説明

物品管理装置

【課題】内部収納物品のデータの読取不能なキャビネットに物品を収納し管理する装置において、所定領域内で物品を検知した後、物品の所定領域外への不正持ち出しがなされたか、キャビネットに戻されたかを、精度良く判別する。
【解決手段】キャビネット11上に送受信部12を設け、アンテナ17より切換で近距離、中距離、遠距離に到達する電波をキャビネット11の管理領域に送出し、ボックス16−jから取り出された物品のICタグ14−jのデータを受信し、その後受信不可となった場合、それ以前に近距離、中距離、遠距離の順で受信と確認で不正持ち出しと判断し、他方ICタグ14−jのデータ受信後に、その後受信不可となった場合に、それ以前の受信が近距離受信であったとの確認で、ボックス16−jへの物品戻しと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品管理装置、特に複数の物品を、それぞれICタグを付して、キャビネット(物品収納庫)の各ボックス(収納部)に収納し保管する物品管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に書類、部品、商品等の物品の管理に、キャビネットを用いる物品管理装置としては、図6に示すように、複数のボックス1を有するキャビネット2の各ボックス1毎に管理すべき物品3を収納する。各ボックス1の物品3には、物品毎のデータを記憶したICタグ4が付設されている。このキャビネット2に物品3を出し入れするとき、あるいは所定時間毎にタグリーダ5でICタグ4のデータの読み/書きを行い、物品管理をしている。
【0003】
この物品管理装置では、キャビネット2として非金属性のものを使用しているが、金属性のキャビネットを使用したものも使用されている。
金属性のキャビネットを使用した場合、キャビネットにICタグ付きの物品3を収納すると、タグリーダ5でICタグ4にデータの読み/書きが出来ないので、ICタグ4をボックス1の前面扉1aの外面に付設している。
この種の物品管理装置において、キャビネット2のボックス1から物品3が持ち出されたか否かは、タグリーダ5で、ICタグ4に読み/書きのアクセスを行うことにより判断している。
ところで、物品管理装置において、物品が所定の領域から移動されたことを検知するため、アンテナが物品に付されたRFIDタグに記録されている管理情報が授受不能になった場合、物品が不正に持ち出されたものと判断するようにした技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、通常は、盗難監視用リーダからの応答要求信号の出力と監視対象物品に取り付けられた金属部材によって反射された反射信号の出力が打ち消し合う位置又は金属部材と密着する位置にICタグを配置し、通常はICタグの読み/書きが出来ないが、監視対象物品が設置場所から移動した場合に反射波がなくなり、ICタグが応答要求信号を受信し、そのことで物品の設置場所からの移動を検出できるようにした技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−332185号公報
【特許文献2】特開2005−38301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記図6に示すもので物品を非金属のキャビネットの各ボックスに収納して管理するタイプの物品管理装置において、物品の持ち出しを検知するのに、引用文献1に記載の技術を採用すると、ICタグ付き物品がボックスに収納されている間でも、又ICタグ付き物品がボックスから外部近傍に取り出された場合も、リーダライタで読み出だされるので、物品がキャビネット外に取り出されたか否かの区別がつかない。 また、同じく非金属のキャビネットの各ボックスに収納して管理するタイプの物品管理装置において、商品の持ち出しを検知するのに、キャビネットのボックス内、つまり所定位置に存する場合にICタグのデータを読み/書き出来るので、所定位置に存する場合にICタグのデータの読み/書きが出来ないとする引用文献2に記載の技術を採用することが出来ない。
また、図6に示すもので、物品を金属製のキャビネットのボックスに収納するタイプの物品管理装置において、商品の持ち出しを検知するのに、キャビネットのボックス内、つまり所定位置に存する場合に、ICタグのデータを読み/書き出来ないので、ICタグが所定位置に存する場合にICタグの読み/書きが出来るとする引用文献1に記載の技術を採用することができない。
