物干し器
【課題】被干物を保持した状態での物干し枠体2の荷重に対する横架部材7の強度を効率的に得ることができるとともに、吊下部材5の姿勢変化を所定方向に沿って効率的に許容することのできる物干し器1を提供する。
【解決手段】被干物を保持する物干し枠体2の枠部間に亘らせた横架部材7に、吊下フック4a、4bを備える吊下部材5が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されている物干し器1において、横架部材7が縦長断面形状に構成されているとともに、吊下部材5が横架部材7に対して横軸芯X周りで揺動自在に枢着されている。
【解決手段】被干物を保持する物干し枠体2の枠部間に亘らせた横架部材7に、吊下フック4a、4bを備える吊下部材5が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されている物干し器1において、横架部材7が縦長断面形状に構成されているとともに、吊下部材5が横架部材7に対して横軸芯X周りで揺動自在に枢着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外や屋内において洗濯物などの被干物を干すために使用される物干し器に関し、詳しくは、被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されている物干し器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の物干し器は、横架部材に設けられた吊下部材の姿勢変化を所定方向に沿って許容することで、物干し竿などの吊下対象物の種別やそれの配置部位などへの対応性を向上させたものである。
【0003】
そして、従来、この種の物干し器としては、板材からなる横長断面形状の横架部材の長手方向中央部位に、吊下フックを備える吊棒(前記吊下部材の一例)が遊動状態で掛止固定されているとともに、吊棒を横架部材長手方向で倒動案内する案内溝を有する板材からなる横型断面形状の山形状の案内部材が、横架部材を補強する補強部材に兼用して横架部材に設けられたものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭53−046857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記横架部材が横長断面形状で構成されている上記の如き従来の物干し器では、以下の問題がある。
【0006】
(1)被干物を保持した状態での物干し枠体の荷重によって横架部材が撓み易いため、横架部材に変形や破損が生じ易い。また、横架部材の撓みにより吊下部材の姿勢変化を許容する連結構造に支障が生じて吊下部材の姿勢変化が不十分になる虞もある。
【0007】
したがって、横架部材の撓みを抑止するための補強部材を設けたり、横架部材の質量を増大したりする必要が生じ、製作コストが嵩んでしまう。
【0008】
(2)吊下部材の長手方向において横架部材と吊下部材との吊下部材長手方向での干渉長さが短いため、吊下部材の姿勢変化を所定方向に沿って許容する連結構造を構成するのが難しい。
【0009】
したがって、横架部材に加えて姿勢変化許容用の案内部材などの別部材を設けたりする必要が生じ、製作コストが嵩んだり、連結構造が複雑化したりする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の実情に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、被干物を保持した状態での物干し枠体の荷重に対する横架部材の強度を効率的に得ることができるとともに、吊下部材の姿勢変化を所定方向に沿って効率的に許容することのできる物干し器を提供する点にある。
【0011】
本発明の第1特徴構成は、物干し器に係り、その特徴は、
被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されている物干し器であって、
前記横架部材が縦長断面形状に構成されているとともに、前記吊下部材が前記横架部材に対して横軸芯周りで揺動自在に枢着されている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、横架部材が縦断面形状に構成されているから、上下方向での引張荷重に対する強度を効率的に得ることができる。また、縦長断面形状の横架部材に対して前記吊下部材が横軸芯周りで揺動自在に枢着されているから、横架部材に対する吊下部材の姿勢変化をシンプルな構造でもって効率的に許容することができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、物干し器に係り、その特徴は、
被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されているとともに、前記物干し枠体が、前記横架部材を挟み込む状態で上方側に折り畳み可能に構成されている物干し器であって、
前記横架部材が縦長断面形状に構成されているとともに、前記吊下部材が前記横架部材に対して横軸芯周りで揺動自在に枢着されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、横架部材が縦断面形状に構成されているから、上下方向での引張荷重に対する強度を効率的に得ることができる。また、縦長断面形状の横架部材に対して前記吊下部材が横軸芯周りで揺動自在に枢着されているから、横架部材に対する吊下部材の姿勢変化をシンプルな構造でもって効率的に許容することができる。
【0015】
しかも、横架部材の横幅を極力小さくすることができるから、その分、物干し枠体の折り畳み時の嵩幅を小さくすることができ、これにより、不使用時の収納性を効果的に向上させることができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記吊下部材を揺動軸芯周りの所定姿勢に保持する姿勢保持手段が設けられているとともに、
前記姿勢保持手段を構成するのに、
前記横架部材には、前記吊下部材の揺動方向で間隔を空けた各所定位置に複数の被係止部が一体形成され、
前記吊下部材には、前記複数の被係止部の各々に選択的に係脱可能な姿勢保持用の係止部材が備えられている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、横架部材に一体形成された被係止部と吊下部材に備えられた係止部材とをもって前記姿勢保持手段を構成することができるから、例えば、被係止部を有する別部材を横架部材に設ける場合に比べ、部品点数の少量化を図ることができて、製作コストの低廉化を効果的に達成することができる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記被係止部が、前記係止部材の上方からの進入で係止状態を現出するように上方向きに開口する形態で形成された被係止凹部から構成されているとともに、
