教示に従って使用できる適当なプロピレンエラストマーとしては、国際特許出願公開公報WO03/040201A1(2002年5月6日出願)、米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2002年5月5日出願)及び米国特許第6,525,157号(2003年2月25日発行)に開示されたものが挙げられる。これらの特許文献全てを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0052】
例えばプロピレンエラストマーは低弾性α−オレフィン−プロピレンコポリマー、例えば米国特許第6,525,157号(2003年2月25日発行)(引用することによって本明細書中に組み入れる)に教示された低弾性エチレン−プロピレンコポリマー(即ちLEEPコポリマー)であることができる。米国特許第6,525,157号(2003年2月25日発行)の2欄15行〜3欄54行に記載されたこのようなLEEPは、単一定常状態反応器中でメタロセン触媒及び活性化剤の存在下で製造された場合に、曲げ弾性率、引張強さ及び弾性の驚くべき予想外のバランスを示す(LEEP)コポリマーであることができる。更に、(LEEP)コポリマーのこれら及びその他の性質はイソタクチックポリプロピレンとエチレンープロピレンコポリマーとのブレンドのような従来のポリマーブレンドに比べて驚くべき相違点を示す。
【0053】
一態様において、(LEEP)コポリマーは、エチレン由来単位を下限5重量%若しくは6%重量若しくは8重量%若しくは10重量%〜上限20重量%若しくは25重量%と、プロピレン由来単位を下限75重量%若しくは80重量%〜上限95重量%若しくは94重量%若しくは92重量%若しくは90重量%含む(前記重量百分率はプロピレン由来単位とエチレン由来単位の総重量に基づく)。コポリマーはジエン由来単位を実質的に含まない。
【0054】
種々の態様において、(LEEP)コポリマーの特徴としては、以下の特性の一部又は全てが挙げられる(この特性においては、任意の記載上限値から任意の記載下限値までの範囲が考えられる):
(i)融点が上限110℃未満又は90℃未満又は80℃未満又は70℃未満〜下限25℃超又は35℃超又は40℃超又は45℃超の範囲である;
(ii)弾性(elasticity)対500%引張弾性率(tensile modulus)の関係が弾性≦0.935M+12又は弾性≦0.935M+6又は弾性≦0.935Mである(弾性はパーセントで表し、Mはメガパスカル(MPa)で表した500%引張弾性率である);
(iii)曲げ弾性率(flexural modulus)対500%引張弾性率の関係が曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50又は曲げ弾性率≦4.2e0.27M+30又は曲げ弾性率≦4.2e0.27M+10又は曲げ弾性率≦4.2e0.27M+2である(曲げ弾性率はMPaで表し、MはMPaで表した500%引張弾性率である);
(iv)融解熱が下限1.0ジュール/g(J/g)超又は1.5J/g超又は4.0Jg超又は6.0J/g超又は7.0J/g超〜上限125J/g未満又は100J/g未満又は75J/g未満又は60J/g未満又は50J/g未満又は40J/g未満又は30J/g未満である;
(v)トリアドタクチシティー(炭素−13核磁気共鳴(13C NMR)によって測定)が75%超又は80%超又は85%超又は90%超である;
(vi)タクチシティー指数m/rが下限4又は6〜上限8又は10又は12の範囲である;
(vii)全挿入プロピレン中のプロピレンモノマーの2,1−挿入に基づく逆挿入プロピレン単位の比率(13C NMRによって測定)が0.5%超又は0.6%超である;
(viii)全挿入プロピレン中のプロピレンモノマーの1,3−挿入に基づく逆挿入プロピレン単位の比率(13C NMRによって測定)が0.05%超又は0.06%超又は0.07%超又は0.08%超又は0.085%超である;
(ix)コポリマーの少なくともX重量%が、ヘキサン中で8℃ずつ昇温させて行った熱分別の2つの隣接温度画分中に可溶であるような分子間タクチシティー(Xは75又は80又は85又は90又は95又は97又は99である);
(x)反応性比の積r12が1.5未満又は1.3未満又は1.0未満又は0.8未満である;
(xi)分子量分布Mw/Mnが下限1.5又は1.8〜上限40又は20又は10又は5又は3の範囲である;
(xii)分子量が15,000〜5,000,000である;
(xiii)固体プロトン核磁気共鳴(1H NMR)の緩和時間が18ミリ秒(ms)未満又は16ms未満又は14ms未満又は12ms未満又は10ms未満である;
(xiv)本明細書中で定義した弾性が30%未満又は20%未満又は10%未満又は8%未満又は5%未満である;
(xv)500%引張弾性率が0.5MPa超又は0.8MPa超又は1.0MPa超又は2.0MPa超である。
【0055】
LEEPコポリマーは、単一定常状態反応器中で架橋メタロセン触媒の存在下において製造する。
【0056】
LEEPコポリマーの試験方法は、米国特許第6,525,157号に記載されている:
LEEPコポリマーの融解温度及び融解熱を測定するための試験方法は、米国特許第6,525,157号の19欄12行〜19欄29行に記載されている。融点及び融解熱は示差走査熱量測定法(DSC)によって以下のようにして測定する。約200〜230℃においてプレスされたポリマーのシート約6〜10mgをパンチダイで取り除く。これを室温で24時間アニールする。この時間の終了時に、サンプルを示差走査熱量計(Perkin Elmer 7 Series Thermal Analysis System)中に入れ、約−50〜約−70℃に冷却する。サンプルを約200〜約220℃の最終温度に達するように20℃/分で加熱する。熱出力をサンプルの融解ピーク下の面積として記録し(これは典型的には約30〜約175℃にピークがあり、約0〜約200℃で行われる)、融解熱の指標としてジュールで測定する。融点は、サンプルの融解範囲内の最大熱吸収温度として記録する。
【0057】
LEEPコポリマーの弾性、500%弾性率(elastic modulus)及び曲げ弾性率の測定の試験方法は、米国特許第6,525,157号の17欄1行〜18欄60行に記載されている:
LEEPコポリマーの態様は引張変形後に弾性である。サンプル長さのパーセントとして表されるサンプル長さの微増によって表される弾性は、一般的な方法ASTM D790に従って測定する。引張伸びの間にコポリマーサンプルは延伸され、延伸力が除かれるとポリマーはその原寸を回復しようとする。この回復は完全ではなく、応力緩和サンプルの最終長さは元のサンプルの長さよりもわずかに長い。弾性は、元の未延伸サンプルの長さのパーセントとして表されたサンプル長さの微増によって表される。
【0058】
サンプルの弾性を測定するためのプロトコールは、伸び及び引張強さの測定に関する前記方法に従って作成されたダンベルの変形可能なゾーン(試験片の狭い部分である)を元の長さの200%まで予備延伸することによるサンプルの予備延伸からなる。これは、10インチ(25cm)/分の変形速度で行う。元のサンプルの予備延伸試験片である分析試験片を形成するために、サンプルを同じ速度で応力緩和させる。このわずかに配向された又は予備延伸されたサンプルを、弾性の測定前に室温で48時間応力緩和させる。サンプル中の変形ゾーンの長さはd1と測定される。48時間後、サンプルの変形ゾーンを200%伸長させるためにサンプルを再び10インチ/分の速度で変形させ、同じ速度で応力緩和させる。サンプルを取り外し、10分間の応力緩和後、サンプルは変形ゾーンの新しい長さがd2と測定される。サンプルの弾性(%)は100*(d2−d1)/d1と算出される。
【0059】
LEEPコポリマーの態様は、前記方法によって測定した場合に、30%未満又は20%未満又は10%未満又は8%未満又は5%未満の弾性を有することができる。
【0060】
コポリマーの組成範囲全体にわたるこれらの弾性値は、500%引張弾性率によって測定されるサンプルの引張強さによって異なる。従って、この系のコポリマーの弾性は、(a)測定可能な弾性率による500%伸びまでの伸長率(500%引張弾性率)及び(b)前記のわずかに配向させられたサンプルに関する200%伸びまでの伸長からの弾性の2つの基準によって表される。第一に、LEEPコポリマーの態様のコポリマーは、測定可能な、500%伸びにおける引張強さ(500%引張弾性率としても知られる)が0.5Mpa超又は0.75MPa超又は1.0MPa超又は2.0MPa超でなければならず、第二に、コポリマーは前記弾性を有さなければならない。
【0061】
もう1つの方法として、弾性対500%引張弾性率の関係を説明することができる。LEEPコポリマーの態様において、500%引張弾性率(MPa)の関数としての弾性は下記式で定義される:
弾性(%)≦0.935M+12;又は
弾性(%)≦0.935M+6;又は
弾性(%)≦0.935M
[式中、Mは500%引張弾性率(MPa)である]。
【0062】
曲げ弾性率
LEEPコポリマーの態様のコポリマーの軟度は、曲げ弾性率によって測定できる。曲げ弾性率は、ASTM D790に従ってIV型ドッグボーンを用いて、0.05in/分(1.3mm/分)のクロスヘッド速度で測定する。コポリマーの組成範囲全体にわたる曲げ弾性率の値は500%引張弾性率によって測定されるサンプルの引張強さによって異なる。従って、この系のコポリマーの曲げ弾性率は、(a)測定可能な弾性率による500%伸びまでの伸長率(500%引張弾性率)及び(b)曲げ弾性率の2つの基準によって表すことができる。
【0063】
500%引張弾性率(MPa)の関数としてのLEEPコポリマーの曲げ弾性率(MPa)は、式:
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50;又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+30;又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+10;又は
曲げ弾性率≦4.2e0.27M+2
によって定義される。
【0064】
LEEPコポリマーのタクチシティー指数を測定するための試験法は、米国特許第6,525,157号の6欄22〜36行に記載されている:ここで「m/r」として表されるタクチシティー指数は、13C核磁気共鳴(NMR)によって測定する。タクチシティー指数m/rは、H.N.Cheng,Macromolecules,17,1950(1984)において定義されるようにして算出する。「m」又は「r」は、隣接プロピレン基対の立体化学を表し、「m」はメソを、「r」はラセミを意味する。m/r比1.0は一般にシンジオタクチックポリマーを表し、m/r比2.0はアタクチック材料を表す。イソタクチック材料は理論上は無限大に近い比を有することができ、多くの副生成物アタクチックポリマーは、50超の比をもたらすほどのイソタクチック含量を有する。LEEPコポリマーは下限4又は6〜上限8又は10又は12の範囲のタクチシティー指数m/rを有することができる。
【0065】
米国特許第6,525,157号の5欄1〜57行に記載されているLEEPコポリマーの分子量及び多分散指数を測定するための試験法としては、以下が挙げられる:
分子量分布(MWD)は、所定のポリマーサンプル内の分子量範囲の指標である。MWDの幅は種々の分子量平均値の比、例えば重量平均分子量対数平均分子量の比Mw/Mn又はZ−平均分子量対重量平均分子量の比Mz/Mwによって特徴付けることができることがよく知られている。
【0066】
Mz、Mw及びMnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)としても知られる)を用いて測定できる。この方法は、異なる粒度の高分子を分離するために、多孔質ビーズが充填されたカラム、溶出溶媒及び検出器を含む機器を用いる。典型的な測定法においては、使用するGPC機器は、145℃において操作されるウルトラスタイロゲルカラムを装着したWaters クロマトグラフである。使用する溶出溶媒はトリクロロベンゼンである。このカラムを、正確に知られた分子量を有する16個のポリスチレン標準を用いて較正する。これらの標準から得られたポリスチレン保持容量を試験ポリマーの保持容量に相関させることによって、ポリマー分子量が得られる。
【0067】
平均分子量Mは式:
【0068】
【数1】

