説明

物品検査装置

【課題】検査結果データの目視による再確認を容易かつ有効的に行うことができる物品検査装置を提供すること。
【解決手段】物品検査装置1は、被検査物Wを検査して検出信号を出力する検査部3と、検査部3からの検出信号に基づいて被検査物Wの良否を判定する判定部5と、被検査物W毎の検査部3の検出信号、判定部5の良否判定結果および検査時刻を含む検査結果データと、装置の動作来歴データと、から構成される検査記録情報を蓄積する検査記録蓄積部9と、検査記録蓄積部9に蓄積された検査記録情報から目視再確認用の検査結果データを抽出するための抽出条件を複数記憶する記憶部7と、記憶部7に複数記憶された抽出条件から所望の抽出条件の選択操作を行う表示操作部4と、表示操作部4により選択された抽出条件を満たす検査結果データを検査記録蓄積部9から抽出する制御部8と、制御部8が抽出した検査結果データを表示する表示操作部4と、を備えた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生肉、魚、加工食品等の食品や、医薬などの被検査物中に混入した異物の有無の検査、または、被検査物の重量が規定範囲であるか否かの検査を行う物品検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品や薬品等の製造ラインに設けられ、その重量、形状、異物の混入の有無といった品質を検査する物品検査装置においては、前段の生産ラインの生産速度が高速(例えば、毎時数万個)である場合には、これに応じた高速の物品検査に伴う大量の検査結果データが生成および蓄積される。また、物品検査装置においては、不良品の流出を防止するために種々の検査装置を用いて、物品、生産ライン、検査方法の改善が行われている。
【0003】
従来、この種の物品検査装置としては、検査時のX線検査画像を全数記憶しておくことにより、検査後における被検査物の品質管理および安全管理の向上を図るようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に記載されたものにおいては、検査時に被検査物に識別情報(検査時間、バーコード)を付しておくとともに、識別情報に関連づけてX線検査画像を全数記憶しておき、被検査物の出荷後にクレームが発生した場合等のときに、被検査物の識別情報に対応するX線検査画像を画面上に表示させることにより、利用者はX線検査画像を見て不具合を検証することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−028821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、クレームを起こした被検査物のX線検査画像を目視で再確認するようになっているが、既にクレームを起こした被検査物の検査データを再確認しても検査手法等の改善に繋げることは容易ではなく、また、クレームを起こした被検査物が大量であった場合には、X線検査画像を目視で再確認する作業が困難であるという問題があった。
【0006】
一方、被検査物を物品検査装置により検査した後であって出荷の前に被検査物のX線検査画像を目視により再確認する手法を用いれば、クレームの防止には効果があるが、X線検査画像を再検査すべき被検査物が大量にある場合には、特許文献1に記載されたX線異物検出装置においてこの手法を用いることは現実的ではなく困難であった。すなわち、目視による検査結果データの再確認を、大量の被検査物の検査データの全てに対して行うことは困難であった。仮に、一部の被検査物の検査データを選択および表示させて目視による再確認を行う手法を用いる場合、どの検査データを選択するかがユーザーの経験等に依存してしまい、目視による再確認を有効的に行うことができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、検査結果データの目視による再確認を容易かつ有効的に行うことができる物品検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る物品検査装置は、被検査物を検査して検出信号を出力する検査手段と、前記検査手段からの検出信号に基づいて前記被検査物の良否を判定する良否判定手段と、前記被検査物毎の前記検査手段の検出信号、前記良否判定手段の良否判定結果および検査時刻を含む検査結果データと、装置の動作来歴データと、から構成される検査記録情報を蓄積する検査記録蓄積手段と、前記検査記録蓄積手段に蓄積された検査記録情報から目視再確認用の検査結果データを抽出するための抽出条件を