説明

物品搬送装置

【課題】長尺物品を衝撃を与えることなく受取可能な物品搬送装置の提供。
【解決手段】搬送始端側と搬送終端側に設けたプーリに無端ベルト本体40を巻き掛けた無端ベルトユニット35において、無端ベルト本体40の外周面に可撓弾性変形可能な波形桟部41を帯状部材により等間隔に複数設け、波形桟部41が従動プーリ31を通過する際に、波形桟部41は可撓弾性変形により胡瓜70と係合する係合面が変形しながら略水平姿勢で上方にせり上がり、該係合面のせり上がり位置に物品受け渡し位置を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端回動ベルト等の無端回動手段を備えた物品搬送装置に係り、被搬送物品のスムーズな受け渡しを可能とし、野菜,果実などの農産物や、傷付いては困る長尺物等の被搬送物品へ大きな衝撃を与えることなく搬送できる物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農産物等の被搬送物品を水平方向、傾斜方向等に搬送する搬送装置として、無端回動する無端ベルトにより構成されるベルトコンベヤがある。ベルトコンベヤは、被搬送物品を所定の間隔を有して一個ずつ搬送するため、あるいは高い位置に搬送するために、無端ベルトの外周面に、搬送方向と直交する幅方向に沿って複数の桟部を間隔を有して設けたものが提案されている(特許文献1の図1参照)。
【0003】
特許文献1に開示のベルトコンベヤは、無端ベルトの外周面に平板状の桟部材を立設し、斜め上方に向けて胡瓜といった長尺物を搬送する際に、桟部材に被搬送物品である長尺物が支持されて落下することなく搬送される。
【0004】
また、対向する一対のベルトコンベヤを上下に配置し、各ベルトコンベヤにおける無端ベルトの外周面に搬送方向に沿って凹凸部を連続して交互に設けた波形桟を備えた構成の物品搬送装置が提案されている(特許文献2)。
【0005】
特許文献2に開示の物品搬送装置は、対向する無端ベルトの凸部間の弾性作用および表面の粗さにより被搬送物品を挟圧保持して上方に搬送する。
【特許文献1】実開平5−5718号公報
【特許文献2】特開昭51−35972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の桟部材付きベルトコンベヤへ被搬送物品である胡瓜を供給コンベアから供給する場合、無端コンベアを張架する搬送路始端側のローラに係合する無端ベルト上の桟部材は、該ローラの回転中心を支点として旋回するため、供給コンベアから受け渡される胡瓜に対して下から上に向けて突き上げるように当接し受け取るため、当接時に被搬送物品に衝撃を与える。このような衝撃は、被搬送物品の性質によっては好ましくない場合がある。例えば被搬送物品として胡瓜を搬送する場合、胡瓜の表面に出ているイボは鮮度を表す指標として消費者に知られているが、このイボは衝撃に弱く、桟部材により受ける程度の衝撃であっても欠落するおそれがあり、商品価値の低下を招くこともあり得る。
【0007】
一方、特許文献2の波形桟を備えたベルトコンベヤからなる物品搬送装置では、被搬送物品をその両側から挟圧保持するため、被搬送物品が限られ、胡瓜等のデリケートな物品を搬送するのには適していない。
【0008】
本発明の目的は、野菜・果実等の農産物、特に傷付いては困る長尺農産物、あるいは農産物以外の長尺の物品について衝撃を与えることなくスムーズに受け取ることができる物品搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の目的を実現する物品搬送装置の構成は、少なくとも搬送始端側と搬送終端側に設けた回転支持手段によって移動方向が転向されて無端回動する無端搬送手段を有し、前記搬送始端側の物品受け渡し位置に向けて供給された搬送物品を受け取り、搬送終端側に向けて搬送し排出する物品搬送装置であって、前記無端搬送手段には、搬送方向に沿って間隔を有して複数配置され、該無端搬送手段の搬送面に対して外向きに突出する可撓弾性変形可能な突起部からなり前記搬送物品と係合する物品支持手段を有し、前記物品支持手段が前記回転支持手段を通過する際に可撓弾性変形により前記搬送物品と係合する係合面が変形しながら略水平姿勢で上方にせり上がり、該係合面のせり上がり位置に前記物品受け渡し位置を設けたことを特徴とする。
【0010】
