説明

物性の測定方法及び測定装置

【課題】収束電子回折を用いた、物性の新規な測定方法を提供する。
【解決手段】物性の測定方法は、透過型電子顕微鏡により、試料の収束電子回折実験像を取得する工程と、収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度を計算する工程と、試料に関し物性を変化させて計算された収束電子回折計算像のZernikeモーメントの強度と、収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度とを比較する強度比較工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型電子顕微鏡の収束電子回折を用いた、物性の測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡を用いて試料厚さを測定する方法として、古くから様々なものが提案されている。近年広く用いられている方法は、電子線損失エネルギー分光を用いて非弾性散乱の平均自由行程から算出する方法である(例えば、非特許文献1参照)。この方法は極めて手軽であるけれども、平均自由行程の値が不正確であることに加え、試料汚染や自然酸化膜などによって値が変化してしまうことが知られており、あくまで相対膜厚しか測定できない。
【0003】
絶対膜厚を測定するための最も一般的な方法は、2波励起状態で収束電子回折像を取得して、現れる干渉縞を用いて測定する方法である(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、この方法では試料を2波励起状態にするために大きく試料を傾斜する必要があることや、試料の消衰距離を知っておく必要があることなどの問題点が指摘されている。
【0004】
また、透過電子顕微鏡を用いて、結晶の湾曲歪を測定する方法も提案されている。
【0005】
近年、実験で得られた収束電子回折像を、計算で得られた計算像と比較することによって、高精度に試料の厚さや結晶の湾曲歪を測定する方法が提案されている(非特許文献3参照)。この方法は比較的に精度も高く、計算するソフトさえ有していれば測定が行える。このような方法を使用する場合、実験像と一致している計算像を探し出すために計算をその都度行っていては極めて非効率であるため、計算像のデータベースの構築が望ましい。ただし、像全体の2次元画像データを、計算像と実験像とで比較するために、膨大なデータベース容量が必要となる。また、画像をマッチングするために、画像の回転操作も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R. F. Egerton, Electron energy-loss spectroscopy in the electron microscope (1996, Plenum Press, New York) pp. 301-312.
【非特許文献2】J. C. H. Spence and J. M. Zuo, Electron Microdiffraction (1992, Plenum Press, New York) pp. 86-88.
【非特許文献3】T. Yamazaki, A. Kashiwagi, K. Kuramochi, M. Ohtsuka, I. Hashimoto, and K. Watanabe, Journal of Electron Microscopy 57 (2008) pp. 181-187.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、収束電子回折を用いた、物性の新規な測定方法及び測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、透過型電子顕微鏡により、試料の収束電子回折実験像を取得する工程と、前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度を計算する工程と、前記試料に関し物性を変化させて計算された収束電子回折計算像のZernikeモーメントの強度と、前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度とを比較する強度比較工程とを有する物性の測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
Zernikeモーメントの強度を用いることにより、例えば、収束電子回折の実験像と計算像とを、画像の回転操作なしに比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aは、収束電子回折により試料を観察している状況を概略的に示す斜視図であり、図1Bは、観察された収束電子回折像の例である。
【図2】図2は、0次から5次までのZernikeモーメントをまとめた表である。
【図3】図3A〜図3Cは、計算像の例であり、図3Dは、図3Aに示す計算像を回転させた像の、各回転角度のZernikeモーメントの強度をプロットしたグラフである。
【図4】図4は、第1実施例の試料厚さ測定工程を実施する試料厚さ測定装置を示すブロック図である。
