説明

物品管理装置及び物品棚卸システム

【課題】情報の読み取りエラーを回避し、且つ読み取り作業の効率化を図ると共に、作業負担を軽減した物品管理装置を提供する。
【解決手段】本発明の物品管理装置50は、上下方向に配列された複数段(図では6段構成)の収容部1aを備えたキャビネット1の各収容部1a内に夫々横一列に配列された複数の物品2(他の収容部の物品は図示を省略する)に夫々付されたICタグ(非接触情報記録媒体)3との間で電磁波の授受を一括して行うループアンテナ35を有するリーダライタ36(リーダでも構わない)と、リーダライタ36を支持して複数のキャビネット間を移動する移動ベース10と、少なくともループアンテナ35を搭載した状態で、移動ベース10によって収容部1aの配列方向(縦方向)に沿って進退自在に支持された可動ユニット30と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理装置及び物品棚卸システムに関し、例えば、棚上に横一列に配列されたファイル等の複数の物品に夫々付された非接触情報記録媒体の記録情報を一括して読取る物品管理装置、及び物品棚卸システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から役所、会社等、大量の書類を管理、保管する機関、施設においては、書類を整理して収納するためのファイルを人為的なミスなく正確に自動的に管理、収納するために、各ファイル毎に管理情報を記録した非接触情報記録媒体を付しておき、非接触で管理情報を読取ることによりファイル管理を自動化するようにしたリーダライタシステムが知られている。
例えば、ハンディタイプのアンテナにより非接触情報記録媒体の情報を読み取るリーダ、又はリーダライタとして、キャビネット内の棚上に横一列に配列された複数のファイルの配列方向全長とほぼ等しい長さを有したアンテナをファイル群と対向配置させて、ファイル情報を一括して読み取るものがある。
【0003】
図7は、一括読み取り式のハンディタイプのリーダライタにより、個々のファイルに付された非接触情報記録媒体を読み取る状態を説明する図であり、(a)は正しい状態でループアンテナを配置して読み取っている場合を示す図であり、(b)は間違った状態でループアンテナを配置して読み取っている場合を示す図である。物品管理装置52は、キャビネット41内に横一列に配列された複数の書類ファイル(物品)44に夫々付されたICタグ(非接触情報記録媒体)42との間で電磁波の授受を一括して行うループアンテナ40を備えたリーダライタ(読み取り専用のリーダでも可)43と、リーダライタ43を制御する図示しないPCと、を備えている。
(a)の場合は、ループアンテナ40がキャビネット41内に横一列に配列して収納されたファイルa〜nに備えられた全てのICタグ42を完全にカバーするように配置されている。従って、全てのファイル情報を正確に読み取ることができる。しかし、(b)の場合は、ループアンテナ40がキャビネット41内の左端に位置するファイルaから外れた位置に配置されているため、ファイルaの情報を読み落とす結果となる。このように、操作者の操作の具合によって全てのファイルが読み取れない場合が発生する。
【0004】
また、特許文献1には、複数段の棚板上に収納された物品(映画フィルムのリール)に付されたICタグの記録情報を読むために、各段の棚板に夫々ループアンテナを複数配置して、各段のループアンテナを順次切り替えて情報を読み取り、1つの棚段の情報読み取りが終了すると、アンテナ切り替え器により次段のアンテナに切り替えて情報を読み取るリール管理システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−74066公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7に示した従来の一括読み取りタイプのリーダライタでは、ループアンテナを手で持って読取対象物である物品列に対して位置決めする必要があるため位置を安定させにくく、また、ループアンテナが板状のアンテナ素子で構成されているため、キャビネット41が金属で構成されている場合には、物品列の端部に位置する非接触記録媒体は、金属により電磁波が減衰されたり、或いは反射により読み取りエラーが発生する確率が高かった。また、ループアンテナが大型、重量物であるため、作業者の身体的負担が大きく、特に、棚の段数が多い場合には重いループアンテナを上下に移動しなければならないために疲労度が増すという問題があった。
