説明

物理的乾燥ウレタンアクリレートに基づく水性被覆系

本発明は、ポリウレタン水性分散体に基づく放射線硬化性被覆系、この被覆系の製造方法、この被覆系の塗料および/または接着剤としての使用、その塗料および/または接着剤が適用された物品および基材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン水性分散体に基づく放射線硬化性被覆系、それらの製造方法、前記被覆系のラッカーおよび/または接着剤としての使用、これらのラッカーおよび/または接着剤が適用された物品および基材を記載する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンポリマーに基づく放射線硬化性水性被覆系は、被覆、とりわけ木材、プラスチックおよび皮革の被覆に使用され、良好な耐薬品性および機械的安定度のような多くの好ましい特性を特徴とする。特に有利なのは、高エネルギー放射線を用いてポリマーに含まれるエチレン性二重結合を架橋させることにより、数秒以内にポリウレタン上層が硬化することである。
【0003】
多くの用途にとって、例えば木材/家具またはプラスチックの被覆において、水を蒸発させた後、放射線硬化の前に、十分な物理的表面乾燥がなされていることは極めて重要である。すなわち、水を蒸発させた後、指触乾燥状態になり、非ブロッキング性を示し、未だ放射線硬化されていない被膜は、ペーパー仕上げでき、積み重ねることができ、多くの様々な機械的負荷に付すことができる。
【0004】
着色ラッカーにとって、その被膜が未放射線硬化状態ですでに指触乾燥状態であり、非ブロッキング性であるなら、さらに重要な利点がある。顔料、例えば二酸化チタンは、紫外線を散乱および吸収し、顔料含有量が高い場合は、より下層のラッカー層における放射線誘起重合が不十分になり得る。このことは、放射線硬化前になお粘着性を有する系の場合、放射線硬化後、硬化した上層の直ぐ下に軟質またはなお粘着性である層が存在することを意味する。その結果、基材への接着性は弱くなり、化学薬品および着色剤に対する耐性は低くなる。着色ラッカーの底層が、それ自体がフィルムであり不粘着性であるならば、不十分な放射線硬化にもかかわらず、接着性および耐性の両方が向上する。
【0005】
近年の被覆系に対する要求は、多種多様である。放射線硬化性被覆系が物理的乾燥後に非ブロッキング性であり、指触乾燥状態であることが単に有利ではなく、むしろ、放射線硬化により、高い耐化学薬品性および良好な機械的強度を特徴とするフィルムがもたらされるべきである。
【0006】
DE2912574Aは、アクリル基により末端化され、ポリイソシアネート、ジメチロールカルボン酸またはトリメチロールカルボン酸、ポリテトラメチレンジオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびモノヒドロキシ官能性アクリレートから構成される水分散性ウレタンオリゴマーを記載する。これらのウレタンオリゴマーは、繊維製品の被覆剤として使用され、特に柔軟性、弾力性および引張強度が重要となる。
【0007】
EP98752Aは、イオン性基を有するジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ジイソシアネートおよびモノヒドロキシ官能性アクリレートの反応により得られる水性ポリウレタン分散体の製造方法を記載する。
【0008】
EP181486は、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリラクトンジオールまたはポリカーボネートジオール、イソシアネート基に関して単官能または二官能のアニオン性または非イオン性化合物、ジイソシアネート、低分子量ジアミンおよび/またはジオールおよびモノヒドロキシ官能性アクリレートを含有する皮革用高光沢ラッカー剤を製造するための、紫外線照射による架橋性オリゴウレタンの水性分散体を記載する。これらの系は非常に柔軟で弾力がある。
【0009】
EP209684Aには、イオン性ウレタン−尿素アクリレートに基づく水性エマルションが記載されている。このエマルションは、脂環式ポリイソシアネート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびアミノカルボン酸のナトリウム塩を含有し、好ましくはアセトン法により製造されることを特徴とする。
【0010】
EP392352Aは、柔軟性基材を被覆するための、高エネルギー照射により架橋可能なポリウレタンの水性分散体を記載する。これらは、ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール、イオン性基を有するOH−またはNH−官能性化合物、単官能ポリエーテルポリオール、およびエチレン性不飽和基と少なくとも1つのヒドロキシ基を有する化合物から構成される。
【0011】
前記した5つの特許公報は、好ましい基材として繊維製品を含む、柔軟性および弾力性被覆剤のための系を提供するものであることを特徴とする。軟化構造成分として、長鎖脂肪族ポリオールおよび/または二酸から構成されるポリエステルポリオールが使用される。前記系の物理的表面乾燥は不十分であり、その耐薬品性もまた不十分である。これは特に着色調製物で顕著である。
【0012】
EP704469Aは、(a)ポリイソシアネート、(b)ポリエステルポリオール、(c)低分子量ポリオール、(d)少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物、(e)少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの共重合性不飽和基を有する化合物、および任意に(f)少なくとも1つの2官能性アミンを含有する水性分散性放射線硬化性ポリウレタンを記載する。この文献では、少なくとも成分(a)、(b)および(e)をポリウレタンの製造の一段階で反応させなければならない。これらの系は、特に繊維製品の被覆に用いられるため、非常に柔軟でなければならない。
【0013】
