説明

物品移載装置及び物品移載システム、物品移載方法

【課題】 レトルトパウチ、輸液バッグのような物品を熱処理する設備システムを簡略にし、設置スペースを縮小し、熱処理品質を向上させる物品移載装置、物品移載システム、物品移載方法を提供する。
【解決手段】 上下多段にトレイ20を定ストロークで出し入れ可能に収納したトレイ引出式の熱処理用筐体30と、筐体30から引き出されるトレイ20に対して熱処理済みの物品3bをトレイ20から搬出するアンローディングと、筐体30に入れ戻されるトレイ20に対して未熱処理の物品3aをローディングする、両機能を備えた物品移載装置F1を筐体30のトレイ出し入れ側に併設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌などの目的で熱処理される包装品などの複数の物品をトレイに載置してバッチ式に熱処理する熱処理設備に適用可能な物品移載装置、物品移載システム、これら装置、システムにおける物品移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を袋内に充填したレトルトパウチ、硬質のプラスチック容器内に食品を密閉収容したレトルト食品、輸液バッグなどの医療用レトルト包装品は、高圧釜(レトルト)の熱処理釜内で蒸気、熱水で加熱処理されて殺菌・減菌処理される。例えば、複数のレトルトパウチを平坦なトレイ上に縦横に整列させて載置し(ローディング)、トレイと共に製品殺菌・製品減菌設備の熱処理釜に搬入されて熱処理される。トレイは、矩形の底板に蒸気や熱水が通る穴を多数開けたものが使用される。複数のレトルトパウチを整列させて保持した複数のトレイを、保持車付き運搬台車に段積みして熱処理釜まで運搬し、段積みした複数のトレイを熱処理釜内に搬入する。バッチ式にレトルトパウチの熱処理が終了すると、熱処理釜から段積みトレイを搬出する。段積みされた複数のトレイを1枚ずつ段ばらしして、トレイから熱処理済みのレトルトパウチをアンローディングして、後続の出荷ラインへと搬出する。
【0003】
バッチ式の製品殺菌・製品減菌設備の概要例を図15に示す。なお、図15(A)は、製品殺菌・製品減菌設備の平面図、図15(B)は複数のトレイを段積みした運搬台車の側面図である。
【0004】
図15(A)に示す製品殺菌・製品減菌設備は、直線状のトレイ搬送ラインLの両端部に配置したトレイ段ばらし装置のアンスタッカーP1、トレイ段積み装置のスタッカーP2と、トレイ搬送ラインLの2箇所に配置した二種の物品移載装置Q1、Q2と、トレイ搬送ラインLに直交させた物品搬出搬入ラインの先に設置した物品搬出コンベアR1、物品搬入コンベアR2を備える。これら各種装置・設備の間には、各種のコンベア(符号なし)が配備される。図15(B)に示す運搬台車4は、手押し式台車である。運搬台車4上に複数枚のトレイ2が段積みされ、作業員5の手押しで床上を走行する。段積みされる複数枚のトレイ2の各々には、複数のレトルトパウチ(以下、必要に応じて物品と称する)3が縦横に整列させてローディングされている。トレイ2上の複数の物品3は、熱処理前の未熱処理の物品、または、熱処理された熱処理済みの物品である。以下、必要に応じて未熱処理物品を3a、熱処理済み物品を3bと称する。トレイ2は、矩形の平坦な底板に熱処理用蒸気が通過する穴を開け、底板の周縁に枠板を一体に起立させている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図15(A)の鎖線は熱処理釜1を示す。熱処理釜1から取り出された段積みトレイ2が運搬台車4に載せられてアンスタッカーP1の手前まで運ばれる。アンスタッカーP1は、段積みトレイ2を上段から1枚ずつ取り出す(段ばらし)。取り出された1枚のトレイ2は、複数の熱処理済み物品3bを保持する実トレイである。この実トレイ2は、1枚ずつコンベアでトレイ搬送ラインLを下流に水平搬送されて、物品移載装置Q1に搬入される。物品移載装置Q1は、搬入された実トレイ2上に保持された熱処理済み物品3bを取り出す物品アンローディング装置である。物品移載装置Q1は、トレイ2からアンローディングした熱処理済み物品3bを、物品移載装置Q1に隣接させたコンベアに移載する。コンベアは、移載された熱処理済み物品3bを物品搬出コンベアR1に移送する。物品移載装置Q1は、トレイの底板に形成した穴から突上ピンを突き上げ複数の物品をトレイから浮き上げ、この物品をコンベアに移載して物品搬出コンベアR1に移送する装置(例えば、特許文献2参照)、あるいは、トレイを上下反転させて複数の物品を隣接するコンベアに移載する装置などが適用される。物品搬出コンベアR1は、熱処理済み物品3bを1個ずつ出荷ラインに搬出する。出荷ラインに搬出された熱処理済み物品3bは、乾燥や梱包などの必要な処理が行われて出荷される。
【0006】
物品移載装置Q1で、所定数の熱処理済み物品3bが取り出されて空になったトレイ2は、トレイ搬送ラインLを下流に搬送され、物品搬入コンベアR2に連接された物品移載装置Q2に移送される。物品移送装置Q2は、物品搬入コンベアR2から1個ずつ搬入される未熱処理物品3aを空のトレイ2上に整列させて移載するローディング装置である。物品移載装置Q2は、伸縮式コンベアを使って物品3aをトレイ2上に落下させる装置(例えば、特許文献3参照)などが適用される。物品移載装置Q2で所定数の未熱処理物品3aが移載されたトレイ2は、実トレイとして1枚ずつ後続のスタッカーP2に移送される。スタッカーP2は、搬入された実トレイ2を1枚ずつ運搬台車4に段積みする。所定枚数のトレイ段積みが終了すると、作業員5が運搬台車4を手押しして熱処理釜1の所まで運ぶ。熱処理釜1は、複数釜が並置されていて、運転停止して冷えた熱処理釜1に段積みトレイが所定数の未熱処理物品と共に搬入されて、殺菌・減菌の熱処理が行われる。
【特許文献1】特開2002−068141号公報(図12)
【特許文献2】特開2005−206367号公報(図1)
【特許文献3】特開2000−335732号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15に示すようなバッチ式の製品殺菌・製品減菌設備は、レトルトパウチのような熱処理対象の物品に人手を触れることなく、衛生的かつ安全に熱処理ができる。しかし、運搬台車に段積みされた物品保持の実トレイを1枚ずつ段ばらしするアンスタッカー、実トレイから複数の熱処理済み物品をコンベアに移載する移載装置(物品アンローダー)、物品無しの空トレイに未熱処理物品を移載する移載装置(物品ローダー)、未熱処理物品を保持した実トレイを段積みするスタッカーといった各種の独立した装置、設備を組み合わせている構成のため、製品殺菌・製品減菌設備全体が複雑で大掛かりとなり、設置スペースが大きくなる不具合があった。また、上述の各種の独立した装置、設備は、製品殺菌・製品減菌設備全体のコスト低減を難しくすると共に、各々を物品の種類変更に適切に対応させることが難しく、多種物品の対応性に問題があった。