複数記憶する抽出条件記憶手段と、前記抽出条件記憶手段に複数記憶された抽出条件から所望の抽出条件の選択操作を行う選択手段と、前記選択手段により選択された抽出条件を満たす検査結果データを前記検査記録蓄積手段から抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した検査結果データを表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成により、大量の検査結果データから抽出条件により絞り込んだ検査結果データが表示されるため、検査結果データの目視による再確認を容易に行うことができ、また、ユーザーの経験等に依存した抽出条件ではなく予め記憶部7に記憶された抽出条件により検査結果データが絞り込まれるため、検査結果データの目視による再確認を有効的に行うことができる。したがって、検査結果データの目視による再確認を容易かつ有効的に行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る物品検査装置は、前記抽出手段が抽出した検査結果データが数値情報であったときは該検査結果データを波形表示した画像を生成して前記表示手段に出力するとともに、前記抽出手段が抽出した検査結果データが画像情報であったときは該検査結果データをそのまま前記表示手段に出力する表示画像生成手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、数値情報から生成された波形の画像が表示されるため、検査結果データの目視による再確認を効率的に行うことができる。
【0012】
本発明に係る物品検査装置は、前記抽出条件記憶手段は、前記良否判定手段による判定結果または装置の運転状態が変化した前後の被検査物に対応する検査結果データを抽出する抽出条件を記憶することを特徴とする。
【0013】
この構成により、判定結果または装置の運転状態が変化した前後においては、不良品と判定され得る被検査物、または何らかの不具合のある被検査物が存在している可能性が高いため、検査結果データの目視による再確認をより一層有効的に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、検査結果データの目視による再確認を容易かつ有効的に行うことができる物品検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る物品検査装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る物品検査装置の検査部の金属検出部としての構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る物品検査装置の検査部のX線検出部としての構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る物品検査装置の検査部の重量検出部としての構成を示す図である。
【図5】検査部による検査結果データを示す図であり、(a)は、金属検出部の検査結果データ、(b)は、X線検出部からの検査結果データ、(c)は、重量検出部の検査結果データ、(d)は、装置の動作の来歴データを示す。
【図6】本発明の実施の形態に係る物品検査装置の表示操作部の抽出条件選択画面を示す図である。
【図7】抽出後の検査記録情報の表示態様の一例を示す図であり、(a)は、検査記録情報が被検査物のX線画像であるとき表示態様、(b)は、検査記録情報が被検査物の質量であるとき表示態様、(c)は、検査記録情報が被検査物のワーク影響値およびワーク位相であるとき表示態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
まず構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、物品検査装置1は、搬送部2と、検査部3と、表示操作部4と、判定部5と、制御回路6と、検査記録蓄積部9と、を備えている。
【0019】
この物品検査装置1は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物Wが搬送される図示しない製造ラインに組み込まれ、被検査物W中に混入した異物を検出するものである。
【0020】
搬送部2は、例えば、生肉、魚、加工食品、医薬などの様々な品種の中から予め表示操作部4で設定される品種の被検査物Wを順次搬送するもので、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアにより構成される。