ポリエステルポリオールを用いて放射線硬化性ポリウレタン分散体を構成することは先行技術であるが、ポリエステルが長鎖脂肪族ポリオールおよび/または二酸から構成されることから、これまでポリエステルポリオールは、好ましくは軟化構造成分として使用されてきた。放射線硬化性ポリウレタン分散体の構造単位としてのそのような軟化ポリエステルポリオールは、特に着色調製物において、低い物理的乾燥度をもたらし、また着色剤や溶剤に対する不十分な耐性をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第2912574号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第98752号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第181486号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第209684号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第392352号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第704469号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、急速な物理的乾燥が可能であり、乾燥後に高い非ブロッキング性を有し、かつ、放射線硬化後に耐薬品性である極めて硬い放射線硬化性被覆剤系を提供することである。しかしながら、この被膜は、脆性を示さず、十分な柔軟性をなお示すべきである。このことは、クリヤラッカーの場合にも着色ラッカーの場合にも当てはまる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、ポリウレタンアクリレートの放射線硬化性水性分散体が、芳香族ジカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸と、2〜4個の炭素原子を有する脂肪族ジオールまたは脂肪族トリオールとに基づくポリエステルポリオールを含有する場合に、この分散体が、短い乾燥時間後に非ブロッキング性被膜を生じることが見出された。クリアラッカーとしても着色ラッカーとしても、これらの分散体の被膜は、放射線硬化後に高い振子硬度に達し、化学薬品および着色剤に対して極めて耐性であることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、
(A)(メタ)アクリレート基を含有するモノヒドロキシ官能性アルコールの1種以上の化合物、
(B)(B1)2個のOH官能基の間に2〜4個の炭素原子を有する脂肪族ジオールおよび/または脂肪族トリオールと、
(B2)芳香族ジカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸
とから得られるポリエステルポリオール、
(C)任意に、(A)および(B)とは異なるポリオール
(D)ポリウレタン分散体に対する分散作用を有し、少なくとも1つのイソシアネート反応性基と、非イオン性基、イオン性基またはイオン性基形成性基であるさらなる基とを含有する1種以上の化合物、
(E)有機ポリイソシアネート、
(F)任意に、(A)〜(D)とは異なり、かつ、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する化合物
を構造成分として含んでなるポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体に関する。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、対応するアクリレート官能基またはメタクリレート官能基あるいはその2つの混合物を示す。
【0019】
分散体は、任意に成分(ii)を含有してよい。成分(ii)は、少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含有する反応性希釈剤である。
【0020】
構成成分(A)と任意成分(ii)は、フリーラジカル共重性の二重結合の含量が、分散体の非水性成分の1kgあたり0.5〜6.0モル、好ましくは1.0〜5.5モル、特に好ましくは1.5〜5.0モルとなるような量で使用する。
【0021】
構造成分(B)は5〜75重量%、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%の量で使用され、成分(A)〜(F)の総量は100重量%である。
【0022】
成分(ii)は0〜65重量%、好ましくは0〜40重量%、特に好ましくは0〜35重量%の量で使用され、成分(i)および(ii)の総量は100重量%である。
【0023】
成分(A)は、(メタ)アクリレート基を含有するモノヒドロキシ官能性アルコールを含む。そのようなモノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコールは、例えば以下である:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン伸長変性物、例えばPemcure(登録商標)12A(Cognis(ドイツ))、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、および多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化された、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、またはそれらの工業用混合物)の平均してモノヒドロキシ官能性であるジ−、トリ−またはペンタ−(メタ)アクリレート。
【0024】
また、二重結合含有酸と場合により二重結合を含有するモノマー状エポキシド化合物との反応から得られるアルコールを、モノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコールとして使用することもできる。好ましい反応生成物は、(メタ)アクリル酸と、グリシジル(メタ)アクリレート、または第三級飽和モノカルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物からなる群から選択される。第三級飽和モノカルボン酸は、例えば、2,2−ジメチル酪酸、エチルメチル酪酸、エチルメチル吉草酸、エチルメチルヘキサン酸、エチルメチルヘプタン酸および/またはエチルメチルオクタン酸である。
【0025】
特に好ましいモノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコールは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびエチルメチルヘプタン酸グリシジルエステルの(メタ)アクリル酸による付加生成物、ならびにそれらの工業用混合物である。とりわけ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
モノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコール(A)は、単独でまたは混合物として使用され得る。
【0027】
成分(B)は、2個のOH官能基の間に2〜4個の炭素原子を含有する脂肪族ジオール(成分B1)(例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールおよび/または1,4−ブタンジオール)および/または脂肪族トリオール(成分B1)(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセロールおよび/またはひまし油)と、芳香族ジカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸(成分B2)(例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸および/またはトリメリット酸、ならびに前記酸の無水物)とから調製されたヒドロキシ官能性ポリエステルである。
【0028】
芳香族二酸および/または芳香族三酸(成分B2)は、脂肪族不飽和二酸、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸および/または無水テトラヒドロフタル酸を含む混合物として存在することもできる。
【0029】
ポリエステルポリオール(B)に好ましい構造単位は、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセロールおよび/またはひまし油(B1)、ならびにフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸および/またはテレフタル酸(B2)である。
【0030】
ポリエステルポリオール(B)に特に好ましい構造単位は、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールおよび/またはトリメチロールプロパン(B1)、ならびにイソフタル酸および/またはテレフタル酸(C2)である。
【0031】
構造成分(B)は、20〜500mgKOH/(物質のg)、好ましくは40〜400mgKOH/(物質のg)、特に好ましくは70〜390mgKOH/(物質のg)のOH価を有する。
【0032】
成分(C)は、それぞれの場合に32〜240g/モルの分子量を有するモノマー状のモノオール、ジオールおよび/またはトリオール、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルエステル)、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよび/またはトリメチロールブタンを包含する。ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンが好ましい。
【0033】
成分(B)の硬化効果を少なくとも部分的に相殺する可撓性をもたらすのであまり好ましくはないが、成分(C)は、さらに、オリゴマー状および/またはポリマー状のヒドロキシ官能性化合物を包含できる。これらオリゴマー状および/またはポリマー状のヒドロキシ官能性化合物は、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、C2ポリエーテル、C3ポリエーテルおよび/またはC4ポリエーテル、ポリエーテルエステル、1.0〜3.0の官能価を有するポリカーボネートポリエステルであって、各々の場合に、300〜4000g/モル、好ましくは500〜2500g/モルの範囲に重量平均モル質量Mを有する。
【0034】
ヒドロキシ官能性ポリエステルアルコールは、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環式ジカルボン酸と、成分(C)として先に列挙したようなモノマー状のジオールおよびトリオールとに基づくもの、ならびにラクトン系ポリエステルアルコールである。
【0035】
ヒドロキシ官能性ポリエーテルオールは、例えば、環状エーテルの重合によって、またはアルキレンオキシドと出発分子との反応によって得られうる。
【0036】
ヒドロキシ官能性ポリカーボネートは、ヒドロキシル末端ポリカーボネートであり、ジオール、ラクトン変性ジオールまたはビスフェノール(例えばビスフェノールA)とホスゲンまたはカルボン酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネート)との反応により得られうる。
【0037】
成分(D)は、性質上カチオン性またはアニオン性のいずれかであり得るイオン性基、および/または非イオン性親水性基を含有する。カチオン性、アニオン性または非イオン性の分散作用を有する化合物は、例えば、スルホニウム基、アンモニウム基、ホスホニウム基、カルボキシレート基、スルホネート基もしくはホスホネート基、または塩形成によって前記基に転化できる基(潜在イオン性基)、あるいはポリエーテル基を含有し、存在するイソシアネート反応性基によってマクロ分子に組み込まれ得る化合物である。ヒドロキシル基およびアミン基が、好適なイソシアネート反応性基である。
【0038】
適当なアニオン性または潜在アニオン性化合物(D)は、例えば以下である:モノヒドロキシカルボン酸およびジヒドロキシカルボン酸、モノアミノカルボン酸およびジアミノカルボン酸、モノヒドロキシスルホン酸およびジヒドロキシスルホン酸、モノアミノスルホン酸およびジアミノスルホン酸、モノヒドロキシホスホン酸およびジヒドロキシホスホン酸、モノアミノホスホン酸およびジアミノホスホン酸、ならびにそれらの塩、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N−(2−アミノエチル)−アラニン、2−(2−アミノ−エチルアミノ)−エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルスルホン酸またはエチレンジアミンブチルスルホン酸、1,2−プロピレンジアミン−エチルスルホン酸または1,3−プロピレンジアミン−エチルスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)プロパン−1−スルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リジン、3,5−ジアミノ安息香酸、イソホロンジアミン(1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン、またはIPDA)とアクリル酸との付加生成物(EP916647A、実施例1)、重亜硫酸ナトリウムの2−ブテン−1,4−ジオールによる付加物、ポリエーテルスルホネート、およびDE2446440Aの第5〜9頁の式(I)〜(III)に記載されているような、2−ブテンジオールおよびNaHSOのプロポキシル化付加物。適当なカチオン性構造単位またはカチオン性基に転化できる構造単位は、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンおよびN,N−ジメチルエタノールアミンである。