また、特許文献1に開示されている従来技術では、作業者による身体的負担は軽減されるが、各棚に夫々複数のアンテナを設置しなければならず、且つ、アンテナ切り替え器が必要となるため、装置全体のコストが高くなるといった問題がある。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、移動可能な台車に固定し、且つアンテナ全体を上下、又は左右に移動できる構成とすることにより、情報の読み取りエラーを回避し、且つ読み取り作業の効率化を図ると共に、作業者の身体的負担を軽減した物品管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、上下方向、又は横方向に配列された複数段の収容部を備えたキャビネットの各収容部内に夫々一列に配列された複数の物品に夫々付されて個々の物品についての情報を記録した非接触情報記録媒体との間で電磁波の授受を一括して行うループアンテナを有するリーダ、又は、リーダライタを備えた物品管理装置であって、複数の前記キャビネット間を移動する移動ベースと、少なくとも前記ループアンテナを搭載した状態で、前記移動ベースによって前記収容部の配列方向に沿って進退自在に支持された可動ユニットと、を備えたことを特徴とする。
従来から、非接触情報記録媒体の情報を一括して読み取るリーダに使用されるループアンテナは実用化されているが、作業者がループアンテナを手で持って情報を読む形態であったため、読み取り精度が劣り、且つ、作業者の身体的負担が大きかった。本発明の物品管理装置は、複数の物品に付された非接触情報記録媒体の情報を一括して読み取るループアンテナを有するリーダ、又は、リーダライタを備え、複数のキャビネット間を移動する移動ベースと、ループアンテナを収容部の配列方向に沿って進退自在に支持する可動ユニットと、を備える。これにより、読み取り精度が高まり、且つ、作業者の身体的負担を軽減することができる。
【0008】
請求項2は、前記キャビネットは前記複数の収容部を縦方向に配列した構成を備え、前記移動ベースは、前記複数のキャビネット間を移動する台車であり、前記可動ユニットは、前記台車に設けた昇降機構によって昇降自在、且つ高さ位置を固定可能に構成されていることを特徴とする。
キャビネットの複数の収容部が縦方向に配列されている場合、移動ベースとして台車を使用し、その台車に昇降自在で、且つ高さ位置を固定できる可動ユニットを有する。これにより、キャビネット間を自在に移動でき、且つキャビネットの収容部の高さに応じてループアンテナを自在に昇降することができる。
【0009】
請求項3は、前記ループアンテナは、前記収容部と対向配置されるベースアンテナ部と、一つの前記収容部内に配列された物品群の両端部外側に向けて該ベースアンテナ部の対応する位置から夫々突設された側部アンテナ部と、を備えていることを特徴とする。
キャビネットは金属で構成される場合が多い。そのような場合、ループアンテナの両端部から放射された電磁波は、金属の影響により減衰されたり、金属で反射される可能性が高くなる。そこで本発明では、ループアンテナの一つの構成として、収容部と対向配置されるベースアンテナ部と、電磁波が金属によって影響されるのを回避するために、一つの収容部内に配列された物品群の両端部外側に向けてベースアンテナ部の対応する位置から夫々突設された側部アンテナ部とを備える。これにより、キャビネットの両端部が金属で構成されていても、個々の収容部の両端部に近い位置に収納された物品に付された非接触情報記録媒体との間で電磁波の授受を正確に行うことができる。
【0010】
請求項4は、前記ループアンテナは、前記収容部の略全長に亘る長さを有して該収容部と対向配置される板状のアンテナ素子から構成されていることを特徴とする。
このようなループアンテナで収容部に収容された物品に付されたICタグの記録情報を正確に読み取るためには、キャビネット側に構造上の工夫が必要となる。即ち、個々の収容部の横方向両端部を電磁波に悪影響を与えないような材質で構成するか、或いは、個々の収容部の横方向両端部の側板を金属で構成する場合であっても、この側板から個々の収容部の横方向両端部に収容した物品が所定の距離離間するように、電磁波に悪影響を与えないような材質で構成されたスペーサを配置する。この結果、個々の収容部の横方向両端部を電磁波に悪影響を与えないような材質にした場合は、ループアンテナに側部アンテナ部が不要となる。このことにより、ループアンテナの構成が単純化されて、ループアンテナのコストを低減することができる。