また、同じく金属製のキャビネットのボックスに収納するタイプの物品管理装置において、商品の持ち出しを検知するのに、監視対象物品であるICタグ付きの物品をキャビネットのボックスに収納しているときは外部のリーダから読み/書き出来ず、ICタグ付き物品をキャビネットから持ち出すと収納部からの持ち出しが検知できるが、引用文献2のようにICタグは移動することなく物品のみを移動するものでないから、引用文献2に記載の技術を採用することは出来ない。
さらに、引用文献1,2に記載のものでは、物品を所定領域外に持ち出したか否かについては判断可能であるものの、キャビネットのボックスから取り出した物が所定領域外まで持ち出だされたものか、キャビネットのボックス内に戻されたのかまでは判別出来ないと言う問題がある。
この発明は、上記した問題点に着目してなされたものであって、物品がキャビネットの収納部から取り出された場合に確実にその旨を検知出来、物品が持ち出され所定領域内で物品を検出した後に、物品が検知されなくなった場合に、物品の所定領域外への不正持ち出しがなされたか、キャビネットに戻されたかを、精度良く判別し得る物品管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の物品管理装置は、複数の収納部を有し、各収納部にICタグ付きの物品を収納し、収納中は外部よりICタグのデータを読取不能な物品収納庫と、前記物品収納庫の周辺管理領域にデータ授受用の電波を送受する送受信部と、前記送受信部の通信動作を制御する制御部と、からなる物品管理装置において、前記送受信部は送信する電波の強弱を切り換える機能を備え、前記制御部は、前記送受信部より発射される電波の到達距離を近距離から遠距離に順次切り換える電波到達距離切換手段と、前記電波の到達距離の切換毎に、送出電波に応答して、ICタグからの受信状態を記憶する受信状態記憶手段と、前記受信状態記憶手段に記憶された受信状態の変化に基づきICタグの移動状態を判別するIC移動状態判別手段と、を備え、前記IC移動状態判別手段の判別に応じ、ICタグ付設物品の持出し有無を判別するようにしたことを特徴とする。
この発明の物品管理装置において、前記ICタグ移動状態判別手段は、受信中であったICタグよりの受信が不可となった場合に、それ以前に受信中のICタグが、時間の経過で、近距離受信、中距離受信、遠距離受信と受信位置が遠くなる方向に移動していることを判別することにより、そのICタグ付設物品の持出しを判別することができる。
また、この発明の物品管理装置において、前記ICタグ移動状態判別手段は、受信中であったICタグよりの受信が不可となった場合に、それ以前のICタグよりの受信が近距離受信であることを確認することにより、そのIC付設物品が前記物品収納庫の収納部に戻されたものと判別することができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、収納中は外部よりICタグデータを読み取り不能な物品収納庫より、物品が管理領域に取り出された場合に、送受信部よりの電波でICタグよりの受信データを受信することにより、物品の取り出しを確実に検知することができる。その上、送受信部からの送信電波の到達距離を近距離から遠距離に順次切り換えて管理領域に送出し,ICタグからの受信状態を記憶しており、受信中であった状態から受信不可になった場合に、それ以前の受信が、近距離、中距離、遠距離と受信位置が遠くなることを確認することにより、管理領域外への不正持ち出しを確実に検知することができる。
また、受信中であった状態から受信不可となった場合に、それ以前の受信が近距離受信であることを確認することにより、この場合の物品収納部よりの物品持ち出しは、その後再び元の物品収納部に戻されたものと判断することが出来る。
【0008】
つまり、所定領域内で物品を検出した後に、物品が検知されなくなった場合に、物品の所定領域外への不正持ち出しがなされたか、キャビネットに戻されたかを、精度良く判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態に係る物品管理装置の概略構成を示す図である。
【図2】同実施形態物品管理装置のキャビネット及び送受信部の正面図を示す図である。
【図3】同実施形態物品管理装置の処理動作を説明するためのフロー図である。
【図4】図3とともに、同実施形態物品管理装置の動作を説明するためのフロー図である。
【図5】同実施形態物品管理装置の制御装置の受信データ記憶例を示す図である。