【0039】
特に好ましいイオン性または潜在イオン性化合物(D)は、イオン性基としてカルボキシル基および/またはスルホネート基を含有する化合物であり、その例は以下である:2−(2−アミノ−エチルアミノ)スルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)プロパン−1−スルホン酸、イソホロンジアミンとアクリル酸との付加生成物(EP916647A1、実施例1)、ヒドロキシピバリン酸および/またはジメチロールプロピオン酸、ならびに第三級アミン含有化合物、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミンおよび/またはN,N−ジメチルエタノールアミン。
【0040】
最も好ましいイオン性または潜在イオン性化合物(D)は、ヒドロキシピバリン酸および/またはジメチロールプロピオン酸である。
【0041】
非イオン性親水化作用を有する適当な化合物は、例えば、少なくとも1個のヒドロキシ基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、エチレンオキシドから誘導された構造単位を30重量%〜100重量%の量で含有する。直鎖構造および1〜3の官能価を有する適当なポリエーテル、そしてまた、一般式(I):
【化1】

[式中、RおよびRは、相互に独立に、1〜18個の炭素原子を含有する二価の、脂肪族基、脂環式基または芳香族基を表し、これらは酸素原子および/または窒素原子で中断されていてよく、Rはアルコキシ末端ポリエチレンオキシド基を表す。]
で示される化合物も適している。
【0042】
非イオン性親水化作用を有する化合物は、例えば、適当な出発分子のアルコキシル化によって得られるような、統計的平均で一分子あたり5〜70個、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を有する単官能ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである。
【0043】
適当な出発分子は、例えば以下である:飽和モノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)およびノナノール(各異性体)、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール(各異性体)またはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、不飽和アルコール、例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレインアルコール、芳香族アルコール、例えば、フェノール、クレゾール(各異性体)またはメトキシフェノール(各異性体)、芳香脂肪族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、アニスアルコールまたは桂皮アルコール、第二級モノアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)−アミン、N−メチル−シクロヘキシルアミンおよびN−エチル−シクロヘキシルアミンまたはN−メチル−ジシクロヘキシルアミンおよびN−エチル−ジシクロヘキシルアミン、ならびに複素環式第二級アミン、例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾール。好ましい出発分子は、飽和モノアルコールである。出発分子として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを特に好ましく使用する。
【0044】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、アルコキシル化反応において任意に所望の順でまたは混合物として使用できる。
【0045】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、純粋なポリエチレンオキシドポリエーテルまたは混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのいずれかであり、混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのアルキレンオキシド単位は、30モル%以上、好ましくは40モル%以上のエチレンオキシド単位を含有する。好ましい非イオン性化合物は、40モル%以上のエチレンオキシド単位と60モル%以下のプロピレンオキシド単位とを含有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0046】
成分(D)において言及した酸は、中和剤(例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエタノールアミン、アンモニア、N−エチルモルホリン、LiOH、NaOHおよび/またはKOH)との反応によって、対応する塩に転化される。中和度は、好ましくは50〜125%である。
【0047】
成分(D)において言及した塩基は、中和剤(例えば、無機酸、例として、塩酸、リン酸および/または硫酸、および/または有機酸、例として、ギ酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸および/またはp−トルエンスルホン酸)との反応によって、対応する塩に転化される。中和度は、好ましくは50〜125%である。
