説明

物流支援システム

【課題】物流において、送られる荷の情報を受け側が容易に取得できること、荷の到着確認などトレーサビリティに対応すること、及びパレット回収の確認ができるようにすること。
【解決手段】複数の構成員間でRFタグ付きの荷を送受する物流を支援するシステムであって、各構成員が所有するRFタグリード手段と端末、及びASPに設定された情報処理部及び記憶部によって構成され、荷の送受に関係する関係構成員は荷の移動における任意のタイミングで、RFタグリード手段でRFタグの固有IDを読み取ると共に、該固有ID及びRFタグリード手段固有のロケーションコードを端末で情報処理部に送信し、これを受けた情報処理部は、ロケーションコード、荷の情報などを記録した公開RFタグ情報を関係構成員ごとに作成又は更新し、関係構成員は、端末から情報処理部に接続し、自己の構成員情報が記録されている公開RFタグ情報データを閲覧可能にしたことで、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫管理、ロット管理、トレーサビリティなどに役立てることのできる物流支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷の輸送予定を予め知らせる場合、送り側から受け側に対し、納入日、積込日、製品名、数量、ロット番号などの荷情報を記載した書類をファクシミリなどで送付していた。受け側は、送付された荷情報を自己の管理システムに入力し、在庫管理やロット管理など種々の管理に利用する。実際に荷が受け側に到着すると、受け側は予め受けていた荷情報と突き合わせ、確認のうえ伝票処理を行う。
【0003】
また、ID(IDentification)情報を埋め込んだRFタグは、データキャリアとしていろいろな分野で利用されている。しかし、RFタグより取得した情報はシステムを開発したグループ内での利用に限られているのが現状である。
【0004】
また、下記特許文献には、ASP(Application Service Provider)を利用した物流管理支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335118
【特許文献2】特開2004−99268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の、荷情報を記載した書類をファクシミリなどで送付する方法は、受け側が送付された荷情報を自己の管理システムに入力する作業、荷が到着したときに荷情報と突き合わせる作業が煩雑で、入力ミスが発生するおそれもある。また、トレーサビリティ(流通経路の追跡可能性)が困難で、例えば送り側が受け側に荷が到着したことを確認できるのは、受け側が処理した伝票が戻ってきたときで、非常に時間を要する。
【0007】
前記の特許文献に開示されている物流管理支援システムは、汎用性に乏しく、現実的でない。通常、物流に関わる企業は、既に自己の物流管理社内システムを構築しているが、このような自己の物流管理システムが利用できず、適合するシステムを再構築しなければならない場合もある。
【0008】
また、荷はパレットに載せられ、パレット単位で輸送されることが多いが、そのような場合パレットの回収を確実に行うことは困難であった。
【0009】
本発明は、RFタグから取得した情報をASPを使って、任意の企業に情報提供できる仕組みを構築し、具体的には、送られる荷の情報を受け側が容易に取得できること、荷の到着確認などトレーサビリティに対応すること、パレット回収の確認ができるようにすることなどを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
複数の構成員間でRFタグ付きの荷を送受する物流を支援するシステムであって、
各構成員が所有するRFタグリード手段と端末、及びASP(Application Service
Provider)に設定された情報処理部及び記憶部によって構成され、
最初に荷を送る構成員は、RFタグリード手段でRFタグの固有IDを読み取ると共に、該固有ID、関係構成員情報、RFタグリード手段固有のロケーションコード及び荷情報を含むRFタグ情報データを作成し、これを前記端末で前記情報処理部に送信し、
前記情報処理部は、前記RFタグ情報データから、その関係構成員ごとに当該構成員情報及び固有IDを含む公開RFタグ情報データを作成すると共に前記記憶部に保存し、
その後、荷の移動における任意のタイミングで、構成員はRFタグリード手段でRFタグの固有IDを読み取ると共に、該固有ID及びRFタグリード手段固有のロケーションコードを前記端末で前記情報処理部に送信し、
これを受けた前記情報処理部は、前記公開RFタグ情報に新たなロケーションコードを記録して前記記憶部に保存し、
各構成員は、前記端末から前記情報処理部に接続し、自己の構成員情報が記録されている前記公開RFタグ情報データを閲覧可能にしたことを特徴とする物流支援システムである。
【0011】
本発明において、各構成員はパーソナルコンピュータなどの端末と、ゲート、ハンディーターミナルなどのRFタグリード手段を所有する。端末はインターネットを介してASPに接続するためのもので、自己の物流管理社内システムに接続することも可能である。
【0012】
ASPに設定する情報管理部は、アプリケーションソフトウェアで、送信されたRFタグデータなどから公開RFタグデータを作成、保存する作業、構成員からの要求に応じて公開RFタグデータを閲覧させる作業を行う。
【0013】
公開RFタグデータは、RFタグデータに記録された関係構成員ごとに作成される。関係構成員は、送り側構成員、受け側構成員など、そのデータの閲覧が許される構成員である。
【0014】
記憶部はASPに設定したメモリ領域で、公開RFタグ情報データベースを含み、RFタグ情報データベースや、必要に応じてその他のデータベース(例えば得意先ロットデータベース)を設定してもよい。
【0015】
送り側、受け側などの関係構成員は、ASPの情報管理部にログインし、公開RFタグ情報データを取得し、そのまま自己の物流管理システムに入力することも可能で、入力ミスを防止できる。
【0016】
RFタグ情報データ及び公開RFタグ情報データに、RFタグリード手段固有のロケーションコードが記録されるので、荷がどのRFタグリード手段を通過したか、すなわち荷が流通経路のどの位置にあるかを知ることができ、トレーサビリティが実現される。
【0017】
RFタグは、荷を載せるパレットに取り付けることができる。このようにすることで、荷をパレット単位で管理でき、パレットの回収の確認も可能となる。
【0018】
RFタグ情報データ及び公開RFタグ情報データに、RFタグを読み取ったスキャン日時情報を含ませることができる。これにより、荷がどのRFタグリード手段をいつ通過したかを知ることができ、よりきめ細かいトレーサビリティが実現される。
【0019】
情報管理部が作成する受け側構成員の公開RFタグ情報データに、RFタグ情報データの荷情報の全部又は一部が記録されないようにすることができる。各構成員が持っている自己の物流管理システムは様々であり、公開RFタグ情報データに荷情報の全部又は一部が記録されないようにすることで不要な情報をカットし、汎用性が高まる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、送られる荷の情報を受け側が容易に取得でき、荷の到着確認などトレーサビリティも実現される。また、パレット回収の確認も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明物流支援システムの実施形態の概略説明図である。
【図2】RFタグ情報データ・公開RFタグ情報データの例の説明図である。
【図3】荷が出荷されるまでの情報の流れの説明図である。
【図4】荷が出荷された後の情報の流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の物流支援システムの実施形態の概略説明図である。このシステムは、複数の構成員間でRFタグ付きの荷を送受する物流を支援するものである。通常、物流に携わる構成員(企業など)は、物流を管理する何らかの社内システムを持っているが、各構成員は、少なくともインターネットに接続できる端末を持っていればよい。図2で制御部はサーバなどに設定されたシステム制御プログラム、記憶部はハードディスクなどの記憶媒体、端末はパーソナルコンピュータなどである。
また、各構成員はRFタグに記録されているデータを読み取るRFタグリード手段(ゲート、ハンディーターミナルなど)を持っている必要がある。
【0023】
各構成員は、端末からインターネットを介してASP(Application Service Provider)に接続する。ASPには情報処理部と記憶部が設けられている。情報処理部は、各構成員との間で交わされる情報を処理するアプリケーションソフトウェアである。記憶部は、情報を格納しておく部分(データベース)である。
【0024】
図2は、送り側の構成員(メーカー:企業コード=M1)から受け側の構成員(得意先:企業コード=C1)にパレットに積んだ荷を送る場合のRFタグ情報データ、公開RFタグ情報データの例を示している。RFタグはパレットに取り付けられている。RFタグには、固有ID「123」が記録されている。
【0025】
パレットに荷が積まれたとき、メーカーの端末コンピュータにRFタグの固有IDに関連づけてロット番号、品名、生産日、数量などの荷情報が記録される。荷を積んだパレットが倉入されるとき、RFタグリード手段であるゲート(ロケーションコード=JA01)を通り、ことのきRFタグの固有ID「123」が読み取られて端末コンピュータに送られる。端末コンピュータは、RFタグ固有IDに関連づけられている荷情報に基づいてRFタグ情報データを作成し、ASPの情報処理部に送信する。RFタグ情報データは例えば次のようにすることができる。
固有ID ・・・RFタグの情報
情報元企業コード ・・・情報取得企業の社内システムでセットする。
情報提供先企業コード1 ・・・情報取得企業が提供したい情報提供先企業をセットする。