【0011】
請求項5は、前記可動ユニットは、複数の前記収容部に夫々対向するように配置した複数の前記ループアンテナを備えていることを特徴とする。
一般的にキャビネットは複数の収容部を有する。これらの収容部に収容された物品に付された非接触情報記録媒体の記録情報を一つのループアンテナで順次読み取る場合は、収容部の数だけループアンテナを移動する必要があり、非常に作業効率が悪くなる。これに対して本発明では、少なくとも2つの収容部に夫々対向するように配置した少なくとも2つのループアンテナを備える。この構成により、一度に2箇所の収容部に収容された物品群に付された非接触情報記録媒体の記録情報を同時に読み取ることができるため、記録情報の読み取りの作業効率を高めることができる。
【0012】
請求項6は、前記可動ユニットは、前記物品の配列方向の違いに応じて、前記ループアンテナを回転させて任意の角度で固定する回転機構を備えたことを特徴とする。
キャビネットには上下方向、又は横方向に配列された複数段の収容部を備えものが存在する。このような構成のキャビネットに収容された物品に付された非接触情報記録媒体の情報を読み取るためには、ループアンテナの向きを90°変更する必要がある。そこで本発明では、ループアンテナを回転させて任意の角度で固定する回転機構を備える。これにより、1種類の物品管理装置で上下方向、又は横方向に配列された複数段の収容部を備えたキャビネットに対応することが可能となる。
【0013】
請求項7は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の物品管理装置と、前記リーダ、又はリーダライタを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記物品管理装置により前記非接触情報記録媒体に記録された記録情報を読み取ることにより、前記キャビネットに収納されている物品の棚卸管理を行うことを特徴とする。
本発明の物品管理装置のリーダ、又は、リーダライタは、制御手段であるPC等により制御される。従って、物品の棚卸管理はPCに棚卸のためのプログラムをインストールすることにより、容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一列に配列された複数の物品に夫々付された非接触情報記録媒体の情報を一括して読み取るループアンテナを有するリーダ、又は、リーダライタを備え、複数のキャビネット間を移動する移動ベースと、ループアンテナを収容部の配列方向に沿って進退自在に支持する可動ユニットと、を備えるので、読み取り精度が高まり、且つ、作業者の身体的負担を軽減することができる。
また、キャビネットの複数の収容部が縦方向に配列されている場合、移動ベースとして台車を使用し、その台車に昇降自在で、且つ高さ位置を固定できる構成を有することにより、キャビネット間を自在に移動でき、且つキャビネットの収容部の高さに応じてループアンテナを自在に配置することができる。
また、ループアンテナを、収容部と対向配置されるベースアンテナ部と、一つの収容部内に配列された物品群の配列方向両端部の外側に向けてベースアンテナ部の対応する位置から夫々突設された側部アンテナ部とを備えた構成とすることにより、キャビネットの両端部が金属で構成されていても、個々の収容部の両端部に近い位置に収納された物品に付された非接触情報記録媒体との間で電磁波の授受を行うことができる。
【0015】
また、個々の収容部の横方向両端部を電磁波に悪影響を与えないような材質で構成するか、或いは、個々の収容部の横方向両端部の側板を金属で構成する場合であっても、この側板から個々の収容部の横方向両端部に収容した物品が所定の距離離間するように、電磁波に悪影響を与えないような材質で構成されたスペーサを配置することにより、ループアンテナの構成が単純化されて、ループアンテナのコストを低減することができる。
また、収容部に夫々対向するように配置した複数のループアンテナを備えることにより、記録情報の読み取りの作業効率を高めることができる。