【0048】
成分(D)において言及した化合物は、混合物として使用することもできる。
【0049】
イオン性親水化、ならびにイオン性親水化と非イオン性親水化との組み合わせが、単なる非イオン性親水化より好ましい。
【0050】
成分(E)は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式のポリイソシアネート、またはそのようなポリイソシアネートの混合物の群から選択されるポリイソシアネートを含む。適当なポリイソシアネートは、例えば、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−ジイソシアナト−シクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアナト−シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、α,α,α’,α’−テトラ−メチル−m−キシリレンジイソシアネートまたはα,α,α’,α’−テトラ−メチル−p−キシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN)(EP928799A)、およびそれらの混合物である。また、ビウレット基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基および/またはウレトジオン基を含有する前記ポリイソシアネートの同族体またはオリゴマー、それらの互いの混合物、およびそれらと前記ポリイソシアネートとの混合物も適している。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン、およびそれらの互いの混合物が好ましい。また、ビウレット基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基および/またはウレトジオン基を含有する、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)および4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタンの、同族体またはオリゴマー、それらの互いの混合物、およびそれらと前記好ましいポリイソシアネートとの混合物も好ましい。
【0051】
モル質量を増やすため、成分(F)として、モノアミンおよびジアミンおよび/または単官能性アミノアルコールまたは二官能性アミノアルコールを使用する。ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートの延長が水性媒体中で場合により生じ得るので、好ましいジアミンは、イソシアネート基に対する反応性が水より高いジアミンである。下記群から選択されるジアミンが特に好ましい:エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、アミノ官能性ポリエチレンオキシド、アミノ官能性ポリプロピレンオキシド(Jeffamin(登録商標)Dシリーズ(Huntsman Corp. Europe(ベルギー国ザヴェンテム))の名称で知られている)、およびヒドラジン。エチレンジアミンが最も好ましい。
【0052】
好ましいモノアミンは、下記群から選択される:ブチルアミン、エチルアミン、およびJeffamin(登録商標)Mシリーズのアミン(Huntsman Corp. Europe(ベルギー国ザヴェンテム))、アミノ官能性ポリエチレンオキシド、アミノ官能性ポリプロピレンオキシド、および/またはアミノアルコール。
【0053】
成分(ii)は、反応性希釈剤を包含する。成分(ii)は、少なくとも1個のフリーラジカル重合性基、好ましくはアクリレート基およびメタクリレート基を含有し、好ましくはイソシアネート基またはヒドロキシ基に対して反応性である基を含有しない化合物と理解される。
【0054】
好ましい化合物(ii)は、2〜6個、特に好ましくは4〜6個の(メタ)アクリレート基を含有する。
【0055】
特に好ましい化合物(ii)は、常圧で200℃を超える沸点を有する。
【0056】
反応性希釈剤は、概して、P. K. T. Oldring編、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints, 第II巻、第III章:Reactive Diluents for UV & EB Curable Formulations, Wiley and SITA Technology, ロンドン、1997年に記載されている。
【0057】
反応性希釈剤は、例えば、(メタ)アクリル酸によって完全にエステル化された、下記アルコールおよび下記アルコールのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、ならびに前記化合物の(メタ)アクリル化で生じる工業用混合物である:メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ジヒドロジシクロペンタジエノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール。
【0058】
成分(ii)は、好ましくは、以下を含んでなる群から選択される:テトラオールおよびヘキサオールの(メタ)アクリレート、例えば、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールまたはソルビトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化された、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールまたはソルビトール、および前記アルコールのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体の、(メタ)アクリレート、ならびに前記化合物の(メタ)アクリル化で生じる工業用混合物である。
【0059】
本発明の分散体の製造には、従来技術から既知の方法の全て、例えば、乳化剤/剪断力法、アセトン法、プレポリマー混合法、溶融乳化法、ケチミン法および自発固体分散法またはこれらから誘導された方法を使用できる。これらの方法の一覧は、Methoden der Organischen Chemie, Houben-Weyl, 第4版、第E20巻/パート2、1685頁、Georg Thieme Verlag, シュトゥットガルト、1987年に見出される。溶融乳化法およびアセトン法が好ましい。アセトン法が特に好ましい。
