説明

物品検査装置

【課題】ベルト搬送部と検査手段の相互位置関係を一定とし、検査条件を一定化する。
【解決手段】物品検査装置1は、筐体2と、筐体に設けられた検査手段8,9と、少なくともその一部が筐体内に収納されるとともに、筐体から床面4上に引出されて第1の移動案内手段15で支持される被検査体搬送用のベルト搬送部3とを備える。ベルト搬送部には第2の移動案内手段16が設けられ、ベルト搬送部を筐体内の正規位置に収納すると、前記筐体の設置面6aに第2の移動案内手段16が当接した状態でベルト搬送部が支持されるので、ベルト搬送部と検査手段の相互位置関係が一定化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば検査手段が設けられた筐体内をベルト搬送部で被検査物品を搬送しながら検査を行う物品検査装置であって、前記筐体に対してベルト搬送部が清掃などの便宜のために引出し・挿入自在とされた物品検査装置に関し、特に設置面の凹凸に関わらずベルト搬送部と筐体及び検査手段の高さ位置関係を一定に設定できるようにした物品検査装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、X線検査装置などの検査装置において、検査手段が設けられた筐体に対して、被検査物品を搬送するベルト搬送部が出入り自在の構造となっているものが知られており、下記特許文献1にその一例を示す。
【0003】
この検査装置は、支持台上に固定配置されたX線遮蔽箱からなる装置本体と、支持台上にあってX線遮蔽箱の左右開口より搬送始端及び終端を突出させた被検査体の搬送用ベルトコンベアと、搬送用ベルトコンベアを支持するコンベア台とを備えている。
【0004】
前記コンベア台は支持台上に設置されるものではなく、キャスタなどの移動手段により床面上に移動可能に支持されており、遮蔽箱の前面に設けた扉を開けば支持台上から分離して搬送用ベルトコンベアごと移動可能であり、装置本体に対して着脱自在に構成されているため、点検・清掃などの作業に好適である。
【特許文献1】特開平9−145343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の構成において、床に凹凸があると、コンベア台及びこれに支持された搬送用ベルトコンベアが傾き、これによってX線遮蔽箱、すなわち筐体側との関係が変化し、X線発生源と被検査物品との位置関係にずれが生じて検査条件が所期のものから変化してしまう不具合がある。また、搬送用ベルトコンベアが傾いて不安定な状態だとベルト自体が蛇行して搬送に支障が生ずるおそれがあった。
また、搬送用ベルトコンベアが筐体を貫通する筐体の前後出入口にはX線の遮蔽カーテンがあるが、これとベルト搬送面との間に予期しない隙間が生じ、X線が漏れるおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するものであり、その目的は、筐体に対してベルト搬送部が清掃などの便宜のために引出し・挿入自在とされた物品検査装置において、設置面の凹凸にも関わらずベルト搬送部と筐体及び検査手段との位置関係を一定に設定できるようにし、検査条件の常時一定化を図るようにした物品検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明は、筐体2と、前記筐体2に設けられた検査手段8,9と、少なくとも一部が前記筐体2内に収納されるとともに、第1の移動案内手段15で支持されて該筐体2から床面4上に引出し可能とされた被検査体搬送用のベルト搬送部3とを備えた物品検査装置1において、前記ベルト搬送部3には第2の移動案内手段16が設けられ、前記ベルト搬送部3を前記筐体内2の正規位置に収納した状態において、前記ベルト搬送部3は前記筐体2の設置面6aに当接した前記第2の移動案内手段16によって支持されることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明では、前記筐体2から引出された前記ベルト搬送部3を前記筐体2内に収納する際に、前記筐体2に対する前記ベルト搬送部3の収納方向と直交する方向についての前記筐体2に対する前記ベルト搬送部3の位置を規制する位置規制部材17が、前記筐体2の前記設置面6aの近傍に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明では、前記筐体2から引出されたベルト搬送部3を前記筐体2内に収納する際に、前記第2の移動案内手段16を前記設置面6aに導く傾斜案内面6bが前記設置面6aに連続して前記筐体2に設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明では、前記ベルト搬送部3が前記筐体2内の正規位置に収納されたことと、前記正規位置にある前記ベルト搬送部の駆動機構22を保護するカバー23が正規の保護位置にあることを共に検出したときのみ、前記ベルト搬送部の駆動を許可する検知センサ25が前記筐体2内に設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明では、前記検査手段がX線検査手段8,9であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6記載の発明では、前記検査手段が磁気検査手段41,42であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