【0021】
また、搬送部2は、図示しない駆動モータにより駆動され、予め設定された所定の搬送速度で、搬入された被検査物Wを図1の矢印方向(右方向)に搬送するようになっている。
【0022】
検査部3は、被検査物Wに含まれる異物の種類やサイズに応じた検出信号、または被検査物Wの重量に応じた検出信号を出力するようになっている。物品検査装置1が金属検出装置として構成される場合、検査部3は、図2に示す金属検出部3Bから構成される。物品検査装置1がX線異物検出装置として構成される場合、検査部3は、図3に示すX線検出部3Aから構成される。物品検査装置1が計量装置として構成される場合、検査部3は、図4に示す重量検出部3Cから構成される。
【0023】
図2に示す金属検出部3Bは、信号発生器31、送信コイル32、2つの受信コイル33a、33bを有する磁界変化検出部33、検波部34を備えている。
【0024】
信号発生器31は、所定周波数の信号を出力する。送信コイル32は、信号発生器31からの信号を受けて被検査物Wに所定周波数の交番磁界を発生するようになっている。
【0025】
2つの受信コイル33a、33bは、送信コイル32が発生する交番磁界を等量ずつ受ける位置で被検査物Wの搬送方向に沿って配置され、互いに差動接続される。磁界変化検出部33は、交番磁界中を通過する物体による磁界の変化に対応した信号を発生するようになっている。
【0026】
検波部34は、磁界変化検出部33の出力信号を信号発生器31が発生する信号と同一周波数の信号によって同期検波するようになっている。
【0027】
このような構成による金属検出部3Bでは、被検査物Wが交番磁界中に存在していないときには、2つの受信コイル33a、33bに生起される信号の振幅が等しく位相が反転している平衡状態となるため、信号の振幅はゼロとなり、検波部34の出力もゼロになる(検波出力)。
【0028】
これに対し、被検査物Wが交番磁界中に存在している場合には、被検査物W自身およびその被検査物Wに混入している金属の影響により、2つの受信コイル33a、33bに生起される両信号の平衡状態がくずれ、被検査物Wの移動に伴い、振幅および位相が変化する信号が検波部34から出力される(検波出力)。
【0029】
なお、図2に示した金属検出部3Bは、搬送部2を挟んで一方側に送信コイル32を配置し、他方側に2つの受信コイル33a、33bを送信コイル32に対向させるように配置したいわゆる対向型配置の構成を有しているが、送信コイル32と受信コイル33a、33bとが同軸上に配置された同軸型配置の構成を有していてもよい。
【0030】
また、金属検出部3Bは、被検査物Wに含まれる金属を磁石等の磁化器で着磁し、磁化された金属の残留磁気を磁気センサで検出するような構成としてもよい。
【0031】
また、図3に示すX線検出部3Aは、X線発生器21とX線検出器22とを備えている。
【0032】
X線発生器21は、金属性の箱体内部に設けられる円筒形のX線管を絶縁油に浸漬したものから構成されており、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射してX線を生成している。
【0033】
X線管は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向となるように配置されている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出器22に向けて、不図示のスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向を横切るように照射されるようになっている。
【0034】
X線検出器22は、被検査物Wに対してX線が照射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線を検出し、この検出したX線の透過量に応じた電気信号を出力している。X線検出器22には、例えば搬送部2を構成するベルトコンベア上を搬送される被検査物Wの搬送方向と直交する方向にライン状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサが用いられている。
【0035】
このような構成によるX線検出部3Aでは、被検査物Wに対してX線発生器21からX線が照射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線をX線検出器22のシンチレータで受けて光に変換する。
【0036】