【0069】
[式中、Niは分子量Miを有する分子の数である]
からコンピュータで計算できる。n=0の場合にはMは数平均分子量Mnであり、n=1の場合にはMは重量平均分子量Mwであり、n=2の場合には、MはZ平均分子量Mzである。望ましいMWD関数(例えばMw/Mn又はMz/Mw)は対応するM値の比である。M及びMWDの測定法は当業界でよく知られており、例えばSlade,P.E.Ed.,Polymer Molecular Weights Part II,Marcel Dekker、Inc.,NY,(1975)287-368;Rodriguez,F.,Principles of Polymer Systems 3rd ed.,Hemisphere Pub.Corp.,NY,(1989)155-160;米国特許第4,540,753号;Verstrate et al.,Macromolecules,vol.21,(1988)3360により詳細に記載されており、これらを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0070】
LEEPコポリマーの態様には、重量平均分子量(Mw)が15,000〜5,000,000又は20,000〜1,000,000であり且つ分子量分布Mw/Mn(「多分散指数」(PDI)と称することもある)が下限値1.5又は1.8〜上限値40又は20又は10又は5又は3の範囲であるLEEPコポリマーが含まれる。
【0071】
米国特許第6,525,157号の6欄37行〜7欄44行に記載されているLEEPコポリマーのトリアドを測定するための試験方法は以下の通りである。
LEEPコポリマーのプロピレン単位のタクチシティーを表すための補助手段は、トリアドタクチシティーの使用である。ポリマーのトリアドタクチシティーは、m配列とr配列の二成分の組合せとして表される、3つの隣接プロピレン単位、即ち頭−尾結合からなる鎖の配列の相対タクチシティーである。これは通常、本発明のLEEPコポリマーのコポリマーに関して、コポリマー中の全プロピレントリアドに対する特定のタクチシティーの単位の数の比として表される。
【0072】
プロピレンコポリマーのトリアドタクチシティー(mm画分)は、プロピレンコポリマーの13C NMRスペクトル及び下記式:
mm画分=PPP(mm)/[PPP(mm)+PPP(mr)+PPP(rr)]
[式中、PPP(mm)、PPP(mr)及びPPP(rr)は、頭−尾結合からなる以下の3つのプロピレン単位鎖:
【0073】
【化1】

【0074】
中の2番目の単位のメチル基に由来するピーク面積を意味する]
から求めることができる。
【0075】
プロピレンコポリマーの13C NMRスペクトルを、米国特許第5,504,172号に記載されたようにして測定する。メチル炭素領域に相当するスペクトル(19〜23ppm)は、第1の領域(21.2〜21.9ppm)、第2の領域(20.3〜21.0ppm)及び第3の領域(19.5〜20.3ppm)に分割できる。スペクトル中の各ピークは、Journal Polymer,Volume 30(1989),1350ページの論文を参照して割り当てた。
【0076】
第1の領域においては、PPP(mm)によって表される3プロピレン単位鎖中の2番目の単位のメチル基が共鳴する。
【0077】
第2の領域においては、PPP(mr)によって表される3プロピレン単位鎖中の2番目の単位のメチル基が共鳴し、隣接単位がプロピレン及びエチレン単位であるプロピレン単位のメチル基(PEE−メチル基)が共鳴する(20.7ppm付近で)。
【0078】
第3の領域においては、PPP(rr)によって表される3プロピレン単位鎖中の2番目の単位のメチル基が共鳴し、隣接単位がエチレン単位であるプロピレン単位のメチル基(EPE−メチル基)が共鳴する(19.8ppm付近で)。
【0079】
プロピレン挿入におけるトリアドタクチシティー及びエラーの計算: トリアドタクチシティーの計算は、米国特許第5,504,172号に示された方法に概説されている。第2の領域及び第3の領域の総ピーク面積からのピーク面積から、プロピレン挿入(2,1及び1,3の両方)のエラーに関するピーク面積を差し引くことによって、頭−尾結合からなる3プロピレン単位鎖(PPP(mr)及びPPP(rr))に基づくピーク面積を得ることができる。従って、PPP(mm)、PPP(mr)及びPPP(rr)のピーク面積を評価でき、それに基づいて、頭−尾結合からなるプロピレン単位鎖のトリアドタクチシティーを求めることができる。
【0080】
LEEPコポリマーは、13C NMRによって測定した3プロピレン単位のトリアドタクチシティーが75%超又は80%超又は82%超又は85%超又は90%超である。
【0081】
LEEPコポリマーに関するプロピレン挿入における立体エラー及び領域エラー(例えばプロピレンの1,3−挿入及び/又は2,1−挿入に基づく逆挿入プロピレン単位の比率)を測定するための試験方法は、米国特許第6,525,157号の7欄45行〜9欄29行に記載されている。LEEPコポリマー中の全プロピレン挿入に対する2,1−挿入の比率は、Journal Polymer,vol.30(1989),1350ページの論文を参照して下記式:
【0082】
【数2】

