物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラム
【課題】 物品の在庫量が適正になるように商品の発注量を決定する物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 物品発注量決定装置1は、過去の所定期間における物品の供給実績量の時間経過に対する変化に基づいて、物品の需要量が増加する傾向であるか又は減少する傾向であるかの需要動向を求め、物品の需要予測量を割り増して見積もる度合いを需要動向に応じて決定し、需要動向に応じて発注日以降の需要予測量を決定する。更に、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点での物品の在庫予測量を計算し、次回の発注による納品時点までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量となるように物品の発注量を決定する。
【解決手段】 物品発注量決定装置1は、過去の所定期間における物品の供給実績量の時間経過に対する変化に基づいて、物品の需要量が増加する傾向であるか又は減少する傾向であるかの需要動向を求め、物品の需要予測量を割り増して見積もる度合いを需要動向に応じて決定し、需要動向に応じて発注日以降の需要予測量を決定する。更に、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点での物品の在庫予測量を計算し、次回の発注による納品時点までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量となるように物品の発注量を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の発注量を決定する方法に関し、特に販売業において商品の在庫量が適正になるように商品の発注量を決定する物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
商品を販売する小売業においては、品切れによる商品の欠品が生じないように、また在庫が過剰とならないように適切なタイミング及び発注量で商品を発注することが望ましい。このためには、商品の販売量及び在庫量を正確に把握し、商品の需要量を的確に予測して、商品を発注する適切なタイミング及び発注量を決定する必要がある。このような発注管理は、商品を仕入れて卸売りを行う卸売業、食材を仕入れて飲食を提供する飲食業、又は仕入れた部品を組み立てて製品を製造する製造業等、小売業以外の分野でも必要となっている。
【0003】
近年の販売業・製造業では、多店舗・多拠点で販売又は生産を行う形態が多く、また多品種で少量の物品の販売又は生産が主流となっている。これに伴って商品又は部品等の物品の発注管理を行うために必要な労力が増大しているので、発注管理の自動化・省力化が必要となっている。従来、販売業の分野ではPOS(Point of Sales)システムが、製造業の分野ではPOP(Point of Production )システムが実用化されており、これらの情報システムでは各物品の日々の販売量・生産量及び在庫量を示す情報を管理することができる。この情報システムが管理する情報を利用することによって、発注管理の自動化・省力化を行う技術が多数提案されている。
【0004】
特許文献1には、商品のライフサイクルが1年以上と比較的長い場合に、前年の売り上げの情報を用いて発注量を決定する技術が開示されている。また特許文献2には、ライフサイクルが比較的短い商品について、非定量的に商品の出荷がある場合でも適切な発注数量を決定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−198448号公報
【特許文献2】特開平11−306251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、数ヶ月〜半年程度の短い期間で販売がほぼ終了するようなライフサイクルがより短い商品が多くなってきている。このようにライフサイクルが特に短い商品は需要の変動が激しいので、商品の欠品による売り逃し、及び商品の売れ残りによる在庫過剰が発生しやすくなっている。従って、このような商品については、商品の販売動向に基づいて短期間での需要量を予想し、商品を発注する適切なタイミング及び発注量を決定する必要がある。例えば、新商品が発売された当初は商品の需要が多く売り逃しが発生する可能性が高いので、需要量を通常より多めに見積もって商品を発注する必要があり、新商品が発売されてからある程度の時間が過ぎた後は需要が少なくなって在庫過剰が発生する可能性が高いので、需要量をより少な目に見積もる必要がある。このように販売の動向に応じて需要の予測量を変動させて商品の発注管理を自動的に行う技術は提案されておらず、販売量のデータに基づいて商品を発注するタイミング及び発注量を人手で判断しているのが現状である。従って、ライフサイクルが短い商品の発注管理には多大な労力を必要とするという問題がある。
【0006】
また、商品の発注日と納品日との間にはタイムラグがあるので、発注日から納品日までの間に販売によって在庫が減少する量を見越して商品の発注量を決定する必要がある。しかし、発注日時点での在庫量と販売量との関係によっては、納品日以前に欠品が発生して売り逃しが発生することがあり、売り逃し量に対応する量の商品が納品日に納品されても販売機会は失われているので、売り逃し量に対応する量の商品が過剰在庫となるという問題がある。
【0007】
また従来の技術では、発注をし忘れるか又は予想以上に商品の販売量が多い等の理由により予想外に在庫が過小となった場合には、商品の欠品が発生する可能性が高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、物品の需要動向に応じて物品の発注量を決定する労力を軽減することができる物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的とするところは、売り逃し量に対応した量の物品が納品されることを防止することにより在庫過剰の発生を抑制することができる物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【0010】
更に本発明の他の目的とするところは、予想以上に商品の在庫が過小となった場合に追加で物品を発注することにより欠品の発生を抑制することができる物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る物品発注量決定方法は、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する方法において、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定し、過去の物品の供給実績量及び前記需要動向に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要予測量を計算し、計算した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算し、計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定することを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る物品発注量決定方法は、記憶部及び演算部を備えるコンピュータを用いて、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する方法において、過去の物品の供給実績量を前記記憶部で記憶しておき、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を前記演算部で判定する需要動向判定ステップと、前記演算部で判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を前記演算部で決定する割増指数決定ステップと、過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を前記演算部で計算する需要量推定ステップと、前記演算部で計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を前記演算部で決定する需要量予測ステップと、前記演算部で決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を前記演算部で計算する在庫量予測ステップと、前記演算部で計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を前記演算部で決定する発注量決定ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る物品発注量決定方法は、前記記憶部は、過去の物品の供給実績量を、物品が供給された複数の供給経路の夫々に対応付けて記憶してあり、前記需要動向判定ステップは、過去の所定期間を構成する複数の小期間内で、複数の供給経路に対応付けられた供給実績量を合計した合計値を、各小期間別に前記記憶部で記憶するステップと、時間経過に対する前記合計値の変化を時間の一次関数で近似した場合の一次係数の推定値を前記演算部で計算するステップと、前記一次係数の推定値の値に応じて、物品の需要の増減動向を前記演算部で判定するステップとを含み、前記需要量推定ステップは、定期的な過去の所定時点を起点とする複数の所定期間内での一の供給経路に対応付けられた供給実績量を個別に前記記憶部で記憶し、時間経過に対する前記供給実績量の変化を時間の一次関数で近似した場合の一次係数及び切片の推定値を前記演算部で計算するステップと、前記一次係数及び切片の推定値を用いた前記一次関数に、物品の発注時点を起点とする所定期間に対応する時間の値を代入することによって、前記需要量の推定値を前記演算部で計算するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る物品発注量決定方法は、前記割増指数決定ステップは、物品の需要量の真値を前記割増指数に係る確率で含む信頼区間で物品の需要量を区間推定するための前記割増指数の値を、前記演算部で判定した前記需要動向に応じて決定するステップを含み、前記需要量予測ステップは、前記演算部が前記需要量推定ステップで用いた時間経過に対する過去の物品の供給実績量のサンプル数をnとした自由度(n−2)のt分布に基づいて、前記需要量の推定値を中心値とした前記信頼区間の上限値を、物品の需要予測量として前記演算部で決定するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る物品発注量決定方法は、前記在庫量予測ステップは、発注時点での物品の在庫量、及び発注時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点で納品確定済みの物品の納品量を前記記憶部で記憶し、発注時点から物品の納品時点までの各時点での物品の在庫予測量を順に計算することによって、物品の納品時点での物品の在庫予測量である納品時在庫予測量を前記演算部で計算する納品時在庫予測量計算ステップと、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量を、前記納品時在庫予測量に、物品の納品時点から前記各時点までに納品確定済みの物品の納品量を加算し、更に物品の納品時点から前記各時点までの需要予測量を減算することによって前記演算部で計算するステップとを含み、前記発注量決定ステップは、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量の内、最小の値を有する最小在庫予測量を前記演算部で選択するステップと、物品の発注量を、所定の最低在庫量と前記最小在庫予測量との差に応じた値に前記演算部で決定するステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る物品発注量決定方法は、前記納品時在庫予測量計算ステップは、発注時点から物品の納品時点までの任意の時点での需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小であるか否かを前記演算部で判定するステップと、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小である場合は、前記演算部で、前記時点での物品の供給予測量を前記需要予測量に応じた値とするステップと、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量以上である場合は、前記演算部で、前記時点での物品の供給予測量を前記時点の直前での物品の在庫予測量以下の値とするステップと、前記時点での物品の在庫予測量を、前記時点の直前での物品の在庫予測量から前記供給予測量を減算して前記時点での納品確定済みの物品の納品量を加算することによって前記演算部で計算するステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る物品発注量決定方法は、発注時点から次回の発注時点までの間に、物品を予備的に発注する予備発注時点を設けてあり、過去の物品の供給実績量に基づいて、予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を前記演算部で計算するステップと、前記演算部で計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を前記演算部で決定するステップと、前記演算部で決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を前記演算部で計算するステップと、前記演算部で計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定するステップとを更に含むことを特徴とする。
【0018】
第8発明に係る物品発注量決定装置は、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する装置において、過去の物品の供給実績量を記憶する手段と、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定する手段と、該手段が判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を決定する手段と、過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算する手段と、該手段が計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定する手段と、該手段が決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算する手段と、該手段が計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定する手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
第9発明に係る物品発注量決定装置は、発注時点から次回の発注時点までの間に、物品を予備的に発注する予備発注時点を設定してあり、過去の物品の供給実績量に基づいて、予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算する手段と、該手段が計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定する手段と、該手段が決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算する手段と、該手段が計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定する手段とを更に備えることを特徴とする。
【0020】
第10発明に係るコンピュータプログラムは、過去の物品の供給実績量を記憶するコンピュータに、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定させるコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定させる手順と、コンピュータに、判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を決定させる手順と、コンピュータに、過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算させる手順と、コンピュータに、計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定させる手順と、コンピュータに、決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算させる在庫量予測手順と、コンピュータに、計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定させる発注量決定手順とを含むことを特徴とする。
【0021】
第11発明に係るコンピュータプログラムは、前記在庫量予測手順は、コンピュータに、発注時点から物品の納品時点までの各時点での物品の在庫予測量を順に計算することによって、物品の納品時点での物品の在庫予測量である納品時在庫予測量を計算させる納品時在庫予測量計算手順と、コンピュータに、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量を、前記納品時在庫予測量に、物品の納品時点から前記各時点までに納品確定済みの物品の納品量を加算し、更に物品の納品時点から前記各時点までの需要予測量を減算することによって計算させる手順とを含み、前記発注量決定手順は、コンピュータに、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量の内、最小の値を有する最小在庫予測量を選択させる手順と、コンピュータに、物品の発注量を、所定の最低在庫量と前記最小在庫予測量との差に応じた値に決定させる手順とを含むことを特徴とする。
【0022】
第12発明に係るコンピュータプログラムは、前記納品時在庫予測量計算手順は、コンピュータに、発注時点から物品の納品時点までの各時点での需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小であるか否かを判定させる手順と、コンピュータに、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小である場合は、前記時点での物品の供給予測量を前記需要予測量に応じた値とさせる手順と、コンピュータに、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量以上である場合は、前記時点での物品の供給予測量を前記時点の直前での物品の在庫予測量以下の値とさせる手順と、コンピュータに、前記時点での物品の在庫予測量を、前記時点の直前での物品の在庫予測量から前記供給予測量を減算して前記時点での納品確定済みの物品の納品量を加算することによって計算させる手順とを含むことを特徴とする。
【0023】
第13発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、過去の物品の供給実績量に基づいて、発注時点から次回の発注時点までの間に設けた予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算させる手順と、コンピュータに、計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定させる手順と、コンピュータに、決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算させる手順と、コンピュータに、計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定させる手順とを更に含むことを特徴とする。
【0024】
第1、第2、第8及び第10発明においては、過去の所定期間における時間経過に対する供給実績量の変化に基づいて、物品の需要量が増加する傾向であるか又は減少する傾向であるかの需要動向を求め、物品の需要予測量の割増度合いを需要動向に応じて決定し、需要動向に応じた需要予測量に基づいて将来の在庫予測量を計算し、在庫予測量に応じて物品の発注量を決定する。
【0025】
第3発明においては、複数の供給経路で供給された物品の供給実績量の合計値の時間経過に対する変化に基づいて物品の需要動向を決定し、一の供給経路で供給された物品の供給実績量の時間経過に対する変化に基づいて物品の需要量の推定値を計算する。
【0026】
第4発明においては、需要動向に応じた割増指数に係る確率で需要量の真値を含み、需要量の推定値を中心値とした信頼区間で物品の需要量を区間推定し、信頼区間の上限値を物品の需要予測量とする。
【0027】
第5及び第11発明においては、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点での物品の在庫予測量を計算し、更に次回の発注による納品時点までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量(最低在庫量)となるように今回の発注量を決定する。
【0028】
第6及び第12発明においては、物品の納品時点での物品の在庫予測量を計算する際に、ある時点の需要予測量がその時点の直前の在庫予測量以上である場合にはその時点の販売予測量はその時点の直前の在庫予測量以下であるとすることにより、物品の欠品による売り逃し量を販売予測量から除外する。
【0029】
第7、第9及び第13発明においては、発注時点の間に予備発注時点を設け、予備発注時点での発注量がゼロであるとした仮定の下で、次回の発注による納品時点までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量となるように予備発注時点での発注量を決定する。
【発明の効果】
【0030】
第1、第2、第8及び第10発明にあっては、物品の需要動向を求め、求めた需要動向に応じて、物品の需要量が増加する傾向である場合は物品の需要予測量をより多めに見積もり、物品の需要量が減少する傾向である場合は物品の需要予測量をより少な目に見積もることができるので、物品の欠品及び物品の在庫過剰のいずれの発生をも抑制することが可能となる。特にライフサイクルが短い物品の在庫量を欠品及び在庫過剰の発生を抑制しながら適切な状態に保つことができる。また、需要動向に応じて物品の発注量を調整する業務は従来は人手で行っていたのに対して、この業務を自動で行うことができるので、物品の発注管理に必要な労力が削減される。従って、物品の発注管理に必要な人件費を削減することが可能となる。
【0031】
第3発明にあっては、複数の供給経路での供給実績量の合計に基づいて物品の需要動向を決定するので、全般的な需要の増減に対応した発注量の管理が可能となる。また一の供給経路での供給実績量に基づいて各供給経路での需要量の推定値を計算しているので、各供給経路の実情に応じた物品の需要量を推定することができる。
【0032】
第4発明にあっては、物品の需要量が増加する傾向である場合は信頼区間を大きくとり、物品の需要量が減少する傾向である場合は信頼区間を小さくとることにより、需要動向に応じて物品の需要予測量を増減させることができる。
【0033】
第5及び第11発明にあっては、今回の発注による納品時点ではなく、次回の発注による納品時点までの在庫予測量に基づいて物品の発注量を決定するので、次回の発注によって物品が納品されるまで在庫量が十分に保たれるように今回の発注量を決定することにより、物品の欠品の発生を可及的に防止することが可能となる。
【0034】
第6及び第12発明にあっては、物品の欠品による売り逃し量を供給予測量から除外することにより、売り逃し量に対応する量が物品の発注量から差し引かれることとなるので、売り逃し量に対応した量の物品が納品されることに起因する在庫過剰の発生を防止することが可能となる。
【0035】
第7、第9及び第13発明にあっては、時系列上で離散的な発注時点の間の予備発注時点において予備的に物品を発注することができるので、発注をし忘れるか又は予想以上に物品の需要が多い等の理由により予想外に在庫量が過小となった場合に必要な量の物品を予備発注時点で発注することにより、物品の欠品の発生を可及的に抑制することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。以下の記述では複数の店舗(供給経路)で複数種類の商品(物品)を販売(供給)する小売業で、本発明に係る物品である商品の発注を行う場合を例として本発明を説明する。
【0037】
図1は、本発明の物品発注量決定装置を用いて商品の発注を管理するシステムの構成を示すブロック図である。このシステムは、小売業でのPOSシステムを利用して構成されている。本発明の物品発注量決定装置1はサーバ装置であり、小売業の本店又はデータセンタ等に設置されている。また物品発注量決定装置1は、インターネット等の通信ネットワークNに接続されている。
【0038】
複数の店舗S,S,…の夫々には、レジスタ又はパーソナルコンピュータ等を用いた店舗端末31が設けられている。店舗端末31にはバーコードリーダ32が接続されており、バーコードリーダ32は、商品に備えられたバーコードを商品の販売時に読み込み、読み込んだバーコードの情報を店舗端末31へ送信する構成となっている。店舗端末31は通信ネットワークNに接続されており、バーコードリーダ32が読み込んだバーコードの情報を通信ネットワークNを介して物品発注量決定装置1へ送信する構成となっている。また店舗端末31は、商品の在庫量、納品量、返品の情報、顧客からの注文の情報、又は店舗間移動の情報等、バーコードの情報以外の商品に係る情報を店員の操作により入力され、入力された情報を通信ネットワークNを介して物品発注量決定装置1へ送信する構成となっている。
【0039】
物品発注量決定装置1には、商品の名称、種類、仕入れ値、及び売価等の商品の情報とバーコードの情報とを互いに関連付けて記憶しているデータベースである商品データベース2が接続されている。物品発注量決定装置1は、店舗端末31,31,…から通信ネットワークNを介して送信されたバーコードの情報を受信し、受信したバーコードの情報を商品データベース2が記憶している情報と対照することによって、各店舗で販売された商品の情報を獲得し、各店舗で販売された商品の名称、種類、売価、及び販売量等の情報を店舗別・商品別に記憶する。なお、店舗Sでは、バーコードに限らず、2次元バーコード又は無線タグ等を用いて商品の情報を管理する形態であってもよい。
【0040】
更に通信ネットワークNには、商品を卸売りする仕入先Bに設けられた仕入先サーバ装置4が接続されている。物品発注量決定装置1は、本発明の物品発注量決定方法を用いて定期的に各店舗での各商品の発注量を決定する処理を行い、発注量が決定された商品の発注を指示する発注情報を通信ネットワークNを介して仕入先サーバ装置4へ送信することによって、商品の発注を行う構成となっている。
【0041】
図2は、本発明の物品発注量決定装置1の内部の機能構成を示す機能ブロック図である。物品発注量決定装置1は、演算を行うCPU(演算部)11と、演算に伴って発生する一時的な情報を記憶するRAM12と、CD−ROMドライブ等の外部記憶装置13と、ハードディスク等の内部記憶装置(記憶部)14とを備えている。CPU11は、CD−ROM等の記録媒体10から本発明のコンピュータプログラム100を外部記憶装置13にて読み取り、読み取ったコンピュータプログラム100を内部記憶装置14に記憶させる。コンピュータプログラム100は必要に応じて内部記憶装置14からRAM12へロードされ、ロードされたコンピュータプログラム100に基づいてCPU11は物品発注量決定装置1に必要な処理を実行する。
【0042】
また物品発注量決定装置1は、通信ネットワークNに接続された通信部15と、商品データベース2に接続されたインタフェース部16とを備えている。CPU11は、通信部15を用いて通信ネットワークNとの間で情報を送受信し、インタフェース部16を介して商品データベース2との間で情報を交換する。
【0043】
なお、本発明のコンピュータプログラム100は、物品発注量決定装置1に接続された図示しない他のサーバ装置から物品発注量決定装置1へロードされて内部記憶装置14に記憶される形態であってもよい。
【0044】
内部記憶装置14は、どの店舗で何の商品がいつどれだけの量販売されたかの実績を示す情報(供給実績量)からなる販売データ14aを記憶している。販売データ14aは、各商品をカテゴリ別に分類し、分類された商品の過去の販売量を示す情報を含む。なお販売量は金額で記録されていてもよく、また販売量が商品の数量で記録されている場合は、販売データ14aは商品の単価を示す情報を含んでいる。各カテゴリには一般に複数種類の商品が含まれており、同一カテゴリに含まれる各商品の単価は一般に異なっている。また販売データ14aは、店頭での販売か、注文による販売か、又は商品の店舗間移動による販売か等の商品の販売形態を示す情報をも含んでいる。また内部記憶装置14は、各店舗での各商品の在庫量を示す在庫データ14bを記憶している。在庫データ14bは、各店舗の店舗端末31から送信された在庫量の情報、又は各店舗での商品の販売量と納品量とから計算される在庫量の情報などからなっている。また内部記憶装置14は、各店舗に納品された各商品の納品量及び納品日(納品時点)を示す情報と、各店舗に納品される予定の各商品の納品予定量及び納品予定日を示す情報とを含む納品データ14cを記憶している。また内部記憶装置14は、商品の注文による予約、又は商品の店舗間移動の予約など、商品の販売の予定を示す情報からなる予定データ14iを記憶している。
【0045】
コンピュータプログラム100は、商品の販売量の季節変動を示す季節指数を計算する季節指数計算処理と、各商品の販売動向(需要動向)を需要予測量の割増量に反映させる販売動向反映処理と、各店舗での発注日(発注時点)に物品の発注量を決定する本発注処理と、必要に応じて予備的に発注すべき物品の発注量を決定する予備発注処理とを物品発注量決定装置1が行うためのプログラムを含んでいる。
【0046】
次に、本発明の物品発注量決定方法の内容をフローチャートを用いて説明する。内部記憶装置14は、1月1日を第1週とした第53週までの各週において各商品が一週間の間に全店舗で販売された量の合計を示す週別販売情報からなる週別販売データ14eを記憶している。週別販売データ14eは、販売データ14aと同様のカテゴリに分類して各商品の週別販売情報を記録している。また内部記憶装置14は、各カテゴリに含まれる商品の各週での販売金額の合計を示す季節指数をカテゴリ別に記録した季節指数データ14dを記憶している。週別販売データ14e及び季節指数データ14dは、過去の各週に係る情報を記録しており、物品発注量決定装置1は、一週間毎に最新の週別販売情報及び季節指数を計算する季節指数計算処理を行う。
【0047】
図3は、本発明の物品発注量決定装置1が行う季節指数計算処理の手順を示すフローチャートである。物品発注量決定装置1のCPU11は、RAM12にロードした本発明のコンピュータプログラム100に従って以下の処理を実行する。
【0048】
CPU11は、週の終わりの所定の時点でその週分の計算を行うべく自動的に処理を開始するか、週の始めの所定の時点で先週分の計算を行うべく自動的に処理を開始するか、又は図示しない受付部にて処理開始の指示を受け付けることによって処理を開始する。CPU11は、まず、複数の商品の中から週別販売情報及び季節指数を計算すべき商品を選択する(S11)。CPU11は、次に、内部記憶装置14が記憶している販売データ14a及び週別販売データ14eから、選択した商品と同一カテゴリに含まれる商品である類似商品の販売金額の合計を示す情報を読み出す(S12)。ここで、販売データ14a及び週別販売データ14eが金額で商品の販売量を記録している場合は、CPU11は、同一カテゴリの商品の販売金額を合計する処理を行い、販売データ14a及び週別販売データ14eが数量で商品の販売量を記録している場合は、CPU11は、同一カテゴリの各商品の販売数量と単価との積を合計する処理を行う。CPU11は、次に、最新の一週間における全店での類似商品の販売金額を合計した週別販売情報yi を計算し(S13)、計算した週別販売情報yi を週別販売データ14eに記録する(S14)。なお、ここでは最新の週を一年間の中の第i週目とする。
【0049】
CPU11は、次に、最新のN年間における各年の第i週目の週別販売情報yi を合計した季節指数S(i)を計算し(S15)、計算した季節指数S(i)を季節指数データ14dに記録する(S16)。季節指数は、毎年定期的に発生する類似商品の販売金額の増減を表している。CPU11は、次に、全てのカテゴリの商品について最新の週別販売情報及び季節指数を計算したかを判定する(S17)。最新の週別販売情報及び季節指数を計算していないカテゴリの商品がある場合は(S17:NO)、CPU11は、処理をステップS11へ戻し、まだ最新の週別販売情報及び季節指数を計算していないカテゴリの商品を選択する。全てのカテゴリの商品について最新の週別販売情報及び季節指数を計算している場合は(S17:YES)、CPU11は、季節指数計算処理を終了する。
【0050】
なお、1月1日を含む週を第1週とすると第1週目及び第53週目は日数が7日未満である可能性があるが、この場合は数日間の情報を7日間分に対応する情報に変換して処理を行う。またNの値は1〜2が適当である。また閏年の場合は第54週目が存在する可能性があるが、この場合は第54週目の情報は計算しない。また、決算年度の初日など、1月1日以外の日を含む週を第1週として処理を行ってもよい。また、週の起算曜日はどの曜日としてもよい。また、各カテゴリに含まれる商品のN年間に渡る各週での販売金額の合計を季節指数としているが、各カテゴリに含まれる商品の各週での販売金額のN年間の平均値を季節指数として計算してもよい。季節指数計算処理が終了した後は、内部記憶装置14が記憶している季節指数データ14dは、最新の週を第i週目として、今年までのN年間の商品の販売量から計算された第1週目〜第i週目の季節指数と、去年までのN年間の商品の販売量から計算された第(i+1)週目〜第53週目の季節指数とが記録されていることとなる。
【0051】
物品発注量決定装置1は、季節指数計算処理を行った後で、各商品の販売動向を検証し、販売動向に応じて本発明に係る割増指数を決定する販売動向反映処理を行う。図4は、本発明の物品発注量決定装置1が行う販売動向反映処理の手順を示すフローチャートである。物品発注量決定装置1のCPU11は、RAM12にロードした本発明のコンピュータプログラム100に従って以下の処理を実行する。
【0052】
CPU11は、まず、複数の商品の中から割増指数を決定すべき商品を選択する(S21)。CPU11は、次に、内部記憶装置14が記憶している週別販売データ14e及び季節指数データ14dから、選択した商品に係る最新の過去n週分の週別販売情報yi 及び季節指数S(i)を読み出す(S22)。ここで最新の週を第i0週とする。CPU11は、(i0 −n+1)≦i≦i0 であるn個の週別販売情報yi 夫々を下記式に示す如くS(i)/S(i0 )で除することによって補正した補正週別販売情報yi ’を計算する(S23)。
【0053】
【数1】
【0054】
週別販売情報yi は、季節指数を用いて補正されることで、季節要因による販売量の変動を除外される。なお、週別販売情報yi をS(i)/S(i0 )ではなくS(i)で除する等、その他の方法で季節指数を用いて週別販売情報yi を補正する処理を行ってもよい。
【0055】
ここで、最新の第i0 週を第−1週とした相対週数を示すxiと推定誤差εi とを用いて補正週別販売情報yi’を下記式の如く表す線形回帰モデルを考える。
【0056】
【数2】
【0057】
(2)式におけるa及びbは定数である。本発明では、商品の販売量が増加する傾向であるか又は減少する傾向であるかの販売動向を示す指標として時間の一次係数である(2)式の回帰係数bの推定値bハットを用いる。bハットは、(i0 −n+1)≦i≦i0 でのyi ’,xi の平均値をyバー,xバーとして、下記式で与えられる。
【0058】
【数3】
【0059】
CPU11は、次に、(i0 −n+1)≦i≦i0 でのyi ’の平均値yバーを計算し(S24)、(3)式を用いてbの推定値bハットを計算し(S25)、bハットをyバーで除した(bハット/yバー)を計算する(S26)。
【0060】
ところで、商品の販売動向は(2)式においてbが正であれば販売増加傾向にあり、bが負であれば販売減少傾向にある。商品の販売動向が販売増加傾向にあるほど商品の需要予測量は多めに見積もる必要がある。本発明では、商品の販売量の真値を信頼係数(1−α)%の確率で含むような信頼区間で商品の販売量を区間推定する。信頼区間を大きく取るほど需要予測量の変動幅を大きく見積もることになるので、本発明の割増指数としてbの値に対応した信頼係数(1−α)の値を選ぶことで、販売動向に応じて需要予測量の割増度合いを決定することができる。
【0061】
内部記憶装置14は、(bハット/yバー)の値と信頼係数(1−α)との値を対応付けて記録した信頼係数表14fを記憶している。図5は、信頼係数表14fの内容例を示す概念図である。(bハット/yバー)の値が正である場合は、商品の販売動向が販売増加傾向であって商品の需要予測量を多めに見積もる必要があるので、例えば0.4よりも大である(bハット/yバー)に対して、需要予測量の見積もりが大きくなるように信頼係数(1−α)=0.8が対応付けられている。(bハット/yバー)の値が負である場合は、商品の販売動向が販売減少傾向であって商品の需要予測量を多めに見積もると売れ残りによる在庫過剰が発生する可能性があるので、例えば−0.4よりも小である(bハット/yバー)に対して、需要予測量の見積もりがより小さくなるように信頼係数(1−α)=0.2が対応付けられている。このようにして、信頼係数表14fでは販売動向に応じた信頼係数(1−α)の値が規定されている。
【0062】
CPU11は、信頼係数表14fと計算した(bハット/yバー)の値とを対照し(S27)、(bハット/yバー)の値に対応した信頼係数(1−α)の値を信頼係数表14fから読み出すことにより、信頼係数(1−α)の値を決定する(S28)。CPU11は、次に、決定した信頼係数(1−α)の値を示す信頼係数データ14gを内部記憶装置14に記憶させる(S29)。CPU11は、次に、全ての商品について信頼係数(1−α)を決定する処理を行ったかを判定する(S210)。未処理の商品がある場合は(S210:NO)、CPU11は、処理をステップS21へ戻し、未処理の商品を選択する。全ての商品について信頼係数(1−α)を決定する処理を行っている場合は(S210:YES)、CPU11は、販売動向反映処理を終了する。
【0063】
以上の販売動向反映処理では、nの値が大きすぎると販売動向の変化が早い商品の販売動向を把握することができず、nの値が小さすぎるとはずれ値の影響を受けやすくなるので、nの値は4〜6程度が望ましい。なお、販売動向反映処理では、(bハット/yバー)の値ではなくbハットの値に対応させて信頼係数(1−α)の値を決定する処理を行ってもよい。
【0064】
物品発注量決定装置1は、各店舗での商品の発注日に、商品の発注量を決定する本発注処理を行う。本実施の形態においては、店舗Sでの発注日は毎週の月曜日とし、月曜日に発注した物品の納品日は金曜日であるとする。また本発明では、物品発注量決定装置1が本発注処理を行って物品を発注する発注日を本発注日とし、定期的な本発注日の間に、必要に応じて予備的に物品を発注する予備発注日(予備発注時点)を設ける。物品発注量決定装置1は、予備発注日に、必要に応じた物品の発注量を決定する予備発注処理を行う。本実施の形態においては、予備発注日は毎週木曜日であるとし、木曜日に発注した物品の納品日は次週の火曜日であるとする。
【0065】
図6は、発注日と納品日との関係を示す概念図である。図中の横軸は曜日で示した時間であり、発注日を丸で、納品日を三角で示した。特に本発注処理を行う今回本発注日を二重丸で示す。今回本発注日と今回の発注による物品の納品日である本納品日との間には、前週の予備発注による予備納品日がある。また今回の発注による本納品日と次回本発注日での発注による本納品日との間にも、今週の予備発注による予備納品日がある。物品発注量決定装置1が本発注処理を行う段階では、前週の予備発注による発注量は既に決定されており、今回本発注での発注量、今週の予備発注での発注量、及び次回の本発注での発注量は未定となっている。
【0066】
図6に示す如く、今回本発注日から今回本発注日での発注による本納品日までの日数をd1 とし、今回本発注日から次回本発注日での発注による本納品日までの日数をd2日とする。また、今回本発注日と次回本発注日との間に位置する予備発注日からこの予備発注日での発注による予備納品日までの日数をd3 とし、この予備発注日から次回本発注日での発注による本納品日までの日数をd4日とする。
【0067】
図7は、本発明の物品発注量決定装置1が行う本発注処理の手順を示すフローチャートである。物品発注量決定装置1のCPU11は、RAM12にロードした本発明のコンピュータプログラム100に従って以下の処理を実行する。
【0068】
CPU11は、発注日の所定の時点で自動的に処理を開始するか、又は図示しない受付部にて処理開始の指示を受け付けることによって本発注処理を開始する。CPU11は、まず、複数の商品の中から本発注処理を行うべき商品を選択する(S31)。CPU11は、次に、d=1〜d2 とした発注日からの各d日間に販売される商品の需要予測量を計算する需要予測量計算処理を行う(S32)。
【0069】
本発明に係る需要予測量計算処理では、過去n週間の各週について本発注日と同じ曜日からd日間の商品の販売量を合計したサンプルデータYi を用いて需要量を予測する。ここで、サンプルデータYi の値は、d>7である場合は、全体に一週間分過去へずらした日を起点としたd日間の商品の販売量を合計した値とし、dの値が7の倍数を越える都度、更に一週間分過去へずらした日を起点としたd日間の商品の販売量を合計した値とする。今回発注日が含まれる週である今週を第0週とした相対週数を示すxi と推定誤差εi とを用いて、相対週数xi が示す週の本発注日と同じ曜日からd日間の商品の販売量を合計したサンプルデータYi を下記式の如く表す線形回帰モデルを考える。
【0070】
【数4】
【0071】
ここで、(4)式における切片である回帰係数Aと時間の一次係数である回帰係数Bとの推定値をAハット,Bハットとし、過去のn個のxi ,Yi の平均値をxバー,Yバーとする。kを自然数としてdの値が7(k−1)<d≦7kである場合のAハット及びBハットは、下記式で与えられる。
【0072】
【数5】
【0073】
(5)式により、d≦7である場合は−n≦xi ≦−1のデータからAハット及びBハットが計算され、7<d≦14である場合は−n−1≦xi ≦−2のデータからAハット及びBハットが計算される。Aハット及びBハットを用いて、相対週数xi が示す週に係る販売量の推定値Yiハットは下記式で表される。
【0074】
【数6】
【0075】
(6)式で得られるYi ハットは、相対週数xi が示す週に係る販売量の期待値である。このとき、下記式で定義されるYi ’は自由度n−2のt分布に従うことが知られている。
【0076】
【数7】
【0077】
内部記憶装置14は、t分布においてtの値がtq 以上である部分の面積がqとなるようなtq の値を自由度及びqの値と関連付けて記録したt分布表14hを記憶している。商品の販売量の真値を信頼係数(1−α)%の確率で含むような相対週数xi が示す週に係る販売量の予測値Yの信頼区間は、販売量の推定値Yi ハットを中心値とし、t分布表14hに含まれるtα/2を用いて下記式で表される。
【0078】
【数8】
【0079】
本発明では、予測量として信頼区間の上限値を採用する。従って、xi =0である今週のd日間に商品が販売されると予想される需要量の予測値Yは、(6)式及び(8)式にxi =0を代入することによって下記式で表される。
【0080】
【数9】
【0081】
図8及び9は、ステップS32の需要予測量計算処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は、内部記憶装置14が記憶している信頼係数データ14gが示す信頼係数(1−α)の値を読み出す(S401)。CPU11は、内部記憶装置14が記憶しているt分布表14hと読み出した信頼係数(1−α)の値とを対照し(S402)、サンプルの週数nを決定し、自由度n−2のt分布におけるtα/2の値をt分布表14hから読み出すことにより、tα/2の値を決定する(S403)。CPU11は、次に、内部記憶装置14が記憶している販売データ14aから、選択した商品に係る情報を読み出し、季節指数データ14dから、選択した商品が分類されるカテゴリの季節指数を読み出す(S404)。ここで先週を第i0 週とする。CPU11は、販売データ14aから読み出した過去の夫々の一日における商品の販売量を示す販売量情報から、注文による販売又は店舗間移動による販売等の規定外の販売量を差し引き、季節指数の値S(i)及び基準となる所定の季節指数の値S0を用いたS(i)/S0 で規定外の販売量を差し引いた販売量情報を除して、販売量情報を補正する(S405)。ここで、基準となる所定の季節指数の値S0としては、第1週の季節指数の値S(1)、第i0 週の季節指数の値S(i0 )、去年までの販売量から計算されて季節指数データ14dに記録されている今週の季節指数の値S(i0+1)、又は予め定められている定数等の所定の値を用いる。CPU11は、次に、補正された販売量情報を示す補正販売データをRAM12に記憶させる(S406)。
【0082】
CPU11は、次に、d日間の商品の販売量を合計したサンプルデータYi を作成するためのdの値を1に初期化する(S407)。CPU11は、次に、RAM12が記憶する補正販売データが示す補正された販売量情報を適宜加算することによって、過去n週間の各週について今回本発注日と同一の曜日を起点としたd日間の商品の販売量を合計したサンプルデータYi を生成する(S408)。ここで、d>7である場合は、全体に一週間分過去へずらした日を起点としたd日間の商品の販売量を合計してサンプルデータYi を生成する。dの値が更に7の倍数を超える場合は、同様に更に一週間分過去へずらした販売量を合計してサンプルデータYi を生成する。
【0083】
CPU11は、次に、dの値から求められる7(k−1)<d≦7kである自然数kを代入した(5)式によりAハット及びBハットを計算し(S409)、(6)式を用いて−(n+k−1)≦xi ≦−kでのYi ハットを計算する(S410)。CPU11は、次に、(9)式を用いて、σハット及びKを計算し(S411)、需要量の推定値Yを計算する(S412)。CPU11は、次に、需要量の推定値Yに対して季節指数による補正を戻す(S413)。ここで、CPU11は、季節指数データ14dに記録されている今週の季節指数の値S(i0+1)とステップS405で用いた基準となる所定の季節指数の値S0 とを用いて、Yの値にS(i0+1)/S0を乗ずることにより補正を戻す。またCPU11は、季節指数データ14dに記録されている今週前後の複数週での季節指数の値を用いて所定の方法で計算した季節指数の移動平均の値S’(i0+1)を用いて、Yの値にS’(i0+1)/S0を乗ずることにより補正を戻してもよい。CPU11は、次に、内部記憶装置14が記憶している予定データ14iに含まれる注文の予約又は店舗間移動の予約等、今回本発注日からd日間の商品の固定販売量を追加し(S414)、生成された需要予測量S(d)をRAM12に記憶させる(S415)。なお、ステップS405で用いた基準となる所定の季節指数の値S0がS(i0+1)である場合は、ステップS413の処理を省略した処理を行ってもよい。
【0084】
CPU11は、次に、d=d2 であるか否かを判定する(S416)。d=d2 ではなかった場合は(S416:NO)、CPU11は、dの値を1インクリメントし(S417)、処理をステップS408へ戻して、新たなdの値に対する需要予測量S(d)を生成する。d=d2であった場合は(S416:YES)、CPU11は、ステップS32の需要予測量計算処理のサブルーチンを終了し、処理をメインルーチンへ戻す。
【0085】
CPU11は、次に、計算した需要予測量に基づいて今回本発注日に発注すべき発注量を決定する発注量決定処理を行う(S33)。発注量決定処理では、今回本発注日での商品の発注量がゼロであった場合に次回本発注日での発注による本納品日までの商品の在庫量を予測し、次回本発注日での発注による本納品日までの商品の在庫量が十分な量となるように今回本発注日での発注量を決定する。d≦d1 の期間では、今回本発注日での発注による本納品日以前であるので、商品の欠品が予想される場合でも納品量を増やすことによって欠品が発生しないように調整することはできない。一方d>d1の期間では、商品の欠品が予想される場合は本発注日での発注量を増やすことによって欠品が発生しないように調整することができる。従って在庫量を予測するためには、d≦d1とd>d1 との期間に分けて予測する必要がある。
【0086】
図10及び11は、ステップS33の発注量決定処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は、まずdの値を1に初期化する(S501)。CPU11は、次に、dの値がd1 より大きい値であるか否かを判定する(S502)。dの値がd1以下である場合は(S502:NO)、CPU11は、Q(d)を今回本発注日からd日後の末在庫予測量として、S(d)−S(d−1)の値がQ(d−1)の値より小さいか否かを判定する(S503)。但し、S(0)=0であり、Q(0)は今回本発注日での末在庫量とする。
【0087】
S(d)−S(d−1)の値がQ(d−1)の値より小さい場合は(S503:YES)、今回本発注日からd日目の需要予測量が(d−1)日後の末在庫予測量より小さい場合であり、S(d)からS(d−1)を減算した値が今回本発注日からd日目の販売予測量(供給予測量)となるので、CPU11は、今回本発注日からd日目の販売予測量SS(d)を、下記式で計算する(S504)。
SS(d)=S(d)−S(d−1)
【0088】
今回本発注日から(d−1)日後の末在庫量からd日目の販売量を減算した値がd日目の最小在庫量となるので、CPU11は、次に、今回本発注日からd日目の最小在庫予測量P(d)を、下記式で計算する(S505)。
P(d)=Q(d−1)−SS(d)
【0089】
今回本発注日からd日後の商品の納品量をI(d)とする。この納品量は、前回の本発注日での発注による納品、前回の予備発注日での発注による納品、又は不規則的な納品等、今回本発注日の時点で今回本発注日からd日後に納品されることが確定している納品確定済みの納品量である。今回本発注日からd日後の末在庫量はd日目の最小在庫量にd日後の納品量を加算した値となるので、CPU11は、次に、今回本発注日からd日後の末在庫予測量Q(d)を、下記式で計算する(S506)。
Q(d)=P(d)+I(d)
【0090】
CPU11は、次に、dを1インクリメントし(S507)、処理をステップS502へ戻す。
【0091】
ステップS503でS(d)−S(d−1)の値がQ(d−1)の値以上である場合は(S503:NO)、今回本発注日からd日目の需要予測量が(d−1)日後の末在庫予測量以上である場合であり、在庫量よりも多い
以上の商品を販売することはできないので、CPU11は、下記式に示す如く、今回本発注日からd日目の販売予測量SS(d)を(d−1)日後の末在庫予測量Q(d−1)に等しいとする(S508)。
SS(d)=Q(d−1)
【0092】
今回本発注日からd日目の販売予測量SS(d)が(d−1)日後の末在庫予測量Q(d−1)に等しいので、CPU11は、下記式に示す如く、今回本発注日からd日目の最小在庫予測量P(d)を0とし(S509)、処理をステップS506へ進める。
P(d)=0
【0093】
ステップS502でdの値がd1 より大きい値である場合は(S502:YES)、CPU11は、今回本発注日からd1日目の最小在庫予測量P(d1 )(納品時在庫予測量)を用いて、今回本発注日からd日目の最小在庫予測量P(d)を下記式で計算する(S510)。
【0094】
【数10】
【0095】
(10)式は、今回本発注日からd1 日目の最小在庫予測量P(d1 )とd1日目〜(d−1)日目の納品量との和から(d1 +1)日目〜d日目の需要予測量を減算した値が、最小在庫予測量P(d)となることを示している。なお、(10)式においてはI(d1)=0である。またこのときのP(d)は負の値となってもよい。
【0096】
CPU11は、次に、計算したP(d)の値をRAM12に記憶させる(S511)。CPU11は、次に、d=d2 であるか否かを判定する(S512)。dの値がd2 ではない場合は(S512:NO)、CPU11は、dを1インクリメントし(S513)、処理をステップS510へ戻す。
【0097】
ステップS512でd=d2 である場合は(S512:YES)、CPU11は、RAM12が記憶しているP(d1+1)〜P(d2 )の中で最小のP(d)を与えるdであるdm の値を決定する(S514)。(d1+1)日目〜d日目の間に商品の欠品を発生させないようにするためには、在庫量が最小となるときの在庫量が、正の値である所定の最低在庫量m以上であれば良い。
【0098】
CPU11は、次に、P(dm )が所定の最低在庫量mよりも小さい値であるか否かを判定する(S515)。P(dm)が所定の最低在庫量mよりも小さい値であった場合は(S515:YES)、CPU11は、発注量hを下記式で計算する(S516)。
h=m−P(dm )
【0099】
実際の発注量は商品の発注ロットの制約を受けるので、CPU11は、商品の発注ロット数をrとし、自然数aをbで除した余りをmod(a,b)として、今回本発注日での商品の実際の発注量Hを下記式で計算し(S517)、発注量決定処理のサブルーチンを終了して処理をメインルーチンへ戻す。
H=(h+r−1)−mod(h+r−1,r) …(11)
【0100】
ステップS515でP(dm )が所定の最低在庫量m以上の値であった場合は(S515:NO)、本発注日での発注による発注量がゼロであっても商品の在庫量は十分であるので、CPU11は、商品の実際の発注量Hを0とし(S518)、ステップS33の発注量決定処理のサブルーチンを終了して処理をメインルーチンへ戻す。
【0101】
CPU11は、次に、全ての商品について発注量決定処理を行ったか否かを判定する(S34)。発注量決定処理を行っていない商品がある場合は(S34:NO)、CPU11は、処理をステップS31へ戻し、まだ発注量を決定していない商品を選択する。全ての商品について発注量決定処理を行っている場合は(S34:YES)、CPU11は、発注量を決定した商品の発注処理を行う(S35)。このときCPU11は、発注量が決定された商品の発注を指示する発注情報を通信ネットワークNを介して仕入先サーバ装置4へ送信することによって商品の発注を行ってもよく、商品の発注伝票を出力して人手で発注させることによって商品の発注を行ってもよい。CPU11は、次に、商品の発注量情報を納品データ14cに記録し(S36)、本発注処理を終了する。
【0102】
物品発注量決定装置1は、各店舗の本発注日に、各店舗での商品の発注量を決定するための前述の如き本発注処理を行う。店舗Sでは、本発注処理によって発注量が決定された商品が本納品日に納品され、商品の販売が行われる。なお各店舗の本発注日が同一である場合は、物品発注量決定装置1は、各店舗に係る本発注処理を順に行う形態であってもよい。
【0103】
物品発注量決定装置1は、各店舗での予備発注日に、物品の予備発注量を決定する予備発注処理を行う。予備発注処理の内容は、図7にフローチャートを示した本発注処理の内容とほぼ同様であり、物品発注量決定装置1は、本発注処理で用いるd1 ,d2 の値を予備発注処理ではd3,d4 として処理を行い、本発注処理では本発注日、本納品日又は本発注日と同一の曜日を起点とした計算処理を、予備発注処理では予備発注日、予備納品日又は予備発注日と同一の曜日を起点として処理する。予備発注処理によって、物品発注量決定装置1は、予備納品日から次回の本納品日までの間の最小在庫予測量に応じて、商品の予備発注量を決定する。
【0104】
以上詳述した如く、本発明の物品発注量決定装置1は、過去n週間における週別販売量の時間経過に対する変化に基づいて、商品の販売量が増加する傾向であるか又は減少する傾向であるかの販売動向を求め、商品の需要予測量を多めに見積もる程度を販売動向に応じて決定する。商品の販売動向に応じて、商品の販売量が増加する傾向である場合は商品の需要予測量を多めに見積もり、商品の販売量が減少する傾向である場合は商品の需要予測量をより少な目に見積もることができるので、商品の欠品による売り逃し、及び商品の売れ残りによる在庫過剰のいずれの発生をも抑制することが可能となる。特にライフサイクルが短い商品の在庫量を欠品及び在庫過剰の発生を抑制しながら適切な状態に保つことができる。また、販売動向に応じて商品の発注量を調整する業務は従来は人手で行っていたのに対して、本発明の物品発注量決定装置1がこの業務を自動で行うので、商品の発注管理に必要な労力が削減される。従って、商品の発注管理に必要な人件費を削減することが可能となる。
【0105】
また本発明の物品発注量決定装置1は、過去の商品の販売量を全店舗(複数の供給経路)で合計した量の時間経過に対する変化に基づいて商品の販売動向を決定し、各店舗(一の供給経路)での過去の商品の販売量の時間経過に対する変化に基づいて商品の需要量の推定値を計算する。全店舗の販売量に基づいて商品の販売動向を決定するので、全般的な需要の増減に対応した発注量の管理が可能となる。また各店舗での販売量に基づいて各店舗での需要量の推定値を計算しているので、各店舗の実情に応じた商品の需要量を推定することができる。
【0106】
また本発明の物品発注量決定装置1は、販売動向に応じた信頼係数(1−α)%の確率で需要量の真値を含み、需要量の推定値を中心値とした信頼区間で商品の需要量を区間推定し、信頼区間の上限値を商品の需要予測量とする。商品の販売量が増加する傾向である場合は信頼区間を大きくとり、商品の販売量が減少する傾向である場合は信頼区間を小さくとることにより、販売動向に応じて商品の需要予測量を増減させることができる。
【0107】
また本発明の物品発注量決定装置1は、今回本発注日での商品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、今回本発注日での発注による本納品日での商品の在庫予測量を計算し、更に次回本発注日での発注による本納品日までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量である所定の最低在庫量以上となるように今回本発注日での発注量を決定する。今回本発注日での発注による本納品日ではなく、次回本発注日での発注による本納品日までの在庫予測量に基づいて商品の発注量を決定するので、次回の発注によって商品が納品されるまで在庫量が十分に保たれるように今回の発注量を決定することにより、商品の欠品の発生を可及的に防止することが可能となる。
【0108】
また本発明の物品発注量決定装置1は、今回本発注日での発注による本納品日での商品の在庫予測量を計算する際に、ある時点の需要予測量がその時点の在庫予測量以上となった場合にはその時点の販売予測量はその時点の在庫予測量以下であるとすることにより、商品の欠品による売り逃し量を販売予測量から除外する。これにより、売り逃し量に対応する量が商品の発注量から差し引かれることとなるので、売り逃し量に対応した量の商品が納品されることに起因する在庫過剰の発生を防止することが可能となる。
【0109】
更に本発明においては、本発注日の間に予備発注日を設け、本発明の物品発注量決定装置1は、予備発注日に、商品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、次回本発注日での発注による本納品日までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量となるように予備発注日での発注量を決定する。定期的な発注日の間の予備発注日において予備的に商品を発注することができるので、発注をし忘れるか又は予想以上に商品の販売量が多い等の理由により予想外に在庫量が過小となった場合に必要な量の商品を予備発注日に発注することにより、商品の欠品の発生を可及的に抑制することが可能となる。
【0110】
なお、本実施の形態においては、商品の本発注日及び予備発注日は週に一度とし、販売量に関する計算を週単位で行う形態を示したが、これに限るものではなく、発注日の間隔を10日又は一月等の一週間以外の期間とし、この期間を単位として販売量に関する計算を行う形態であってもよい。また本実施の形態においては、季節指数計算処理を毎週行う形態を示しているが、これに限るものではなく、1年間の各商品の販売量のデータがそろった段階で、各週での季節指数を計算する季節指数計算処理を一年間に1度のみ行う形態であってもよい。また本実施の形態においては、各店舗に関する本発注処理及び予備発注処理を一台の物品発注量決定装置1が一括して行う形態を示したが、これに限るものではなく、本発注処理及び予備発注処理は個々の店舗Sに設けられた情報処理装置で分散して行う形態であってもよい。
【0111】
また本実施の形態においては、複数の店舗で複数種類の商品を販売する小売業で本発明に係る物品である商品の発注を行う場合を例として本発明を説明しているが、本発明の適用分野はこれに限るものではなく、商品を仕入れて卸売り(供給)を行う卸売業、仕入れた食材(物品)を仕入れて飲食を提供(供給)する飲食業、又は仕入れた部品(物品)を組み立てて製品を製造(供給)する製造業等、小売業以外の分野に対しても適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の物品発注量決定装置を用いて商品の発注を管理するシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の物品発注量決定装置の内部の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の物品発注量決定装置が行う季節指数計算処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の物品発注量決定装置が行う販売動向反映処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】信頼係数表の内容例を示す概念図である。
【図6】発注日と納品日との関係を示す概念図である。
【図7】本発明の物品発注量決定装置が行う本発注処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】ステップS32の需要予測量計算処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】ステップS32の需要予測量計算処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】ステップS33の発注量決定処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】ステップS33の発注量決定処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0113】
1 物品発注量決定装置
10 記録媒体
100 コンピュータプログラム
2 商品データベース
31 店舗端末
32 バーコードリーダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の発注量を決定する方法に関し、特に販売業において商品の在庫量が適正になるように商品の発注量を決定する物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
商品を販売する小売業においては、品切れによる商品の欠品が生じないように、また在庫が過剰とならないように適切なタイミング及び発注量で商品を発注することが望ましい。このためには、商品の販売量及び在庫量を正確に把握し、商品の需要量を的確に予測して、商品を発注する適切なタイミング及び発注量を決定する必要がある。このような発注管理は、商品を仕入れて卸売りを行う卸売業、食材を仕入れて飲食を提供する飲食業、又は仕入れた部品を組み立てて製品を製造する製造業等、小売業以外の分野でも必要となっている。
【0003】
近年の販売業・製造業では、多店舗・多拠点で販売又は生産を行う形態が多く、また多品種で少量の物品の販売又は生産が主流となっている。これに伴って商品又は部品等の物品の発注管理を行うために必要な労力が増大しているので、発注管理の自動化・省力化が必要となっている。従来、販売業の分野ではPOS(Point of Sales)システムが、製造業の分野ではPOP(Point of Production )システムが実用化されており、これらの情報システムでは各物品の日々の販売量・生産量及び在庫量を示す情報を管理することができる。この情報システムが管理する情報を利用することによって、発注管理の自動化・省力化を行う技術が多数提案されている。
【0004】
特許文献1には、商品のライフサイクルが1年以上と比較的長い場合に、前年の売り上げの情報を用いて発注量を決定する技術が開示されている。また特許文献2には、ライフサイクルが比較的短い商品について、非定量的に商品の出荷がある場合でも適切な発注数量を決定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−198448号公報
【特許文献2】特開平11−306251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、数ヶ月〜半年程度の短い期間で販売がほぼ終了するようなライフサイクルがより短い商品が多くなってきている。このようにライフサイクルが特に短い商品は需要の変動が激しいので、商品の欠品による売り逃し、及び商品の売れ残りによる在庫過剰が発生しやすくなっている。従って、このような商品については、商品の販売動向に基づいて短期間での需要量を予想し、商品を発注する適切なタイミング及び発注量を決定する必要がある。例えば、新商品が発売された当初は商品の需要が多く売り逃しが発生する可能性が高いので、需要量を通常より多めに見積もって商品を発注する必要があり、新商品が発売されてからある程度の時間が過ぎた後は需要が少なくなって在庫過剰が発生する可能性が高いので、需要量をより少な目に見積もる必要がある。このように販売の動向に応じて需要の予測量を変動させて商品の発注管理を自動的に行う技術は提案されておらず、販売量のデータに基づいて商品を発注するタイミング及び発注量を人手で判断しているのが現状である。従って、ライフサイクルが短い商品の発注管理には多大な労力を必要とするという問題がある。
【0006】
また、商品の発注日と納品日との間にはタイムラグがあるので、発注日から納品日までの間に販売によって在庫が減少する量を見越して商品の発注量を決定する必要がある。しかし、発注日時点での在庫量と販売量との関係によっては、納品日以前に欠品が発生して売り逃しが発生することがあり、売り逃し量に対応する量の商品が納品日に納品されても販売機会は失われているので、売り逃し量に対応する量の商品が過剰在庫となるという問題がある。
【0007】
また従来の技術では、発注をし忘れるか又は予想以上に商品の販売量が多い等の理由により予想外に在庫が過小となった場合には、商品の欠品が発生する可能性が高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、物品の需要動向に応じて物品の発注量を決定する労力を軽減することができる物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的とするところは、売り逃し量に対応した量の物品が納品されることを防止することにより在庫過剰の発生を抑制することができる物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【0010】
更に本発明の他の目的とするところは、予想以上に商品の在庫が過小となった場合に追加で物品を発注することにより欠品の発生を抑制することができる物品発注量決定方法、物品発注量決定装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る物品発注量決定方法は、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する方法において、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定し、過去の物品の供給実績量及び前記需要動向に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要予測量を計算し、計算した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算し、計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定することを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る物品発注量決定方法は、記憶部及び演算部を備えるコンピュータを用いて、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する方法において、過去の物品の供給実績量を前記記憶部で記憶しておき、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を前記演算部で判定する需要動向判定ステップと、前記演算部で判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を前記演算部で決定する割増指数決定ステップと、過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を前記演算部で計算する需要量推定ステップと、前記演算部で計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を前記演算部で決定する需要量予測ステップと、前記演算部で決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を前記演算部で計算する在庫量予測ステップと、前記演算部で計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を前記演算部で決定する発注量決定ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る物品発注量決定方法は、前記記憶部は、過去の物品の供給実績量を、物品が供給された複数の供給経路の夫々に対応付けて記憶してあり、前記需要動向判定ステップは、過去の所定期間を構成する複数の小期間内で、複数の供給経路に対応付けられた供給実績量を合計した合計値を、各小期間別に前記記憶部で記憶するステップと、時間経過に対する前記合計値の変化を時間の一次関数で近似した場合の一次係数の推定値を前記演算部で計算するステップと、前記一次係数の推定値の値に応じて、物品の需要の増減動向を前記演算部で判定するステップとを含み、前記需要量推定ステップは、定期的な過去の所定時点を起点とする複数の所定期間内での一の供給経路に対応付けられた供給実績量を個別に前記記憶部で記憶し、時間経過に対する前記供給実績量の変化を時間の一次関数で近似した場合の一次係数及び切片の推定値を前記演算部で計算するステップと、前記一次係数及び切片の推定値を用いた前記一次関数に、物品の発注時点を起点とする所定期間に対応する時間の値を代入することによって、前記需要量の推定値を前記演算部で計算するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る物品発注量決定方法は、前記割増指数決定ステップは、物品の需要量の真値を前記割増指数に係る確率で含む信頼区間で物品の需要量を区間推定するための前記割増指数の値を、前記演算部で判定した前記需要動向に応じて決定するステップを含み、前記需要量予測ステップは、前記演算部が前記需要量推定ステップで用いた時間経過に対する過去の物品の供給実績量のサンプル数をnとした自由度(n−2)のt分布に基づいて、前記需要量の推定値を中心値とした前記信頼区間の上限値を、物品の需要予測量として前記演算部で決定するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る物品発注量決定方法は、前記在庫量予測ステップは、発注時点での物品の在庫量、及び発注時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点で納品確定済みの物品の納品量を前記記憶部で記憶し、発注時点から物品の納品時点までの各時点での物品の在庫予測量を順に計算することによって、物品の納品時点での物品の在庫予測量である納品時在庫予測量を前記演算部で計算する納品時在庫予測量計算ステップと、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量を、前記納品時在庫予測量に、物品の納品時点から前記各時点までに納品確定済みの物品の納品量を加算し、更に物品の納品時点から前記各時点までの需要予測量を減算することによって前記演算部で計算するステップとを含み、前記発注量決定ステップは、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量の内、最小の値を有する最小在庫予測量を前記演算部で選択するステップと、物品の発注量を、所定の最低在庫量と前記最小在庫予測量との差に応じた値に前記演算部で決定するステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る物品発注量決定方法は、前記納品時在庫予測量計算ステップは、発注時点から物品の納品時点までの任意の時点での需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小であるか否かを前記演算部で判定するステップと、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小である場合は、前記演算部で、前記時点での物品の供給予測量を前記需要予測量に応じた値とするステップと、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量以上である場合は、前記演算部で、前記時点での物品の供給予測量を前記時点の直前での物品の在庫予測量以下の値とするステップと、前記時点での物品の在庫予測量を、前記時点の直前での物品の在庫予測量から前記供給予測量を減算して前記時点での納品確定済みの物品の納品量を加算することによって前記演算部で計算するステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
第7発明に係る物品発注量決定方法は、発注時点から次回の発注時点までの間に、物品を予備的に発注する予備発注時点を設けてあり、過去の物品の供給実績量に基づいて、予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を前記演算部で計算するステップと、前記演算部で計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を前記演算部で決定するステップと、前記演算部で決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を前記演算部で計算するステップと、前記演算部で計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定するステップとを更に含むことを特徴とする。
【0018】
第8発明に係る物品発注量決定装置は、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する装置において、過去の物品の供給実績量を記憶する手段と、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定する手段と、該手段が判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を決定する手段と、過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算する手段と、該手段が計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定する手段と、該手段が決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算する手段と、該手段が計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定する手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
第9発明に係る物品発注量決定装置は、発注時点から次回の発注時点までの間に、物品を予備的に発注する予備発注時点を設定してあり、過去の物品の供給実績量に基づいて、予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算する手段と、該手段が計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定する手段と、該手段が決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算する手段と、該手段が計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定する手段とを更に備えることを特徴とする。
【0020】
第10発明に係るコンピュータプログラムは、過去の物品の供給実績量を記憶するコンピュータに、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定させるコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定させる手順と、コンピュータに、判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を決定させる手順と、コンピュータに、過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算させる手順と、コンピュータに、計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定させる手順と、コンピュータに、決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算させる在庫量予測手順と、コンピュータに、計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定させる発注量決定手順とを含むことを特徴とする。
【0021】
第11発明に係るコンピュータプログラムは、前記在庫量予測手順は、コンピュータに、発注時点から物品の納品時点までの各時点での物品の在庫予測量を順に計算することによって、物品の納品時点での物品の在庫予測量である納品時在庫予測量を計算させる納品時在庫予測量計算手順と、コンピュータに、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量を、前記納品時在庫予測量に、物品の納品時点から前記各時点までに納品確定済みの物品の納品量を加算し、更に物品の納品時点から前記各時点までの需要予測量を減算することによって計算させる手順とを含み、前記発注量決定手順は、コンピュータに、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量の内、最小の値を有する最小在庫予測量を選択させる手順と、コンピュータに、物品の発注量を、所定の最低在庫量と前記最小在庫予測量との差に応じた値に決定させる手順とを含むことを特徴とする。
【0022】
第12発明に係るコンピュータプログラムは、前記納品時在庫予測量計算手順は、コンピュータに、発注時点から物品の納品時点までの各時点での需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小であるか否かを判定させる手順と、コンピュータに、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小である場合は、前記時点での物品の供給予測量を前記需要予測量に応じた値とさせる手順と、コンピュータに、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量以上である場合は、前記時点での物品の供給予測量を前記時点の直前での物品の在庫予測量以下の値とさせる手順と、コンピュータに、前記時点での物品の在庫予測量を、前記時点の直前での物品の在庫予測量から前記供給予測量を減算して前記時点での納品確定済みの物品の納品量を加算することによって計算させる手順とを含むことを特徴とする。
【0023】
第13発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、過去の物品の供給実績量に基づいて、発注時点から次回の発注時点までの間に設けた予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算させる手順と、コンピュータに、計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定させる手順と、コンピュータに、決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算させる手順と、コンピュータに、計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定させる手順とを更に含むことを特徴とする。
【0024】
第1、第2、第8及び第10発明においては、過去の所定期間における時間経過に対する供給実績量の変化に基づいて、物品の需要量が増加する傾向であるか又は減少する傾向であるかの需要動向を求め、物品の需要予測量の割増度合いを需要動向に応じて決定し、需要動向に応じた需要予測量に基づいて将来の在庫予測量を計算し、在庫予測量に応じて物品の発注量を決定する。
【0025】
第3発明においては、複数の供給経路で供給された物品の供給実績量の合計値の時間経過に対する変化に基づいて物品の需要動向を決定し、一の供給経路で供給された物品の供給実績量の時間経過に対する変化に基づいて物品の需要量の推定値を計算する。
【0026】
第4発明においては、需要動向に応じた割増指数に係る確率で需要量の真値を含み、需要量の推定値を中心値とした信頼区間で物品の需要量を区間推定し、信頼区間の上限値を物品の需要予測量とする。
【0027】
第5及び第11発明においては、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点での物品の在庫予測量を計算し、更に次回の発注による納品時点までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量(最低在庫量)となるように今回の発注量を決定する。
【0028】
第6及び第12発明においては、物品の納品時点での物品の在庫予測量を計算する際に、ある時点の需要予測量がその時点の直前の在庫予測量以上である場合にはその時点の販売予測量はその時点の直前の在庫予測量以下であるとすることにより、物品の欠品による売り逃し量を販売予測量から除外する。
【0029】
第7、第9及び第13発明においては、発注時点の間に予備発注時点を設け、予備発注時点での発注量がゼロであるとした仮定の下で、次回の発注による納品時点までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量となるように予備発注時点での発注量を決定する。
【発明の効果】
【0030】
第1、第2、第8及び第10発明にあっては、物品の需要動向を求め、求めた需要動向に応じて、物品の需要量が増加する傾向である場合は物品の需要予測量をより多めに見積もり、物品の需要量が減少する傾向である場合は物品の需要予測量をより少な目に見積もることができるので、物品の欠品及び物品の在庫過剰のいずれの発生をも抑制することが可能となる。特にライフサイクルが短い物品の在庫量を欠品及び在庫過剰の発生を抑制しながら適切な状態に保つことができる。また、需要動向に応じて物品の発注量を調整する業務は従来は人手で行っていたのに対して、この業務を自動で行うことができるので、物品の発注管理に必要な労力が削減される。従って、物品の発注管理に必要な人件費を削減することが可能となる。
【0031】
第3発明にあっては、複数の供給経路での供給実績量の合計に基づいて物品の需要動向を決定するので、全般的な需要の増減に対応した発注量の管理が可能となる。また一の供給経路での供給実績量に基づいて各供給経路での需要量の推定値を計算しているので、各供給経路の実情に応じた物品の需要量を推定することができる。
【0032】
第4発明にあっては、物品の需要量が増加する傾向である場合は信頼区間を大きくとり、物品の需要量が減少する傾向である場合は信頼区間を小さくとることにより、需要動向に応じて物品の需要予測量を増減させることができる。
【0033】
第5及び第11発明にあっては、今回の発注による納品時点ではなく、次回の発注による納品時点までの在庫予測量に基づいて物品の発注量を決定するので、次回の発注によって物品が納品されるまで在庫量が十分に保たれるように今回の発注量を決定することにより、物品の欠品の発生を可及的に防止することが可能となる。
【0034】
第6及び第12発明にあっては、物品の欠品による売り逃し量を供給予測量から除外することにより、売り逃し量に対応する量が物品の発注量から差し引かれることとなるので、売り逃し量に対応した量の物品が納品されることに起因する在庫過剰の発生を防止することが可能となる。
【0035】
第7、第9及び第13発明にあっては、時系列上で離散的な発注時点の間の予備発注時点において予備的に物品を発注することができるので、発注をし忘れるか又は予想以上に物品の需要が多い等の理由により予想外に在庫量が過小となった場合に必要な量の物品を予備発注時点で発注することにより、物品の欠品の発生を可及的に抑制することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。以下の記述では複数の店舗(供給経路)で複数種類の商品(物品)を販売(供給)する小売業で、本発明に係る物品である商品の発注を行う場合を例として本発明を説明する。
【0037】
図1は、本発明の物品発注量決定装置を用いて商品の発注を管理するシステムの構成を示すブロック図である。このシステムは、小売業でのPOSシステムを利用して構成されている。本発明の物品発注量決定装置1はサーバ装置であり、小売業の本店又はデータセンタ等に設置されている。また物品発注量決定装置1は、インターネット等の通信ネットワークNに接続されている。
【0038】
複数の店舗S,S,…の夫々には、レジスタ又はパーソナルコンピュータ等を用いた店舗端末31が設けられている。店舗端末31にはバーコードリーダ32が接続されており、バーコードリーダ32は、商品に備えられたバーコードを商品の販売時に読み込み、読み込んだバーコードの情報を店舗端末31へ送信する構成となっている。店舗端末31は通信ネットワークNに接続されており、バーコードリーダ32が読み込んだバーコードの情報を通信ネットワークNを介して物品発注量決定装置1へ送信する構成となっている。また店舗端末31は、商品の在庫量、納品量、返品の情報、顧客からの注文の情報、又は店舗間移動の情報等、バーコードの情報以外の商品に係る情報を店員の操作により入力され、入力された情報を通信ネットワークNを介して物品発注量決定装置1へ送信する構成となっている。
【0039】
物品発注量決定装置1には、商品の名称、種類、仕入れ値、及び売価等の商品の情報とバーコードの情報とを互いに関連付けて記憶しているデータベースである商品データベース2が接続されている。物品発注量決定装置1は、店舗端末31,31,…から通信ネットワークNを介して送信されたバーコードの情報を受信し、受信したバーコードの情報を商品データベース2が記憶している情報と対照することによって、各店舗で販売された商品の情報を獲得し、各店舗で販売された商品の名称、種類、売価、及び販売量等の情報を店舗別・商品別に記憶する。なお、店舗Sでは、バーコードに限らず、2次元バーコード又は無線タグ等を用いて商品の情報を管理する形態であってもよい。
【0040】
更に通信ネットワークNには、商品を卸売りする仕入先Bに設けられた仕入先サーバ装置4が接続されている。物品発注量決定装置1は、本発明の物品発注量決定方法を用いて定期的に各店舗での各商品の発注量を決定する処理を行い、発注量が決定された商品の発注を指示する発注情報を通信ネットワークNを介して仕入先サーバ装置4へ送信することによって、商品の発注を行う構成となっている。
【0041】
図2は、本発明の物品発注量決定装置1の内部の機能構成を示す機能ブロック図である。物品発注量決定装置1は、演算を行うCPU(演算部)11と、演算に伴って発生する一時的な情報を記憶するRAM12と、CD−ROMドライブ等の外部記憶装置13と、ハードディスク等の内部記憶装置(記憶部)14とを備えている。CPU11は、CD−ROM等の記録媒体10から本発明のコンピュータプログラム100を外部記憶装置13にて読み取り、読み取ったコンピュータプログラム100を内部記憶装置14に記憶させる。コンピュータプログラム100は必要に応じて内部記憶装置14からRAM12へロードされ、ロードされたコンピュータプログラム100に基づいてCPU11は物品発注量決定装置1に必要な処理を実行する。
【0042】
また物品発注量決定装置1は、通信ネットワークNに接続された通信部15と、商品データベース2に接続されたインタフェース部16とを備えている。CPU11は、通信部15を用いて通信ネットワークNとの間で情報を送受信し、インタフェース部16を介して商品データベース2との間で情報を交換する。
【0043】
なお、本発明のコンピュータプログラム100は、物品発注量決定装置1に接続された図示しない他のサーバ装置から物品発注量決定装置1へロードされて内部記憶装置14に記憶される形態であってもよい。
【0044】
内部記憶装置14は、どの店舗で何の商品がいつどれだけの量販売されたかの実績を示す情報(供給実績量)からなる販売データ14aを記憶している。販売データ14aは、各商品をカテゴリ別に分類し、分類された商品の過去の販売量を示す情報を含む。なお販売量は金額で記録されていてもよく、また販売量が商品の数量で記録されている場合は、販売データ14aは商品の単価を示す情報を含んでいる。各カテゴリには一般に複数種類の商品が含まれており、同一カテゴリに含まれる各商品の単価は一般に異なっている。また販売データ14aは、店頭での販売か、注文による販売か、又は商品の店舗間移動による販売か等の商品の販売形態を示す情報をも含んでいる。また内部記憶装置14は、各店舗での各商品の在庫量を示す在庫データ14bを記憶している。在庫データ14bは、各店舗の店舗端末31から送信された在庫量の情報、又は各店舗での商品の販売量と納品量とから計算される在庫量の情報などからなっている。また内部記憶装置14は、各店舗に納品された各商品の納品量及び納品日(納品時点)を示す情報と、各店舗に納品される予定の各商品の納品予定量及び納品予定日を示す情報とを含む納品データ14cを記憶している。また内部記憶装置14は、商品の注文による予約、又は商品の店舗間移動の予約など、商品の販売の予定を示す情報からなる予定データ14iを記憶している。
【0045】
コンピュータプログラム100は、商品の販売量の季節変動を示す季節指数を計算する季節指数計算処理と、各商品の販売動向(需要動向)を需要予測量の割増量に反映させる販売動向反映処理と、各店舗での発注日(発注時点)に物品の発注量を決定する本発注処理と、必要に応じて予備的に発注すべき物品の発注量を決定する予備発注処理とを物品発注量決定装置1が行うためのプログラムを含んでいる。
【0046】
次に、本発明の物品発注量決定方法の内容をフローチャートを用いて説明する。内部記憶装置14は、1月1日を第1週とした第53週までの各週において各商品が一週間の間に全店舗で販売された量の合計を示す週別販売情報からなる週別販売データ14eを記憶している。週別販売データ14eは、販売データ14aと同様のカテゴリに分類して各商品の週別販売情報を記録している。また内部記憶装置14は、各カテゴリに含まれる商品の各週での販売金額の合計を示す季節指数をカテゴリ別に記録した季節指数データ14dを記憶している。週別販売データ14e及び季節指数データ14dは、過去の各週に係る情報を記録しており、物品発注量決定装置1は、一週間毎に最新の週別販売情報及び季節指数を計算する季節指数計算処理を行う。
【0047】
図3は、本発明の物品発注量決定装置1が行う季節指数計算処理の手順を示すフローチャートである。物品発注量決定装置1のCPU11は、RAM12にロードした本発明のコンピュータプログラム100に従って以下の処理を実行する。
【0048】
CPU11は、週の終わりの所定の時点でその週分の計算を行うべく自動的に処理を開始するか、週の始めの所定の時点で先週分の計算を行うべく自動的に処理を開始するか、又は図示しない受付部にて処理開始の指示を受け付けることによって処理を開始する。CPU11は、まず、複数の商品の中から週別販売情報及び季節指数を計算すべき商品を選択する(S11)。CPU11は、次に、内部記憶装置14が記憶している販売データ14a及び週別販売データ14eから、選択した商品と同一カテゴリに含まれる商品である類似商品の販売金額の合計を示す情報を読み出す(S12)。ここで、販売データ14a及び週別販売データ14eが金額で商品の販売量を記録している場合は、CPU11は、同一カテゴリの商品の販売金額を合計する処理を行い、販売データ14a及び週別販売データ14eが数量で商品の販売量を記録している場合は、CPU11は、同一カテゴリの各商品の販売数量と単価との積を合計する処理を行う。CPU11は、次に、最新の一週間における全店での類似商品の販売金額を合計した週別販売情報yi を計算し(S13)、計算した週別販売情報yi を週別販売データ14eに記録する(S14)。なお、ここでは最新の週を一年間の中の第i週目とする。
【0049】
CPU11は、次に、最新のN年間における各年の第i週目の週別販売情報yi を合計した季節指数S(i)を計算し(S15)、計算した季節指数S(i)を季節指数データ14dに記録する(S16)。季節指数は、毎年定期的に発生する類似商品の販売金額の増減を表している。CPU11は、次に、全てのカテゴリの商品について最新の週別販売情報及び季節指数を計算したかを判定する(S17)。最新の週別販売情報及び季節指数を計算していないカテゴリの商品がある場合は(S17:NO)、CPU11は、処理をステップS11へ戻し、まだ最新の週別販売情報及び季節指数を計算していないカテゴリの商品を選択する。全てのカテゴリの商品について最新の週別販売情報及び季節指数を計算している場合は(S17:YES)、CPU11は、季節指数計算処理を終了する。
【0050】
なお、1月1日を含む週を第1週とすると第1週目及び第53週目は日数が7日未満である可能性があるが、この場合は数日間の情報を7日間分に対応する情報に変換して処理を行う。またNの値は1〜2が適当である。また閏年の場合は第54週目が存在する可能性があるが、この場合は第54週目の情報は計算しない。また、決算年度の初日など、1月1日以外の日を含む週を第1週として処理を行ってもよい。また、週の起算曜日はどの曜日としてもよい。また、各カテゴリに含まれる商品のN年間に渡る各週での販売金額の合計を季節指数としているが、各カテゴリに含まれる商品の各週での販売金額のN年間の平均値を季節指数として計算してもよい。季節指数計算処理が終了した後は、内部記憶装置14が記憶している季節指数データ14dは、最新の週を第i週目として、今年までのN年間の商品の販売量から計算された第1週目〜第i週目の季節指数と、去年までのN年間の商品の販売量から計算された第(i+1)週目〜第53週目の季節指数とが記録されていることとなる。
【0051】
物品発注量決定装置1は、季節指数計算処理を行った後で、各商品の販売動向を検証し、販売動向に応じて本発明に係る割増指数を決定する販売動向反映処理を行う。図4は、本発明の物品発注量決定装置1が行う販売動向反映処理の手順を示すフローチャートである。物品発注量決定装置1のCPU11は、RAM12にロードした本発明のコンピュータプログラム100に従って以下の処理を実行する。
【0052】
CPU11は、まず、複数の商品の中から割増指数を決定すべき商品を選択する(S21)。CPU11は、次に、内部記憶装置14が記憶している週別販売データ14e及び季節指数データ14dから、選択した商品に係る最新の過去n週分の週別販売情報yi 及び季節指数S(i)を読み出す(S22)。ここで最新の週を第i0週とする。CPU11は、(i0 −n+1)≦i≦i0 であるn個の週別販売情報yi 夫々を下記式に示す如くS(i)/S(i0 )で除することによって補正した補正週別販売情報yi ’を計算する(S23)。
【0053】
【数1】
【0054】
週別販売情報yi は、季節指数を用いて補正されることで、季節要因による販売量の変動を除外される。なお、週別販売情報yi をS(i)/S(i0 )ではなくS(i)で除する等、その他の方法で季節指数を用いて週別販売情報yi を補正する処理を行ってもよい。
【0055】
ここで、最新の第i0 週を第−1週とした相対週数を示すxiと推定誤差εi とを用いて補正週別販売情報yi’を下記式の如く表す線形回帰モデルを考える。
【0056】
【数2】
【0057】
(2)式におけるa及びbは定数である。本発明では、商品の販売量が増加する傾向であるか又は減少する傾向であるかの販売動向を示す指標として時間の一次係数である(2)式の回帰係数bの推定値bハットを用いる。bハットは、(i0 −n+1)≦i≦i0 でのyi ’,xi の平均値をyバー,xバーとして、下記式で与えられる。
【0058】
【数3】
【0059】
CPU11は、次に、(i0 −n+1)≦i≦i0 でのyi ’の平均値yバーを計算し(S24)、(3)式を用いてbの推定値bハットを計算し(S25)、bハットをyバーで除した(bハット/yバー)を計算する(S26)。
【0060】
ところで、商品の販売動向は(2)式においてbが正であれば販売増加傾向にあり、bが負であれば販売減少傾向にある。商品の販売動向が販売増加傾向にあるほど商品の需要予測量は多めに見積もる必要がある。本発明では、商品の販売量の真値を信頼係数(1−α)%の確率で含むような信頼区間で商品の販売量を区間推定する。信頼区間を大きく取るほど需要予測量の変動幅を大きく見積もることになるので、本発明の割増指数としてbの値に対応した信頼係数(1−α)の値を選ぶことで、販売動向に応じて需要予測量の割増度合いを決定することができる。
【0061】
内部記憶装置14は、(bハット/yバー)の値と信頼係数(1−α)との値を対応付けて記録した信頼係数表14fを記憶している。図5は、信頼係数表14fの内容例を示す概念図である。(bハット/yバー)の値が正である場合は、商品の販売動向が販売増加傾向であって商品の需要予測量を多めに見積もる必要があるので、例えば0.4よりも大である(bハット/yバー)に対して、需要予測量の見積もりが大きくなるように信頼係数(1−α)=0.8が対応付けられている。(bハット/yバー)の値が負である場合は、商品の販売動向が販売減少傾向であって商品の需要予測量を多めに見積もると売れ残りによる在庫過剰が発生する可能性があるので、例えば−0.4よりも小である(bハット/yバー)に対して、需要予測量の見積もりがより小さくなるように信頼係数(1−α)=0.2が対応付けられている。このようにして、信頼係数表14fでは販売動向に応じた信頼係数(1−α)の値が規定されている。
【0062】
CPU11は、信頼係数表14fと計算した(bハット/yバー)の値とを対照し(S27)、(bハット/yバー)の値に対応した信頼係数(1−α)の値を信頼係数表14fから読み出すことにより、信頼係数(1−α)の値を決定する(S28)。CPU11は、次に、決定した信頼係数(1−α)の値を示す信頼係数データ14gを内部記憶装置14に記憶させる(S29)。CPU11は、次に、全ての商品について信頼係数(1−α)を決定する処理を行ったかを判定する(S210)。未処理の商品がある場合は(S210:NO)、CPU11は、処理をステップS21へ戻し、未処理の商品を選択する。全ての商品について信頼係数(1−α)を決定する処理を行っている場合は(S210:YES)、CPU11は、販売動向反映処理を終了する。
【0063】
以上の販売動向反映処理では、nの値が大きすぎると販売動向の変化が早い商品の販売動向を把握することができず、nの値が小さすぎるとはずれ値の影響を受けやすくなるので、nの値は4〜6程度が望ましい。なお、販売動向反映処理では、(bハット/yバー)の値ではなくbハットの値に対応させて信頼係数(1−α)の値を決定する処理を行ってもよい。
【0064】
物品発注量決定装置1は、各店舗での商品の発注日に、商品の発注量を決定する本発注処理を行う。本実施の形態においては、店舗Sでの発注日は毎週の月曜日とし、月曜日に発注した物品の納品日は金曜日であるとする。また本発明では、物品発注量決定装置1が本発注処理を行って物品を発注する発注日を本発注日とし、定期的な本発注日の間に、必要に応じて予備的に物品を発注する予備発注日(予備発注時点)を設ける。物品発注量決定装置1は、予備発注日に、必要に応じた物品の発注量を決定する予備発注処理を行う。本実施の形態においては、予備発注日は毎週木曜日であるとし、木曜日に発注した物品の納品日は次週の火曜日であるとする。
【0065】
図6は、発注日と納品日との関係を示す概念図である。図中の横軸は曜日で示した時間であり、発注日を丸で、納品日を三角で示した。特に本発注処理を行う今回本発注日を二重丸で示す。今回本発注日と今回の発注による物品の納品日である本納品日との間には、前週の予備発注による予備納品日がある。また今回の発注による本納品日と次回本発注日での発注による本納品日との間にも、今週の予備発注による予備納品日がある。物品発注量決定装置1が本発注処理を行う段階では、前週の予備発注による発注量は既に決定されており、今回本発注での発注量、今週の予備発注での発注量、及び次回の本発注での発注量は未定となっている。
【0066】
図6に示す如く、今回本発注日から今回本発注日での発注による本納品日までの日数をd1 とし、今回本発注日から次回本発注日での発注による本納品日までの日数をd2日とする。また、今回本発注日と次回本発注日との間に位置する予備発注日からこの予備発注日での発注による予備納品日までの日数をd3 とし、この予備発注日から次回本発注日での発注による本納品日までの日数をd4日とする。
【0067】
図7は、本発明の物品発注量決定装置1が行う本発注処理の手順を示すフローチャートである。物品発注量決定装置1のCPU11は、RAM12にロードした本発明のコンピュータプログラム100に従って以下の処理を実行する。
【0068】
CPU11は、発注日の所定の時点で自動的に処理を開始するか、又は図示しない受付部にて処理開始の指示を受け付けることによって本発注処理を開始する。CPU11は、まず、複数の商品の中から本発注処理を行うべき商品を選択する(S31)。CPU11は、次に、d=1〜d2 とした発注日からの各d日間に販売される商品の需要予測量を計算する需要予測量計算処理を行う(S32)。
【0069】
本発明に係る需要予測量計算処理では、過去n週間の各週について本発注日と同じ曜日からd日間の商品の販売量を合計したサンプルデータYi を用いて需要量を予測する。ここで、サンプルデータYi の値は、d>7である場合は、全体に一週間分過去へずらした日を起点としたd日間の商品の販売量を合計した値とし、dの値が7の倍数を越える都度、更に一週間分過去へずらした日を起点としたd日間の商品の販売量を合計した値とする。今回発注日が含まれる週である今週を第0週とした相対週数を示すxi と推定誤差εi とを用いて、相対週数xi が示す週の本発注日と同じ曜日からd日間の商品の販売量を合計したサンプルデータYi を下記式の如く表す線形回帰モデルを考える。
【0070】
【数4】
【0071】
ここで、(4)式における切片である回帰係数Aと時間の一次係数である回帰係数Bとの推定値をAハット,Bハットとし、過去のn個のxi ,Yi の平均値をxバー,Yバーとする。kを自然数としてdの値が7(k−1)<d≦7kである場合のAハット及びBハットは、下記式で与えられる。
【0072】
【数5】
【0073】
(5)式により、d≦7である場合は−n≦xi ≦−1のデータからAハット及びBハットが計算され、7<d≦14である場合は−n−1≦xi ≦−2のデータからAハット及びBハットが計算される。Aハット及びBハットを用いて、相対週数xi が示す週に係る販売量の推定値Yiハットは下記式で表される。
【0074】
【数6】
【0075】
(6)式で得られるYi ハットは、相対週数xi が示す週に係る販売量の期待値である。このとき、下記式で定義されるYi ’は自由度n−2のt分布に従うことが知られている。
【0076】
【数7】
【0077】
内部記憶装置14は、t分布においてtの値がtq 以上である部分の面積がqとなるようなtq の値を自由度及びqの値と関連付けて記録したt分布表14hを記憶している。商品の販売量の真値を信頼係数(1−α)%の確率で含むような相対週数xi が示す週に係る販売量の予測値Yの信頼区間は、販売量の推定値Yi ハットを中心値とし、t分布表14hに含まれるtα/2を用いて下記式で表される。
【0078】
【数8】
【0079】
本発明では、予測量として信頼区間の上限値を採用する。従って、xi =0である今週のd日間に商品が販売されると予想される需要量の予測値Yは、(6)式及び(8)式にxi =0を代入することによって下記式で表される。
【0080】
【数9】
【0081】
図8及び9は、ステップS32の需要予測量計算処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は、内部記憶装置14が記憶している信頼係数データ14gが示す信頼係数(1−α)の値を読み出す(S401)。CPU11は、内部記憶装置14が記憶しているt分布表14hと読み出した信頼係数(1−α)の値とを対照し(S402)、サンプルの週数nを決定し、自由度n−2のt分布におけるtα/2の値をt分布表14hから読み出すことにより、tα/2の値を決定する(S403)。CPU11は、次に、内部記憶装置14が記憶している販売データ14aから、選択した商品に係る情報を読み出し、季節指数データ14dから、選択した商品が分類されるカテゴリの季節指数を読み出す(S404)。ここで先週を第i0 週とする。CPU11は、販売データ14aから読み出した過去の夫々の一日における商品の販売量を示す販売量情報から、注文による販売又は店舗間移動による販売等の規定外の販売量を差し引き、季節指数の値S(i)及び基準となる所定の季節指数の値S0を用いたS(i)/S0 で規定外の販売量を差し引いた販売量情報を除して、販売量情報を補正する(S405)。ここで、基準となる所定の季節指数の値S0としては、第1週の季節指数の値S(1)、第i0 週の季節指数の値S(i0 )、去年までの販売量から計算されて季節指数データ14dに記録されている今週の季節指数の値S(i0+1)、又は予め定められている定数等の所定の値を用いる。CPU11は、次に、補正された販売量情報を示す補正販売データをRAM12に記憶させる(S406)。
【0082】
CPU11は、次に、d日間の商品の販売量を合計したサンプルデータYi を作成するためのdの値を1に初期化する(S407)。CPU11は、次に、RAM12が記憶する補正販売データが示す補正された販売量情報を適宜加算することによって、過去n週間の各週について今回本発注日と同一の曜日を起点としたd日間の商品の販売量を合計したサンプルデータYi を生成する(S408)。ここで、d>7である場合は、全体に一週間分過去へずらした日を起点としたd日間の商品の販売量を合計してサンプルデータYi を生成する。dの値が更に7の倍数を超える場合は、同様に更に一週間分過去へずらした販売量を合計してサンプルデータYi を生成する。
【0083】
CPU11は、次に、dの値から求められる7(k−1)<d≦7kである自然数kを代入した(5)式によりAハット及びBハットを計算し(S409)、(6)式を用いて−(n+k−1)≦xi ≦−kでのYi ハットを計算する(S410)。CPU11は、次に、(9)式を用いて、σハット及びKを計算し(S411)、需要量の推定値Yを計算する(S412)。CPU11は、次に、需要量の推定値Yに対して季節指数による補正を戻す(S413)。ここで、CPU11は、季節指数データ14dに記録されている今週の季節指数の値S(i0+1)とステップS405で用いた基準となる所定の季節指数の値S0 とを用いて、Yの値にS(i0+1)/S0を乗ずることにより補正を戻す。またCPU11は、季節指数データ14dに記録されている今週前後の複数週での季節指数の値を用いて所定の方法で計算した季節指数の移動平均の値S’(i0+1)を用いて、Yの値にS’(i0+1)/S0を乗ずることにより補正を戻してもよい。CPU11は、次に、内部記憶装置14が記憶している予定データ14iに含まれる注文の予約又は店舗間移動の予約等、今回本発注日からd日間の商品の固定販売量を追加し(S414)、生成された需要予測量S(d)をRAM12に記憶させる(S415)。なお、ステップS405で用いた基準となる所定の季節指数の値S0がS(i0+1)である場合は、ステップS413の処理を省略した処理を行ってもよい。
【0084】
CPU11は、次に、d=d2 であるか否かを判定する(S416)。d=d2 ではなかった場合は(S416:NO)、CPU11は、dの値を1インクリメントし(S417)、処理をステップS408へ戻して、新たなdの値に対する需要予測量S(d)を生成する。d=d2であった場合は(S416:YES)、CPU11は、ステップS32の需要予測量計算処理のサブルーチンを終了し、処理をメインルーチンへ戻す。
【0085】
CPU11は、次に、計算した需要予測量に基づいて今回本発注日に発注すべき発注量を決定する発注量決定処理を行う(S33)。発注量決定処理では、今回本発注日での商品の発注量がゼロであった場合に次回本発注日での発注による本納品日までの商品の在庫量を予測し、次回本発注日での発注による本納品日までの商品の在庫量が十分な量となるように今回本発注日での発注量を決定する。d≦d1 の期間では、今回本発注日での発注による本納品日以前であるので、商品の欠品が予想される場合でも納品量を増やすことによって欠品が発生しないように調整することはできない。一方d>d1の期間では、商品の欠品が予想される場合は本発注日での発注量を増やすことによって欠品が発生しないように調整することができる。従って在庫量を予測するためには、d≦d1とd>d1 との期間に分けて予測する必要がある。
【0086】
図10及び11は、ステップS33の発注量決定処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。CPU11は、まずdの値を1に初期化する(S501)。CPU11は、次に、dの値がd1 より大きい値であるか否かを判定する(S502)。dの値がd1以下である場合は(S502:NO)、CPU11は、Q(d)を今回本発注日からd日後の末在庫予測量として、S(d)−S(d−1)の値がQ(d−1)の値より小さいか否かを判定する(S503)。但し、S(0)=0であり、Q(0)は今回本発注日での末在庫量とする。
【0087】
S(d)−S(d−1)の値がQ(d−1)の値より小さい場合は(S503:YES)、今回本発注日からd日目の需要予測量が(d−1)日後の末在庫予測量より小さい場合であり、S(d)からS(d−1)を減算した値が今回本発注日からd日目の販売予測量(供給予測量)となるので、CPU11は、今回本発注日からd日目の販売予測量SS(d)を、下記式で計算する(S504)。
SS(d)=S(d)−S(d−1)
【0088】
今回本発注日から(d−1)日後の末在庫量からd日目の販売量を減算した値がd日目の最小在庫量となるので、CPU11は、次に、今回本発注日からd日目の最小在庫予測量P(d)を、下記式で計算する(S505)。
P(d)=Q(d−1)−SS(d)
【0089】
今回本発注日からd日後の商品の納品量をI(d)とする。この納品量は、前回の本発注日での発注による納品、前回の予備発注日での発注による納品、又は不規則的な納品等、今回本発注日の時点で今回本発注日からd日後に納品されることが確定している納品確定済みの納品量である。今回本発注日からd日後の末在庫量はd日目の最小在庫量にd日後の納品量を加算した値となるので、CPU11は、次に、今回本発注日からd日後の末在庫予測量Q(d)を、下記式で計算する(S506)。
Q(d)=P(d)+I(d)
【0090】
CPU11は、次に、dを1インクリメントし(S507)、処理をステップS502へ戻す。
【0091】
ステップS503でS(d)−S(d−1)の値がQ(d−1)の値以上である場合は(S503:NO)、今回本発注日からd日目の需要予測量が(d−1)日後の末在庫予測量以上である場合であり、在庫量よりも多い
以上の商品を販売することはできないので、CPU11は、下記式に示す如く、今回本発注日からd日目の販売予測量SS(d)を(d−1)日後の末在庫予測量Q(d−1)に等しいとする(S508)。
SS(d)=Q(d−1)
【0092】
今回本発注日からd日目の販売予測量SS(d)が(d−1)日後の末在庫予測量Q(d−1)に等しいので、CPU11は、下記式に示す如く、今回本発注日からd日目の最小在庫予測量P(d)を0とし(S509)、処理をステップS506へ進める。
P(d)=0
【0093】
ステップS502でdの値がd1 より大きい値である場合は(S502:YES)、CPU11は、今回本発注日からd1日目の最小在庫予測量P(d1 )(納品時在庫予測量)を用いて、今回本発注日からd日目の最小在庫予測量P(d)を下記式で計算する(S510)。
【0094】
【数10】
【0095】
(10)式は、今回本発注日からd1 日目の最小在庫予測量P(d1 )とd1日目〜(d−1)日目の納品量との和から(d1 +1)日目〜d日目の需要予測量を減算した値が、最小在庫予測量P(d)となることを示している。なお、(10)式においてはI(d1)=0である。またこのときのP(d)は負の値となってもよい。
【0096】
CPU11は、次に、計算したP(d)の値をRAM12に記憶させる(S511)。CPU11は、次に、d=d2 であるか否かを判定する(S512)。dの値がd2 ではない場合は(S512:NO)、CPU11は、dを1インクリメントし(S513)、処理をステップS510へ戻す。
【0097】