さらにシンチレータで変換された光は、その下部に配置されるX線検出器22のフォトダイオードによって受光される。そして、各フォトダイオードは、受光した光を電気信号に変換して出力する(検出出力)ようになっている。
【0037】
また、図4に示す重量検出部3Cは、秤量コンベア42と、この秤量コンベア42の下方に配置された荷重センサ41とを備え、秤量コンベア42に乗った被検査物Wの荷重を計量するようになっている。
【0038】
荷重センサ41は、電磁平衡機構などのはかり機構で構成されており、被検査物Wが秤量コンベア42で搬送されている間に、荷重センサ41に加わる荷重、すなわち被検査物Wと秤量コンベア42との合計重量を測定するようになっている。荷重センサ41は、重量を測定できるはかり機構であればよく、例えば、差動トランス機構や歪ゲージ機構などのはかり機構で構成してもよい。
【0039】
荷重センサ41は、後述する搬入センサ52によって被検査物Wが秤量コンベア42に搬入されたことが検知されてから予め設定された基準時間Tkが経過したときに計量を行うようになっている。
【0040】
ここで、基準時間Tkは、搬入センサで被検査物Wが秤量コンベア42に搬入を開始したことを検出してから、被検査物Wが秤量コンベア42に完全に乗り移り、さらに荷重センサ41から出力された信号が安定するまでに必要な時間を意味し、秤量コンベア42のサイズ、速度、および所定の被検査物Wの大きさに対応して予め設定されている。
【0041】
具体的には、基準時間Tkは、秤量コンベア42の速度(m/min)、秤量コンベア42の矢印B方向の長さ(mm)および被検査物Wの搬送方向の長さ(mm)、被検査物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。また、基準時間Tkが経過すると、被検査物Wは、搬入開始検出位置PからLだけ移動して質量測定位置Pに到達し、計量が行われる。
【0042】
検査部3の上流側には、搬送部2により搬送される被検査物Wの通過を検知する搬入センサ52が設けられている。搬入センサ52は、搬送部2を幅方向(図1の手前および奥方向)に跨ぐように対向して配置された図示しない一対の投光部および受光部からなる透過形光電センサでそれぞれ構成されている。そして、搬入センサ52は、被検査物Wが各々の投光部と受光部の間を通過すると、被検査物Wにより受光部が遮光されるので、被検査物Wが通過して検査部3に搬入が開始されたことを検出するようになっている。搬入センサ52からの検出信号は、制御部8に出力されるようになっている。
【0043】
表示操作部4は、入力操作機能および表示機能を兼用するタッチパネルから構成されており、入力操作としては、搬送部2によって搬送させる被検査物Wの品種の設定操作や、被検査物Wの異物検出、計量や動作確認に関する各種設定操作や指示操作を行うようになっている。
【0044】
また、表示操作部4は、表示動作としては、被検査物Wの品種の設定操作が行われるときの設定値、動作モードの切替に関する設定値、指示操作が行われるときの指示値、各種判定結果等、種々の表示を行うようになっている。
【0045】
なお、表示操作部4は、入力操作機能と表示機能とが独立した構成としてもよく、この場合、入力操作機能のために、設定や指示のために入力操作する複数のキーやスイッチ等を設けるとともに、表示機能のために、液晶表示器等を設けた構成とすることができる。
【0046】
判定部5は、検査部3からの検出信号に基づいて、被検査物Wの中に異物が含まれているか否か、または被検査物Wの重量が所定範囲内であるか否か等の良否判定を行うとともに、判定結果を表示操作部4に表示させるようになっている。
【0047】
制御回路6は、物品検査装置1の全体の制御を行うものであり、記憶部7および制御部8を備えている。
【0048】
記憶部7は、制御部8が物品検査装置1を制御するための各種プログラム、判定部5が被検査物Wについて良否判定を行うための各種パラメータ等を記憶するようになっている。
【0049】
制御部8は、記憶部7に記憶されたプログラムを実行して、搬送部2の搬送速度の制御、判定部5のパラメータの変更、動作モードの切替等、物品検査装置1の各種制御を行うようになっている。
【0050】
検査記録蓄積部9は、被検査物W毎の判定部5による判定結果と、この判定結果の根拠となる検査部3からの検出信号(素データ)の一部と、を記憶するようになっている。すなわち、物品検査装置1においては、検査部3からの検出信号(素データ)は判定部5による判定後も破棄されず、検査記録蓄積部9に蓄積される。また、検査部3からの検出信号(素データ)は、検査部3による検査(または判定部5による判定)が行われた日時によって個々の被検査物Wと対応付けられるようになっている。このように、検査記録蓄積部9はいわゆる検査結果の全数データ収録を行うようになっている。