【0083】
によって算出できる。
【0084】
前記式中のピークの命名は、Journal Rubber Chemistry and Technology,volume 44(1971),781ページのCarmanらの方法に従って行うことができる。前記式において、Iαδはαδ+第2炭素ピークのピーク面積を意味する。ピークの重複のため、labp(構造(i))のピーク面積をIαβ(構造(ii))から分離するのは困難である。従って、対応する面積を有する炭素ピークを代用する。
【0085】
1,3−挿入の測定には、βγピークの測定が必要である。2つの構造がβγピークをもたらす可能性がある:(1)プロピレンモノマーの1,3−挿入;及び(2)プロピレンモノマーの2,1−挿入とそれに続く2つのエチレンモノマー。このピークを1,3−挿入ピークとして記載し、本発明者らは、このβγピークを記載している米国特許第5,504,172号に記載された方法を用い、それを4つのメチレン単位の配列を表すものと理解する。これらのエラー量の比率(%)を、[βγピーク(27.4ppm付近の共鳴)の面積]÷[全メチル基ピーク+(βγピーク面積×1/2)]×100によって求めた。オレフィン重合触媒を用いて炭素数3又はそれ以上のα−オレフィンを重合させる場合には、得られるオレフィンポリマーの分子中に多数の逆挿入モノマー単位が存在する。キラルメタロセン触媒の存在下における炭素数3又はそれ以上のα−オレフィンの重合によって製造されたポリオレフィンにおいては、通常の1,2−挿入の他に2,1−挿入又は1,3−挿入が起こり、その結果として2,1−挿入又は1,3−挿入のような逆挿入単位がオレフィンポリマー分子中に形成される(K.Soga,T.Shiono,S.Takemura及びW.KaminskiによるMacromolecular Chemistry Rapid Communication,Volume 8,page 305(1987)を参照)。
【0086】
13C NMRによって測定する、全挿入プロピレン中のプロピレンモノマーの2,1−挿入に基づく、LEEPコポリマーの逆挿入プロピレン単位の比率は0.5%超又は0.6%超である。
【0087】
13C NMRによって測定する、プロピレンモノマーの1,3−挿入に基づく、本発明のLEEPコポリマーの態様の逆挿入プロピレン単位の比率は、0.05%超又は0.06%超又は0.07%超又は0.08%超又は0.085%超である。
【0088】
米国特許第6,525,157号の11欄、10〜60行に記載されているLEEPコポリマーの反応性比を測定するための試験方法は、モノマー配列分布を使用する。既知の平均組成を有するポリマーから始めて、モノマー配列分布を分光分析を用いて測定できる。このために炭素13核磁気共鳴分光法(13C NMR)を使用できる。これを用いて、スペクトルピークの積分によってジアド(diad)及びトリアド分布を確定できる。(この分析に13C NMRを用いなければ、通常はこれよりかなり低いr12積が得られる。)反応性比積については、Textbook of Polymer Chemistry,F.W.Billmeyer,Jr.(Interscience Publishers,New York),p.221以下(1957)により詳細に記載されている。
【0089】
反応性比積r12(r1はエチレンの反応性であり、r2はプロピレンの反応性である)は、測定されたジアド分布(この命名法ではPP、EE、EP及びPE)から下記式:
12=4[EE][PP][EP]2
1=K11/K12=2×[EE]/[EP]
2=K22/K21=2×[PP]/[EP]
P=[PP]+[EP]/2
E=[EE]+[EP]/2
{式中、モル%E=[(E)/(E+P)]*100;
X=E/P(反応器中);
11及びK12はエチレンに関する動的挿入定数(kinetic insertion constant)であり、K21及びK21はプロピレンに関する動的挿入定数である}
を適用することによって算出できる。
【0090】
当業者にはわかることであるが、反応性比積r12=0は「交互」コポリマーを定義でき、反応性比積=1は「統計学的にランダムな」コポリマーを定義すると考えられる。即ち0.6〜1.5の反応性比積r12を有するコポリマーは一般にランダムと考えられる(厳密な理論的観点から言えば、一般に1.5より大きい反応性比積r12を有するコポリマーのみが、比較的長いホモポリマー配列を含み、「塊状」であると考えられる)。LEEPコポリマーは1.5未満又は1.3未満又は1.0未満又は0.8未満の反応性比積r12を有するであろう。LEEPコポリマーのポリマー鎖内のコモノマーの実質的に均一な分布は一般に、本明細書中に開示した分子量(重量平均)のポリマー鎖内に有意な量のプロピレン単位又は配列が存在する可能性をなくす。
【0091】
LEEPコポリマーの分子間タクチシティーを測定するための試験方法は、米国特許第6,525,157号の9欄42行〜10欄15行に記載されている。LEEPコポリマーは、異なる鎖間における(分子間における)重合プロピレンのタクチシティーの分子間差が統計学的に有意でない可能性がある。これは、ゆっくり上昇する一連の温度において一般には単一溶媒中で溶解制御による熱分別によって測定する。典型的な溶媒は、ヘキサン又はヘプタンのような飽和炭化水素である。これらの溶解制御法は、Macromolecules,Vol.26,p.2064(1993)の論文に示されるように、アイソタクチックプロピレン配列の差によって結晶化度が異なる同様なポリマーを分離するのによく用いられる。プロピレン単位のタクチシティーが結晶化度を決定するLEEPコポリマーに関して、本発明者らは、この分別法は組み込まれたプロピレンのタクチシティーに従って分子を分離すると予想する。
【0092】
LEEPコポリマーにおいては、少なくとも75重量%又は少なくとも80重量%又は少なくとも85重量%又は少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%又は少なくとも97重量%又は少なくとも99重量%のコポリマーが単一温度画分又は2つの隣接する温度画分に可溶であり、残りのコポリマーは直前又は直後の温度画分に可溶である。これらの百分率は、℃で始まる画分(例えばヘキサン中)であり、その後の画分は23℃から約8℃ずつ昇温させたものである。このような分別要件に適合することは、ポリマーが重合プロピレンのタクチシティーに統計学的に有意でない分子間差を有することを意味する。
【0093】
分別は、沸騰しているペンタン、ヘキサン、ヘプタン及び更にはジエチルエーテルを分別に用いて行った。このような沸騰溶媒分別において、LEEPコポリマーはいずれの溶媒にも完全に溶解するので、分析情報は得られない。このため、分別は、前述したように且つ本明細書中に詳述するようにして実施して、このような従来の分別範囲内において、コポリマーの特徴をより詳細に表し且つ重合プロピレンコポリマーの驚くべき予想外の有意でない分子間タクチシティー差をより詳細に示す箇所を見つけなければならない。
【0094】
LEEPコポリマーの固体プロトン核磁気共鳴の緩和時間を測定するための試験方法は、米国特許第6,525,157号の12欄10〜60行及び表Iに記載されている。
【0095】
固体プロトンNMR緩和時間(1H NMR T1p)の原理及びポリマーの形態との関係については、Macromolecule 32(1999),1611に記載されている。LEEPコポリマー並びにポリプロピレン(PP)ホモポリマー(対照サンプル)のT1p緩和の実験データは、米国特許第6,525,157号の図1(結晶強度の自然対数を時間に対してプロットしている)に示されており、これらのデータを収集するための実験手順を以下に記載する。データを単一指数関数にフィットさせるために、ln(I)対tデータについて直線回帰を行った(Iは結晶シグナルの強度である)。次いで、フィットの質R2を計算する。完全線形相関のR2は1.0である。ポリプロピレン(対照)及び代表的なLEEPコポリマーのR2はそれぞれ、0.9945及び0.9967である。従って、ポリプロピレンホモポリマー及び代表的なLEEPコポリマー両者のT1p緩和は、単一指数関数とよくフィットすることができる。このフィットから、ポリプロピレン及びLEEPコポリマーのT1pは、それぞれ、25ミリ秒(ms)及び8.7msと算出される。T1pの大きい差は、それらの形態の差異を反映している。
【0096】
仮想ポリプロピレン様領域は、ポリプロピレンホモポリマーと類似したT1p緩和時間を有するであろう。その結果、このような領域がLEEPコポリマーの態様に存在するとしたら、T1p緩和時間はポリプロピレンホモポリマーに特徴的なT1p緩和時間(即ちT1p=25ms)を有する成分を含むであろう。米国特許第6,525,157号の図1に見られるように、LEEPコポリマーの緩和がよくフィットできるのは単一指数関数のみである。T1p=25msである成分を組み入れると、このフィットが悪くなるであろう。これは、LEEPコポリマーが長い連続イソタクチックプロピレン単位を含まないことを示している。一部のLEEPコポリマーにおいては、T1p緩和時間が18ms未満又は16ms未満又は14ms未満又は12ms未満又は10ms未満であることができる。
【0097】
1pの測定: 実験は、Bruker DSX−500核磁気共鳴(NMR)スペクトロメーターで1H周波数500.13MHz及び13C周波数125.75MHzを用いて実施する。パルスシーケンスは90°(1H)パルス、それに続いてスピンロック及び公差分極(CP;時間=0.1ms)であった。スピンロック磁場強度γ1=2Π*60kHzを用いる。スピンロック後、CPによって磁化を13Cに移し、次いでシグナルを検出する。26.7ppmの結晶性メチンシグナルを記録し、正規化し、その自然対数(Ln)をスピンロック時間に対してプロットする。
【0098】
LEEPコポリマーのエチレン濃度を、ASTM D3900に従って米国特許第6,525,157号の18欄61行〜19欄12行に記載されたようにしてエチレン重量%として以下のように測定できる。150℃又はそれ以上の温度でプレスされたコポリマー成分の薄い均一フィルムを、Perkin Elmer PE 1760赤外線分光光度計に取り付ける。600〜4000cm-1のサンプルの全スペクトルを記録し、コポリマー成分のエチレン重量%を下記式:
エチレン重量%=82.585−111.98X+30.045X2
{式中、Xは、[1155cm-1のピーク高さ]対[772cm-1又は732cm-1のピーク高さ(いずれか高い方)]の比である]
から計算する。
【0099】
使用できるプロピレンエラストマーのもう1つの例は、米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2003年10月30日公開)に記載された領域エラーを含むプロピレン−エチレンコポリマー(即ちR−EPEコポリマー)である。
【0100】
米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2003年10月30日公開)のパラグラフ[0006]に開示されるように、R−EPEコポリマーは、プロピレン由来単位を少なくとも約60重量%、エチレン由来単位を約0.1〜35重量%及び1種又はそれ以上の不飽和コモノマーに由来する単位を0〜約35重量%含む(但し、エチレン及び不飽和コモノマーに由来する単位の総重量%は約40重量%以下である)と特徴付けることができる。これらのコポリマーはまた、以下の性質:(i)約14.6ppm及び約15.7ppmの領域エラーに相当し、ほぼ等しい強度を有する13C NMRピーク;(ii)コポリマーのコモノマー含量、即ちエチレン及び/又は不飽和コモノマーに由来する単位が少なくとも約3重量%である場合のB値約1.4超;(iii)約−1.20超の歪度指数Six;(iv)本質的に同一のままであるTmeとコポリマー中のコモノマーの量、即ちエチレン及び/又は不飽和コモノマーに由来する単位の増加につれて低下するTmaxを有するDSC曲線;並びに(v)チーグラー・ナッタ(Z−N)触媒を用いて製造された同等のコポリマーよりも多くのγ型結晶を示すX線回折像の少なくとも1つを有すると特徴付けられる。典型的には、この態様のコポリマーは、これらの性質の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、更に好ましくは5つ全てを特徴とする。
【0101】
約14.6ppm及び約15.7ppmの領域エラーに相当する13C NMRピークの測定法は、米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2003年10月30日公開)のパラグラフ128に記載されている: 13C共鳴周波数100.4MHzに相当するこのデータを、Varian UNITY Plus400MHzNMRスペクトロメーターを用いて収集する。取得パラメーターを、緩和剤の存在下における定量的13Cデータ取得を保証するように選択する。データは、130℃に加熱したプローブヘッドを用いて、ゲート付きデカップリング(gated decoupling)、データファイル当たりの4000個の過渡信号(transient)、7秒のパルス繰り返し遅延時間、24,200Hzのスペクトル幅及び32Kデータポイントのファイルサイズを使用して取得する。サンプルは、10mmのNMRチューブ中の0.4gのサンプルに、アセチルアセトン酸クロム(緩和剤)中0.025Mのテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼン50/50混合物約3mLを加えることによって調製する。純窒素で置換することによって、チューブのヘッドスペースから酸素を追い出す。チューブ及びその内容物を定期的に還流させながら150℃に加熱する(ヒートガンによって開始)ことによって、サンプルを溶解及び均質化する。
【0102】
R−EPEコポリマーの歪度指数は、昇温溶出分別試験に関する曲線の形状に関連づけ、米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2003年10月30日公開)のパラグラフ112〜116に記載された方法を用いて求めることができる:
結晶性配列の長さ分布は、昇温溶出分別(TREF)によって実験規模で測定できる。個々の画分の相対質量を、より連続的な分布を推定するための基準として用いることができる。L.Wildら,Journal of Polymer Science:Polymer.Physics Ed.,20,441(1982)は、サンプルサイズをスケールダウンし、質量検出器を加えて、この分布を溶出温度の関数として連続表示した。このスケールダウンしたタイプの分析温度上昇溶出分別(ATREF)は、画分の実際の単離に関係するのではなく、画分の重量分布のより正確な決定に関係する。
【0103】
TREFは、元来、エチレンとそれより高級のα−オレフィンとのコポリマーに適用されたが、プロピレンとエチレン(又はそれより高級のα−オレフィン)とのコポリマーの分析にも使用できる。プロピレンのコポリマーの分析は純粋なイソタクチックポリプロピレンの溶解及び結晶化にはより高い温度を必要とするが、当該共重合生成物のほとんどは、エチレンのコポリマーの場合に見られるように同様な温度において溶出される。下記表は、プロピレンのコポリマーの分析に使用した条件の要約である。記載した場合を除いて、TREFの条件は、Wildら(前記)及びHazlitt,Journal of Applided Polymer Science:Appl.Polymer Symp.,45,25(1990)の条件と一致する。
【0104】
TREFパラメーターの説明に使用するパラメーター。カラムのタイプ及び寸法−間隙容量1.5ccのステンレス鋼ショット;質量検出器−シングルビーム式赤外線検出器,2920cm-1;注入温度−150℃;温度調節装置−GCオーブン;溶媒−1,2,4−トリクロロベンゼン;濃度−0.1〜0.3%(重量/重量);冷却速度1−(140〜120℃)で−6.0℃/分;冷却速度2−(120〜44.5℃)で−0.1℃/分;冷却速度3−(44.5〜20℃)で−0.3℃/分;加熱速度−(20〜140℃)で1.8℃/分;データ取得速度−12個/分。
【0105】
TREFから得られたデータを、溶出温度の関数としての重量分率の正規化プロットとして表す。分離メカニズムは、結晶性成分(エチレン)のモル含量が溶出温度を決定する主な要因であるエチレンのコポリマーと類似している。プロピレンのコポリマーの場合には、溶出温度を主として決定するのは、アイソタクチックプロピレン単位のモル含量である。米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2003年10月30日公開)の図5は、メタロセンポリマーを用いて製造されたプロピレン/エチレンコポリマー及びR−EPEコポリマーの一例について予想される分布の代表的な型を図示している。
【0106】
図5のメタロセン曲線の形状は均一なコポリマーに典型的なものである。この形状は、コモノマーの元来のランダムな組込みによって生じる。曲線のこの形状の顕著な特徴は、より高い溶出温度においては曲線が鋭い、又は急勾配であるのに比べて、比較的低い溶出温度ではテーリングが見られることである。この型の非対称性を反映する統計値が歪度である。下記式1は、歪度指数Sixをこの非対称性の指標として数学的に表す。
【0107】
【数3】

【0108】
max値は、TREF曲線中の50〜90℃において溶出する最大重量画分の温度と定義する。Ti及びwiは、それぞれ、TREF分布中の任意のi番目の画分の溶出温度及び重量分率である。分布は、30℃超で溶出する曲線の総面積に関して正規化してある(wiの和は100%である)。従って、指数は、結晶化されたポリマーの形状のみを反映し、結晶化されていないポリマー(30℃又はそれ以下において依然として溶液状態にあるポリマー)は全て、前記式1に示した計算から除外してある。
【0109】
R−EPEコポリマーのTme及びTmaxの測定法は、米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2003年10月30日公開)のパラグラフ[0098]〜[0100]に記載されている:
示差走査熱量測定法(DSC)は、半結晶質ポリマーの融解及び結晶化を調べるのに使用できる一般的方法である。DSC測定の一般的原理及び半結晶質ポリマーの研究へのDSCの応用については、標準的なテキスト(例えばE.A.Turi,ed.,Thermal Characterization of Polymeric Materials,Academic Press,1981)に記載されている。一部のR−EPEのコポリマーは、本質的に同一のままであるTme及びコポリマー中の不飽和コモノマーの量の増加につれて低下するTmaxを有するDSC曲線を特徴とする。Tmeは融解が終わる温度を意味し、Tmaxはピーク融解温度を意味する。
【0110】
示差走査熱量測定(DSC)分析は、TA Instruments,Inc.製のモデルQ1000DSCを用いて測定を行う。DSCの較正は以下のようにして行う。最初に、アルミニウムDSCパン中に任意のサンプルを入れずに−90℃から290℃までDSCを行うことによって、ベースラインを得る。次いで、新鮮なインジウムサンプル7gの分析を、前記サンプルを180℃に加熱し、前記サンプルを10℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、続いて前記サンプルを1分間140℃に等温保持し、続いて前記サンプルを110℃/分の加熱速度で140℃から180℃まで加熱することによって行う。融解熱及びインジウムサンプルの融解開始を測定し、融解開始に関しては156.6℃±0.5℃であり且つ融解熱に関しては28.71±0.5J/gであることを確認する。次に、脱イオン水の分析を、DSCパン中で新鮮なサンプルの小液滴を10℃/分の冷却速度で25℃から−30℃まで冷却することによって行う。このサンプルを2分間−30℃に等温保持し、10℃/分の加熱速度で30℃まで加熱する。融解開始を測定し、0±0.5℃であることを確認する。
【0111】
ポリプロピレンサンプルを190℃の温度において薄いフィルムにプレスする。サンプル約5〜8mgを秤取し、DSCパン中に入れる。密閉雰囲気を実現するために、パン上に蓋を圧着する。サンプルパンをDSCセル中に入れ、次いで約100℃/分の高速で融解温度より約30℃高い温度まで加熱する。サンプルを同温度に約3分間保持する。次に、サンプルを10℃/分の速度で−40℃まで冷却し、同温度に3分間等温保持する。サンプルを完全に融解するまで10℃/分の速度で加熱する。得られたエンタルピー曲線をピーク融解温度、開始及びピーク結晶化温度、融解熱及び結晶化熱、Tme並びに関係のある全ての他のDSC分析について分析する。
【0112】
R−EPEコポリマーのTme及びTmaxの測定法は、米国特許出願公開公報第2003/0204017号(2003年10月30日公開)のパラグラフ[0102]〜[0105]に記載されている:
「高B値」及び同様な用語は、プロピレンとエチレンとのコポリマー又はプロピレン、エチレン及び少なくとも1種の不飽和コモノマーとのコポリマーのエチレン単位がランダムでない方法でポリマー鎖中に分布していることを意味する。B値は0〜2の範囲であり、1はコモノマー単位の完全にランダムな分布を示す。B値が高いほど、コポリマー中のコモノマー分布の交替が多い。B値が低いほど、コポリマー中のコモノマー分布がより塊状であるか又はよりクラスター化されている。R−EPEコポリマーの高B値は典型的には少なくとも約1.3、好ましくは少なくとも約1.4、より好ましくは少なくとも約1.5、最も好ましくは少なくとも約1.7である。B値は以下のようにして算出する。
【0113】
Bは、プロピレン/エチレンコポリマーについては、
【0114】
【数4】

