説明

物品監視装置及び物品監視用の子機

【課題】利用者が持つ親機と、ワイヤ等で物品に取り付けた子機とが通信を行い、両機が離れた場合に警報出力を行う物品監視装置において、物品に取り付けられた子機を安全かつ容易に取外せるようにする。
【解決手段】 子機3は、ワイヤ4のロック位置と解除位置との間で移動するロック部15と、利用者の操作でロック部を解除位置に移動させる操作部25と、操作部の操作を阻止する阻止位置と非阻止位置との間で移動する阻止部27と、阻止部と一体で親機を子機に連結した場合に親機に押されて阻止部を非阻止位置に移動させる係合部35とを有する。親機と子機を連結し、さらに操作部25を押してロック部15を解除位置に移動させることでワイヤ4を解除できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が所持する親機と、ワイヤ等の取付手段を用いて物品に取り付けられた子機とが信号の授受により通信を行い、何らかの事情により両機が離れること等によって信号が減衰等した場合に親機または子機が警報出力を行う物品監視装置に係り、特に物品に取り付けられて子機にロックされているワイヤ等を、子機に親機を連結することによりロック解除して取り外せるようにした物品監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の置き忘れや盗難を防止するために、物品に取付けた子機と利用者が所持する親機とで無線信号の送受信を行い、無線信号の強度の減衰や無線信号の途絶などを検知した場合に異常が発生したとものとして報知などを行う物品監視装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、このような物品監視装置として置き引き防止装置の発明が開示されている。この装置は、荷物側に取り付けられる子機としての荷物機と、荷物機と一体に連結されるが着脱自在とされて利用者が所持する親機である携帯機とを有している。荷物機には適宜の長さに引き出し可能とされたワイヤが設けられ、荷物に取り付けられるようになっている。そして、荷物機及び携帯機には、制御装置と、信号を送信する送信機と、信号を受信する受信機と、信号の授受を行うアンテナがそれぞれ設けられている。また荷物機には、所定の加速度以上の振動を検知する振動センサと、ワイヤの切断を検知する切断センサが設けられる。そして、携帯機には所持者に振動で警告する警報器が設けられ、荷物機には周囲に警報音を発する警報器が設けられる。そして、荷物に取付けられた荷物機と利用者が携帯する携帯機とが一定周期で無線信号の送受信を繰り返し、携帯機が荷物機から所定回数以上信号を受信しない場合には携帯機が警報を行う。この発明によれば、検知精度が高く、誤作動による周囲への影響がなく、確実に置き引きの防止を図ることができるものとされている。
【0004】
ところで、このような物品監視装置においては、子機を物品に取付けるための構造が必要となる。上述した特許文献1の装置では、基端部が子機である荷物機に固定され、先端部が荷物機に対して着脱可能に固定されるワイヤを用いて、荷物機を物品に取付ける構造となっている。そして、このワイヤの先端部はナンバー錠により施錠された状態で荷物機に対して固定されており、ナンバー錠の番号を所定の番号に合わせると解錠されてワイヤの先端部が荷物機から外れる構造となっている。
【0005】
また、以上説明した置き引き防止装置のような物品監視装置によって物品を監視する場合、物品に子機を取付ける構造としては、前述した特許文献1の発明のように、荷物機のワイヤーを荷物に取り付けてナンバー錠で荷物機にロックする構造の他、以下に説明する特許文献2のような構造も知られている。
【0006】
特許文献2には、商品に取り付けられた上述したような物品監視装置であるブザータグを、商品から取り外すために使用する警報タグ解除器の発明が開示されている。この発明では、ブザータグは、物品に取付けるためのループ状のワイヤの端部をロック機構でタグ本体にロックできるように構成されている。ブザータグは内蔵の電池で警報回路が作動し、商品に取りついたままゲートの監視領域を通過すると警報が発せられるようになっている。警報タグ解除器は、ブザータグの外形に対応して開口された挿入部を備えており、レジ等監視領域の外部に設けられている。そして、商品に取り付けられたブザータグを取り外す場合には、ブザータグをブザータグ解除器の挿入部に挿入し、ブザータグのロック機構を解除する仕組みになっている。この発明によれば、扱者によってのみ商品からブザータグを容易に取り外すことができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−68927号公報