また、ループアンテナを回転させて任意の角度で固定する回転機構を備えることにより、1種類の物品管理装置で上下方向、又は横方向に配列された複数段の収容部を備えたキャビネットに対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る物品管理装置を背面から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る物品管理装置の平面図であり、側部アンテナ部を有するループアンテナをキャビネットの収容部に配置した様子を上側から見た図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る物品管理装置の平面図であり、板状のアンテナ素子で構成されたループアンテナをキャビネットの収容部に配置し、両端部にスペーサを配置した様子を上側から見た図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る物品管理装置により、キャビネットの各収容部に収容されている物品の記録情報を収容部を移動しながら読み取る様子を説明する図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る物品管理装置を背面から見た斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施形態(図5の変形例)に係る物品管理装置を背面から見た斜視図である。
【図7】従来の一括読み取り式のハンディタイプのリーダライタにより、個々のファイルに付された非接触情報記録媒体を読み取る状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る物品管理装置を背面から見た斜視図である。本発明の物品管理装置50は、上下方向に配列された複数段(図では6段構成)の収容部1aを備えたキャビネット1の各収容部1a内に夫々横一列に配列された複数の物品2(他の収容部の物品は図示を省略する)に夫々付されたICタグ(非接触情報記録媒体)3との間で電磁波の授受を一括して行うループアンテナ35を有するリーダライタ36(リーダでも構わない)と、複数のキャビネット間を移動する移動ベース10と、少なくともループアンテナ35を搭載した状態で、移動ベース10によって収容部1aの配列方向(縦方向)に沿って進退自在に支持された可動ユニット30と、を備えて構成されている。
従来から、ICタグに記録された記録情報を一括して読み取るループアンテナを備えたリーダライタは実用化されているが、作業者がループアンテナを手で持って情報を読み取る形態であったため、配列された物品に対する位置合わせが難しく、読み取りエラーが発生し易く、且つ、作業者の身体的負担が大きかった。
【0019】
本実施形態の物品管理装置50は、収容部1a内に一列に配列された複数の物品2に夫々付されたICタグ3の記録情報を一括して読み取るループアンテナ35を有するリーダライタ36と、複数のキャビネット間を移動する移動ベース10と、ループアンテナ35を収容部1aの配列方向に沿って進退自在に支持する可動ユニット30と、を備える。これにより、読み取り精度が高まり、且つ、作業者の身体的負担を軽減することができる。
また、本実施形態の物品管理装置50を使用して物品棚卸システム60を構築する場合は、物品管理装置50と共に、リーダライタ36を制御するPC(制御手段)12を更に備え、PC12は、物品管理装置50により物品2に夫々付されたICタグ3に記録された記録情報を読み取ることにより、キャビネット1に収納されている物品2の棚卸管理を行うことができる。即ち、本発明の物品管理装置50のリーダライタ36は、PC12により制御されるため、PC12に棚卸のためのプログラムをインストールすることにより物品の棚卸管理を容易に行うことができる。
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る物品管理装置50の詳細な構成について説明する。キャビネット1は、複数の棚板1bによって仕切られた複数の収容部1a(図示の例では(1)〜(6)の6段構成)を縦方向に配列した構成を備え、各収容部1a内には横方向に一列に物品2が配列される。
移動ベース10は、複数のキャビネットが床面上に配列されている場合にキャビネット間を移動する台車11であり、可動ユニット30は、台車11に設けた昇降機構(スライダー33(ベアリング等)及びスライドレール32)によって昇降自在、且つ高さ位置を固定ノブ17により固定可能に構成されている。台車11によりキャビネット間を自在に移動でき、且つ可動ユニット30によりキャビネット1の収容部1aの高さに応じてループアンテナ3を自在に昇降させることができる。