【0115】
[式中、f(EP+PE)はEP及びPEジアド画分の和であり、FE及びFPはそれぞれ、コポリマー中のエチレン及びプロピレンのモル分率である]
と定義する。B値は、他のコポリマーについても、それぞれのコポリマージアドを割り当てることによって同様に算出できる。例えばプロピレン/1−オクテンコポリマーに関するB値の算出は、下記式:
【0116】
【数5】

【0117】
を用いる。
【0118】
メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレンポリマーについては、B値は典型的には1.1〜1.3である。制限幾何触媒を用いて製造されたプロピレンポリマーについては、B値は典型的には0.9〜1.0である。これに対して、典型的には活性化非メタロセン金属中心ヘテロアリール配位子触媒を用いて製造されるR−EPEコポリマーのB値は、約1.4超、典型的には約1.5〜約1.85である。言い換えると、これは、任意のR−EPEコポリマーに関して、プロピレンブロック長が所定のエチレン百分率に対して比較的短いだけでなく、3つ又はそれ以上の連続エチレン挿入の長い配列は、そのポリマーのエチレン含量が非常に高い場合を除いて、コポリマー中に存在するとしても非常に少ないことを意味する。
【0119】
本発明の一面において、第2の熱可塑性樹脂成分は好ましくは、プロピレン及び少なくとも1種のα−オレフィンを含むコポリマーを含む。本明細書中で使用するように、特に断らなければ、コポリマーは2種、3種又はそれ以上の異なるモノマー単位を含むことができる(即ちコポリマーはターポリマー及び4種又はそれ以上の異なるモノマー単位を含むポリマーを含む)。例えば1つの好ましいコポリマーは、プロピレンモノマー由来の単位をコポリマーの少なくとも約50重量%及びプロピレン以外の1種又はそれ以上のコモノマー、例えばエチレンに由来する単位をコポリマーの少なくとも約5重量%含むプロピレン含有エラストマーである(即ちプロピレン含有エラストマーは少なくとも約50重量%のプロピレンを含むエチレンエラストマーであることができる)。プロピレン含有エラストマーは、プロピレン含有エラストマーの全重量基準で、約40重量%未満のエチレン濃度を有することができる。プロピレン含有エラストマーは、プロピレン含有エラストマーの全重量基準で、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約7重量%、更に好ましくは約9重量%のエチレン含量を含む。プロピレン含有エラストマーは、また、プロピレン含有エラストマーの全重量基準で、約40重量%未満、より好ましくは約30重量%未満、更に好ましくは約20重量%未満、最も好ましくは約15重量%未満のエチレン濃度を有することができる。例えばエチレン濃度は、プロピレン含有エラストマーの全重量基準で、約5〜約40重量%、より好ましくは約7〜約30重量%、より好ましくは約7〜約20重量%、最も好ましくは約9〜約15重量%の範囲であることができる。
【0120】
第2のポリマー成分(例えばエチレンエラストマー又は更にはプロピレン含有エラストマー)は、約105℃未満、好ましくは約100℃未満、より好ましくは約90℃未満、最も好ましくは約82℃未満のピーク融解温度(例えば示差走査熱量測定法によって、最初に230℃から約0℃まで−10℃/分の速度で冷却されたポリマーの3mgサンプルについて約10℃/分の速度で測定)を有するポリマーを含むことができる(例えばピーク融解温度は約65℃未満であることができる)。
【0121】
第2のポリマー成分のために選択されるプロピレンエラストマーは、ASTM D2240−05によるショアー A硬度が少なくとも約45、好ましくは少なくとも約55、より好ましくは少なくとも約60、更に好ましくは少なくとも約65であることができる。ショアー A硬度はまた、約95未満、好ましくは約90未満、より好ましくは約85未満、更に好ましくは約80未満であることができる。例えばプロピレンエラストマーの硬度(ショアー A単位)は約65〜約95、より好ましくは約65〜約85、更に好ましくは約65〜約80の範囲であることができる。
【0122】
第2のポリマー成分中に使用できる適当なプロピレンエラストマーの例としては、約50重量%超(例えば60重量%超)のプロピレンモノマー及び約5重量%超のエチレンモノマーを含み且つ約35〜約130℃(例えば約40〜約110℃)のピーク融解温度(示差走査熱量測定法によって測定)を特徴とすることができる軟質熱可塑性樹脂が挙げられる。このようなエラストマーは、THE DOW CHEMICAL COMPANYからVERSIFY(登録商標)(例えば2400、3000、3200、3300、3401及び4301を含む)の名称で、EXXONMOBIL CHEMICAL COMPANYからVISTAMAXX(登録商標)の名称で市販されている。
【0123】
オレフィン系ブロックコポリマー/LOA/α−オレフィンインターポリマー
オレフィンブロックポリマー/エチレン/α−オレフィンインターポリマー
本発明の一面において、第2のポリマー成分は、比較的高い結晶化度を有する硬質ブロック及び前記硬質ブロックよりも低い結晶化度を有する軟質ブロックを含む多数のブロックを有するマルチブロックポリマーを含むことができる。マルチブロックポリマー(例えばマルチブロックオレフィン系ポリマー)は、本質的に1種の(例えば1種の)α−オレフィンモノマーを含むホモポリマー又は2種のα−オレフィンモノマーを含むコポリマー又は3種若しくはそれ以上のモノマーを含むターポリマー(典型的には、α−オレフィンである少なくとも2種のモノマーを含み、3種のα−オレフィンを含むことさえできる)であることもできるし、或いは4種若しくはそれ以上のα−オレフィンモノマーを含むこともできる。マルチブロックホモポリマーは、同一モノマーを含む硬質及び軟質ブロックを含むことができ、これらのブロックの差異はモノマーの規則性である(例えば硬質ブロックは、軟質ブロックよりも規則的に配向させられたモノマーを含むことができるので、硬質ブロックの方が高い結晶化度を有する)。オレフィン系ブロックコポリマーは、異なる濃度のモノマーを有するブロックを含むことができる。例えばオレフィン系ブロックコポリマーは、高濃度(例えば前記オレフィン系ブロックコポリマーの約80重量%超、好ましくは約90重量%超、より好ましくは約95重量%超、最も好ましくは約99重量%超又は更には100重量%)の第1のα−オレイン系モノマー及び低濃度の第2のα−オレフィン系モノマーを含む1種又はそれ以上の硬質ブロックと、前記の1種又はそれ以上の硬質ブロックよりも低い濃度の第1のα−オレフィンを含む1種又はそれ以上の軟質ブロックを有することができる。好ましくは、第1のα−オレフィンは、エチレン又はプロピレンである低級α−オレフィン(LOA)であり、従ってオレフィン系ブロックコポリマーはLOA/α−オレフィンインターポリマーである。限定するものではないが、オレフィン系ブロックコポリマーはエチレン/α−オレフィンインターポリマー又はプロピレン/α−オレフィンインターポリマーであることができる。第2のポリマー成分中に使用できるLOA/α−オレフィンインターポリマーの例は、PCT国際特許出願公開公報WO2006/102155A2(2006年3月15日出願)、WO2006/101966A1(2006年3月15日出願)及びWO2006/101932A2(2006年3月15日出願)に記載されており、これらの公報を全て引用することによって特別にその全体を本明細書中に組み入れる。
【0124】
エチレン/α−オレフィンインターポリマー
第2のポリマー成分への使用に適したエチレン/α−オレフィンインターポリマーとしては、化学的又は物理的性質が異なる2種又はそれ以上の重合モノマー単位の多数のブロック又はセグメントを特徴とする重合形態のエチレンと1種又はそれ以上の共重合性α−オレフィンコモノマー(ブロックインターポリマー)、好ましくはマルチブロックコポリマーが挙げられる。
【0125】
限定するものではないが、本発明のポリマー組成物への使用に適した代表的なエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、同一密度dを有するランダムコポリマーの融点よりも高い融点Tmを特徴とすることができる。例えばエチレン/α−オレフィンインターポリマーは少なくとも1つの融点Tm(℃)及び密度d(g/cm3)を有することができ、変数の数値は以下の関係:Tm≧1000(d)−800、好ましくはTm≧−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、より好ましくはTm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、最も好ましくはTm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2に一致する。
【0126】
好ましくは、本発明のポリマー組成物への使用に適したエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、約1.7〜約3.5のMw/Mn、少なくとも1つの融点Tm(℃)及び密度d(g/cm3)を有し、変数の数値は以下の関係:Tm≧1000(d)−800、好ましくはTm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、より好ましくはTm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、最も好ましくはTm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2に一致する。
【0127】
結晶化度
この説明からわかるように、第1のポリマー成分、第2のポリマー成分又は両者の一部は、材料の結晶質の部分を含む。好ましくは、第1のポリマー成分の一部が比較的高い結晶化度を有し、第2のポリマー成分の一部が比較的低い結晶化度を有し、又は両者である。例えば第1のポリマー成分の結晶化度は約12重量%超、好ましくは約15重量%超、より好ましくは約20重量%超、最も好ましくは約24重量%超(例えば約35重量%超)であることができる。第2のポリマー成分の結晶化度は約30重量%未満、好ましくは約14重量%未満、より好ましくは約11重量%未満、最も好ましくは約9重量%未満(例えば約7重量%未満)であることができる。
【0128】
本明細書中におけるパーセント結晶化度は、ASTM D3418.03又はISO 11357−3に従って示差走査熱量測定法によって測定できる。一例として、1mgサイズのポリマーサンプルをアルミニウムDSCパン中にシールする。25cm3/分の窒素パージを行いながらDSCセル中にサンプルを入れ、−100℃まで冷却する。225℃まで10℃/分で加熱することによって、このサンプルについて標準熱履歴を確立する。次に、サンプルを−100℃まで冷却し(10℃/分で)、225℃まで10℃/分で再加熱する。第2の走査について観測された融解熱を記録する(ΔH観測)。観測された融解熱を、下記式:
【0129】
【数6】