【0051】
具体的には、物品検査装置1が金属検出装置として構成され、検査部3が図2に示す金属検出部3Bから構成される場合、検査記録蓄積部9は、図5(a)に示すように、検査結果データとして、被検査物W毎に、日付、時刻、品種番号、判定結果、ワーク影響値、ワーク位相を記憶する。ワーク影響値、ワーク位相は、判定結果の根拠となるある素データとして記憶される。
【0052】
また、物品検査装置1がX線異物検出装置として構成され、検査部3が図3に示すX線検出部3Aから構成される場合、検査記録蓄積部9は、図5(b)に示すように、検査結果データとして、被検査物W毎に、日付、時刻、品種番号、判定結果、ワーク影響値1、ワーク影響値2を記憶する。ワーク影響値1、ワーク影響値2は、判定結果の根拠となるある素データとして記憶される。また、図5(b)では図示していないが、検査記録蓄積部9には、被検査物Wを透過したX線を濃淡で表したX線画像(図7(a)参照)が素データとして記憶される。
【0053】
また、物品検査装置1が計量装置として構成され、検査部3が図4に示す重量検出部3Cから構成される場合、検査記録蓄積部9は、図5(c)に示すように、検査結果データとして、被検査物W毎に、日付、時刻、品種番号、判定結果、質量、ワーク長を記憶する。質量、ワーク長は、判定結果の根拠となるある素データとして記憶される。なお、ワーク長とは、被検査物Wの搬送方向長さである。また、図5(c)では図示していないが、検査記録蓄積部9には、被検査物Wが秤量コンベア42に搬入されてから秤量コンベア42から搬出されるまでの荷重センサ41からの検出信号の数値が素データとして記憶される。
【0054】
また、検査記録蓄積部9は、図5(d)に示す来歴データを記憶するようになっている。来歴データとは、物品検査装置1の動作来歴、すなわち運転状況や異常状態の有無等に関する情報である。検査記録蓄積部9に記憶される来歴データは、日付、時刻、品種番号、イベント(運転状況)、詳細(イベントの詳細)、から構成されている。イベントの項目には、運転、停止、作業者変更、品種切替、動作確認(動作確認モードの実行)、検出感度変更、等が記録されている。
【0055】
以下の説明において、図5(a)〜図5(c)に示す態様で検査記録蓄積部9に記録された検査結果データおよび来歴データを総称して、検査記録情報という。
【0056】
ここで、制御部8が実行する動作モードとしては、検査部3により被検査物Wを検査して判定部5により良否判定を行う通常の動作モードである通常検査モードの他に、動作確認モードがある。
【0057】
通常検査モードとは、被検査物Wとしての製品に対して異物の有無の検査、計量等を行う動作モードである。動作確認モードとは、通常検査モードの前、または通常検査モード中に、搬送部2により被検査物Wとしてテストピースを搬送して、テストピースに対する検査部3からの検出信号が適正であるか否か等を確認するモードである。
【0058】
なお、物品検査装置1が金属検出装置として構成される場合、テストピースとしては、Fe(鉄)、SUS(ステンレス)からなる金属異物サンプルの球体等が用いられ、この場合、動作確認モードにおいてテストピースに対する検査部3の感度等の確認が行われる。
【0059】
検査記録蓄積部9には、通常検査モードを実行時の製品を被検査物Wとして良否判定した結果が、図5(a)〜図5(c)の態様で検査結果データとして記憶されるが、動作確認モードを実行時のテストピースに対する動作確認結果は、フラグを付す等により製品の被検査物Wの検査結果とは区別されるとともに、図5(a)〜図5(c)の検査結果データとは別に管理される。動作モードが動作確認モードに切替えられた履歴、および動作確認結果は、図5(d)の来歴データに記憶される。
【0060】
以下、本実施の形態の物品検査装置1の特徴部について説明する。本実施の形態では、図6に示すように、表示操作部4において、検査記録蓄積部9に蓄積された検査記録情報(検査結果データおよび来歴データ)から目視再確認用の検査記録情報を抽出するための抽出条件の設定操作を行うようになっている。
【0061】
具体的には、図6に示す各個データ・来歴出力ウィザートは、検査記録蓄積部9に蓄積された検査記録情報から所望の情報を抽出するための抽出条件選択画面であり、抽出対象として、各個データまたは来歴データの何れかを選択するようになっている。ここで、各個データとは、図5(a)〜図5(c)の検査結果データであり、来歴データとは、図5(d)の来歴データである。
