説明

物標を探知して表示する装置

【課題】海面反射領域を適切に自動検出して、海面反射領域内と海面反射領域外とでそれぞれに応じた異なるスキャン相関処理を自動選択して実行する。
【解決手段】海面反射領域検出部10は、エコーデータに準じて、当該エコーデータに対応する画素が不安定画素であるかどうかを検出する。海面反射領域検出部10は、不安定画素に対して、時間的な不安定状態の延長、および平面的な不安定画素の領域の拡大を行った後に、海面反射領域を決定する。連続性検出部9は、エコーデータに対応する画素の平面的連続性を検出する。Wデータ発生部6は、海面反射領域の内外、連続性の有無に基づいて設定される複数種類の係数からなるスキャン相関処理演算を用いて、今回のエコーデータと画像メモリ7に記憶された前回のスキャン相関処理結果データとから今回のスキャン相関処理結果データを算出し、画像メモリ7へ更新記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極座標系の受信データを直交座標系の画像データに変換して表示するレーダ装置等の物標を探知して表示する装置に関するものである。特に、海面反射の影響を抑圧するとともに、遠方の物標等の識別しにくい物標を表示するレーダ装置等の物標を探知して表示する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自船の全方位の物標を検知するレーダ装置では、レーダアンテナを所定周期で回転させながら極座標系の受信信号を取得する。レーダ装置は、この極座標系の受信信号を直交座標系の画像データに変換して画像メモリに書き込み、所定タイミングで画像メモリに記憶された各画像データを読み出す。そして、レーダ装置の表示部では、読み出した画像データのデータレベルに応じて発光強度や色を変化させて表示する。
【0003】
このようなレーダ装置では、海面反射中の物標の探知や、検出頻度の低い物標の検知を容易にするために各種処理が実行される。
例えば、特許文献1では、アンテナからの距離や不要波強度を基準にして、当該距離内の範囲と当該距離外の範囲とで、異なる仕様のスキャン相関処理を選択する。ここで、スキャン相関処理とは、概略的に、現在データと、該現在データと同じ位置の過去データとの相関度に基づいて、今回の表示データを決定する処理である。
【0004】
また、特許文献2では、受信信号に対して相関処理と残像処理とを行うとともに、不要信号のレベルを検出する。不要信号のレベルが所定値以上である領域を検出すると当該領域では相関処理の結果を表示し、不要信号のレベルが所定値未満である領域を検出すると当該領域では残像処理の結果を表示する。
【0005】
また、従来のレーダ装置では、異なる複数仕様のスキャン相関処理を備え、ユーザからの操作入力により複数のスキャン相関処理を切り替えるものもある。
【特許文献1】特許第3680265号公報
【特許文献2】特開2002−243842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ユーザからの操作入力を受け付ける装置では、ユーザからの操作によるスキャン相関処理の選択となるので、有効なスキャン相関処理選択を行うにはユーザの操作熟練度が要求され、操作が不適切な場合は、かえって物標の識別状況が悪くなる可能性もある。また、海面反射の発生しやすい領域の内外で適切なスキャン相関処理が異なるので、ユーザはこの違いをも考慮して操作を行わなければならず、より操作が難しいものとなる。
【0007】
また、残像処理の場合、遠方の弱いエコーを観測するため感度調整により感度を上げるとホワイトノイズ、レーダ干渉等の不要信号入力も強くなり、感度を上げすぎると不要信号も累積加算される結果、画面がノイズで埋まってしまい、物標との識別が困難になる。このような場合は適切な映像とするために感度の微調整が必要となる。
【0008】
したがって、この発明の目的は、ホワイトノイズ等の不要信号が累積加算されることなく見易い調整操作が容易な物標を探知して表示する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、受信データ取得手段と、連続性検出手段と、表示手段とを備えた物標を探知して表示する装置に関するものである。受信データ取得手段は、スイープが回転して得られる極座標系の受信データを順次取得する。画像データ生成記憶手段は、極座標系の受信データを直交座標系の画像データに変換して、全画面を構成する各画像データが受信データに応じてスイープの1回転毎に更新されるように各画像データを順次生成して、記憶する。表示手段は、画像データ生成記憶手段に記憶された画像データを順次読み出して表示する。連続性検出手段は、判定対象となる受信データを含み、距離方向および方位方向へ広がる所定範囲内の領域を判定基準領域とし、該判定基準領域内の複数の受信データが閾値以上である個数に基づいて連続性を検出する。この決定された海面反射領域に基づいて、画像データ生成記憶手段は、判定対象の画素に対して今回のデータと過去のデータとを用いて画像データを生成するものであり、連続性に基づいて今回のデータの反映の比重を調整して画像データ生成処理を行う。
【0010】
この構成では、受信データが予め設定した閾値以上であるかどうかを検出するとともに、今回の受信データの検出結果と、今回の受信データと同じ位置の過去の数スキャン分の検出結果とから検出状況の推移を取得する。ここで、海面反射が存在する位置では、海面反射の影響を受けて、閾値以上の受信データを検出した回と閾値未満の受信データを検出した回とが不規則に変化して現れる可能性が大きくなる。従って、このような検出状況の推移を取得することで、海面反射領域かどうかを検出することができる。このように海面反射領域を設定した後、画像データ生成記憶手段は、海面反射領域内と海面反射領域外とで異なる画像データ処理を行う。ここでは画像データ処理としてスキャン相関処理が実行される。