以上により本発明では、ベルト搬送部3は第2の移動案内手段16を介して筐体2内に直接設置されるため、床面に凹凸が生じていても、挿入状態で常時筐体2内の正規の高さ位置に位置決め設置されるため、筐体2、検査手段8,9及びベルト搬送部3との相対位置が変化することがない。
【0014】
請求項2の発明では、位置規制部材17によりベルト搬送部3の左右位置も筐体2内の正規の位置に位置決めされる。
【0015】
請求項3の発明では、ベルト搬送部3が第1の移動案内手段15により床面4から第2の移動案内手段16を介して筐体2の設置面6aに乗上げる、あるいはその逆に離脱する際の落差を、傾斜案内面6bにより解消されるため、スムーズな移行が可能である。
【0016】
請求項4の発明では、カバー23がはずれたままの状態でベルト搬送部3が筐体2内に挿入された場合には、装置1が稼働せず、駆動機構の可動部分から安全性を確保できる。
【0017】
請求項5の発明では、X線照射における相対位置が常時一定であり、検査条件が一定であること、ベルト21自体の蛇行がなく安定した走行条件を得られるほかに、X線遮蔽11における隙間の発生がなく、漏洩による被曝などの懸念を未然に回避できる。
【0018】
請求項6の発明では、磁気検査における相対位置が常時一定であり、検査条件が一定であり、ベルト自体の蛇行がなく安定した走行条件を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明における最良の実施の形態を添付図面を用いて詳細に説明する。図1〜図5は本発明をX線検査装置に適用した第1実施形態を示し、図1は同X線検査装置の組立状態を示す正面図、図2は側面図、図3は同分解状態の側面図、図4は図3のA部拡大図、図5はベルト搬送部の詳細とこれと筐体との関係を示す詳細図である。
【0020】
各図において、X線検査装置1は、装置本体を構成する筐体2と、筐体2の前面より引出し挿入可能に配置されるベルト搬送部3とから概略構成されている。
【0021】
筐体2は、床面4上に4つの設置脚部5を介して設置されるフレーム状枠組からなる支持架台6と、前部側に前記ベルト搬送部3が挿入される隙間を設けた状態で支持架台6の後部上面に一体的に立設された本体ケース7とを備え、支持架台6の左右のフレーム6aの上面をベルト搬送部3の設置面とし、かつフレーム6aの先端部には図3に示すごとく、前記ベルト搬送部3が乗上げ可能な傾斜案内面6bを形成している。
【0022】
本体ケース7は正面視で略凸形をなし、その中央部の上部内側には破線で示すごとくX線発生源8が内蔵され、また中央下部におけるベルト搬送部3の内側位置にはX線検出器9が内蔵され、前記X線発生源8に対置させている(図2、図3参照)。
更に左右の突出部7aを含む正面下部には観音開き状の扉10が配置され、突出部7aの側面には被検査物品の出入口用開口部が開口され、その開口面をX線被曝防止用として短冊状のゴムシート11で覆っている。
【0023】
ベルト搬送部3は、コンベア台12と、コンベア台12の上部に配置されたベルトコンベア13とからなっている。
【0024】
コンベア台12の下部には4つの支持脚14と、支持脚14の下端に配置された第1の移動案内手段としてのキャスタ15とを備えている。支持脚14とキャスタ15の合計高さは、前記支持架台6における左右のフレーム6aの上面より若干低く、また、左右のフレーム6aの外側位置となる位置に配置されている。
【0025】
これに加え、コンベア台12をフレーム6a上に設置した場合にコンベア台12がフレーム6aと対面する下面側には、第2の移動案内手段としての前後一対のガイドローラ16が左右に配置されている。
また、コンベア台12の挿入先端位置には図5に示すように、前記各フレーム6aの側面に摺接して挿入時にベルト搬送部3を左右方向について正規の位置に位置決するための一対の位置規制部材17が配置されている。
【0026】
前記ベルトコンベア13は、一対のコンベアフレーム18と、コンベアフレーム18の両側上部に回転可能に両端軸受されたコンベアローラ19と、コンベアフレーム18の両側下部に両端軸受されたテンションローラ20と、各ローラ19,20間に懸架されて無端状に移動するコンベアベルト21と、奧側のコンベアフレーム18の一側部外側面に設けたモータ、プーリなどを含む駆動機構22(図5参照)及び駆動機構22の可動部分の外側を覆うカバー23(図4参照)とを備えている。
【0027】
なお、奥側のフレーム18の中央部には図示しないが、切欠きが形成され、筐体2内にベルト搬送部3を挿入した状態では、この切欠きを通じてケース本体7の下部側に配置されたX線検出器9がベルト21の下面に配置される。
前記カバー23はヒンジ開閉式であって、その外側部には反射板からなるセンサ受け24が配置され、この反射板24に対向して前記本体ケース7の内奥部にはコンベア検知センサ25が配置されている。
【0028】
検知センサ25は、ベルト搬送部3が筐体2内の奥行方向正規位置に到達したか否かと、カバー23が正規位置に閉じられているか否かを検出するもので、図1,2及び図5に示すようにベルト搬送部3が筐体2内の正規位置に挿入された状態で、センサ25にセンサ受け24が対面することで、センサ25がこれを検出する。センサ25の検出状態では、ベルトコンベア13及びX線照射手段8の駆動を可能状態とし、その逆に未検出の状態では双方とも非可動状態に保持されたままとなる。なお、センサ25の検出状態を表示するための表示手段も設けてもよい。
【0029】
以上の構成において、図3に示すように、ベルト搬送部3が筐体2から分離している状態では、ベルト搬送部3はキャスタ15により床面4上を自由に移動でき、清掃作業や駆動手段22のメンテナンスに供することができる。
【0030】
この状態からベルト搬送部3を筐体2内に挿入するには、本体ケース7の扉10をあけ、ベルト搬送部3を筐体2の正面に据え、筐体2側に向けて移動する。このとき最初に位置規制部材17が両フレーム6aの外側面に摺接して、左右方向の位置決めを行う。
【0031】
なお、正規位置に対し、ベルト搬送部3が右または左にずれている場合には、位置規制部材17はフレーム6aに突き当たってそれ以上の挿入ができなくなるため、この場合にはベルト搬送部3を左右にずらして位置規制部材17がフレーム6aに対して摺接する位置となったら再度押付けることにより、挿入が可能となる。
【0032】
そして、最初に押込み方向前方側のガイドローラ16がフレーム6aの先端部の傾斜案内面6bに当接し、これから更に押し込むことにより、この案内面6bを経てフレーム6aの上面にガイドローラ16が移動する。この段階では押込み方向前方側のキャスタ15は浮上がっており、ここからさらに押込むと、押込み方向前方側のガイドローラ16はフレーム6a上の載置面に沿ってさらに奥方に進むとともに、押込み方向後方側のガイドローラ16は前記傾斜案内面6bからフレーム6a上の載置面に乗り上げていき、ベルト搬送部3は筐体2の奥部まで移動すると最終的に筐体2の奥部に突き当たり、センサ25がこれを検出することで、挿入作業を完了する。
【0033】
その後は扉10を閉じることで、X線検出装置としての使用が可能となり、常時筐体2とベルト搬送部3及びX線照射手段8及び検出装置9との相対位置関係を一定に保持したままの検出が可能となる。
【0034】
図6〜図8は本発明を磁気検査装置に適用した場合の第2実施形態を示し、図6は組立状態の正面図、図7は同側面図、図8は同分離状態の側面図である。
【0035】
各図において、この磁気検査装置30は、筐体31と、筐体31の前面より引出し挿入可能に配置されるベルト搬送部32とから概略構成されている。
筐体31は、床面4上に4つの設置脚部33を介して設置されるフレーム状枠組からなる支持架台34と、前部側に前記ベルト搬送部32が挿入される隙間を設けた状態で支持架台34の中央部における後部上面に一体的に立設された本体ケース35とを備え、支持架台34の左右のフレーム34aの上面をベルト搬送部32の設置面とし、かつフレーム34aの先端部には図8に示すごとく、前記ベルト搬送部32が乗上げ可能な傾斜案内面34bを形成している。
【0036】
ベルト搬送部32は、4つの脚部36aを設けたコンベア台36と、コンベア台36の上部に配置されたベルトコンベア37とからなり、脚部36aの下部には第1の移動案内手段としてのキャスタ38を備えている。脚部36aとキャスタ38の合計高さは、前記支持架台34における左右のフレーム34aの上面より若干低く、また、左右のフレーム34aの外側位置となる位置に配置されている。更にコンベア台36の前記フレーム34aの上面に接する位置には第2の移動案内手段としてのガイドローラ39が配置されている。
【0037】
したがって、図6,7に示す組付け状態ではキャスタ38は床面4から浮いた状態であって支持架台34上に設置され、両者の相対位置関係を常時一定としている。そして、ベルト搬送部32は筐体31から取外した状態で、図8に示すように床面4上をキャスタ38によって自由に移動可能であり、単独で清掃やメンテナンスの対象とできる。
【0038】
また図において、符号40は、被検出物が本体ケース25内に入る直前に通過する磁化器、41,42は本体ケース35内においてベルトコンベア37の上部及び内部に対向配置された上下の磁気検出コイル、43は本体ケース25の前面を開閉可能に閉鎖する磁気シールド板兼用の扉、44は本体ケース25の上部前面に設けられた表示器であり、磁化器40を通過後の被検査物は、両検出コイル41,42間を通過することで、被検査物中に金属などの異物がある場合には、両コイルに電流として検出され、表示器44に表示される。
【0039】
なお、本実施形態では、ベルト搬送部32の左右挿入位置決め用の規制部材、挿入位置検出用のセンサなどの説明を省略したが、これらも適宜設けられていることは勿論である。
【0040】
以上の各実施形態では、本発明をX線検査装置及び磁気検査装置に適用した場合を示したが、ベルトで被検査物を運搬し、その状態や形状を検査するもの、例えばカメラなどにより外形を撮像する方式など検査装置一般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明をX線検査装置に適用した第1実施形態における組立状態を示す正面図である。
【図2】同第1実施形態における組立状態の側面図である。
【図3】同第1実施形態における分解状態を示す側面図である。
【図4】図3のA部拡大図である。
【図5】同第1実施形態におけるベルト搬送部の詳細とこれと筐体との関係を示す詳細図である。
【図6】本発明を磁気検査装置に適用した第2実施形態における組立状態を示す正面図である。
【図7】同第2実施形態における組立状態の側面図である。
【図8】同第2実施形態における分解状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 X線検査装置
2,31 筐体
3,32 ベルト搬送部
4 床面
6a,34a 設置面(左右フレーム)
6b,34b 傾斜案内面
8,9,41,42 検査手段
(8 X線発生源、9 X線検出器、41,42 磁気検出コイル)
15,38 第1の移動案内手段(キャスタ)
16,39 第2の移動案内手段(ガイドローラ)
17 位置規制部材
22 駆動機構
23 カバー
25 検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(2)と、前記筐体に設けられた検査手段(8,9)と、少なくとも一部が前記筐体内に収納されるとともに第1の移動案内手段(15)で支持されて該筐体から床面(4)上に引出し可能とされた被検査体搬送用のベルト搬送部(3)とを備えた物品検査装置(1)において、
前記ベルト搬送部には第2の移動案内手段(16)が設けられ、前記ベルト搬送部を前記筐体内の正規位置に収納した状態において前記ベルト搬送部は前記筐体の設置面(6a)に当接した前記第2の移動案内手段によって支持されることを特徴とする物品検査装置。
【請求項2】
前記筐体(2)から引出された前記ベルト搬送部(3)を前記筐体内に収納する際に、前記筐体に対する前記ベルト搬送部の収納方向と直交する方向についての前記筐体に対する前記ベルト搬送部の位置を規制する位置規制部材(17)が、前記筐体の前記設置面(6a)の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
【請求項3】
前記筐体(2)から引出されたベルト搬送部(3)を前記筐体内に収納する際に、前記第2の移動案内手段(16)を前記設置面に導く傾斜案内面(6b)が前記設置面(6a)に連続して前記筐体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
【請求項4】
前記ベルト搬送部(3)が前記筐体内(2)の正規位置に収納されたことと、前記正規位置にある前記ベルト搬送部の駆動機構(22)を保護するカバー(23)が正規の保護位置にあることを共に検出したときのみ、前記ベルト搬送部の駆動を許可する検知センサ(25)が前記筐体内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の物品検査装置。
【請求項5】
前記検査手段がX線検査手段(8,9)であることを特徴とする請求項1乃至4記載の物品検査装置。
【請求項6】
前記検査手段が磁気検査手段(41,42)であることを特徴とする請求項1乃至4記載の物品検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−38691(P2006−38691A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220336(P2004−220336)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】