【0062】
また、図6の各個データ・来歴出力ウィザートでは、抽出条件として、詳細選択の項目において、全数データを出力する、NGのみ出力する、異物NGのみ出力する、質量NGのみ出力する、「特殊なデータ」を出力する、の何れかを選択するようになっている。
【0063】
また、各個データ・来歴出力ウィザートにおいて、詳細選択の項目で「特殊なデータ」の出力を選択した場合、抽出および出力する「特殊なデータ」の種類を更に選択するようになっている。この「特殊なデータ」の種類としては、図6では、動作確認データ、金検ノイズデータ、バラ状データ、等となっているが、この他に、データ値上位(下位)10データ、製品の長さ上位(下位)10データ、不良品前後10データ、ランダム10データ、運転開始後10データ、品種切替後10データ、電源投入後5分、リミット境界値前後10データ、毎時00分、稼働率が高い、特定の作業者、新規設定した品種、パラメータ設定を変更、等を選択することができるようになっている。これらの抽出条件は、記憶部7に複数記憶されており、表示操作部4からは所望の抽出条件の選択操作、または、抽出条件のパラメータ変更が行われるようになっている。
【0064】
抽出条件の「特殊なデータ」として例示した種類のうち、「データ値上位(下位)10データ」とは、検査部3で検出されたワーク影響置、質量等の値が上位(または下位)10位以内の被検査物Wの素データを検査結果データから抽出および出力するものである。また、「製品の長さ上位(下位)10データ」とは、搬入センサ52の検出タイミングまたはX線画像から求めた被検査物Wの長さが上位(または下位)10位以内の被検査物Wの素データを検査結果データから抽出および出力するものである。
【0065】
また、「不良品前後10データ」とは、判定部5により不良品と判定されたものの前後10個の被検査物Wの素データを検査結果データから抽出および出力するものである。また、「ランダム10データ」とは、ランダム(無作為)に10個の被検査物Wのデータを検査結果データから抽出および出力するものである。「運転開始後10データ」とは、物品検査装置1の運転開始後に検査した10個の被検査物Wのデータを来歴データを参照して検査結果データから抽出および出力するものであり、「品種切替後10データ」とは、被検査物Wの品種の切替設定を行った後に検査した10個の被検査物Wのデータを検査結果データから抽出および出力するものであり、「電源投入後5分」とは、物品検査装置1の電源投入後の5分間に検査した被検査物Wのデータを来歴データを参照して検査結果データから抽出および出力するものである。
【0066】
また、「リミット境界値前後10データ」とは、良否判定のリミット境界値(閾値)前後の10個の被検査物Wのデータを検査結果データから抽出および出力するものであり、「毎時00分」とは、毎時00分に検査した被検査物Wのデータを検査結果データから抽出および出力するものである。また、「稼働率が高い」とは、物品検査装置1の稼働率が高い状態のときに検査した被検査物Wのデータを来歴データを参照して検査結果データから抽出および出力するものであり、「特定の作業者」とは、予め定められた特定の作業者が物品検査装置1の運転を担当しているときに検査した被検査物Wのデータを来歴データを参照して検査結果データから抽出および出力するものである。
【0067】
また、「新規設定した品種」とは、新規に設定した品種の被検査物Wを検査したときの被検査物Wのデータを来歴データを参照して検査結果データから抽出および出力するものである。また、「パラメータ設定を変更」とは、検査条件等のパラメータ設定(検出感度等)を変更したときに検査したときの被検査物Wのデータを来歴データを参照して検査結果データから抽出および出力するものである。
【0068】
「特殊なデータ」の項目として設定される抽出条件には、不良品と判定され得る可能性が高い状態において判定部5により良否判定が行われた状態の検査結果データを抽出する条件を含んでいる。例えば、「不良品前後10データ」の抽出条件は、判定部5で不良と判定された被検査物Wの前後10個の被検査物Wの検査結果データを抽出するものであるから、判定部5で連続的に良品と判定されているような通常の状態(定常状態)が途絶え、判定部5で不良品と判定された状態に変化した状態(非定常状態)の前後においては、不良品と判定され得る被検査物W、または何らかの不具合のある被検査物Wが存在している可能性が高いといえる。また、「品種切替後10データ」の抽出条件は、被検査物Wの品種の切替設定(装置の運転状態の変更)を行った後に検査した10個の被検査物Wのデータを検査結果データから抽出するものであるから、品種の切替設定後においては、検査部3の検査パラメータが切替後の品種に対応した適切な値に調整し忘れている等の理由で、不良品と判定され得る被検査物Wが存在している可能性が高いといえる。
