説明

物理気相成長中に加工物を支持する方法

【課題】物理気相成長中に加工物を支持する方法及び関連する装置を提供する。
【解決手段】吸熱性コーティング(15)でコートされた支持面を有するアルミニウム製支持体(11)が提供される。冷却によって、加工物が350℃〜450℃の温度になるように、支持体は約100℃に冷却されPVDプロセスが実施される。コーティングは、不活性であり及び/または超高電圧に適合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理気相成長(PVD)中に加工物を支持する方法及び加工物支持体を含む物理気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能トランジスタは、これらデバイスに固有の非常に高い電流密度を扱うので、コンタクト層として厚いアルミニウム層を使用することが多い。厚いAl被膜は、コンタクト層の抵抗を最小限にし、それによりスイッチング損失を最小限にする必要がある。というのは、スイッチング損失は、デバイスの速度と効率を低下させ得るからである。一般に、上記デバイスは、全層ウエハに埋込まれた半導体デバイス上に蒸着された厚さが1〜20μmのアルミニウム層を一つ以上有するソースコンタクトを備えた直立構造を有している。
【0003】
アルミニウム及びアルミニウム被膜は、マグネトロンスパッタリング法によってウエハ上に蒸着することができる。したがって、直流電源が、アルミニウムターゲットと環状アノードリングの間に接続される。このシステムが真空引きされ、コートすべき部材が前記ターゲットの下方の支持体に配置され、次いで低圧放電(一般に約数mT)を生成させて、材料がターゲットからウエハ上にスパッタされる。この方法を利用して厚い金属コーティングを蒸着させる場合、真空システム内で金属のイオンまたは中性分子のプラズマやインスタントフラックス由来の熱を除去することは困難であるため、コートされているウエハの温度は著しく上昇し得る。しかしながら、ウエハが製造中に到達できる温度には限界があることが多く、450℃が一般的な上限であり、且つ半導体製造ラインの配線工程(back end of line integration scheme)の一般的な最高温度である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、生産性をあげるには高い蒸着速度が必要なので、ターゲットには高い直流電力が送られ、その結果、この高い電力がウエハに著しい熱負荷を加えることになる。
【0005】
ウエハの温度は、ウエハと静電クランプもしくは機械的クランンプシステムを利用するウエハ支持体との間の気体の熱伝導によって制御することが最も一般的である。これらの方法は機能するが、実際に行うためには比較的コスト高になり得、かつその性能は、スパッタされる材料が固定物をコートし始めると低下する傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、
(a)吸熱性コーティングでコートされたアルミニウム表面を提供する工程;
(b)支持体を約100℃に冷却する工程;及び
(c)冷却によって、加工物の温度が350℃〜450℃になるように、物理気相成長(PVD)プロセスを実施する工程、
を含む、物理気相成長法中に加工物を支持する方法から構成される。
【0007】
コートされた加工物支持体を使用する方法は知られており、例えば米国特許第5183402号に開示されている。この特許の目的は、ウエハをプラテン(platen)の温度に維持することである。しかし、アルミニウムは、かねがね、高温度(約400℃超)の操作には不適切なプラテン用材料であるとみなされているので、現在までのところ、プラテンは一般にステンレス鋼で製造されている。アルミニウムの熱伝導率はステンレス鋼より優れていることが知られているので、当業者は、アルミニウムへのコーティングは必要でないと考えているであろう。しかし、以下に示すように、本発明の発明者らは、前記コーティングが上記のような特定の温度領域でのみ実質的効果を有することを確認したのである。
【0008】
上記コーティンングは、不活性であり及び/または超高電圧にも適合できる。代表的なコーティングは、CrOxまたはAl23である。
【0009】
別の態様では、本発明は、真空チャンバーと、加工物を支持するため前記チャンバー内に配置された支持体と、その支持体を冷却するための冷却サイクルとを備えた物理気相成長装置であって、支持体が支持面を有するアルミニウム本体を備えかつ支持面が吸熱性コーティングでコートされている物理気相成長装置で構成されている。
【0010】
コーティングとしては上記のものが好ましい。特定の実施形態では、支持体は約100℃まで冷却される。
【0011】
上記方法と装置は、スパッタリングによるアルミニウムへの高速蒸着用に特に適している。
【0012】
本発明を上記のように定義したが、本発明は、上記のまたは下記の構成のいずれの発明的組合せも含むと解すべきである。
【0013】