【図6】キャビネットを使用した従来の一般的な物品管理装置の物品収納部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態により、この発明をさらに詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態物品管理装置の概略構成を示す図である。
【0011】
この実施形態物品管理装置は、物品を収納するキャビネット(物品収納庫)11と、送受信部12と、制御装置(CPU)13と、キャビネット11に収納される物品15に付設したICタグ14と、から構成されている。
【0012】
キャビネット11は、図2に示すように複数個のボックス(物品収納部)16−1,16−2,・・・、16−rからなり、各ボックス16−1、16−2、・・・、16−rには、それぞれ管理すべき物品15−1、15−2、・・・、15−rが収納される。物品15−1、15−2、・・・、15−rには、それぞれICタグ14−1、14−2、・・・、14−rが付設されている。ICタグ14−1、14−2、・・・、14−rには、それぞれ管理情報(物品コード、物品名、関連データが記憶されている。
【0013】
キャビネット11は、金属製であり、外部に対して電磁シールド性があり、ボックス16−1、16−2、・・・、16−rに収納されているICタグ14−1、14−2、・・・、14−rは、外部より読み/書きのアクセスをすることができない。このキャビネット11は、金属製でなくても、収納されているICタグ14−1,14−2・・・、14−rが金属板などで電磁シールドされており、外部より読み/書きのアクセスをすることが出来ないものであればよい
送受信部12は、アンテナ17と、アンテナ17を駆動する送受信回路18とから構成されている。この送受信部12は、キャビネット11の上部に設置されている。この送受信部12は、物品管理装置全体の設置状態に応じ、装置設置部の天井、またはキャビネット11の両側部のいずれかに設けても良い。
この実施形態の送受信部12の特徴は、アンテナ17より発射する電波の到達距離(通信可能距離)が、近距離(図1のa)、中距離(図1のb)、遠距離(図1のc)と、近い方より遠い方へ順に、繰り返し切り換えることである。この電波の発射、到達距離切り換え、通信領域内にICタグが存在する場合のデータの授受等は、制御装置13の制御により実行される。
制御装置13は、図3、図4に示すフロー図を実行するプログラムを記憶しており、このプログラムに従い送受信部12の通信制御、到達距離の切換え,ICタグ14−j(j=1〜r)とのデータ授受を制御する。
この実施形態物品管理装置では、送受信部12のアンテナ17から、キャビネット11前方の管理領域にICタグ14−jの読み/書きアクセス用の電波Eiを送出する。電波Eiは、到達距離を切り換えて、近距離電波E1、中距離電波E2、遠距離電波E3と順次送出され、さらに次に近距離電波E1、中距離電波E2、遠距離電波E3、・・・と繰り返し送出され、ICタグ14−jからの受信があるか否か判別し、管理領域にキャビネット11内の物品15−jが持ち出されていないか監視している。
監視中に、物品15−jがキャビネット11から取り出されると、近距離電波E1に対するICタグ14−jよりの受信を記憶し、以後中距離電波E2、遠距離電波E3の発射に対するICタグ14−jよりの受信があると、その受信を記憶する。その後電波Eiの発射に対し、ICタグ14−jよりの受信が無しになると、それより以前の記憶された受信状態を確認し、近距離、中距離、遠距離の受信を経て、受信無しとなった場合は、持ち出された物品が管理領域から、不正持ち出しされたものと判断し、一方、電波Eiの発射に対し、ICタグ14−jよりの受信が無しの場合に、その以前の受信状態が近距離受信である場合には、持ち出された物品が、キャビネット11の元のボックス16−jに戻されたものと判断するようにしている。
次に、この実施形態物品管理装置の具体的な処理動作を図3,図4に示すフロー図を参照して説明する。
この実施形態物品管理装置において、図3,図4に示す処理が開始されると、先ずステップST1において、変数iを1とする。ここでiは、送受信回路18よりアンテナ17を経て発射される電波Eの到達距離の切換次数を示す変数である。次に、ステップST2へ移行する。
ステップST2においては、送受信部12のアンテナ17からキャビネット11の前方の管理領域に向けて電波Eiが発射される。処理開始頭初のこの時点ではi=1であり、電波E1は近距離(図1のa点)到達の電波である。続いて、ステップST3へ移行する。