【0008】
また、製品殺菌・製品減菌設備の設置スペースが大きくなる分に応じて、トレイや物品の移動量が増し、物品移動時に生じる振動で物品が位置ずれする確率が高く、トレイ上にローディングされた隣接する物品の周縁部同士が重なる確率が高くなる。特に、トレイ上にコンベア先端から物品を落下させてローディングする場合は、落下時の衝撃が小さくてもトレイ上で物品が位置ずれし易い。このような物品の位置ずれは、レトルトパウチや輸液バッグのような柔らかくて変形し易い物品において目立っている。例えば、レトルトパウチは、食品充填部分の外周に突設させた2枚の包装材(樹脂フィルムなど)同士の熱圧着接合片部分が薄くて曲がり易く、かつ、この接合片部分でレトルトパウチをコンベアやトレイ上で精度良く位置決めすることが難しいことから、トレイ上で隣接するレトルトパウチが大きく位置ずれする確率が高い。トレイ上の熱処理前の隣接するレトルトパウチの食品充填部分が部分的にせよ重なると、この重なった部分で熱処理不足が生じる可能性が高くなり、レトルトパウチの熱処理品質の管理を難しくしている。
【0009】
本発明の目的とするところは、レトルトパウチのような複数の物品を熱処理する設備を簡略にし、設置スペースを縮小し、熱処理品質を向上させるに有効な物品移載装置、物品移載システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の物品移載装置は、複数の凸部と凹部が交互に連続した波状の底面を有し、この底面の凸部上で熱処理対象の物品の保持が可能な略水平な波型トレイと、トレイより上位にトレイに対して略水平方向に相対移動可能に設置されてトレイとの間で物品の受け渡しをするコンベアと、コンベアの先端部に連結され、コンベア先端部から下り傾斜で延在するガイド斜面およびトレイ底面の凹部内に略水平方向に相対移動可能に挿入される櫛歯状の歯先部を有する物品受け渡し用ガイド部材とを具備した装置で、ガイド部材の歯先部をトレイ底面の凹部内に挿入した状態でコンベアとガイド部材をトレイに対し略水平方向に相対移動させて、ガイド部材のガイド斜面に物品を移動させることで、トレイとコンベア間で物品の受け渡しを行う。
【0011】
上記物品移載装置の場合、ガイド部材のガイド斜面に、物品の移動を助勢する補助ローラを配備することができる。
【0012】
ここでのガイド部材のガイド斜面は、物品が滑って移動し易い斜面であるが、物品の種類、サイズによってはガイド斜面での滑り性が安定しない場合がある。このような場合は、ガイド斜面の1箇所あるいは複数箇所に補助ローラを、ローラ外周上部をガイド斜面より少し突出させて配備すると、物品の滑りを補助ローラが助勢して滑り性を安定させる。
【0013】
また、上記物品移載装置の場合、ガイド部材の歯先部をトレイ底面の凹部内に挿入した状態でコンベアとガイド部材をトレイに対し略水平方向に往復相対移動させ、ガイド部材がトレイの前端側から後端側に向かう相対往動時にトレイ上の熱処理済みの物品をコンベアに移動させ、ガイド部材がトレイの後端側から前端側に向かう相対復動時にコンベアに予め搬入された未熱処理の物品をコンベアからトレイ上に移動させることができる。
【0014】
ここで、波型トレイの波状底面は、所定長さの畝状の凸部と谷状の凹部を交互に連続させて波状面としたもの、または、平坦な底面に複数の点状凸部を格子状配列で形成し、隣接する凸部列の間に谷状の凹部を形成して波状面にしたものである。トレイの底板に波板を使用して、その波板上面を波状底面とすることができる。熱処理対象の物品は、単品が波型トレイ底面の複数の凸部上に載置されて保持されるサイズ、形状のもので、レトルトパウチや輸液バッグのような定形で柔軟性のある包装品の他、非包装の食品、薬品類が適用できる。1枚のトレイ上に保持される物品の数は、バッチ式に熱処理される複数の他、サイズの大きな物品であれば単数も可能である。コンベアは、前後端を有する伸縮式のベルトコンベアが有効である。このコンベアの先端部にガイド部材が固定、あるいは、着脱自在に連結される。
【0015】
トレイ底面の複数の凹部にガイド部材の歯先部を挿脱自在に挿入する。この歯先部をトレイ底面の凹部内に挿入した状態でコンベアとガイド部材をトレイに対し略水平方向に往復相対移動させる。この往復相対移動は、コンベアとガイド部材の一連一体物とトレイの一方を固定して他方を移動させる相対移動、両方を互いに接近離反する方向に移動させる相対移動が可能である。この相対移動で、トレイ底面の凹部内でガイド部材の歯先部を相対前進させると、トレイ底面の凸部上に載置されている物品がガイド部材の歯先部から基部のガイド斜面へと掬い取られてコンベアに移送されるようにしてアンローディングが行われる。また、逆の相対移動では、コンベアで複数の物品をガイド部材へと移送することで、物品がガイド部材のガイド斜面を滑ってトレイ底面の凸部上に移載されるようにしてローディングが行われる。このようにトレイとコンベア間での物品受け渡しを、ガイド部材のガイド斜面に物品を滑らせて行うことで、トレイとコンベアのような落差のある間での物品移載が常に円滑に行われる。また、物品移載時に物品が大きな外力を受けることが無くて、物品の損傷や位置ずれを低減し抑制することができる。
【0016】
上記目的を達成する本発明の物品移載システムは、熱処理対象の物品を保持するトレイと、複数のトレイを上下多段にしてそれぞれ略水平な前後方向に定ストロークで出し入れ可能に保持するトレイ引出式の筐体と、筐体のトレイ出し入れ側に配備され、筐体から引き出されるトレイに対して当該トレイ上の熱処理済み物品を所定の物品搬出ラインにアンローディングし、および、筐体に入れ戻されるトレイに対して所定の物品搬入ラインから未熱処理の物品をローディングする物品移載装置を具備したことを特徴とする。
【0017】
上記システムにおける物品移載装置は、上記した波型トレイ、コンベア、ガイド部材を備えた構造とすることができる。
【0018】
あるいは、上記システムにおける物品移載装置は、筐体から引き出したトレイ上の熱処理済みの物品を吸着して物品搬出ラインに移載し、物品搬入ラインの未熱処理の物品を吸着して筐体から引き出したトレイ上に移載する吸着パッドと、この吸着パッドを筐体と物品搬出ライン、物品搬入ラインの間で移動させるパッド駆動装置を備えた構造とすることができる。
【0019】