尚、キャビネット1は、金属で構成される場合が多い。そのような場合、個々の収容部1aの横方向両端にある金属製側板1A、1Bの影響によって、ループアンテナ35からの電磁波は減衰したり、或いは反射が起こりデータエラーを発生する可能性が高くなる。そこで本実施形態では、ループアンテナ35を、収容部1aの前面側と対向配置されるベースアンテナ部35aと、各収容部1aの両端部の物品2a、2bの外側面に向けてベースアンテナ部35aの対応する位置から夫々突設された側部アンテナ部35b、35cとを備えて構成する。この構成により、キャビネット1の側板1A、1Bが金属で構成されていても、個々の収容部1aの両端部に収納された物品2a、2bに付されたICタグ3との間で電磁波の授受を確実に行うことができる。
【0021】
台車11は、台車本体11Aと、台車本体11Aにより支持された二本の固定柱16と、を備えている。台車本体11Aは、底部に設けた移動用のキャスタ13と、押して移動させる時に操作者が把持する移動用取手19と、必要に応じて底部に設置される台車11の転倒防止用のカウンターウエイト14と、PC12を載置する棚板20と、を備える。各固定柱16は、台車本体11Aの隣接する二本の柱を上方に延長したものであり、固定柱16によって可動ユニット30を昇降自在に支持する。また、各固定柱16には、可動ユニット30から手を離したときに、可動ユニット30が急激に落下しないように抑制する定荷重ばね18を備える。
可動ユニット30は、2本の固定柱16により支持され、スライダー33によりスライドレール32をスライドさせてループアンテナ35を昇降させる2本の可動柱31と、操作者が可動柱31を上下に移動するときに把持する可動部取手34と、を備えている。また、図1では、可動ユニット30は、複数の収容部1aに夫々対向するように配置した2つのループアンテナ35A、35Bを備え、ループアンテナ35A、35Bには、ICタグ3に記録されている記録情報を読み取るリーダライタ36が夫々備えられている。
【0022】
一般的にキャビネット1は複数の収容部1aを有する。これらの収容部1aに収容された物品に付されたICタグの記録情報を一つのループアンテナ35で順次読み取る場合は、収容部1aの数だけループアンテナ35を移動する必要があり、非常に作業効率が悪くなる。これに対して本実施形態では、少なくとも2つの収容部1aに夫々対向するように配置した少なくとも2つのループアンテナ35A、35Bを備える。本実施形態では、3段間隔にループアンテナ35A、35Bを配置する。この構成により、2箇所の収容部1aに収容された物品に付されたICタグ3の記録情報を同時に読み取ることができるため、記録情報の読み取りの作業効率を高めることができる。尚、本実施形態では、2つのループアンテナ35A、35Bを備える構成としたが、2つに限定する必要はなく更に多くても構わない。また、ループアンテナ35A、35Bの間隔を3段としたが、この段数に限定する必要はない。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る物品管理装置の平面図であり、側部アンテナ部を有するループアンテナをキャビネットの収容部に配置した様子を上側から見た図である。ループアンテナ35Aは、収容部1aの横方向全長に亘る長さLを有して収容部1aと対向配置されるベースアンテナ部35aと、ベースアンテナ部35aの長手方向両端部から夫々収容部1aに向けて突設された側部アンテナ部35b、35cと、を備えている(ループアンテナ35Bも同じ構成である)。
この構成により、個々の収容部1aの横方向両端にある側板1A、1Bが金属製であっても、個々の収容部1aの横方向両端部に収納された物品2a、2bに付されたICタグ3との間で電磁波の授受を確実に行うことができる。尚、側部アンテナ部35b、35cからの電磁波を有効に利用するために、側部アンテナ部35b、35cが個々の収容部1aの横方向両端にある金属製側板1A、1Bと接する外側面に、電磁波を容易に通過させるフェライト等の部材を貼り付けることが好ましい。これにより、側部アンテナ部35b、35cから放射された電磁波は、金属により減衰したり反射されることなく、ICタグ側に効果的に放射される。
【0024】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る物品管理装置の平面図であり、板状のアンテナ素子で構成されたループアンテナをキャビネットの収容部に配置し、両端部にスペーサを配置した様子を上側から見た図である。同じ構成要素には図2と同じ参照番号を付して説明する。