前記吊下部材には、前記係止部材の横移動を規制する状態で、且つ、係止部材の係脱操作用の縦移動を所定範囲内で許容する状態で係止部材を保持する縦長形状の係止部材保持孔が形成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、前記係止部材と前記被係止凹部との係止状態を現出して吊下部材の姿勢を保持するための姿勢保持操作として、前記係止部材保持孔に沿って前記係止部材を下方に移動させる操作(下動操作)を行うことになる。
【0020】
したがって、吊下部材の姿勢保持操作に係止部材に生ずる重力を利用することができるから、その分、姿勢保持操作の操作性を効率的に向上させることができる。
【0021】
また、係止部材と被係止凹部とが係止状態から離脱するのを係止部材に生じる重力を利用して抑止することができるから、姿勢保持状態を効果的に維持することができる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記係止部材保持孔の横幅寸法が、前記係止部材の自重による下方移動を許容する寸法で構成されているとともに、
前記被係止凹部の開口寸法が、前記係止部材の自重による上方からの進入移動を許容する寸法で構成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、吊下部材の姿勢を保持するための姿勢保持操作のうち、前記下動操作を自動的に行うことができるから、その分、姿勢保持操作を簡略化することができて、姿勢保持操作の操作性を一層向上させることができる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、第4又は第5特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記吊下部材が前記横架部材の長手方向中央部位に枢着されているとともに、
前記横架部材の長手方向中央部位をそれに隣接する両脇部位よりも縦寸法の大きな断面形状で構成することで、前記吊下部材の枢着部位を中心とする弧状の膨出部が横架部材の上面部に形成され、
前記複数の被係止凹部の各々が、前記係止部材保持孔の下端部に前記係止部材が位置するときに係止部材との係止状態を現出するように、前記弧状の膨出部に切欠き形成されている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、使用時において横架部材の長手方向中央部位に吊下部材による上方側への引張荷重が生じ、且つ、横架部材の長手方向両端部位に物干し枠体による下方側への引張荷重が生じる関係上、横架部材に作用する曲げモーメント荷重が、長手方向中央部位と長手方向両端部位との3点が特に大きくなることに対し、前記横架部材の長手方向中間部位をそれに隣接する両脇部位よりも縦寸法の大きな断面形状で構成するから、曲げモーメント荷重が大きくなる3点に含まれる長手方向中央部位の強度を高めることができ、これにより、上下方向での引張荷重に対する横架部材の強度を効果的に得ることができる。
【0026】
しかも、横架部材の強度を高めるための弧状の膨出部を活用する形態で、複数の被係止凹部の夫々について係止部材保持孔の下端部に前記係止部材が位置するときに係止部材と被係止凹部との係止状態を現出するから、吊下部材の姿勢の相違によって姿勢保持力に差異が生じるのを効率的に抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第1実施形態]
図1〜3は、屋内外において洗濯物などの被干物を干すために使用される合成樹脂製の物干し器1を示し、この物干し器1は、被干物を保持する物干し枠体2の枠部間に亘らせた横架部材7に、吊下フック4a、4bを備える吊下部材5が所定方向に沿って姿勢変更自在な状態で連結して構成されている。また、この物干し器1には、吊下部材5を前記姿勢変更範囲において所定姿勢に保持する姿勢保持手段6が設けられている。
【0028】
前記物干し枠体2は、図3に示すように、後述する物干し姿勢において上面視による輪郭形状が略長方形状となる形態で構成されている。当該物干し枠体2の枠体長辺部2Aの各々における内側近傍位置には、タオル等の比較的幅広の洗濯物を枠体長片部2Aに架ける時に使用する洗濯物差込空間を枠体長片部2Aとの間に形成する仕切片部2Cが形成されている。なお、2aは、枠体長片部2Aに架けられた洗濯物を枠体長片部2Aとで挟持するクリップ部である。
【0029】
また、物干し枠体2の枠体短片部2B及び前記仕切片部2Cの内周面の所定箇所には、被干物を脱着自在に吊り下げ支持するピンチ8を取り付けるためのピンチ取り付け孔2dを有する複数のピンチ取り付け片2bが突出形成されている。当該ピンチ取り付け片2bの各々には、図2に示すように、ピンチ吊下部材9を介してピンチ8の各々が遊着されている。
【0030】
図2、図3に示すように、物干し枠体2は、略コの字状の一対の分割枠体3A、3Bの開口端部どうしを一対の連結部材10と横架部材7とで連結することにより、分割枠体3A、3Bの各々が回動軸芯Xa、Xb周りの約90°の範囲で回動する形態で、下方側への屈曲が規制された状態で同一平面上に拡形した物干し姿勢(図2の実線表示)と、横架部材3を挟み込むように上方側に折り畳まれた収納姿勢(図3の一点鎖線表示)とに姿勢変更自在に構成されている。
【0031】
分割枠体3A、3Bの枠体長辺部形成片部3aの端部には、図4に示すように、連結部材10の端部を挿入した状態で連結部材10に対して軸芯Xa、Xb周りで回動自在に枢支連結するため連結凹部3dが構成されている。この連結凹部3dには、連結部材10の両端部に形成された被連結孔部10aに回動自在に軸着する連結ピン部3eが突出形成されている。
【0032】
枠体長辺部形成片部3aどうしの連結構造は、図4に示すように、連結部材10の長手方向端面に形成された第1規制面部10bと枠体長辺部形成片部3aの連結凹部3dの底面3fとの接当により、枠体長辺部形成片部3aが前記物干し姿勢を構成する開き姿勢から下方側に回動するのが規制され(図4の実線表示)、且つ、連結部材10の上端面に形成された第2規制面部10cと枠体長辺部形成片部3aの連結凹部3dの底面3fとの接当により、枠体長辺部形成片部3aが前記収納姿勢を構成する閉じ姿勢から上方側に回動するのが規制される(図4の点線表示)ように構成されている。
【0033】