【0011】
具体的に、海面反射領域内では、平均化処理、積分処理により今回のデータよりも過去のデータに結果が依存するスキャン相関処理を行うことで、突発的、一時的に検出される受信データ、すなわち海面反射による受信データは表示画面上に特徴的に表示されることが抑制される。逆に、継続的に検出される受信データ、すなわち実際の物標による受信データは表示画面上に特徴的に表示されてくる。
【0012】
この構成では、判定対象の受信データの位置での時間的な継続性ではなく、判定対象の受信データの位置付近での平面的な連続性に基づいて、今回のデータの比重を決定する。これは、自身の送信によるエコーであれば、アンテナビーム幅分方位方向に広がりがあるから閾値以上の受信データ群の平面的な連続性が高く、送信に非同期に入力するレーダ干渉やホワイトノイズ等ならば、閾値以上の受信データ群の平面的な連続性が低いことに基づいて設定される。
【0013】
具体的には、連続性が高ければ今回データの表示に対する比重を高くし、より特徴的に表示されるように制御する。連続性が低ければ今回データの表示に対する比重を低く抑制する。これにより、実際の物標は特徴的に表示され、干渉等は特徴的に表示されず、これらをより明確に識別することができる。
【0014】
また、この発明の物標を探知して表示する装置の連続性検出手段は、検出個数が予め設定した連続性検出閾値以上であることを検出すると、判定対象となる受信データに連続性が有ると判断する。画像データ生成記憶手段は、連続性の有無に応じて反映の比重の調整を行う。
【0015】
この構成では、連続性による比重の調整を連続性の有無の2値により設定する。これにより、連続性の有無という2値でのみ表現されるので、連続性による処理が簡素化される。
【0016】
また、この発明の物標を探知して表示する装置は、海面反射領域検出手段をさらに備える。海面反射領域検出手段は、受信データが予め設定した閾値以上であるかどうかを検出するとともに、当該閾値検出を行った受信データに対応する今回を含む過去数スキャン分の検出結果の推移に基づいて不安定度を検出し、当該不安定度に基づいて海面反射領域を決定する。画像データ生成記憶手段は、海面反射領域内では今回のデータおよび過去のデータにより平均化処理または積分処理による画像データ生成処理を行い、海面反射領域外では今回のデータを強調処理する画像データ生成処理を行うものであり、連続性に基づく反映の比重の調整を、海面反射領域外の場合にのみ実行する。
【0017】
この構成では、海面反射の無い海面反射領域外では、前述の強調処理が実行されることから、連続性による区別がより有効になり、レーダ干渉やホワイトノイズを抑圧することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、レーダ干渉やホワイトノイズの表示を抑圧しながら、これらと同じように検出頻度の低い物標のエコーは強調して表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態のレーダ装置について図を参照して説明する。なお、本実施形態では、レーダ装置を例に説明するが、ソナー等、物標を検知して表示する装置であれば、本実施形態は適用することができる。
【0020】
図1は本実施形態のレーダ装置の主要構成を示すブロック図である。
本実施形態のレーダ装置のレーダアンテナ1は、所定回転周期で水平面を回転しながら、回転周期とは異なる送受信周期で、パルス状電波を放射するとともに、自装置周囲にいる物標からの反射波を極座標系で受信する。レーダアンテナ1は、受信信号を受信部2に出力するとともに、スイープ角度データを描画アドレス発生部5に出力する。
【0021】
受信部2は、レーダアンテナ1からの受信信号を検波して増幅し、AD変換部3に出力する。AD変換部3は、このアナログ形式の受信信号を複数ビットからなるデジタルデータ(エコーデータ)に変換する。
【0022】
スイープメモリ4は、デジタル変換された1スイープ分のエコーデータを実時間で記憶し、次の送信により得られるエコーデータが再び書き込まれるまでに、この1スイープ分のエコーデータXnを、Wデータ発生部6、連続性検出部9、および挙動データ発生部11へ出力する。
【0023】
描画アドレス発生部5は、スイープ回転の中心を開始番地として、中心から周囲に向かって、所定方向(例えば船首方向)を基準としたアンテナ角度θとスイープメモリ4の読み出し位置rとから、対応する直交座標系で配列された画像メモリ7、挙動データメモリ711、不安定状態保持メモリ713の画素を指定する番地を作成する。この描画アドレス発生部5は、具体的には次式を実現するハードウェアにより構成される。
【0024】
X=Xs+r・sinθ
Y=Ys+r・cosθ
ただし、X,Yは画像メモリ7、挙動データメモリ711、不安定状態保持メモリ713の画素を指定する番地であり、Xs,Ysはスイープの中心番地であり、rは中心からの距離であり、θはスイープ(アンテナ)の角度である。
【0025】
海面反射領域検出部10は、挙動データ発生部11、不安定画素検出部12、不安定状態保持用データ発生部13、海面反射領域決定部14を備える。
【0026】
挙動データ発生部11は、スイープメモリ4から入力される今回のエコーデータXnが、予め設定した検出閾値以上であるかどうかを判定する。検出閾値は、例えば検出したホワイトノイズレベルに所定のオフセットを加算したものが用いられる。挙動データ発生部11は、今回のエコーデータXnが検出閾値以上であれば、「1」からなる挙動データを生成し、今回のエコーデータXnが検出閾値未満であれば、「0」からなる挙動データを生成する。
【0027】