【特許文献1】特開平9−305872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記各特許文献に記載の発明には、以下のような課題があった。
特許文献1のようにナンバー錠によって子機を物品から取外す構造では、利用者がナンバー錠の番号を暗記しておく必要がある。そうすると、複数の物品をそれぞれ個別に監視するため、複数の物品監視装置を使用する場合には、利用者は、それぞれの物品に各物品監視装置の子機をそれぞれ取り付け、それぞれの物品監視装置のナンバー錠の番号を暗記する必要があり不便であった。
【0009】
また、特許文献2のように専用の解除器を用いて子機を物品から取外す構造では、専用の解除器を利用者が携帯していなければ、子機を物品から直ちに取外すことができない。このため、利用者は、子機を物品から取外したいときに備えて専用の解除器を常に携帯しておく必要があり不便であった。
【0010】
本発明は、以上説明した従来の物品監視装置における課題を解決するためになされたものであり、子機のロック解除のために、ユーザーが過大な情報を記憶したり解除専用機器を準備する必要がなく、物品に取り付けられた子機を安全かつ容易に取外すことができる物品監視装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された物品監視装置は、
監視対象となる物品に取付けてロックできる取付手段を備えた子機と利用者が所持する親機との間で信号の授受を行うことにより前記物品を監視する物品監視装置において、
前記子機及び前記親機は互いを着脱自在に連結する連結手段を備えており、
前記子機は、
前記取付手段をロックするロック位置と前記取付手段のロックを解除する解除位置との間で移動しうるロック部と、
利用者の操作により前記ロック部を解除位置に移動させる操作部と、
前記操作部の操作を阻止する阻止位置と前記操作部の操作を阻止しない非阻止位置との間で移動しうる阻止部と、
前記親機との連結により当該親機の前記連結手段と係合し、前記阻止部を非阻止位置に移動させる係合部とを有している。
【0012】
請求項2に記載された物品監視装置は、請求項1に記載の物品監視装置において、
さらに前記子機が、
前記取付手段を前記ロック部にロックする際に前記取付手段に対してロック方向と逆方向の付勢力をもって当接するとともに、前記操作部の操作によって前記ロック部が解除位置に移動した際に前記取付手段を前記付勢力でロック部から外れる方向に押し出す支持部材を有していることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載された物品監視装置は、請求項1又は2に記載の物品監視装置において、
さらに前記子機が、少なくとも前記子機に電気を供給する電源と、該電源をオン又はオフにするスイッチ部とを備え、
前記阻止部が前記非阻止位置に移動すると前記スイッチ部が前記電源をオフとすることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載された物品監視用の子機は、
監視対象となる物品に取付けて利用者が所持する親機との間で信号の授受を行うことにより前記物品を監視する物品監視用の子機において、
親機を着脱自在に連結するための連結手段と、
監視対象となる物品に取付けてロックできる取付手段と、
前記取付手段をロックするロック位置と前記取付手段のロックを解除する解除位置との間で移動しうるロック部と、
利用者の操作により前記ロック部を解除位置に移動させる操作部と、
前記操作部の操作を阻止する阻止位置と前記操作部の操作を阻止しない非阻止位置との間で移動しうる阻止部と、
前記親機との連結により当該親機の前記連結手段と係合し、前記阻止部を非阻止位置に移動させる係合部とを有している。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された物品監視装置又は請求項4に記載された物品監視用の子機によれば、利用者は、親機を子機に連結するだけの簡単な操作で、子機を物品に取り付けている取付手段のロックを解除可能な状態とすることができる。また、このように親機と子機を連結した状態であっても、操作ボタンが操作されるまでは、ロック部等による取付手段のロックが実際に解除されることはないので、物品から子機が気づかずに脱落してしまう不都合は未然に防止され、安全である。
【0016】
請求項2に記載された物品監視装置によれば、取付手段を物品に取り付けて子機のロック部にロックする際には、取付手段は支持部材に当接してロック方向とは逆方向の付勢力を受けるので、ユーザーはロック時の手応え(操作感覚)を感じることができ、ロック操作の確実性が高まる。また、親機を子機に連結して子機の阻止部を非阻止位置に移動させた後、子機の操作部を操作してロック部を解除位置に移動させると、取付手段は支持部材の付勢力でロック部から外れる方向に強制的に押し出される。すなわちユーザーは、親機と連結された子機の操作部を操作するだけで取付手段がロック部から外れた非ロック状態にすることができ、ロック解除操作が簡単且つ確実である。
【0017】
請求項3に記載された物品監視装置によれば、前記阻止部に、操作ボタンの操作を阻止する機能だけでなく、電源のスイッチ部をオフにする機能を共用させることができるので、親機を子機に連結することにより、子機を物品に取り付けている取付手段のロックを解除して子機を物品から取り外せるようにすると同時に、少なくとも子機についての電源をオフとして監視状態の解除を行なうことができる有用性の高い構造を、少ない部品点数で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る物品監視装置の斜視図であり、(a)は親機、(b)は取付手段たるワイヤがロックされた状態にある子機を示す。
【図2】実施形態に係る物品監視装置の使用方法を説明する斜視図であり、(a)はワイヤが図示しない物品に取り付けられてロックされた状態にある子機と、子機に連結されていない親機とを示し、(b)はロックの解除のために親機と子機を連結した状態を示し、(c)は親機と子機を連結した状態において子機の操作部を操作して子機のワイヤが外れた状態を示している。
【図3】(a)は実施形態に係る物品監視装置の子機において筐体の背面側を除去して内部構造を示した図であり、(b)は(a)図において操作部とロック部を断面で表し、付勢手段である複数個のばねを省略して示した図である。これらの図では、子機のワイヤはロックされた状態にある。
【図4】実施形態に係る物品監視装置の子機において、筐体の背面側を除去して内部構造の要部を示す図であって、取付手段であるワイヤがロックされ、親機が分離されている状態を示す図である。また、ロック状態にあるロック部近傍を拡大して断面で示している。
【図5】図4に示す状態の子機に対して親機を連結した状態を示す図である。すなわち、実施形態に係る物品監視装置の子機において、筐体の背面側を除去して内部構造の要部を示す図であって、図示しない親機が連結された結果、阻止部が下降し、操作部が操作可能となっているが、まだ操作部が操作されておらず、ロック部と取付手段が係合したままでワイヤがロックされている状態を示す図である。また、阻止部の下降によってスイッチ部がオフとなった状態を拡大して示している。
【図6】図5に示す状態において操作部を押した場合の状態を示す図である。すなわち、実施形態に係る物品監視装置の子機において、筐体の背面側を除去して内部構造の要部を示す図であって、図示しない親機が連結されて阻止部が下降した状態において、操作部が操作されてロック部をロック位置から解除位置まで移動させ、取付手段がロック部から外れた状態を示す図である。また、ロック部から外れた取付手段が支持部材によってロック部から外れる方向に押されている状態を拡大して断面で示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る物品監視装置について、図1〜図6を参照して説明する。