情報提供先企業コード2 ・・・情報提供企業コード1と同じ。
スキャン日(西暦、月、日)・・・RFタグを読み取った日付
スキャン時刻(時分秒) ・・・RFタグを読み取った時刻
ロケーションコード ・・・情報取得企業の社内システムでセットする。情報提供企業との取り決めが必要
数量確認1 ・・・情報取得企業の社内システムでセットする。この値は情報取得企業のみ利用する。
数量確認2 ・・・数量確認1と同じ。
この場合、関係構成員情報は「情報元企業コード」「情報提供先企業コード1」「情報提供先企業コード2」であり、荷情報は「数量確認1」「数量確認2」である。
【0026】
ASPの情報処理部は、受信したRFタグ情報データに基づいて、リアルタイムで関係構成員ごとに公開RFタグ情報データを作成し、記憶部の公開RFタグ情報データベースに保存する。公開RFタグ情報データは例えば次のようにすることができる。
ユニークキーとして、企業コード+固有ID+スキャン日+スキャン時刻を作る。ユニークキーが同一の場合は該当レコードを上書きする。
ユニークキー ・・・企業コード+固有ID+スキャン日+スキャン時刻
企業コード ・・・RFタグ情報データの情報元企業コード、情報提供先企業コード1、情報企業先コード2ごとにレコードを作成する。(最大3レコードとなる。)
スキャン日 ・・・RFタグ情報データのスキャン日
スキャン時刻 ・・・RFタグ情報データのスキャン時刻
ロケーションコード ・・・RFタグ情報データのロケーションコード
数量確認1、数量確認2 ・・・RFタグ情報の情報元企業コードのレコードのみに数量確認1、数量確認2をセットする。
データ更新日時 ・・・システムよりデータ更新日時をセットする。
【0027】
倉入でゲートJA1を通過したときに関係構成員情報はM1の1社のみであるので、公開RFタグ情報データは「企業コード M1」の1つのみが作成される。
この公開RFタグ情報データは、メーカーM1においてロット管理システム、在庫管理システム及びトレーサビリティに利用される。
【0028】
出荷に際してゲートJA2を通過したときは、関係構成員情報はM1、C1の2社であるから、「企業コード M1」と「企業コード C1」の2つの公開RFタグ情報データが作成される。この公開RFタグ情報データは、メーカーM1においてロット管理システム、在庫管理システム、トレーサビリティ及び納品先へのロット報告に利用され、得意先C1において納入されるロット確認に利用される。
【0029】
得意先に荷が到着してゲートTB51を通過したときも、関係構成員情報はC1、M1の2社であるから、「企業コード C1」と「企業コード M1」の2つの公開RFタグ情報データが作成される。この公開RFタグ情報データは、メーカーM1においてトレーサビリティ及び製品到着確認に利用され、得意先C1においてロット管理システム、在庫管理システム及びトレーサビリティに利用される。
【0030】
公開RFタグ情報データの保管期間は、例えばスキャン日を基準に10日間とし、保管期間を経過したものは公開RFタグ情報データベースから削除される。
【0031】
公開RFタグ情報データは、その「企業コード」に記載されている構成員のみが閲覧することができる。
ASPの公開RFタグ情報データの受信は以下のようにできる。
(1) 端末コンピュータをASPに接続する。その際に企業コード、パスワードを登録する。
(2) ASPに接続されたならば、データ受信の条件を設定する。
企業コード ・・・ASP接続時に指定済み
スキャン日、スキャン時刻 ・・・任意の期間
データ更新日時 ・・・任意の期間(指定なしを認める。)
(3) (2)の条件に該当するデータ(CSV形式)を端末コンピュータに送信する。
各構成員は、このデータを使って社内システムを構築できる。
【0032】
次に、図3に基づいて荷が出荷されるまでの情報の流れの例を説明する。これは、送り側の構成員(メーカー:企業コード=M1)から受け側の構成員(得意先:企業コード=C1)に荷を送る場合である。メーカーM1の社内システムの記憶部には生産予定データベース、ロットデータベース、積込指示データベース、納品書データベースがあり、得意先C1の社内システムの記憶部にはロッドデータベースがある。また、ASPの記憶部にはRFタグ情報データベース、公開RFタグ情報データベースの他に得意先ロットデータベースが設定されている。
【0033】
RFタグが取り付けられたパレットは資材倉庫に一時保管されている。パレットが生産ラインに供給され、生産品が荷として積まれると、生産完了報告が生産予定データベースに記録され、ロット票にロット番号、品名、生産日、パレット番号などが印字される。また、ハンディーターミナルでRFタグの固有IDを読み込み、固有IDとロット番号、品名、生産日、パレット番号を紐付けし、ロットデータベースに記憶する。
【0034】
