説明

物品管理システム

【課題】どの作業者が何処でどの物品を運搬したかを管理することを可能にする。
【解決手段】物品が運搬中であるか所定の場所に置かれたかの状態の遷移を検知して、その状態遷移のタイミングで物品と人物の位置を測位しその測位結果に基づいて物品と人物とを紐付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卸売市場や配送センタ、倉庫などの場所において運搬される物品に関する位置等の情報を管理する物品管理システムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LAN(例えばIEEE802.11b規格)やZigBee(IEEE802.15.4規格)などの無線通信を用いて、無線電波の送信元の位置を計測する測位システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような測位システムを卸売市場や配送センタ、倉庫などの場所に適用することで、搬入・搬出される種々の物品の管理を、各物品に無線タグを取り付けて測位した物品の位置に基づいて行うようにした物品管理システムを構築することが可能である。なお、上記無線通信により測位をする際の測位精度は、おおむね数m程度である。
【0003】
一方で、近年、パルス幅が数ナノ秒程度の超短パルス信号を送受信することで高精度(数十cmオーダー)な測位が可能なUWB−IR(Ultra Wide Band Impulse Radio)方式と呼ばれる通信技術が開発されている。
【特許文献1】特開2005−140617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線LANあるいはZigbeeによる通信方式を用いて構築される物品管理システムでは、その測位精度が数mとあまり良くないため、物品が例えばあるエリアに存在するかどうかといった大雑把な位置の管理しか行うことができなかったが、上記の無線通信方式をUWB−IR方式とすればこの問題は解消することが期待できる。
ところで、卸売市場等の場所では様々な作業者がいて物品の運搬作業を行っている。しかしながら、従来では、測位した物品の位置だけによる管理であるため、どの作業者が何処でどの物品を運搬したかといったようなことを管理することが不可能であった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、どの作業者が何処でどの物品を運搬したかを管理することが可能な物品管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、運搬される物品に関する位置等の情報を管理する物品管理システムにおいて、前記物品が運搬中であるか所定の場所に置かれたかの状態の遷移を検知する状態遷移検知手段と、前記物品又は該物品を運搬する運搬具に取り付けられ、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に測位信号を送出する第1の測位信号送出手段と、前記物品を運搬する運搬人に取り付けられ、測位信号を送出する第2の測位信号送出手段と、前記第1及び第2の測位信号送出手段により送出された測位信号を受信する複数の受信手段と、前記複数の受信手段により受信された測位信号の受信タイミングに基づいて前記物品及び前記運搬人の位置を算出する測位計算手段と、前記測位計算手段により測位された前記物品及び前記運搬人の位置と測位を行った時刻とに基づいて、前記物品を運搬又は所定の場所に置いた運搬人を特定する特定手段と、前記物品と前記特定手段により特定された運搬人とを紐付けして管理する管理手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記特定手段は、前記物品を測位した時刻の近傍において該物品の周囲の所定範囲に存在したことが測位された運搬人を、該物品を運搬又は所定の場所に置いた運搬人として特定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記特定手段は、前記物品に最も近接した運搬人を該物品の運搬人として特定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記第1の測位信号送出手段は、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合以外にも定期的に測位信号を送出し、前記第2の測位信号送出手段は、前記測位信号を定期的に送出し、前記特定手段は、前記物品について複数の時刻における測位結果から把握される該物品の動線(測位信号を送出した時刻と測位結果として得られた座標(位置)とからなる複数のデータ)と、前記運搬人について状態遷移が検知された時刻を含む所定時間内の複数の時刻における測位結果から把握される該運搬人の動線と、に基づいて前記物品の運搬人を特定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記特定手段は、前記物品の動線とその形状がほぼ一致する動線の運搬人を該物品の運搬人として特定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記特定手段は、前記物品について2点の時刻における測位結果から把握される該物品の移動を示すベクトルと、前記運搬人について前記時刻近傍の2点の時刻における測位結果から把握される該運搬人の移動を示すベクトルと、に基づいて、前記物品のベクトルとその方向が所定の範囲で一致するベクトルの運搬人を該物品の運搬人として特定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記特定手段は、複数の時刻における前記物品との距離がほぼ一定である運搬人を該物品の運搬人として特定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に前記第2の測位信号送出手段に測位信号を送出させる制御を行う測位制御手段を更に備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記測位制御手段は、前記物品に取り付けられるとともに、周囲の所定範囲に存在する運搬人の前記第2の測位信号送出手段のみが受信できる信号強度で前記制御のための制御信号を送信することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記物品と前記運搬人との組み合わせ候補を予め記憶する記憶手段を更に備え、前記測位制御手段は、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された物品に対応する運搬人を前記記憶手段に記憶された組み合わせ候補に基づき特定し、該特定した運搬人の前記第2の測位信号送出手段にのみ前記制御のための制御信号を送信することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記物品と前記運搬人との組み合わせ候補を予め記憶する記憶手段を更に備え、前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された組み合わせ候補を参照することにより前記物品の運搬人を特定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、運搬される物品に関する位置等の情報を管理する物品管理システムにおいて、前記物品が運搬中であるか所定の場所に置かれたかの状態の遷移を検知する状態遷移検知手段と、前記物品又は該物品を運搬する運搬具に取り付けられ、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に測位信号を送出する測位信号送出手段と、前記測位信号送出手段により送出された測位信号を複数の基地局で受信し、該受信した測位信号の受信タイミングに基づいて前記物品の位置を算出する測位計算手段と、前記物品を運搬する運搬人の操作により所定の識別信号を送信する送信手段と、所定の基地局で受信された前記識別信号の受信時刻が前記測位計算手段による前記物品の測位時刻に最も近い時刻である前記識別信号を特定する特定手段と、前記物品と前記特定手段により特定された識別信号に対応する前記運搬人とを紐付けして管理する管理手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、運搬される物品に関する位置等の情報を管理する物品管理システムにおいて、前記物品が運搬中であるか所定の場所に置かれたかの状態の遷移を検知する状態遷移検知手段と、前記物品又は該物品を運搬する運搬具に取り付けられ、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に測位信号を送出する測位信号送出手段と、前記測位信号送出手段により送出された測位信号を複数の基地局で受信し、該受信した測位信号の受信タイミングに基づいて前記物品の位置を算出する測位計算手段と、前記物品又は該物品を運搬する運搬具に取り付けられ、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に測距信号を周囲に送出し、該測距信号に対する応答信号を受信して測距信号の送信タイミングと応答信号の受信タイミングとの時間差から距離を計測する測距手段と、前記物品を運搬する運搬人に取り付けられ、前記測距信号を受けて前記応答信号を前記測距手段へ送信する測距応答手段と、前記測距手段により計測した距離が最も近い前記運搬人を特定する特定手段と、前記物品と前記特定手段により特定された運搬人とを紐付けして管理する管理手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記状態遷移検知手段は、前記物品又は前記運搬具の下面に取り付けられたスイッチであり、該物品又は運搬具が地面に置かれたか否かに応じて該スイッチがオン/オフすることにより状態遷移を検知することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記物品管理システムにおいて、前記運搬具は、タイヤと該タイヤのロック機構とを有し、前記状態遷移検知手段は、前記ロック機構によって前記タイヤがロックされているか否かにより状態遷移を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、物品が運搬中であるか所定の場所に置かれたかの状態の遷移を検知して、その状態遷移のタイミングで物品と人物の位置を測位しその測位結果に基づいて物品と人物とを紐付けるので、どの作業者が何処でどの物品を運搬したかを管理することができ、高度な物品管理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による物品管理システムの構成を示す概略図である。図1において、物品管理システム1は、物品2を運搬するための運搬具3に取り付けられて周囲に所定の測位信号を送出する物品タグ10と、物品2を運搬具3により運搬する人物4の服や帽子等に取り付けられて周囲に所定の測位信号を送出する人物タグ20と、これら測位信号を受信する複数(3以上)の基地局30と、基地局30が受信した測位信号に基づいて物品タグ10や人物タグ20(若しくは、物品タグ10や人物タグ20が指し示す物品2や人物4)の位置を測位し、この測位結果に基づいて物品2と該物品2を運搬した人物4とを紐付けて管理をする測位・管理サーバ40と、各基地局30の時刻を同期させるための時刻基準サーバ50と、を含んで構成されている。各基地局30と測位・管理サーバ40と時刻基準サーバ50とは、LAN60(有線)を介して互いに通信可能に接続されている。ここで、どの物品2にどの物品タグ10が対応しているかは予め決められており、同様にどの人物4にどの人物タグ20が対応しているかも予め決められている。この対応関係は、物品タグ10(又は物品2)と人物タグ20(又は人物4)との紐付けを行う際に利用される。
【0024】
物品管理システム1は、卸売市場等に導入されて使用される。卸売市場等では、たくさんの物品2が外から搬入され卸売市場内の所定の場所まで運ばれてそこに置かれたり、逆にそこから外へ搬出されたりする。本発明に係る物品管理システム1は、このように様々に運搬されていく各種の物品2が上記所定の場所まで運ばれ、あるいはその場所から運び出されたときに、その運搬を行った人物4を物品タグ10や人物タグ20の測位結果を用いて特定することを可能にするものである。
【0025】
物品2の運搬は、図2(A)に示すパレット31や図2(B)に示すカゴ車32などの運搬具3を用いて行う。
【0026】