まず、図1及び図2を参照して、この物品監視装置の構成の概略と使用方法を説明する。図1及び図2に示す物品監視装置1は、利用者が所持する親機2と、取付手段としてのワイヤ4を用いて物品に取り付けることができる子機3とによって構成される。ワイヤ4は一端が子機3に固定され、他端が子機3に対して着脱可能にロックされる。親機2と子機3は一対一で対応する別々の装置として構成され、組み合わせて使用される。これら親機2と子機3は、無線通信等の遠隔的通信手法による信号の授受により通信を行い、受信した電波信号等の信号強度が所定の基準を下回って減衰したり、又は途絶等した場合に、少なくともその一方が警報出力等の報知動作を行う。
【0020】
図1及び図2(a)は親機2と子機3が分離した状態を示す。子機3は、これらの図には示さない物品に取付手段としてのワイヤ4によって取り付けられ、ワイヤ4は子機3の本体に設けられた後述するロック機構によりロックされている。親機2は、子機3を取り付けた物品の所有者や管理者等が保持する。これが本物品監視装置1の使用状態である。この状態で、例えば子機3が取り付けられた物品が犯人によって持ち去られ、又は物品の所有者が物品を置き忘れてしまい、その結果、子機3が親機2を中心とした所定範囲の外に出ると、親機2と子機3の少なくとも一方は、受信する電波信号等の減衰又は途絶等に基づき、警報出力等の報知動作を行う。
【0021】
図1に示すように、親機2は、筐体5の背面に対して一定の隙間をもって平行に配置された矩形板状の親側連結手段6を有している。この親側連結手段6は、筐体5よりも幅及び長さともに小さく、その上端側の辺において筐体5の上部に結合され、その下端側は自由端となっている。他方、子機3も、筐体7の背面側に、矩形板状の親側連結手段6に対して一対一の係合関係にあるスリット状の開口8aを備えた矩形袋状の子側連結手段8を有している。この子側連結手段8は、筐体7よりも幅及び長さともに小さく、その開口8aは上端側に開いている。
【0022】
図1に示すようなロック状態にある子機3のワイヤ4を開放して物品から取り外せるようにするには、同図に示すように親機2の背面の親側連結手段6と子機3の背面の子側連結手段8を対面させるとともに、図示はしないが両連結手段6,8を平行に保ちながら相対的に親機2を子機3の上方に配置し、その後図2(b)に示すように、親機2を下方に下ろして親側連結手段6を子側連結手段8の開口8aから挿入して両機2,3を連結する。
【0023】
図2(c)に示すように、親機2と子機3が連結手段6,8で連結されると、子機3の子側連結手段8内にある係合部と称する部材(図示せず。詳細は後述する。)に親側連結手段6が係合し、その結果、子機3におけるワイヤ4のロックを解除する操作部が操作可能な状態となる。その状態で操作部を押せば、子機3内のロック機構によるロックが解除され、子機3のワイヤ4の他端が子機3から離れるので、ワイヤ4を図示しない物品から取り外すことができる。また、この状態では、少なくとも子機3の電源がオフとなるので、警報が発せられることはない。これが本物品監視装置1の非使用状態である。この状態から、監視対象である他の物品に改めて子機3の取付を行なう場合には、他端が自由になっている子機3のワイヤ4を物品に通して取り付け、子機3にロックする。その後、親機2を子機3から離して子機3等の電源をオンとした後に、親機2を利用者が所持する。これが、前述した図1及び図2(a)に示した監視状態である。
【0024】
次に、前記物品監視装置1における子機3のロック機構その他の構造等について、図3〜図6を参照して詳細に説明する。
図3〜図6は、物品監視装置1の子機3において筐体7の背面側の半部を除去し、内部構造を露出させた状態を示す図である。図3及び図4では親機2は子機3から分離されており、特に図3に示すように子機3のワイヤ4はループ状となってロックされた状態にある。図5及び図6では、図示しない親機2が子機3に連結されている。
【0025】
子機3のワイヤ4は、容易には切断できない可撓性の材質からなる長体であり、その長さは筐体7の縦寸法の概ね2倍程度とされている。このワイヤ4の一端は、筐体7の上面の一側方に設けられた装着部9に挿入されている。この装着部9に設けられた孔を貫通したワイヤ4の一端には大径の抜け止め10が取り付けられ、さらに抜け止め10と装着部9の底部の間には弾性部材としてのばね11が介装されている。このためワイヤ4の一端側は筐体7に対して固定されているが、ばねの弾力をもって若干移動可能な状態とされている。
【0026】