【0130】
[式中、ΔH既知の値は、ポリマーに関する文献記載された既定基準値である]
によって、サンプルの重量に基づく結晶化度(重量%)に関連づける。例えば、イソタクチックポリプロピレンの融解熱は、B.Wunderlich,Macromolecular Physics,Volume 3,Crystal Melting,Academic Press,New York,1980,p.48に報告されており、ΔH既知=165ジュール/g(ポリプロピレンポリマー)であり;ポリエチレンの融解熱は、F.Rodriguez,Principles of Polymer Systems,2nd Edition,Hemisphere Publishing Corporation,Washington,1982,p.54に報告されており、H既知=287ジュール/g(ポリエチレンポリマー)である。約50モル%超のプロピレンモノマーを含むポリマーにはΔH既知=165J/gの値を用い、約50モル%超のエチレンモノマーを含むポリマーにはΔH既知=287J/gの値を用いることができる。
【0131】
強化材
本発明の組成物は、強化材、特に、1種若しくはそれ以上のガラス繊維材料(例えばガラス短繊維、ガラス長繊維若しくは両者)又は他の繊維(例えば鋼、炭素など若しくはそれ以外)、プレートレット(例えばタルク、ウォラストナイトなど若しくはそれ以外)、或いはそれらの組合せのような強化材を更に含む。好ましくは、繊維は最終組成物全体に実質的に均一に分布させる。しかし、繊維は、組成物内の1つ又はそれ以上の所定の位置に選択的に配置することが可能な場合もある。
【0132】
繊維強化材、ガラス繊維又は両者は、ポリマー組成物の全重量基準で、少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約15重量%、最も好ましくは少なくとも約20重量%の濃度で存在できる。繊維強化材、ガラス繊維又は両者は、ポリマー組成物の全重量基準で、約70重量%未満、好ましくは約50重量5未満、より好ましくは約45重量%未満、最も好ましくは約40重量%未満(例えば約35重量%未満)の濃度で存在できる。
【0133】
得られる最終組成物において(例えば得られる組成物又は射出成形のような成形工程後に得られる物品において)、繊維長は原繊維長に比較して減少させることができることがわかるであろう。最終組成物中の平均繊維長は、約0.5mm超、好ましくは約1mm超、より好ましくは約2mm超であることができる。例えば平均繊維長は約0.5〜約5mm又は約1mm〜約3mmの範囲であることができる。最終組成物中において、ガラス繊維はより短い長さを有することもでき、例えばガラス繊維は約1〜約2mm又は更にそれ以下の平均長さを有することができる。好ましくは繊維の少なくとも約50重量%が1mmより長く、より好ましくは少なくとも約65重量%(又は更には約75重量%)が約1mmより長い。繊維径は典型的には約3〜約100ミクロン、より限定的には約5〜約25ミクロン(例えば約17ミクロン)の範囲である。限定するものではないが、ガラスはE−ガラス、S−ガラス、T−ガラス、AR−ガラス、C−ガラス、R−ガラスなどのうち1種又はそれ以上であることができる。
【0134】
また、ポリマー組成物は任意的に1種又はそれ以上の添加剤、例えば界面活性剤、可撓性付与剤、カップリング剤、難燃剤、耐着火性添加剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ助剤(即ち滑り止め助剤)、流動増進剤、成核剤、清澄剤又はそれらの任意の組合せを含むことができると考えられる。例えば部品又は部材が「成形着色(molded-in-color)」されるように、1種又はそれ以上の顔料又は着色剤をポリマー組成物に添加することができる。一例として、着色剤を繊維強化材に添加することができる。好ましい添加剤の1つは着色剤であり、それが含まれる場合には、得られる組成物全体に対して比較的小さい重量百分率(例えば約5重量%未満又は更には約1重量%未満)で存在する。例えば着色剤は黒色の外観、グレイフランネルの外観などを実現するための着色剤であることができる。添加剤の好ましい例は、耐着火性添加剤、例えばハロゲン化炭化水素、ハロゲン化カーボネートオリゴマー、ハロゲン化ジグリシジルエーテル、有機燐化合物、フッ素化オレフィン、酸化アンチモン及び芳香族硫黄の金属塩であり(これらに限定するものではないが)、或いはそれらの混合物も使用できる。更に、熱、光及び酸素又はそれらの混合(これらに限定するものではないが)によって引き起こされる劣化に対して熱可塑性樹脂組成物を安定化させる化合物も使用できる。好ましい添加剤の1つは酸化防止剤であり、それが含ませる場合には、典型的にはポリマー組成物全体に対して比較的小さい重量百分率(例えば約1又は2重量%未満)で含ませる。好ましい市販酸化防止剤の一例は、Ciba Specialty Chemicals Corporationから市販されているIRGANOX B225酸化防止剤である。Irganox B225酸化防止剤は、Irganox 1010酸化防止剤(テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン1部とIrgafos 168(トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト)1部とのブレンドである。別の好ましい添加剤は離型剤(例えばワックス、金型解放剤、スリップ助剤など又はそれ以外)である。好ましい離型剤の1つは、アミン又はアミドのような窒素又はアンモニア基含有化合物である。好ましいアミド含有化合物の1つはエチレンビスステアラミド(EBS)である。離型剤の別の好ましいカテゴリーは、「ステアリン酸エステル」、例えばDanisco又はCiba Specialty Chemicalsから商品名Atmerで市販されているグリセロールモノステアレートである。ワックスである好ましい窒素含有化合物の1つは、商品名KENAMIDE ULTRA Eで販売されているエルクアミド(Chemtura Corporation,Middlebury,Connectticutから市販されている)である。
【0135】
好ましい添加剤の1つは、カップリング剤、例えばグラフト化ポリプロピレンカップリング剤、例えば無水マレイン酸、グラフト化ポリプロピレンカップリング剤(例えばChemtura製のPolybond 3200又はArkema製のOREVAC CA−100)である。本発明のポリマー組成物は、任意的にカップリング剤を含むことも含まないこともできる。含ませる場合には、カップリング剤は得られる全組成物中に約5重量%未満、より好ましくは約2重量%未満の量で存在する。例えばカップリング剤は全組成物の少なくとも約0.01重量%又は更には少なくとも約0.1重量%の量で存在できる。
【0136】
本明細書中に記載するように、本発明のポリマー組成物は第1のポリマー成分、第2のポリマー成分及び繊維強化材を含む。第2のポリマー成分に対する第1のポリマー成分の比は10:42超、より限定的には10:27超であることがわかる。好ましくは、第1のポリマー成分対第2のポリマー成分の比は約10:2〜約10:42、より好ましくは約10:2〜約10:27の範囲である。
【0137】
本発明において得られるポリマー組成物はブレンドされたコンパウンド中で望ましい性質を実現するための任意の適当な方法に従って調製できる。材料を加工装置に供給する前に(例えば射出成形装置への導入前に)、2つ又はそれ以上の成分の組合せ(例えば第1のポリマー成分と強化材)を配合することができる。或いは又は更に、成分の2つ又はそれ以上を、加工装置内で互いに配合することもできる。例えば得られる組成物のポリマー成分は、加工装置中に(例えばスクリュー及びバレルアセンブリ、混合ノズル、射出成形機などの内部に)入るまでは互いに溶融ブレンドしない。本発明の組成物の調製は、完成品(例えば自動車部品)の製造に使用する装置中で直接又は別の装置中で、2つ又はそれ以上の個々の成分のドライブレンドする、溶融ブレンドする又はドライブレンドし且つ溶融ブレンドすること(例えばバンバリーミキサー中における予備混合)を含む任意の適当な混合手段を用いて行うことができる。組成物のドライブレンドは、予備溶融ブレンド工程を行わずに直接、射出成形することもできる。1つの好ましい態様において、ポリマー組成物の形成は、成形機における少なくとも2つの成分(例えば第2のポリマー成分と強化材コンセントレート)の混合又は少なくとも3つの成分(例えば第1のポリマー成分、第2のポリマー成分及び強化材)の成形機における混合(例えばプレスにおけるブレンド)を含む。任意的に又は更に、成形機における混合前に、2つ又はそれ以上の成分を配合ユニット中で予備配合することもできる。
【0138】
前述のように、ポリマー組成物中の成分はまた、バンバリーミキサーのようなミキサー中で又はニーダー、一軸スクリュー配合押出機、二軸スクリュー押出機、加熱された二本ロール機などのような押出機中で、配合又は溶融ブレンドすることもできる。本発明の一つの面において、成分の配合後、ブレンドされたポリマー材料をペレット化して、成形機に供給されることができるグラニュール又はペレットを形成することができる。多量(例えば5kg超、好ましくは20kg超又は更には250kg超)のペレット又はグラニュールを容器中に入れ且つ貯蔵又は輸送してから、物品を成形することができる。
【0139】
熱の適用によって軟化又は溶融させる場合には、本発明のポリマー組成物は、圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、圧延、真空成形、熱成形、押出、吹込成形のような従来の技術を単独で又は組合せて用いて、物品に加工することができる。ポリマー組成物は、また、このような目的に適した任意の機械で、成形し、紡糸し又はフィルム、繊維、多層積層品若しくは押出シートに延伸することもできるし、或いは1種若しくはそれ以上の有機若しくは無機物質と配合することもできる。特に好ましい態様において、本発明のポリマー組成物は好ましくは、付随インサート(例えばインサート成形法の一部としての)を用いて若しくは用いずに射出成形して成形品を形成するか、又はオーバーモールド物品の一部として射出成形する。
【0140】
1つの好ましい態様においては、第1のポリマー成分及び第2のポリマー成分(例えばエラストマー)は、成形品を製造するための装置にそれらを供給する前には、溶融状態では互いに予備配合しないことが考えられる。正確に言えば、それらを互いに混合した後、装置への導入時に(例えば射出成形機のスクリュー及びバレルアセンブリにおける混合時に)初めて溶融ブレンドに供する。
【0141】