図2(A)において、パレット31の底面には、マイクロスイッチ33が実装されている。マイクロスイッチ33は、パレット31が地面に置かれるとオンとなり、運搬中など地面から離れるとオフとなる。このマイクロスイッチ33の代わりとして、パレット31の上部に人物4が任意に操作できるトグル式スイッチ34を設けてもよい。また、パレット31の所定の箇所には、物品タグ10が設置されている。物品タグ10とマイクロスイッチ33又はトグル式スイッチ34とは所定の信号線で接続されており、マイクロスイッチ33やトグル式スイッチ34のオンとオフが切り替わると、物品タグ10はスイッチの状態が切り替わったこと、即ち物品2が運搬中か地面に置かれたかの状態が遷移したことを示す情報を測位信号に載せて送出するようになっている。測位信号の送出は、例えば、物品2の状態が遷移したタイミングで即座に行ってもよいし、遷移してから所定のタイミングが経過してから行ってもよい。あるいは、物品タグ10が定期的に測位信号を送出する測位システムの場合には、遷移後の次の送出タイミングの測位信号に、物品2の状態が遷移したことを示す情報を載せるようにしてもよい。
なお、図2においてはマイクロスイッチ33、トグル式スイッチ34、及び物品タグ10が互いに離れた位置に設置されているが、各スイッチから物品タグ10への配線長を短くするために、互いの位置が近くなるようにそれぞれを設置したり、物品タグ10に直接各スイッチを実装したりすることも可能である。また、物品タグ10の位置も、パレット31の中央や辺や角など任意の場所とすることができる。1つのパレット31に複数個の物品タグ10を設置してもよい。物品タグ10をパレット31の中央に設置した場合は、物品タグ10の位置がパレット31の位置を表すことになる。物品タグ10をパレット31の端(辺や角)に設置した場合は、2つのパレット31が隣接した時にその2つを区別することができるように、パレット31を並べる際の向きを決めておく必要がある。あるいは、例えば2つの物品タグ10をパレット31の対角線(パレット31を上から見たときの対角線)の角に設置しておけば、その中心位置をパレット31の位置とみなすことができる。
【0027】
例えば、物品2が卸売市場へ搬入され該物品2を載せたパレット31が卸売市場内の所定の場所へ運ばれてそこに置かれると、マイクロスイッチ33がオフからオンへと切り替わり、物品タグ10から測位信号が送出される。その後、その場所から物品2を搬出するためにパレット31を持ち上げると、マイクロスイッチ33がオンからオフへと切り替わり、同様に測位信号が送出される。また、人物4がパレット31を置いた際、あるいはパレット31を持ち上げた際にトグル式スイッチ34を操作することによっても、同様に測位信号が送出される。
【0028】
図2(B)において、カゴ車32はタイヤ37とタイヤ37の転がりを防止するためのタイヤロック機構38を有している。人物4はタイヤロック機構38を解除状態にしてカゴ車32を移動させ、所定の場所へ移動させたらタイヤロック機構38をロック状態とする。カゴ車32には、タイヤロック機構38と連動するマイクロスイッチ35が設けられている。このマイクロスイッチ35の代わりとして、カゴ車32の適宜の箇所に人物4が任意に操作できるトグル式スイッチ36を設けてもよい。また、カゴ車32の所定の箇所には、物品タグ10が設置されている。物品タグ10とマイクロスイッチ35,トグル式スイッチ36とは所定の信号線で接続されており、マイクロスイッチ35,トグル式スイッチ36のオンとオフが切り替わると、前述のパレット31の場合と同様にして、物品タグ10は測位信号を送出するようになっている。
なお、マイクロスイッチ35をタイヤロック機構38に実装した場合は、カゴ車32の移動によりタイヤが回転した際にマイクロスイッチ35と物品タグ10を接続する信号線が巻き付いて断線が生じるおそれもある。そこで、マイクロスイッチ35と物品タグ10の間に、「スリップリング」と呼ばれる固定側から回転側へ電気信号を伝えるロータリーコネクタを実装すれば、マイクロスイッチ35と物品タグ10の間が電気的に接続されたまま、タイヤの回転によっても信号線が断線しないようにすることができる。
【0029】
例えば、卸売市場へ搬入された物品2を載せたカゴ車32を人物4が卸売市場内の所定の場所へ移動させ、そこでタイヤロック機構38をロック状態とすると、タイヤロック機構38と連動するマイクロスイッチ35が切り替わって物品タグ10から測位信号が送出される。その後、その場所から物品2を搬出するためにカゴ車32のタイヤロック機構38を解除状態にすると、マイクロスイッチ35が切り替わって同様に物品タグ10から測位信号が送出される。また、人物4がカゴ車32を停止させた際、あるいはカゴ車32を動かそうとする際にトグル式スイッチ36を操作することによっても、同様に測位信号が送出される。前者の場合には、人物4はスイッチを意識することなく作業を行うことができるが、信号線が長くなったり、信号線が絡まないような構成を用いたりする必要がでてくる。後者の場合には、トグル式スイッチ36を物品タグ10の近辺や人物4が操作しやすい位置に設けることができる。
【0030】
このように、パレット31やカゴ車32が運搬中であるか地面に置かれたかの状態の遷移が検知されて、状態が遷移した時にのみ、物品タグ10から測位信号の送出が行われることとなる。物品2の測位を常時行えるようにするために、物品タグ10は所定の時間間隔で測位信号を送出するようにしてもよい。但しこの場合は、運搬中か地面に置かれたかの状態遷移が検知されたときに、その検知のタイミングや検知後の任意のタイミング、又は次の送出タイミングで、そのことを示す特別な信号を測位信号と併せて送出することとする。後述するように、状態が遷移した時を基準として物品2と人物4の紐付けを行うようにするためである。
【0031】
なお、パレット31やカゴ車32等の運搬具3を用いずに物品2を単独で運搬するようにしても構わない。その場合は、物品2に直接マイクロスイッチ33やトグル式スイッチ34、物品タグ10が取り付けられるようにすればよい。
【0032】
物品タグ10及び人物タグ20は、UWB−IR方式の無線通信によって測位信号をパルス幅が数ナノ秒程度の超短パルス信号として送出するものである。したがって、この測位信号を用いた測位においては測位の位置精度が数十cm程度と非常に高精度であり、物品2と該物品2のすぐ近傍(数十cm程度離れた位置)にある複数の人物タグ20や他の物品2の物品タグ10とを区別して測位を行うことが可能である。
【0033】