【0069】
制御部8は、上記の各種の抽出条件の中から表示操作部4で設定された抽出条件を満たす検査結果データを検査記録蓄積部9から抽出し、表示操作部4に表示させるようになっている。例えば、抽出条件が「パラメータ設定を変更」であった場合、制御部8は、図5(d)の来歴データにおいて検出感度が変更されたときの検査結果データを抽出して表示操作部4に表示させる。
また、制御部8は、検査記録蓄積部9から抽出した検査結果データの素データが質量等の数値情報であったときはその検査結果データを波形表示した画像を生成して表示操作部4に出力するとともに、検査結果データの素データがX線画像等の画像情報であったときはその検査結果データをそのまま表示操作部4に出力するようになっている。検査結果データから画像を生成する機能は、図6に示すように、「出力するデータに画像データを含める」という選択項目を設けておくことにより、有効化または無効化できるようになっている。
【0070】
制御部8による抽出結果の表示操作部4における表示態様としては、例えば、抽出条件が「パラメータ設定を変更」であった場合であって、検査部3がX線検出部3Aから構成されているとき、表示操作部4には、図7(a)のように、検査結果データの素データであるX線画像Pw(画像情報)がそのまま時刻とともに表示操作部4の表示画面に表示される。ここで、図7(a)のX線画像Pwは、仕切りにより小分けされた食品を包装箱に収納した被検査物Wに対応するものである。
【0071】
また、検査部3が重量検出部3Cから構成されているとき、表示操作部4には、図7(b)のように、検査結果データの素データである質量(数値情報)から制御部8により生成された波形(画像)が時刻とともに表示される。ここで、図7(b)の波形は、重量検出部3Cとして構成された検査部3において、秤量コンベア42により1つの被検査物Wを搬送しているときの秤量コンベア42からの検出信号を時系列で表したものである。また、質量の算出は、荷重センサ41から出力された信号が安定したタイミング(2本破線で挟まれたタイミング)で行われる。
【0072】
また、検査部3が金属検出部3Bから構成されているとき、表示操作部4には、図7(c)のように、検査結果データの素データであるワーク影響値およびワーク位相(数値情報)から制御部8により生成されたリサージュ波形(画像)が時刻とともに表示される。
【0073】
このように、物品検査装置1においては、検査部3により検査されて判定部5により良否が判定された多数の被検査物Wの検査結果データに対して、不良品である可能性が相対的に高い検査結果データの素データだけを目視で再確認して検査の信頼性を高めたいときは、表示操作部4から抽出条件を設定し、制御部8により検査結果データの抽出を実行することにより、全ての被検査物Wの検査結果データを対象にする場合より容易に目視での再確認を行うことができるようになっている。また、不良品である可能性が相対的に高い検査結果データを抽出することができるため、目視による再確認を有効的に行うことができるようになっている。なお、各検査結果データは対応する個々の被検査物Wを検査した時刻と対応付けられているため、検査をした時刻により被検査物Wの個体特定またはロット特定を行うことができる。
【0074】
以上のように、本実施の形態に係る物品検査装置1は、被検査物Wを検査して検出信号を出力する検査部3と、検査部3からの検出信号に基づいて被検査物Wの良否を判定する判定部5と、被検査物W毎の検査部3の検出信号、判定部5の良否判定結果および検査時刻を含む検査結果データと、装置の動作来歴データと、から構成される検査記録情報を蓄積する検査記録蓄積部9と、検査記録蓄積部9に蓄積された検査記録情報から目視再確認用の検査結果データを抽出するための抽出条件を複数記憶する記憶部7と、記憶部7に複数記憶された抽出条件から所望の抽出条件の選択操作を行う表示操作部4と、表示操作部4により選択された抽出条件を満たす検査結果データを検査記録蓄積部9から抽出する制御部8と、制御部8が抽出した検査結果データを表示する表示操作部4と、を備えたことを特徴とする。
【0075】