本発明は各種の方法で実施することができ、特定の実施形態を、添付図面を参照しながら例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】スパッタリング装置の模式図である。
【図2】26kwの電力を加えられたターゲットについて特定の温度範囲におけるコーティングの効果を示す。
【図3】40kwに設定された場合の対応するグラフである。
【図4】DC電力が40kwでプラテンの温度が100℃に制御されている場合の、アルミニウム及びアルミニウム/CrOxをコートされたプラテンアセンブリについてのウエハの温度及び蒸着被膜の粒径を列挙した表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、真空チャンバー10は、対向するターゲット12を有する支持体、すなわちプラテン11を含む。当業界で知られているように、ターゲットは、マグネトロン13で生成される各種の磁界を有し、DC電源14によって電力が供給される。また、当業界で知られているように、プラズマがチャンバー内に打ち込まれて、イオンがプラズマからターゲットに対して引き出されて、ターゲットからアルミニウムがスパッタされ、支持体11に保持されているウエハ16上に降下する。
【0016】
一般に、350℃を超えて400℃までの温度で、シリコンウエハは、有意な量の熱を放射する。例えばシリコンウエハ上の二酸化ケイ素層の表面をアルミニウムでコーティングする場合、たいていの場合、ウエハからの熱伝達はウエハの裏面に限定される。
【0017】
本発明の出願人らは、多量の電力及びそれによる多量の加熱を伴う蒸着速度の高い方法に関心があり、アルミニウムプラテンが高熱伝導率を有することから、アルミニウムプラテンを試験することに決定した。しかしながら、図2及び3に示すように、2種類の電力条件について100℃に冷却されたアルミニウムプラテンで実験したところ、驚くべきことには、ウエハの温度は450℃を超える温度まで上昇し続けたので、この方法は容認できなかった。しかしながら、そのプラテンを、不活性で超高電圧に適合できるコーティングでコートすると、ウエハの温度は約350℃で横ばいになり、両方の場合に、プラテンの温度は450℃未満に保持された。実際に、最初の例において、ウエハは400℃に保持された。
【0018】
したがって、驚くべきことには、この方法は、気体による裏面冷却、静電気によるクランプ、あるいは機械的クランプシステムさえも必要とせずに、高温プロセスにおいて、ウエハを冷却する非常に有効な方法を提供する。
【0019】
図4は、100℃に制御されているアルミニウムプラテンに対する40kWプロセスにより、SiO2またはSiO2/Ti/TiNライナー上のウエハの温度が540℃になり、一方で吸熱性コーティングを有するプラテンアセンブリが、ウエハの温度を440℃に保持することを示している。コートされたプラテンアセンブリに見られる粒子の大きさが小さいほど、ウエハの温度が低いことを示している。このデバイスのプロセス条件として、BEOLサーマルバジェット(BEOL thermal budget)が450℃未満に限定されていたので、従来のアルミニウムプラテンは使用できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理気相成長(PVD)中に加工物を支持する方法であって、
(a)吸熱性コーティングでコートされた支持面を有するアルミニウム製支持体を提供する工程;
(b)前記支持体を約100℃に冷却する工程;及び
(c)冷却によって、前記加工物の温度が350℃〜450℃になるように、物理気相成長(PVD)プロセスを実施する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記コーティングが、不活性であり及び/または超高電圧に適合できる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングが、CrOx、Al23、または強力に熱を吸収する金属酸化物の被膜である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
真空チャンバーと、加工物を支持するために前記チャンバー内に配置された支持体と、支持体を冷却する冷却回路とを備えた物理気相成長装置であって、前記支持体が支持面を有するアルミニウム本体を含み、前記支持面が吸熱性コーティングでコートされている、物理気相成長装置。
【請求項5】
前記コーティングが、不活性であり及び/または超高電圧に適合できる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記コーティングが、CrOx、Al23、または強力に熱を吸収する金属酸化物の被膜である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記支持体が約100℃に冷却される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate