説明

物品整列装置

【課題】窪み部を外周に有する物品等を固定床や移動床の床長さ方向に分散させて搬送すること。
【解決手段】窪み部等を外周に有する物品を搬送しつつ整列させる物品整列装置10であって、少なくとも一部の移動床30又は固定床20の床面上に物品振り分け部材22、32を設けてなり、該物品振り分け部材22、32の物品搬送方向に沿う各位置の断面を物品搬送方向の上流側から下流側に向けて次第に膨大化してなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品整列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品整列装置として、特許文献1〜3に記載のものがある。
特許文献1に記載の物品整列装置は、固定床20もしくは移動床30の少なくとも一部の床面に、搬送方向に直交する幅方向に沿って三角鋸歯状の凹凸をなす凹凸部22を設け、複数個の物品を供給し、各物品を凹凸部32の幅方向の凹所に転倒させることにより、各物品の重心を下方に方向整列させるとともに、各物品を搬送方向に直交する幅方向に分散させて一定量ずつ排出させるものである。
【0003】
特許文献2に記載の物品整列装置は、縦長物品1の長手方向の中央部を支持し、かつ該物品1を物品搬送方向に沿う下流に移動させる三角柱状の傾斜突起23と、縦長物品1の長手方向の両端部のそれぞれを規制して該物品1の中央部を上記傾斜突起23に接触させる両側の三角柱状の面状部材22を備えて上下動する上下移動床20を有し、上下移動床20の物品搬送方向に沿う上流に、縦長物品1の長手方向を物品搬送方向と直角方向に位置規制する固定物品投入部10を有し、上下移動床20の物品搬送方向に沿う下流に、排出シュート30を有し、排出シュート30は、縦長物品1をその長手方向における軽量側を先行させて送り出すものである。
【0004】
特許文献3に記載の物品整列装置は、複数ずつの第1搬送子71、91および第2搬送子72、92を、搬送経路始端から終端にかけて隣り合うもの同士接しかつ1つ置き交互に並べる。第1搬送子71、91及び第2搬送子72、92の上面を、搬送方向を基準として搬送方向上流側より下流側が低くなるように傾斜させられた搬送面とする。第1搬送子71、91の搬送面が隣り合う上流側及び下流側の第2搬送子72、92の搬送面と交互に面一になるように第1及び第2搬送子71、91、72、92の少なくとも一方を、流体圧シリンダ63、64、83〜88で昇降させる。搬送経路の上流側には、物品を搬送方向に沿う方向にガイドする垂直帯板状の整列ガイドを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-7174
【特許文献2】特開2009-143699
【特許文献3】実開平6-72953
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の物品整列装置では、物品を概ね一定量ずつ送り出すことはできる。固定床もしくは移動床に設けた三角鋸歯状の凹凸部が物品の向きを変えることができるものの、移動床や固定床の長手方向に物品を分散することはできない。例えば、この物品整列装置により搬送されて送り出される物品をその搬送方向に対して直交配置した排出コンベアで排出すると、物品は離れていたり、近接していたりする。下工程でそれらの物品を個別処理するためには、先行物品を増速コンベアで加速して後続物品との間隔を開ける等が必要になる。
【0007】
特許文献2に記載の物品整列装置では、上下移動床の三角柱状の傾斜突起と面状部材が、物品を移動床や固定床の床長さ方向に分散する。ところが、窪み部を外周に有する物品にあっては、上記の傾斜突起と面状部材における物品搬送方向の上流側に臨む三角面に物品の窪み部が引掛かり、分散されないことがある。
【0008】
特許文献3に記載の物品整列装置では、垂直帯板状の整列ガイドが球状又は円柱状の物品を搬送子の長手方向に分散する。ところが、窪み部を外周に有する物品にあっては、上記の整列ガイドに物品の窪み部が引掛かり、分散できない。
【0009】
本発明の課題は、窪み部を外周に有する物品等を固定床や移動床の床長さ方向に分散させて搬送することにある。
【0010】
本発明の他の課題は、本体部と細長い脚部とを有し、本体部の太径部に対して脚部の細径部がなす段差状の窪み部を外周に有する物品については、更に、その本体部を一定の方向に整列させて搬送することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、物品を搬送しつつ整列させる物品整列装置であって、複数の固定床と移動床を物品搬送方向に沿って交互に配置するとともに、各固定床と各移動床が物品搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した下り勾配床面を備え、各移動床を同時にそれらの床面が隣接する固定床の床面に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返し、少なくとも一部の移動床又は固定床の床面上に物品振り分け部材を設けてなり、該物品振り分け部材の物品搬送方向に沿う各位置の断面を物品搬送方向の上流側から下流側に向けて次第に膨大化してなるようにしたものである。
【0012】
本明細書における「下流」とは、物品が進行していく方向を示し、高さ方向の下位位置を示すものではない。また、「上流」についても同様に、物品が進行していく方向と逆方向を示すものであり、高さ方向の上位位置を示すものではない。従って、「下流側」という表現においても、高さ方向としては、ある基準に対して下位位置に限定されるものではない。「上流側」についても同様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、少なくとも一部の移動床又は固定床の床面上に物品振り分け部材を設けてなり、該物品振り分け部材の物品搬送方向に沿う各位置の断面を物品搬送方向の上流側から下流側に向けて次第に膨大化してなるものにした。これにより、窪み部を外周に有する物品を固定床や移動床の床長さ方向に分散させて搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は実施例1の物品整列装置による物品整列時における移動床の上昇状態を示す模式図である。
【図2】図2は実施例1の物品整列装置による物品整列時における移動床の下降状態を示す模式図である。
【図3】図3は物品整列装置の昇降駆動機構を示す模式図である。
【図4】図4は物品整列装置の固定床と移動床の上り配置を示す模式図である。
【図5】図5は物品整列装置の固定床と移動床の下り勾配を示す模式図である。
【図6】図6は物品整列装置の固定床と移動床の水平配置を示す模式図である。
【図7】図7は物品振り分け部材を設けた移動床又は固定床を示す模式図である。
【図8】図8は物品振り分け部材の形態を示す模式図である。
【図9】図9はトリガーポンプキャップを示す模式図である。
【図10】図10はトリガーポンプキャップの他の例を示す模式図である。
【図11】図11はプッシュ式ポンプキャップを示す模式図である。
【図12】図12は振り分け部材と物品を示す模式図である。
【図13】図13は振り分け部材による物品の振り分け動作を示す模式図である。
【図14】図14は物品の窪み部を示す模式図である。
【図15】図15は物品引掛け部材を設けた物品整列装置を示す模式図である。
【図16】図16は物品整列装置による物品整列動作を示す模式図である。
【図17】図17は振り分け部材の変形例を示す模式図である。
【図18】図18は振り分け部材の他の変形例を示す模式図である。
【図19】図19は物品の他の例を示す模式図である。
【図20】図20は物品整列装置による物品整列動作を示す模式図である。
【図21】図21は物品の他の例を示す模式図である。
【図22】図22は物品整列装置による物品整列動作を示す模式図である。
【図23】図23は物品の他の例を示す模式図である。
【図24】図24は実施例2の物品整列装置を示す模式図である。
【図25】図25は物品整列装置による物品整列動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)(図1〜図23)
物品整列装置10は、窪み部1A等を外周に有する物品1を搬送しつつ整列させるものであり、例えば、図9〜図11に示す如く、キャップヘッドからなる本体部2と、チューブからなる脚部3とを有し、本体部2の太径部に対して脚部3の細径部がなす段差状の窪み部1Aを有するキャップについて、それら物品1を物品整列装置10の固定床20や移動床30の床長さ方向に分散させて搬送し、更にはその本体部2を頭部2Aが胴部2Bよりも物品搬送方向に沿って先行する一定の長手向きに整列して送り出し可能にする。物品1は、本体部2の頭部2Aが胴部2Bに対してなす段差状の窪み部1B(図9〜11)や本体部2自身が有する窪み部1D(図9、図10)を有するとともに、本体部2の下部2Cが胴部2Bに対してなす段差状の窪み部1C(図11)も有する。物品1において、脚部3の例として、樹脂又は金属等からなる筒や細管が挙げられる。脚部3の太さの例として、直径3〜15mmの管がある。脚部3の形状として、直線のもの、曲線のもの、屈曲部を有するもの、それらの組合せといったものがある。脚部3は本体部2に比して重量が小さい。例えば、トリガーポンプキャップ1の場合、脚部3の重量は本体部2の重量の1/15程度であり、プッシュ式ポンプキャップ1の場合、脚部3の重量は本体部2の重量の1/8程度である。通常の物品整列装置では、図9〜図11の太矢印部が特許文献3の整列ガイド等に引掛かり、振り分け、搬送が困難になる。
【0016】
図9〜図11は、物品整列装置10により整列搬送処理するに好適な各種チューブ付キャップを示すものである。図9(A)〜(C)は、くの字状硬質チューブをもつトリガーポンプキャップ1、図10(A)、(B)は軟質チューブをもつトリガーポンプキャップ1、図11(A)、(B)は硬質管と軟質管をもつプッシュ式ポンプキャップ1を示す。トリガーポンプキャップ1は樹脂等からなり、液体を噴霧する。プッシュ式ポンプキャップ1は樹脂等からなり、液体を定量吐出する。尚、本発明によって整列搬送処理できる物品1はチューブ付キャップに限定されない。
【0017】
物品整列装置10は、図1、図2に示す如く、架台11の一端側から他端側に向かう方向を物品1(本実施例ではチューブ付キャップとする)の物品搬送方向とし、その一端側に入口シュート12を設け、入口シュート12の裏面に搬送力を高めるため、バイブレータ(不図示)を装備しても良い。入口シュート12への物品1の供給は、物品1を貯めたホッパー下部からでも良いし、ベルトコンベアでも良い。また、入口シュート12がベルトコンベアであっても良い。
【0018】
物品整列装置10は、架台11に設けた支持部材に複数の固定床20を支持する。また、物品整列装置10は、架台11に支持した昇降駆動装置13(図3)に、複数の移動床30を担持する。物品整列装置10は、複数の移動床30の各個を各固定床20に対して搬送方向の側傍(本実施例では上流側と下流側の側傍)に隣接配置する。固定床20と移動床30は一定の間隔を介して搬送方向に沿って交互に配置されるものになる。尚、固定床20と移動床30を床長さ方向の両側から挟む架台11の両側には側板14が備え付けられ、物品1の落下を防止している(図1、図2では片側のみ表示)。
【0019】
物品整列装置10において、固定床20は、図3に示す如く、それ自体で、搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する傾斜角度η1)をなすように傾斜した下り勾配床面21を備える。各固定床20にバイブレータを装備し、搬送力を高めても良い。また、移動床30は、図3に示す如く、それ自体で、搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する傾斜角度η2)をなすように傾斜した下り勾配床面31を備える。尚、図3は移動床30の昇降動作中で上昇途中の状態、又は下降途中の状態を示している。
【0020】
物品整列装置10は、図4に示す如く、複数の固定床20の各個の下り勾配床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて上り勾配(水平に対する配置角度θ1)をなすように配置するとともに、複数の移動床30の各個の下り勾配床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて上り勾配(水平に対する配置角度θ2)をなすように配置している。
【0021】
物品整列装置10は、昇降駆動装置13により各移動床30の昇降動作を繰り返す。即ち、各移動床30をそれらの下り勾配床面31が隣接する各固定床20の下り勾配床面21に対する上位(図1)と下位(図2)に位置付ける昇降動作を繰り返す。昇降駆動装置13は、昇降速度や昇降ストロークを変更制御できる電動シリンダを用いることができる。昇降駆動装置13は、電動モータの回転を直線往復運動に変換する機構、又は空圧シリンダ等でも良い。尚、図4のSは移動床30の昇降ストロークを示す。
【0022】
以下、物品整列装置10の各部の構造について詳述する。
(移動床30の上昇動作)
移動床30の床面31の最下部が、その下流の固定床20の床面21の最上部を越えるところまで上昇する。
【0023】
移動床30はこれ以上に上昇しても良いが、時間の無駄となり、処理能力が低下する。上昇位置において一時停止すると、移動床30から下流の固定床20へと、物品1が確実に送られる。物品1の挙動に応じて、一時停止時間は、無しとすることもあれば、適切に調整された停止時間を設けることもある。
【0024】
(移動床30の下降動作)
移動床30の床面31の最上部が、その上流の固定床20の床面21の最下部を越えるところまで下降する。
【0025】
移動床30はこれ以上に下降しても良いが、時間の無駄となり、処理能力が低下する。下降位置において一時停止すると、移動床30へと上流の固定床20から、物品1が確実に送られる。物品1の挙動に応じて、一時停止時間は、無しとすることもあれば、適切に調整された停止時間を設けることもある。
【0026】
移動床30の下り勾配床面31の最上部と最下部は、移動床30の下り勾配床面31上の物品1が下流側の固定床20の下り勾配床面21上へ移動するように、また上流の固定床20の下り勾配床面21上の物品1が下流側の移動床30の下り勾配床面31上へ移動するように、適宜調整される。
【0027】
物品整列装置10において、固定床20、移動床30の各床面21、31の床面幅の好適値は以下の通りである(図3)。尚、物品最小幅とは物品1を天面の側から見た面の最小寸法をいい、物品高さとは物品1における天面に直交する縦長方向の全長をいう。図9〜図11、図19、図21、図23に示すように、物品サイズM1とは、移動床30又は固定床20に対する下流側の壁面50(移動床30の下流側に位置する固定床20の垂直壁面50、又は固定床20の下流側に位置する移動床30の垂直壁面50、図1、図2参照)に物品1が停止した際、床長さ方向に沿う物品本体部2の長さをいう。尚、物品サイズM1は、物品本体部2の長さのうち、移動床面31や固定床面21と概ね接触する部分となる。例えば、図11に示す如く、物品本体部2であっても、本体部2の胴部2Bより細くなっている本体部2の下部2Cは、床面とほとんど接しないので物品サイズM1に含まれない。物品サイズM2とは、移動床30又は固定床20に対する下流側の壁面50に物品が停止した際、床長さ方向と直交する方向、即ち、物品1の搬送方向の物品本体部2の長さをいう。図9(B)、(C)に示す如く、移動床30又は固定床20に対する下流側の壁面50に、物品1が停止する方向は1通りとは限らないので、物品1のサイズM1、M2は、確率的に定められる。つまり、以下で示す物品1のサイズM1、M2と物品整列装置10の各部寸法との好適範囲の関係は、物品1が移動床30又は固定床20に対する下流側の壁面50にて停止する確率の高い方向にて選択すれば良い。
【0028】
(固定床20、移動床30の構造)
固定床20、移動床30は、中実部と板状部を組み合せた構造としても良いし、中実構造としても良いし、また、板材の曲げ加工に構造とする等、特に限定されるものではない。材質についても、樹脂、金属、木材、ゴム等、また、これらを組み合せたもの等、特に限定されない。
【0029】
(固定床20、移動床30の床面長さ)
固定床20、移動床30の物品搬送方向に直交する方向に沿う床長さは、物品高さの1.0倍を超えることが望ましい。1.0倍を超えることにより、物品1を上記各床に縦長の物品1を横向きにすることができる。上記各床の床長さを物品高さの2.0倍を超えるようにすることで、物品整列装置10の処理能力を高めることができる。
【0030】
(固定床20の床面21の床面幅v1)
固定床20の床面21の床面幅v1は、物品最小幅又は物品サイズM2の大きいほうの0.65倍以上が好ましい。0.65倍以上とすることで、寝転がった物品を確実に固定床20の床面21の上に保持することができる。固定床20の床面21の床面幅v1は、物品サイズM2の1.8倍以下が好ましい。1.8倍以下とすることで、1つの固定床20の床面21の同じ位置に、寝転がった2つ以上の物品が同時に載ることを防止できる。
【0031】
(移動床30の床面31の床面幅v2)
移動床30の床面31の床面幅v2は、物品最小幅又は物品サイズM2の大きいほうの0.65倍以上が好ましい。0.65倍以上とすることで、物品を確実に上昇させることができる。移動床30の床面31の床面幅v2は、物品サイズM2の1.8倍以下が好ましい。1.8倍以下とすることで、1つの移動床30の床面31の同じ位置に、寝転がった2つ以上の物品が同時に載ることを防止できる。
【0032】
物品整列装置10において、固定床20、移動床30の各床面21、31の傾斜角度の好適値は以下の通りである(図3)。
【0033】
(固定床20の床面21の傾斜角度η1)
固定床20の床面21が水平面に対してなす傾斜角度η1は、15度から40度が好ましく、特に好ましくは18度から32度である。15度以上とすることで、物品は固定床20の床面21上で下流へとスムースに滑ることが可能である。また、40度以下とすることで移動床30の昇降ストロークを小さくすることが可能であり、物品搬送処理能力を高能力にできる。
【0034】
(移動床30の床面31の傾斜角度η2)
移動床30の床面31が水平面に対してなす傾斜角度η2も、固定床20の床面21が水平面に対してなす傾斜角度η1におけると同一理由で、15度から40度が好ましく、特に好ましくは18度から32度である。
【0035】
(固定床20と移動床30の傾斜角度η1、η2の関係)
移動床30の床面31が水平面となす傾斜角度η2は、固定床20の床面21が水平面となす傾斜角度η1と同等(図3)、又は大きくすることが好ましい。η1よりもη2を好ましくは10〜25度大きくすると良い。角度を大きくすることで、特に、断面形状が円形や正多角形でない楕円状、長円状、長方形状等の長手部を有す形状の物品を扱う際に、移動床30が上昇時、物品1の長手部は移動床30の床面31が水平面となす傾斜角度η2に合せて、下流方向により傾斜した状態となり、物品1を確実に下流の固定床20に送り込むことが可能になる。
【0036】
物品整列装置10において、固定床20、移動床30の上り勾配の配置角度の好適値は以下の通りである(図4)。
【0037】
(固定床20の配置角度θ1)
固定床20の配置角度θ1は、水平面に対して、20〜40度とされ、好ましくは24度から36度とされる。20度以上とすることで適切に固定床20や移動床30に載らなかった物品を上流に滑り落とすことが可能になる。逆に40度以下とすることで上下動ストロークを小さくすることができ、高能力で物品の処理が可能になる。
【0038】
(移動床30の配置角度θ2)
移動床30の配置角度θ2も、固定床20の配置角度θ1におけると同一理由で、水平面に対して20〜40度とされ、好ましくは24度から36度とされる。
【0039】
(固定床20と移動床30の配置角度θ1、θ2の関係)
固定床20の配置角度θ1と、移動床30の配置角度θ2は概ね同一とすることが好ましい。この値を概ね同一とすることで、上流と下流の各移動床30により物品を下流に送るための昇降ストロークを最小にすることができ、物品搬送処理能力を高能力にできる。
【0040】
尚、物品整列装置10は、図5に示す如く、複数の固定床20の各個の下り勾配床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する配置角度θ1)をなすように配置するとともに、複数の移動床30の各個の床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて下り勾配(水平に対する配置角度θ2)をなすように配置しても良い。固定床20の配置角度θ1は、水平面に対して、10〜40度とされ、好ましくは15〜25度とされる。10度以上とすることで適切に固定床20や移動床30に載らなかった物品を上流に落とすことが可能になり、更に、上下動ストロークを小さくすることができるので高能力で物品の処理が可能になる。逆に40度以下とすることで、物品の上流方向への移動速度が速くなりすぎることを抑制できる。移動床30の配置角度θ2も、固定床20の配置角度θ1におけると同一理由で、水平面に対して10〜40度とされ、好ましくは15〜25度とされる。固定床20の配置角度θ1と、移動床30の配置角度θ2は概ね同一とすることが好ましい。この値を概ね同一とすることで、上流と下流の各移動床30により物品を下流に送るための昇降ストロークを最小にすることができ、物品搬送処理能力を高能力にできる。複数の固定床20と移動床30を下り勾配配置することにより、上り勾配配置(図4)したものに比して、固定床20の床面21と移動床30の床面31とが同様の下り勾配をなすことから、昇降駆動装置13が移動床30に付与すべき昇降ストロークが小さくなり、昇降サイクルタイムを短縮できる。
【0041】
また、物品整列装置10は、図6に示す如く、複数の固定床20の各個の床面21を互いに搬送方向の下流側に向けて水平をなすように配置するとともに、複数の移動床30の各個の床面31を互いに搬送方向の下流側に向けて水平をなすように配置しても良い。複数の固定床20と移動床30を水平配置することにより、上り勾配配置(図4)したものに比して、固定床20の床面21と移動床30の床面31の配置角度が下り勾配に近くなるから、昇降駆動装置13が移動床30に付与すべき昇降ストロークがやや小さくなり、昇降サイクルタイムをやや短縮できる。
【0042】
物品整列装置10によれば、昇降駆動装置13による移動床30の上昇により、移動床30の床面31が固定床20の床面21上にある物品1を突き上げると、移動床30の床面31自体の傾斜が物品1に下流側への搬送力を付与する。搬送力を付与された物品1は、移動床30の床面31から、下流側の搬送方向に沿って下り勾配をなす固定床20の床面21上に移載され、固定床20の床面21自体の傾斜に載って滑り、下流側へと搬送される。このとき、固定床20の床面21、移動床30の床面31が互いに下流側へ向けて上り勾配をなすように配置されているとき、物品1はこの上り勾配の搬送経路に沿って順に下流側の床面21、31に持ち上げられるように搬送され、最下流の移動床30の床面31から出口固定床20を経て排出コンベア100等に送り出される。
【0043】
尚、物品整列装置10は、移動床30の昇降動作の1サイクル(最下降位置〜最上昇位置〜最下降位置の1サイクル)において、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間割合を、該固定床20の床面21より下に没入している時間割合より小さく制御することができる。これにより、物品1を移動床30の床面31より突き上げている時間より、物品1を固定床20の床面21に載せて滑らせる時間のほうが長くなり、物品1の排出量を増加できる。
【0044】
尚、移動床30の上昇加速度が大きい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が大きく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が大きくなり、物品1の排出量を増加できる。
【0045】
また、物品整列装置10は、移動床30の昇降動作の1サイクルにおいて、移動床30の床面31が隣接する固定床20の床面21より上に突出している時間割合を、該固定床20の床面21より下に没入している時間割合より大きく制御することもできる。これにより、物品1を移動床30の床面31により突き上げている時間より、物品1を固定床20の床面21に載せて滑らせる時間のほうが短くなり、物品1の排出量を低減できる。
【0046】
尚、移動床30の上昇加速度が小さい場合には、移動床30の床面31が物品1に及ぼす突き上げ力が小さく、ひいては移動床30の床面31の傾斜が物品1に及ぼす搬送力が小さくなり、物品1の排出量を低減できる。
【0047】
また、移動床30の上昇速度の最大値は、搬送物品の重さや固定床配置角度θ1や移動床配置角度θ2等によって、物品1を所望の速度で安定搬送できるように適宜調整される。
【0048】
しかるに、物品整列装置10にあっては、物品1を固定床20や移動床30の床長さ方向に分散させて搬送し、更にはその本体部2を頭部2Aが胴部2Bよりも物品搬送方向に沿って先行する一定の長手向きに整列して搬送可能にするように、以下の構成を具備する。
【0049】
物品整列装置10は、図1、図2に示す如く、少なくとも一部の固定床20又は移動床30の下り勾配床面21、31上に、1個以上の物品振り分け部材22、32を設ける。本実施例では、固定床20又は移動床30の下り勾配床面21、31上の床長さ方向に沿う複数位置に、複数の物品振り分け部材22、32を設けている。固定床20又は移動床30の物品振り分け部材22、32は、図7、図8に示す如く、下り勾配床面21、31上で物品搬送方向(床面21、31の下り勾配方向)に沿う各位置の断面A1、A2…Ai(図8)を、物品搬送方向の上流側から下流側に向けて次第に膨大化してなり、固定床20又は移動床30により搬送される物品1をそれらの床長さ方向に振り分けし、分散する。
【0050】
物品振り分け部材22、32は、固定床20と移動床30の一方、又は固定床20と移動床30の双方に設けられる。物品1は、昇降駆動装置13による移動床30の昇降により、移動床30又は固定床20の下り勾配床面21、31を移動するとき、物品1の窪み部1Aを除く部分(本体部2)が物品振り分け部材22、32の断面膨大部(稜線部22A、32A)に干渉しない部分(谷部23、33)に納まってこの谷部23、33を通過し、物品1の窪み部1Aが物品振り分け部材22、32の断面膨大部を通過する。物品1は固定床20又は移動床30の物品振り分け部材22、23に引掛かることがないから、それらの床面21、31上で詰まりを起こすことなく、搬送量を低減することがない。特に、物品振り分け部材22、32は、物品整列装置10の下流側に位置する固定床20又は移動床30に設ける方が、物品整列装置10の最下流の排出コンベア100への出口まで、物品1を確実にその床長さ方向に分散できる。
【0051】
物品整列装置10の最上流の固定床20や移動床30には物品振り分け部材22、32を設けない方が好ましい。これにより、まずは入口シュート12の物品1を大量に下流の固定床20や移動床30に送り込み、それらの大量の物品1を下流の固定床20や移動床30に設けた物品振り分け部材22、32により床長さ方向に分散して搬送できる。
【0052】
固定床20又は移動床30の下り勾配床面21、31上における物品振り分け部材22、32の配置(ピッチPや間隔K)(図7)、大きさの設定により、物品1をそれらの床長さ方向にて適宜の間隔に振り分けできる。物品振り分け部材22、32を有する全ての固定床20、移動床30で、物品振り分け部材22、32の配置、大きさを同一にするとき、物品1を安定的に分散して搬送できる。物品振り分け部材22、32の配置ピッチPは、物品1のみを相隣る物品振り分け部材22の間の谷部23、又は相隣る物品振り分け部材32の間の谷部33に納めることができるように、物品1の物品サイズM1(図9〜図11)未満とすることが好ましい。床面21、31上で相隣る物品振り分け部材22、32の間隔(谷部23、33の幅)Kは、物品サイズM1の20〜50%程度とするとき、物品1が固定床20、移動床30の相隣る物品振り分け部材22の間、又は相隣る物品振り分け部材32の間の床面21、31上を下流に向かう直進方向に転がり易く、安定して搬送できる。
【0053】
物品振り分け部材22、32の形態は、固定床20、移動床30の床長さ方向に直交する面上で、物品搬送方向に沿う方向に延在され、床面21、31の上流側から角度α(図8)をなして立上がる1本の直線状稜線部22A、32A(床面21、31上に設けた物品振り分け部材22、32の物品搬送方向に沿う各位置の断面A1、A2…Aiの、該床面21、31に対する最上位点を結んだ稜線部22A、32A)を有するとともに、固定床20、移動床30の床面視で稜線部22A、32Aの両側の床面21、31上に位置して互いに角度β(図8)をなして交差する2本の直線状底線部22B、32Bを有する。このとき、物品振り分け部材22は、稜線部22Aの両側に、稜線部22Aと各底線部22Bとに区画される2個の三角形状の振り分け面22Fを形成し、床面21と両振り分け面22Fと下流側に臨む三角形状背面とからなり、1本の稜線部22Aと2本の底線部22Bが交差して形成する三角錘状の四面体を構成する。また、物品振り分け部材32は、稜線部32Aの両側に、稜線部32Aと各底線部32Bとに区画される2個の三角形状の振り分け面32Fを形成し、床面31と両振り分け面32Fと下流側に臨む三角形状背面とからなり、1本の稜線部32Aと2本の底線部32Bが交差して形成する三角錘状の四面体を構成する。これにより、物品振り分け部材22、32の形態は、前述の如く、床面21、31上で物品搬送方向(床面21、31の下り勾配方向)に沿う各位置の三角形状断面A1、A2…Ai(図8)を、物品搬送方向の上流側から下流側に向けて次第に膨大化してなるものになる。
【0054】
尚、図1、図2に示した物品整列装置10において、固定床20の床長さ方向の両端部に位置する物品振り分け部材22(移動床30の床長さ方向の両端部に位置する物品振り分け部材32も同じ)は、上述した両振り分け面22Fを有する三角錘状の四面体を稜線部22Aにおいて半割りした2分割体の一方からなり、稜線部22Aの一側にだけ振り分け面22Fを有する。
【0055】
四面体の物品振り分け部材22、32は、中実体でも良く、又は板の貼り合せ等かなる中空体でも良い。中空四面体の物品振り分け部材22、32にあっては、三角形状背面は実体がなくても良い。物品振り分け部材22、32の構成材は特に限定されないが、表面の摩擦係数が小さく、物品1の滑りを良とすることが好ましい。物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aは、物品1をキズつけることがないように鋭利でないことが好ましく、狭幅平面状の面取りが施され、又はアール面を付与される。
【0056】
固定床20、移動床30において、物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aが床面21、31に対してなす角度αは、上流側から移動してくる物品1がこれに引掛かる等、物品1の搬送を阻害しないように、5〜35度程度が好ましい。
【0057】
固定床20、移動床30において、物品振り分け部材22、32の床面21、31上に設けられる両側の底線部22B、32Bの交差角度βは、物品1を相隣る物品振り分け部材22の間の谷部23、又は相隣る物品振り分け部材32の間の谷部33に導入できるように、110〜160度程度が好ましい。
【0058】
固定床20、移動床30において、図14(A)〜(F)に示す如く物品1が載置面51(固定床20の床面21、又は移動床30の床面31)に安定して載置される方向で、物品1が物品振り分け部材22、32に接触しつつ通過する際、物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aが床面21、31に対する最高位の高さt(図8)は、物品1の窪み部1A(図9〜図11)(本体部2の太径部に対して脚部3の細径部がなす段差状の窪み部1A)を形成する外面(物品1の脚部3)、窪み部1B(図9〜図11)(本体部2の頭部2Aが胴部2Bに対してなす段差状の窪み部1B)を形成する外面、窪み部1C(図11)(本体部2の下部2Cが胴部2Bに対してなす段差状の窪み部1C)を形成する外面、窪み部1D(図9、図10、図21、図23)(物品自身が有する窪み部1D)を形成する外面、窪み部1E(図19)(長手方向の両端部を大径部とし、両大径部に挟まれる中間部を小径部とし、両大径部に対して小径部がなす段差状の窪み部1E)を形成する外面等が、物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aに引掛かることのないように、窪み部1A、1B、1C、1D、1Eを構成する部材の載置面51からの窪み部高さR(図14(A)〜(F)の1AR、1BR、1CR、1DR、1ER)と同等以下、好ましくはRの70%未満とする。窪み部1A、1B、1C、1D、1Eのうち、窪み部高さRが大きくても、実際に引っ掛かることがない窪み部や、物品の形状によっては存在しない窪み部は、上記の最高位の高さtの好適条件から除外する。これにより、図12、図13に示す如く、物品1の脚部3等の窪み部を形成する外面は物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aに引掛かることがなく、物品1の本体部2だけが物品振り分け部材22、32の谷部23、33に導入されて納まる。
【0059】
更に、物品整列装置10にあっては、図15に示す如く、物品振り分け部材22、32を設けた固定床20又は移動床30の下流側に設けられる移動床30又は固定床20であって、物品搬送方向の最下流の移動床30又は固定床20に、棒状や板状等の物品引掛け部材40を設けている。本実施例では、物品振り分け部材32を設けた移動床30の下流側に設けられる固定床20であって、物品搬送方向の最下流の固定床20の床面21上の床長さ方向に沿う複数位置に、矩形断面の板状をなす複数の物品引掛け部材40を設けている。そして、固定床20に設けた各物品引掛け部材40は、上流側の移動床30に設けた各物品振り分け部材32に対し、物品搬送方向に直交する方向(固定床20、移動床30の床長さ方向)の概ね同一位置に配置される。換言すれば、上流側の移動床30に設けた各物品振り分け部材32のそれぞれと、固定床20に設けた物品引掛け部材40のそれぞれとは、物品搬送方向に沿う同一直線上に配置される。上流側の移動床30に設けた物品振り分け部材32によりそれらの床長さ方向に分散されて搬送されてくる物品1が、本体部2と細長い脚部3とを有し、本体部2の太径部に対して脚部3の細径部がなす段差状の窪み部1Aを外周に有する物品1であるとき、物品1の脚部3が最下流の固定床20に設けた板状の物品引掛け部材40に一時的に引掛かってその通過を遮断する結果、その本体部2だけが物品引掛け部材40に引掛からずに先行して送り出される。物品引掛け部材40が設けられる固定床20は、物品整列装置10の出口の排出シュートを構成するものでも良い。
【0060】
尚、物品引掛け部材40は、矩形断面等の板状や、矩形断面又は円形断面等の棒状等の形をなし、その下流側からみた幅が物品1の物品サイズに対して小さいものが、相隣る物品引掛け部材40の間における物品1の通過を容易にして好ましい。また、物品引掛け部材40の床面21(又は31)からの高さは、物品1が固定床20又は移動床30の床面21、31上に安定的に載置されたときの物品高さの1.5倍程度以上にすることで、物品1の脚部3が物品引掛け部材40に確実に引掛かるものになる。
【0061】
しかるに、物品整列装置10にあっては、固定床20、移動床30に物品振り分け部材22、32を設け、最下流の固定床20に物品引掛け部材40を設けたから、入口シュート12の側から供給される物品1を搬送しつつ以下の如くに整列処理できる(図16)。
【0062】
(1)物品1は本体部2に脚部3を有し、入口シュート12からランダムな姿勢で供給される。物品1は、移動床30の昇降により下流側の固定床20、移動床30に搬送され、それらの本体部2が下流側の固定床20、移動床30に設けた相隣る物品振り分け部材22の間の谷部23、又は相隣る物品振り分け部材32の間の谷部33に納まるように、それらの床長さ方向に分散される。
【0063】
(2)上述(1)の物品1が物品振り分け部材32を備える移動床30の上昇により最下流の固定床20の側に移動したとき、物品1の脚部3が最下流の固定床20に設けてある物品引掛け部材40に引掛かり、物品1の本体部2が先行するように整列される。
【0064】
尚、物品引掛け部材40が最下流の移動床30に設けられている場合には、物品1が物品引掛け部材40を備える最下流の移動床30の下降により、上流側の固定床20から最下流の移動床30の側に移動するとき、物品1の脚部3が最下流の移動床30に設けてある物品引掛け部材40に引掛かり、物品1の本体部2が先行するように整列される。
【0065】
(3)上述(2)の物品1が最下流の固定床20の床面21上を滑り落ちるにつれ、物品1の本体部2が完全に先行する。続いて、物品整列装置10の出口に、物品整列装置10の物品搬送方向と直交する方向を排出方向にする排出コンベア100が設置されているとき、物品1の本体部2が排出コンベア100のコンベア面に接する。
【0066】
(4)上述(3)の物品1の本体部2が排出コンベア100のコンベア面の摩擦力により排出方向に引張られ、物品1の本体部2が先行する一列状の並列がなされる。
【0067】
図17は物品振り分け部材22(物品振り分け部材32も同じ)の変形例を示す。この変形例の物品振り分け部材22は、図8に示した物品振り分け部材22の三角錘状の四面体の上流側に臨む三角錘の頂部を裁断し、裁断部22Cを形成したものである。固定床20の床面21上に、大型の物品振り分け部材22を設けたいときに好適になる。裁断部22Cの高さ(裁断部22Cの面内で床面21〜稜線部22Aの高さ)は、物品1の窪み部1A、1B、1C、1D、1Eを構成する部材の載置面51からの窪み部高さR(図14(A)〜(F)の1AR、1BR、1CR、1DR、1ER)未満、好ましくはRの50%未満とする。窪み部1A、1B、1C、1D、1Eのうち、窪み部高さRが大きくても、実際に物品振り分け部材22、32の稜線部22Aに引っ掛かることがない窪み部や、物品1の形状によっては存在しない窪み部は、上記の裁断部22Cの高さの好適条件から除外する。
【0068】
図18は物品振り分け部材22(物品振り分け部材32も同じ)の変形例を示す。この変形例の物品振り分け部材22は、図8に示した物品振り分け部材22の2個の振り分け面22Fを単一の円弧状曲面からなる振り分け面22Rとし、振り分け面22Rの床長さ方向に沿う中央部に1本の直線状稜線部22Aを設け、振り分け面22Rが両側で床面21と交差する交差線を2本の直線状底線部22Bとしたものである。物品振り分け部材22は、床面21上で物品搬送方向(床面21の下り勾配方向)に沿う各位置の円弧状断面A1、A2…Aiを、物品搬送方向の上流側から下流側に向けて次第に膨大化してなり、固定床20により搬送される物品1をそれらの床長さ方向に振り分けし、分散するものになる。尚、図18では物品振り分け部材22の上流側に臨む頂部を裁断した裁断部22Cとしているが、物品振り分け部材22の頂部を必ずしも裁断することを要しない。裁断部22Cの高さ(裁断部22Cの面内で床面21〜稜線部22Aの高さ)は、物品1の窪み部1A、1B、1C、1D、1Eを構成する部材の載置面51からの窪み部高さR(図14(A)〜(F)の1AR、1BR、1CR、1DR、1ER)未満、好ましくはRの50%未満とする。窪み部1A、1B、1C、1D、1Eのうち、窪み部高さRが大きくても、物品振り分け部材22の稜線部22Aに実際に引っ掛かることがない窪み部や、物品1の形状によっては存在しない窪み部は、上記の裁断部22Cの高さの好適条件から除外する。
【0069】
図19(A)〜(C)は物品整列装置10により整列処理される他の物品1を示す。物品1は、長手方向の両端部を大径部とし、両大径部に挟まれる中間部を小径部とし、両大径部に対して小径部がなす段差状の窪み部1Eを有する。M1、M2は物品サイズを示す。通常の物品整列装置では、図19の太矢印部が特許文献3の整列ガイド等に引掛かり、振り分け、搬送が困難になる。
【0070】
物品整列装置10は、図19の物品1に対し、図20に示す如くに整列処理する。即ち、入口シュート12からランダムな姿勢で供給された物品1は、移動床30の昇降により下流側の固定床20、移動床30に搬送され、それらの固定床20、移動床30の物品振り分け部材22、32の振り分け面22F、32Fに投入される。物品1は物品振り分け部材22、32の振り分け面22F、32Fから滑り落ちるとき、両側の物品振り分け部材22の相対する振り分け面22F又は両側の物品振り分け部材32の相対する振り分け面32Fから床長さ方向に沿う概ね同等の力を受け、両側の物品振り分け部材22の間の谷部23又は両側の物品振り分け部材32の間の谷部33に納まるようにそれらの床長さ方向に分散されながら、下流側の移動床30、固定床20に搬送される。図20にPで示す如くに、物品1の窪み部1Eが物品振り分け部材32の真上に一致する場合にも、物品1は移動床30の上昇時に物品振り分け部材32の稜線部32A上で不安定になり、その床長さ方向に滑って両側の物品振り分け部材32の間の谷部33に納まるように変位する。