子機3のワイヤ4の他端は、拡径した逆円錐台状のつばを有する係止部12とされており、筐体7に差し込んでロック機構で固定できるようになっている。すなわち、筐体7の上面の他側方、すなわち筐体7の上面においてワイヤ4の一端が固定された装着口9と反対の側には、ワイヤ4の他端を挿入するためのロック孔13が設けられている。筐体7の内部には、このロック孔13の下方にロック部15が設けられている。このロック部15には、ワイヤ4の他端が挿入される上下に貫通した挿入孔16が形成されており、この挿入孔16の内面にはワイヤ4の係止部12が引っ掛かる係止段部17が形成されている。係止段部17は、上方に開いた傾斜案内面17aと水平な底面17bとで構成された断面略三角形状の構造であり、この底面にワイヤ4の係止部12が引っ掛かれば、ワイヤ4はロックされて抜けなくなる。ロック部15は、ワイヤ4を挿入孔16内に挿入する上下方向と直交する左右方向について、所定の範囲内で移動することができる。すなわちロック部15は、係止部12に引っ掛かってワイヤ4をロックするロック位置(図3乃至図5)と、係止部12との引っ掛かりがなくなってワイヤ4のロックが解除される解除位置(図6)との間で移動することができる。ロック部15は、筐体7に設けられたリブとの間に介装された付勢手段としてのばね18により、ロック位置に設定される方向(図中左方)に付勢されている。
【0027】
ロック部15の下方には、ロック部15の挿入孔16を挿通したワイヤ4の係止部12に当接するように、支持部材20が設けられている。支持部材20は、棒部21と、棒部21の上端下方に設けられたつば部22とを有する棒状の部材である。支持部材20は、筐体7に設けられた上リブの孔から棒部21の上端が突出するように配置されており、筐体7に設けられた下リブとつば部22の下面との間には付勢手段としてのばね23が設けられている。このばね23が、つば部22が上リブに当接する上方向に支持部材20を付勢している。従って、使用者がワイヤ4を子機3にロックする場合には、ワイヤ4の係止部12がロック部15の係止段部17に引っ掛かる際に、該係止部12に押されて支持部材20がばね23の付勢力に抗して下方に沈み込むので、ワイヤ4をロックする操作を行なう使用者はばね23による一定の操作感を感じることができる。また、ワイヤ4のロックを解除する場合には、ロック部15を解除位置に移動させることにより、ロック部15との引っ掛かりがなくなったワイヤ4の係止部12は、ばね23で上方に付勢されている支持部材20によって上方に押し上げられ、ロック部15から確実に外される。
【0028】
ロック部15には、ロック部15をロック位置に付勢しているばね18と反対側の側面に、ロック部15を移動させるための操作部25が非固定状態で取り付けられている。操作部25は、一端が閉止され、他端が開口した中空筒型の押しボタンであり、ロック部15の一側面に形成された突起15aが開口に対して移動可能に挿入され、筐体7に形成された孔7aから閉止側が外方に突出して利用者が指で外側から押圧操作できるようになっている。
【0029】
筐体7内には、ロック部15及び操作部25の下方には阻止部27が設けられている。阻止部27とは、ワイヤ4のロック状態を操作部25によって解除する操作を阻止する部材という意味である。この阻止部27は、操作部25に当接して移動を不能とする阻止片28と、スイッチ部30を操作して電源のオン、オフを行なう操作片29とを備えており、上下方向について所定の範囲内で移動することができる。すなわち、阻止部27は、阻止片28が操作部25を移動できなくするとともに、操作片29がスイッチ部30をオンとする上方の阻止位置(図3及び図4)と、阻止片28が操作部25から離れて操作部25の移動が自由になるとともに、操作片29がスイッチ部30をオフとする下方の非阻止位置(図5及び図6)との間で移動可能である。そして阻止部27は、全体として付勢手段としてのばね31によって上方に付勢されており、外力を受けない状態では、図3及び図4に示す阻止位置に来るように構成されている。
【0030】
なお、阻止部27の操作片29が操作するスイッチ部30は、図5中の拡大図に示すように、阻止部27が下降して操作片29が離れ、付勢されたレバー30aが起き上がった状態では電源をオフとし、阻止部27材が上昇して操作片29がレバー30aを倒した状態では電源をオンとするように構成されている。
【0031】