また、図5に示すように、分割枠体3A、3Bの仕切片部形成片部3cの端部には、横架部材7の長手方向両端部に形成した被連結片部7Bに対して軸芯Xa、Xb周りで回動自在に枢支連結するための連結部3gが形成されている。前記連結部3gには、内向きに突出する連結ピン部3hと、その連結ピン部3hの外周面に突出形成した回動範囲規制片3jとが備えられている。
【0034】
前記横架部材7の被連結片部7Bは、図5、図7に示すように、各仕切片部形成片部3cの連結ピン部3hが係入するための一対の被連結孔7aを部材幅方向両外側に有する形態で、横架部材7における基部7Aの長手方向両端部の下方部位の各々に突出形成されている。
【0035】
また、前記被連結片部7Bには、分割枠体3A、3Bの各々が開き姿勢にあるときに各仕切片部形成片部3cの回動範囲規制片3jと接当して分割枠体3A、3Bの下方側への回動を規制する第1受止片部7b(図5(a)を参照)と、分割枠体3A、3Bの各々が閉じ姿勢にあるときに回動範囲規制片3jと接当して分割枠体3A、3Bの上方側への回動を規制する第2受止片部7c(図5(b)を参照とが備えられている。
【0036】
前記横架部材7は、図1、図3、図6、図7に示すように、それの基部7Aが縦長断面形状の略薄帯状に構成されている。当該基部7Aの長手方向中間部位の下方側には、前記吊下部材5を横軸芯X周りで揺動自在に枢支連結するための取り付け部材11を軸着するための被取り付け孔7dが貫通形成されている。
【0037】
この被取り付け孔7dの周縁部には、吊下部材5を揺動案内するための環状の揺動案内凹部7Dが設けられている。この揺動案内凹部7Dには、吊下部材15の揺動範囲を規制するための第1、第2受止面部7e、7fが備えられている。
【0038】
また、前記基部7Aの長手方向中間部位は、それに隣接する両脇部位よりも縦寸法の大きな断面形状で構成されている。そして、基部7Aの長手方向中間部位の上面部には、横軸芯Xを中心とする弧状の膨出部7gが形成されている。
【0039】
横架部材7の基部7Aにおける吊下部材5の揺動方向で間隔を空けた各所定位置には、後述する係止部材12に対する複数の被係止凹部(被係止部の一例)が切欠き形成(一体成形の一例)されており、本例では、吊下部材5を図1に示す垂直姿勢に保持するための第1被係止凹部7Eと、吊下部材5を図11に示す約45度傾斜した斜め姿勢に保持するための第2係止凹部7Fとが形成されている。
【0040】
前記第1、第2被係止凹部7E、7Fの各々は、横軸芯Xを中心とする弧状膨出部7gに切欠き形成されており、後述する吊下部材5の係止部材保持孔5bの下端部に係止部材12が位置するときに、係止部材12と被係止凹部との係止状態を現出する。
【0041】
各被係止凹部7E、7Fは、係止部材12の円筒状部12aの上方からの進入で係止状態を現出するように上方向きに開口する形態で略半円状に構成されている。当該被係止凹部7E、7Fの開口寸法は、係止部材5の自重によって係止部材12の円筒状部12aが上方から進入移動可能な開口寸法(具体的には、係止部材12の円筒状部12aの直径w2よりも僅かに大なる開口寸法)で構成されている。
【0042】
なお、横架部材7の基部7Aの下面には、ピンチ吊下部材9を介してピンチ8を取り付けるための複数のピンチ取り付け片7hが形成されている。
【0043】
前記吊下部材5の上部には、図6、図8に示すように、吊下フック4a、4bを備えるフック部材4の下端に形成された連結ピン部4cを縦軸芯(吊下部材5の中心軸芯)Y周りで回動自在に軸着するための被連結孔部5aが形成されている。
【0044】
また、吊下部材5の略下半分の領域は、横架部材7の基部7Aを挿入状態で配置するための挿入空間を対向面間に形成する一対の側片部5A、5Aから構成されている。これら一対の側片部5A、5Aの下部の各々には、挿入空間内に配置した横架部材7の基部7Aに対し取り付け部材11によって横軸芯X周りで揺動自在に枢支連結するための被取り付け孔5cが貫通形成されている。
【0045】
前記取り付け部材11は、図6に示すように、吊下部材5の被取り付け孔5cに挿入配置される円筒状部11aと、吊下部材5の外面における被取り付け孔5cの周縁部に接当する形態で円筒状部11aの抜け落ちを抑止する一対の環状縁部11bとから構成されている。当該取り付け部材11は、横軸芯X方向から係合する二つの分割部材11A、11Bの係合体をもって構成されている。
【0046】
前記吊下部材5の各側片部5Aの内面における被取り付け孔5cの周縁部には、図8に示すように、横架部材7の揺動案内凹部7Dに嵌り込む揺動案内凸部5eが突出形成されている。当該揺動案内凸部5eには、横架部材7の第1、第2受止面部7e、7fとの接当により吊下部材5の揺動範囲を規制する揺動規制片5fが形成されている。
【0047】
前記吊下部材5の上下中間部位(詳しくは、一対の側片部5A、5Aの上部の各々)には、係止部材12の横移動を規制する状態で、且つ、係止部材12の係脱操作用の縦移動を所定範囲内で許容する状態で係止部材12を保持する縦長形状の係止部材保持孔5bが貫通形成されている。
【0048】
前記係止部材12は、前述した取り付け部材11と同様の構成であり、図6に示すように、係止部材保持孔5bに挿入配置される円筒状部12aと、吊下部材5の外面における係止部材保持孔5bの周縁部に接当する形態で円筒状部12aの抜け落ちを抑止する一対の環状縁部12bとから構成されている。当該係止部材12は、横軸芯X方向から係合する二つの分割部材12A、12Bの係合体をもって構成されている。
【0049】
前記係止部材保持孔5bの横幅寸法w1は、係止部材12の自重による下方移動を許容する寸法で構成されており、具体的には、係止部材12の円筒状部12aの直径寸法w2よりも僅かに大なる横幅寸法で構成されている。
【0050】
なお、5dは、物干し器1を使用する時に吊下部材5を掴み持つための掴持孔である。
【0051】
つまり、この物干し器1は、吊下部材5の係止部材保持孔5bの内部で係止部材12を縦方向に移動することで、係止部材12の円筒状部12aが横架部材7の被係止凹部7E、7Fに係止した係止状態を現出して、所定の傾斜角度で吊下部材5の姿勢を保持することができる。
【0052】
例えば、吊下部材5が鉛直姿勢に保持された状態(図9(a)の状態)から吊下部材5が斜め姿勢に保持された状態(図9(d)の状態)に変更する場合の手順ついて詳しく説明する。
【0053】
まず、図9の(a)の状態では、係止部材12の円筒状部12aと横架部材7の被係止凹部7Eとが係止状態にあるため、図9(b)に示すように、係止部材12を係止部材保持孔5b内で上動させて前記係止状態を解除する。このとき、吊下部材5は、前述した第1受止面部7eと揺動規制片5fとの接当により被係止凹部7F側とは反対側への揺動が規制されている。