本実施形態のループアンテナ35は、収容部1aの全長に亘る長さLを有して収容部1aと対向配置される板状のアンテナ素子35dから構成されている。このようなループアンテナで収容部1aに収容された物品に付されたICタグ3の記録情報を正確に読み取るためには、キャビネット1側に構造上の工夫が必要となる。即ち、個々の収容部1aの横方向両端部を電磁波に悪影響を与えないような材質で構成するか、或いは図3のように、個々の収容部1aの横方向両端部の側板1A、1Bを金属で構成する場合であっても、この側板1A、1Bから個々の収容部1aの横方向両端部に収容した物品2a、2bが所定の距離離間するように、電磁波に悪影響を与えないような材質で構成されたスペーサ4a、4bを配置する。
この結果、個々の収容部1aの横方向両端部を電磁波に悪影響を与えない材質にした場合は、ループアンテナ35に側部アンテナ部35b、35cが不要となる。また、図3のようにスペーサ4a、4bを配置する場合は、両端部の物品2a、2bは、個々の収容部1aの横方向両端にある金属製側板1A、1Bから離間するため、両端部の物品2a、2bに付されたICタグ3は、金属により減衰したり反射した電磁波の影響を受けにくくなり、全てのICタグの情報を正確に読み取ることができる。
【0025】
以上のように構成することにより、ループアンテナ35の構成が単純化されて、ループアンテナ35のコストを低減することができる。尚、図3のように両端部にスペーサ4a、4bを配置する場合は、アンテナ素子35dの形状を収容部1aの全長に亘る長さLより短くしても構わない。
【0026】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る物品管理装置により、キャビネットの各収容部に収容されている物品の記録情報を収容部を移動しながら読み取る様子を説明する図である。図4(a)は2つのループアンテナ35A、35Bを(1)段目と(4)段目に夫々配置した図であり、予め、キャビネット1の(1)段目と(4)段目の収容部1aの位置にループアンテナ35B、35Aが対向配置されるように固定柱16に対する可動柱31の上下位置を調整して、固定ノブ17により固定する。そして、床面に沿って台車11を移動して、ベースアンテナ部35aの長手方向両端部から夫々収容部1aに向けて突設された側部アンテナ部35b、35cを各収容部内に挿入する。その結果、ループアンテナ35Aと35Bのベースアンテナ部35aを各物品に付されたICタグ3に夫々近接させることができる。この状態で、ループアンテナ35A及び35Bに備えられたリーダライタ36を駆動させると、(1)段目と(4)段目に収容された物品に付されたICタグ3の情報を一括して読み取ることができる。読み取りが完了すると、台車11を後退させて、固定ノブ17を緩めて、可動柱31を上に移動して、図4(b)のように、キャビネット1の(2)段目と(5)段目の収容部1aの位置にループアンテナ35B、35Aが位置するように可動ユニット30の高さを調整して固定ノブ17により固定する。これ以降の動作は(1)段目と(4)段目に対する読取に際する動作と同じである。以下同様にして、図4(c)のようにループアンテナ35B、35Aが(3)段目と(6)段目に対向配置されるように可動ユニット30を上昇させて上記の操作を繰り返す。本実施形態では、2つのループアンテナを使用して読み取り動作を行うため、ループアンテナが1つのときの作業時間の半分で作業を完了することができる。
【0027】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る物品管理装置を背面から見た斜視図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。