ここで、回転支持手段は、無端搬送手段が例えば無端ベルトコンベヤであればプーリあるいはローラ等とすることができ、無端搬送手段が例えばスラットコンベヤであれば無端チェーンが噛合するスプロケットとすることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(2)上記した構成の物品搬送装置において、前記無端搬送手段は、水平面に対して傾斜した構成とすることができる。この場合、全体を傾斜させても良く、あるいは排出部側を水平にしても良い。また、搬送物品を上方だけでなく、斜め下方に向けて搬送するようにしても良い。勿論、上記(1)の構成から無端搬送手段が水平搬送路のみで構成されることを排除するものではない。
(3)上記いずれかの構成の物品搬送装置において、前記無端搬送手段は、無端回動ベルトにより構成することができる。勿論、無端搬送手段として無端回動ベルト以外に、スラットコンベヤ等を適用できることを排除するものではない。
(4)上記いずれかの構成の物品搬送装置において、前記無端搬送手段は、前記物品支持手段を搬送方向に沿って一列に配置した構成としていて、前記一列の物品支持手段を有する無端搬送手段を該無端搬送手段の搬送方向と直交する方向に間隔を有して複数列配置した構成とすることができる。例えば、複数の無端ベルトを搬送方向と直交する方向に並列に配置し、各無端ベルトに物品支持手段を間隔を有して複数設けた構成とすることができる。また、搬送物品を一列で搬送する場合、複数列の無端ベルトの幅を細くすることができる。
(5)上記した構成の物品搬送装置において、前記無端搬送手段の搬送方向と直交する方向において、隣接する列の物品支持手段は搬送方向において位相をずらして配置することができる。すなわち、物品搬送装置の搬送面を上面視した状態で、物品支持手段は千鳥状に配置される。
(6)上記したいずれかの構成の物品搬送装置において、前記物品支持手段は、無端搬送面に可撓弾性変形可能な帯状部材を山形に曲げて形成した中空の突起部により構成することができる。この場合、一本の帯状部材で一または複数の突起部を形成することができ、あるいは帯状部材を無端状とし、この無端帯状部材により全ての突起部を形成することもできる。
(7)上記したいずれかの構成の物品搬送装置において、前記搬送物品は長尺物とし、当該搬送物品の長手方向を前記無端搬送手段の搬送方向と直交する方向に向けて前記受け渡し位置に供給される構成とすることができる。この長尺の搬送物品としては、例えば農産物の胡瓜等の傷付いては困る長尺物とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓弾性変形可能な物品支持手段が回転支持手段、例えばプーリにより転向する際に外形が搬送方向に変形し、物品支持手段の搬送物品係合面が略水平姿勢でせり上がった位置で搬送物品の受け渡しが行われるので、搬送物品を衝撃なくスムーズに搬送することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、物品支持手段の搬送物品係合面がせり上がった状態で搬送物品と係合し、そのまま斜め上方に移動するので、搬送物品のスムーズな受け渡しが行える。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、無端搬送手段を無端回動ベルトとしたので、物品支持手段の設置が容易となる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、複数列の無端ベルトにより搬送物品を物品支持手段により係合し搬送するので、例えば長尺の搬送物品を安定して搬送することができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、搬送物品の搬送方向の前後を物品支持手段で挟持するので、搬送物品を確実に保持して搬送することができ、特に傾斜搬送路では下方への転落を防止することができる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、物品支持手段を無端搬送面に可撓弾性変形可能な帯状部材を山形に曲げて形成した中空の突起部により構成することにより、物品支持手段がプーリあるいはローラ等の回転支持手段にて転向する際、物品支持手段の外形を容易に変形させて搬送物品係合面を略水平姿勢で受け渡し位置にせり上げることができる。
【0017】
請求項7に係る発明によれば、長尺の搬送物品に対して衝撃を与えることなく搬送することができ、例えば長尺農産物としての胡瓜を搬送する場合、胡瓜のイボを脱落させることなく胡瓜の搬送が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
第一実施形態
図1は、本発明による物品搬送装置の第一実施形態を示す概略構成図で、(a)は正面図、(b)は上面図である。図2は、図1に示す物品搬送コンベヤの搬送始端側の正面図である。
【0020】
図1に示す物品搬送装置は、水平物品搬送部10aを備えた物品供給コンベヤ10と、上り傾斜の物品傾斜搬送部30aに連接して物品水平搬送部30bを備えた物品搬送コンベヤ30と、物品水平搬送部50aを備えた物品排出コンベヤ50とを有し、物品搬送コンベヤ30の傾斜下端側である搬送始端側に物品供給コンベヤ10を配置し、物品搬送コンベヤ30の物品水平搬送部30bの端部である搬送終端側に物品排出コンベヤ50を配置している。
【0021】
なお、物品供給コンベヤ10は水平でなくても、傾斜していても良く、物品搬送コンベヤ30は物品傾斜搬送部30aがなくても良く、物品水平搬送部30bで構成されていても良い。
【0022】
物品供給コンベヤ10は、搬送始端側の回転支持手段であるプーリ11と搬送終端側の回転支持手段であるプーリ12に無端ベルトを巻き掛けた第1供給ベルトユニット13を搬送方向と直交する後述の駆動軸19の軸方向(以下、幅方向とする)に沿って間隔を有して複数並設して構成される第1供給コンベヤライン14と、搬送始端側の回転支持手段であるプーリ15と搬送終端側の回転支持手段であるプーリ16に無端ベルトを巻き掛けた第2供給ベルトユニット17を幅方向に沿って間隔を有して複数並設して構成される第2供給コンベヤライン18と、により構成している。
【0023】
また、第1供給ベルトユニット13と第2供給ベルトユニット17とを交互に配置し、第1供給ベルトユニット13の無端ベルトが巻き掛けられる搬送終端側の駆動プーリ12と、第2供給ベルトユニット17の無端ベルトが巻き掛けられる搬送始端側の駆動プーリ15とを同一の供給コンベヤ用駆動軸19に連結することで、第1供給コンベヤライン14の搬送終端部と第2供給コンベヤライン18の搬送始端部とを搬送方向においてオーバーラップさせている。供給コンベヤ用駆動軸19は、供給コンベヤの駆動手段であるモータ20に連結され、モータ20により第1供給コンベヤライン14と第2供給コンベヤライン18の各無端ベルトを同時に駆動する。
【0024】
なお、第1供給ベルトユニット13と第2供給ベルトユニット17は、搬送方向に延びるフレーム部材の搬送方向前後にプーリを設け、この前後のプーリに無端ベルトを巻き掛けたものをユニットとしたもので、第1供給ベルトユニット13と第2供給ベルトユニット17は装置本体フレーム(不図示)に取り付けられている。
【0025】
物品供給コンベヤ10により長尺の被搬送物品、例えば胡瓜を物品搬送コンベア30に向けて供給する場合、図示する6列の第1供給ベルトユニット13及び第2供給ベルトユニット17に対して1本の胡瓜60を幅方向に向けた姿勢で搬送する。この場合、搬送コンベヤ30及び物品排出コンベヤ50についても、同様に、一本の胡瓜70を幅方向に向けた姿勢で搬送する。
【0026】
物品搬送コンベヤ30は、搬送始端側の回転支持手段である従動プーリ31と搬送終端側に配置した回転支持手段である駆動プーリ32と傾斜上端位置に配置した回転支持手段である中間プーリ33に無端ベルト34を巻き掛けた搬送ベルトユニット35を幅方向に沿って間隔を有して複数並設して構成される搬送コンベヤライン36を有している。搬送ベルトユニット35は、搬送方向に延びるフレーム35aに従動プーリ31と駆動プーリ32と中間プーリ33を取り付けており、各搬送ベルトユニット35は搬送始端側を第2供給ベルトユニット17の搬送終端側と搬送方向においてオーバーラップするようにして装置本体フレームに取り付けている。
【0027】
本実施形態では、第2供給ベルトユニット17の搬送終端側プーリ16の回転軸心位置よりも駆動軸19よりに従動プーリ31の回転軸心を位置させ、並設される第2供給ベルトユニット17の間に搬送ベルトユニット35を配置している。また、搬送ベルトユニット35の従動プーリ31の上端を第2供給ベルトユニット17の物品搬送面よりも下方位置に位置させている。