物品タグ10及び人物タグ20には、自己を識別するための他の物品タグ10や人物タグ20と重複しない一意の識別IDが割り振られている。物品タグ10及び人物タグ20は、この識別IDを記憶保持しており、上記の測位信号を送出する際には、記憶保持している識別IDも測位信号と併せて送出する。ここで、物品タグ10の識別IDは物品2と一対一に対応しているものとする。物品タグ10が取り付けられている運搬具3は様々な種類の物品2の運搬に使われる可能性もあるが、その場合は、例えば物品タグ10に人物4が操作する入力操作部等を設けて、物品2を運搬具3に載せた際に入力操作部の操作によって物品2を特定する情報を入力し、その情報と物品タグ10の識別IDとの対応関係を別途測位・管理サーバ40へ送って管理するようにすればよい。あるいは、測位・管理サーバ40において、オペレータの手入力やバーコード及びバーコードリーダ等を利用した管理システムによって、情報を更新するようにすることもできる。また、人物タグ20の識別IDも、同様に人物4と一対一に対応しているものとする。
【0034】
基地局30は、物品タグ10や人物タグ20から送出された測位信号及び識別IDを受信し、これらを受信した受信時刻の情報と受信した識別IDとをLAN60経由で測位・管理サーバ40へ送信する。物品タグ10や人物タグ20の2次元での測位を可能とするため、基地局30は少なくとも3つ必要である。物品管理システム1が導入された卸売市場等が広い場合には、測位信号の電波強度を考慮し、物品タグ10や人物タグ20がどこにあっても常に少なくとも3つの基地局30で測位信号が受信できるように、基地局30は適宜の位置間隔で多数配置するのがよい。
【0035】
測位・管理サーバ40は、各基地局30からLAN60経由で送信される上記の受信時刻の情報と識別IDとを受信し、受信した識別IDの物品タグ10や人物タグ20のそれぞれについて、少なくとも3つの基地局30からの受信時刻の情報に基づいて該物品タグ10又は該人物タグ20の位置を測位する。なお、少なくとも3つの受信時刻の情報から位置を計算により求める方法は周知であるので、ここでは説明を省略する。測位・管理サーバ40は、このようにして測位した各物品タグ10及び各人物タグ20の位置を識別IDと対応付けて記憶し管理するとともに、後述する各種の方法によって物品タグ10と人物タグ20との紐付けを行い、その結果を記憶し管理する。紐付けは、どの人物4がどの物品2を運搬したかを、物品タグ10及び人物タグ20を用いて特定することによって行う。どの人物4がどの物品2を運搬したかは、物品タグ10の測位された位置とその測位時刻、及び人物タグ20の測位された位置とその測位時刻に基づいて特定することが可能である(詳細は後述)。
【0036】
時刻基準サーバ50は、所定の制御信号をLAN60経由で各基地局30とやり取りすることによって、各基地局30が互いに同期した時刻に従って動作するように時刻の同期制御を行う。この同期制御技術は、例えば特許文献1(特開2005−140617号公報)に記載されているのと同様の技術を用いることができるが、本発明の本質とは関係がないので詳細は省略する。
【0037】
次に、物品タグ10、人物タグ20、基地局30、及び測位・管理サーバ40の具体的な構成を説明する。
【0038】
図3は、物品タグ10の概略的構成を示すブロック図である。図3において、物品タグ10は、DSP(Digital Signal Processor)部101と、無線部102と、アンテナ部103とを含んで構成され、外部のマイクロスイッチ33(又はマイクロスイッチ35、トグル式スイッチ34,36)と所定の信号線で接続されている。またDSP部101は、MPU(マイクロコントローラ)1011と、メモリ1012と、ベースバンド信号処理部1013とを有している。人物タグ20は、外部のマイクロスイッチ33と接続がされていない点を除いて図3の物品タグ10と同じ構成である。
【0039】
MPU1011は、物品タグ10全体の動作の制御をするとともに、マイクロスイッチ33からの入力に基づいて運搬具3が運搬中であるか地面に置かれたかの状態遷移の判断をしたり、測位信号を送出する制御をしたりする演算処理を行う。メモリ1012は、物品タグ10の識別ID等の情報を記憶している。ベースバンド信号処理部1013は、パケットの生成、データの変復調、拡散・逆拡散などのベースバンドの信号処理を行う。
【0040】
無線部102は、DSP部101から出力されたデータを高周波信号に変換してアンテナ部103から送信するとともに、アンテナ部103により受信した信号を増幅及びベースバンド周波数へ周波数変換してDSP部101へ出力する。
【0041】
図4は、基地局30の概略的構成を示すブロック図である。図4において、基地局30は、物品タグ10と同様のDSP部301と無線部302とアンテナ部303に加えて、物品タグ10や人物タグ20から受信した測位信号を受信した受信時刻を決定する受信時刻決定部304と、LAN60を介した通信を行う通信部305とを有している。受信時刻決定部304は、必要なタイミングで、又は定期的に、時刻基準サーバ50によって時刻の同期がとられている。
【0042】
図5は、測位・管理サーバ40の概略的構成を示すブロック図である。図5において、測位・管理サーバ40は、MPU401と、計算部402と、管理部403と、メモリ404と、通信部405とを含んで構成される。MPU401は、測位・管理サーバ40全体の動作を制御する。計算部402は、基地局30から受信した受信時刻の情報に基づいて物品タグ10や人物タグ20の位置を計算する。管理部403は、以下に詳述する種々の方法に従って物品タグ10と人物タグ20とを紐付け、その結果を管理する。メモリ404は、紐付けに必要な所定の情報を記憶している。通信部405は、LAN60を介して基地局30との通信を行う。
【0043】
次に、測位・管理サーバ40が物品タグ10と人物タグ20とを紐付ける処理の具体例について説明する。本実施形態では、紐付けの方法として以下の(A)〜(G)のいずれかの方法を適用する。
【0044】
(A)距離が最も近いものを紐付ける方法
測位・管理サーバ40は、物品タグ10に対して、該物品タグ10と最も近接している人物タグ20を紐付ける。物品2を運搬する人物4は、卸売市場等の中にいる全ての人物のうちその物品2から見て一番近くに存在しているため、このような紐付け方法によって物品2を運搬する人物4が誰であるかを特定し、紐付けを行うことが可能である。
【0045】
この方法を用いる場合の物品管理システム1の運用手順及びその動作の流れを、図6のフローチャートに沿って説明する。
【0046】
まず、卸売市場等に物品2が搬入されると、人物4は、その物品2をパレット31に載せて該物品2に応じて決められた所定の場所へ運搬する。この運搬中においては、上述したように状態遷移は発生しないので、物品タグ10は測位信号を送出しない(ステップS101)。所定の場所に到達して人物4がパレット31を地面に置く(カゴ車32の場合はタイヤロック機構38をロック状態にする)と、物品タグ10は測位信号と識別IDとを送出する(ステップS102)。