本実施形態に係る物品管理装置51は、キャビネット1が横方向に配列された複数段の収容部1aを備えているため、各収容部1aに収容された物品に関する記録情報を読み取るために、ループアンテナ35を横方向に移動できる構成にした点が図1と異なる。即ち、キャビネット1の収容部1aには、縦積みにされた複数個の物品(例えば、書類ファイル)2が収容されている(他の収容部の物品は図示を省略する)。そして各物品2には、各物品の記録情報が記録されたICタグ3が付されている。キャビネット1は、金属で構成される場合が多い。そのような場合、個々の収容部1aの縦方向両端にある金属製側板1A、1Bの影響によって、アンテナからの電磁波は、金属の影響により減衰したり、或いは反射を起こす場合がある。そこで本実施形態では、ループアンテナ35の構成として、キャビネット1の収容部1aの縦方向の全長に亘る長さを有して収容部1aと対向配置されるベースアンテナ部35aと、各収容部1aの両端部の物品2a、2bの外側面に向けてベースアンテナ部35aの対応する位置から夫々突設された側部アンテナ部35b、35cと、を備えている。この構成により、キャビネット1の上下板1A、1Bが金属で構成されていたとしても、物品群の配列方向両端部に位置する物品2a、2bに付されたICタグ3との間で電磁波の授受を行うことができる。
【0028】
次に、キャビネット1の収容部1aに収容されている物品2に関する記録情報を収容部の列を変えながら読み取る操作手順について説明する。図5は各ループアンテナ35A、35Bを(1)列目と(4)列目に対向配置した図であり、予め、ループアンテナ35Aと35Bとの横方向間隔がキャビネット1の(1)列目と(4)列目の収容部1aの位置と夫々対向した位置関係になるように設定した上で、可動ユニット30を固定柱16に対して固定ノブ17により固定する。そして、台車11を床面に沿って横方向へ移動して、各収容部1aの両端部の物品2a、2bの外側面に向けてベースアンテナ部35aの対応する位置から夫々突設された側部アンテナ部35bを物品2の最上部に設けた隙間部5に挿入し、側部アンテナ部35cをキャビネット1に設けた隙間部6に挿入して配置する。この結果、ループアンテナ35Aと35Bのベースアンテナ部35aをICタグ3に近接させることができる。この状態で、ループアンテナ35A及び35Bに備えられたリーダライタ36を駆動させると、(1)列目と(4)列目に収容された物品に付されたICタグ3の記録情報を一括して読み取ることができる。読み取りが完了すると、台車11を後退させて、固定ノブ17を緩めて、可動柱31を横に移動して、キャビネット1の(2)列目と(5)列目に対向配置されるようにループアンテナ35Aと35Bを調整して固定ノブ17により固定する(ここで、固定ノブ17を緩めず、台車11を横に移動しても構わない)。これ以降の動作は(1)列目と(4)列目に対する読取に際する動作と同じである。以下同様にして、ループアンテナ35Aと35Bを(3)列目と(6)列目に対向配置されるように可動ユニット30を横に移動させて上記の操作を繰り返す。
【0029】
なお、上記各実施形態では、可動ユニット30を構成するループアンテナの配列方向を上下方向、又は横方向の何れかに固定したが、図1に示した縦方向から図5に示した横方向へ回転可能に構成してもよい。即ち、物品の配列方向の違いに応じて、ループアンテナ35を回転させて任意の角度で固定する回転機構を備えるようにしてもよい。
また、本実施形態では、上下方向、又は横方向に配列された複数段の収容部を備えたキャビネットについて説明したが、斜め方向に配列された複数段の収容部を備えたキャビネットについても、本発明を適用することは可能である。即ち、前記ループアンテナの回転機構により、任意の角度で固定するように構成することで実現が可能である。
【0030】
図6は、本発明の第4の実施形態(図5の変形例)に係る物品管理装置を背面から見た斜視図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。図6の第4の実施形態に係る物品管理装置52が図5の実施形態と異なる点は、図5の可動柱31、可動部取手34、及び固定ノブ17を削除して、固定柱16に直接ループアンテナ35A、35Bを取り付けた点である。即ち、台車11は移動手段であるキャスタ13を備えているので、予め、ループアンテナ35Aと35Bの間隔をキャビネット1の(1)列目と(4)列目の収容部1aの位置になるように設定しておけば、列間移動するときは、台車11を移動することにより容易に実現できる。当然、キャビネット間を移動する場合も台車11を移動することにより実現できる。