ここで、トレイ引出式筐体は、前面が開口した矩形箱形のラック、籠である。筐体は前面が開口し、この開口でトレイが出し入れされる。トレイは、物品を保持する底板が略水平な矩形の平板または波板であるものが適用できる。筐体は平行に対向する両側板を有し、この両側板の内面にトレイの両側端部を摺動可能に支持する溝またはレールを所定の間隔で上下多段に有する。筐体からトレイが1枚ずつ順に定ストロークで引き出され、同じ定ストロークで筐体内に入れ戻される。筐体からのトレイの引き出しと、引き出したトレイの入れ戻しは、筐体に併設される物品移載装置に配設した自動トレイ出し入れ装置で自動的に行うことができる。このトレイ出し入れ装置は、筐体を支持する設備側に設けることもできる。トレイ出し入れ装置は、筐体に収納されたトレイの前端部に挿脱可能に係止する引出し爪を定ストロークで前後往復移動させる装置とすることができる。筐体からトレイを取り出すことなく定ストロークで引き出して、トレイ上の物品を物品移載装置に移載し、トレイを筐体内に入れ戻す動作に併行させて物品移載装置から物品をトレイに移載することで、時間無駄少なくして物品の受け渡しが作業性良く行える。また、筐体の開口する前面側に併設される物品移載装置は、トレイに対する物品のアンローディングとローディングの両動作を繰り返し的に行う。換言すれば、アンローダーとローダーが1つの装置、設備で行われることで、設備全体の設置スペースの縮小が可能であり、トレイと物品の移動量の大幅な縮小ができ、その分、物品の移動による位置ずれを抑制することが容易になる。
【0020】
また、上記物品移載システムにおいては、筐体と物品移載装置の一方を他方に対して上下に相対移動させる昇降装置を備え、昇降装置で筐体と物品移載装置を間欠相対移動させる毎に、筐体に対してトレイを1枚ずつ1回出し入れし、このトレイに対して物品移載装置で熱処理済みの物品のアンローディングと未熱処理の物品のローディングを行うことができる。
【0021】
この場合、上記コンベアとガイド部材を備えた物品移載装置においては、筐体から1枚のトレイを引き出しながらトレイ上の熱処理済み物品をアンローディングし、定ストローク引き出したところでアンローディングが終了し、次に、空状態になったトレイを筐体に入れ戻しながらトレイ上に未熱処理物品をローディングして、定ストローク入れ戻したときにローディングを終了させることができる。また、上記吸着パッドを使用した物品移載装置においては、筐体から1枚のトレイを定ストロークで引き出した時点でトレイ上の熱処理済み物品をアンローディングし、次に、空状態になったトレイ上に未熱処理物品をローディングして、トレイを筐体内に定ストローク入れ戻すことができる。このような異なる種類の物品移載装置のいずれを使用しても、筐体に対してトレイを1枚ずつ1回出し入れした時点で、アンローディングとローディングの一連の動作が短時間で連続的に行われるので、アンローディングとローディングの作業性が一段と向上する。また、アンローディング前とローディング後の各物品は、筐体内のトレイ上に保持されて筐体で保護された状態にあり、筐体やトレイの移動時に物品が損傷を受けたり、トレイ上で位置ずれする可能性が少なくなる。
【0022】
また、上記物品移載システムにおいては、筐体と物品移載装置の一方を他方に対して上下に相対移動させる昇降装置を備え、昇降装置で筐体と物品移載装置を間欠的に相対移動させる毎に、筐体の複数のトレイを順に1枚ずつ引き出し、引き出されるトレイに対して物品移載装置で熱処理済みの物品のアンローディングを行い、次に、昇降装置で筐体と物品移載装置をトレイ引き出し時の移動方向と逆方向に間欠的に相対移動させ、この相対移動毎に筐体から先に引き出したトレイを1枚ずつ筐体内に入れ戻し、入れ戻されるトレイに対して物品移載装置で未熱処理の物品のローディングを行うことができる。
【0023】
この場合は、筐体に上下多段に収納された複数のトレイを最下段のものから1枚ずつ順に引き出し、1枚引き出す毎にトレイ上の熱処理済み物品をアンローディングする。筐体に収納された複数のトレイを引き出し、それぞれのアンローディングが終了すると、筐体から引き出されたトレイの全てが物品の無い空トレイとなる。この段階で、引き出された複数のトレイの内の最上段のトレイから1枚ずつ順に筐体に入れ戻し、このときにトレイに未熱処理物品をローディングする。このように筐体の複数のトレイに対してアンローディングを複数回連続的に行い、その後、ローディングを複数回連続して行うようにすると、アンローディングとローディングの作業性が一段と向上する。また、アンローディング前とローディング後の各物品は、筐体内のトレイ上に保持されて筐体で保護された状態にあり、筐体やトレイの移動時に物品が損傷を受けたり、トレイ上で位置ずれする可能性が少なくなる。
【0024】
また、本発明の物品移載システムにおいては、1つの筐体に対して一対の物品移載装置を高さ位置を相違させて配備することができる。この場合、一対の物品移載装置の一方の第一物品移載装置で、筐体の複数のトレイを1枚ずつ順に引き出す毎に、引き出されるトレイに対して熱処理済みの物品のアンローディングを行い、このアンローディングと同時進行させて他方の第二物品移載装置で、第一物品移載装置で筐体から引き出されて物品アンローディングされた複数のトレイを1枚ずつ順に筐体に入れ戻す毎に、入れ戻されるトレイに対して未熱処理の物品のローディングを行うことができる。
【0025】
ここでの一対の物品移載装置は同一種類であり、省スペースで物品のアンローディングとローディングができるものが望ましく、実際には上記した波型トレイとコンベア、ガイド部材を使用した物品移載装置が適用できる。第一物品移載装置が筐体から引き出される1枚のトレイに対してアンローディングを行う動作と同時進行させて第二物品移載装置が既に筐体から引き出されたトレイに対してローディングの動作を行うため、筐体に収納されるトレイの上下の配列ピッチは、上下のトレイ間の空間に第二物品移載装置が余裕をもって入る大きさに設定される。1つの筐体の複数のトレイに対して、トレイ2枚ずつが同時進行的にアンローディングとローディングが行われるので、結果的に1つの筐体に対する全トレイのアンローディングとローディングが短時間で高能率に行われる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の物品移載装置によれば、波型トレイの底面の凸部に保持された物品がコンベア先端のガイド部材のガイド斜面に掬い取られるようにしてコンベアにアンローディングされ、逆にコンベアからガイド部材のガイド斜面を滑って物品がトレイにローディングされるので、トレイとコンベア間の物品受け渡しが常に円滑に行われ、受け渡し時に物品が損傷したり大きく位置ずれするという心配が無くなる。
【0027】
また、本発明の物品移載システムによれば、筐体に対して出し入れする際のトレイの移動ストロークはトレイの全長程度と小さくて済み、かつ、このトレイが出し入れされる小スペースの部所にアンローディングとローディングの両機能を備えた物品移載装置を配備すればいいので、物品移載システム全体の設置スペースの縮小、設備費の低減が図れる。さらに、設置スペースの縮小で物品移載時での物品の移動量を少なくして、物品移動に伴う物品の位置ずれ、損傷を低減させることができる。特に、レトルトパウチは柔らかくて変形し易く、移動時に位置ずれし易いが、移動量が少なくなり、レトルトパウチが多少変形してもこれを円滑に移動させることが容易になるので、トレイ上でのレトルトパウチの位置ずれ、重なりの低減が図れ、熱処理品質の改善が図れるという優れた効果がある。
【0028】