【0054】
次に、図9(c)に示すように、吊下部材5を被係止凹部7Fの側に揺動させる。吊下部材5が、係止部材12と被係止凹部7Fとが係止可能な位置まで揺動したとき、前述した第2受止面部7fと揺動規制片5fとの接当により吊下部材5の揺動が規制される。
【0055】
そして、係止部材12を離すと、係止部材12が自重により係止部材保持孔5bの下端部まで自動的に下動し、係止部材12の円筒状部12aと横架部材7の被係止凹部7Eとが係止状態となる(図9(d)の状態)。
【0056】
なお、吊下部材5が斜め姿勢に保持された状態(図9(d)の状態)から吊下部材5が鉛直姿勢に保持された状態(図9(a)の状態)に変更する場合の手順ついても同様である。
【0057】
前記フック部材4には、縦軸芯Y上に位置する第1吊下フック4aと、縦軸芯Yから横方向に位相ズレし、且つ、第1吊下フック4aよりも下方に位相ズレした第2吊下フック4bとが備えられている。
【0058】
前記第1吊下フック4aは、図1に示すように、主として吊下部材5を鉛直姿勢にした状態で物干し竿13に吊り下げる状態で使用する時に用いられる。また、第1吊下フック4aは、図9に示すように、タンス等の引出し14の上部に引っ掛ける状態で使用する時にも用いられる。この場合、物干し枠体2の外周面が引出し14の正面板14aに当て付けられる形態で物干し枠体2が略水平の姿勢に保持される。
【0059】
前記第2吊下フック4bは、図10に示すように、吊下部材5を鉛直姿勢にした状態で内壁面Wよりも室内側に突出配置されたタオルバー15などに吊り下げる状態で使用する時に用いられる。この場合も、物干し枠体2の外周面が内壁面Wに当て付けられる形態で物干し枠体2が略水平の姿勢に保持される。なお、4dは、物干し器1を使用する時にフック部材4を掴み持つための掴持孔である。
【0060】
また、本実施形態において、係止部材12、被係止凹部7E、7Fは、前記姿勢保持手段6を構成する。
【0061】
[その他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、吊下部材5が、略鉛直姿勢と約45度傾斜した斜め姿勢の2段階の姿勢で姿勢保持可能に構成されている場合を例に示したが、例えば、略鉛直姿勢と複数の斜め姿勢の3段階以上の姿勢で姿勢保持可能に構成されていてもよい。
【0062】
つまり、例えば、図12に示すように、横軸芯Xから傾斜角度が第2係止凹部7Fとは異なる部位に第3係止凹部7Gが形成されていてもよい。
【0063】
(2)前述の実施形態では、物干し枠体2が横架部材7を挟み込む状態で上方側に折り畳み可能に構成されている物干し器1を例に示したが、物干し枠体が折り畳み不能な一体成形品から構成されている物干し器であってもよい。
【0064】
(3)物干し枠体2の折り畳み形態は、前述の実施形態で示した如き、2つの分割枠体3A、3Bから構成されているものに限らず、3つ以上の分割枠体から構成されていてもよい。
【0065】
(4)前述の実施形態では、姿勢保持手段6の具体的構成は、前述の実施形態で示した如き吊下部材5に備えられた係止部材12と横架部材7に切欠き形成された被係止凹部7E、7Fから構成されたものに限らず種々の構成変更が可能であり、例えば、吊下部材5に係止凹部を形成するとともに、この係止凹部に所定姿勢で係合する被係合凸部を横架部材7に一体成形する構成などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る物干し器の使用状態を示す側面図
【図2】本発明に係る物干し器の正面図
【図3】本発明に係る物干し器の説明斜視図
【図4】枠体長辺部の連結機構を示す説明断面図
【図5】仕切片部の連結機構を示す説明断面図(図3のB−B説明断面図)
【図6】図1のA−A説明断面図
【図7】横架部材の側面図
【図8】吊下部材の説明断面図(図8のC−C説明断面図)
【図9】姿勢保持手段の操作説明図
【図10】本発明に係る物干し器の使用状態を示す側面図
【図11】本発明に係る物干し器の使用状態を示す側面図
【図12】本発明に係る物干し器の別実施形態を示す部分側面図
【符号の説明】
【0067】
1 物干し器
2 物干し枠体
4a、4b 吊下フック
5 吊下部材
5b 係止部材保持孔
6 姿勢保持手段
7 横架部材
7E、7F、7G 被係止凹部(被係止部)
7g 膨出部
12 係止部材
X 横軸芯
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外や屋内において洗濯物などの被干物を干すために使用される物干し器に関し、詳しくは、被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されている物干し器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の物干し器は、横架部材に設けられた吊下部材の姿勢変化を所定方向に沿って許容することで、物干し竿などの吊下対象物の種別やそれの配置部位などへの対応性を向上させたものである。
【0003】
そして、従来、この種の物干し器としては、板材からなる横長断面形状の横架部材の長手方向中央部位に、吊下フックを備える吊棒(前記吊下部材の一例)が遊動状態で掛止固定されているとともに、吊棒を横架部材長手方向で倒動案内する案内溝を有する板材からなる横型断面形状の山形状の案内部材が、横架部材を補強する補強部材に兼用して横架部材に設けられたものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭53−046857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記横架部材が横長断面形状で構成されている上記の如き従来の物干し器では、以下の問題がある。
【0006】
(1)被干物を保持した状態での物干し枠体の荷重によって横架部材が撓み易いため、横架部材に変形や破損が生じ易い。また、横架部材の撓みにより吊下部材の姿勢変化を許容する連結構造に支障が生じて吊下部材の姿勢変化が不十分になる虞もある。
【0007】
したがって、横架部材の撓みを抑止するための補強部材を設けたり、横架部材の質量を増大したりする必要が生じ、製作コストが嵩んでしまう。
【0008】
(2)吊下部材の長手方向において横架部材と吊下部材との吊下部材長手方向での干渉長さが短いため、吊下部材の姿勢変化を所定方向に沿って許容する連結構造を構成するのが難しい。
【0009】