【0047】
各基地局30は、この測位信号と識別IDとを受信して、受信時刻の情報と受信した識別IDとを測位・管理サーバ40へ送信する(ステップS103)。測位・管理サーバ40は、これらを受信して物品タグ10の位置を計算し、その位置と識別IDと上記の受信時刻とを対応付けて物品2の測位結果としてメモリ404に記憶保持する(ステップS104)。
【0048】
一方、各人物タグ20(物品2を運搬する人物4の人物タグ20を含む、卸売市場等の中にいる全ての人物の人物タグ20)は、所定の時間間隔で定期的に測位信号と識別IDとを送出している(ステップS105)。これにより、上記と同様にして、測位・管理サーバ40のメモリ404には、各人物について位置と識別IDと測位時刻とからなる測位結果が定期的に記憶保持される(ステップS106〜ステップS107)。
【0049】
測位・管理サーバ40は、物品2の測位結果を上記ステップS104でメモリ404に記憶保持すると、記憶保持した該物品2の受信時刻と一致する測位時刻において最も該物品2の位置と近接している人物4を、メモリ404に記憶保持されている各人物の測位結果から検索して特定し、その特定した人物4と上記物品2とを紐付ける(ステップS108)。このとき、人物タグ20の測位が所定の時間間隔で行われるため、上記受信時刻と正確に一致する測位時刻で測位をしていない人物がメモリ404に存在することもある。この場合、そのような人物については、適宜前後の測位結果を補間するなどして、上記の受信時刻と一致する測位時刻における位置を算出した上で、ステップS108の検索を行うようにする。
【0050】
なお、変形例として、人物タグ20に人物4が操作するスイッチを設け、人物4が物品2を所定の場所に置いた際に該スイッチを操作することで人物タグ20から識別IDを送出して、この識別IDを用いることにより物品2と人物4の紐付けをするようにしてもよい。例えば、基地局30が人物タグ20から送出された識別IDを受信して受信した識別IDとともにその受信時刻の情報を測位・管理サーバ40へ送信し、測位・管理サーバ40は、ステップS104で記憶保持した受信時刻と上記受信時刻(基地局30が人物タグ20からの識別IDを受信した時刻)とが一致又は近い場合に、該人物タグ20を持つ人物4と物品2とを紐付けるようにする。
【0051】
(B)物品と人物の動線形状に基づいて紐付けをする方法
この方法では、物品タグ10及び人物タグ20の測位を所定の時間間隔で定期的に行って、測位された位置の時間変化である動線を物品と人物の両方について求める。測位・管理サーバ40は、所定の時間範囲における動線を比較し、その形状がほぼ一致する物品タグ10と人物タグ20とを紐付ける。物品2を運搬する人物4は該物品2とほぼ同じ動線を描くので、このような紐付け方法によって物品2を運搬する人物4が誰であるかを特定し、紐付けを行うことが可能である。
【0052】
この方法を用いる場合の物品管理システム1の運用手順及びその動作の流れを、図7のフローチャートに沿って説明する。
【0053】
卸売市場等に物品2が搬入されると、人物4は、その物品2をパレット31に載せて該物品2に応じて決められた所定の場所へ運搬する。この運搬中において、物品タグ10は測位信号と識別IDとを所定の時間間隔で定期的に送出する(ステップS201)。所定の場所に到達して人物4がパレット31を地面に置く(カゴ車32の場合はタイヤロック機構38をロック状態にする)と、物品タグ10は、測位信号(但しこの測位信号はステップS201の測位信号と区別できるものとする)と識別IDとを送出する(ステップS202)。例えば、ステップS201では、測位信号にはスイッチ(マイクロスイッチ33等)がオフ状態であることを示すデータが格納され、ステップS202では、測位信号にはスイッチがオン状態であることを示すデータが格納される。あるいは、ステップS202では、物品2の状態が遷移したことを表すフラグが立てられたデータを測位信号に格納するようにしてもよい。
【0054】
各基地局30は、上記ステップS201,ステップS202の測位信号と識別IDとを受信して、受信時刻の情報と受信した識別IDとを測位・管理サーバ40へ送信する(ステップS303)。測位・管理サーバ40は、これらを受信して物品タグ10の位置を計算し、その位置と識別IDと上記の受信時刻とを対応付けて物品2の定期的な測位結果としてメモリ404に記憶保持する(ステップS204)。
【0055】
一方、各人物タグ20(物品2を運搬する人物4の人物タグ20を含む、卸売市場等の中にいる全ての人物の人物タグ20)も、所定の時間間隔で定期的に測位信号と識別IDとを送出している(ステップS205)。これにより、上記と同様にして、測位・管理サーバ40のメモリ404には、各人物について位置と識別IDと測位時刻とからなる測位結果が定期的に記憶保持される(ステップS206〜ステップS207)。
【0056】
図8は、このようにしてメモリ404に記憶保持された物品と人物の測位結果を座標平面に模式的に描いたものである。この図には、物品Aと人物Bと人物Cの測位結果である動線が示されている。物品Aは、測位位置PA1,PA2,…,PA10を順に辿って図の左から右へ移動している。人物Bは、物品Aを運搬した人物であり、測位位置PB1,PB2,…,PB6を順に辿って図の左から右へ移動している。人物Cは、物品Aの運搬とは無関係の人物であり、測位位置PC1,PC2,…,PC5を順に辿って図の上から下へ移動している。この図から分かるように、物品Aの動線と該物品Aを運搬した人物Bの動線は、その形状がほぼ一致している。
【0057】
測位・管理サーバ40は、上記ステップS202で送出された測位信号(即ちパレット31の状態遷移が発生した時の測位信号)に対する物品2の測位結果をメモリ404に記憶保持(上記ステップS204)すると、その前後の所定の時間範囲におけるメモリ404内の測位結果から、該物品2及び卸売市場等の中にいる各人物について、図8に示されるような動線を算出する。そして、物品2と各人物それぞれの動線を比較して、その動線形状がほぼ一致するもの、あるいは最も近いものを選びだして、その選び出した動線に対応する物品タグ10と人物タグ20とを紐付ける(ステップS208)。なお、動線の形状の具体的な比較方法としては、適宜、周知のデータ解析手法を用いることができる。
【0058】
また、図8において、物品Aの測位の時間間隔と人物Bの測位の時間間隔は同一とはなっていない(測位位置の間隔が異なっている)。これは、物品タグ10が測位信号を送出する時間間隔と人物タグ20が測位信号を送出する時間間隔が同一ではないためであるが、このような場合でも、動線の形状を比較する方法ではほとんど影響を受けない。