【0028】
なお、物品排出コンベヤ50は、搬送始端側の駆動プーリ51と搬送終端側のプーリ52に無端ベルトを巻き掛けた排出ベルトユニット53を幅方向に沿って間隔を有して複数並設して構成される排出コンベヤライン54を備えており、排出ベルトユニット53と搬送ベルトユニット35とを幅方向において交互に配置している。また、排出ベルトユニット53の無端ベルトが巻き掛けられる搬送始端側の駆動プーリ51と、搬送ベルトユニット35の無端ベルトが巻き掛けられる搬送終端側の駆動プーリ32とを同一の搬送コンベヤ用駆動軸37に連結することで、排出コンベヤライン54の搬送始端部と搬送コンベヤライン36の搬送終端部とを搬送方向においてオーバーラップさせている。搬送コンベヤ用駆動軸37は、搬送コンベヤの駆動手段であるモータ38に連結され、モータ38により排出コンベヤライン34と搬送コンベヤライン36の各無端ベルトを同時に駆動する。なお、モータ38により回動される排出コンベヤライン54の搬送速度は、物品供給コンベヤライン10の供給速度と等速あるいは若干高速に設定している。
【0029】
本実施形態において、物品搬送コンベヤ30の搬送ベルトユニット35を構成する無端ベルト34は、図2に示すように、無端ベルト本体40の外周面に、無端ベルト本体40の幅と同幅で、無端ベルト本体40の搬送方向(長手方向)に沿ってうねる物品支持手段である波形の波形桟部41を一定間隔で複数形成している。この波形桟部41は、可撓弾性変形可能な帯状部材を高さHの山形に曲げ、無端ベルト本体40の長手方向に裾幅Lを隔てて谷部を無端ベルト本体40の外周面に接着剤で固定して構成されている。なお、無端ベルト本体40の全周長よりも長い帯状部材を無端状とし、フレーム状の波形桟部41を形成し、その間の谷部を無端ベルト本体40の外周面に接着剤により接着固定してもよい。
【0030】
また、波形桟部41が形成されている無端ベルト本体40が従動プーリ31に対して巻き掛けを開始してから、巻き掛けが終了する転向動作の間において、従動プーリ31の外周面によって無端ベルト本体40が凸状に湾曲されても波形桟部41の内周面と無端ベルト本体40の外周面との間に形成される空間が維持されるように、波形桟部41の長さが設定されている。
【0031】
無端ベルト本体40の波形桟部41が設けられている部分が従動プーリ31に巻き掛けられる領域を移動している間において、波形桟部41は、搬送前端側の裾部が従動プーリ31の外形に沿った円弧軌道を移動し始めると、搬送方向に沿った対称形状の波形が崩れ始め、丁度半分の位置まで移動すると、波形桟部41が直線搬送路上を移動していたときの裾幅(直線距離でL)が、従駆動プーリ31の直径Dまで狭まる(L>D)。このため、波形桟部41の斜面は直線搬送路上での斜面角(θ)に比べて小さくなる。そして、波形桟部41がさらに移動すると、波形桟部41の搬送前側斜面の斜面角(θ)は徐々に元の斜面角(θ)へ復帰するように変化するが、その途中で波形桟部41の搬送前側の斜面が裾部を支点とするように変形しながら水平に近い水平姿勢位置を経て元の斜面角(θ)へと復帰する。波形桟部41の搬送前側斜面がこのように姿勢を変化させながら移動する状態は、該搬送前側斜面が上方にせり上がるように移動し、水平姿勢の後は徐々に搬送方向前方へ向けて起き上がりながら傾斜上方に向けて移動する。
【0032】
本実施形態において、波形桟部41の搬送前側の斜面が前記水平姿勢位置となる高さ位置に第2供給ベルトユニット17の物品搬送面を一致させており、前述のように、搬送ベルトユニット35の従動プーリ31の上端を第2供給ベルトユニット17の物品搬送面よりも下方位置に位置させているのはこのためである。
【0033】
第2供給ベルトユニット17を搬送されて搬送ベルトユニット35とのオーバーラップ部分である受け渡し位置に到達した被搬送物品である胡瓜70に対し、下方からせり上がってきた波形桟部41の略水平姿勢となった搬送前側斜面が当接し、胡瓜70を上方に持ち上げるように支持して搬送ベルトユニット35への受け渡しが行われる。波形桟部41が従動プーリ31との巻き掛け位置を通過して直線状の搬送路に達するに従って波形桟部41の搬送前側斜面が起立し、胡瓜70をその搬送方向背面側で支持して斜め上方に搬送する。
【0034】