挙動データメモリ711は、後述する画像メモリ7や不安定状態保持メモリ713と同様に、直交座標系アドレスで設定される画素毎に挙動データを記憶する記憶媒体である。挙動データメモリ711、画像メモリ7、不安定状態保持メモリ713はそれぞれに画素アドレスが対応するようにアドレスが設定されている。挙動データメモリ711は、画素毎に、複数ビットが割り当てられており、挙動データを今回から時系列に複数スキャン分記憶する容量を備える。この際、挙動データは、時系列にLSBからMSBに向かって一段階ずつ上位のビットへシフトさせながら記憶される。
【0028】
挙動データ発生部11は、極座標系から直交座標系への変換処理に同期して、今回の挙動データを生成するとともに、挙動データメモリ711から、今回の挙動データに対応する画素アドレスにおける過去の複数スキャン分の挙動データからなる複数ビットの挙動データ列Pn−1を読み出す。挙動データ発生部11は、読み出した挙動データ列Pn−1の各挙動データを上位側に一段階シフトし、最下位のビットを今回の挙動データとして、今回の挙動データ列Pnを出力する。例えば、画素毎に8ビット構成に設定されている場合は、読み出した挙動データ列Pn−1のbit0からbit6の挙動データをそれぞれbit1からbit7へシフトし、bit7の挙動データを破棄して、bit0に今回の挙動データを割り当てる。これにより、今回を含む過去8スキャン分の挙動データが記憶される。
【0029】
このように挙動データ発生部11から出力された今回の挙動データ列Pnは、挙動データメモリ711の対応画素アドレスに更新記憶されるとともに、不安定画素検出部12へ入力される。
【0030】
不安定画素検出部12は、挙動データ発生部11からの挙動データ列Pnを取得して、挙動データ列Pnの隣り合うビット間での状態変化の数を不安定度として算出する。すなわち、隣り合うビット(例えばbit0とbit1や、bit6とbit7)間で、「1」から「0」へ変化したり、「0」から「1」へ変化する回数を検出する。
【0031】
例えば、図2は、挙動データ列Pnと不安定度と不安定状態検出データとの関係を示す図である。
図2の上段に示すように、挙動データ列Pnの各挙動データがスキャン毎に「1」、「0」と交互になる場合、8ビット中で7回状態変化が発生するので、不安定度は「7」と算出される。また、図2の下段に示すように、挙動データ列Pnの各挙動データが、「0」から「1」に一度だけ変化する場合は、8ビット中で1回状態変化が発生するので、不安定度は「1」と算出される。
【0032】
これにより、不安定画素検出部12では、判定を行う画素に対して今回を含む過去複数スキャン分について、エコーデータが検出閾値を基準としてどのように推移しているかを検出する。例えば、検出閾値以上のエコーデータが連続的に安定して取得されていたり、検出閾値未満のエコーデータが安定して連続的に取得されていたりするか、検出閾値以上のエコーデータと検出閾値未満のエコーデータとが不規則順に取得されているか等を検出する。
【0033】
不安定画素検出部12は、不安定度を算出すると、予め設定した不安定状態検出閾値をと比較して、不安定状態検出データQnを生成する。例えば、図2の場合に不安定度=「4」を不安定状態検出閾値とすると、図2の上段の場合は、不安定度=「7」であるから「1」の不安定状態検出データQnを生成し、下段の場合は、不安定度=「1」であるから「0」の不安定状態検出データQnを生成する。不安定画素検出部12は、不安定状態検出データQnを不安定状態保持用データ発生部13へ出力する。
【0034】
これにより、不安定画素検出部12は、検出対象となる画素が不安定状態、すなわち海面反射等により物標検出が不安定となる領域内であることを検出する。これは、受信部等でSTC(海面反射除去)を適切に調整し、海面反射がスキャン毎に同じ位置に出現しないで規則性無く検出されるような状況において、不安定な状況すなわち海面反射が検出される画素では、挙動データ列の各ビットすなわち挙動データは、「1」、「0」が不規則に並ぶ確立が高くなり、不安定度が大きくなるからである。一方で、海面反射に比べ、安定した物標や検出確率の低い物標が検出される画素やなにも検出されない画素では、挙動データ列の各ビットすなわち挙動データは、「1」、「0」が規則的に並ぶ確立が高くなり、不安定度が小さくなるからである。
【0035】
不安定状態保持用データ発生部13は、不安定状態検出データQnと、不安定状態保持メモリ713に記憶された、今回の不安定状態検出データQnの画素アドレスに対応する前回の不安定状態保持用データHn−1とに基づいて、今回の不安定状態保持用データHnを算出する。具体的には、不安定状態の判定対象画素に対して、不安定状態検出結果をMスキャン分保持したい場合、不安定状態保持用データ発生部13は、不安定状態検出データQnが「1」であれば、前回の不安定状態保持用データHn−1の値にかかわらず、今回の不安定状態保持用データHnを「M」(Mは整数)に設定して出力する。不安定状態保持用データ発生部13は、不安定状態検出データQnが「0」であれば、前回の不安定状態保持用データHn−1の値から1減算した値を、今回の不安定状態保持用データHnとして出力する。そして、不安定状態保持用データ発生部13は、不安定状態検出データQnが「0」であり、前回の不安定状態保持用データHn−1が「0」であれば減算を行うことなく、今回の不安定状態保持用データHnを「0」で出力する。不安定状態保持用データ発生部13は、今回の不安定状態保持用データHnを、不安定状態保持メモリ713と海面反射領域決定部14とへ出力する。
【0036】
不安定状態保持メモリ713は、上述の挙動データメモリ711と同じアドレス構成からなり、各画素アドレスについて上記整数「M」+1の整数を記憶できる容量を有するメモリである。不安定状態保持メモリ713では、不安定状態保持用データ発生部13から出力された今回の不安定状態保持用データHnが、該当する画素アドレスへ更新記憶される。