強化材は、緩い個々の状態で添加することもできるし、或いは材料の束としても添加できる可能性がある(例えば繊維)。好ましくは、強化材は、得られる全組成物の他のポリマー成分(例えば第1のポリマー成分)と相溶性であるか又は同一であるポリマー材料のマトリックス中に分散された強化材を含む、凝集性コンセントレートの形態の一部として混合物に入れる。一例として、繊維相がポリマーマトリックス相(例えばポリプロピレンホモポリマーのような、本明細書中に記載した1種又はそれ以上のポリマー材料を含むマトリックス相)に分散された繊維(例えばガラス繊維)強化材コンセントレートを使用できると考えられる。繊維相は、コンセントレートの少なくとも約20重量%、より好ましくは50重量%超(例えば約50〜約90重量%、例えば約60重量%)の量で存在する。繊維強化材のこのようなコンセントレートの一例は米国特許出願第60/890,002号(2007年8月16日出願)に記載されており、あらゆる目的のためにこれを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0142】
代表的な一態様において、ポリマー組成物は第1のポリマー成分、エチレン分を含む第2のポリマー成分、及び強化材と追加ポリマー材料を含むポリマーマトリックスを含む強化材コンセントレートを含むことができると考えられる。別の代表的な態様において、ポリマー組成物はエチレン分を含む第2のポリマー成分及び第1のポリマー成分を含むポリマーマトリックスを含む強化材コンセントレートを含むことができる。
【0143】
特性の1つ又はそれ以上を改善するための1つのアプローチは、前処理した又は他の方法で改質した繊維を使用することである。例えば1つのアプローチは、繊維に化学薬剤(例えばカップリング剤、表面特性改質剤、安定剤又は他の適当な薬剤)をコーティングすることである。1つの具体例として、繊維は、ポリマーマトリックスとのその後の界面結合の強力を物理的に、化学的に若しくは物理的且つ化学的に改善するために、繊維表面を損傷から保護するために又は両者のために、サイズ剤で処理することができる。サイズ剤は典型的には、適当な被膜形成剤、カップリング剤(例えばアルコキシシランのようなシラン)及び任意的に滑剤又は他の薬剤を含む。サイズ剤の少なくとも一部として前述のようなカップリング剤(例えば無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンカップリング剤を含む)を含めることが可能な場合がある。
【0144】
繊維は、互いにランダムに配向された、互いに軸方向に整列された、織られた、又はそれらの任意の組合せである個々の繊維、例えばチョップトファイバー及び/若しくは連続繊維として提供でき、それらはその後にポリマーマトリックス(例えば熱可塑性ポリマーマトリックス、例えばポリプロピレンホモポリマー又はコポリマーを含むもの)中に分散させることができる。また、繊維は繊維が一般に軸方向に整列された繊維束の形態で提供できるとも考えられる。
【0145】
本発明における繊維強化材コンセントレート材料は任意の適当な寸法又は形状であることができる。一般に、繊維強化材コンセントレート材料は、細長い(例えばロッドのように)、粒状である、形状が少なくとも1つの軸に関して実質的に対称である、形状が少なくとも1つの軸に関して実質的に非対称である、実質的に中実である、多孔質である、又はそれらの任意の組合せであることができる。繊維強化材コンセントレート材料の個々の粒子は最大寸法(例えば長さ、直径、高さ、幅、厚さなど)が約5mm又はそれ以上、より限定的には約8mm又はそれ以上、更に限定的には約10mm又はそれ以上であることができる。これより小さい寸法、例えば約1mm未満、より限定的には約0.5mm未満も同様に可能である。
【0146】
繊維強化材コンセントレートを製造するための1つのアプローチは先行技術において開示されたプルトルージョン技術によるなどして繊維束にポリマーを含浸させることである。例えば米国特許第5,834,056号の”Process and Apparatus for Fiber Bundle Impregnation”(あらゆる目的のためにこれを引用することによって本明細書中に組み入れる)を参照。
【0147】
一般に、本発明は、第1のポリマー成分、第2のポリマー成分及び強化材コンセントレートを個々の供給源(例えばホッパー)から加工装置のスクリュー・バレルアセンブリ中に供給する成形品の製造方法を意図する。材料は、アセンブリに沿って進むにつれて、剪断力及び熱に供され、互いに溶融ブレンドされる。任意的に、溶融ブレンドを助けるために、装置中に混合ノズルも用いる。得られた溶融ブレンドされた成分を、材料を成形する成形具(例えばダイ、金型、又は導入された材料を付形する他の構造)中に導入する。
【0148】
有利なことに、意外にも、開示した比率の繊維強化材コンセントレート、第1のポリマー成分及び第2のポリマー成分によって所望の性質(例えば低光沢並びに改善された耐擦傷性、耐引掻き性、低温延性及び寸法安定性など)を実現できることが判明した。一例として、本発明からの物品形成組成物(articles formed compositions)は、当業界で知られた物品形成組成物に比較して優れたグレイン再現(grain reproduction)(例えば低光沢)並びに改善された耐擦傷性と共にソフトタッチな触感の表面を有する物品をもたらす。より限定的には、本発明の組成物からN111テキスチャー(例えばOpel N111テキスチャー)を有する道具を用いて形成された物品は、約0.6〜約1.7GU、より限定的には約0.9〜約1.4GUの範囲の改善された光沢特性(ASTM D−542による)(例えば光沢度はミクロマット(micro matt)を有するN111テキスチャーで測定された)を実現できることがわかった。更に、本発明の組成物を用いて形成された物品は、以下特性の改善を実現できることがわかった;耐擦傷性(例えばGMW14688による6Nにおける擦傷が約2GU未満、場合により約0.05〜約1GU);耐引掻き性[例えばPV3952による、ミクロマットを有するN111テキスチャーを有する物品について測定された10Nにおける引掻き傷が約1dL未満、より典型的には約0.5dL未満;PV3952による10Nにおける引掻き傷(Audi K42テキスチャ−で形成された物品)が約0.4dL未満];寸法安定性(例えば収縮率が約5%未満、場合によっては0.1〜約1%;ASTM D−696によるインフローの線膨張率(CLTE)が約25〜約50mm/mm℃、より限定的には約30〜約45mm/mm℃;ASTM D−696によるクロスフローの線膨張率(CLTE)が約40〜約70mm/mm℃、より限定的には約45〜約65mm/mm℃)又はそれらの組合せ。好ましくは、ポリマー組成物がグラフト化コポリマーを含まない、無機充填剤(例えばタルク)を含まない、ガラス繊維以外のガラス粒子を含まない、過酸化物を含まない、又はそれらの任意の組合せといった有利な結果が得られる。
【0149】
本発明のポリマー組成物には多くの有利な用途がある。従って、本発明は、本発明の組成物及び物品を形成するためのこの組成物の1つ又はそれ以上の成形工程を含む方法を用いて製造された物品を意図する。これらの物品は典型的には成形される。これらは、その長さに沿って実質的に一定の外形を有することができる(例えば押出による)。これらは、物品全体で変化する形状を有することができる(例えば平らな、立体的なカーブのある又はそれらの組合せである1つ又はそれ以上の表面を含む形状を有することができる)。ここでの物品は複合物品であることができる。これらは、インサート成形された、オーバーモールドされた又は両者である物品であることができる。例えば本発明は種々の製造品の一部として使用でき、また一方、トレイ、テーブル、プレート、芝生及び庭園家具、靴、長靴などのような物品の形成への使用に特に適当であることが既にわかっている。ポリマー組成物はまた、自動車部品、例えばダッシュボード、コンソール、アームレスト、スイッチカバー、ブレーキレバー、シフトレバー、ノブ、ハンドル、コントロールボタン、トリムパネル、シートバックカバー、計器ハウジング、カップホルダー、パネル、サンバイザー、バックミラーハウジング、フェイシア(例えばバンパ−フェイシア)、自動車装備品、自動車カウル、コンソール(例えばセンターオーバーヘッド、フロアアセンブリ又は両者)、計器パネル、ドアを含むグローブボックスアセンブリ、ニーボルスターアセンブリ若しくは計器パネル固定アセンブリ又は構造部材を形成するのに使用することもできる。
【0150】
本明細書中の教示によって得られる材料は、以下の性質:即ち約200〜約4000MPa、より限定的には約350〜約3500MPaの範囲のインフロー曲げ弾性率(ISO 178に従って測定);約50〜約2500MPa、より限定的には約150〜約1950MPaの範囲のクロスフロー曲げ弾性率(ISO 178に従って測定);約50〜約3000MPa、より限定的には約150〜約2000MPaの範囲の平均曲げ弾性率(ISO 178に従って測定);約5〜約50kJ/m2、より限定的には約11〜約45kJ/m2の範囲の室温におけるノッチ付きシャルピー衝撃(ISO 179−1eUに従って測定);約1〜約35kJ/m2、より限定的には約4〜約28kJ/m2の範囲の−20°Cにおけるノッチ付きシャルピー衝撃(ISO 179−1eUに従って測定);約0.2〜約0.7、より限定的には約0.1〜約0.6の範囲の摩擦係数(静摩擦係数)(ASTM D−1894準拠);及び約0.5〜約0.75、より限定的には約0.2〜約0.5の範囲の摩擦係数(動摩擦係数)(ASTM D−1894に従って測定)の少なくとも1つ、2つ(及びより限定的には少なくとも3つ又は全て)の任意の組合せを有する。平均曲げ弾性率はインフロー及びクロスフロー弾性率の平均である。一例として、片側にフィルムゲートを有する成形プラークから試験片を切り取ることによって、平均曲げ弾性率を求めることができる。インフロー弾性率の測定にはフィルムゲートの方向に沿って切断された試験片を用い、クロスフロー弾性率の測定には、流れに垂直に切断された試験片を用いる。
【実施例】
【0151】
実施例1〜6
実施例(EX.)1〜6を、表Iの組成物を射出成形することによって製造する。第1のポリマー成分(ポリプロピレンホモポリマー)、第2のポリマー成分(プロピレン−エチレンエラストマー)及び強化材コンセントレート(ガラス長繊維及び追加の第1のポリマー成分ポリプロピレンを含む)をドライブレンドし、次いでDEMAG 100射出成形機中に投入し、その中で溶融ブレンドした後に(即ち射出成形機のスクリュー中に投入後の固体ドライブレンドペレットが溶融し、ブレンドされた後に)、試験サンプルを形成するための金型キャビティー中に射出する。表Iのデータは予想通りの結果を示している。
【0152】
【表1】