本実施形態において、波形の突起をなす波形桟部41の水平搬送路上での形状を基本形状とすると、基本形状における波形桟部41の頂部までの高さHを少なくとも搬送物品の重心高さよりも高くし、傾斜物品搬送部30aにおける搬送物品の支持を確実に行うようにしている。また、波形桟部41の高さHを搬送物品の高さの2倍以下としている。これは、高さHが高すぎると、搬送物品の受け渡し位置で搬送物品を支持する際に、波形桟部41が撓み過ぎてしまい、搬送物品の支持ができなくなることを避けるためと、従動プーリ31の外形に沿って波形桟部41が移動する際に、波形桟部41の搬送前側斜面の大きな変形が得られず、受け渡し位置で上述したように、波形桟部41の搬送前側斜面がせり上がってくるような挙動が得られないことによる。
【0035】
例えば、搬送物品を商業目的で最も多く栽培されている品種であるF1と呼ばれる白イボ系の一代雑種品種の胡瓜とした場合、この胡瓜の断面の直径が20〜40mmであることから、高さHを胡瓜の平均高さ30mmの2倍程度あれば確実に支持することができる。
【0036】
本実施形態において、可撓弾性変形可能な波形桟部41を構成する帯状部材としては、ポリエステル帆布にウレタンコーティングを施したものを用いているが、これに限定されるものではなく、無端ベルト本体40の波形桟部41が設けられた部分が駆動プーリ31に巻き掛けられた際に、波形桟部41の搬送方向前後の裾幅が変化するのに従って、山形斜面の撓み変形を許容する柔軟性と剛性を備えた材料であれば良く、例えばゴムやポリエチレン等のプラスチック樹脂等を用いることもできる。
【0037】
また、波形桟部41は、前述した基本形状における裾幅Lを高さHの2倍以上、4倍以下とし、かつ従動プーリ31の円周の4分の1以上、円周以下としている。すなわち、基本形状における波形桟部41の高さに対して裾幅長さが長すぎると、従動プーリ31の外形に沿って波形桟部41が移動する際、波形桟部41の搬送前側斜面の向きが裾部を支点として大きく変位しないため、前述のように波形桟部41の搬送前側斜面が受け渡し位置で上方にせり上がるように移動する挙動が得られない。
【0038】
さらに、基本形状における波形桟部41の裾幅Lが従動プーリ31の円周より短すぎ、あるいは長すぎた場合にも、波形桟部41の搬送前側斜面の向きが裾部を支点として大きく変位しないため、前述のように波形桟部41の搬送前側斜面が受け渡し位置で上方にせり上がるように移動する挙動が得られない。
【0039】
一方、本実施形態では、6列の搬送ベルトユニット35を配置しており、奇数列の搬送ベルトユニット35における波形桟部41(図1中、塗りつぶした部分)を同位相に配置し、偶数列の搬送ベルトユニット35における波形桟部41(図1中、塗りつぶした部分)を同位相に配置するが、奇数列の波形桟部41とは半位相ずらして配置している。すなわち、搬送コンベヤライン36の上面視において、隣り合う搬送ベルトユニット35上の波形桟部41は、千鳥状に配置されている。
【0040】
このように、搬送ベルトユニット35を複数並列して構成した搬送コンベヤライン36において、波形桟部41を千鳥状に配置したことにより、物品供給コンベヤ10から物品受け渡し位置に供給された長尺の物品、例えば胡瓜70は以下のように波形桟部41に支持されて搬送され、物品排出コンベヤ50に排出される。
【0041】
上記した波形桟部41のずれは、半位相に限られず、1/3,1/4といった位相であっても、また、隣り合う列において、ランダムにずれていても良く、要するに、胡瓜などの長尺物の搬送方向前面側と背面側とを複数の波形桟部41で互い違いに挟持できるようにすれば良い。
【0042】
胡瓜70は、一本ずつ第1供給コンベヤライン14の長手方向に向けて搬送され、第2供給コンベヤライン17へ移載されて物品搬送コンベヤ30との物品受け渡し位置に向けて供給される。
【0043】