【0060】
本発明はまた、ポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法であって、ポリウレタンアクリレートプレポリマー(i)が、1以上の反応段階で成分(A)〜(D)と成分(E)との反応によって得られることを特徴とし、プレポリマーの調製前、調製中または調製後に、分散体に必要なイオン性基を形成するための中和剤を添加してよく、その後、プレポリマーに水を添加するかまたはプレポリマーを水層へと移送することにより分散工程を実施し、分散前、分散中または分散後に成分(F)により連鎖延長させてもよい方法も提供する。
【0061】
本発明はまた、少なくとも1個のフリーラジカル重合性基を含有する反応性希釈剤(成分ii)を1種以上添加する、前記方法も提供する。
【0062】
反応生成物を調製するため、初めに成分(A)、(B)、(C)および(D)を反応器に入れ、場合によりアセトンで希釈する。場合により、成分(ii)を成分(A)〜(D)に添加してもよい。イソシアネート付加を促進するため、イソシアネート付加反応触媒(例えば、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン、オクタン酸錫またはジラウリン酸ジブチル錫)を添加してよく、反応を開始させるために、混合物を加熱してよい。この目的のため、一般に、30〜60℃の温度を要する。次いで、ポリイソシアネートを計量添加する。逆の方法も可能であり、その場合、ポリイソシアネート(E)を反応容器に入れ、イソシアネート反応性成分(A)、(B)、(C)および(D)を添加する。成分(A)、(B)、(C)および(D)は、順次かつ任意の順に添加してもよい。成分の段階的反応、即ち、得られた付加物をまだ使用していない成分とさらに反応させる前の、成分(E)とイソシアネート反応性成分(A)、(B)、(C)および/または(D)の1種以上との独立した反応も可能である。
【0063】
反応をモニターするため、滴定、赤外線分光法または近赤外線分光法によって、NCO含有量を定期的に測定する。
【0064】
成分(E)中のイソシアネート基と成分(A)、(B)、(C)および(D)中のイソシアネート反応性基とのモル比は、0.8:1〜2.5:1、好ましくは1.2:1〜1.5:1である。
【0065】
本発明の方法によって成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)から生成物(i)を調製した後、出発分子内で形成させていなければ、イオン性分散作用を有する化合物(D)中心で塩を形成させる。成分(D)が酸性基を含有するならば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエタノールアミン、アンモニア、N−エチルモルホリン、LiOH、NaOHおよび/またはKOHから選択される塩基を好ましくは使用する。成分(D)が塩基性基を含有するならば、乳酸、酢酸、リン酸、塩酸および/または硫酸から選択される酸を好ましくは使用する。成分(D)として、エーテル基のみを含有する化合物を使用するならば、この中和工程は除外する。
【0066】
次いで、反応性希釈剤(ii)または反応性希釈剤(ii)の混合物を、場合により添加してよい。成分(ii)は、好ましくは30〜45℃で混合する。成分(ii)が溶解したらすぐに、必要に応じて、本発明の被覆系に望ましいモル質量の増加および分散体の形成が水性媒体中で起こる最終反応工程を実施する。成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)ならびに場合により反応性希釈剤(ii)から合成され、場合によりアセトンに溶解されたポリウレタンを、激しく撹拌しながらアミン(F)含有分散水に導入するか、または逆に分散水/アミン混合物をポリウレタン溶液に撹拌しながら添加する。さらに、本発明の被覆系に含まれる分散体が生じる。アミン(F)の使用量は、なお存在する未反応イソシアネート基に依存する。なお遊離しているイソシアネート基とアミン(F)との反応は、35〜150%の程度まで起こり得る。半化学量論量のアミン(F)を使用する場合は、未だ遊離しているイソシアネート基が水とゆっくりと反応する。過剰のアミン(F)を使用する場合、未反応イソシアネート基はもはや存在せず、アミン官能性ポリウレタンが得られる。未だ遊離しているイソシアネート基の好ましくは80〜110%、特に好ましくは90〜100%を、アミン(F)と反応させる。
【0067】
別の変法では、アセトン溶液中で、すなわち分散前かつ場合により反応性希釈剤(ii)の添加前または添加後に、アミン(F)によってモル質量を増加できる。
【0068】
別の変法では、分散工程後にアミン(F)によってモル質量を増加させることができる。
【0069】
必要に応じて、存在するならば有機溶媒を蒸留により除去できる。その後、分散体は、20〜60重量%、特に30〜58重量%の固形分を有する。
【0070】
分散工程および蒸留工程を並行して、すなわち同時にまたは少なくとも部分的に同時に、実施することもできる。
【0071】
本発明はまた、被覆剤の製造、特にラッカーおよび接着剤の製造における、本発明の放射線硬化性水性分散体の使用を提供する。
【0072】
常套法(例えば、熱、熱放射、移動、任意に乾燥空気および/またはマイクロ波)による水の除去後、本発明の分散体は透明な被膜を生じる。被膜を続く放射線誘起架橋および/またはラジカル誘起架橋によって硬化し、化学薬品に強い特に品質の高いラッカー被膜を得る。
【0073】
放射線誘起重合には、電磁放射が適している。そのエネルギーは、場合により適当な光開始剤の添加を伴って、(メタ)アクリレート二重結合のラジカル重合をもたらすのに十分である。
【0074】