この阻止部27には、係合部35と呼ばれる突起が設けられている。図示はしないが、係合部35は筐体7の背面側の半部を貫通しており、図1を参照して説明した子側連結手段8の内部に移動用の長溝を介して突出している。従って、子機3と親機2を組み合わせ、子側連結手段8の内部に親側連結手段6を挿入すると、子側連結手段8が係合部35を押し下げるので、阻止部27は阻止位置から非阻止位置に移動する。これによって、スイッチ部30が電源をオフとし、操作部25でロック部15を解除位置に移動させることができる状態となる。
【0032】
以上説明したロック機構の他、図3に示すように子機3の筐体7の内部には基板40が取り付けられている。詳細は図示しないが、この基板40には、物品監視装置1として必要な電波の送信手段又は受信手段及びその制御手段等の電子装置類が搭載されている。また、基板40の裏側には、警報を発令する報知手段としてのスピーカ41が設けられている。さらに、筐体7内の基板40の下方には、子機3の電源となる電池の収納部42が設けられている。
【0033】
次に、前記物品監視装置1の使用時におけるワイヤ4のロック及びロック解除の作用等について、図4〜図6を参照して詳細に説明する。
図4は、監視対象である図示しない物品に取り付けられた子機3のワイヤ4がロックされている状態を示している。ワイヤ4の他端の係止部12は、筐体7のロック孔13を経てロック部15の挿入孔16に挿入され、ロック位置に設定されたロック部15の係止段部17に係合している。この時、子機3には親機2が連結されていないので、阻止部27はばね31によって上方の阻止位置に設定されており、阻止片28が操作部25を移動できないように抑えている。従って、図示しない物品に取り付けられたワイヤ4を正規の手順を踏まずに取り外すことはできない。また、操作片29はスイッチ部30のレバーを押し倒して電源をオンにしているので、物品監視装置1としての監視・警報機能は生きており、親機2との距離が規定以上に離れればスピーカ41が警報を発する状態にある。
【0034】
図5に示すように、図示しない親機2を子機3に連結すると、子機3の子側連結手段8内にある係合部35を親側連結手段6が押し下げ、その結果、阻止部27が下方の非阻止位置に移動する。これによって阻止片28が操作部25から離れ、操作部25を押してロック部15を解除位置に移動する操作が行なえるようになる。但し、この状態では、まだ操作部25は押されていないので、ロック部15はばね18の付勢力によってロック位置に設定されたままであり、ワイヤ4の係止部12はロック部15の係止段部17に引っ掛かってロックされた状態を維持している。すなわち、使用を中止するために親機2を子機3に連結しても、直ちにワイヤ4のロックが解除されて物品から子機3が不用意に落下してしまうことはない。また、この状態では操作片29がスイッチ部30から離れているので、スイッチ部30のレバー30aは拡大図に示すように持ち上がってオフになり、電源が切れて警報が鳴ることはなくなる。
【0035】
図5に示す親機2を連結した状態から、図6に示すように使用者が操作部25を押すと、ロック部15が解除位置に移動して拡大図に示すように係止段部17がワイヤ4の係止部12から外れ、ワイヤ4の他端は自由状態になる。ここで、ワイヤ4の係止部12には上方に付勢された支持部材20が当接しているので、ロック部15との引っ掛かりがなくなったワイヤ4の係止部12は、支持部材20によって上方に押し上げられ、ロック部15から確実に外されることとなる。支持部材20を付勢するばね23の強さを適宜に設定すれば、操作部25を押してロックを外した瞬間に、ワイヤ4の係止部12が子機3のロック孔13から飛び出して外れるように設定することも可能であり、親機2の連結後、操作部25のワンタッチ操作でワイヤ4を物品から取り外すことができる。
【0036】
このように、本物品監視装置1におけるワイヤ4のロック機構によれば、使用を中止するために親機2を子機3に連結しても、ロック解除が可能な状態となるだけで、直ちにワイヤ4のロックが解除されて物品から子機3が不用意に落下してしまうことはなく、その後で操作部25を操作することにより、ワイヤ4のロックを解除することができる。
【0037】