【0071】
図21(A)〜(C)は物品整列装置10により整列処理される他の物品1を示す。物品1は、外周の四面の各面内に陥凹状の物品自身が有する窪み部1Dを有する。M1、M2は物品サイズを示す。通常の物品整列装置では、図21の太矢印部が特許文献3の整列ガイド等に引掛かり、振り分け、搬送が困難になる。
【0072】
物品整列装置10は、図21の物品1に対し、図22に示す如くに整列処理する。即ち、入口シュート12からランダムな姿勢で供給された物品1は、移動床30の昇降により下流側の固定床20、移動床30に搬送され、それらの固定床20、移動床30の物品振り分け部材22、32の振り分け面22F、32Fに投入される。物品1は物品振り分け部材22、32の振り分け面22F、32Fから滑り落ちるとき、両側の物品振り分け部材22の相対する振り分け面22F又は両側の物品振り分け部材32の相対する振り分け面32Fから床長さ方向に沿う概ね同等の力を受け、両側の物品振り分け部材22の間の谷部23又は両側の物品振り分け部材32の間の谷部33に納まるようにそれらの床長さ方向に分散されながら、下流側の移動床30、固定床20に搬送される。物品1の窪み部1Dが物品振り分け部材32の真上に一致する場合にも、物品1は移動床30の上昇時に物品振り分け部材32の稜線部32A上で不安定になり、その床長さ方向に滑って両側の物品振り分け部材32の間の谷部33に納まるように変位する。
【0073】
図23(A)〜(C)は物品整列装置10により整列処理される他の物品1を示す。物品1は、星形をなす外周に5個の物品自身が有する窪み部1Dを有する。M1、M2は物品サイズを示す。通常の物品整列装置では、図23の太矢印部が特許文献3の整列ガイド等に引掛かり、振り分け、搬送が困難になる。
【0074】
本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施例では、少なくとも一部の移動床30又は固定床20の床面上に物品振り分け部材22、32を設けてなり、該物品振り分け部材22、32の物品搬送方向に沿う各位置の断面を物品搬送方向の上流側から下流側に向けて次第に膨大化した。物品1が移動床30又は固定床20の下り勾配床面21、31を移動するとき、物品1の窪み部1Aを除く部分(本体部2)が物品振り分け部材22、32の断面膨大部(稜線部22A、32A)に干渉しない部分(谷部23、33)に納まってこの谷部23、33を通過し、物品1の窪み部1Aが物品振り分け部材22、32の断面膨大部を通過する。これにより、移動床30又は固定床20の下り勾配床面21、31上で床長さ方向に沿う複数位置のそれぞれに物品振り分け部材22、32を設けるものとすれば、複数の物品1をそれら複数の物品振り分け部材22、32の間に通過させ、結果としてそれらの床長さ方向に分散して搬送できる。
【0075】
また、物品振り分け部材22、32を設けた移動床30又は固定床20の下流側に設けられる固定床20又は移動床30であって、物品搬送方向の最下流の固定床20又は移動床30に、棒状や板状等の物品引掛け部材40を設けた。上流側の移動床30又は固定床20に設けた物品振り分け部材22、32によりそれらの床長さ方向に分散されて搬送されてくる物品1が、本体部2と細長い脚部3とを有し、本体部2の太径部に対して脚部3の細径部がなす段差状の窪み部1Aを外周に有する物品1であるとき、物品1の脚部3が最下流の固定床20又は移動床30に設けた棒状や板状等の物品引掛け部材40に一時的に引掛かってその通過を遮断する。結果、その本体部2だけが物品引掛け部材40に引掛からずに先行するものになる。これにより、物品1の本体部2を脚部3よりも先行する一定の方向に整列して搬送できる。
【0076】
また、最下流の固定床20又は移動床30に設けられる物品引掛け部材40が、上流側の移動床30又は固定床20に設けた物品振り分け部材22、32に対し、物品搬送方向に直交する方向の概ね同一位置に配置される。物品1の本体部2が上流側の移動床30又は固定床20における物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aに干渉しない部分(谷部23、33)を通過してくるとき、それらの谷部23、33の下流側で、物品搬送方向に沿う方向には物品引掛け部材40が存在しないものになる。従って、物品1の本体部2は上流側の移動床30又は固定床20における複数の物品振り分け部材22、32の間を通過した後、下流側の固定床20又は移動床30に設けられる物品引掛け部材40に確実に引掛かることなく先行し続け、上述の如くに一定の方向に整列して搬送される。
【0077】
(実施例2)(図24、図25)
図24に示した物品整列装置10が、図1、図2に示した物品整列装置10と異なる点は、固定床20又は移動床30の床面21、31上に設けた物品振り分け部材22、32の物品搬送方向に沿う各位置の断面A1、A2…Aiの、該床面21、31に対する最上位点を結んだ稜線部22A、32Aの向きcを、物品搬送方向f1に対して角度γ1で傾斜させるように斜交配置したことにある。
【0078】
このような物品整列装置10にあっては、物品搬送方向に沿って上流側から移動してくる物品1は、窪み部1Aを除く部分(本体部2)の一部(胴部2B)が物品振り分け部材22、32の上記稜線部22A、32Aに当たると、その一部が該稜線部22A、32Aの抵抗を受けて一時的に制動される結果、その後の移動方向f2を稜線部22A、32Aに沿う方向cに対する逆方向にし、その残部(頭部2A)を先行させるように整列して搬送するものになる。
【0079】
1つの固定床20又は移動床30上の振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aの傾斜の向きcは全て同一とした方が、物品1が頭部2Aを先行させるように回転するときに、相隣る物品1の脚部3同士の干渉の機会を少なくして好ましい。各固定床20や移動床30の振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aの傾斜の向きcは、同一でも異なっていても良い。
【0080】
稜線部22A、32Aの向きcを傾斜させた振り分け部材22、32を有する固定床20又は移動床30は、前述した如くに稜線部22A、32Aが搬送方向に沿う方向に延在されていて傾斜していない通常の振り分け部材22、32の如くに、下流側に設けた方が好ましい。但し、物品1が固定床20又は移動床30の床面21、31上を移動中に頭部2Aが先行したとき、固定床20や移動床30の物品搬送方向に沿う長さが不十分な場合には、頭部2Aが先行した物品1を搬送できなくなる。このようなときには、最下流付近の固定床20や移動床30のみに、稜線部22A、32Aの向きcを傾けた振り分け部材22、32を設置すると良い。
【0081】
しかるに、物品整列装置10にあっては、固定床20、移動床30に設ける物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aの向きcを物品搬送方向f1に対して上述の如くに斜交配置したから、入口シュート12の側から供給される物品1を搬送しつつ以下の如くに整列処理できる(図25)。
【0082】
(1)物品1は本体部2に脚部3を有し、入口シュート12からランダムな姿勢で供給される。物品1は、移動床30の昇降により下流側の固定床20、移動床30に搬送され、それらの本体部2が下流側の固定床20、移動床30に設けた相隣る物品振り分け部材22の間の谷部23、又は相隣る物品振り分け部材32の間の谷部33に納まるように、それらの床長さ方向に分散される。
【0083】
物品1の頭部2Aは、稜線部22A、32Aが傾斜された物品振り分け部材22、32から抵抗を受けるため、物品1の頭部2Aの移動方向f2が、物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aの傾斜の向きcと逆方向に傾く。
【0084】
(2)頭部2Aが僅かに先行している物品1(図25のA)は、移動床30から固定床20への移動時(又は固定床20から移動床30への移動時)に、物品振り分け部材22、32からの抵抗がなくなり、重心のある頭部2Aが完全に先行するように回転する。図25では、物品整列装置10の出口で物品1の頭部2Aが先行する例を示しているが、物品1の頭部2Aが先行する状況は物品整列装置10の搬送途中でも生ずる。
【0085】
脚部3が僅かに先行している物品1(図25のB)は、頭部2Aの側に重心があり、頭部2Aが先行する回転を生じずに移動する。
【0086】
(3)物品1(図25のA)の頭部2Aが完全に先行する。物品整列装置10の出口に、物品整列装置10の物品搬送方向と直交する方向を排出方向にする排出コンベア100が設置されているとき、物品1(図25のA)の頭部2Aが排出コンベア100のコンベア面に接する。
【0087】
物品1(図25のB)は上述(2)のままの向きで、物品1(図25のB)の頭部2Aが排出コンベア100のコンベア面に接する。
【0088】
(4)排出コンベア100のコンベア面の摩擦力により、物品1(図25のA)の頭部2Aは引張られ、先行する。物品1(図25のB)は排出コンベア100のコンベア面上で既に頭部2Aを先行している。結果、物品1の頭部2Aが先行する一列状の整列がなされる。
【0089】
物品1の搬送方向f1と、物品1の頭部2Aの傾斜移動方向f2とがなす角度γ2は、物品1の実際の搬送方向を変更しつつも、物品1に付与する搬送力を失わないようにするため、10〜35度程度になると良い。従って、物品1の搬送方向f1と物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32Aの向きcとがなす角度γ1は5〜40度程度とすることが好ましい。
【0090】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
本実施例では、固定床20又は移動床30の下り勾配床面21、31に設けた物品振り分け部材22、32の稜線部22A、32A(断面膨大部)を、物品搬送方向f1に対して傾斜配置した。物品搬送方向f1に沿って上流側から移動してくる物品1は、窪み部1Aを除く部分(本体部2)の一部(胴部2B)が物品振り分け部材22、32の上記稜線部22A、32Aに当たると、その一部が該稜線部22A、32Aの抵抗を受けて一時的に制動される結果、その後の移動方向f2を稜線部22A、32Aに沿う方向cに対する逆方向にし、その残部(頭部2A)を先行させるものになる。これにより、物品1の本体部2をその頭部2Aが先行する一定の方向に整列して搬送できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、窪み部を外周に有する物品等を固定床や移動床の床長さ方向に分散させて搬送することができる。また、本発明によれば、本体部と細長い脚部とを有し、本体部の太径部に対して脚部の細径部がなす段差状の窪み部を外周に有する物品については、更に、その本体部を一定の方向に整列させて搬送することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 物品
1A 窪み部
10 物品整列装置
20 固定床
21 下り勾配床面
22 物品振り分け部材
22A 稜線部
30 移動床
31 下り勾配床面
32 物品振り分け部材
32A 稜線部
40 物品引掛け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送しつつ整列させる物品整列装置であって、
複数の固定床と移動床を物品搬送方向に沿って交互に配置するとともに、各固定床と各移動床が物品搬送方向の下流側に向けて下り勾配をなすように傾斜した下り勾配床面を備え、各移動床を同時にそれらの床面が隣接する固定床の床面に対する上位と下位に位置付ける昇降動作を繰り返し、
少なくとも一部の移動床又は固定床の床面上に物品振り分け部材を設けてなり、該物品振り分け部材の物品搬送方向に沿う各位置の断面を物品搬送方向の上流側から下流側に向けて次第に膨大化してなる物品整列装置。
【請求項2】
前記物品が窪み部を外周に有する物品である請求項1に記載の物品整列装置。
【請求項3】
前記床面上に設けた物品振り分け部材の物品搬送方向に沿う各位置の断面の該床面に対する最上位点を結んだ稜線を、物品搬送方向に対して斜交配置してなる請求項1又は2に記載の物品整列装置。
【請求項4】
前記物品振り分け部材を設けた移動床又は固定床の下流側に設けられる固定床又は移動床であって、物品搬送方向の最下流の固定床又は移動床に、物品引掛部材を設けてなる請求項1〜3のいずれかに記載の物品整列装置。
【請求項5】
前記最下流の固定床又は移動床に設けられる物品引掛部材が、上流側の移動床又は固定床に設けた物品振り分け部材に対し、物品搬送方向に直交する方向の概ね同一位置に配置されてなる請求項4に記載の物品整列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−230866(P2011−230866A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100245(P2010−100245)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)