尚、図5、図6の実施形態においても、図3と同様に、個々の収容部1aの上下方向両端部1A、1Bを電磁波に悪影響を与えないような材質で構成するか、或いは、個々の収容部1aの縦方向両端部の側板1A、1Bを金属で構成する場合であっても、この側板1A、1Bから個々の収容部1aの上下方向両端部に収容した物品2a、2bが所定の距離離間するように、電磁波に悪影響を与えないような材質で構成されたスペーサ4a、4bを配置する構成とすることにより、図5と図6で説明した第3の実施形態及び第4の実施形態に係るループアンテナを板状のアンテナ素子で構成することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 キャビネット、1a 収容部、1b 棚板、1A、1B 側板、2 物品、2a、2b 縦方向両端部に収容した物品、3 ICタグ、4a、4b スペーサ、5、6 隙間部、10 移動ベース、11 台車、12 PC、13 キャスタ、14 カウンターウエイト、15 配線孔、16 固定柱、17 固定ノブ、18 定加重ばね、19 移動用取手、20 棚板、30 可動ユニット、31 可動柱、32 スライドレール、33 スライダー、34 可動部取手、35 ループアンテナ、35a ベースアンテナ部、35b、35c 側部アンテナ部、35d アンテナ素子、36 リーダライタ、40 ループアンテナ、41 キャビネット、42 ICタグ、43 リーダライタ、44 書類ファイル、50 第1の実施形態に係る物品管理装置、51 第2の実施形態に係る物品管理装置、52 第3の実施形態に係る物品管理装置、60 物品棚卸システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向、又は横方向に配列された複数段の収容部を備えたキャビネットの各収容部内に夫々一列に配列された複数の物品に夫々付されて個々の物品についての情報を記録した非接触情報記録媒体との間で電磁波の授受を一括して行うループアンテナを有するリーダ、又は、リーダライタを備えた物品管理装置であって、
複数の前記キャビネット間を移動する移動ベースと、
少なくとも前記ループアンテナを搭載した状態で、前記移動ベースによって前記収容部の配列方向に沿って進退自在に支持された可動ユニットと、を備えたことを特徴とする物品管理装置。
【請求項2】
前記キャビネットは前記複数の収容部を縦方向に配列した構成を備え、
前記移動ベースは、前記複数のキャビネット間を移動する台車であり、
前記可動ユニットは、前記台車に設けた昇降機構によって昇降自在、且つ高さ位置を固定可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の物品管理装置。
【請求項3】
前記ループアンテナは、前記収容部と対向配置されるベースアンテナ部と、一つの前記収容部内に配列された物品群の両端部外側に向けて該ベースアンテナ部の対応する位置から夫々突設された側部アンテナ部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の物品管理装置。
【請求項4】
前記ループアンテナは、前記収容部の略全長に亘る長さを有して該収容部と対向配置される板状のアンテナ素子から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の物品管理装置。
【請求項5】
前記可動ユニットは、複数の前記収容部に夫々対向するように配置した複数の前記ループアンテナを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の物品管理装置。
【請求項6】
前記可動ユニットは、前記物品の配列方向の違いに応じて、前記ループアンテナを回転させて任意の角度で固定する回転機構を備えたことを特徴とする請求項1、3、4又は5に記載の物品管理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の物品管理装置と、前記リーダ、又はリーダライタを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記物品管理装置により前記非接触情報記録媒体に記録された記録情報を読み取ることにより、前記キャビネットに収納されている物品の棚卸管理を行うことを特徴とする物品棚卸システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229081(P2012−229081A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97809(P2011−97809)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】