説明

物品滑動装置の角度調整具及びその製造方法

【課題】商品棚や部品供給棚などでは、傾斜した支持架上にスライド板やローラー板を棚板として置いて棚板を傾斜させ、その上に載置した物品を自重で滑動させているものがあるが、物品の形状や重量などの形態によって滑り過ぎたり滑りが悪かったりすることがあり、従来、適切な棚板の傾斜を得るには、費用と時間がかかっていた。既にある設備の大がかりな設計変更や改造を必要とせずに、安価で簡便に適切な棚板の傾斜角を与える手段を提供する。
【解決手段】角度調整具8は、以下のことを特徴とする。(1)上面と下面が任意に選ばれた角度を成す楔状の形状を有する。(2)単独で又は複数枚組み合わせて既存の棚板の下に敷くことにより、載置する商品などの種類に応じて、既存設備を改造することなく、棚板の傾斜角を希望の大きさに随時手軽に調整できる。(3)素材はプラスチックで、射出成形により誘導帯を利用して一体成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板に傾斜を持たせ、その上に載置した物品を自重で若しくは比較的小さい力で前に滑動させて移動する装置(以下、「物品滑動装置」という。)に関し、特に、物品滑動装置の物品を載置する棚板(以下、単に「棚板」という。)の傾斜角を調整するための手段(以下、「角度調整具」という。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品滑動装置としては、代表的なものとして、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、その他商店などに設置されている缶入り飲料やペットボトル飲料などの商品棚があり、これらの商品棚の最前列の商品を顧客が手にとった場合、その後ろに並べてある商品が棚板の傾斜に沿って自重で前に滑って送られ、常に最前列に商品が存在するようになっている(図1参照。)。
【0003】
このような物品滑動装置において、物品を滑動によって移動させる方法としては、現在最も普及しているものとして、棚板に回転自在な複数のローラーを軸受手段と共に装着し(図2参照。)、また、その物品滑動装置の架台部分にその棚板を置いて支持するための桟状若しくは板状の支持手段(以下、そのような棚板の支持手段を「棚板支持台」という。)を設けて、その棚板支持台は水平面に対して物品移動方向の傾斜角(以下、そのような棚板支持台の傾斜角を「支持台傾斜角」という。)を有するように架台部分に固定され、その棚板支持台上にその棚板を単に置くか又は脱着可能なように取り付け、そうすることによってその棚板の物品を載置する表面が水平面に対して成す傾斜角(以下、そのような棚板の傾斜角を「棚板傾斜角」という。)が支持台傾斜角と同じ傾斜を有するようにし、その棚板のローラー上に物品を載置し、その物品が自重によって傾斜に沿って下方に移動するようにする方法がある。
【0004】
上記のローラーを用いる方法(以下、「ローラー方式」という。)は、物品の滑動が容易で、物品を滑動させるための棚板傾斜角を小さくすることができるが、一方、この方法で用いる棚板の製造においては、多数のローラー部品を製作し、ローラーの軸受けを製作し、軸受けにローラーを通し、それを棚板に装着するという複雑な製造工程を要するために棚板の製造コストが高く、また、軸受けの回りをローラーが回転して動くためにローラー部分の摩耗や破損が生じやすい。
【0005】
物品を滑動によって移動させる別の方法としては、物品移動装置の架台部分、棚板支持台の構成及び構造、並びに棚板の設置方法は、上記のローラー方式と同様であるが、ただし、棚板にローラーを装着する代わりに、棚板の表面を物品が滑り易い状態に加工し、棚板上に載置された物品が自重によって傾斜に沿って下方に摺動しながら移動するようにした方法(以下、「摺動方式」という。)が提案されている。
【0006】
なお、棚板の表面を物品が滑り易い状態に加工する方法として、棚板の素材にプラスチックを用い、物品との接触面積を小さくして滑りやすくするために物品を載置する表面にリブ状突起を設け(図3参照。)、射出成形で一体成形されるものが提案されており(例えば、特許文献1参照。)、この棚板は、製造が簡単で、軽量であり、取扱いが容易で、洗浄も容易で随時行うことができ、衛生的であることを要する食品関係への利用にも適しており、リサイクルも容易で、可動部分がないために摩耗や破損が生じにくいが、一方、物品は摺動によって移動するため、物品を滑動させるための棚板傾斜角はローラー方式に比べてやや大きい(以下、このようなプラスチック一体成形の棚板を用いた摺動方式を「プラスチック板摺動方式」という。)。