【0037】
このような処理を行うことにより、不安定状態が検出された画素については、その後に安定状態が継続的に検出されても、今回の不安定状態検出のタイミングを含む以降の所定回(上記例ではM回)のスキャン分は、海面反射領域決定部14へ出力される不安定状態保持用データHnは「0」にはならない。これにより、不安定状態が検出された画素については、不安定状態を所定スキャン回数(M回)分保持することができる。これは、海面反射領域の境界を明確に区切ることができないことに対応した処理である。具体的には、海面反射は、海況、風向、アンテナ高さ、STC等の調整により変化し、さらに、自船からの距離が離れるにしたがって弱くなる。このため、海面反射の境界は明確に区切ることができず、不安定状態から一時的に安定状態になったとしても、海面反射である確率は高い。したがって、このような処理を行うことで、後述する処理で海面反射を強調してしまうことを防止することができる。
【0038】
海面反射領域決定部14は、入力された不安定状態保持用データHnに対して、Hn=0であるか、Hn≠0であるかを判定し、不安定状態保持用データHn≠0であれば、当該不安定状態保持用データHnに対応する画素を海面反射領域設定基準画素として検出する。海面反射領域決定部14は、海面反射領域基準画素を検出すると、当該海面反射領域基準画素を基準にして、距離R方向および方位Θ方向へ海面反射領域を拡大するように、直交座標系で拡大海面反射領域を決定する。
【0039】
例えば、図3は海面反射領域の拡大概念を示す図であり、(A)は一つの海面反射領域基準画素に対する拡大概念を示し、(B)はそれぞれの海面反射領域基準画素による拡大海面反射領域の重ね合わせ概念を示す。
【0040】
図3を用いてさらに詳細に説明すると、海面反射領域決定部14は、図3(A)に示すように、海面反射領域基準画素401を検出すると、距離R方向および方位Θ方向へ海面反射領域を拡大させるように、直交座標系の複数の画素を選択して拡大海面反射領域410を決定する。この際、海面反射領域決定部14は、拡大海面反射領域410において、海面反射領域基準画素401がスイープの中心に距離方向で最も近く、スイープ回転方向に対して最も起点側となるようにして所定画素分(図3では、距離方向、スイープ回転方向ともに三画素分)を海面反射領域として拡大し、拡大海面反射領域410を設定する。
【0041】
このような拡大海面反射領域の設定は、不安定状態保持用データHn≠0を受け付ける毎に行われる。そして、海面反射領域決定部14は、図3(B)に示すように、記憶されている、海面反射領域基準画素401に基づく拡大海面反射領域410、海面反射領域基準画素402に基づく拡大海面反射領域420、海面反射領域基準画素403に基づく拡大海面反射領域430、海面反射領域基準画素404に基づく拡大海面反射領域440を組み合わせ、合成海面反射領域400を設定する。
【0042】
海面反射領域決定部14は、合成海面反射領域400に該当する画素であるかどうかを示す海面反射領域データBnを生成し、Wデータ発生部6へ出力する。具体的には、海面反射領域決定部14は、合成海面反射領域400内の画素であれば、海面反射領域データBn=1を生成し、合成海面反射領域400外であれば、海面反射領域データBn=0を生成して、Wデータ発生部6へ出力する。
【0043】
このような処理とすることで、実際に不安定状態として検出された画素のみでなく、当該画素を基準にして、当該画素近傍の不安定状態で有る可能性の高い画素をも拡大して海面反射領域に設定することができる。これは、不安定状態の画素の近傍は、当然のことながら不安定状態である可能性が高いからであり、これにより、海面反射抑圧領域の平面的な拡大設定を行うことができる。
【0044】
図4は、海面反射領域決定部14により決定された海面反射領域の画像例を示す図である。図4において、500A,500B,500Cは検出した海面反射領域を示し、501が示す小円群が検出した海面反射である。また、502Aは安定した船舶のエコー、502Bは安定したブイのエコー、503は移動船のエコー、504は検出確率の低い物標のエコー、505Aはレーダ干渉である。
【0045】
図4に示すように、実際に不安定状態であると検出した海面反射501群を基準にして、所定の拡大範囲内の画素が海面反射領域500A,500B,500Cとして設定される。
【0046】
連続性検出部9は、スイープメモリ4から入力されるエコーデータXnを所定方位分記憶するバッファメモリを備え、判定対象となるエコーデータXnの連続性を検出する。
【0047】
図5は連続性の概念を説明する図であり、(A)は連続性判定の説明図、(B)は物標、干渉、ホワイトノイズ毎の連続性の判定例を説明する図である。
【0048】
連続性検出部9は、バッファメモリから、連続性の判定対象となるエコーデータを含む連続性判定基準領域110内に存在するエコーデータを抽出する。ここで、連続性判定基準領域110は、例えば、判定対象となるエコーデータ100に対して、距離R方向に隣り合うエコーデータ101N,101Fと、方位Θ方向に隣り合うエコーデータ102C,103Cと、図5(A)において距離R方向と方位Θ方向とが約45°で交差して伸びる4方向に隣り合うエコーデータ102N,102F,103N,103Fとを囲む領域である。
【0049】
連続性検出部9は、これらエコーデータ100,101N,101F,102N,102C,102F,103N,103C,103Fのデータレベルを検出する。連続性検出部9は、予め設定した検出閾値以上のレベルを有するエコーデータ数が、同様に予めセットされた判定閾値以上であれば、連続性が有ると判断し、Wデータ発生部6へ連続性データAn=1を出力する。連続性検出部9は、予め設定した検出閾値以上のレベルを有するエコーデータ数が、同様に予めセットされた判定閾値未満であれば、連続性が無いと判断し、Wデータ発生部6へ連続性データAn=0を出力する。