ステップST3においては、アンテナ17を通して受信有か否か判定する。電波Eiの到達距離領域内に物品15−jがキャビネット11のボックス16−jより取り出されていると、物品15−jのICタグ14−jより物品15−jに関するデータがアンテナ17を経て読み取られるので「受信有か」の判定YESでステップST7へ移行する。もっとも管理の通常時は、物品15−jがボックス16−jから取り出されることはなく、物品15−jが管理領域内に存在することがなく、ICタグ14−jからデータを受信することがない。この場合は、「受信有か」の判定NOでステップST4へ移行する。
ステップST4においては、フラグFが「1」であるか否か判定する。このフラグFは、装置が動作を開始してからICタグ14−jよりの受信有を示すフラグであり、処理開始頭初は、F=0であり、この時点では判定NOであり、ステップST5へ移行する。一方、処理継続中にそれまでICタグ14−jよりの受信有の場合は、F=1となっているので、その場合には判定YESでステップST12へ移行する。
ステップST5においては、変数iをインクリメントする。処理開始頭初の、この時点では、i=2となる。次にステップST6へ移行する。
ステップST6おいては、i>n(例えばn=3に設定)か否か判定する。この時点では、i=2なので判定NOでステップST2へ戻る。ステップST2においては、送受信部12のアンテナ17から管理領域に向けて電波Eiが発射される。この時点はi=2であり、電波E2は、中距離到達(図1のb点)の電波である。続いてステップST3へ移行する。
ステップST3においては、管理領域内のICタグ14−jより受信有か否か判定する。この時点で管理領域内の物品15−jが取り出されていず、ICタグ14−jより受信がない場合は、判定NOでステップST4へ移行する。
ステップST4においては、フラグFが「1」でないので、前回と同様判定NOで、ステップST5へ移行する。ステップST5においては、変数iをインクリメントする。この時点でi=3となる。続いてステップST6へ移行する。
ステップST6においては、i>n(n=3)か否か判定する。この時点では、i=3なので判定NOでステップST2に戻る。ステップST2においては、前回と同様にアンテナ17から電波Eiが発射される。この時点はi=3であり、電波E3は、遠距離到達(図1のc点)の電波である。続いてステップST3へ移行する。
ステップST3は、受信有か否か判定する。この時点においても、管理領域に物品が取り出されていないと、ICタグ14−jより受信がなされず、判定NOでステップST4へ移行する。前回と同様にステップST4の「フラグF=1か」の判定NOでステップST5へ移行する。
ステップST5においては、変数iをインクリメントする。この時点でi=4となる。続いてステップST6へ移行する。ステップST6においてi>n(n=3)か否か判定する。この時点でi=4なので、判定YESで、次にステップST1へ戻る。
ステップST1においては、処理開始時と同様にi=1とする。以後、管理領域内に物品15−jが取り出されない限り、ステップST3の「受信有か」の判定はNOであり、上記したと同様に、ステップST2〜ST6の処理を3回繰り返し、電波をE1→E2→E3と切換ながら、管理処理を継続する。電波の切換により、変数iが4となると、再度ステップST6の判定がYESとなり、処理はステップST1に戻り、変数iを1とする。
以後、管理領域内に物品15−jが取り出されず、ICタグ14−jよりの受信がなされないと、ステップST2〜ST6の処理を繰り返し継続する。
上記受信無しの状態での処理を継続した後に、管理領域の近距離領域Aに、物品15−jが取り出された場合を想定する。ステップST2おいて電波E1を発射した時に、この発射に対し,ICタグ14−jよりのデータがアンテナ17より受信される。
ステップST3において、「受信有か」の判定がYESであり、次にステップST7へ移行する。ステップST7においては、フラグFが「0」か否か判定する。この時点では、処理開始から初めての受信なので、フラグFは「0」のままであり、判定YESでステップST8へ移行する。ステップST8では、フラグFを「1」とする。上記想定と相違し、すでに受信有の状態でフラグFが「1」とされている場合は、ステップST7の判定NOで、ステップST8をスキップしてステップST9へ移行する。