【図5】図5は、第1実施例の試料厚さ測定工程の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6Aは、実験像の例であり、図6Bは、図6Aの実験像に対する最適計算像である。
【図7】図7Aは、図6Aと同様な実験像であり、図7Bは、図6Bの計算像の回転角度を補正した計算像である。
【図8】図8Aは、実験像の他の例であり、図8Bは、図8Aの実験像に対する最適計算像である。
【図9】図9は、第2実施例で湾曲歪が測定される試料の電子顕微鏡写真、及び試料中の各測定位置の収束電子回折実験像である。
【図10】図10Aは、Si膜の湾曲歪と、入射電子線とを示す模式図であり、図10Bは、収束電子回折の測定位置近傍における湾曲歪を、モデル化して表した模式図である。
【図11】図11は、Si膜とコバルトシリサイド膜との界面から様々な深さで測定された実験像と、各実験像に対する最適計算像である。
【図12】図12は、コバルトシリサイド界面からの深さと、湾曲歪の大きさとの関係を示すグラフである。
【図13】図13Aは、第3実施例によるGaN試料の実験像であり、図13Bは、図13Aの実験像に対する、回折ディスクも含めた最適計算像である。
【図14】図14は、第3実施例の極性判定工程のフローチャートの一部分である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、収束電子回折(CBED)について概略的に説明する。収束電子回折は、透過型電子顕微鏡による測定手法の一種であり、例えば直径数nm以下にまで収束させた電子線を試料に入射させることによって、回折像(干渉模様)を得る。
【0012】
図1Aは、収束電子回折により試料を観察している状況を概略的に示す斜視図である。コーン状に収束する電子線2が試料1に入射する。試料1から、透過波または回折波のそれぞれに対応して、コーン状に拡がる電子線が出射し、観察像として、透過波による透過ディスク3a、及び、透過ディスク3aの周囲に分布する回折波による回折ディスク3b、3c等が形成される。透過ディスク及び回折ディスク3a、3b等は、それぞれ、ブラッグ散乱の位置PBを中心としたディスク状の像であり、試料1内部での電子の散乱によって、複雑な干渉模様を示す。以下の説明で、透過ディスクまたは回折ディスクを、単にディスクと呼ぶこともある。
【0013】
なお、通常は、入射電子線2の中心の(コーン形状の中心軸上の)電子線が、試料表面に垂直入射するように、電子線2を試料1に入射させる。しかし、誤差に起因して、垂直入射からずれ、電子線2が傾斜して入射する場合がある。入射電子線2が傾斜すると、各ディスクの中心PBが、垂直入射の場合からずれる。
【0014】
図1Bは、観察された収束電子回折像の例である。試料はSi薄膜であり、観察方向は[011]方向である。中央の透過ディスクの周囲に、回折ディスクが分布している。各ディスク内に、干渉模様が形成されている。なお、観察視野内での干渉模様の配置角度は、試料の配置角度に対応し、試料を面内で回転させれば、干渉模様も回転する。
【0015】
各ディスク内の干渉模様は、試料の結晶構造や厚さ等の物性を反映している。ここで、物性とは、それが変化したときに収束電子回折像の干渉模様を変化させるような、試料の物理的性質等を広く表す。
【0016】
試料の結晶構造がわかっていれば、収束電子回折の各ディスクの干渉模様を、計算機で算出することができる。計算で得られた干渉模様を、収束電子回折計算像(または単に計算像)と呼ぶこととする。一方、透過型電子顕微鏡で観察された干渉模様を、収束電子回折実験像(または単に実験像)と呼ぶこととする。
【0017】
例えば、以下に説明する第1実施例では、試料の結晶構造が既知である(よって、収束電子回折計算像を得ることができる)が、試料の厚さが未知である状況を想定している。この状況は、例えば、試料の結晶構造と不純物濃度とが既知であるが、不純物の個数がわからず、試料の体積を知るために、試料の厚さを測定したいような場合である。
【0018】
様々な試料厚さに対して計算像を算出しておき、実験像と比べ、最も一致する計算像を見つけることにより、試料厚さを推定することができる。ただし、実験像と計算像の画像同士を直接比較する技術には、扱うデータ量が非常に大きくなる等の困難が伴う。扱うデータ量の低減等を図れる技術として、以下に説明するように、本願発明者らは、収束電子回折の計算像と実験像とを、Zernikeモーメントを介して比較する技術を提案する。
【0019】
次に、Zernikeモーメントについて説明する。Zernikeモーメントは、単位円内で完全直交系を構築し、回転に対して強度が不変であるという特徴を持つ複素モーメント量である。(x,y) 座標系で強度がf(x,y) として表される2次元画像のZernikeモーメントAn,mは、以下の式(1)で表される。
【0020】
【数1】

・・・(1)
ここで、Vn,m(x,y)は、以下の式(2)で表される。
【0021】
【数2】

・・・(2)
ここで、n、m は共に整数である。ただし、|m|≦nであり、n−|m|は偶数で
ある。また、ρ=√(x+y)、θ=tan−1(y/x)とする。
【0022】
ZernikeモーメントAn,mは、全画素で積分して得られるため、画像の解像度に強くは依存しない。また、角度依存項がVn,mのexp(imθ) にしか含まれないため、Zernikeモーメントの強度|An,m|は、画像の回転角度に依存しない。ZernikeモーメントAn,mの次数はnで定義される。このため、Zernikeモーメントの個数は、次数n以上となる。
【0023】
図2に、例として0次から5次までのZernikeモーメントAn,mを示す。ZernikeモーメントAn,mの個数は、0次が1個、1次が1個、2次が2個、3次が2個、4次が3個、5次が3個であり、0次から5次までの合計で12個となる。例えば5次までのZernikeモーメントを用いるならば、A0,0〜A5,5の12個の複素数で形成されるベクトルで、画像の特徴を表すことができる。
【0024】
図3A〜図3Cに、Siの、観察方向を[011]方向とした透過ディスクの計算像を示す。図3B、図3Cは、それぞれ、図3Aの計算像を40°、80°回転させた計算像である。
【0025】
図3Dは、図3Aに示す計算像を角度0°から90°まで回転させ、10°刻みで計算像のZernikeモーメントを計算し、4次までの強度|An,m|をプロットしたグラフである。上述のように、Zernikeモーメントの強度|An,m|が、画像の回転角度に依存しないことが確認される。なお、図3Dのグラフにおいて、Zernikeモーメントの強度|An,m|が角度変化に対して微小に変動しているのは、(x,y) 座標系を用いて計算を行っていることに起因する誤差と考えられる。
【0026】
次に、収束電子回折の計算像と実験像とを比較するのに適した、Zernikeモーメントの利用態様について考察する。
【0027】
まず、比較にはZernikeモーメントの強度を利用することが好適であることを説明する。上述のように、Zernikeモーメントの強度は、像の回転に対して不変である。つまり、2つの収束電子回折像が、例えば図3A、図3Bに示した回転角度0°と40°の像のように、回転の影響を除いて一致する(干渉模様として一致する)ならば、図3Dに示したように、Zernikeモーメントの強度が一致する。よって、Zernikeモーメントの強度を比較することにより、回転による影響を考慮せずに、計算像と実験像とを比較することができる。つまり、計算像に対して実験像が回転していても、直接の比較が可能となる。
【0028】
なお、回転角度も考慮して計算像と実験像とを比較する場合には、Zernikeモーメントの位相を利用する。Zernikeモーメントは複素数であるので、強度と位相を有する。後述のように、まずZernikeモーメントの強度を利用した比較を行った後に、位相を利用した比較を行うことにより、効率的な比較を行うことができる。
【0029】
次に、比較に用いるZernikeモーメントの好適な次数範囲について考察する。式(1)からわかるように、n=m=0である0次のZernikeモーメントの強度は、像の強度f(x,y) の面内での積算を表しており、像の平均強度として考えることができる。実験像と計算像を比較するときにバックグラウンド強度を厳密に比較することは極めて難しいため、相対強度で比較することが望ましい。そのため、像の平均強度の情報は比較対象から外すこと、つまり、0次のZernikeモーメントは、像の特徴を表す情報量として考慮しないことが望ましい。
【0030】
n次のZernikeモーメントは、画像中のn回対称性の特徴を反映するという性質がある。少なくとも4回対称性以上までの特徴を、干渉模様の特徴を表す情報量として取り込みたい。従って、少なくとも4次以上のZernikeモーメントまでを考慮することが望ましい。
【0031】
ただし、図2に5次まで示した例からもわかるように、次数nが増えると、Zernikeモーメントの個数は急激に増加する。従って、あまり高次までのZernikeモーメントを比較に用いると、データ量が多くなりすぎる。例えば、20次以下のZernikeモーメントまでを比較に用いるのがよいであろう。
【0032】
以上をまとめると、0次を除き(つまり1次から)、少なくとも4次以上までのZernikeモーメントを考慮することが望ましく、データ量が多すぎないようにしたい場合は、最大次数を20次以下とするのがよいといえる。
【0033】
本願発明者らの実験によれば、例えば10次までのZernikeモーメントを用いると、情報量が十分に多く、かつデータ量が多くなりすぎずに、適当であることがわかった。10次までのZernikeモーメントの個数は、36個であり、0次のZernikeモーメントを除くと、35個となる。つまり、この場合、各画像の特徴を、35次元のベクトルで表すことができる。
【0034】
次に、本発明の第1実施例による試料厚さ測定方法について説明する。
【0035】
図4は、第1実施例の試料厚さ測定工程を実施する試料厚さ測定装置を概略的に示すブロック図である。
【0036】
図5は、第1実施例の試料厚さ測定工程の流れを示すフローチャートである。以下、図4のブロック図を主に参照し、図5のフローチャートも参照して、説明を進める。
【0037】
透過型電子顕微鏡を含んで、顕微鏡本体11が形成される。画像入力部21、Zernikeモーメント演算部22、Zernikeモーメント強度比較部23、Zernikeモーメント位相比較部24、出力部25、収束電子回折像計算部31、及び、データベース32は、例えば、パーソナルコンピュータを用いて形成することができる。
【0038】