【0050】
例えば、図5(B)に示すように、物標901は、検出閾値以上のレベルを有するエコーデータが集まっているので、連続性判定基準領域110に存在する検出閾値以上のレベルを有するエコーデータが多く存在する。また、干渉902は、同一の方位方向にのみ所定閾値以上のレベルを有するエコーデータが存在するため、連続性判定基準領域110に存在する検出閾値以上のレベルを有するエコーデータ数が少なくなる。また、ホワイトノイズ903も、単発で発生することが多いので、連続性判定基準領域110に存在する検出閾値以上のレベルを有するエコーデータは少なくなる。
【0051】
したがって、連続性の判定閾値を、連続性判定基準領域110内に存在する検出閾値以上のレベルを有するエコーデータ数が連続性判定基準領域110内のエコーデータ数の過半数よりも多くなるように、例えば50%にすることで、物標と、干渉およびホワイトノイズとを判別することができる。
【0052】
Wデータ発生部6は、スイープメモリ4から入力される今回のエコーデータXnと、画像メモリ7から読み出される1回転前のスキャン相関処理結果データYn−1と、連続性検出部9からの連続性データAnと、海面反射領域決定部14からの海面反射領域データBnに基づいて、今回のスキャン相関処理結果データYnを算出して、画像メモリ7へ出力する。画像メモリ7は、アンテナ一回転分すなわちスイープ一回転分のスキャン相関処理結果データを記憶する容量を備えるメモリである。
【0053】
Wデータ発生部6は、下記の式(1)の演算を実行するハードウエアからなる。
【0054】
Yn=α・γ・Xn+βYn−1 −(1)
この際、α、βは上述の海面反射領域内であるか海面反射領域外であるかに基づいて、設定される。また、γは連続性データAnに基づいて設定される。
平均化処理(処理1)の場合、α+β=1、α<βとする。例えば、α=0.2、β=0.8に設定する。また、ここではγ=1.0とする。このような処理1を用いることで、平均化(積分)処理が実行される。
すなわち、連続する各スキャンにおいて、突発的や不連続で且つ低頻度で高レベルが検出されたエコーデータでは、スキャン相関処理結果データの値は低レベルになる。一方で、連続する各スキャンで継続的に高レベルが検出されたエコーデータでは、スキャン相関処理結果データのレベルが徐々に高くなり、高いレベルが継続的に維持される。これにより、海面反射が急に出現した場合のように、突発的に高レベルのエコーデータが検出されても、スキャン相関処理結果データすなわち表示輝度等を低レベルに抑圧することができる。また、物標に対するエコーが無くなっても、急激に「0」にはならず、残光表示等によりエコーを表示することができる。この結果、変化の多い海面反射のエコーを抑圧して、当該海面反射の領域内に存在するブイ等の物標を表示し、識別しやすくすることができる。
【0055】
図6は、処理1によるスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。図6(A)は、連続するスキャンでの検出頻度が2/3の物標による実エコーの場合を示し、図6(B)は、連続するスキャンでの検出頻度が1/2となる海面反射によるエコーの場合を示す。図6では破線が入力されるエコーデータのレベルを示し、実線が出力されるスキャン相関処理データレベルを示すものであり、それぞれデータは最大値を「1」とする正規化されたデータである。
図6(A)に示すように、検出頻度が2/3となる物標の実エコーの出力レベルは、検出頻度が1/2となる海面反射のエコーの出力レベルよりも高くなる。具体的には、20スキャン目近傍では、検出頻度が2/3となる物標の実エコーで出力レベルが約0.7となる。一方で、図6(B)に示すように、検出頻度が1/2となる海面反射のエコーで出力レベルは、約0.5となる。このように、処理1を用いれば、海面反射と物標とを明確に識別することができる。
【0056】
強調処理(処理2)の場合、α+β>1、α>βとする。例えば、α=1.0、β=0.8に設定する。また、ここでもγ=1.0とする。このような処理2を用いることで、強調処理が実行される。
すなわち、連続する各スキャンにおいて、突発的や不連続で且つ低頻度で高レベルが検出されたエコーデータでも、スキャン相関処理結果データのレベルが高いまま継続的に維持される。これにより、自装置に対して高い相対速度で移動する物標等に対して、該当画素に対するスキャン相関処理データのレベルが高く維持される。この結果、検出頻度の低い物標や高速移動する物標を確実に識別することができる。
【0057】
この処理2では、海面反射も強調してしまい、海面反射と、検出頻度の低い物標や高速移動する物標とを識別できない。
図7は、処理2によるスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。図7(A)は、連続するスキャンでの検出頻度が2/3の物標による実エコーの場合を示し、図7(B)は、連続するスキャンでの検出頻度が1/2となる海面反射によるエコーの場合を示す。図7でも破線が入力されるエコーデータのレベルを示し、実線が出力されるスキャン相関処理データレベルを示すものであり、それぞれデータは最大値を「1」とする正規化されたデータである。
図7(A)、(B)に示すように、処理2を用いた場合、検出頻度が異なる物標の実エコー(検出頻度2/3)と海面反射のエコー(検出頻度1/2)とで、出力レベルが殆ど変化しない。具体的には、20スキャン目近傍で、物標の実エコーと海面反射のエコーともに、出力レベルが約0.9となる。すなわち、処理2は海面反射の抑圧には不適切であることを示す。