また、筐体からトレイを定ストロークで引き出し、入れ戻す一連の動作でもって、トレイから物品移載装置への物品移載(アンローディング)と物品移載装置からトレイへの物品移載(ローディング)の両動作を連続させて行うことができ、物品受け渡しの作業性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図14を参照して説明する。
【0030】
図1〜図3に示す物品移載システムは、図15(A)と同様な製品殺菌・製品減菌設備に適用したものである。なお、図1(A)は物品移載システムの平面図、(B)は部分正面図である。図2(A)、(B)は、物品3を保持した実トレイ20を充填した筐体30と、この筐体30を載置した台車6と、台車6を手押しで床上を移動させる作業員5を示す。
【0031】
矩形箱形の筐体30に上下多段にトレイ20が出し入れ可能に収納される。各トレイ20には、複数の物品3が縦横に整列させて載置される。物品3は、図15で説明したレトルトパウチである。筐体30は、複数のトレイ20を定ストロークで出し入れ可能に支持するトレイ引出式ケージラックで、定ストロークで引き出したトレイ20は、図示しないストッパーで筐体30から抜け出すのが防止される。なお、洗浄や交換などの必要時には適宜にストッパーを解除して筐体30からトレイ20が取り外せるようにしてある。
【0032】
図1におけるS1〜S3は、筐体搬送ラインL1に設置された作業ステーションであり、K1〜K4は物品搬出ラインL3、物品搬入ラインL2に設置された作業ステーションである。筐体搬送ラインL1の両端部の作業ステーションS1、S3に筐体30を移送するコンベアが設置され、ライン中央部の作業ステーションS2には筐体30を保持して間欠的に上下動させる昇降装置70が設置される。昇降装置70に支持された筐体30の前面側の作業ステーションK1に物品移載装置F1が設置される。連続する3作業ステーションK2〜S4は直線ライン上に並び、ライン中央部の作業ステーションK2が物品移載装置F1の作業ステーションK1に連接される。ライン両端部の各作業ステーションK3、K4に、複数の物品3を一列に搬送する物品搬出コンベア41、物品搬入コンベア42が連接される。
【0033】
図1システムの全体的な作業流れを説明する。熱処理済み物品を収納し台車6に載せられた筐体30を作業ステーションS1の手前に運び、作業ステーションS1に移送する。この筐体30には複数のトレイ20が上下多段に収納され、各トレイ20上には熱処理済みの物品3bが保持されている。作業ステーションS1の筐体30を次の作業ステーションS2に移送して昇降装置70にセットする。昇降装置70は、後述するように筐体30を筐体30に収納されたトレイ20の上下の配列ピッチで間欠上昇させる。この1回の間欠上昇毎に、筐体30から1枚のトレイ20を作業ステーションK1に向けて定ストロークで引き出し、トレイ20上の複数の熱処理済みの物品3bを物品移載装置F1でアンローディングする。アンローディングされた熱処理済み物品3bは、後続の作業ステーションK2に搬送され、作業ステーションK2で搬送方向が90°変更されて作業ステーションK3を移動して物品搬出コンベア41に搬入される。物品搬出コンベア41は、搬入された熱処理済み物品3bを一列搬送して下流の出荷ラインに移送する。
【0034】
作業ステーションK1に引き出したトレイ20から全ての物品3aがアンローディングされる間に、物品搬入コンベア42から複数の未熱処理の物品3aが作業ステーションK4を経て作業ステーションK2に搬送され、作業ステーションK2で搬送方向が90°変更されて作業ステーションK1の物品移載装置F1に搬入される。筐体30から引き出した物品無しの空のトレイ20に物品移載装置F1の複数の未熱処理の物品3bがローディングされて、トレイ20が筐体30内に入れ戻される。筐体30の複数のトレイ20に対して1枚ずつ上述のアンローディングとローディングが行われて、筐体30に未熱処理の物品3bが充填されると、筐体30が昇降装置70から外され、次の作業ステーションS3に移送され、作業ステーションS3の手前で待機する空の台車6に移載される。作業員5が台車6を手押しして熱処理釜(図示せず)に筐体30を運び、筐体30を充填したトレイ、物品と共に熱処理釜に搬入する。
【0035】
トレイ20の具体例を図3(A)、(B)、図4に示す。トレイ20は、矩形の底板20aと、底板20aの両側辺を屈曲させた側板20bを一体に有する波型トレイである。底板20aは波板で、その上面が凸部21と凹部22が交互に連続する波状底面23である。底面23の波方向と直交する方向に凸部21が直線状に延在し、凹部22が直線状に延在する。この凸部21と凹部22の延在方向である長さ方向でトレイ20が筐体30に出し入れされる。物品3は単品ずつが連続する複数の凸部21上に載置される。凹部22の底に多数の穴25が形成される。穴25は、熱処理時に蒸気、熱水などが通る穴である。図4に示す物品3は、柔軟なレトルトパウチで、食品を充填した矩形の食品充填部分3−1と、その外周に突設した包装材同士の接合片部分3−2を有する。1枚のトレイ20上に複数の物品3が、それぞれの接合片部分3−2が重ならないように整列させて載置され、大きく滑って位置ずれしないように保持される。
【0036】
筐体30の具体例を図5、図6に示す。なお、図6のトレイ20の右半分に示す物品3はレトルトパウチであり、左半分に示す物品はプラスチック容器に食品を充填して密閉したレトルト容器である。図6は、熱処理対象物品としてのレトルト容器を説明するもので、通常は1枚のトレイ20に一種類の物品が縦横各一列に載置された状態で保持される。図6に示す1枚のトレイ20には、レトルトパウチが6×6の縦横配列で保持される。
【0037】
筐体30の対向する両側板30a、30bの内面に、上下多段に複数の引き出しレール31を固定する。各引き出しレール31の隣接する上段と下段の配列ピッチは同一で、両側板30a、30bの同じ高さ位置にある左右一対の引き出しレール31、31に1枚のトレイ20の両側部が水平な前後方向に摺動自在に保持される。図5では、筐体30の前面開口32から1枚のトレイ20を定ストロークで引き出している。各引き出しレール31とトレイ20の間に、トレイ20が定ストローク引き出されると、それ以上の引き出しを規制する引き出しロック、ストッパーが設置される。筐体30は、トレイ・物品共に熱処理釜に出し入れされる熱処理用籠で、筐体30の天板と底板は蒸気、熱水が流通し易い桟構造、格子構造などである。筐体30は、下面の隅部に車輪33を備える。この車輪33を利用することで、台車6に対する筐体30の搬入と搬出が軽作業で安全に行われる。また、筐体30の下面両側にレール部材34が固定される。レール部材34は、図1(A)の作業ステーションS1および作業ステーションS3に設置されたローラコンベア35に載り、筐体30の筐体搬送ラインL1の移動がローラコンベア35で円滑に行われる。図6は、筐体30内の最下段のトレイ20を左右一対の引き出し爪65で引き出す様子を示す。引き出し爪65は、後述する物品移載装置F1のトレイ出し入れ装置60に配備されたもので、トレイ20の前端部を適宜に係止する。