ステップS512でd=d2 である場合は(S512:YES)、CPU11は、RAM12が記憶しているP(d1+1)〜P(d2 )の中で最小のP(d)を与えるdであるdm の値を決定する(S514)。(d1+1)日目〜d日目の間に商品の欠品を発生させないようにするためには、在庫量が最小となるときの在庫量が、正の値である所定の最低在庫量m以上であれば良い。
【0098】
CPU11は、次に、P(dm )が所定の最低在庫量mよりも小さい値であるか否かを判定する(S515)。P(dm)が所定の最低在庫量mよりも小さい値であった場合は(S515:YES)、CPU11は、発注量hを下記式で計算する(S516)。
h=m−P(dm )
【0099】
実際の発注量は商品の発注ロットの制約を受けるので、CPU11は、商品の発注ロット数をrとし、自然数aをbで除した余りをmod(a,b)として、今回本発注日での商品の実際の発注量Hを下記式で計算し(S517)、発注量決定処理のサブルーチンを終了して処理をメインルーチンへ戻す。
H=(h+r−1)−mod(h+r−1,r) …(11)
【0100】
ステップS515でP(dm )が所定の最低在庫量m以上の値であった場合は(S515:NO)、本発注日での発注による発注量がゼロであっても商品の在庫量は十分であるので、CPU11は、商品の実際の発注量Hを0とし(S518)、ステップS33の発注量決定処理のサブルーチンを終了して処理をメインルーチンへ戻す。
【0101】
CPU11は、次に、全ての商品について発注量決定処理を行ったか否かを判定する(S34)。発注量決定処理を行っていない商品がある場合は(S34:NO)、CPU11は、処理をステップS31へ戻し、まだ発注量を決定していない商品を選択する。全ての商品について発注量決定処理を行っている場合は(S34:YES)、CPU11は、発注量を決定した商品の発注処理を行う(S35)。このときCPU11は、発注量が決定された商品の発注を指示する発注情報を通信ネットワークNを介して仕入先サーバ装置4へ送信することによって商品の発注を行ってもよく、商品の発注伝票を出力して人手で発注させることによって商品の発注を行ってもよい。CPU11は、次に、商品の発注量情報を納品データ14cに記録し(S36)、本発注処理を終了する。
【0102】
物品発注量決定装置1は、各店舗の本発注日に、各店舗での商品の発注量を決定するための前述の如き本発注処理を行う。店舗Sでは、本発注処理によって発注量が決定された商品が本納品日に納品され、商品の販売が行われる。なお各店舗の本発注日が同一である場合は、物品発注量決定装置1は、各店舗に係る本発注処理を順に行う形態であってもよい。
【0103】
物品発注量決定装置1は、各店舗での予備発注日に、物品の予備発注量を決定する予備発注処理を行う。予備発注処理の内容は、図7にフローチャートを示した本発注処理の内容とほぼ同様であり、物品発注量決定装置1は、本発注処理で用いるd1 ,d2 の値を予備発注処理ではd3,d4 として処理を行い、本発注処理では本発注日、本納品日又は本発注日と同一の曜日を起点とした計算処理を、予備発注処理では予備発注日、予備納品日又は予備発注日と同一の曜日を起点として処理する。予備発注処理によって、物品発注量決定装置1は、予備納品日から次回の本納品日までの間の最小在庫予測量に応じて、商品の予備発注量を決定する。
【0104】
以上詳述した如く、本発明の物品発注量決定装置1は、過去n週間における週別販売量の時間経過に対する変化に基づいて、商品の販売量が増加する傾向であるか又は減少する傾向であるかの販売動向を求め、商品の需要予測量を多めに見積もる程度を販売動向に応じて決定する。商品の販売動向に応じて、商品の販売量が増加する傾向である場合は商品の需要予測量を多めに見積もり、商品の販売量が減少する傾向である場合は商品の需要予測量をより少な目に見積もることができるので、商品の欠品による売り逃し、及び商品の売れ残りによる在庫過剰のいずれの発生をも抑制することが可能となる。特にライフサイクルが短い商品の在庫量を欠品及び在庫過剰の発生を抑制しながら適切な状態に保つことができる。また、販売動向に応じて商品の発注量を調整する業務は従来は人手で行っていたのに対して、本発明の物品発注量決定装置1がこの業務を自動で行うので、商品の発注管理に必要な労力が削減される。従って、商品の発注管理に必要な人件費を削減することが可能となる。
【0105】
また本発明の物品発注量決定装置1は、過去の商品の販売量を全店舗(複数の供給経路)で合計した量の時間経過に対する変化に基づいて商品の販売動向を決定し、各店舗(一の供給経路)での過去の商品の販売量の時間経過に対する変化に基づいて商品の需要量の推定値を計算する。全店舗の販売量に基づいて商品の販売動向を決定するので、全般的な需要の増減に対応した発注量の管理が可能となる。また各店舗での販売量に基づいて各店舗での需要量の推定値を計算しているので、各店舗の実情に応じた商品の需要量を推定することができる。
【0106】
また本発明の物品発注量決定装置1は、販売動向に応じた信頼係数(1−α)%の確率で需要量の真値を含み、需要量の推定値を中心値とした信頼区間で商品の需要量を区間推定し、信頼区間の上限値を商品の需要予測量とする。商品の販売量が増加する傾向である場合は信頼区間を大きくとり、商品の販売量が減少する傾向である場合は信頼区間を小さくとることにより、販売動向に応じて商品の需要予測量を増減させることができる。
【0107】
また本発明の物品発注量決定装置1は、今回本発注日での商品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、今回本発注日での発注による本納品日での商品の在庫予測量を計算し、更に次回本発注日での発注による本納品日までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量である所定の最低在庫量以上となるように今回本発注日での発注量を決定する。今回本発注日での発注による本納品日ではなく、次回本発注日での発注による本納品日までの在庫予測量に基づいて商品の発注量を決定するので、次回の発注によって商品が納品されるまで在庫量が十分に保たれるように今回の発注量を決定することにより、商品の欠品の発生を可及的に防止することが可能となる。
【0108】
また本発明の物品発注量決定装置1は、今回本発注日での発注による本納品日での商品の在庫予測量を計算する際に、ある時点の需要予測量がその時点の在庫予測量以上となった場合にはその時点の販売予測量はその時点の在庫予測量以下であるとすることにより、商品の欠品による売り逃し量を販売予測量から除外する。これにより、売り逃し量に対応する量が商品の発注量から差し引かれることとなるので、売り逃し量に対応した量の商品が納品されることに起因する在庫過剰の発生を防止することが可能となる。
【0109】
更に本発明においては、本発注日の間に予備発注日を設け、本発明の物品発注量決定装置1は、予備発注日に、商品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、次回本発注日での発注による本納品日までの在庫予測量を計算し、在庫予測量の最小値が十分な量となるように予備発注日での発注量を決定する。定期的な発注日の間の予備発注日において予備的に商品を発注することができるので、発注をし忘れるか又は予想以上に商品の販売量が多い等の理由により予想外に在庫量が過小となった場合に必要な量の商品を予備発注日に発注することにより、商品の欠品の発生を可及的に抑制することが可能となる。
【0110】
なお、本実施の形態においては、商品の本発注日及び予備発注日は週に一度とし、販売量に関する計算を週単位で行う形態を示したが、これに限るものではなく、発注日の間隔を10日又は一月等の一週間以外の期間とし、この期間を単位として販売量に関する計算を行う形態であってもよい。また本実施の形態においては、季節指数計算処理を毎週行う形態を示しているが、これに限るものではなく、1年間の各商品の販売量のデータがそろった段階で、各週での季節指数を計算する季節指数計算処理を一年間に1度のみ行う形態であってもよい。また本実施の形態においては、各店舗に関する本発注処理及び予備発注処理を一台の物品発注量決定装置1が一括して行う形態を示したが、これに限るものではなく、本発注処理及び予備発注処理は個々の店舗Sに設けられた情報処理装置で分散して行う形態であってもよい。
【0111】
また本実施の形態においては、複数の店舗で複数種類の商品を販売する小売業で本発明に係る物品である商品の発注を行う場合を例として本発明を説明しているが、本発明の適用分野はこれに限るものではなく、商品を仕入れて卸売り(供給)を行う卸売業、仕入れた食材(物品)を仕入れて飲食を提供(供給)する飲食業、又は仕入れた部品(物品)を組み立てて製品を製造(供給)する製造業等、小売業以外の分野に対しても適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の物品発注量決定装置を用いて商品の発注を管理するシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の物品発注量決定装置の内部の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の物品発注量決定装置が行う季節指数計算処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の物品発注量決定装置が行う販売動向反映処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】信頼係数表の内容例を示す概念図である。
【図6】発注日と納品日との関係を示す概念図である。
【図7】本発明の物品発注量決定装置が行う本発注処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】ステップS32の需要予測量計算処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】ステップS32の需要予測量計算処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】ステップS33の発注量決定処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】ステップS33の発注量決定処理のサブルーチンの処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0113】
1 物品発注量決定装置
10 記録媒体
100 コンピュータプログラム
2 商品データベース
31 店舗端末
32 バーコードリーダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する方法において、 過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定し、
過去の物品の供給実績量及び前記需要動向に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要予測量を計算し、
計算した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算し、
計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定すること
を特徴とする物品発注量決定方法。
【請求項2】
記憶部及び演算部を備えるコンピュータを用いて、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する方法において、
過去の物品の供給実績量を前記記憶部で記憶しておき、
過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を前記演算部で判定する需要動向判定ステップと、
前記演算部で判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を前記演算部で決定する割増指数決定ステップと、
過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を前記演算部で計算する需要量推定ステップと、
前記演算部で計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を前記演算部で決定する需要量予測ステップと、
前記演算部で決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を前記演算部で計算する在庫量予測ステップと、
前記演算部で計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を前記演算部で決定する発注量決定ステップと
を含むことを特徴とする物品発注量決定方法。
【請求項3】
前記記憶部は、過去の物品の供給実績量を、物品が供給された複数の供給経路の夫々に対応付けて記憶してあり、
前記需要動向判定ステップは、
過去の所定期間を構成する複数の小期間内で、複数の供給経路に対応付けられた供給実績量を合計した合計値を、各小期間別に前記記憶部で記憶するステップと、
時間経過に対する前記合計値の変化を時間の一次関数で近似した場合の一次係数の推定値を前記演算部で計算するステップと、
前記一次係数の推定値の値に応じて、物品の需要の増減動向を前記演算部で判定するステップと
を含み、
前記需要量推定ステップは、
定期的な過去の所定時点を起点とする複数の所定期間内での一の供給経路に対応付けられた供給実績量を個別に前記記憶部で記憶し、
時間経過に対する前記供給実績量の変化を時間の一次関数で近似した場合の一次係数及び切片の推定値を前記演算部で計算するステップと、
前記一次係数及び切片の推定値を用いた前記一次関数に、物品の発注時点を起点とする所定期間に対応する時間の値を代入することによって、前記需要量の推定値を前記演算部で計算するステップと
を含むことを特徴とする請求項2に記載の物品発注量決定方法。
【請求項4】
前記割増指数決定ステップは、
物品の需要量の真値を前記割増指数に係る確率で含む信頼区間で物品の需要量を区間推定するための前記割増指数の値を、前記演算部で判定した前記需要動向に応じて決定するステップを含み、
前記需要量予測ステップは、
前記演算部が前記需要量推定ステップで用いた時間経過に対する過去の物品の供給実績量のサンプル数をnとした自由度(n−2)のt分布に基づいて、前記需要量の推定値を中心値とした前記信頼区間の上限値を、物品の需要予測量として前記演算部で決定するステップを含むこと
を特徴とする請求項2又は3に記載の物品発注量決定方法。
【請求項5】
前記在庫量予測ステップは、
発注時点での物品の在庫量、及び発注時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点で納品確定済みの物品の納品量を前記記憶部で記憶し、
発注時点から物品の納品時点までの各時点での物品の在庫予測量を順に計算することによって、物品の納品時点での物品の在庫予測量である納品時在庫予測量を前記演算部で計算する納品時在庫予測量計算ステップと、
物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量を、前記納品時在庫予測量に、物品の納品時点から前記各時点までに納品確定済みの物品の納品量を加算し、更に物品の納品時点から前記各時点までの需要予測量を減算することによって前記演算部で計算するステップと
を含み、
前記発注量決定ステップは、
物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量の内、最小の値を有する最小在庫予測量を前記演算部で選択するステップと、
物品の発注量を、所定の最低在庫量と前記最小在庫予測量との差に応じた値に前記演算部で決定するステップと
を含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかひとつに記載の物品発注量決定方法。
【請求項6】
前記納品時在庫予測量計算ステップは、
発注時点から物品の納品時点までの任意の時点での需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小であるか否かを前記演算部で判定するステップと、
前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小である場合は、前記演算部で、前記時点での物品の供給予測量を前記需要予測量に応じた値とするステップと、 前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量以上である場合は、前記演算部で、前記時点での物品の供給予測量を前記時点の直前での物品の在庫予測量以下の値とするステップと、
前記時点での物品の在庫予測量を、前記時点の直前での物品の在庫予測量から前記供給予測量を減算して前記時点での納品確定済みの物品の納品量を加算することによって前記演算部で計算するステップと
を含むことを特徴とする請求項5に記載の物品発注量決定方法。
【請求項7】
発注時点から次回の発注時点までの間に、物品を予備的に発注する予備発注時点を設けてあり、
過去の物品の供給実績量に基づいて、予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を前記演算部で計算するステップと、
前記演算部で計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を前記演算部で決定するステップと、
前記演算部で決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を前記演算部で計算するステップと、
前記演算部で計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定するステップと
を更に含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかひとつに記載の物品発注量決定方法。
【請求項8】
時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する装置において、 過去の物品の供給実績量を記憶する手段と、
過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定する手段と、
該手段が判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を決定する手段と、
過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算する手段と、
該手段が計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定する手段と、
該手段が決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算する手段と、
該手段が計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定する手段と
を備えることを特徴とする物品発注量決定装置。
【請求項9】
発注時点から次回の発注時点までの間に、物品を予備的に発注する予備発注時点を設定してあり、
過去の物品の供給実績量に基づいて、予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算する手段と、