【0058】
図8は、検出頻度が低い(1/5等)物標に対する上述の処理1、処理2でのスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。図8においては、破線が入力されたエコーデータのレベルを示し、太実線が処理2でのスキャン相関処理結果データのレベルを示し、細実線が処理1でのスキャン相関処理結果データのレベルを示す。
図8に示すように、処理1を用いると、検出頻度の低い物標のエコーデータのレベルが抑圧されてしまうが、処理2を用いると、検出頻度が低い物標のエコーデータのレベルが抑圧されず、また、検出されない場合も残像として表示される。すなわち、検出頻度が低い物標の探知は、処理2が有効である。
【0059】
以上の結果から、処理1と処理2とのいずれか一方だけを用いる場合には、それぞれの処理に応じた良い点、悪い点がともに存在する。
【0060】
このため、海面反射領域データBn=1の場合、すなわち、今回のエコーデータXnに対応する画素が海面反射領域内の場合は処理1、海面反射領域データBn=0の場合、すなわち、今回のエコーデータXnに対応する画素が海面反射領域外の場合は処理2に切り替える。海面反射領域内では処理1により海面反射を抑圧し、海面反射領域内に存在するブイ等の物標の探知が容易となる。一方、海面反射の存在しない海面反射領域外では処理2により海面反射を強調することなく、検出頻度が低い物標や高速移動する物標の探知が容易となる。
【0061】
しかしながら、処理2では、ホワイトノイズやレーダ干渉も強調されるため、物標のエコーと、ホワイトノイズやレーダ干渉とを識別することができない。
【0062】
このような場合、平面的な連続性に基づいて設定される係数γの値を複数の値で設定して、処理2に適用する。係数γは、連続性に応じて0≦γ≦1の値が設定される。この際、連続性が高いほど係数γも高く設定される。そして、上述のように連続性の有無(An=1 または An=0)のみの場合には、例えば、連続性有を意味する連続性データAn=1の場合にはγ=1.0に設定し、連続性無を意味する連続性データAn=0の場合にはγ=0や0.2等を設定する。
なお、以下では、連続性データAn=0の時γ=0.2を設定し、且つγの設定を海面反射領域外でのみ実行する場合を例に説明する。
【0063】
連続性データAn=1の場合、すなわち連続性がある場合、γ=1.0となるので、今回のエコーデータXnに係る係数はαとなる。これにより、海面反射領域外では、上述のようにスキャン相関処理結果データが生成される。ここで、平面的な連続性が有る場合は、物標からのエコーである可能性が大であり、連続性有りと検出された物標は、エコーデータのレベルが継続的に低くても、また時間的にあまり高い頻度で検出されなくても、スキャン相関処理データが高レベルに維持されることとなる。
【0064】
一方、連続性データAn=0の場合、すなわち連続性が無い場合、γ=0.2となるので、今回のエコーデータXnに係る係数は0.2αとなる。同じ検出頻度であれば、上述のγ=1.0の場合よりも、スキャン相関処理データのレベルが大幅に低くなる。ここで、平面的な連続性が無い場合とは、ホワイトノイズや他のレーダ装置からの干渉である可能性が大である。したがって、これらのホワイトノイズや干渉は、スキャン相関処理データが低レベルに維持されることとなる。この結果、連続性に基づく係数γを用いることで、ホワイトノイズやレーダ干渉を高いレベルで表示してしまうことを抑圧することができる。これにより、検出頻度が低い物標や高速移動する物標と、ホワイトノイズやレーダ干渉とを区別して識別することができる。
【0065】
図9、図10は、処理2によるスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。
図9(A)は、連続するスキャンでの検出頻度が1/5の物標による実エコーの場合を示し、図9(B)は、連続するスキャンでの検出頻度が1/5のレーダ干渉によるエコーの場合を示す。また、図10(A)は、連続するスキャンでの検出頻度が1/2の物標による実エコーの場合を示し、図10(B)は、連続するスキャンでの検出頻度が1/2のホワイトノイズによるエコーの場合を示す。図9、図10では破線が入力されるエコーデータのレベルを示し、実線が出力されるスキャン相関処理データレベルを示すものであり、それぞれデータは最大値を「1」とする正規化されたデータである。
物標は、上述の連続性の検出により連続性有と判断され、γ=1.0と設定される。レーダ干渉およびホワイトノイズは、連続性無と判断され、γ=0.2と設定される。これらを式(1)に適用することで、図9、図10の結果が得られる。
【0066】
図9(A)、(B)に示すように、ともに検出頻度が低い1/5であっても、連続性を有する物標のエコーの出力レベルは、連続性を有さないレーダ干渉のエコーの出力レベルよりも高くなる。具体的には、連続性を有する物標の実エコーでは、出力レベルが約0.4以上1.0以下で推移し、連続性を有さないレーダ干渉のエコーでは、出力レベルが約0.3以下で推移する。
【0067】
また、図10(A)、(B)に示すように、検出頻度が1/2と同じであっても、連続性を有する物標の実エコーの出力レベルは、連続性を有さないホワイトノイズのエコーの出力レベルよりも高くなる。具体的には、連続性を有する物標の実エコーでは、出力レベルが約0.8以上1.0以下で推移し、連続性を有さないホワイトノイズのエコーでは、出力レベルが約0.4以上約0.6以下で推移する。このように、処理2とγとを組み合わせて用いれば、レーダ干渉およびホワイトノイズと物標とを明確に識別することができる。
【0068】