なお、図5に示される58は物品押えベルトで、後述するガイド部材51を移動する物品3を軽く押えて、位置ずれを抑制する。この押えベルト58は物品3の種類に応じて使い分けられる。
【0038】
図1(B)で作業ステーションS2の昇降装置70を説明する。その後、図7〜図9で物品移載装置F1の具体的構造と動作例を説明し、図10で連続する作業ステーションK1とK2のコンベア構造を説明する。
【0039】
図1(B)に示す昇降装置70は、鉛直な固定部71と、固定部71上に設置した駆動源部72と、固定部71の前面に上下動可能に設置したリフト部73を備える。駆動源部72はモーターと減速機のユニットで、リフト部73を間欠上下動させる。リフト部73は、1台の筐体30を下から支持して上下動させる。図1(B)の実線で示すリフト部73は最上位置まで上昇して、筐体30内の最下段のトレイ20が所定の高さに設置された物品移載装置F1と同じ高さ位置にある。リフト部73は、図1(B)の実線位置と鎖線位置の間で上下動し、鎖線位置まで下降すると筐体30内の最上段のトレイ20が物品移載装置F1の高さになる。
【0040】
物品移載装置F1は、図7および図8に示すように、前後端を有する水平なコンベア50と、コンベア50の先端部(前端部)に固定したガイド部材51と、トレイ出し入れ装置60を備える。コンベア50は先端部と後端部がプーリー52で張設されたベルトコンベアで、後端部が作業ステーションK2のベルトコンベア53に連接される。
【0041】
ガイド部材51は、コンベア先端部から下り傾斜で延在するガイド斜面55を上面に有する基部51aと、基部51aの先端部に一体に形成した櫛歯状の歯先部51bを有する。ガイド斜面55に補助ローラ56が配備される。補助ローラ56は、ガイド斜面55を傾斜方向に滑りながら移動する物品3の移動を助勢するもので、ガイド斜面55の傾斜方向と直交する方向に並べて配置される。補助ローラ56は、その外周上端部がガイド斜面55から少し突出する程度にして設置される。ガイド部材51の歯先部51bは、図9(A)、(B)に示すようにトレイ20の複数の凹部22内に略水平方向のトレイ出し入れ方向に相対移動可能に挿入される櫛歯である。歯先部51bの上面は、ガイド斜面55を延長させた斜面である。
【0042】
トレイ出し入れ装置60は自動式で、コンベア50とガイド部材51の真下でトレイ出し入れ方向と平行な方向に前後往復移動するスライダー61と、スライダー61を定ストロークで往復移動させる駆動源(図示せず)と、スライダー61に連結した引き出しアーム62を備える。引き出しアーム62の先端に図6で説明した引き出し爪65が可動に固定される。スライダー61と引き出しアーム62が前後動する領域に、筐体30から引き出されたトレイ20を略水平に保持するガイドローラ63が設置される。
【0043】
コンベア50の後端部に連接されるベルトコンベア53は、図10に示すような複数の細いベルトコンベア53’を等間隔で平行に配置している。この複数条の細いベルトコンベア53’の間のそれぞれに細いローラコンベア54が設置される。この二種類のベルトコンベア53とローラコンベア54は、相互に浮き沈みする。図10では、ローラコンベア54が同じ高さの物品搬出ラインL3、物品搬入ラインL2の高さに配置され、この複数のローラコンベア54の間で複数の細いベルトコンベア53’が同時に上下動してローラコンベア54に対して浮き沈みする。ベルトコンベア53は、トレイ引き出し方向に往復走行し、ローラコンベア54はトレイ引き出し方向と直交する一方向に回転駆動して物品移送を行う。
【0044】
次に、物品移載装置F1による熱処理済み物品3bのアンローディングを図7(A)〜(C)を参照し、未熱処理物品3aのローディングを図8(A)〜(C)を参照して説明する。
【0045】
熱処理済み物品3bを充填した筐体30が昇降装置70にセットされ、筐体30内の最下段のトレイ20が物品移載装置F1の高さに位置決めされて、最下段のトレイ20に対するアンローディングが開始される。なお、図7(A)は、最下段から二段上のトレイ20が物品移載装置F1の高さに位置決めされて、2回目のアンローディングが開始されるときのもので、1回目も2回目も同じようにアンローディングが行われることから、2回目のアンローディングを説明する。
【0046】
最下段から二段目のトレイ20が物品移載装置F1の高さに位置決めされたとき、ガイド部材51の歯先部51bがトレイ20の前端に接近し、トレイ20より上位の高さにコンベア50が位置する。この状態でトレイ引出装置60のスライダー61が定ストローク前進して引き出し爪65がトレイ20の前端部を係止する。そのままスライダー61が後退して引き出し爪65で二段目のトレイ20を筐体30から引き出す。1枚のトレイ20が引き出されることで、図9(A)に示すように、トレイ前端部の凹部22にガイド部材51の歯先部51bが挿入され、そのまま歯先部51bが凹部22内を非接触でトレイ後端部へと相対移動する。トレイ20が少し引き出されたところで、図7(B)に示すように、トレイ上の最前列の熱処理済み物品3bがガイド部材51に達し、ガイド斜面55に掬い上げられるようにしてガイド斜面55を滑り上がり、図9(B)に示すように、補助ローラ56に達する。物品3bは、補助ローラ56で上り移動が助勢され、さらに移動してコンベア50に達する。コンベア50は図7で右方向に駆動していて、ガイド斜面55を移動してコンベア先端部に物品3bが達すると、図9(C)に示すように、コンベア50上に物品3bが載り、そのままコンベア50が物品3bを下流側へと移送する。このようなトレイ20からコンベア50への熱処理済み物品3bのアンローディングが、トレイ上の最前列の物品3bから後列の物品へと連続して行われる。トレイ20とコンベア50の間には所定の落差があり、この落差で熱処理済み物品3bをガイド斜面55に滑らせて移動させることで、物品3bを外部衝撃力最小にしてアンローディングすることができ、ガイド斜面55を利用することで落差の物品移動が円滑に行われて、移動時に位置ずれする可能性が少ない。そのため、物品3bが柔軟で変形し易いレトルトパウチであっても、変形と位置ずれを極力小さく抑制したアンローディングができる。図7(C)に示すように、二段目のトレイ20が定ストローク引き出されて停止することで、二段目のトレイ20上の全ての熱処理済み物品3bがコンベア50へとアンローディングされる。
【0047】