【0059】
(C)物品と人物の移動方向を表すベクトルに基づいて紐付けをする方法
この方法では、上記(B)の方法と異なり、時間的に連続する2つの測位結果を用いることにより物品や人物の移動方向を表すベクトルを求める。測位・管理サーバ40は、このベクトルを比較し、ベクトルの方向がほぼ一致する物品タグ10と人物タグ20とを紐付ける。この方法は動線の形状を比較する方法と比べて、2点のみの測位結果だけを用いるので処理が簡単であるというメリットがある。
【0060】
この方法を用いる場合の物品管理システム1の運用手順及びその動作の流れは、図7のフローチャートとほとんど同じである。違う点は、ステップS208において動線ではなくベクトルを算出し、その方向を比較する点である。方向を比較する際には、方向が一致するもの、あるいは方向の差が所定の角度以内であるものを選び出す。
【0061】
(D)物品と人物の距離が時間的にほぼ一定であるものを紐付ける方法
この方法では、物品タグ10及び人物タグ20の測位を上記(B)の方法と同様に所定の時間間隔で定期的に行って、各測位時刻において物品と各人物間の距離を求める。測位・管理サーバ40は、求めた各測位時刻の距離がほぼ一定で変化しない物品タグ10と人物タグ20とを紐付ける。物品2と該物品2を運搬する人物2との距離は運搬中に一定に保たれるので、このような紐付け方法によって物品2を運搬する人物4が誰であるかを特定し、紐付けを行うことが可能である。
【0062】
この方法を用いる場合の物品管理システム1の運用手順及びその動作の流れを、図9のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートは、図7のフローチャートとステップS201〜ステップS207までが同じであるので、その部分の説明は省略する。
【0063】
測位・管理サーバ40は、物品2について各測位時刻の測位結果が得られた際(上記ステップS204)に、その測位時刻における該物品2と各人物との距離をそれぞれの測位結果に基づいて算出して記憶保持する(ステップS209)。そして、測位・管理サーバ40は、ステップS202で送出された測位信号(即ちパレット31の状態遷移が発生した時の測位信号)に対する物品2の測位結果をメモリ404に記憶保持(上記ステップS204)すると、メモリ404内に記憶保持されているその前後の所定の時間範囲における距離算出結果を参照することにより、該物品2との距離の時間変化量がその時間範囲内で所定値以下である人物4を検索して特定し、その特定した人物4と上記物品2とを紐付ける(ステップS210)。
【0064】
なお、物品の測位の時間間隔と人物の測位の時間間隔が同一ではない場合は、上記ステップS209において、適宜、前後の測位結果を補間するなどして同一の時刻における位置を算出した上で、距離の算出を行うようにする。
【0065】
(E)物品の属性と人物の属性とを利用して紐付けをする方法
測位・管理サーバ40に予め各物品の属性情報と各人物の属性情報を記憶させておき、ある物品と紐付ける人物を上述した各方法では絞りきれなかった場合に、対応する属性情報を有している物品と人物とを紐付ける方法である。
【0066】
属性情報として「果物」や「花」といった物品のカテゴリー名を用いた場合を例に説明する。例えば、果物業者である人物Aが花業者である人物Bと話をしながら物品Cとしてりんごを搬入するケースを考える。測位・管理サーバ40には、人物Aの属性情報として「果物」が記憶され、人物Bの属性情報として「花」が記憶され、物品Cの属性情報として「果物」が記憶されている。人物Aと人物Bは並んで移動するため、上述の(B)等の方法では物品Cと紐付けるのが人物Aであるのか人物Bであるのかを判断することができない。本方法では、測位・管理サーバ40は、上述の(B)等の方法を用いて物品Cに対して人物Aと人物Bにまで絞り込んだ後に、記憶されている属性情報を参照することにより、属性情報が同じである物品Cと人物Aとを紐付ける。
【0067】
(F)人物タグの測位タイミングを物品タグから制御する方法
この方法では、人物タグ20は定期的な測位信号の送出を行わずに、物品タグ10が状態遷移時に人物タグ20に対して測位信号の送出を行わせる制御信号を送信し、これを受けて人物タグ20が測位信号を送出する。このとき、物品タグ10からの制御信号は、該物品タグ10が取り付けられている物品2を運搬している人物4の人物タグ20にのみ受信されることが望ましく、そのために、制御信号を送信する際の信号強度は、例えば周囲1m程度の範囲においてのみ受信可能であるように十分に弱くするものとする。このようにすることで、物品2の運搬と無関係である遠くの人物タグ20についての測位は行われず、物品2のすぐ近くの人物タグ20についてだけ測位が行われるので、紐付けをする対象の特定がしやすくなる。
【0068】
この方法を用いる場合の物品管理システム1の運用手順及びその動作の流れを、図10のフローチャートに沿って説明する。このフローチャートは、図6のフローチャートとステップS101〜ステップS104までが同じであるので、その部分の説明は省略する。
【0069】
物品タグ10は、ステップS102において測位信号を送出する際に、近傍の人物タグ20のみが受信可能な信号強度で制御信号を送出する(ステップS109)。近傍の人物タグ20は、この制御信号を受信すると、測位信号と識別IDとを送出する(ステップS110)。これにより、図6のステップS106〜ステップS107と同様にして、測位・管理サーバ40に該人物タグ20の測位結果が記憶保持される(ステップS111〜ステップS112)。このとき、制御信号の信号強度が適切であれば(周囲1m程度の範囲でのみ受信可能な信号強度であれば)、ステップS112で記憶保持されるのは該物品2を運搬している人物4についての測位結果のみとなる。測位・管理サーバ40は、ステップS104で記憶保持した物品タグ10とステップS112で記憶保持した人物タグ20とを紐付ける(ステップS113)。
【0070】
(G)人物タグの測位タイミングを測位・管理サーバから制御する方法
この方法は、人物タグ20に測位信号の送出を行わせる制御信号を送信するのが物品タグ10ではなく測位・管理サーバ40である点が、上記(F)の方法と異なる。測位・管理サーバ40は、状態遷移をした物品タグ10の測位結果を求めた際に、制御信号を人物タグ20へ送信する。制御信号は全ての人物タグ20へ送信してもよいが、上記(E)の方法と同様の属性情報に基づいて適宜選択した人物タグ20に対してのみ制御信号を送信するようにすることが好ましい。この場合、測位・管理サーバ40が制御信号と併せて当該選択した人物タグ20の識別IDも送信するようにすることで、この識別IDと一致する識別IDの人物タグ20のみが制御信号を受信して、該受信を行った人物タグ20が測位信号を送出することになる。
【0071】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0072】
(第2の実施形態)
本実施形態の物品管理システムでは、人物タグ20が測位信号を送出することなく、物品タグ10が人物タグ20との距離を計測してその計測結果を測位・管理サーバ40へ送信する。具体的な手順を図11のフローチャートに示す。
【0073】
物品タグ10は、状態遷移を検知すると、測位信号と識別IDとを送出する(ステップS301)。各基地局30は、この測位信号と識別IDとを受信して、受信時刻の情報と受信した識別IDとを測位・管理サーバ40へ送信する(ステップS302)。測位・管理サーバ40は、これらを受信して物品タグ10の位置を計算し、その位置と識別IDと上記の受信時刻とを対応付けて物品2の測位結果としてメモリ404に記憶保持する(ステップS303)。
【0074】
また、物品タグ10は、測位信号と識別IDとを送出した際に、所定の測距信号を周囲に送出する(ステップS304)。周囲の人物タグ20は、この測距信号を受信して応答信号と識別IDとを送出する(ステップS305)。物品タグ10は、各人物タグ20からの応答信号と識別IDとを受信し、測距信号の送信タイミングと応答信号の受信タイミングとの時間差から各人物タグ20との距離を計測する(ステップS306)。ここで、測距信号を送出した物品タグ10の周囲には他の物品タグも存在していることがあるが、物品タグは、物品タグからの測距信号に対して反応しないようにしておく。例えば、物品タグ10の識別IDと人物タグ20の識別IDを区別可能なように予め割り振っておいて、物品タグ10と人物タグ20はそれぞれ測距信号を受信した際に自分の識別IDを見て、人物タグ20は応答信号を返し、物品タグ10は応答信号を返さないという動作を行わせるようにする方法を用いることができる。
【0075】
そして、物品タグ10は、測距を行った人物タグ20の中から、計測された距離が該物品タグ10に最も近い人物タグ20を特定し、その特定した人物タグ20の識別IDをいずれか任意の基地局30へ送信する(ステップS307)。基地局30は、物品タグ10が送信した識別IDを受信して測位・管理サーバ40へ送信する(ステップS308)。測位・管理サーバ40は、基地局30から送信されるこの識別IDを受信して、該識別IDの人物4と物品2とを紐付ける(ステップS309)。ステップS307とステップS309において、物品タグ10は測距を行った(応答信号を受信した)全ての人物タグ20の識別IDと各人物タグ20までの距離を算出するための上記の時間差情報とを測位・管理サーバ40へ送信し、測位・管理サーバ40が、時間差情報から物品タグ10と各人物タグ20との距離を算出して該物品タグ10に最も近い人物タグ20を特定するようにしてもよい。
【0076】
なお、物品タグ10と人物タグ20との測距は物品タグ10に最も近い人物タグ20が分かれば十分であるので、測距信号の信号強度は、例えば物品タグ10の周囲1m程度の範囲でのみ受信可能な信号強度とすることが好ましい。
【0077】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態による物品管理システムの構成を示す概略図である。
【図2】運搬具の例を示す図である。
【図3】物品タグの概略的構成を示すブロック図である。
【図4】基地局の概略的構成を示すブロック図である。
【図5】測位・管理サーバの概略的構成を示すブロック図である。
【図6】物品管理システムの運用手順及びその動作の流れを示すフローチャートである。
【図7】物品管理システムの運用手順及びその動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】物品と人物の測位結果を座標平面に模式的に描いた図である。
【図9】物品管理システムの運用手順及びその動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】物品管理システムの運用手順及びその動作の流れを示すフローチャートである。
【図11】物品管理システムの運用手順及びその動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
1…物品管理システム 2…物品 3…運搬具 4…人物 10…物品タグ 20…人物タグ 30…基地局 31…パレット 32…カゴ車 33,35…マイクロスイッチ 34,36…トグル式スイッチ 37…タイヤ 38…タイヤロック機構 40…測位・管理サーバ 50…時刻基準サーバ 60…LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬される物品に関する位置等の情報を管理する物品管理システムにおいて、
前記物品が運搬中であるか所定の場所に置かれたかの状態の遷移を検知する状態遷移検知手段と、
前記物品又は該物品を運搬する運搬具に取り付けられ、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に測位信号を送出する第1の測位信号送出手段と、
前記物品を運搬する運搬人に取り付けられ、測位信号を送出する第2の測位信号送出手段と、
前記第1及び第2の測位信号送出手段により送出された測位信号を受信する複数の受信手段と、
前記複数の受信手段により受信された測位信号の受信タイミングに基づいて前記物品及び前記運搬人の位置を算出する測位計算手段と、
前記測位計算手段により測位された前記物品及び前記運搬人の位置と測位を行った時刻とに基づいて、前記物品を運搬又は所定の場所に置いた運搬人を特定する特定手段と、
前記物品と前記特定手段により特定された運搬人とを紐付けして管理する管理手段と、
を備えることを特徴とする物品管理システム。
【請求項2】
前記特定手段は、前記物品を測位した時刻の近傍において該物品の周囲の所定範囲に存在したことが測位された運搬人を、該物品を運搬又は所定の場所に置いた運搬人として特定することを特徴とする請求項1に記載の物品管理システム。
【請求項3】
前記特定手段は、前記物品に最も近接した運搬人を該物品の運搬人として特定することを特徴とする請求項2に記載の物品管理システム。
【請求項4】
前記第1の測位信号送出手段は、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合以外にも定期的に測位信号を送出し、
前記第2の測位信号送出手段は、前記測位信号を定期的に送出し、
前記特定手段は、前記物品について複数の時刻における測位結果から把握される該物品の動線と、前記運搬人について状態遷移が検知された時刻を含む所定時間内の複数の時刻における測位結果から把握される該運搬人の動線と、に基づいて前記物品の運搬人を特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の物品管理システム。
【請求項5】
前記特定手段は、前記物品の動線とその形状がほぼ一致する動線の運搬人を該物品の運搬人として特定することを特徴とする請求項4に記載の物品管理システム。
【請求項6】
前記特定手段は、前記物品について2点の時刻における測位結果から把握される該物品の移動を示すベクトルと、前記運搬人について前記時刻近傍の2点の時刻における測位結果から把握される該運搬人の移動を示すベクトルと、に基づいて、前記物品のベクトルとその方向が所定の範囲で一致するベクトルの運搬人を該物品の運搬人として特定することを特徴とする請求項4に記載の物品管理システム。
【請求項7】
前記特定手段は、複数の時刻における前記物品との距離がほぼ一定である運搬人を該物品の運搬人として特定することを特徴とする請求項4に記載の物品管理システム。
【請求項8】
前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に前記第2の測位信号送出手段に測位信号を送出させる制御を行う測位制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項9】
前記測位制御手段は、前記物品に取り付けられるとともに、周囲の所定範囲に存在する運搬人の前記第2の測位信号送出手段のみが受信できる信号強度で前記制御のための制御信号を送信することを特徴とする請求項8に記載の物品管理システム。
【請求項10】
前記物品と前記運搬人との組み合わせ候補を予め記憶する記憶手段を更に備え、
前記測位制御手段は、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された物品に対応する運搬人を前記記憶手段に記憶された組み合わせ候補に基づき特定し、該特定した運搬人の前記第2の測位信号送出手段にのみ前記制御のための制御信号を送信することを特徴とする請求項8に記載の物品管理システム。
【請求項11】
前記物品と前記運搬人との組み合わせ候補を予め記憶する記憶手段を更に備え、
前記特定手段は、前記記憶手段に記憶された組み合わせ候補を参照することにより前記物品の運搬人を特定する
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項12】
運搬される物品に関する位置等の情報を管理する物品管理システムにおいて、
前記物品が運搬中であるか所定の場所に置かれたかの状態の遷移を検知する状態遷移検知手段と、
前記物品又は該物品を運搬する運搬具に取り付けられ、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に測位信号を送出する測位信号送出手段と、
前記測位信号送出手段により送出された測位信号を複数の基地局で受信し、該受信した測位信号の受信タイミングに基づいて前記物品の位置を算出する測位計算手段と、
前記物品を運搬する運搬人の操作により所定の識別信号を送信する送信手段と、
所定の基地局で受信された前記識別信号の受信時刻が前記測位計算手段による前記物品の測位時刻に最も近い時刻である前記識別信号を特定する特定手段と、
前記物品と前記特定手段により特定された識別信号に対応する前記運搬人とを紐付けして管理する管理手段と、
を備えることを特徴とする物品管理システム。
【請求項13】
運搬される物品に関する位置等の情報を管理する物品管理システムにおいて、
前記物品が運搬中であるか所定の場所に置かれたかの状態の遷移を検知する状態遷移検知手段と、
前記物品又は該物品を運搬する運搬具に取り付けられ、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に測位信号を送出する測位信号送出手段と、
前記測位信号送出手段により送出された測位信号を複数の基地局で受信し、該受信した測位信号の受信タイミングに基づいて前記物品の位置を算出する測位計算手段と、
前記物品又は該物品を運搬する運搬具に取り付けられ、前記状態遷移検知手段により状態遷移が検知された場合に測距信号を周囲に送出し、該測距信号に対する応答信号を受信して測距信号の送信タイミングと応答信号の受信タイミングとの時間差から距離を計測する測距手段と、
前記物品を運搬する運搬人に取り付けられ、前記測距信号を受けて前記応答信号を前記測距手段へ送信する測距応答手段と、
前記測距手段により計測した距離が最も近い前記運搬人を特定する特定手段と、
前記物品と前記特定手段により特定された運搬人とを紐付けして管理する管理手段と、
を備えることを特徴とする物品管理システム。
【請求項14】
前記状態遷移検知手段は、前記物品又は前記運搬具の下面に取り付けられたスイッチであり、該物品又は運搬具が地面に置かれたか否かに応じて該スイッチがオン/オフすることにより状態遷移を検知することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項15】
前記運搬具は、タイヤと該タイヤのロック機構とを有し、
前記状態遷移検知手段は、前記ロック機構によって前記タイヤがロックされているか否かにより状態遷移を検知する
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の物品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−132477(P2009−132477A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308041(P2007−308041)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、「総務省ユビキタスネットワーク技術の研究開発・超小型チップネットワーキング技術」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(397065136)株式会社横須賀テレコムリサーチパーク (28)
【Fターム(参考)】