画像メモリ7には、Wデータ発生部6で生成された今回のスキャン相関処理結果データYnが描画アドレス発生部5で指定された画素アドレスで書き込まれる。そして、画像メモリ7は、図示しない表示制御部により表示器8がラスター走査されると、このラスター動作に同期して、スキャン相関処理結果データYnが読み出される。表示制御部は、読み出したスキャン相関処理結果データYnに基づいて所定の輝度や色度からなる画像データを形成し、当該画像データに基づいて、表示器8を表示制御する。
【0069】
このような構成およびスキャン相関処理を行うことで、図11に示すような画像を表示することができる。
【0070】
図11は、本実施形態のスキャン相関処理を行った場合の画像例を示す図である。
また、図12は本実施形態の処理を行わない場合の画像例を示す図であり、図13は、全画素に対して上述の処理1を適用した場合の画像例を示す図であり、図14は、全画素に対して上述の処理2を適用した場合の画像例を示す図である。なお、以下の説明では、データレベルに応じて輝度を変更する場合を示す。また、各図における海面反射設定区域500は、概念的に示しており、より詳細には、図4に示す海面反射領域500A,500B,500Cにより構成される。
【0071】
処理1のみを用いた場合、処理1は平均処理であるため、図13に示すように、安定して検出される物標のエコー512A’,512B’は高輝度で表示され、海面反射のエコー511’や干渉515A’,515B’は抑圧される。しかしながら、検出頻度の少ない物標のエコー514’や高速移動する物標のエコー513’は低輝度でしか表示されないため、これらの識別が困難となる。
【0072】
また、処理2のみを用いた場合、処理2は強調処理であるため、図14に示すように、安定して検出される物標のエコー522A’,522B’は高輝度で表示され、高速移動する物標のエコー画像523’は高輝度で尾引するように表示され、検出頻度の少ない物標のエコー524’は、検出された場合は高輝度で表示され、検出されない場合も残像で表示される。しかしながら、海面反射のエコー521’や干渉のエコー525’も高輝度で表示されるので、これらの識別が困難となる。
【0073】
また、スキャン相関処理を行わない場合、平均処理や強調処理がなされないため、図12に示すように、安定して検出される物標のエコー502A,502Bや高速移動する物標のエコー503は高輝度で表示される。しかしながら、海面反射のエコー501や干渉のエコーも検出された場合は高輝度で表示され、検出頻度の低い物標のエコー504は表示されたりされなかったりする。この結果、これらの識別が困難となる。
【0074】
これら、処理1のみ、処理2のみ、スキャン相関処理を行わない場合と比較し、上述の本願の構成および処理を用いることで、図11に示すように、(1)海面反射領域設定区域500内で発生する海面反射のエコー画像501’は極低輝度でしか表示されない。
【0075】
(2)海面反射領域設定区間500内外を問わず、安定して検出される物標(船舶やブイ等)のエコー画像502A’、502B’は、高輝度のエコー画像で表示される。
【0076】
(3)海面反射領域設定区域500外で高速に移動する物標(船舶等)のエコー画像503’は、進行方向先頭から輝度が尾を引くように表示される。
【0077】
(4)海面反射領域外の検出頻度が低い物標のエコー画像504’は、検出された場合は高輝度で表示され、検出されない場合も残光で表示される。
【0078】
(5)平面的連続性の低いもしくは無いレーダの干渉等に対して、今回の干渉のエコー画像505A’や、以前の干渉による残像のエコー画像505B’は、極低輝度でしか表示されない。
【0079】
このように、本実施形態の構成および処理を行うことで、検出頻度や移動速度等に関係なく表示すべき物標のエコーは確実且つ高輝度に表示し、海面反射、レーダ干渉等の不要なエコーは抑圧することができる。
【0080】
以上のように、本実施形態の構成および処理を用いることで、エコーデータの不安定度から海面反射領域を自動で検出し、海面反射領域内外でスキャン相関処理の演算係数を変更することにより、それぞれに適したスキャン相関処理を実行することができる。これにより、オペレータが適切なスキャン相関処理を判断して選択操作する必要がなくなり、スキャン相関処理の選択間違いによる危険を防止し、扱いやすいスキャン相関機能付きレーダ装置を実現することができる。この際、海況、風向、STC等の調整により、海面反射の範囲は変化するが、海面反射領域が自動で検出されることで、このような海面反射の変化に自動で追従して最適なスキャン相関処理を実行することができる。
【0081】
また、不安定度に基づいて決定した海面反射領域とする設定を所定スキャン分に亘り保持し、さらに距離方向、方位方向に拡大した領域を海面反射領域とすることにより、海面反射領域範囲内および近傍での誤った識別処理を行うことを防止することができる。
【0082】
さらに、エコーデータの連続性に基づいて、スキャン相関処理の演算係数を変更することで、連続性の低いレーダ干渉は最初から抑圧して残光レベルを低くすることができるとともに、干渉と同じように頻度の低い物標のエコーであっても、連続性の高い物標のエコーは強調して表示することができる。これにより、実際の物標とレーダ干渉とを映像で容易に識別することができる。また、受信感度調整により感度を上げてホワイトノイズが増加した場合でも、連続性の低いホワイトノイズは抑圧されるため、従来の強調処理のようにホワイトノイズが累積加算され、その結果、画面がホワイトノイズで埋まるような欠点が無く、感度調整操作が容易で見易い装置とすることができる。
【0083】
なお、上述の説明では、不安定度に基づいて決定した海面反射領域とする設定を時間延長した後に、方位方向および距離方向へ拡大した例を示したが、時間的延長と平面的拡大との処理順序を入れ替えても良い。