放射線誘起重合は、好ましくは、400nm未満の波長を有する放射線(例えば、紫外線、電子放射線、X線またはガンマ線)によって実施される。紫外線放射が特に好ましく、紫外線放射での硬化は、光開始剤の存在下で開始する。光開始剤に関しては、基本的に、2つのタイプ、単分子(タイプI)と二分子(タイプII)とに分類される。適当な(タイプI)系は、芳香族ケトン化合物、例えば、第三級アミンと結合したベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロン、ハロゲン化ベンゾフェノン、または前記タイプの混合物である。さらに、例えば、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、およびα−ヒドロキシアルキルフェノンのような(タイプII)開始剤が適当である。水性被覆組成物に容易に配合できる光開始剤が好ましい。そのような製品は例えば、Irgacure(登録商標)500(ベンゾフェノンと(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトンとの混合物、Ciba(ドイツ、ラムペルトハイム))、Irgacure(登録商標)819 DW(フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド、Ciba(ドイツ、ラムペルトハイム))、Esacure(登録商標)KIP EM(オリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)−フェニル]−プロパノン]、Lamberti(イタリア、Aldizzate))である。これら化合物の混合物を使用することもできる。
【0075】
極性溶媒、例えばアセトンおよびイソプロパノールを、光開始剤の配合に使用することもできる。
【0076】
(メタ)アクリレート基の転化の程度は高温で増加する傾向にあるので、紫外線硬化は、有利には30〜70℃で実施される。これによって良好な耐性が得られる。しかしながら、個々の被覆組成物/基材組み合わせに対する最適な硬化条件が、当業者によって簡単な予備試験で決定されるように、紫外線硬化では基材の見込まれる熱感度を考慮しなければならない。
【0077】
本発明において、フリーラジカル重合を開始する放射線源は固定することができ、適当な常套のデバイスにより放射線源を通過させて被覆基材を動かす。あるいは、硬化の際に被覆基材を固定して、放射線源を常套のデバイスにより動かすことができる。室での放射も可能であり、この場合、例えば、被覆基材を室に導入し、次いで放射線源のスイッチを特定期間入れ、放射後再び基材を室から取り出す。
【0078】
必要に応じて、酸素によるラジカル架橋の阻害を防ぐため、硬化を不活性雰囲気中、すなわち酸素を除外して実施され得る。
【0079】
熱ラジカル硬化の場合、水溶性ペルオキシドまたは不水溶性開始剤水性エマルションが適当である。これらのラジカル形成体は、既知の方法で、促進剤と組み合わせることができる。
【0080】
本発明の被覆系は、常套の技術によって、好ましくは、噴霧、ロール塗り、流し塗り、印刷、ナイフ塗り、流し込み、引き塗りおよび浸漬によって、多種多様な基材に適用することができる。
【0081】
基本的に、本発明の被覆系で任意の基材をラッカー塗りまたはコートできる。好ましい基材は、無機基材、木材、木材派生製品、家具、寄木張りの床、ドア、窓枠、金属体、プラスチック、紙、ボール紙、コルク、無機基材、布地または皮革からなる群から選択される。本発明の被覆系は、下塗および/または仕上塗として適している。また、本発明の被覆系は、接着剤(例えば、触圧接着剤、熱活性化接着剤または貼り合わせ用接着剤)にあるいは接着剤として使用することもできる。
【0082】
本発明の被覆系は、単独で、または別の分散体とのバインダー混合物として使用できる。この分散体は、不飽和基を同様に含有する分散体、例えば、不飽和重合性基を含有する、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエポキシ(メタ)アクリレート系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリシロキサン系、ポリカーボネート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリウレタンポリアクリレート系および/またはポリアクリレート系の分散体であり得る。
【0083】
本発明の被覆系は、そのような、官能基(例えば、アルコキシシラン基、ヒドロキシ基および/または場合によりブロックされた状態で存在するイソシアネート基)を含有する、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリビニルエステル系、ポリビニルエーテル系、ポリシロキサン系、ポリカーボネート系および/またはポリアクリレート系の分散体を含有することもできる。このようにして、2つの異なった方法で硬化され得る二重硬化系を調製できる。
【0084】
同様に二重硬化系のために、本発明の被覆系にいわゆる架橋剤を添加することもできる。非ブロックおよび/またはブロックのポリイソシアネート、ポリアジリジン、ポリカルボジイミドおよびメラミン樹脂を好ましく使用し得る。水性被覆組成物のための非ブロックおよび/またはブロックの親水性化ポリイソシアネートが特に好ましい。被覆組成物の固形分に基づいて、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下の固体架橋剤を添加する。
【0085】
本発明の被覆系は、官能基を含有しない、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリシロキサン系、ポリビニルエーテル系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、塩素ゴム系、ポリカーボネート系、ポリビニルエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリレート系、ポリウレタン系、ポリアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、アルキド系、ポリカーボネート系、ポリエポキシ系またはエポキシ(メタ)アクリレート系の分散体を含有することもできる。それによって、架橋密度を低下でき、物理的乾燥に影響を与えることができ(例えば促進でき)、または接着の弾性化または適合をもたらすことができる。
【0086】
本発明の被覆系を含有する被覆組成物は、メラミンまたは尿素に基づくアミノ架橋剤樹脂、および/またはウレタン構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ビウレット構造および/またはアロファネート構造を有する、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび/またはトルイリデンジイソシアネートの任意に親水化基を含有してよいポリイソシアネートに基づく遊離ポリイソシアネート基またはブロックポリイソシアネート基含有ポリイソシアネートを含有してもよい。さらなる架橋剤として、カルボジイミドまたはポリアジリジンも可能である。