ステップST9においては、今回受信した受信データR1を、制御装置13の記憶部に記憶する。図5に記憶部の受信データの記憶テーブルの一例を示す。次にステップST10へ移行する。
ステップST10においては、i=n(n=3)か否か判定する。この時点においてはi=1なので、判定NOで、次に、ステップST11へ移行する。ステップST11においては、変数iをインクリメントする。この時点でi=2となる。続いて、ステップST2へ戻る。
ステップST2においては、アンテナ17から管理領域に電波Eiが発射される。この時点ではi=2であるから電波E2、つまり、到達距離が中距離(図1のb点)の電波E2が発射される。次にステップST3へ移行する。
ステップST3においては、受信有か否か測定する。この時点では前の時点i=1
でICタグ14−jからデータを受信しており、物品15−jが、この時点でなお領域Aか、あるいは中距離到達点bまでの領域B内に存在している場合は、ICタグ14−jから受信するので、ステップST3の判定はYESで、次にステップST7へ移行する。一方、ここで受信無しの場合は、判定NOでステップST4へ移行する。
ステップST7において、フラグFが「0」か否かが判定される。前回のi=1の時点ですでにフラグF=1としているので、このステップST7での判定はNOで、次にステップST9へ移行する。
ステップST9においては、今回受信した受信データR2を制御装置13の記憶部に記憶する(図5参照)。次にステップST10へ移行する。
ステップST10においては、前回同様、i=n(n=3)か否か判定する。この時点において、i=2なので、判定NOで、ステップST11へ移行する。ステップST11においては、変数1をインクリメントする。この時点で、変数i=3となる。続いてステップST2へ戻る。
ステップST2においては、アンテナ17から管理領域に電波Eiが発射される。この時点ではi=3であるから、電波E3、つまり遠到達距離(図1のc点)の電波E3が発射される。次にステップST3へ移行する。
ステップST3においては、受信有か否か判定される。この時点で、前の時点i=1,i=2でICタグ14−jからデータを受信しており、物品15−jが、なお領域A、B、C内に存在している場合はICタグ14−jから受信するので、ステップST3の判定YESで、次にステップST7へ移行する、一方、ここで受信無しの場合は判定NOでステップST4へ移行する。
ステップST7においては、フラグFが「0」か否かが判定される。ここでは、すでにフラグF=1に設定されているので、判定NOで、次にステップST9へ移行する。
ステップST9においては、今回受信した受信データR3を制御装置13の記憶部に記憶する(図5参照)。次にステップST10へ移行する。
ステップST10においては、前回同様i=n(n=3)か否か判定する。この時点において、i=3なので判定YESでステップST1へ戻る。ステップST1においては、変数iを1に戻す。そして、以後上記したと同様の処理を繰り返し,ICタグ14−jから返信があった場合にのみ、その受信データRiを制御装置13の記憶部に記憶し、処理を継続する。
次に、ここで、ステップST3で受信有が判定され、その受信データRiが記憶された状態、つまり管理領域内に物品が持ち出された状態から、その後受信無しと判定され、つまり管理領域内から物品が消滅した場合を想定する。
ステップST2において、電波Eiを発射した後に、ステップST3において、受信有りかの判定NOで、次にステップST4へ移行する。ステップST4においては、フラグF=1か否か判定される。すでに前処理段階で受信有りの場合は、フラグF=1と設定されているので、判定YESで次にステップST12へ移行する。
ステップST12においては、今回発射の電波Eiよりも1回前に発射の電波Ei―1がE1か否かを判定する。記憶部に記憶されている受信データを参照して、1回前の発射電波がE1(データR1の受信)であれば判定YESで、次にステップST13へ移行する。一方、発射電波Ei―1が電波E1でない場合は、判定NOでステップST14へ移行する。
ステップST13においては、この時点における受信無しの判断は、前回の近距離領域到達の電波E1で受信有りを記憶していることより、管理領域に持ち出された物品が、今回の時点にボックス16−j内に戻されたものとして、元へ収納と判断し、その旨を記憶部に記憶する。そして処理を終了し、リターンする。ステップST14においては、1回前に発射の電波Ei―1がE3か否かを判定する。判定YESの場合は、ステップST5へ移行する。