したがって、横架部材に加えて姿勢変化許容用の案内部材などの別部材を設けたりする必要が生じ、製作コストが嵩んだり、連結構造が複雑化したりする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の実情に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、被干物を保持した状態での物干し枠体の荷重に対する横架部材の強度を効率的に得ることができるとともに、吊下部材の姿勢変化を所定方向に沿って効率的に許容することのできる物干し器を提供する点にある。
【0011】
本発明の第1特徴構成は、物干し器に係り、その特徴は、
被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されている物干し器であって、
前記横架部材が縦長断面形状に構成されているとともに、前記吊下部材が前記横架部材に対して横軸芯周りで揺動自在に枢着されている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、横架部材が縦断面形状に構成されているから、上下方向での引張荷重に対する強度を効率的に得ることができる。また、縦長断面形状の横架部材に対して前記吊下部材が横軸芯周りで揺動自在に枢着されているから、横架部材に対する吊下部材の姿勢変化をシンプルな構造でもって効率的に許容することができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、物干し器に係り、その特徴は、
被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されているとともに、前記物干し枠体が、前記横架部材を挟み込む状態で上方側に折り畳み可能に構成されている物干し器であって、
前記横架部材が縦長断面形状に構成されているとともに、前記吊下部材が前記横架部材に対して横軸芯周りで揺動自在に枢着されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、横架部材が縦断面形状に構成されているから、上下方向での引張荷重に対する強度を効率的に得ることができる。また、縦長断面形状の横架部材に対して前記吊下部材が横軸芯周りで揺動自在に枢着されているから、横架部材に対する吊下部材の姿勢変化をシンプルな構造でもって効率的に許容することができる。
【0015】
しかも、横架部材の横幅を極力小さくすることができるから、その分、物干し枠体の折り畳み時の嵩幅を小さくすることができ、これにより、不使用時の収納性を効果的に向上させることができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記吊下部材を揺動軸芯周りの所定姿勢に保持する姿勢保持手段が設けられているとともに、
前記姿勢保持手段を構成するのに、
前記横架部材には、前記吊下部材の揺動方向で間隔を空けた各所定位置に複数の被係止部が一体形成され、
前記吊下部材には、前記複数の被係止部の各々に選択的に係脱可能な姿勢保持用の係止部材が備えられている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、横架部材に一体形成された被係止部と吊下部材に備えられた係止部材とをもって前記姿勢保持手段を構成することができるから、例えば、被係止部を有する別部材を横架部材に設ける場合に比べ、部品点数の少量化を図ることができて、製作コストの低廉化を効果的に達成することができる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記被係止部が、前記係止部材の上方からの進入で係止状態を現出するように上方向きに開口する形態で形成された被係止凹部から構成されているとともに、
前記吊下部材には、前記係止部材の横移動を規制する状態で、且つ、係止部材の係脱操作用の縦移動を所定範囲内で許容する状態で係止部材を保持する縦長形状の係止部材保持孔が形成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、前記係止部材と前記被係止凹部との係止状態を現出して吊下部材の姿勢を保持するための姿勢保持操作として、前記係止部材保持孔に沿って前記係止部材を下方に移動させる操作(下動操作)を行うことになる。
【0020】
したがって、吊下部材の姿勢保持操作に係止部材に生ずる重力を利用することができるから、その分、姿勢保持操作の操作性を効率的に向上させることができる。
【0021】
また、係止部材と被係止凹部とが係止状態から離脱するのを係止部材に生じる重力を利用して抑止することができるから、姿勢保持状態を効果的に維持することができる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記係止部材保持孔の横幅寸法が、前記係止部材の自重による下方移動を許容する寸法で構成されているとともに、
前記被係止凹部の開口寸法が、前記係止部材の自重による上方からの進入移動を許容する寸法で構成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、吊下部材の姿勢を保持するための姿勢保持操作のうち、前記下動操作を自動的に行うことができるから、その分、姿勢保持操作を簡略化することができて、姿勢保持操作の操作性を一層向上させることができる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、第4又は第5特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記吊下部材が前記横架部材の長手方向中央部位に枢着されているとともに、
前記横架部材の長手方向中央部位をそれに隣接する両脇部位よりも縦寸法の大きな断面形状で構成することで、前記吊下部材の枢着部位を中心とする弧状の膨出部が横架部材の上面部に形成され、
前記複数の被係止凹部の各々が、前記係止部材保持孔の下端部に前記係止部材が位置するときに係止部材との係止状態を現出するように、前記弧状の膨出部に切欠き形成されている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、使用時において横架部材の長手方向中央部位に吊下部材による上方側への引張荷重が生じ、且つ、横架部材の長手方向両端部位に物干し枠体による下方側への引張荷重が生じる関係上、横架部材に作用する曲げモーメント荷重が、長手方向中央部位と長手方向両端部位との3点が特に大きくなることに対し、前記横架部材の長手方向中間部位をそれに隣接する両脇部位よりも縦寸法の大きな断面形状で構成するから、曲げモーメント荷重が大きくなる3点に含まれる長手方向中央部位の強度を高めることができ、これにより、上下方向での引張荷重に対する横架部材の強度を効果的に得ることができる。
【0026】
しかも、横架部材の強度を高めるための弧状の膨出部を活用する形態で、複数の被係止凹部の夫々について係止部材保持孔の下端部に前記係止部材が位置するときに係止部材と被係止凹部との係止状態を現出するから、吊下部材の姿勢の相違によって姿勢保持力に差異が生じるのを効率的に抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第1実施形態]
図1〜3は、屋内外において洗濯物などの被干物を干すために使用される合成樹脂製の物干し器1を示し、この物干し器1は、被干物を保持する物干し枠体2の枠部間に亘らせた横架部材7に、吊下フック4a、4bを備える吊下部材5が所定方向に沿って姿勢変更自在な状態で連結して構成されている。また、この物干し器1には、吊下部材5を前記姿勢変更範囲において所定姿勢に保持する姿勢保持手段6が設けられている。
【0028】
前記物干し枠体2は、図3に示すように、後述する物干し姿勢において上面視による輪郭形状が略長方形状となる形態で構成されている。当該物干し枠体2の枠体長辺部2Aの各々における内側近傍位置には、タオル等の比較的幅広の洗濯物を枠体長片部2Aに架ける時に使用する洗濯物差込空間を枠体長片部2Aとの間に形成する仕切片部2Cが形成されている。なお、2aは、枠体長片部2Aに架けられた洗濯物を枠体長片部2Aとで挟持するクリップ部である。
【0029】
また、物干し枠体2の枠体短片部2B及び前記仕切片部2Cの内周面の所定箇所には、被干物を脱着自在に吊り下げ支持するピンチ8を取り付けるためのピンチ取り付け孔2dを有する複数のピンチ取り付け片2bが突出形成されている。当該ピンチ取り付け片2bの各々には、図2に示すように、ピンチ吊下部材9を介してピンチ8の各々が遊着されている。
【0030】
図2、図3に示すように、物干し枠体2は、略コの字状の一対の分割枠体3A、3Bの開口端部どうしを一対の連結部材10と横架部材7とで連結することにより、分割枠体3A、3Bの各々が回動軸芯Xa、Xb周りの約90°の範囲で回動する形態で、下方側への屈曲が規制された状態で同一平面上に拡形した物干し姿勢(図2の実線表示)と、横架部材3を挟み込むように上方側に折り畳まれた収納姿勢(図3の一点鎖線表示)とに姿勢変更自在に構成されている。
【0031】
分割枠体3A、3Bの枠体長辺部形成片部3aの端部には、図4に示すように、連結部材10の端部を挿入した状態で連結部材10に対して軸芯Xa、Xb周りで回動自在に枢支連結するため連結凹部3dが構成されている。この連結凹部3dには、連結部材10の両端部に形成された被連結孔部10aに回動自在に軸着する連結ピン部3eが突出形成されている。
【0032】
枠体長辺部形成片部3aどうしの連結構造は、図4に示すように、連結部材10の長手方向端面に形成された第1規制面部10bと枠体長辺部形成片部3aの連結凹部3dの底面3fとの接当により、枠体長辺部形成片部3aが前記物干し姿勢を構成する開き姿勢から下方側に回動するのが規制され(図4の実線表示)、且つ、連結部材10の上端面に形成された第2規制面部10cと枠体長辺部形成片部3aの連結凹部3dの底面3fとの接当により、枠体長辺部形成片部3aが前記収納姿勢を構成する閉じ姿勢から上方側に回動するのが規制される(図4の点線表示)ように構成されている。
【0033】
また、図5に示すように、分割枠体3A、3Bの仕切片部形成片部3cの端部には、横架部材7の長手方向両端部に形成した被連結片部7Bに対して軸芯Xa、Xb周りで回動自在に枢支連結するための連結部3gが形成されている。前記連結部3gには、内向きに突出する連結ピン部3hと、その連結ピン部3hの外周面に突出形成した回動範囲規制片3jとが備えられている。
【0034】
前記横架部材7の被連結片部7Bは、図5、図7に示すように、各仕切片部形成片部3cの連結ピン部3hが係入するための一対の被連結孔7aを部材幅方向両外側に有する形態で、横架部材7における基部7Aの長手方向両端部の下方部位の各々に突出形成されている。
【0035】
また、前記被連結片部7Bには、分割枠体3A、3Bの各々が開き姿勢にあるときに各仕切片部形成片部3cの回動範囲規制片3jと接当して分割枠体3A、3Bの下方側への回動を規制する第1受止片部7b(図5(a)を参照)と、分割枠体3A、3Bの各々が閉じ姿勢にあるときに回動範囲規制片3jと接当して分割枠体3A、3Bの上方側への回動を規制する第2受止片部7c(図5(b)を参照とが備えられている。
【0036】
前記横架部材7は、図1、図3、図6、図7に示すように、それの基部7Aが縦長断面形状の略薄帯状に構成されている。当該基部7Aの長手方向中間部位の下方側には、前記吊下部材5を横軸芯X周りで揺動自在に枢支連結するための取り付け部材11を軸着するための被取り付け孔7dが貫通形成されている。
【0037】
この被取り付け孔7dの周縁部には、吊下部材5を揺動案内するための環状の揺動案内凹部7Dが設けられている。この揺動案内凹部7Dには、吊下部材15の揺動範囲を規制するための第1、第2受止面部7e、7fが備えられている。
【0038】
また、前記基部7Aの長手方向中間部位は、それに隣接する両脇部位よりも縦寸法の大きな断面形状で構成されている。そして、基部7Aの長手方向中間部位の上面部には、横軸芯Xを中心とする弧状の膨出部7gが形成されている。
【0039】
横架部材7の基部7Aにおける吊下部材5の揺動方向で間隔を空けた各所定位置には、後述する係止部材12に対する複数の被係止凹部(被係止部の一例)が切欠き形成(一体成形の一例)されており、本例では、吊下部材5を図1に示す垂直姿勢に保持するための第1被係止凹部7Eと、吊下部材5を図11に示す約45度傾斜した斜め姿勢に保持するための第2係止凹部7Fとが形成されている。
【0040】
前記第1、第2被係止凹部7E、7Fの各々は、横軸芯Xを中心とする弧状膨出部7gに切欠き形成されており、後述する吊下部材5の係止部材保持孔5bの下端部に係止部材12が位置するときに、係止部材12と被係止凹部との係止状態を現出する。
【0041】
各被係止凹部7E、7Fは、係止部材12の円筒状部12aの上方からの進入で係止状態を現出するように上方向きに開口する形態で略半円状に構成されている。当該被係止凹部7E、7Fの開口寸法は、係止部材5の自重によって係止部材12の円筒状部12aが上方から進入移動可能な開口寸法(具体的には、係止部材12の円筒状部12aの直径w2よりも僅かに大なる開口寸法)で構成されている。
【0042】
なお、横架部材7の基部7Aの下面には、ピンチ吊下部材9を介してピンチ8を取り付けるための複数のピンチ取り付け片7hが形成されている。
【0043】