コンベア50にアンローディングされた熱処理済み物品3bは、連続して後続のベルトコンベア53に移送される。このときのベルトコンベア53は、図10(B)に示すようにローラコンベア54から浮き上がった位置にあり、この位置はコンベア50と同じ高さにあって、コンベア50から熱処理済み物品3bがベルトコンベア53上へと円滑に移送される。このベルトコンベア53は、図1(A)で示した作業ステーションK2にある。1枚のトレイ20からアンローディングされた全ての熱処理済み物品3bが作業ステーションK2のベルトコンベア53に移載されると、図10(C)に示すように、ベルトコンベア53が停止してローラコンベア54より沈降し、熱処理済み物品3bがローラコンベア54上に載置される。ローラコンベア54が図10(C)で右回転して、熱処理済み物品3bを作業ステーションK3に移送する。作業ステーションK3に移送された物品3bは、最前列のものから順に物品搬出コンベア41に移送され、出荷ラインへと搬出される。
【0048】
以上のアンローディングの動作に併行して、物品搬入コンベア42から作業ステーションK4への未熱処理物品3aのローディングが行われる。作業ステーションK4にローディングされた未熱処理物品3aは、図10(D)に示すように、作業ステーションK2のローラコンベア54に熱処理済み物品3bと入れ代わるように移送される。ローラコンベア54に所定数の未熱処理物品3aが移載されると、ローラコンベア54が回転停止し、ベルトコンベア53が図10(B)の位置まで上昇して、未熱処理物品3aを保持する。このベルトコンベア53が駆動して、保持した所定数の未熱処理物品3aを物品移載装置F1のコンベア50上にローディングする。このローディングの状態が、図8(A)に示される。
【0049】
図8(A)は、筐体30から引き出された二段目のトレイ20に未熱処理物品3aをローディングするときのものである。図8(A)の状態でコンベア50が未熱処理物品3aを先端へと移送し、最前列の物品3aをガイド部材51のガイド斜面55に送る。このコンベア動作と併行してトレイ出し入れ装置60がスライダー61を前進させて二段目のトレイ20を筐体30内に入れ戻す。図8(B)に示すように、トレイ20の入れ戻しの始めの段階でガイド部材51を移動した最前列の未熱処理物品3aが入れ戻されるトレイ20上に載置され、トレイ20と共に移動して最前列のローディングが行われる。このようなローディングが最前列の物品3aから次列の物品3aへと列毎に連続して順に行われる。筐体30に二段目のトレイ20が定位置まで入れ戻された状態が図8(C)で、1枚のトレイ20に所定数の未熱処理物品3aのローディングが終了する。
【0050】
二段目のトレイ20に対するアンローディングとローディングが連続して行われ、ローディングが終了すると、昇降装置70で筐体30を1ピッチ下降させて、三段目のトレイ20を物品移載装置F1の高さに移動させる。三段目のトレイ20に対するアンローディングとローディングは、二段目のトレイの場合と同じである。図7と図8は、二段目のトレイ20からのアンローディングとローディングの場合で、同図に示される一段目のトレイ20上の物品は未熱処理物品3aである。筐体30の最上段のトレイ20まで順にアンローディングとローディングが行われる。筐体30に対してトレイ20を1枚ずつ1回出し入れした時点で、アンローディングとローディングの一連の動作が短時間で連続的に行われ、一連のアンローディングとローディングの作業性が一段と向上する。また、アンローディング前とローディング後の各物品3a、3bは、筐体30内のトレイ20上に保持されて保護された状態にある。筐体30内に全ての未熱処理物品3aが充填されると、筐体30が昇降装置70から外されて、次の作業ステーションS3に送られる。昇降装置70には、作業ステーションS1から熱処理済み物品3bを充填した別の筐体30が搬入されてセットされる。
【0051】
図7,図8で説明した物品移載装置F1は、1枚のトレイ20に対して正逆相対移動して、アンローディングとローディングを連続して行う。同じアンローディングとローディングは、物品移載装置F1側を固定したトレイに対して正逆相対移動させて行うことも可能である。例えば、筐体30内にトレイ20を収納したままにしておいて、このトレイ20に対して物品移載装置F1を相対前後動させると、図7と図8で説明したのと同様なアンローディングとローディングが行える。この場合、物品移載装置F1には筐体30に対してトレイ20を出し入れするトレイ出し入れ装置は不要である。このようなアンローディングとローディングが、請求項1〜3の本願発明に相当する。
【0052】
次に、図11(A)〜(C)に示すアンローディングとローディングの物品移載方法を説明する。
【0053】
この図11(A)〜(C)は、筐体30から複数のトレイ20を1枚ずつ引き出す毎に熱処理物品3aのアンローディングを行い、全てのトレイ20を引き出してアンローディングが終了すると、次は、複数の引き出されたトレイ20を1枚ずつ筐体30内へと入れ戻す毎に未熱処理物品3aのローディングを行うものである。図11(A)は、最下段のトレイ20のアンローディングが終了して二段目のトレイ20のアンローディングを行っているときのものである。このようにして三段目から最上段の各トレイ20に対して順に熱処理物品3aのアンローディングを行うと、図11(B)に示すように、筐体30から全てのトレイ20が引き出された状態が保持される。物品移載装置F1で最上段のトレイ20のアンローディングが終了すると、物品移載装置F1の駆動をローディングに切り換えて、最上段のトレイ20に対して未熱処理物品3aをローディングをする。図11(C)は、二段目のトレイ20に対してローディングしている状態を示す。
【0054】
図11の場合、1つの筐体30の複数のトレイ20を1枚ずつ順に引き出して、順に熱処理済み物品3bをアンローディングするので、その間、作業ステーションK2はアンローディングされた熱処理済み物品3bを物品搬出コンベア41に移送する動作を繰り返すことになり、物品搬入コンベア42は停止状態になる。逆に、筐体30から引き出された複数のトレイ20を1枚ずつ順に入れ戻して、順に未熱処理物品3aのローディングする間、作業ステーションK2はローディングされる未熱処理物品3aを物品搬入コンベア42から受け取る動作を繰り返すことになり、物品搬出コンベア41は停止状態になる。
【0055】
次に、図12(A)〜(C)で他の実施の形態を説明する。図12は、1つの筐体30に対して一対の物品移載装置F1、F2を使用した物品移載システム、物品移載方法を説明するものである。
【0056】
一対の物品移載装置F1、F2を第一物品移載装置F1、第二物品移載装置F2とする。第一物品移載装置F1は、図1で説明したものと同一であり、第二物品移載装置F2も同じものである。各物品移載装置F1、F2は、筐体30内のトレイ20の配列ピッチで上下二段に高さを相違させて配置される。図12では上段に第一物品移載装置F1を配置し、下段に第二物品移載装置F2を配置して、第一物品移載装置F2で筐体30から1枚ずつ引き出さるトレイ20に対して熱処理済み物品3bのアンローディングを専用に行い、第二物品移載装置F2で筐体30に入れ戻されるトレイ20に対して未熱処理物品3aのローディングを専用に行う。
【0057】