試料厚さ測定が開始される(図5のステップS0)。顕微鏡本体11が、測定試料の収束電子回折実験像を取得する(図5のステップS1)。試料は、例えばSi薄膜であり、ここでは例えば概ね200nm程度のオーダの厚さであるとする。収束電子回折実験像のデータが、画像入力部21に入力される。
【0039】
画像入力部21は、実験像の全体から、透過ディスク部分を抜き出す画像処理を行う。例えば、周辺の回折ディスクと重ならない領域を円形に抜き出すことができる。本実施例では以降、抜き出した透過ディスクの実験像を、単に実験像と呼ぶ。
【0040】
実験像のデータが、Zernikeモーメント演算部22に送られる。Zernikeモーメント演算部22は、実験像のZernikeモーメントの強度及び位相を、例えば10次まで計算する(図5のステップS2)。以下、10次までのZernikeモーメントを用いるとして説明を続ける。
【0041】
一方、収束電子回折像計算部31が、測定試料に関し、厚さtを変化させて、透過ディスクの収束電子回折計算像を算出する。本実施例では以降、透過ディスクの計算像を、単に計算像と呼ぶ。例えば、1nm刻みで150nm〜350nmの厚さ範囲の計算像を算出する。さらに、各厚さtについて、ディスクの中心座標(x,y)も変化させて、計算像を算出する。ディスクの中心座標が変化することは、試料への電子線の入射方向が変化することに対応する。
【0042】
このように、試料厚さと電子線の入射方向ごとに、計算像が算出される。収束電子回折像計算部31は、さらに、各計算像のZernikeモーメントの強度を10次まで計算する。各計算像のZernikeモーメントの強度が、各計算像の算出条件(厚さtと中心座標(x,y))とともに、データベース32に格納される。データベース32には、各計算像のZernikeモーメントの位相は格納しなくてよい。
【0043】
収束電子回折像計算部31により計算像を算出し、各計算像のZernikeモーメントの強度を計算し、Zernikeモーメントの強度を格納したデータベース32を準備しておく工程は、顕微鏡本体11による試料観察の前に、予め行なっておくことができる。
【0044】
Zernikeモーメント強度比較部23が、Zernikeモーメント演算部22で計算された、実験像のZernikeモーメントの強度と、データベース32に格納された、試料厚さ及び入射電子線の入射方向ごとの計算像のZernikeモーメントの強度とを比較する。
【0045】
実験像と計算像の各像の、1次から10次までのZernikeモーメントの強度は、35次元のベクトル(これを強度ベクトルと呼ぶこととする)を形成し、実験像の強度ベクトルと、計算像の強度ベクトルとを比較することとなる。
【0046】
ベクトル同士の一致度を表す指標として、例えばコサイン類似度を用いることができる。コサイン類似度は、単位ベクトルに規格化された2つのベクトルの内積として定義される。両ベクトルが一致しているならば、両ベクトルは平行であり、内積が1となる。両ベクトルの差が最も大きいとき、両ベクトルは直交して、内積が0となる。つまり、2つのベクトルのコサイン類似度は、0以上1以下となり、1に近いほど(大きいほど)両ベクトルが類似していると判定される。
【0047】
Zernikeモーメント強度比較部23は、単位ベクトルに規格化された実験像の強度ベクトルと、単位ベクトルに規格化された計算像の強度ベクトルとのコサイン類似度を、試料厚さtと中心座標(x,y)のパラメータを変えながら、全計算像に対して計算する(図5のステップS3)。
【0048】
そして、コサイン類似度の最も大きい計算像の算出条件(試料厚さtと中心座標(x,y))が出力される(図5のステップS4)。コサイン類似度最大の計算像を、最適計算像と呼ぶこととする。
【0049】
最適計算像に対応する試料厚さが、観察している試料の厚さとして推定され、また、最適計算像に対応する中心座標から、観察している試料への電子線の入射方向が推定される。このようにして、試料厚さを測定できるとともに、電子線の入射方向も知ることができる。
【0050】
試料厚さを測定した第1の具体例について説明する。試料はSi薄膜であり、観察方向は[011]方向である。
【0051】
図6Aは、実験像全体から切り出された透過ディスク部分である。なお、出力の便宜上、透過ディスクの周りを余白とした594ピクセル×594ピクセルの正方形の領域を、Zernikeモーメントの計算対象領域としている。なお、計算に用いる領域をディスクの円内に限れば、周りを余白にする必要はないといえる。
【0052】
図6Bは、透過ディスクの計算像のうち、図6Aの実験像に対するコサイン類似度が最大となった、最適計算像である。全計算像は、試料厚さを1nm刻みで150nm〜350nmの範囲で変え、中心座標を32×32(=1024)点変えて算出した。計算像の総数は20万枚以上となり、20万枚以上の計算像が実験像と比較されて、最も実験像に一致する最適計算像が探し出されている。最適計算像は、実験像の干渉模様を正確に再現していることがわかる。また、図6Aの実験像と図6Bの最適計算像とは回転角度が異なるが、良好に比較できていることがわかる。最適計算像の算出条件から、試料厚さを244nmと求めることができた。
【0053】
再び図4及び図5を参照して説明を続ける。さらに、実験像と最適計算像とを分かりやすく比較表示するために、今まで無視していた回転の影響を考慮して、実験像と一致させるためには最適計算像を何度回転させればよいか、というパラメータを求める。そのために、Zernikeモーメントの位相を用いる。
【0054】
具体的には、回転を表すパラメータとしてθtを考慮して、Vn,m(x,y)を以下の式(3)のように定める。
【0055】
【数3】

・・・(3)
式(3)のVn,m(x,y)を用いて、式(1)よりZernikeモーメントAn,mを計算し、Zernikeモーメントの位相を求める。強度の場合と同様に、各像の(1次から10次までの)Zernikeモーメントの位相が、35次元のベクトル(これを位相ベクトルと呼ぶこととする)を形成する。
【0056】
上述のように、Zernikeモーメントの強度の比較で、回転の影響は考慮せずに干渉模様として、実験像に最も一致する最適計算像が特定された。次に、最適計算像の算出条件の、試料厚さtと中心座標(x,y)で、収束電子回折像計算部31が、再度、最適計算像を算出する(図5のステップS5)。データベース32に保存されているのは、計算像の画像データそのものではなく、10次までのZernikeモーメントの強度なので、画像データとして、最適計算像が再度算出される。
【0057】
収束電子回折像計算部31は、さらに、最適計算像に対して、回転のパラメータθtを変えながら、Zernikeモーメントの位相を計算する(図5のステップS6)。式(3)からわかるように、回転のパラメータθtを変えることは、像を回転させることに対応する。回転のパラメータθtは、例えば1°刻みとして、360°の回転角度範囲で変える。
【0058】
一方、実験像のZernikeモーメントの位相は、強度とともに既に計算されている(図5のステップS2)。Zernikeモーメント位相比較部24が、実験像のZernikeモーメントの位相ベクトルに対する、最適計算像のZernikeモーメントの位相ベクトルのコサイン類似度を、全回転角度θtについて計算する(図5のステップS7)。
【0059】
そして、コサイン類似度を最大にする回転角度θt(これを最適回転角度と呼ぶこととする)が出力される(図5のステップS8)。最適回転角度θtだけ、元の最適計算像を回転させることにより、回転角度も含めて、実験像に最も一致した計算像を求めることができる。なお、最適回転角度θtは、測定した試料の保持機構上の配置角度を示すということもできる。
【0060】
最適計算像の回転角度を補正した具体例について説明する。図7Aは、図6Aと同様な実験像である。図7Bは、図6Bに示した最適計算像を、最適回転角度分、回転させた像である。回転角度まで揃えたことにより、実験像と最適計算像とがよく一致していることが、一見して把握しやすくなっている。
【0061】
再び図4及び図5を参照して説明を続ける。出力部25が、最適回転角度分の補正を行った最適計算像と、試料厚さと、その他必要な情報とを出力する(図5のステップS9)。測定が終了する(図5のステップS10)。
【0062】
以上説明したように、収束電子回折の実験像と計算像とを、Zernikeモーメントの強度を介して比較することにより、試料厚さを測定することができる。様々な試料厚さの計算像について、画像データそのものではなく、Zernikeモーメントの強度をデータベース化しておけばよい。
【0063】
例えば、1次から10次までのZernikeモーメントを用いるならば、1つの計算像当たり35次元の強度ベクトルで、画像の特徴を表すことができる。なお、Zernikeモーメントの位相も、データベース化しておく必要がない。従って、データベースの容量が低減され、さらに、最適計算像を探し出す探索処理の短時間化も図られる。
【0064】
実験像と計算像とを画像データそのもので直接比較して、試料厚さを測定する比較例について考える。このような比較例では、扱うデータ量が膨大になるとともに、比較時に画像を回転させて画像のマッチングを行う必要がある。画像の回転操作に伴い、補間や、回転角度の違いに起因する誤差が生じやすい。実施例では、Zernikeモーメントの強度を用いることにより、画像の回転操作が必要なくなる。これに伴い、測定精度向上が図られる。
【0065】
Zernikeモーメントの強度のみを用いて、試料厚さを測定することができるが、さらに、Zernikeモーメントの位相も用いると、実験像と最適計算像とを、回転角度まで揃えて比較表示することができる。実験像との位相の比較に係る計算は、強度比較により最適計算像を求めた後に、最適計算像についてのみ行うことができる。計算の効率化が図られる。
【0066】
次に、試料厚さを測定した第2の具体例について説明する。第2の具体例は、図6及び図7に示した第1の具体例とは別のSi薄膜試料に対する実験であり、第1の具体例よりも低い解像度で解析を行ったものである。
【0067】
図8Aに、実験像を示す。切り出された実験像の画像サイズは、88ピクセル×88ピクセルであった。
【0068】
図8Bに、最適計算像を示す。解像度が異なる実験結果でもZernikeモーメントは同様に求まるため、第1の具体例での解析で用いたデータベースを、第2の具体例にも利用して、実験像と計算像の比較を行うことができる。最適計算像の算出条件より、この試料の厚さは282nmと求められた。
【0069】
以上説明した第1実施例では、収束電子回折を用いた物性測定の一例として、試料厚さを測定した。厚さに限らず、物性を変化させて計算した収束電子回折計算像を実験像と比較することにより、その物性を推定することができる。その際、第1実施例の試料厚さ測定と同様にして、実験像と計算像とを、Zernikeモーメントの強度を介して比較することができる。
【0070】
物性として、厚さ以外にも、例えば、結晶の湾曲歪や組成等が挙げられる。なお、計算像を得るために変化させる物性は、その物性をモデル化して表す場合のパラメータ等も含む。例えば、以下に説明する第2実施例では、結晶の湾曲歪を、2つの湾曲歪係数a及びbを用いてモデル化しており、湾曲歪係数a及びbを変化させることにより、湾曲歪を変化させた計算像を得ることができる。
【0071】
次に、第2実施例による結晶の湾曲歪測定方法について説明する。まず、測定試料と、湾曲歪のモデルについて説明する。
【0072】
図9は、第2実施例で湾曲歪が測定される試料の電子顕微鏡写真、及び試料中の各測定位置の収束電子回折実験像である。この試料は、Si膜上にコバルトシリサイド膜が形成された積層構造を有する。紙面上下方向が、成膜厚さ方向である。下方にSi膜が形成されており、Si膜上の色の黒い部分がコバルトシリサイド膜である。なお、コバルトシリサイド膜上に、さらに他の部材も形成されている。
【0073】
このような積層構造を、厚さが例えば245nm程度の薄片にスライスして、収束電子回折の測定試料としている。成膜厚さ方向をX軸方向とし、収束電子回折の測定試料の厚さ方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系を定義する。電子線は、Z軸方向から入射される。
【0074】
今回用いた試料において、Si膜は、コバルトシリサイド膜との界面に近づくほど、格子間隔が引き伸ばされるように歪んでいる。この歪の大きさによって、収束電子回折像が変化する。Si膜とコバルトシリサイド膜との界面から、成膜厚さ方向について、100nm、150nm、200nm、及び400nmの深さで測定された収束電子回折実験像が示されている。
【0075】
図10Aは、Si膜の湾曲歪と、入射電子線とを示す模式図である。成膜厚さ方向(X方向)上方の、コバルトシリサイド側ほど、格子間隔が引き伸ばされて湾曲歪が大きく、成膜厚さ方向下方ほど湾曲歪が小さい。
【0076】
図10Bは、収束電子回折の測定位置近傍における湾曲歪を、モデル化して表した模式図である。なお、このようなモデルの詳細については、非特許文献3に説明されている。
【0077】
このモデルでは、測定試料の厚さ方向(Z方向)に関する湾曲は考えず、測定試料をXY面に平行な平板として扱い、測定試料の厚さ方向中間部分の単位格子がX方向にずれて生じた湾曲歪と、Y方向にずれて生じた湾曲歪について考える。図10Bには、X方向(成膜厚さ方向)にずれて生じた湾曲歪が示されている。X方向にずれて生じた湾曲歪をX方向湾曲歪と呼び、Y方向にずれて生じた湾曲歪をY方向湾曲歪と呼ぶこととする。
【0078】
測定試料の厚さ方向(Z方向)中心を原点とする放物線上に単位格子が配置されるとして、湾曲歪形状を近似的に表し、収束電子回折像を計算することができる。放物線の2次の係数が大きいほど歪が大きく、小さいほど(0に近いほど)歪が小さい。X方向湾曲歪を表す放物線の2次の係数を、X方向湾曲歪係数aと呼び、Y方向湾曲歪を表す放物線の2次の係数を、Y方向湾曲歪係数bと呼ぶこととする。このモデルでは、試料の湾曲歪が、2つの湾曲歪係数aとbをパラメータとして表される。
【0079】
なお、湾曲歪を表す放物線が測定試料表面から抜けて行く方向と、測定試料厚さ方向(Z方向)とのなす角度θ(これを湾曲角度θと呼ぶこととする)は、測定試料厚さが決まっているならば、歪係数(放物線の2次の係数)と1対1に対応する。湾曲角度θが大きいほど、湾曲歪が大きい。
【0080】
なお、図9に示した測定位置として、Y方向について試料構造が対称となるような位置が選ばれている。このような測定位置では、対称性より、Y方向湾曲歪がほぼ生じていないであろう(つまり、Y方向湾曲歪係数bがほぼ0)と予想される。
【0081】
次に、再び図4(測定装置のブロック図)及び図5(測定工程のフローチャート)を参照して、第2実施例による湾曲歪測定方法について説明する。
【0082】
第2実施例において、収束電子回折像計算部31は、第1実施例で説明した厚さt及びディスクの中心座標(x,y)に加え、湾曲歪係数a及びbもパラメータとして変化させて計算像を算出する。そして、湾曲歪係数a及びbも変化させた計算像のZernikeモーメントの強度が、データベース32に格納される。
【0083】
ステップS0で、湾曲歪測定が開始される。なお、湾曲歪とともに試料厚さも測定される。収束電子回折実験像を取得するステップS1、実験像のZernikeモーメントの強度及び位相を計算するステップS2、実験像と計算像の強度ベクトルのコサイン類似度を、物性に対応するパラメータ(試料厚さt、中心座標(x0,y0)、湾曲歪係数a及びb)を変えながら全計算像に対して計算するステップS3、及び、最適計算像を決定するステップS4が、第1実施例と同様に実行される。
【0084】
第2実施例では、最適計算像が求められることにより、試料厚さ及び電子線の入射方向ととともに、湾曲歪係数a及びbも推定することができる。その後、ステップS5以降を実行することにより、回転方向も含めて実験像と計算像とを一致させられることは、第1実施例と同様である。
【0085】
図11は、コバルトシリサイド膜との界面からの、成膜厚さ方向についての深さが、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、300nm、及び400nmの位置で測定された収束電子回折実験像と、各実験像に対する最適計算像である。最適計算像は、実験像の干渉模様を正確に再現していることがわかる。
【0086】
最適計算像から得られた試料厚さは、どの測定位置でも245nm程度とほぼ等しかった。また、最適計算像から得られたY方向湾曲歪係数bはどの測定位置でもほぼ0であり、つまりY方向に関する歪はほとんどなく、測定位置の対称性から予想された結果が確認された。
【0087】
図12は、コバルトシリサイド界面からの深さと、湾曲歪の大きさとの関係を示すグラフである。グラフの横軸が、X方向湾曲歪係数aに対応する湾曲角度θをmrad単位で示し、縦軸が、コバルトシリサイド界面からの深さをnm単位で示す。湾曲歪は、150nmより深い位置ではほぼ生じておらず、150nm以下の浅い位置で顕著になり、浅くなるほど大きくなっていることがわかる。
【0088】
以上、第2実施例で説明したように、収束電子回折の実験像と計算像とを、Zernikeモーメントの強度を介して比較することにより、湾曲歪を測定することもできる。
【0089】
その他、他の実施例として、例えば、組成の測定も行うことができる。例えば、コバルトシリサイド中のコバルト濃度を変化させて得た計算像を、コバルトシリサイド試料の実験像と比較することにより、コバルト濃度を推定することができる。
【0090】
次に、第3実施例について説明する。第3実施例では、実験像と計算像との比較に基づいて、結晶成長の極性判定を行う。
【0091】
測定試料は、成長極性を持つ試料、例えばGaN膜である。GaN膜は、Ga極性またはN極性で成長する。測定試料は、成膜厚さ方向断面が、電子線の入射する面となるように、スライスされたものである。測定試料の電子線の入射する面内の一方向が、GaNの結晶成長方向となる。
【0092】
図13Aは、GaN試料の実験像である。結晶成長方向を矢印で示す。白い円で示されたディスクが透過ディスクである。透過ディスクの周りに、回折ディスクが分布している。なお、この例では、透過ディスクと回折ディスクとが重なり合っていない。
【0093】
透過ディスクを挟んで、成長方向下方側に、中心部分の明るい回折ディスクが観察され、成長方向上方側に、中心部分の暗い回折ディスクが観察されている。中心部分の明るい回折ディスクと暗い回折ディスクとが並ぶ順番は、成長極性が反転すると、反転する(面内で180度回転した像となる)。
【0094】
第1実施例等で説明したように、透過ディスクのうち白い円で示された領域内の干渉模様(下方に拡大して示している)を抜き出して、計算像と比較することにより、試料の厚さ等を測定することができる。
【0095】
図13Bは、図13Aの実験像に対する最適計算像であり、回折ディスクも含めた計算像である。透過ディスクの干渉模様が、拡大されて下方に示されている。収束電子回折像の観察時に保持された試料の成長方向はわかっている。ただし、極性がわからない。計算像は、成長極性を一方の極性、例えばGa極性と仮定して計算されている。Ga極性方向を矢印で示す。透過ディスクを挟んで、Ga極性方向下方側に(N極性方向上方側に)中心部分の明るい回折ディスクが観察され、Ga極性方向上方側に(N極性方向下方側に)中心部分の暗い回折ディスクが観察されている。
【0096】
図14、及び、再び図5のフローチャートを参照して、成長極性の判定方法について説明する。第1及び第2実施例と同様にして、ステップS4までで最適計算像が決定されて試料厚さ等が求められ、その後、ステップS8までで最適回転角度が決定されて最適計算像と実験像の回転角度が揃えられる。上述のように、透過ディスクのみの(単一のディスクの)計算像を用いて、試料厚さ等を測定することができ、最適計算像を実験像の回転角度を揃えることができる。
【0097】
なお、計算像で仮定された極性の方向は、観察時の試料の成長方向と大体揃えられており、最適回転角度はさほど大きくならない。
【0098】
図14に示すように、第3実施例では、ステップS9が、ステップS9´に置き換わる。ステップS9´では、図13Bに示すような、透過ディスクの周りに分布する回折ディスクまで含んだ最適計算像が、再計算される。このような、複数のディスクを含む計算像を、全体の計算像と呼ぶこととする。
【0099】
回転方向まで揃えられていることにより、図13A及び図13Bに示すように、実験像の結晶成長方向と、計算像で仮定した極性の方向とが、平行に揃えられている。実験像と全体の計算像とで、中心部分の明るい回折ディスクと暗い回折ディスクとが並ぶ順番が一致していれば、測定試料の成長極性が仮定した極性と一致していると判定でき、この順番が、実験像と全体の計算像とで反転していれば、測定試料の成長極性が仮定した極性と反転していると判定できる。図13A及び図13Bに示す例では、測定試料の成長極性がGa極性であると判定される。
【0100】
ステップS9´で、試料厚さ等の測定結果に加え、全体の計算像や極性の判定結果も出力することができる。
【0101】
なお、実験像と全体の計算像とで極性が一致していても、反転していても、透過ディスクの干渉模様は一致するので、透過ディスクのみの観察では、極性が判定されない。