【0084】
また、上述の説明では、連続性データAnに基づくγの設定を2値化した例を示したが、連続性データに基づいてγをより多値で設定しても良い。これにより、さらに連続性に基づく効果がより顕著な表示を行うことができる。
また、上述の説明では、γの適用を海面反射領域外に対するスキャン相関処理演算にのみ行ったが、海面反射領域内でのスキャン相関処理演算にも適用させても良い。
また、上述の説明では、スキャン中心を基準に海面反射領域基準画素より遠方側と、スキャン進行方向側とに海面反射領域を拡大する例を示したが、海面反射領域基準画素を中心として、距離方向および方位方向へ所定画素数ずつ拡大設定するようにしてもよい。
【0085】
また、上述の説明では、不安定状態保持用データHnを基準に海面反射領域の距離方向および方位方向への拡大設定を行ったが、不安定状態検出データQnを基準にして海面反射領域の距離方向および方位方向への拡大設定を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態のレーダ装置の主要構成を示すブロック図である。
【図2】挙動データ列Pnと不安定度と不安定状態検出データとの関係を示す図である。
【図3】海面反射領域の拡大概念を示す図である。
【図4】海面反射領域決定部14により決定された海面反射領域の画像例を示す図である。
【図5】連続性の概念を説明する図である。
【図6】処理1によるスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。
【図7】処理2によるスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。
【図8】検出頻度が低い物標に対する処理1、処理2でのスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。
【図9】処理2とγとによる物標とレーダ干渉のスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。
【図10】処理2とγとによる物標とホワイトノイズのスキャン相関処理結果データの推移を示す図である。
【図11】本実施形態のスキャン相関処理を行った場合の画像例を示す図である。
【図12】本実施形態の処理を行わない場合の画像例を示す図である。
【図13】全画素に対して上述の処理1を適用した場合の画像例を示す図である。
【図14】全画素に対して上述の処理2を適用した場合の画像例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1−レーダアンテナ、2−受信部、3−AD変換部、4−スイープメモリ、5−ラジアル描画アドレス発生部、6−Wデータ発生部、7−画像メモリ、8−表示器、9−連続性検出部、10−海面反射領域検出部、11−挙動データ発生部、12−不安定画素検出部、13−不安定状態保持用データ発生部、14−海面反射領域決定部、711−挙動データメモリ、713−不安定状態保持メモリ、500−海面反射領域設定区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイープが回転して得られる極座標系の受信データを順次取得する受信データ取得手段と、
前記極座標系の受信データを直交座標系の画像データに変換して、前記受信データに応じてスイープの1回転毎に更新されるように各画像データを生成、記憶する画像データ生成記憶手段と、
前記画像データ生成記憶手段に記憶された画像データを順次読み出して表示する表示手段と、
を備えた物標を探知して表示する装置であって、
判定対象となる受信データを含み、距離方向および方位方向へ広がる所定範囲内となる領域を判定基準領域とし、該判定基準領域内の複数の受信データが前記閾値以上である個数に基づいて連続性を検出する連続性検出手段と、を備え、
前記画像データ生成記憶手段は、判定対象の画素に対して今回のデータと過去のデータとを用いて画像データを生成するものであり、前記連続性に基づいて前記今回のデータの反映の比重を調整して画像データ生成処理を行う、
物標を探知して表示する装置。
【請求項2】
前記連続性検出手段は、検出個数が予め設定した連続性検出閾値以上であることを検出すると、前記判定対象となる受信データに連続性が有ると判断し、
前記画像データ生成記憶手段は、前記連続性の有無に応じて前記反映の比重の調整を行う請求項1に記載の物標を探知して表示する装置。
【請求項3】
前記受信データが予め設定した閾値以上であるかどうかを検出するとともに、当該閾値検出を行った受信データに対応する今回を含む過去数スキャン分の検出結果の推移に基づいて不安定度を検出し、当該不安定度に基づいて海面反射領域を決定する海面反射領域検出手段を更に備え、
前記画像データ生成記憶手段は、海面反射領域内では今回のデータおよび過去のデータにより平均化処理または積分処理による画像データ生成処理を行い、海面反射領域外では今回のデータを強調処理する画像データ生成処理を行うものであり、前記連続性に基づく前記反映の比重の調整を、前記海面反射領域外の場合にのみ実行する請求項1または請求項2に記載の物標を探知して表示する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−198244(P2012−198244A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139846(P2012−139846)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2007−226904(P2007−226904)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】