図12(A)は、筐体30内の三段目のトレイ20を第一物品移載装置F1で引き出しながら熱処理済み物品3bのアンローディングを行う直前、第二物品移載装置F2で二段目のトレイ20に対して未熱処理物品3aのローディングを行う直前の状態を示す。このときの二段目のトレイ20は、先に第一物品移載装置F1のアンローディングにより筐体30から引き出されている。図12(A)の状態で一対の各物品移載装置F1、F2で、それぞれに図11(B)に示すようにアンローディングとローディングを行う。この場合、三段目のトレイ20は筐体30から引き出されながら熱処理済み物品3bがアンローディングされ、二段目のトレイ20は筐体30内に入れ戻されながら未熱処理物品3aがローディングされる。次に、図12(C)に示すように、第一物品移載装置F1を四段目のトレイ20に対してアンローディングする位置に相対移動させ、第二物品移載装置F2を筐体30から引き出されたトレイ20に対してローディングする位置に相対移動させる。
【0058】
図12の場合、アンローディング専用の第一物品移載装置F1とローディング専用の第二物品移載装置F2が同時進行的にそれぞれの動作をするので、アンローディングとローディングの処理能力が図7と図8の場合に比べ倍増する。
【0059】
次に、図13と図14に示す実施の形態の物品移載システムを説明する。
【0060】
同図システムの図1システムと相違する特徴は、物品移載装置F3である。この物品移載装置F3は、筐体30から引き出した1枚のトレイ20上の複数全ての熱処理済み物品3bを一括して吸着する吸着パッド80と、吸着パッド80を筐体30と物品搬出ラインL3、物品搬入ラインL2の間で移動させるパッド駆動装置81を備える。
【0061】
筐体30から1枚のトレイ20を定ストロークで引き出して作業ステーションK1に停止させると、作業ステーションK1で待機させていた吸着パッド80を下降させて、引き出したトレイ20上の複数全ての熱処理済み物品3bを一括して吸着する。そのまま吸着パッド80を吸着した熱処理済み物品3bと共に上昇させて、トレイ20からアンローディングする。吸着パッド80でアンローディングした熱処理済み物品3bを作業ステーションK3に移動させる。作業ステーションK3で吸着パッド80を熱処理済み物品3bと共に下降させ、作業ステーションK3のコンベアに移載する。移載された複数の熱処理済み物品3bは、最前列のものから順に物品搬出コンベア41に移送され、出荷ラインに搬出される。作業ステーションK3で物品3bを離脱させた吸着パッド80を上昇させ、作業ステーションK4に移動させる。この間に作業ステーションK4に物品搬入コンベア42から定数の未熱処理物品3aを移動させ、吸着パッド80を下降させて定数の未熱処理物品3aを吸着する。吸着パッド80を上昇させ、作業ステーションK1に移動させて、未熱処理物品3aを筐体30から引き出されたトレイ20上にローディングする。
【0062】
図13,図14のシステムの場合も、筐体30から1枚のトレイ20を1回出し入れすることで、熱処理済み物品3bのアンローディングと未熱処理物品3aのローディングが連続して短時間で行われる。このシステムの場合、トレイ20は底板に波板を使用した波型トレイに限らず適用が可能である。
【0063】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、トレイ引出式筐体におけるトレイの配列ピッチは、物品の厚さ、高さに対応させて適宜に設定する他、複数種類の物品に対応できるように筐体内にトレイを高さ調整可能に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(A)は本発明に係る物品移載システムの概要を示す平面図、(B)は部分正面図である。
【図2】(A)、(B)は図1システムにおける筐体運搬用台車の側面図である。
【図3】(A)は図1システムに使用されるトレイの平面図、(B)はその正面図である。
【図4】図3のトレイの物品載置部分の拡大正面図である。
【図5】図1システムに使用される筐体の概要を示す側面図である。
【図6】図5の筐体の正面図である。
【図7】図1システムにおけるトレイからの物品のアンローディングを説明するための部分拡大側面図で、(A)はアンローディング前、(B)はアンローディング時、(C)はアンローディング後の側面図である。
【図8】図1システムにおけるトレイへの物品のローディングを説明するための部分拡大側面図で、(A)はローディング前、(B)はローディング時、(C)はローディング後の側面図である。
【図9】(A)は図7(B)のガイド斜面下部での拡大断面図、(B)はガイド斜面中間部での拡大断面図、(C)はガイド斜面上部のコンベアの拡大断面図である。
【図10】図1システムにおける作業ステーションK2でのコンベア構造を説明するための図で、(A)は平面図、(B)〜(C)は各コンベア動作を示す正面図である。
【図11】図1システムによる別の物品搬送方法を説明する筐体と物品移送装置の概略側面図で、(A)はアンローディングの初期、(B)はローディング開始時、(C)はローディング終了時の側面図である。
【図12】本発明の別の物品搬送方法を説明する筐体と物品移送装置の概略側面図で、(A)はアンローディングとローディングの前、(B)はアンローディングとローディングの両動作時、(C)は次のアンローディングとローディングの前の側面図である。
【図13】本発明に係る物品移載システムの他の実施の形態の概要を示す平面図である。
【図14】図13システムの部分正面図である。
【図15】(A)は従来の物品移載システムの概要を示す平面図、(B)はトレイを段積みした運搬台車の側面図である。
【符号の説明】
【0065】
3 物品、レトルトパウチ
3a 未熱処理物品
3b 熱処理済み物品
5 作業員
6 台車
20 トレイ
21 凸部
22 凹部
23 底面
25 穴
30 筐体
41 物品搬出コンベア
42 物品搬入コンベア
50 コンベア
51 ガイド部材
51a 基部
51b 歯先部
53 ベルトコンベア
54 ローラコンベア
55 ガイド斜面
56 補助ローラ
60 トレイ出し入れ装置
61 スライダー
65 引き出し爪
70 昇降装置
73 リフト部
80 吸着パッド
81 パッド駆動装置
F1 物品移載装置、第一物品移載装置
F1 第二物品移載装置
F3 物品移載装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凸部と凹部が交互に連続した波状の底面を有し、前記凸部上で熱処理対象の物品の保持が可能な略水平な波型トレイと、
前記トレイより上位にトレイに対して略水平方向に相対移動可能に設置され、前記トレイとの間で前記物品の受け渡しをするコンベアと、
前記コンベアの先端部に連結され、当該コンベア先端部から下り傾斜で延在するガイド斜面および前記トレイ底面の凹部内に略水平方向に相対移動可能に挿入される櫛歯状の歯先部を有する物品受け渡し用ガイド部材とを具備し、