【0102】
以上、第3実施例で説明したように、収束電子回折の実験像と、全体の計算像とを比較することにより、結晶の成長極性を判定することができる。
【0103】
なお、3種以上の原子を含む結晶では、原子配置が、透過ディスクの干渉模様に影響すると考えられる。従って、第1実施例や第2実施例と同様に、透過ディスクの実験像と計算像との比較から、結晶構造等の知見を得られると考えられる。
【0104】
なお、上述の実施例では、透過ディスクを用いて、試料の厚さや湾曲歪を測定したが、これらの物性は、1つ分のディスク内の干渉模様があれば測定は可能であり、回折ディスクを用いた測定を行うこともできる。ただし、透過ディスクは、回折ディスクに比べて強度が高く、ノイズの少ない干渉模様を示すので、測定に用いるのに好適である。
【0105】
なお、上述の実施例では、実験像と計算像の、Zernikeモーメントの強度ベクトル、または位相ベクトルの一致度の指標として、コサイン類似度を用いたが、他の指標を用いることも可能である。例えば、残差の2乗を最小にする最小2乗和で一致度を評価することもできよう。
【0106】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0107】
1 試料
2 電子線
3a 透過ディスク
3b、3c 回折ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型電子顕微鏡により、試料の収束電子回折実験像を取得する工程と、
前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度を計算する工程と、
前記試料に関し物性を変化させて計算された収束電子回折計算像のZernikeモーメントの強度と、前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度とを比較する強度比較工程と
を有する物性の測定方法。
【請求項2】
前記物性は、厚さ、歪、及び組成のうち少なくとも1つを含む請求項1に記載の物性の測定方法。
【請求項3】
前記試料に関し物性を変化させて計算された収束電子回折計算像のZernikeモーメントの強度が、データベースに格納されている請求項1または2に記載の物性の測定方法。
【請求項4】
前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度を計算する工程は、前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの位相も計算し、
前記強度比較工程で、前記収束電子回折実験像と最も一致する収束電子回折計算像である最適計算像が探索され、さらに、
前記最適計算像の回転角度を変化させて、各回転角度の前記最適計算像のZernikeモーメントの位相を計算する工程と、
各回転角度の前記最適計算像のZernikeモーメントの位相と、前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの位相とを比較する位相比較工程と
を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の物性の測定方法。
【請求項5】
前記試料は、成長極性を有する結晶膜を含み、さらに、
透過ディスク及び回折ディスクのうちの複数のディスクを含んで、前記最適計算像を計算し、全体の計算像を得る工程と、
前記全体の計算像と、前記収束電子回折実験像とを比較し、前記結晶膜の成長極性を判定する工程と
を有する請求項4に記載の物性の測定方法。
【請求項6】
Zernikeモーメントの強度が比較される前記収束電子回折実験像及び前記収束電子回折計算像は、透過ディスクである請求項1〜5のいずれか1項に記載の物性の測定方法。
【請求項7】
試料の収束電子回折実験像を取得する透過型電子顕微鏡と、
前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度を計算する演算部と、
前記試料に関し物性を変化させて計算された収束電子回折計算像のZernikeモーメントの強度と、前記収束電子回折実験像のZernikeモーメントの強度とを比較する強度比較部と
を有する物性の測定装置。
【請求項8】
さらに、前記試料に関し物性を変化させて計算された収束電子回折計算像のZernikeモーメントの強度が格納されたデータベースを有する請求項7に記載の物性の測定装置。

【図4】
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【図5】
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【図12】
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【図14】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−21967(P2012−21967A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29413(P2011−29413)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】