この構成により、大量の検査結果から抽出条件により絞り込んだ検査結果データが表示されるため、検査結果データの目視による再確認を容易に行うことができ、また、ユーザーの経験等に依存した抽出条件ではなく予め記憶部7に記憶された抽出条件により検査結果データが絞り込まれるため、検査結果データの目視による再確認を有効的に行うことができる。したがって、検査結果データの目視による再確認を容易かつ有効的に行うことができる。
【0076】
また、本実施の形態に係る物品検査装置1において、制御部8は、抽出した検査結果データが数値情報(質量、ワーク影響値およびワーク位相)であったときはその検査結果データを波形表示した画像を生成して、図7(b)、図7(c)のように、表示操作部4に出力するとともに、抽出した検査結果データが画像情報(X線画像)であったときはその検査結果データをそのまま、図7(a)のように表示操作部4に出力することを特徴とする。
【0077】
この構成により、数値情報から生成された波形の画像が表示されるため、検査結果データの目視による再確認を効率的に行うことができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る物品検査装置1は、記憶部7は、判定部5による判定結果または装置の運転状態が変化した前後の被検査物Wに対応する検査結果データを抽出する抽出条件を記憶することを特徴とする。
【0079】
この構成により、判定結果または装置の運転状態が変化した前後においては、不良品と判定され得る被検査物W、または何らかの不具合のある被検査物Wが存在している可能性が高いため、検査結果データの目視による再確認をより一層有効的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明に係る物品検査装置は、検査結果データの目視による再確認を容易かつ有効的に行うことができるという効果を有し、異物の有無の検査、または、重量が規定範囲であるか否かの検査を行う物品検査装置として有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 物品検査装置
2 搬送部
3 検査部(検査手段)
3A X線検出部
3B 金属検出部
3C 重量検出部
4 表示操作部(選択手段、表示手段)
5 判定部(良否判定手段)
6 制御回路
7 記憶部(抽出条件記憶手段)
8 制御部(抽出手段、表示画像生成手段)
9 検査記録蓄積部(検査記憶蓄積手段)
52 搬入センサ
W 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(W)を検査して検出信号を出力する検査手段(3)と、
前記検査手段からの検出信号に基づいて前記被検査物の良否を判定する良否判定手段(5)と、
前記被検査物毎の前記検査手段の検出信号、前記良否判定手段の良否判定結果および検査時刻を含む検査結果データと、装置の動作来歴データと、から構成される検査記録情報を蓄積する検査記録蓄積手段(9)と、
前記検査記録蓄積手段に蓄積された検査記録情報から目視再確認用の検査結果データを抽出するための抽出条件を複数記憶する抽出条件記憶手段(7)と、
前記抽出条件記憶手段に複数記憶された抽出条件から所望の抽出条件の選択操作を行う選択手段(4)と、
前記選択手段により選択された抽出条件を満たす検査結果データを前記検査記録蓄積手段から抽出する抽出手段(8)と、
前記抽出手段が抽出した検査結果データを表示する表示手段(4)と、を備えたことを特徴とする物品検査装置。
【請求項2】
前記抽出手段が抽出した検査結果データが数値情報であったときは該検査結果データを波形表示した画像を生成して前記表示手段に出力するとともに、前記抽出手段が抽出した検査結果データが画像情報であったときは該検査結果データをそのまま前記表示手段に出力する表示画像生成手段(8)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項3】
前記抽出条件記憶手段は、前記良否判定手段による判定結果または装置の運転状態が変化した前後の被検査物に対応する検査結果データを抽出する抽出条件を記憶することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物品検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113612(P2013−113612A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257718(P2011−257718)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】