前記吊下部材5の上部には、図6、図8に示すように、吊下フック4a、4bを備えるフック部材4の下端に形成された連結ピン部4cを縦軸芯(吊下部材5の中心軸芯)Y周りで回動自在に軸着するための被連結孔部5aが形成されている。
【0044】
また、吊下部材5の略下半分の領域は、横架部材7の基部7Aを挿入状態で配置するための挿入空間を対向面間に形成する一対の側片部5A、5Aから構成されている。これら一対の側片部5A、5Aの下部の各々には、挿入空間内に配置した横架部材7の基部7Aに対し取り付け部材11によって横軸芯X周りで揺動自在に枢支連結するための被取り付け孔5cが貫通形成されている。
【0045】
前記取り付け部材11は、図6に示すように、吊下部材5の被取り付け孔5cに挿入配置される円筒状部11aと、吊下部材5の外面における被取り付け孔5cの周縁部に接当する形態で円筒状部11aの抜け落ちを抑止する一対の環状縁部11bとから構成されている。当該取り付け部材11は、横軸芯X方向から係合する二つの分割部材11A、11Bの係合体をもって構成されている。
【0046】
前記吊下部材5の各側片部5Aの内面における被取り付け孔5cの周縁部には、図8に示すように、横架部材7の揺動案内凹部7Dに嵌り込む揺動案内凸部5eが突出形成されている。当該揺動案内凸部5eには、横架部材7の第1、第2受止面部7e、7fとの接当により吊下部材5の揺動範囲を規制する揺動規制片5fが形成されている。
【0047】
前記吊下部材5の上下中間部位(詳しくは、一対の側片部5A、5Aの上部の各々)には、係止部材12の横移動を規制する状態で、且つ、係止部材12の係脱操作用の縦移動を所定範囲内で許容する状態で係止部材12を保持する縦長形状の係止部材保持孔5bが貫通形成されている。
【0048】
前記係止部材12は、前述した取り付け部材11と同様の構成であり、図6に示すように、係止部材保持孔5bに挿入配置される円筒状部12aと、吊下部材5の外面における係止部材保持孔5bの周縁部に接当する形態で円筒状部12aの抜け落ちを抑止する一対の環状縁部12bとから構成されている。当該係止部材12は、横軸芯X方向から係合する二つの分割部材12A、12Bの係合体をもって構成されている。
【0049】
前記係止部材保持孔5bの横幅寸法w1は、係止部材12の自重による下方移動を許容する寸法で構成されており、具体的には、係止部材12の円筒状部12aの直径寸法w2よりも僅かに大なる横幅寸法で構成されている。
【0050】
なお、5dは、物干し器1を使用する時に吊下部材5を掴み持つための掴持孔である。
【0051】
つまり、この物干し器1は、吊下部材5の係止部材保持孔5bの内部で係止部材12を縦方向に移動することで、係止部材12の円筒状部12aが横架部材7の被係止凹部7E、7Fに係止した係止状態を現出して、所定の傾斜角度で吊下部材5の姿勢を保持することができる。
【0052】
例えば、吊下部材5が鉛直姿勢に保持された状態(図9(a)の状態)から吊下部材5が斜め姿勢に保持された状態(図9(d)の状態)に変更する場合の手順ついて詳しく説明する。
【0053】
まず、図9の(a)の状態では、係止部材12の円筒状部12aと横架部材7の被係止凹部7Eとが係止状態にあるため、図9(b)に示すように、係止部材12を係止部材保持孔5b内で上動させて前記係止状態を解除する。このとき、吊下部材5は、前述した第1受止面部7eと揺動規制片5fとの接当により被係止凹部7F側とは反対側への揺動が規制されている。
【0054】
次に、図9(c)に示すように、吊下部材5を被係止凹部7Fの側に揺動させる。吊下部材5が、係止部材12と被係止凹部7Fとが係止可能な位置まで揺動したとき、前述した第2受止面部7fと揺動規制片5fとの接当により吊下部材5の揺動が規制される。
【0055】
そして、係止部材12を離すと、係止部材12が自重により係止部材保持孔5bの下端部まで自動的に下動し、係止部材12の円筒状部12aと横架部材7の被係止凹部7Eとが係止状態となる(図9(d)の状態)。
【0056】
なお、吊下部材5が斜め姿勢に保持された状態(図9(d)の状態)から吊下部材5が鉛直姿勢に保持された状態(図9(a)の状態)に変更する場合の手順ついても同様である。
【0057】
前記フック部材4には、縦軸芯Y上に位置する第1吊下フック4aと、縦軸芯Yから横方向に位相ズレし、且つ、第1吊下フック4aよりも下方に位相ズレした第2吊下フック4bとが備えられている。
【0058】
前記第1吊下フック4aは、図1に示すように、主として吊下部材5を鉛直姿勢にした状態で物干し竿13に吊り下げる状態で使用する時に用いられる。また、第1吊下フック4aは、図9に示すように、タンス等の引出し14の上部に引っ掛ける状態で使用する時にも用いられる。この場合、物干し枠体2の外周面が引出し14の正面板14aに当て付けられる形態で物干し枠体2が略水平の姿勢に保持される。
【0059】
前記第2吊下フック4bは、図10に示すように、吊下部材5を鉛直姿勢にした状態で内壁面Wよりも室内側に突出配置されたタオルバー15などに吊り下げる状態で使用する時に用いられる。この場合も、物干し枠体2の外周面が内壁面Wに当て付けられる形態で物干し枠体2が略水平の姿勢に保持される。なお、4dは、物干し器1を使用する時にフック部材4を掴み持つための掴持孔である。
【0060】
また、本実施形態において、係止部材12、被係止凹部7E、7Fは、前記姿勢保持手段6を構成する。
【0061】
[その他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、吊下部材5が、略鉛直姿勢と約45度傾斜した斜め姿勢の2段階の姿勢で姿勢保持可能に構成されている場合を例に示したが、例えば、略鉛直姿勢と複数の斜め姿勢の3段階以上の姿勢で姿勢保持可能に構成されていてもよい。
【0062】
つまり、例えば、図12に示すように、横軸芯Xから傾斜角度が第2係止凹部7Fとは異なる部位に第3係止凹部7Gが形成されていてもよい。
【0063】
(2)前述の実施形態では、物干し枠体2が横架部材7を挟み込む状態で上方側に折り畳み可能に構成されている物干し器1を例に示したが、物干し枠体が折り畳み不能な一体成形品から構成されている物干し器であってもよい。
【0064】
(3)物干し枠体2の折り畳み形態は、前述の実施形態で示した如き、2つの分割枠体3A、3Bから構成されているものに限らず、3つ以上の分割枠体から構成されていてもよい。
【0065】