前記歯先部を前記トレイ底面の凹部内に挿入した状態で前記コンベアとガイド部材を前記トレイに対し略水平方向に相対移動させて、前記ガイド斜面に前記物品を移動させることで前記トレイとコンベア間で物品の受け渡しを行うことを特徴とする物品移載装置。
【請求項2】
前記ガイド斜面に、前記物品の移動を助勢する補助ローラを配備したことを特徴とする請求項1に記載の物品移載装置。
【請求項3】
複数の凸部と凹部が交互に連続した波状の底面を有し、前記凸部上で熱処理対象の物品を保持する略水平な波型トレイと、前記トレイより上位にトレイに対して略水平方向に相対移動可能に設置され、前記トレイとの間で前記物品の受け渡しをするコンベアと、前記コンベアの先端部に連結され、当該コンベア先端部から下り傾斜で延在するガイド斜面および前記トレイ底面の凹部内に略水平方向に相対移動可能に挿入される櫛歯状の歯先部を有する物品受け渡し用ガイド部材とを備えた物品移載装置において、
前記歯先部を前記トレイ底面の凹部内に挿入した状態で前記コンベアとガイド部材を前記トレイに対し略水平方向に往復相対移動させ、前記ガイド部材が前記トレイの前端側から後端側に向かう相対往動時に前記トレイ上の熱処理済みの物品を前記コンベアに移動させ、前記ガイド部材が前記トレイの後端側から前端側に向かう相対復動時に前記コンベアに搬入された未熱処理の物品をコンベアからトレイ上に移動させることを特徴とする物品移載方法。
【請求項4】
熱処理対象の物品を保持するトレイと、
複数の前記トレイを上下多段にしてそれぞれ略水平な前後方向に定ストロークで出し入れ可能に保持するトレイ引出式筐体と、
前記筐体のトレイ出し入れ側に配備され、前記筐体から引き出されるトレイに対して当該トレイ上の熱処理済み物品を所定の物品搬出ラインにアンローディングし、および、前記筐体に入れ戻されるトレイに対して所定の物品搬入ラインから未熱処理の物品をローディングする物品移載装置と、
を具備したことを特徴とする物品移載システム。
【請求項5】
前記筐体の複数の各トレイは、前記筐体のトレイ出し入れ方向と直交方向に複数の凸部と凹部が交互に連続する波状の底面を有する波型トレイであり、
前記物品移載装置は、前記筐体に対して出し入れされるトレイとの間で前記物品の受け渡しをするコンベアと、このコンベアの前記筐体側の先端部に連結され、当該コンベア先端部から下り傾斜で延在するガイド斜面および前記トレイ底面の凹部内にトレイ出し入れ方向に相対移動可能に挿入される櫛歯状の歯先部を有する物品受け渡し用ガイド部材を有することを特徴とする請求項4に記載の物品移載システム。
【請求項6】
前記物品移載装置は、前記筐体から引き出したトレイ上の前記熱処理済みの物品を吸着して前記物品搬出ラインに移載し、前記物品搬入ラインの前記未熱処理の物品を吸着して前記筐体から引き出したトレイ上に移載する吸着パッドと、この吸着パッドを前記筐体と物品搬出ライン、物品搬入ラインの間で移動させるパッド駆動装置を備えたことを特徴とする請求項4に記載の物品移載システム。
【請求項7】
前記物品がレトルトパウチである請求項4〜6のいずれかに記載の物品移載システム。
【請求項8】
熱処理対象の物品を保持するトレイと、複数の前記トレイを上下多段にしてそれぞれ略水平な前後方向に定ストロークで出し入れ可能に保持するトレイ引出式筐体と、前記筐体のトレイ出し入れ側に配備され、前記筐体から引き出されるトレイに対して当該トレイ上の熱処理済み物品を所定の物品搬出ラインにアンローディングし、および、前記筐体に入れ戻されるトレイに対して所定の物品搬入ラインから未熱処理の物品をローディングする物品移載装置と、前記筐体と物品移載装置の一方を他方に対して上下に間欠的に相対移動させる昇降装置とを具備した物品移載システムにおいて、
前記昇降装置で前記筐体と物品移載装置を間欠的に相対移動させる毎に、前記筐体に対してトレイを1枚ずつ1回出し入れし、出し入れされるトレイに対して前記物品移載装置で前記熱処理済みの物品のアンローディングと前記未熱処理の物品のローディングを行うことを特徴とする物品移載方法。
【請求項9】
熱処理対象の物品を保持するトレイと、複数の前記トレイを上下多段にしてそれぞれ略水平な前後方向に定ストロークで出し入れ可能に保持するトレイ引出式筐体と、前記筐体のトレイ出し入れ側に配備され、前記筐体から引き出されるトレイに対して当該トレイ上の熱処理済み物品を所定の物品搬出ラインにアンローディングし、および、前記筐体に入れ戻されるトレイに対して所定の物品搬入ラインから未熱処理の物品をローディングする物品移載装置と、前記筐体と物品移載装置の一方を他方に対して上下に間欠的に相対移動させる昇降装置とを具備した物品移載システムにおいて、
前記昇降装置で前記筐体と物品移載装置を間欠的に相対移動させる毎に、前記筐体の複数のトレイを順に1枚ずつ引き出し、当該引き出されるトレイに対して前記物品移載装置で前記熱処理済みの物品のアンローディングを行い、次に、前記昇降装置で前記筐体と物品移載装置を前記トレイ引き出し時の移動方向と逆方向に間欠的に相対移動させ、この相対移動毎に前記筐体から先に引き出したトレイを1枚ずつ筐体内に入れ戻し、当該入れ戻されるトレイに対して前記物品移載装置で前記未熱処理の物品のローディングを行うことを特徴とする物品移載方法。
【請求項10】
熱処理対象の物品を保持するトレイと、複数の前記トレイを上下多段にしてそれぞれ略水平な前後方向に定ストロークで出し入れ可能に保持するトレイ引出式筐体と、前記筐体のトレイ出し入れ側に配備され、前記筐体から引き出されるトレイに対して当該トレイ上の熱処理済み物品を所定の物品搬出ラインにアンローディングし、および、前記筐体に入れ戻されるトレイに対して所定の物品搬入ラインから未熱処理の物品をローディングする物品移載装置と、前記筐体と物品移載装置の一方を他方に対して上下に間欠的に相対移動させる昇降装置とを具備した物品移載システムにおいて、
前記筐体に対して一対の前記物品移載装置を高さ位置を相違させて配備し、
前記一対の物品移載装置の一方の第一物品移載装置で、筐体の複数のトレイを1枚ずつ順に引き出す毎に、引き出されるトレイに対して前記熱処理済みの物品のアンローディングを行い、このアンローディングと同時進行させて他方の第二物品移載装置で、前記第一物品移載装置で前記筐体から引き出されて物品アンローディングされた複数のトレイを1枚ずつ順に筐体に入れ戻す毎に、入れ戻されるトレイに対して前記未熱処理の物品のローディングを行うことを特徴とする物品移載方法。
【請求項11】
前記物品がレトルトパウチであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の物品移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−314260(P2007−314260A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142952(P2006−142952)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】