メーカーの倉入に際し、ゲートJA01を通過するときにRFタグが読み込まれ、ロットデータベースに記憶されているデータのロケーションが更新される。また、その固有IDに紐付けされているRFタグ情報データがASPに送信され、ASPのRFタグ情報データベースに記憶されると共に公開RFタグ情報データが作成され、公開RFタグ情報データベースに記憶される。この公開RFタグ情報データはメーカーM1が閲覧できる。
【0035】
積込指示データベースから積込み指示が出され、荷を積んだパレットが出荷されるに際してゲートJA02を通過するときにRFタグが読み込まれ、ロットデータベースに記憶されているデータのロケーションが更新される。また、その固有IDに紐付けされているRFタグ情報データがASPに送信され、ASPのRFタグ情報データベースに記憶されると共に公開RFタグ情報データが作成され、公開RFタグ情報データベースに記憶される。この公開RFタグ情報データはメーカーM1と得意先C1が閲覧でき、ロケーションコードJA02が記録されているので、得意先C1は荷が出荷されたことを知ることができる。また、ロットデータベースに照会して納品ロッド明細を知ることができる。
【0036】
また、メーカーM1のロットデータベースと納品書データベースから、得意先C1に納品したロット情報がASPの得意先ロットデータベースに送られて記憶される。このロット情報はメーカーM1と得意先C1が閲覧できる。
【0037】
次に、図4に基づいて荷が出荷された後の情報の流れの例を説明する。
荷が得意先C1に到着し、倉入に際してゲートTB1を通過するときにRFタグが読み込まれ、その固有ID、ロケーションコードなどがASPに送信され、新たな公開RFタグ情報データが作成される。この公開RFタグ情報データはメーカーM1と得意先C1が閲覧でき、ロケーションコードTB51が記録されているので、メーカーM1は荷が得意先C1に到着したことを知ることができ、得意先C1は納品ロットの確認ができる。
【0038】
荷が得意先C1で生産ラインに供給されるに際し、ゲートTB52を通過するときにRFタグが読み込まれ、その固有ID、ロケーションコードなどがASPに送信され、新たな公開RFタグ情報データが作成される。この公開RFタグ情報データはメーカーM1と得意先C1が閲覧でき、ロケーションコードTB52が記録されているので、メーカーM1は製品の使用状況を確認でき、また、パレットを得意先C1から回収可能になったことも知ることができる。
【0039】
以上は、メーカーM1から得意先C1に荷を送る場合であるが、メーカーM1から得意先C1に荷を送り、さらにその荷を得意先C1から得意先C2に送るような場合にも本発明を適用できる。その場合、RFタグ情報データの「情報元企業」は「M1」、「情報提供先企業コード1」は「C1」、「情報提供先企業コード2」は「C2」となり、公開RFタグ情報データはM1、C1、C2のそれぞれについて作成され、合計3つになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成員間でRFタグ付きの荷を送受する物流を支援するシステムであって、
各構成員が所有するRFタグリード手段と端末、及びASP(Application Service Provider)に設定された情報処理部及び記憶部によって構成され、
最初に荷を送る構成員は、RFタグリード手段でRFタグの固有IDを読み取ると共に、該固有ID、関係構成員情報、RFタグリード手段固有のロケーションコード及び荷情報を含むRFタグ情報データを作成し、これを前記端末で前記情報処理部に送信し、
前記情報処理部は、前記RFタグ情報データから、その関係構成員ごとに当該構成員情報及び固有IDを含む公開RFタグ情報データを作成すると共に前記記憶部に保存し、
その後、荷の移動における任意のタイミングで、構成員はRFタグリード手段でRFタグの固有IDを読み取ると共に、該固有ID及びRFタグリード手段固有のロケーションコードを前記端末で前記情報処理部に送信し、
これを受けた前記情報処理部は、前記公開RFタグ情報に新たなロケーションコードを記録して前記記憶部に保存し、
各構成員は、前記端末から前記情報処理部に接続し、自己の構成員情報が記録されている前記公開RFタグ情報データを閲覧可能にしたことを特徴とする物流支援システム。
【請求項2】
前記RFタグが荷を載せるパレットに取り付けられている請求項1に記載の物流支援システム。
【請求項3】
前記RFタグ情報データ及び公開RFタグ情報データが、RFタグを読み取ったスキャン日時情報を含む請求項1又は2に記載の物流支援システム。
【請求項4】
受け側構成員の前記公開RFタグ情報データには前記荷情報の全部又は一部が記録されない請求項1〜3のいずれかに記載の物流支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243252(P2012−243252A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115872(P2011−115872)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(501349309)東洋ガラス物流株式会社 (1)