【0153】
実施例7〜15
実施例7〜15を、表IIに示した配合を用いて実施例1〜6と同様な方法を用いて、製造する。第1の成分、第2の成分及び強化材の他に、実施例7〜15はカラーコンセントレートも含む。カラーコンセントレートは他の成分とドライブレンドしてから、DEMAG射出成形機中に投入する。表IIのデータは予想通りの結果を示している。
【0154】
【表2】

【0155】
実施例(EX.)16〜23及び比較例(C.E.)24
成形部品を、実施例7〜15に用いたのと同一の方法を用いて、表IIIの組成物を射出成形することによって製造する。実施例16〜22においては、第2のポリマー成分はS/LEP、具体的にはエチレン−オクテンコポリマーである。実施例23は第2のポリマー成分としてプロピレン−エチレンエラストマーを使用する、比較例24は、ガラス長繊維を含む強化材コンセントレートの代わりにタルクを含む比較例である。
【0156】
S/LEP−Aは、エチレンモノマー単位約59重量%及びオクテンモノマー単位約41重量%を含むコポリマーである。このエチレンエラストマーは、ASTM D792に従って測定した比重が約0.868;ASTM D2240に従って測定したショアー A硬度が約70;示差走査熱量測定法によって測定したピーク融解温度が約55℃;ASTM D790に従って測定した(圧縮成形サンプルを用い、2%割線で試験)曲げ弾性率が約14.4MPa;ASTM D1238に従って190℃/2.16kgで測定されたメルトフローレートが約0.5g/10分;ASTM D638に従って510mm/分の歪速度で測定した100%歪における引張強さが約2.6MPa;ASTM D638に従って510mm/分の歪速度で測定した破断点引張強さが約9.5MPa;ASTM D638に従って510mm/分の歪速度で測定した破断点引張伸びが約810%;及びASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約46℃である。
【0157】
S/LEP−Bはエチレンモノマー単位約59重量%及びオクテンモノマー単位約41重量%を含むコポリマーである。このエチレンエラストマーは、ASTM D792に従って測定した比重が約0.870;ASTM D2240に従って測定したショアー A硬度が約66;示差走査熱量測定法によって測定したピーク融解温度が約59℃;ASTM D790に従って測定した(圧縮成形サンプルを用い、2%割線で試験)曲げ弾性率が約10.8MPa;ASTM D1238に従って190℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約5.0g/10分;ASTM D638に従って510mm/分の歪速度で測定した100%歪における引張強さが約2.3MPa;ASTM D638に従って510mm/分の歪速度で測定した破断点引張強さが約5.7MPa;ASTM D638に従って510mm/分の歪速度で測定した破断点引張伸びが約1100%;及びASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約37℃である。
【0158】
S/LEP−Cはエチレンモノマー単位約59重量%及びオクテンモノマー単位約41重量%を含むコポリマーである。このエチレンエラストマーはASTM D792に従って測定した比重が約0.870;ASTM D2240に従って測定したショアー A硬度が約72;示差走査熱量測定法によって測定したピーク融解温度が約60℃;ASTM D790に従って測定した(圧縮成形サンプルを用い、2%割線で試験)曲げ弾性率が約12.1MPa;ASTM D1238に従って190℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約30g/10分;ASTM D638に従って510mm/分の歪速度で測定した100%歪における引張強さが約3.3MPa;ASTM D638に従って510mm/分の歪速度で測定した破断点引張伸びが約1000%;及びASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約41℃である。
【0159】
エラストマーAはエチレンモノマー単位約15重量%及びプロピレン単位約85重量%を含むプロピレン−エチレンコポリマーである。エラストマーAはASTM D792に従って測定した比重が約0.876;ASTM D2240に従って測定したデュロメーター硬度がショアー A約72及びショアー D約19;示差走査熱量測定法によって測定した予想ピーク融解温度が約30〜約50℃;示差走査熱量測定法(10℃/分)によって測定した結晶化度が約14%;ISO 178に従って測定した(射出成形サンプルを用い、1%割線で試験)曲げ弾性率が約8MPa;ASTM D1238に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約8g/10分;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張応力が約1.5MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張応力が約2.05MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張伸びが約250%である。
【0160】
エラストマーBはエチレンモノマー単位約9重量%及びプロピレン単位約91重量%を含むプロピレン−エチレンコポリマーである。エラストマーBは、ASTM D792に従って測定した比重が約0.863;ASTM D2240に従って測定したデュロメーター硬度がショアー A約95及びショアー D約43;示差走査熱量測定法によって測定した予想ピーク融解温度が約85℃;示差走査熱量測定法(10℃/分)によって測定した結晶化度が約30%;ISO 178に従って測定した(射出成形サンプルを用い、1%割線で試験)曲げ弾性率が約105MPa;ASTM D1238に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約8g/10分;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張応力が約7.0MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張応力が約15.5MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張伸びが約640%超;ASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約64℃である。
【0161】
エラストマーCはエチレンモノマー単位約5重量%及びプロピレン単位約95重量%を含むプロピレン−エチレンコポリマーである。エラストマーCはASTM D792に従って測定した比重が約0.888;ASTM D2240に従って測定したデュロメーター硬度がショアー A約96及びショアー D約54;示差走査熱量測定法によって測定した予想ピーク融解温度が約115℃;示差走査熱量測定法(10℃/分)によって測定した結晶化度が約44%;ISO 178に従って測定した(射出成形サンプルを用い、1%割線で試験)曲げ弾性率が約400MPa;ASTM D1238に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約8g/10分;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張応力が約16MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張応力が約23MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張伸びが約630%超;ASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約98℃である。
【0162】
エラストマーDはエチレンモノマー単位約12重量%及びプロピレン単位約88重量%を含むプロピレン−エチレンコポリマーである。エラストマーDはASTM D792に従って測定した比重が約0.864;ASTM D2240に従って測定したデュロメーター硬度がショアー A約70;示差走査熱量測定法によって測定した予想ピーク融解温度が約50℃;示差走査熱量測定法(10℃/分)によって測定した結晶化度が約14%;ISO 178に従って測定した(射出成形サンプルを用い、1%割線で試験)曲げ弾性率が約32MPa;ASTM D1238に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約25g/10分;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張応力が約2.8MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張伸びが約67%超;ASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約30℃未満である。
【0163】
エラストマーEはエチレンモノマー単位約9重量%超及びプロピレン単位約91重量%を含むプロピレン−エチレンコポリマーである。エラストマーEはASTM D792に従って測定した比重が約0.876;ASTM D2240に従って測定したデュロメーター硬度がショアー A約94及びショアー D約42;示差走査熱量測定法によって測定した予想ピーク融解温度が約80℃;示差走査熱量測定法(10℃/分)によって測定した結晶化度が約29%;ISO 178に従って測定した(射出成形サンプルを用い、1%割線で試験)曲げ弾性率が約108MPa;ASTM D1238に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約25g/10分;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張応力が約7MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張応力が約12MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した破断点引張伸びが約630%超;ASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約60℃である。
【0164】
PP−Aは少なくとも95重量%のイソタクチックポリプロピレンを含むポリプロピレンホモポリマーである。PP−Aは、ISO 1183に従って測定した密度が約0.900g/cm3;ISO 179/eAに従って測定した23℃におけるシャルピーノッチ付き衝撃強さが約2.5KJ/m2;示差走査熱量測定法によって測定したピーク融解温度が約160℃超;示差走査熱量測定法によって測定した予想結晶化度が約50%超;ISO 178に従って測定した曲げ弾性率が約1650MPa;ISO 1133に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約52g/10分;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張応力が約37.0MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張伸びが約9%;ASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約156℃である。
【0165】
PP−Bは、少なくとも95重量%のイソタクチックポリプロピレンを含むポリプロピレンホモポリマーである。PP−Bは、ISO 1183に従って測定した密度が約0.90g/cm3;ISO 179−1/1eAに従って測定した23℃におけるシャルピーノッチ付き衝撃強さが約2.5KJ/m2;示差走査熱量測定法によって測定したピーク融解温度が約156℃超;示差走査熱量測定法によって測定した予想結晶化度が約50%超;ISO 178に従って測定した曲げ弾性率が約1650MPa;ISO 1133に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約52g/10分;ISO 527−2に従って測定した降伏点引張強さが約37MPa;ISO 527−2に従って測定した降伏点引張伸びが約9%;ASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約152℃である。
【0166】
PP−Cはアイソタクチックポリプロピレン相及びエラストマーコポリマー相を含む耐衝撃性ポリプロピレンコポリマーである。PP−AはISO 1183に従って測定した密度が約0.900g/cm3;ISO 179/eAに従って測定した23℃におけるシャルピーノッチ付き衝撃強さが約4KJ/m2;示差走査熱量測定法によって測定したピーク融解温度が約152℃超;示差走査熱量測定法によって測定した予想結晶化度が約45重量%超;ISO 178に従って測定した曲げ弾性率が約1450MPa;ISO 1133に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約44g/10分;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張応力が約28.0MPa;ISO 527−1、−2に従って測定した降伏点引張伸びが約7%;ASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約152℃である。
【0167】
PP−Dは少なくとも80重量%のイソタクチックポリプロピレン及びエラストマーコポリマー相を含む耐衝撃性ポリプロピレンホモポリマーである。PP−Cは、ISO 1183に従って測定した密度が約0.90g/cm3;ISO 179−1/1eAに従って測定した23℃におけるシャルピーノッチ付き衝撃強さが約10KJ/m2;示差走査熱量測定法によって測定したピーク融解温度が約156℃超;示差走査熱量測定法によって測定した予想結晶化度が約45重量%超;ISO 178に従って測定した曲げ弾性率が約1450MPa;ISO 1133に従って230℃/2.16kgで測定したメルトフローレートが約12g/10分;ISO 527−2に従って測定した降伏点引張強さが約28MPa;ISO 527−2に従って測定した降伏点引張伸びが約8%;ASTM D1525に従って測定したビカー軟化点が約152℃である。
【0168】
CC−Aはカラーコンセントレートである。CC−B及びCC−Cは着色剤、UV安定剤及びスリップ剤をポリプロピレンキャリヤー中に含むカラーコンセントレートである。
【0169】
強化材コンセントレート−Aはガラス長繊維約60重量%及びPP−B約40重量%を含むコンセントレートである。
【0170】
強化材コンセントレート−B、強化材コンセントレート−C及び強化材コンセントレート−Dは、いずれも、ガラス長繊維約60重量%、カップリング剤約2重量%、メルトフローレート(ISO 1133に従って230℃/2.16kgで試験)が約40g/10分超であるポリプロピレン(例えばPP−B)約36重量%及び濃度約2重量%未満の熱安定剤を含む。
【0171】
第1のポリマー成分、第2のポリマー成分及び強化材コンセントレートをドライブレンドし、Demag 100射出成形機に投入し、その中で溶融ブレンドした後に、試験サンプルを形成するための金型キャビティー中に射出する。表IIIのデータは、予想通りの結果を示している。ガラス長繊維を含まないC.E.24は低い加熱撓み温度及び低いビカー軟化点並びに不良な光沢度、耐引掻き性及び耐擦傷性を有する。
【0172】
D9100.05、D8507.15及びD9530.05は少なくとも1つの硬質ブロック及び少なくとも複数の軟質ブロックを有するブロックであるエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。これらのブロックコポリマーは、The Dow Chemical Companyから商品名INFUSE(登録商標)で市販されており、エチレン及びオクテンモノマーを含む。これらのインターポリマーの性質を以下の表IVに示す。
【0173】
【表3】

【0174】
【表4】

【0175】
実施例25〜31
実施例7〜15で用いたのと同じ方法を用いて表Vの組成物を射出成形することによって成形部品を製造する。実施例25〜31において、第2のポリマー成分はプロピレン−エチレンエラストマーである。
【0176】
第1のポリマー成分、第2のポリマー成分及び強化材コンセントレートをドライブレンドし、Demag 100射出成形機に投入し、その中で溶融ブレンドした後に、試験サンプルを形成するための金型キャビティー中に射出する。表Vのデータは予想される結果を示している。
【0177】
実施例32〜35
前記で用いたのと同じ方法を用いて表VIの組成物を射出成形することによって成形部品を製造する。実施例32はプロピレン−エチレンエラストマーを含み、実施例33はS/LEPを含み、実施例34はブロックコポリマーを含み、実施例35はThe Dow Chemical Companyから市販されているNordel(登録商標)IP4770Pエラストマーを含む。
【0178】
Nordel(登録商標)IP4770Pはエチレン約70重量%、プロピレン約25重量%及びジエン(例えばエチリデンノルボルネン)約5重量%を含むエチレンプロピレンジエンポリマー(EPDMゴム)である。Nordel IP4770Pはランダムコポリマーであり、ASTM D1646(125℃でのML1+4)に従って測定したムーニー粘度が約70である(ISO 1133に従って190℃/2.16kgで測定した予想メルトインデックスは約0.2g/10分未満である)。
【0179】
第1のポリマー成分、第2のポリマー成分及び強化材コンセントレートをドライブレンドし、Demag 100射出成形機に投入し、その中で溶融ブレンドした後に、試験サンプルを形成するための金型キャビティー中に射出する。表VIのデータは予想通りの結果を示している。
【0180】
【表5】

【0181】
実施例36〜39及び比較例40
実施例7〜15で用いたのと同じ方法を用いて表VIIの組成物を射出成形することによって成形部品を製造する。実施例36はプロピレン−エチレンエラストマーを含み、実施例37〜39はS/LEPを含む。比較例40はBassell(Italy)から入手できる、C2分約40重量%及びC3分約60重量%のゴム状C2−C3コポリマーであるSOFTELL CA02Aを含む。これらの実施例は、また、カラーコンセントレート(CC−C)、Arkema Inc(Philadelphia,PA,USA)から入手可能な無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンであるOrevac CA(登録商標)100及び熱可塑性キャリヤー中に熱安定剤を含む添加剤パッケージのコンセントレートであるCMPP 13.00も含む。
【0182】
【表6】

【0183】
第1のポリマー成分、第2のポリマー成分、ガラス繊維、マレイン酸グラフト化PP、カラーコンセントレート及び添加剤パッケージコンセントレートを二軸スクリュー押出機中で配合して材料を溶融ブレンドし、次いでペレット又はグラニュールに押出す。次に、ペレット又はグラニュールをDemag 100射出成形機に投入し、その中で溶融させた後に、試験サンプルを形成するための金型キャビティー中に射出する。
【0184】
表VIIIのデータは実施例36〜39及び比較例40について予想される結果を示している。比較例40はプロピレンエラストマー又はS/LEPを含むサンプルの曲げ弾性率に匹敵する曲げ弾性率を達成するのに高濃度のSOFTELL CA02Aを必要とする。比較例40は、また、不所望に低いメルトフローレートも有する。実施例36〜39のより高いメルトフローレートはこれらのポリマー組成物に好ましい。
【0185】
本発明の範囲から逸脱しないならば、種々の成分を置き換え、加え又は前記配合物から取り除くことができることを理解すべきである。更に、前記成分の重量百分率及び記載した性質の値は、記載した値の5%以下若しくは5%超、10%以下若しくは10%超、25%以下若しくは25%超又は50%以下若しくは50%超異なることができると考えられる。例えば10の値は10%異なることができ、約9〜約11の範囲となることができる。
【0186】
【表7】