前記物品受け渡し位置において、搬送コンベヤライン36の奇数列の搬送ベルトユニット35の波形桟部41が該物品受け渡し位置に向けて上方にせり上がり始めていた場合、偶数列の搬送ベルトユニット35の波形桟部41は、奇数列の搬送ベルトユニット35の波形桟部41に対して半位相ずれて搬送方向前方と後方に存在する。偶数列の搬送ベルトユニット35における前記半位相搬送方向前方にずれている波形桟部41に着目すると、全てあるいは一部の奇数列搬送ベルトユニット35における前記物品受け渡し位置直前の波形桟部41の上方へのせり上がりによって、これら波形桟部41の搬送前側斜面が胡瓜70の底部を支持しながら該搬送前側斜面の斜面角がθからθへと変化するにつれて胡瓜70を搬送方向前方へ押し、結果として胡瓜70の搬送方向背面側を支持する。その際、当該胡瓜70の搬送方向前面側には偶数列搬送ベルトユニット35の波形桟部41が起立した状態で位置しているので、当該胡瓜70の搬送方向前面が偶数列搬送ベルトユニット35の波形桟部41の搬送方向背面に当接する。したがって、胡瓜70は、その搬送方向背面側と前面側を奇数列搬送ベルトユニット35の波形桟部41と偶数列搬送ベルトユニット35の波形桟部41とによって挟持されるため、胡瓜70を物品傾斜搬送部30a上を傾斜上方に向けて下方に転落することなく安定して搬送することができる。
【0044】
物品搬送コンベヤ30の物品傾斜搬送部30aを経て物品水平搬送部30bを搬送される胡瓜70は、水平搬送部30bの搬送終端において、偶数列搬送ベルトユニット35の波形桟部41の搬送方向背面側傾斜面が徐々に倒れるように変形するため、胡瓜70は衝撃を受けることなく物品排出コンベヤ50の排出コンベヤライン54の排出ベルトユニット53に移載されて排出される。
【0045】
他の実施形態
上記した実施形態において、物品支持手段としての波形桟部41を、一つの無端ベルト本体40の外周面に一つの帯状部材により一つ設けているが、一つの帯状部材により複数の波形桟部41を設けるようにしても良い。
【0046】
また、一つの無端ベルト本体40に波形桟部41を一列設けた構成としているが、例えば図1に示す6列の搬送ベルトユニット35の幅方向長さを有する広幅の無端ベルトに、周方向に沿って波形桟部41を等間隔に設けた列を複数列設けた構成としても良く、この場合も波形桟部41を千鳥状に配置することが望ましい。この場合、前記広幅の無端ベルトの両側に物品落下防止用のガイド板等を設けるのが望ましい。勿論、物品供給コンベヤ10も同様に構成しても良い。
【0047】
また、波形桟部41は帯状部材を山形に曲げて無短ベルト本体40との間に空間を形成し、直線搬送路状を移動中の基本形状から従動プーリ31の外形軌道を移動する間に波形形状の裾部間隔が変化することによって、波形桟部41の斜面角が変化し、波形桟部41の搬送方向前側斜面が略水平姿勢となることを利用して搬送物品の受け渡し位置で供給される物品を上方に持ち上げるようにしているが、波形形状の波形桟部41が中空である必要はなく、スポンジ等の柔軟な樹脂製の中実構造であってもよい。要するに、直線搬送路状を移動中の基本形状から従動プーリ31の外形軌道を移動する間に波形形状の裾部間隔が変化することによって、波形桟部41の斜面角が変化すればよい。
【0048】
勿論、波形桟部41の凸形状は、搬送方向に見て(物品搬送コンベヤ3の正面から見て)山形形状でなくても、矩形形状であっても、半円状、三角形等の多角形等であっても良く、要するに、直線搬送路状を移動中の基本形状から従動プーリ31の外形軌道を移動する間に凸形状の裾部間隔が変化することによって、凸形状の斜面角が変化し、前記受け渡し位置で略水平姿勢となる形状であれば良い。
【0049】
一方、物品供給コンベヤ10の第2供給ベルトユニット17の搬送終端部と搬送ベルトコンベヤ30の搬送ベルトユニット35の搬送始端部とを搬送方向に沿ってオーバーラップさせ、搬送物品の受け渡し位置で第2供給ベルトユニット17上の胡瓜等の搬送物品を搬送ベルトユニット35の波形桟部41に受け渡すようにしているが、第2供給ベルトユニット17に代えて並列する搬送ベルトユニット35の間隙に渡し板を配置し、第1供給ベルトユニット13から該渡し位置に移載された搬送物品をプッシャ等で前記渡し板上を搬送物品の受け渡し位置に向け押し出して供給するようにしても良い。
【0050】
また、上記した第1実施形態では、物品搬送コンベヤ30の物品傾斜搬送部30aは斜め上方に向けて搬送物品を搬送するようにしているが、斜め下方に向けて搬送物品を搬送するようにしても良いこの場合、第1実施形態とは逆に、波形桟部41が従動プーリ31の外形を移動するにつれてその搬送背面側斜面が傾き始め、受け渡し位置で略水平姿勢となって、下方に向けて下がるので、搬送物品を衝撃なく物品供給コンベヤ10に受け渡すことができる。
【0051】
一方、物品供給コンベヤ10、物品搬送コンベヤ30、物品排出コンベヤ50は、無端ベルトで構成されるだけでなく、物品搬送路の幅方向両側に無端チェーンを設け、対向するチェーン間に差し渡した板部材を搬送方向に沿って等間隔に複数枚設けたスラットコンベヤであっても良く、例えば該各板部材に前記波形桟部を設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による物品搬送装置の第一実施形態を示す概略構成図で、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【図2】図1に示す物品搬送コンベヤの搬送始端側の正面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 物品供給コンベヤ
10a 水平物品搬送部
11、12、15、16 プーリ
13 第1供給ベルトユニット
14 第1供給コンベヤライン
17 第2供給ベルトユニット
18 第2供給コンベヤライン
19 供給コンベヤ用駆動軸
20 モータ
30 物品搬送コンベヤ
30a 物品傾斜搬送部 30b 物品水平搬送部
31 従動プーリ
32 駆動プーリ
33 中間プーリ
34 無端ベルト
35 搬送ベルトユニット
35a フレーム
36 搬送コンベヤライン
37 搬送コンベヤ用駆動軸
40 無端ベルト本体
41 波形桟部
50 物品排出コンベヤ
70 胡瓜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも搬送始端側と搬送終端側に設けた回転支持手段によって移動方向が転向されて無端回動する無端搬送手段を有し、前記搬送始端側の物品受け渡し位置に向けて供給された搬送物品を受け取り、搬送終端側に向けて搬送し排出する物品搬送装置であって、
前記無端搬送手段には、搬送方向に沿って間隔を有して複数配置され、該無端搬送手段の搬送面に対して外向きに突出する可撓弾性変形可能な突起部からなり前記搬送物品と係合する物品支持手段を有し、前記物品支持手段が前記回転支持手段を通過する際に可撓弾性変形により前記搬送物品と係合する係合面が変形しながら略水平姿勢で上方にせり上がり、該係合面のせり上がり位置に前記物品受け渡し位置を設けたことを特徴とする物品搬送装置。
【請求項2】
前記無端搬送手段は、水平面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記無端搬送手段は、無端回動ベルトにより構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記無端搬送手段は、前記物品支持手段を搬送方向に沿って一列に配置した構成としていて、前記一列の物品支持手段を有する無端搬送手段を該無端搬送手段の搬送方向と直交する方向に間隔を有して複数列配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の物品搬送装置。
【請求項5】
前記無端搬送手段の搬送方向と直交する方向において、隣接する列の物品支持手段は搬送方向において位相をずらして配置したことを特徴とする請求項4に記載の物品搬送装置。
【請求項6】
前記物品支持手段は、無端搬送面に可撓弾性変形可能な帯状部材を山形に曲げて形成した中空の突起部により構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の物品搬送装置。
【請求項7】
前記搬送物品は長尺物とし、当該搬送物品の長手方向を前記無端搬送手段の搬送方向と直交する方向に向けて前記受け渡し位置に供給されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の物品搬送装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−149973(P2010−149973A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328561(P2008−328561)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508134337)静岡シブヤ精機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】