以上説明した実施形態では、各1個の親機2と子機3で物品監視装置1を構成していたが、1個の親機2と複数の子機3で1組の物品監視装置1を構成してもよい。その場合は、各子機3は異なる複数の物品に取り付け、各物品が親機2から所定距離以上離れた場合に、当該子機3と親機2の一方又は双方が警報を発するものとすることができる。その場合、親機2においては、いずれの子機3が警報状態にあるかを、警報の種類、すなわち予め子機3ごとに定めておいたブザーの音色や、報知手段が発光手段の場合は予め子機3ごとに定めておいた発光色等で示してもよいし、また表示部等の表示画面において、予め子機3ごとに定めておいた子機番号の表示等で表示するようにしてもよい。
【0038】
また、以上説明した実施形態では、親機2を子機3に連結手段で連結することでワイヤ4のロックを解除可能な状態とすることとしたが、この場合、親側連結手段6と子側連結手段8は鍵と鍵穴の関係のような構造的対応関係にあるものとし、対応関係にない親機2と子機3を連結しようとしても、機械的に連結できないようにすれば、セキュリティーの面で一層好ましい効果が得られる。
【0039】
また、以上説明した実施形態では、親機2と子機3を連結手段で連結することで、子機3のワイヤ4のロックが解除され、子機3の電源がオフとされたが、親機2の電源もオフになるような構成としてもよい。
【0040】
また、以上説明した実施形態では、子機3を物品に取り付ける取付手段としてワイヤ4を例示したが、その他の構成でもかまわない。例えば、衣類等の薄手の物品であれば、子機3と取付手段としてのピンで物品を挟み、物品を貫通したピンが子機3の挿入孔に挿入されて内部のロック機構でロックされるような構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1…物品監視装置
2…親機
3…子機
4…取付手段としてのワイヤ
6…親側連結手段
8…子側連結手段
15…ロック部
20…支持部材
25…操作部
27…阻止部
30…スイッチ部
35…係合部
42…電源となる電池の収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象となる物品に取付けてロックできる取付手段を備えた子機と利用者が所持する親機との間で信号の授受を行うことにより前記物品を監視する物品監視装置において、
前記子機及び前記親機は互いを着脱自在に連結する連結手段を備えており、
前記子機は、
前記取付手段をロックするロック位置と前記取付手段のロックを解除する解除位置との間で移動しうるロック部と、
利用者の操作により前記ロック部を解除位置に移動させる操作部と、
前記操作部の操作を阻止する阻止位置と前記操作部の操作を阻止しない非阻止位置との間で移動しうる阻止部と、
前記親機との連結により当該親機の前記連結手段と係合し、前記阻止部を非阻止位置に移動させる係合部とを有する物品監視装置。
【請求項2】
さらに、前記子機は、
前記取付手段を前記ロック部にロックする際に前記取付手段に対してロック方向と逆方向の付勢力をもって当接するとともに、前記操作部の操作によって前記ロック部が解除位置に移動した際に前記取付手段を前記付勢力でロック部から外れる方向に押し出す支持部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の物品監視装置。
【請求項3】
さらに、前記子機は、少なくとも前記子機に電気を供給する電源と、該電源をオン又はオフにするスイッチ部とを備え、
前記阻止部が前記非阻止位置に移動すると前記スイッチ部が前記電源をオフとすることを特徴とする請求項1又は2記載の物品監視装置。
【請求項4】
監視対象となる物品に取付けて利用者が所持する親機との間で信号の授受を行うことにより前記物品を監視する物品監視用の子機において、
親機を着脱自在に連結するための連結手段と、
監視対象となる物品に取付けてロックできる取付手段と、
前記取付手段をロックするロック位置と前記取付手段のロックを解除する解除位置との間で移動しうるロック部と、
利用者の操作により前記ロック部を解除位置に移動させる操作部と、
前記操作部の操作を阻止する阻止位置と前記操作部の操作を阻止しない非阻止位置との間で移動しうる阻止部と、
前記親機との連結により当該親機の前記連結手段と係合し、前記阻止部を非阻止位置に移動させる係合部とを有する物品監視用の子機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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