(4)前述の実施形態では、姿勢保持手段6の具体的構成は、前述の実施形態で示した如き吊下部材5に備えられた係止部材12と横架部材7に切欠き形成された被係止凹部7E、7Fから構成されたものに限らず種々の構成変更が可能であり、例えば、吊下部材5に係止凹部を形成するとともに、この係止凹部に所定姿勢で係合する被係合凸部を横架部材7に一体成形する構成などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る物干し器の使用状態を示す側面図
【図2】本発明に係る物干し器の正面図
【図3】本発明に係る物干し器の説明斜視図
【図4】枠体長辺部の連結機構を示す説明断面図
【図5】仕切片部の連結機構を示す説明断面図(図3のB−B説明断面図)
【図6】図1のA−A説明断面図
【図7】横架部材の側面図
【図8】吊下部材の説明断面図(図8のC−C説明断面図)
【図9】姿勢保持手段の操作説明図
【図10】本発明に係る物干し器の使用状態を示す側面図
【図11】本発明に係る物干し器の使用状態を示す側面図
【図12】本発明に係る物干し器の別実施形態を示す部分側面図
【符号の説明】
【0067】
1 物干し器
2 物干し枠体
4a、4b 吊下フック
5 吊下部材
5b 係止部材保持孔
6 姿勢保持手段
7 横架部材
7E、7F、7G 被係止凹部(被係止部)
7g 膨出部
12 係止部材
X 横軸芯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されている物干し器であって、
前記横架部材が縦長断面形状に構成されているとともに、前記吊下部材が前記横架部材に対して横軸芯周りで揺動自在に枢着されている物干し器。
【請求項2】
被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されているとともに、前記物干し枠体が、前記横架部材を挟み込む状態で上方側に折り畳み可能に構成されている物干し器であって、
前記横架部材が縦長断面形状に構成されているとともに、前記吊下部材が前記横架部材に対して横軸芯周りで揺動自在に枢着されている物干し器。
【請求項3】
前記吊下部材を揺動軸芯周りの所定姿勢に保持する姿勢保持手段が設けられているとともに、
前記姿勢保持手段を構成するのに、
前記横架部材には、前記吊下部材の揺動方向で間隔を空けた各所定位置に複数の被係止部が一体形成され、
前記吊下部材には、前記複数の被係止部の各々に選択的に係脱可能な姿勢保持用の係止部材が備えられている請求項1又は2記載の物干し器。
【請求項4】
前記被係止部が、前記係止部材の上方からの進入で係止状態を現出するように上方向きに開口する形態で形成された被係止凹部から構成されているとともに、
前記吊下部材には、前記係止部材の横移動を規制する状態で、且つ、係止部材の係脱操作用の縦移動を所定範囲内で許容する状態で係止部材を保持する縦長形状の係止部材保持孔が形成されている請求項3記載の物干し器。
【請求項5】
前記係止部材保持孔の横幅寸法が、前記係止部材の自重による下方移動を許容する寸法で構成されているとともに、
前記被係止凹部の開口寸法が、前記係止部材の自重による上方からの進入移動を許容する寸法で構成されている請求項4記載の物干し器。
【請求項6】
前記吊下部材が前記横架部材の長手方向中央部位に枢着されているとともに、
前記横架部材の長手方向中央部位をそれに隣接する両脇部位よりも縦寸法の大きな断面形状で構成することで、前記吊下部材の枢着部位を中心とする弧状の膨出部が横架部材の上面部に形成され、
前記複数の被係止凹部の各々が、前記係止部材保持孔の下端部に前記係止部材が位置するときに係止部材との係止状態を現出するように、前記弧状の膨出部に切欠き形成されている請求項4又は5記載の物干し器。
【請求項1】
被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されている物干し器であって、
前記横架部材が縦長断面形状に構成されているとともに、前記吊下部材が前記横架部材に対して横軸芯周りで揺動自在に枢着されている物干し器。
【請求項2】
被干物を保持する物干し枠体の枠部間に亘らせた横架部材に、吊下フックを備える吊下部材が所定方向に沿って姿勢変化可能な状態で連結されているとともに、前記物干し枠体が、前記横架部材を挟み込む状態で上方側に折り畳み可能に構成されている物干し器であって、
前記横架部材が縦長断面形状に構成されているとともに、前記吊下部材が前記横架部材に対して横軸芯周りで揺動自在に枢着されている物干し器。
【請求項3】
前記吊下部材を揺動軸芯周りの所定姿勢に保持する姿勢保持手段が設けられているとともに、
前記姿勢保持手段を構成するのに、
前記横架部材には、前記吊下部材の揺動方向で間隔を空けた各所定位置に複数の被係止部が一体形成され、
前記吊下部材には、前記複数の被係止部の各々に選択的に係脱可能な姿勢保持用の係止部材が備えられている請求項1又は2記載の物干し器。
【請求項4】
前記被係止部が、前記係止部材の上方からの進入で係止状態を現出するように上方向きに開口する形態で形成された被係止凹部から構成されているとともに、
前記吊下部材には、前記係止部材の横移動を規制する状態で、且つ、係止部材の係脱操作用の縦移動を所定範囲内で許容する状態で係止部材を保持する縦長形状の係止部材保持孔が形成されている請求項3記載の物干し器。
【請求項5】
前記係止部材保持孔の横幅寸法が、前記係止部材の自重による下方移動を許容する寸法で構成されているとともに、
前記被係止凹部の開口寸法が、前記係止部材の自重による上方からの進入移動を許容する寸法で構成されている請求項4記載の物干し器。
【請求項6】
前記吊下部材が前記横架部材の長手方向中央部位に枢着されているとともに、
前記横架部材の長手方向中央部位をそれに隣接する両脇部位よりも縦寸法の大きな断面形状で構成することで、前記吊下部材の枢着部位を中心とする弧状の膨出部が横架部材の上面部に形成され、
前記複数の被係止凹部の各々が、前記係止部材保持孔の下端部に前記係止部材が位置するときに係止部材との係止状態を現出するように、前記弧状の膨出部に切欠き形成されている請求項4又は5記載の物干し器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−301907(P2008−301907A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149772(P2007−149772)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000100850)アイセン工業株式会社 (33)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000100850)アイセン工業株式会社 (33)
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