【0187】
【表8】

【0188】
任意の下限値と任意の上限値とが少なくとも2単位離れているならば、本明細書中に記載した任意の数値は、下限値から上限値まで1単位刻みの全ての値を含む。一例として、成分の量又は例えば温度、圧力、時間などのようなプロセス変数の値が、例えば1〜90、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜70であると記載する場合には、本明細書中において15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などのような値を明示的に列挙することを意味する。1未満の値に関しては、1単位は適宜0.0001、0.001、0.01又は0.1と考える。具体的に表すのはこれらだけであるが、列挙した最低値と最高値の間の数値の考えられる全ての組合せを同様に本出願中に明示的に記載するものと考えることができる。本明細書中で「重量部」と表す量の教示は、重量%に換算して表される同じ範囲も意味することがわかる。従って、発明の詳細な説明において「得られたポリマーブレンド組成物のx重量部」によって範囲を表す場合には、また、xの同じ列挙量の範囲を、得られたポリマーブレンド組成物の重量%で教示するとも考えられる。
【0189】
特に断らない限り、範囲は全て、両端点と両端点間に全ての数を含む。範囲に関する「約」又は「およそ」の使用はその範囲の両端点に適用される。従って、「約20〜30」は、少なくとも明記した端点を含めて「約20〜約30」を網羅することを意味する。
【0190】
特許出願及び公報を含む全ての論文及び参考文献の開示を、あらゆる目的のために引用することによって本明細書中に組み入れる。組合せを説明するための用語「〜から本質的になる」は、特定された要素、成分(ingredients, component)又は工程と、この組合せの基本的な新規特性に実質的に影響を与えない他の要素、成分又は工程を含むものとする。本明細書中において要素、成分又は工程の組合せを説明するための用語「含んでなる」又は「含む」の使用は、要素、成分又は工程から本質的になる実施態様も意味する。
【0191】
複数の要素、成分又は工程は、単数の総合的な要素、成分又は工程によって示されることができる。或いは、単数の総合的な要素、成分又は工程が別々の複数の要素、成分又は工程に分けられる可能性もある。要素、成分又は工程を説明する単数(a又はan)の開示は、追加の要素、成分又は工程を除外することを意味しない。本明細書中における特定の族に属する元素又は金属への言及は全て、CRC Press,Inc.によって1989年に発行され且つ著作権を取得された元素周期表を参照する。1つ又は複数の族への言及は全て、族への番号付与にIUPAC系を用いてこの元素周期表に示される1つ又は複数の族に関するものとする。
【0192】
本明細書中で使用する用語「ポリマー」及び「重合」は総称的であり、より具体的な事例である「ホモポリマー及びコポリマー」並びに「ホモ重合及び共重合」のいずれか又は両方をそれぞれ含むことができる。
【0193】
前記説明は実例のために記載するのであって、限定的なものではないことがわかる。本明細書中に記載した実施例以外の多くの実施態様及び多くの応用が、前記説明を読み取れば当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲は、前記説明を参照して決定するのではなく、添付した特許請求の範囲を、特許請求の範囲が享有できるのと同等の内容の全範囲と共に参照して、決定すべきである。特許出願及び公報を含む全ての論文及び参考文献の開示を、あらゆる目的のために引用することによって本明細書中に組み入れる。本明細書中に開示した主題の任意の面に関する以下の特許請求の範囲における省略はこのような主題の権利放棄でもないし、本発明者らがこのような主題を、開示された本発明の主題の一部と見なさないと考えるべきでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)比較的硬質の熱可塑性樹脂を含む第1のポリマー成分;
(b)前記第1のポリマー成分に比べて比較的軟質の熱可塑性樹脂を含み且つプロピレンエラストマー、実質的に線状の若しくは線状のエチレンポリマー(S/LEP)又は両者からなる群から選ばれる第2のポリマー成分(前記S/LEPは、S/LEPの全重量基準で約40〜約85重量%のエチレン濃度を有する炭素数4〜20のα−オレフィンコモノマーを含み;前記プロピレンエラストマーは、プロピレンと1種若しくはそれ以上の炭素数2若しくは4〜20のα−オレフィンコモノマーを含み且つプロピレンエラストマーの全重量基準で約20重量%未満のコモノマー濃度を有する);及び
少なくとも1種の強化材
のブレンドを含んでなるソフトタッチ感触のポリマー組成物。
【請求項2】
前記第1のポリマー成分が前記組成物の全重量基準で、約3〜約70重量%の量で存在する請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記第2のポリマー成分が、前記組成物の全重量基準で、約10〜約90重量%の量で存在する請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記の少なくとも1種の強化材が前記ポリマー組成物の全重量基準で、約5〜約40重量%の濃度で存在するガラス繊維を含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記第2のポリマー成分がS/LEPを含み、前記第1のポリマー成分対前記第2のポリマー成分の比が約10:42〜約10:2の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記第2のポリマー成分がプロピレンエラストマーを含み、前記第1のポリマー成分対前記第2のポリマー成分の比が約10:42〜約10:2の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記軟質熱可塑性樹脂が約0.850〜約0.900g/cm3の密度及び約0.2〜約40のメルトインデックス(ASTM D−1238−04に従って190℃,2.16kgにおいて測定)を有するS/LEPを含む請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記S/LEPが、
i)メルトフロー比I10/I2≦5.63;
ii)式
w/Mn≦I10/I2−4.63
によって定義される分子量分布(Mw/Mn);及び
iii)約4×106ダイン/cm2より大きいグロスメルトフラクチャー開始時臨界剪断応力
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記S/LEPが、
(i)密度0.85〜0.92g/cm3
(ii)極限粘度数[η](135℃においてデカリン中で測定)0.1〜10dl/g;
(iii)重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比Mw/Mn(GPCによって測定)1.2〜4;又は
(iv)190℃において測定した(荷重10kg下におけるMFR10)対(荷重2.16kg下におけるMFR2)の比(MFR10/MFR2)8〜50(MFR10及びMFR2は、ASTM D−1238によって190℃においてそれぞれ10kg及び2.16kgの荷重を用いて測定)
の1つ又は任意の組合せを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記第1のポリマー成分対前記第2のポリマー成分の比が約5:1〜約1:4.2の範囲であり;前記第1のポリマー成分が前記組成物の約3〜約50重量部の量で存在し;前記第2のポリマー成分が約4〜約20重量%のエチレン分を含み且つ前記組成物の約10〜約70重量部の量で存在し;前記第2のポリマー成分が約65〜約95のショアー A硬度(ASTM D−2240による)を有する請求項1〜9のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記第1のポリマー成分対前記第2のポリマー成分の比が約10:27〜約10:2である請求項1〜10のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記第1のポリマー成分がポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、耐衝撃性ポリプロピレンポリマー又はそれらの任意の組合せを含む請求項1〜11のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記第1のポリマー成分が、前記ポリマー組成物の全重量基準で、約20〜約50重量%の濃度で存在するポリプロピレンホモポリマーを含む請求項1〜12のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記第2のポリマー成分がS/LEPを含み、前記S/LEPがエチレン−オクテンコポリマーの全重量基準で約50〜約70重量%のエチレンを含むエチレン−オクテンコポリマーであり、前記エチレン−オクテンコポリマーが約1〜約30g/10分のメルトフローレート(ASTM D−1238(190℃,2.16kg)に従って測定)を有する請求項1〜13のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記第2のポリマー成分が約65〜約95のショアー A硬度(ASTM D−2240による)を有する請求項1〜14のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記ポリマー組成物が、ポリマー組成物の全重量基準で、約2〜約10重量%の総エチレン濃度を有する請求項1〜15のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記第2のポリマー成分がプロピレンエラストマーを含み、且つ前記プロピレンエラストマーが、プロピレンエラストマーの全重量基準で、約4〜約20重量%のエチレン濃度及び約80〜約96重量%のプロピレン濃度を有するプロピレン−エチレンコポリマーである請求項1〜16のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記プロピレンエラストマーが低弾性エチレン−プロピレンコポリマー(LEEPコポリマー)であり、前記LEEPコポリマーが以下の特性:
(i)融点が上限110℃未満〜下限25℃超の範囲である;
(ii)弾性対500%引張弾性率の関係が弾性≦0.935M+12である(弾性はパーセントで表し、Mはメガパスカル(MPa)で表した500%引張弾性率である);
(iii)曲げ弾性率対500%引張弾性率の関係が曲げ弾性率≦4.2e0.27M+50である(曲げ弾性率はMPaで表し、MはMPaで表した500%引張弾性率である);
(iv)融解熱が下限1.0ジュール/g超〜上限125J/g未満である;
(v)トリアドタクチシティー(炭素−13核磁気共鳴(13C NMR)によって測定)が75%超である;
(vi)タクチシティー指数m/rが下限4から上限12の範囲である;
(vii)全挿入プロピレン中のプロピレンモノマーの2,1−挿入に基づく逆挿入プロピレン単位の比率(13C NMRによって測定)が0.5%超である;
(viii)全挿入プロピレン中のプロピレンモノマーの1,3−挿入に基づく逆挿入プロピレン単位の比率(13C NMRによって測定)が0.05%超である;
(ix)コポリマーの少なくとも75重量%が、ヘキサン中で8℃ずつ昇温させて行った熱分別の2つの隣接温度画分中に可溶であるような分子間タクチシティー;
(x)反応性比積r12が1.5未満である;
(xi)分子量分布Mw/Mnが下限1.5から上限40の範囲である;
(xii)分子量が15,000〜5,000,000である;
(xiii)固体プロトン核磁気共鳴(1H NMR)の緩和時間が18ミリ秒(ms)未満である;
(xiv)弾性が30%未満又は20%未満又は10%未満又は8%未満又は5%未満である;或いは
(xv)500%引張弾性率が0.5MPa超又は0.8MPa超又は1.0MPa超又は2.0MPa超である
の1つ又は任意の組合せを有する請求項1〜17のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記プロピレンエラストマーが領域エラーエチレン−プロピレンコポリマー(R−EPEコポリマー)であり、前記R−EPEコポリマーが以下の特性:
i)エチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つ約14.6ppm及び約15.7ppmの領域エラーに相当するほぼ等しい強度の13C NMRピークを有する;
ii)プロピレン由来の単位が少なくとも約60重量%及びエチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つ約−1.20超の歪度指数Sixを有する;
iii)プロピレン由来の単位が少なくとも約60重量%及びエチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つDSC曲線が本質的に変化のないTmeとコポリマー中エチレン量の増加につれて低下するTmaxを有する;
iv)プロピレン由来の単位が少なくとも約60重量%及びエチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されることを除いて重量平均分子量が同程度であるプロピレン/エチレンコポリマーよりも多いγ型結晶を示すX線回折パターンを有する;或いは
v)プロピレン由来の単位が少なくとも約60重量%及びエチレン由来の単位が少なくとも約0.1重量%であり且つR−EPEコポリマーのエチレン含量が少なくとも約3重量%である場合に約1.4超のB値を有する
の1つ又は任意の組合せを有する請求項1〜18のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記S/LEPが、前記ポリマー組成物の全重量基準で、約20〜約45重量%の濃度で存在する請求項1〜19のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載のポリマー組成物を含む少なくとも1つの部品を有する成形品。
【請求項22】
前記成形品の部品が請求項1〜20のいずれかに記載のポリマー組成物を含む成形品の製造方法。
【請求項23】
前記方法が、
a)比較的硬質の熱可塑性樹脂の少なくとも一部を含む第1の材料約3〜約60重量部を用意し;
b)プロピレンエラストマー、実質的に線状の若しくは線状のエチレンポリマー(S/LEP)又は両者からなる群から選ばれた比較的軟質の熱可塑性樹脂の少なくとも一部を含む第2の材料約10〜約70重量部を用意し(前記S/LEPは、S/LEPの全重量基準で約40〜約85重量%のエチレン濃度を有する炭素数4〜20のα−オレフィンコモノマーを含み、前記プロピレンエラストマーはプロピレンと1種若しくはそれ以上の炭素数2若しくは炭素数4〜20のα−オレフィンコモノマーを含み且つプロピレンエラストマーの全重量基準で約20重量%未満のコモノマー濃度を有する);
c)少なくとも1種の強化材を含む強化材コンセントレートを含む第3の材料約20〜約75重量部を用意し;
d)前記第1の材料、第2の材料及び第3の材料をブレンドしてブレンドを形成し;そして
e)前記ブレンドを成形具中で成形して物品を形成する
工程を含んでなる請求項22に記載の成形品の製造方法。
【請求項24】
前記強化材コンセントレートがガラス繊維及びポリプロピレンの少なくとも一部を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記の少なくとも1種の強化材が、前記強化材コンセントレートの全重量基準で、約30〜約90重量%の濃度で存在する請求項23又は24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記の少なくとも1種の強化材が、前記成形品の全重量基準で、約5〜約40重量%の量で存在する請求項23〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記プロピレンエラストマーが、前記の比較的硬質の熱可塑性樹脂の結晶化度より低い結晶化度を有する請求項23〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記成形品がカップリング剤を更に含む請求項23〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、前記ブレンド工程の前に、前記第1の材料、前記第2の材料又は前記第3の材料のうち2つ又はそれ以上を同時に配合する工程を更に含む請求項23〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、前記ブレンド工程の前に、前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料のうちの任意の2つを配合する工程を実質的に含まない請求項23〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
i)ポリプロピレンホモポリマー、耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー又はそれらの任意の組合せから選ばれた比較的硬質の熱可塑性樹脂を含む第1の材料を用意し;
ii)S/LEP、プロピレンエラストマー若しくは両者から選ばれた比較的軟質の熱可塑性樹脂を含む第2の材料を用意し;
iii)少なくとも1種の強化材を用意し;
iv)前記第1の材料、前記第2の材料及び前記強化材を混合してポリマー組成物を形成し;
v)前記ポリマー組成物をペレット化して、熱可塑性樹脂成形機に供給可能なペレット又はグラニュールを形成し;そして
vi)少なくとも5kgの前記ペレット若しくはグラニュールを容器中に入れる
工程を含んでなる請求項1〜20のいずれかに記載の組成物を含む部品の製造方法。
【請求項32】
前記方法が前記ポリマー組成物を射出成形する工程を更に含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記射出成形工程がシングルショット射出成形によって物品を形成する工程を含む請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記混合工程が、前記強化材を用意する工程の前に、前記強化材と前記第1の材料の少なくとも一部、前記第2の材料の少なくとも一部又は両者とを混合する工程を含む請求項31〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記混合工程が、前記の少なくとも1種の強化材を用意する工程の前に、前記第2の材料を前記第1の材料の少なくとも一部と混合する工程を含む請求項31〜34のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2011−500946(P2011−500946A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531207(P2010−531207)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/080814
【国際公開番号】WO2009/055486
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】