【0007】
また、棚板の表面を物品が滑り易い状態に加工する別の方法として、上記特許文献1に示したようなプラスチック製棚板を用いる以外に、金属素材の板の表面に滑りやすい被覆層(以下、「表面被覆層」という。)を設けたものも散見されているが、この棚板は、重量が重く、取扱いが難しく、物品が摺動によって滑動するために摩耗や衝撃による破損による表面被覆層の剥離が生じやすく、表面被覆層が剥離すると塵芥が発生すると共に金属層が露出して錆や金属粉を発生するなど不衛生になりやすい(以下、このような金属板の棚板を用いた摺動方式を「金属板摺動方式」という。)。
【0008】
この他にも、物品を滑動によって移動させる方法としては、物品を後ろから押す手段を設けたもの、棚板に装着したローラーに回転を与える駆動手段を備えたもの、棚板に回転自在の一本若しくは数段に分割されたベルトコンベアを装着したもの、該ベルトコンベアに回転を与える駆動手段を備えたもの、棚板上に載置した物品を側面から移動方向に送る力を加える側面ローラーを備えたもの、それらの方法を組み合わせたものなどが考えられる。
【0009】
しかし、ローラー方式、プラスチック板摺動方式、金属板摺動方式のいずれの方法においても、棚板傾斜角は、支持台傾斜角で定まるために、一旦物品滑動装置が設計されれば、棚板傾斜角も設計時に定められた所定の角度に固定され、それ以外の角度をとることは出来ない構造となっている。
【0010】
一方、棚板に物品を載置して滑動により移動する場合、その棚板傾斜角が一定であれば、その物品の棚板と接する部分の表面状態、形状及び重量(以下、このような物品の特性をまとめて「物品形態」という。)に依存して滑り過ぎたり滑りが悪かったりすることが生じるという問題がある。
【0011】
棚板に載置した物品が滑り過ぎると、その物品が移動して棚板の前端に達した際の移動速度が速くなり、勢いが付き過ぎて転落したり、物品が前端のストッパーに強く当たって物品に好ましくない衝撃を与えたり、繰り返される衝撃でストッパーが破損したり、また、移動速度が速すぎるために棚板自体の摩耗や破損が生じやすくなるというような問題があり、一方、滑りが悪いと、物品が棚板の前端などの所定の位置まで十分に移動せず、物品滑動装置としての機能を十分に果たせず、物品の配置が不揃いになるというような問題がある。
【0012】
従来は、このような物品の移動速度が不適切であるという問題を解決するためには、新しく物品滑動装置の設計を行って、その支持台傾斜角を変更して、対象とする物品の物品形態に適した支持台傾斜角を有するものを製作するしか方法がないという問題があった。
【0013】
また、従来は、このように物品形態が異なるか又は物品が許容できる衝撃の大きさ(以下、「耐衝撃性」という。)が異なる毎に、物品滑動装置を別々に設計して製作することが必要なため、装置の種類が多くなり、装置同士の交換や転用も制約され、装置製造における量産効果も低くなり、装置の製造単価や維持管理費が高くなるという問題があった。
【0014】
このため、従来は、多少の滑り過ぎや滑りの悪さがあるような物品に対しても、ある程度は許容して既存の物品滑動装置を利用するが、そのような許容範囲を超える物品に対しては、物品滑動装置の利用をあきらめているのが実情であった。
【0015】
【特許文献1】特開2005−261873
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように、一旦設計された物品滑動装置においては、その棚板傾斜角が一定であるため、その棚板上に載置する物品形態が異なれば、物品の移動速度も変動して、速すぎたり遅すぎたりすることが生じ、そのために、その物品滑動装置を利用できる物品形態、耐衝撃性の範囲が制約され、異なる物品形態若しくは耐衝撃性を有する物品に対しては新たに設計しなければ対応できないという問題がある。
【0017】
本発明の課題は、既に利用中の物品滑動装置を改造することなく、また、今後新たに設計されて利用されるであろう物品滑動装置に対しても、その物品滑動装置が設計時に定めた所定の棚板傾斜角を有したまま、広範に異なる物品形態若しくは耐衝撃性を有する物品にまで利用範囲を拡げることを可能とする手段を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、物品滑動装置に関し、特に、物品滑動装置において物品を載置する棚板の棚板傾斜角を調整する手段及びその製造方法に関するものである。
【0019】
上記の課題を解決する手段として、物品滑動装置において物品を載置する棚板の傾斜角を調整する手段である角度調整具を提供すると共に、そのような角度調整具の製造方法も提供する。
【0020】
本発明に従う角度調整具は、プラスチック素材を用い、射出成形により一体成形を行って製造し、上面と下面が任意に選択する角度を成す楔形の形状(ただし、この楔形は両面の先端がその角度で実際に交わっている必要はなく、途中で途切れた楔形でよく、両面の延長がその角度で交わることが要求されるだけである)を有することを特徴とする(以下、そのように選ばれた角度調整具の上面と下面が成す角度を「調整角」という。)。
【0021】
しかし、本発明に従う角度調整具は、上記のようにが一方が厚く他方が薄いという楔形を有しており、射出成形を行う際の溶融プラスチックの流れは厚い部分で流れやすく薄い部分で流れにくいという性質を有しているため、そのままでは溶融プラスチックの流れのバランスが崩れて、成形品に反りやゆがみが生じたり、溶融プラスチックが行き渡らないためのヒケ欠陥が生じたり、ガス焼けが生じたりして、完全な形状に仕上げることが困難であり、このような困難さは成形品のサイズが大きくなるほど増すものであり、このことが、これまでに本発明のようなプラスチック製角度調整具の提案がなされていない大きな理由と考えられる。
【0022】
本発明においては、上記のような角度調整具が楔形で、傾斜方向に厚さの対称性を失っているために溶融プラスチックの流れのバランスが崩れるという問題を、射出成形に使用する金型に、溶融プラスチックの注入ゲート部から周囲に向かって伸びて、注入された溶融プラスチックを誘導する溝(以下、「誘導帯」という。)を設けることにより解決した。
【0023】
上記の誘導帯は、その溝の深さと幅で定まる太さ、長さ、形状及び位置を適切に選ぶことにより、注入された溶融プラスチックをその周辺よりも流れやすくして、注入圧をあまり減じることなく所望の場所まで誘導し、そこから注入圧に近い圧力を維持している溶融プラスチックを周辺に押し拡げて浸透させるという働きを有する。
【0024】
また、上記のように射出成形の際に用いる誘導帯の溝の深さが周辺部分より深くなっている場合には、その誘導帯によって成形品上にリブ状突起が形成され(以下、このように誘導帯によって形成されたリブ状突起を「誘導帯リブ状突起」という。)、このような誘導帯リブ状突起は、その成形品を補強する効果もある。
【0025】
上記の誘導帯の適切な太さ、長さ、形状及び位置は、成形品の広さ、厚さ、形状の複雑さ、非対称性、素材の種類などに依存して複雑に変化するため、成形品毎に実験的に定める必要がある。
【0026】
このような理由で、本発明の角度調整具は、誘導帯リブ状突起を有することも特徴の一つとしている(図4参照。)。
【0027】
このような角度調整具を物品滑動装置の棚板の下に棚板傾斜角と調整角の傾斜の方向を合わせて敷くことにより、その物品滑動装置の支持台傾斜角で定まる本来の棚板傾斜角を、その角度調整具が有する調整角の分だけ水平面に対して変更することができる。
【0028】
角度調整具を棚板の下に敷く場合に、棚板傾斜角の方向と角度調整具の調整角の方向を同方向にするか逆方向にするかによって、棚板傾斜角を水平面に対して増加させることも減少させることもできる。
【0029】
棚板傾斜角が増加すれば、棚板上に載置した物品の移動速度は速くなり、棚板傾斜角が減少すれば、遅くなる。
【0030】
角度調整具の調整角としては、棚板に載置した物品を適度な速度で移動させるために必要とする棚板傾斜角を得るために、0度から90度までの範囲内で任意に選ぶことができる。
【0031】
調整角として0度を選択した場合は、角度調整具は平行平板となり、棚板の傾斜角を変化させることはできないが、棚板の表面の高さを調整するする必要がある場合に、棚板の下に敷くことにより、高さ調整板として利用することができる。
【0032】
一方、調整角として90度を選択した場合は、角度調整具は垂直面となり、棚板を直立させて積み上げた物品を横から支えて、その物品を一つずつ下方又は上方に滑動させて引き出すようにするための棚板支持具として利用することができる。
【0033】
一般的には、その他の0度から90度の間の調整角を選択することによって、必要に応じた調整角の角度調整具をその都度設計して製造することができる。
【0034】
更に、例えば、予め0.1度、0.5度、1度、2度、5度などの調整角を有する角度調整具をそれぞれ複数枚用意しておけば、それらを複数枚重ねて用いることにより、0.1度刻み、0.5度刻み、1度刻み、2度刻み、5度刻みなどで棚板傾斜角を随時手軽に調整することが可能となる(以下、そのように複数枚の角度調整具を組み合わせ合成して得られる最終的調整角を「複合調整角」とい。)。
【0035】
角度調整具は、上記のように上面と下面が任意に選択する所定の角度を成す楔形の形状を有しておれば本発明の意図する最低限の機能を果たすが、角度調整具の表面から見た形状としては、両方の表面共に平面のもの、両方の表面共に平面であるが両面間を気体が流通できる開口部を有するもの、いずれかの表面又は両方の表面に格子状、ネット状、ストライプ状、錐状、柱状、その他の幾何学模様の形状を含むがそれに限らない任意の形状の突起(以下、「表面突起」という。)を有するもの、いずれかの表面又は両方の表面に表面突起を有し、かつ、それらの表面突起間に両面間を気体が流通できる開口部を有しているものの中から物品滑動装置の用途に適したものを任意に選ぶことができるが、ただし、いずれ表面形状が選ばれた場合でも、本発明においては、上述したように、いずれかの表面又は両方の表面に誘導帯リブ状突起を有することを特徴とする。
【0036】
上記の角度調整具の表面から見た形状において、いずれかの表面又は両方の表面に誘導帯リブ状突起及び/又は表面突起を有するものにあっては、それぞれの表面における全ての突起先端群の包絡面が平面を成すことが望ましいが、それらの突起上に棚板を置いた場合に、少なくとも棚板ががたがたと不安定に動くことがない程度に突起の高さが整えられている必要がある。
【0037】
また、角度調整具は棚板傾斜角を調整することが目的なので、角度調整具の広さ方向の寸法は、必ずしもその上に乗せる一枚若しくは複数枚の棚板の広さ方向の寸法と全く同じである必要はなく、棚板支持台に正常に置くことができる範囲であれば、棚板の広さ方向の寸法より大きくても小さくてもよい。
【0038】
角度調整具のいずれかの表面又は両方の表面に、誘導帯リブ状突起及び/又は表面突起を設けることによって、一定の強度を維持しながら、凹部又は開口部のプラスチック材料を節約する効果がある。
【0039】
また、角度調整具は、通常は、物品滑動装置の脱着可能な棚板を棚板支持台から一旦外して、角度調整具をその棚板支持台の上に置いた後、再び棚板を角度調整具の上に乗せることによって利用するが、予め角度調整具の上に棚板を重ねて、その接合面を両面テープ、ビス止め又は係止ピンと係止孔の嵌合を含むがそれに限らない固定手段により固定し、組み立てて一体化したものを製造して製品とすることもできる(図5参照。)。
【0040】
更に、棚板がプラスチック板摺動方式である場合には、棚板部分と角度調整具部分を一体化するように設計した金型を用いて、射出成形により、棚板部分と角度調整具部分を最初から一体成形したものを製造して製品化とすることもできる(図6参照。)。
【0041】
このように、棚板と角度調整具を一体化して棚板に予め調整角を付与したもの(以下、そのように棚板と角度調整具が一体化されたものも「角度付き棚板」という。)は、大量の物品滑動装置に同じ棚板傾斜角を付与して調整する必要がある場合に有用である。
【0042】
棚板がプラスチック板摺動方式である場合には、上記のように、棚板部分と角度調整具部分を一体化した設計の金型を用いて、射出成形により、棚板部分と角度調整具部分を最初から一体成形して角度付き棚板にすることができるが、その際に、物品を載置する側の表面が平面でなく、又は、その表面に誘導帯リブ状突起及び/又は表面突起を有するものにあっては、その表面における突起先端群の包絡面が平面を成さず、物品の滑動する方向の縦断面の上縁が任意のカーブを描く曲面となるように金型を製作するか若しくは任意の折れ線を描く傾斜角の異なる平面の連なりとなるように金型を製作することもできる(以下、そのように棚板部分と角度調整具部分が一体化され、物品を載置する側の表面が、平面状でなく、物品の滑動する方向の縦断面の上縁がカーブを描く曲面若しくは折れ線を描く傾斜角の異なる平面の連なりになるものを「カーブ傾斜付き棚板」という。)。
【0043】
射出成形における成形品の外形形状は比較的自由に設計することができるので、このようなカーブ傾斜付き棚板(図7参照。)では、棚板の後端から前端までの傾斜角の変化を適切に選択して設計することにより、棚板の後方にある物品が前方にある物品を押す力を調節できると共に前方にある物品の移動速度も制御でき、平面状の棚板に比してより広範な物品形態に対応できるという利点がある。
【0044】
例えば、カーブ傾斜付き棚板の後端部の傾斜を大きくし、前端に向けて傾斜角を小さくしていくようにすれば、物品によって後ろから押す力を失うことなく、棚板の前端での物品の移動速度を適切な早さに制御することができる。
【0045】
又は、カーブ傾斜付き棚板に多くの物品を載置するような場合でも、後ろから押す力が大きすぎて前方の物品に悪影響を与えたり前端での物品の移動速度が速くなり過ぎたりすることを防ぐため、適度に緩い傾斜の部分と物品に押す力を与えるための急傾斜の部分を混在させることにより、後ろから押す力を維持しながら、しかも、後ろから押す力が大き過ぎないように制御することもできる。
【発明の効果】
【0046】
このような角度調整具、角度付き棚板又はカーブ傾斜付き棚板を採用することにより、レストランなどにおける食品保存棚、工業用又は家庭用冷蔵庫の棚、倉庫などにおける物品貯蔵棚、工場における部品供給棚若しくはトレイ、部品保存棚などの新しい事業分野に物品滑動装置の用途を拡大する効果がある。
【0047】
更に、このような角度調整具、角度付き棚板又はカーブ傾斜付き棚板を採用することにより、既に使われている既存の商品棚、ショーケースなどの物品滑動装置も、改造せずに、今まで利用出来なかった物品に対して利用を拡大できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】物品滑動装置例の斜視図
【図2】物品滑動装置用ローラー式棚板例の部分斜視図
【図3】物品滑動装置用プラスチック板状棚板例の部分斜視図
【図4】角度調整具例の斜視図
【図5】棚板と角度調整具を組立てて一体化した角度付き棚板例の斜視図
【図6】棚板と角度調整具を一体成型した角度付き棚板例の斜視図
【図7】棚板と角度調整具を一体成型したカーブ傾斜付き棚板例の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明では、射出成形に使用する金型に、溶融プラスチックの注入ゲート部から周囲に向かって伸びて、注入された溶融プラスチックを誘導する溝である誘導帯を設けて、注入プラスチックの流れの不均一性を緩和することにより、物品の移動方向に楔形の傾斜が付いてその方向に関する形状対称性を失っている角度調整具及びその製造方法を実現した。
【実施例1】
【0050】
以下、本発明の実施の形態を、図4に示すような上面及び下面が平面状でその両面が所定の調整角を成し、また、その両面が誘導帯リブ状突起を有する角度調整具を製作する実施例によって示す。
【0051】
本発明に従って、角度調整具の素材として、射出成形が可能なプラスチックを用いる。
【0052】
角度調整具が用いられる用途を考慮して、使用するプラスチックの種類及び品質を定める。
【0053】
角度調整具を用いようとしている物品滑動装置において、ゲージ用として事前に用意しておいた各種調整角を有する角度調整具を必要に応じて組み合わせながら棚板の下に敷いて、実際に利用する物品を棚板上に載置して滑動実験を繰り返し、必要な調整角を決定する。
【0054】
角度調整具を用いようとしている物品滑動装置の棚板支持台に合わせて、角度調整具の広さ方向のサイズを定める。
【0055】
このようにして求めた傾斜角及び広さ方向のサイズに従って確定した楔形の外形寸法並びに適当と考える溶融プラスチックを注入するゲート位置及びそのゲート部分から周囲に伸ばす誘導帯の溝の形状・寸法に基づいて、射出成型用の金型を試作する。
【0056】
試作した金型を用いて、実際に角度調整具を試作成形し、成形した角度調整具の試作品に反り、ゆがみ、ヒケ欠陥、ガス焼けなどが生じたら、ゲート位置及び誘導帯の形状・寸法を変更した別の金型を試作して、成形実験を繰り返す。
【0057】
完全な形状で欠陥のない成形品が得られた後、その金型を用いて角度調整具の射出成形による量産段階に移行する。
【0058】
このような手順及び工程によって、角度調整具が製造され、供給される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、既に利用中の物品滑動装置を改造することなく、また、今後新たに設計されて利用されるであろう物品滑動装置に対しても、そのような物品滑動装置が設計時に定められた所定の棚板傾斜角のまま、異なる形状、重量、耐衝撃性を有する物品に対する利用範囲を拡げることが可能となり、従って、本発明は産業において利用されうるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 物品滑動装置
2 棚板支持台
3 棚板
4 物品
5 ローラー
6 リブ状突起
7 調整角
8 角度調整具
9 接合面
10 組立角度付き棚板
11 一体成形角度付き棚板
12 カーブ斜面付き棚板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚板の表面に物品を載置し、該物品を該棚板表面に載置したまま滑動させることにより、該棚板表面上で該物品を移動させる物品滑動装置の内、該棚板が脱着可能な物品滑動装置において、該棚板の下に敷くことによって該棚板が水平面と成す物品移動方向の傾斜角を任意の角度だけ調整するための角度調整具であって、該角度調整具の下面と上面が物品の移動方向に傾斜を有するよう任意に選ばれた角度を成す楔状の形状を有し、素材をプラスチックとし、射出成形によって一体成形され、該上面及び/又は下面に該射出成形における注入ゲート部から周囲に向かって伸びるリブ状突起を有することを特徴とする物品滑動装置用角度調整具。
【請求項2】
請求項1における物品滑動装置用角度調整具にあって、該角度調整具がその両面間で気体が流通できる開口部を有していることを特徴とする物品滑動装置用角度調整具。
【請求項3】
物品滑動装置用の棚板であって、請求項1又は請求項2における物品滑動装置用角度調整具が該棚板に予め固定手段により固定されて一体化されていることを特徴とする物品滑動装置用角度付き棚板。
【請求項4】
物品滑動装置用の棚板の内、該棚板がプラスチック製であるものにあって、請求項1又は請求項2における物品滑動装置用角度調整具が該プラスチック製棚板と射出成形法により一体成形されていることを特徴とする物品滑動装置用角度付き棚板。
【請求項5】
請求項4における物品滑動装置用角度付き棚板にあって、該棚板の下面は平面とし、物品を載置する他方の面は物品の滑動する方向の縦断面の上縁が任意に選ばれたカーブを描く曲面及び/又は任意に選ばれた折れ線を描く傾斜角の異なる平面の連なりであることを特徴とする物品滑動装置用カーブ傾斜付き棚板。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5において物品滑動装置用角度調整具、物品滑動装置用角度付き棚板及び物品滑動装置用カーブ傾斜付き棚板を製作するのに利用されるプラスチック射出成形法にあって、該射出成形に使用する金型に、溶融プラスチックの注入ゲート部から周囲に向かって伸びており、注入された溶融プラスチックを流れやすくして誘導するために周囲より流路を深く及び/又は幅広くした溝を設けることを特徴とする物品活動装置用角度調整具、物品滑動装置用角度付き棚板及び物品滑動装置用カーブ傾斜付き棚板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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