ステップST14において、判定YESの場合は、前回の電波Ei−1(E3)の発射でICタグ14−jよりデータの受信があったことを意味し、今回の電波Eiの発射で電波Eiの受信無しの1回前に、電波E3の発射による受信データR3の受信であったことを意味する。
ステップST15においては、前々回の電波Ei―2の発射は、電波E2であったか否かを判定する。ステップST15において、判定YESの場合は、ステップST16へ移行する。ステップST15に於いて、判定YESは、前回の電波Ei―1の発射で電波E2(データR2)の受信がなされ、前々回の電波Ei―2の発射で電波E2の受信があったことを意味し、今回の電波Eiの発射で電波E1の受信無しの前が、電波E3の受信であり、さらに、その前が電波E2の受信であり、管理領域に取り出された物品が近距離→中距離→遠距離と移動して、さらに管理領域外に持ち出されたことを意味する。
ステップST16においては、以上より、物品が不正に持ち出されたと判断し、次にステップST17へ移行する。ステップST17においては、制御装置13の表示部に不正持ち出し警告の表示を行う。一方、ステップST14の判定NO、ステップST15の判定NOでは、処理を終了しリターンする。
この実施形態物品管理装置によれば、送受信部12のアンテナ17より、到達距離を近距離、中距離、遠距離と順次切り換えて電波をキャビネット11前方の所定領域に発射し、その過程でキャビネット11のボックス16−jから取り出された物品15−jが、アンテナ17から電波EiによるICタグ14−jのアクセスで検知された後、その後受信不可となった場合に、受信不可となる前の検知が近距離、中距離、遠距離と移動してゆくか、あるいは近距離領域での受信検知後、受信不可となったかの判別により、物品が不正持ち出しされたか、あるいはボックス内より物品持出し後、再度元のボックスに戻されたかの区別を確実に行うことが出来、不正持ち出しを精度良く管理することができる。
【符号の説明】
【0014】
11 キャビネット(物品収納庫)
12 送受信部
13 制御装置
14,14−j ICタグ
15,15−j 物品
16,16−j ボックス(物品収納部)
17 アンテナ
18 送受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収納部を有し、各収納部にICタグ付きの物品を収納し、収納中は外部よりICタグのデータを読取不能な物品収納庫と、前記物品収納庫の周辺管理領域にデータ授受用前記送受信部は送信する電波の強弱を切り換える機能を備え、
前記制御部は、前記送受信部より発射される電波の到達距離を近距離から遠距離に順次切り換える電波到達距離切換手段と、
前記電波の到達距離の切換毎に、送出電波に応答して、ICタグからの受信状態を記憶する受信状態記憶手段と、の電波を送受する送受信部と、前記送受信部の通信動作を制御する制御部と、からなる物品管理装置において、

前記受信状態記憶手段に記憶された受信状態の変化に基づきICタグの移動状態を判別するIC移動状態判別手段と、を備え
、前記IC移動状態判別手段の判別に応じ、ICタグ付設物品の持出し有無を判別するようにしたことを特徴とする物品管理装置。
【請求項2】
前記ICタグ移動状態判別手段は、受信中であったICタグよりの受信が不可となった場合に、それ以前に受信中のICタグが、時間の経過で、近距離受信、中距離受信、遠距離受信と受信位置が遠くなる方向に移動していることを判別することにより、そのICタグ付設物品の持出しを判別することを特徴とする請求項1記載の物品管理装置。
【請求項3】
前記ICタグ移動状態判別手段は、受信中であったICタグよりの受信が不可となった場合に、それ以前のICタグよりの受信が近距離受信であることを確認することにより、そのIC付設物品が前記物品収納庫の収納部に戻されたものと判別することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の物品管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−79605(P2011−79605A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231563(P2009−231563)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(302005581)株式会社ゴビ (4)
【Fターム(参考)】