該手段が計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定する手段と、
該手段が決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算する手段と、
該手段が計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定する手段と
を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の物品発注量決定装置。
【請求項10】
過去の物品の供給実績量を記憶するコンピュータに、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定させるコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータに、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定させる手順と、
コンピュータに、判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を決定させる手順と、
コンピュータに、過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算させる手順と、
コンピュータに、計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定させる手順と、
コンピュータに、決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算させる在庫量予測手順と、
コンピュータに、計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定させる発注量決定手順と
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記在庫量予測手順は、
コンピュータに、発注時点から物品の納品時点までの各時点での物品の在庫予測量を順に計算することによって、物品の納品時点での物品の在庫予測量である納品時在庫予測量を計算させる納品時在庫予測量計算手順と、
コンピュータに、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量を、前記納品時在庫予測量に、物品の納品時点から前記各時点までに納品確定済みの物品の納品量を加算し、更に物品の納品時点から前記各時点までの需要予測量を減算することによって計算させる手順と
を含み、
前記発注量決定手順は、
コンピュータに、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量の内、最小の値を有する最小在庫予測量を選択させる手順と、
コンピュータに、物品の発注量を、所定の最低在庫量と前記最小在庫予測量との差に応じた値に決定させる手順と
を含むことを特徴とする請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記納品時在庫予測量計算手順は、
コンピュータに、発注時点から物品の納品時点までの各時点での需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小であるか否かを判定させる手順と、
コンピュータに、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小である場合は、前記時点での物品の供給予測量を前記需要予測量に応じた値とさせる手順と、
コンピュータに、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量以上である場合は、前記時点での物品の供給予測量を前記時点の直前での物品の在庫予測量以下の値とさせる手順と、
コンピュータに、前記時点での物品の在庫予測量を、前記時点の直前での物品の在庫予測量から前記供給予測量を減算して前記時点での納品確定済みの物品の納品量を加算することによって計算させる手順と
を含むことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータに、過去の物品の供給実績量に基づいて、発注時点から次回の発注時点までの間に設けた予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算させる手順と、
コンピュータに、計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定させる手順と、
コンピュータに、決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算させる手順と、
コンピュータに、計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定させる手順と
を更に含むことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかひとつに記載のコンピュータプログラム。
【請求項1】
時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する方法において、 過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定し、
過去の物品の供給実績量及び前記需要動向に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要予測量を計算し、
計算した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算し、
計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定すること
を特徴とする物品発注量決定方法。
【請求項2】
記憶部及び演算部を備えるコンピュータを用いて、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する方法において、
過去の物品の供給実績量を前記記憶部で記憶しておき、
過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を前記演算部で判定する需要動向判定ステップと、
前記演算部で判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を前記演算部で決定する割増指数決定ステップと、
過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を前記演算部で計算する需要量推定ステップと、
前記演算部で計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を前記演算部で決定する需要量予測ステップと、
前記演算部で決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を前記演算部で計算する在庫量予測ステップと、
前記演算部で計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を前記演算部で決定する発注量決定ステップと
を含むことを特徴とする物品発注量決定方法。
【請求項3】
前記記憶部は、過去の物品の供給実績量を、物品が供給された複数の供給経路の夫々に対応付けて記憶してあり、
前記需要動向判定ステップは、
過去の所定期間を構成する複数の小期間内で、複数の供給経路に対応付けられた供給実績量を合計した合計値を、各小期間別に前記記憶部で記憶するステップと、
時間経過に対する前記合計値の変化を時間の一次関数で近似した場合の一次係数の推定値を前記演算部で計算するステップと、
前記一次係数の推定値の値に応じて、物品の需要の増減動向を前記演算部で判定するステップと
を含み、
前記需要量推定ステップは、
定期的な過去の所定時点を起点とする複数の所定期間内での一の供給経路に対応付けられた供給実績量を個別に前記記憶部で記憶し、
時間経過に対する前記供給実績量の変化を時間の一次関数で近似した場合の一次係数及び切片の推定値を前記演算部で計算するステップと、
前記一次係数及び切片の推定値を用いた前記一次関数に、物品の発注時点を起点とする所定期間に対応する時間の値を代入することによって、前記需要量の推定値を前記演算部で計算するステップと
を含むことを特徴とする請求項2に記載の物品発注量決定方法。
【請求項4】
前記割増指数決定ステップは、
物品の需要量の真値を前記割増指数に係る確率で含む信頼区間で物品の需要量を区間推定するための前記割増指数の値を、前記演算部で判定した前記需要動向に応じて決定するステップを含み、
前記需要量予測ステップは、
前記演算部が前記需要量推定ステップで用いた時間経過に対する過去の物品の供給実績量のサンプル数をnとした自由度(n−2)のt分布に基づいて、前記需要量の推定値を中心値とした前記信頼区間の上限値を、物品の需要予測量として前記演算部で決定するステップを含むこと
を特徴とする請求項2又は3に記載の物品発注量決定方法。
【請求項5】
前記在庫量予測ステップは、
発注時点での物品の在庫量、及び発注時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点で納品確定済みの物品の納品量を前記記憶部で記憶し、
発注時点から物品の納品時点までの各時点での物品の在庫予測量を順に計算することによって、物品の納品時点での物品の在庫予測量である納品時在庫予測量を前記演算部で計算する納品時在庫予測量計算ステップと、
物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量を、前記納品時在庫予測量に、物品の納品時点から前記各時点までに納品確定済みの物品の納品量を加算し、更に物品の納品時点から前記各時点までの需要予測量を減算することによって前記演算部で計算するステップと
を含み、
前記発注量決定ステップは、
物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量の内、最小の値を有する最小在庫予測量を前記演算部で選択するステップと、
物品の発注量を、所定の最低在庫量と前記最小在庫予測量との差に応じた値に前記演算部で決定するステップと
を含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかひとつに記載の物品発注量決定方法。
【請求項6】
前記納品時在庫予測量計算ステップは、
発注時点から物品の納品時点までの任意の時点での需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小であるか否かを前記演算部で判定するステップと、
前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小である場合は、前記演算部で、前記時点での物品の供給予測量を前記需要予測量に応じた値とするステップと、 前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量以上である場合は、前記演算部で、前記時点での物品の供給予測量を前記時点の直前での物品の在庫予測量以下の値とするステップと、
前記時点での物品の在庫予測量を、前記時点の直前での物品の在庫予測量から前記供給予測量を減算して前記時点での納品確定済みの物品の納品量を加算することによって前記演算部で計算するステップと
を含むことを特徴とする請求項5に記載の物品発注量決定方法。
【請求項7】
発注時点から次回の発注時点までの間に、物品を予備的に発注する予備発注時点を設けてあり、
過去の物品の供給実績量に基づいて、予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を前記演算部で計算するステップと、
前記演算部で計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を前記演算部で決定するステップと、
前記演算部で決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を前記演算部で計算するステップと、
前記演算部で計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定するステップと
を更に含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかひとつに記載の物品発注量決定方法。
【請求項8】
時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定する装置において、 過去の物品の供給実績量を記憶する手段と、
過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定する手段と、
該手段が判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を決定する手段と、
過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算する手段と、
該手段が計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定する手段と、
該手段が決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算する手段と、
該手段が計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定する手段と
を備えることを特徴とする物品発注量決定装置。
【請求項9】
発注時点から次回の発注時点までの間に、物品を予備的に発注する予備発注時点を設定してあり、
過去の物品の供給実績量に基づいて、予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算する手段と、
該手段が計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定する手段と、
該手段が決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算する手段と、
該手段が計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定する手段と
を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の物品発注量決定装置。
【請求項10】
過去の物品の供給実績量を記憶するコンピュータに、時系列上で離散的な発注時点での物品の発注量を発注時点毎に決定させるコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータに、過去の所定期間内での時間経過に対する物品の供給実績量の変化に応じて、物品の需要動向を判定させる手順と、
コンピュータに、判定した需要動向に応じて、後の時点での需要量の割増し度合いを示す割増指数を決定させる手順と、
コンピュータに、過去の物品の供給実績量に基づいて、物品の発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算させる手順と、
コンピュータに、計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定させる手順と、
コンピュータに、決定した前記需要予測量に基づいて、物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算させる在庫量予測手順と、
コンピュータに、計算した前記在庫予測量に応じて、物品の発注量を決定させる発注量決定手順と
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記在庫量予測手順は、
コンピュータに、発注時点から物品の納品時点までの各時点での物品の在庫予測量を順に計算することによって、物品の納品時点での物品の在庫予測量である納品時在庫予測量を計算させる納品時在庫予測量計算手順と、
コンピュータに、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量を、前記納品時在庫予測量に、物品の納品時点から前記各時点までに納品確定済みの物品の納品量を加算し、更に物品の納品時点から前記各時点までの需要予測量を減算することによって計算させる手順と
を含み、
前記発注量決定手順は、
コンピュータに、物品の納品時点から次回の発注による物品の納品時点までの各時点での在庫予測量の内、最小の値を有する最小在庫予測量を選択させる手順と、
コンピュータに、物品の発注量を、所定の最低在庫量と前記最小在庫予測量との差に応じた値に決定させる手順と
を含むことを特徴とする請求項10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記納品時在庫予測量計算手順は、
コンピュータに、発注時点から物品の納品時点までの各時点での需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小であるか否かを判定させる手順と、
コンピュータに、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量よりも小である場合は、前記時点での物品の供給予測量を前記需要予測量に応じた値とさせる手順と、
コンピュータに、前記需要予測量が前記時点の直前での物品の在庫予測量以上である場合は、前記時点での物品の供給予測量を前記時点の直前での物品の在庫予測量以下の値とさせる手順と、
コンピュータに、前記時点での物品の在庫予測量を、前記時点の直前での物品の在庫予測量から前記供給予測量を減算して前記時点での納品確定済みの物品の納品量を加算することによって計算させる手順と
を含むことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータに、過去の物品の供給実績量に基づいて、発注時点から次回の発注時点までの間に設けた予備発注時点から後の時点での物品の需要量の推定値を計算させる手順と、
コンピュータに、計算した前記推定値を前記割増指数に応じて割増すことによって、物品の需要予測量を決定させる手順と、
コンピュータに、決定した前記需要予測量に基づいて、予備発注時点での物品の発注量がゼロであるとした仮定の下で、予備発注時点での発注による物品の納品時点から次回の発注時点での発注による物品の納品時点までに含まれる一又は複数の時点での物品の在庫予測量を計算させる手順と、
コンピュータに、計算した前記在庫予測量に応じて、予備発注時点での物品の発注量を決定させる手順と
を更に含むことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかひとつに記載のコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−18777(P2006−18777A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198594(P2004−198594)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
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