【0087】
被覆技術で既知の、バインダー、助剤および添加剤、例えば、顔料、着色料または艶消剤を、本発明の被覆系に添加または配合できる。そのような物質は、フロー剤および湿潤剤、スリップ剤、金属効果顔料を包含する顔料、充填剤、ナノ粒子、光安定化粒子、青味剤、増粘剤、表面張力低下剤である。
【0088】
本発明の被覆系は、フィルムの被覆に適しており、被覆フィルムの変形が、物理的乾燥と紫外線硬化との間に起こる。
【0089】
本発明の被覆系は、物理的乾燥後の耐ブロッキング性が重要であり、放射線硬化後の良好な耐薬品性が重要である、木材およびプラスチック基材へのクリヤラッカー用途に特に適している。
【0090】
本発明の被覆系は、組成物全体に基づいて10重量%以上の顔料含有量を有する、木材およびプラスチック用途にも特に適している。顔料含有量の高さ故に、被覆系中の放射線硬化性基が放射線硬化の際に不完全にしか硬化しないならば、非ブロッキング性被膜が得られる。
【0091】
本発明は、本発明のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体、アミノ樹脂系架橋剤、ブロックポリイソシアネート、非ブロックポリイソシアネート、ポリアジリジンおよび/またはポリカルボジイミド、および/または1種以上の更なる分散体を含有する被覆組成物も提供する。
【0092】
本発明は更に、本発明の被覆系で被覆された基材を提供する。
【実施例】
【0093】
NCO含有量は、DIN 53185に従って、滴定法によって各々の場合に測定した。
固形分は、蒸発によって未揮発性成分の全てを除去した後、DIN 53216に従って重量測定によって測定した。
平均粒度は、レーザー相関分光法によって測定した。
【0094】
実施例1:
本発明のポリエステル(成分B)の調製
6574部のイソフタル酸(成分B2)、1327部のトリメチロールプロパン(成分B1)、7207部のネオペンチルグリコール(成分B1)、および4部のFascat(登録商標)4100(ブチルスタンノン酸、Arcema Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア))を撹拌しながら一緒に190℃まで加熱した。1.5mgKOH/(物質のg)未満の酸価に達するまで、この温度を維持した。2.3の平均官能価および365mgKOH/(物質のg)のヒドロキシル価を有するポリエステルを得た。
【0095】
実施例2:
本発明のポリエステル(成分B)の調製
1661部のイソフタル酸(成分B2)、1661部のテレフタル酸(成分B2)、782部のエチレングリコール(成分B1)、1206部のネオペンチルグリコール(成分B1)、および1.5部のFascat(登録商標)4100(ブチルスタンノン酸、Arcema Inc.(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア))を撹拌しながら一緒に190℃まで加熱した。1.5mgKOH/(物質のg)未満の酸価に達するまで、この温度を維持した。2.0の平均官能価および99mgKOH/(物質のg)のヒドロキシル価を有するポリエステルを得た。
【0096】
実施例3:
本発明のポリエステル(成分B)の調製
1480部の無水フタル酸(成分B2)、および985部のエチレングリコール(成分B1)を撹拌しながら一緒に220℃まで加熱した。1.5mgKOH/(物質のg)未満の酸価に達するまで、この温度を維持した。2.0の平均官能価および288mgKOH/(物質のg)のヒドロキシル価を有するポリエステルを得た。
【0097】
実施例4:
本発明に従わないポリエステル(成分B)の調製
1460部のアジピン酸(成分B2)、219部のトリメチロールプロパン(成分B1)、および1435部のネオペンチルグリコール(成分B1)を撹拌しながら一緒に220℃まで加熱した。1.5mgKOH/(物質のg)未満の酸価に達するまで、この温度を維持した。2.3の平均官能価および255mgKOH/(物質のg)のヒドロキシル価を有するポリエステルを得た。
【0098】
実施例5:
EP704469A(実施例1)のポリエステルの調製
1503部のイソフタル酸、1321部のアジピン酸および2413部のヘキサンジオールを攪拌しながら一緒に220℃まで加熱した。1.5mgKOH/(物質のg)未満の酸価に達するまで、この温度を維持した。2.0の平均官能価および46mgKOH/(物質のg)のヒドロキシル価を有するポリエステルを得た。
【0099】
実施例6:
本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
1595部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(成分A)を、2236部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分E)、2244部のDesmodur(登録商標)N 3300(HDIトリマー、Bayer AG、ドイツ、レバークーゼン)(成分E)および0.75部のジブチル錫ジラウレート/1519部のアセトンの混合物に60℃で量り入れ、8.2重量%のNCO含量に達するまでこの混合物をさらに60℃で攪拌した。その後、421部のアセトンに溶解した1373部の実施例1のポリエステル(成分B)、305部のジメチロールプロピオン酸(成分D)および0.75部のジブチル錫ジラウレートを40℃で添加し、この混合物を攪拌しながら60℃まで加熱した。0.6重量%のNCO含量に達した後、混合物を40℃まで冷却し、その後147部のトリエチルアミンにより中和した。この透明な溶液を11350部の水に攪拌しながら添加した。その後、43.6部のエチレンジアミン(成分F)と100部の水との混合物を、分散体に攪拌しながら添加した。その後、わずかな減圧下、アセトンを分散体から留去した。43重量%の固形分、132nmの平均粒度、および8.5のpH値を有する、本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体6)を得た。
【0100】
実施例7
本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
410部のDesmodur(登録商標)N 3300(HDIトリマー、Bayer AG、ドイツ、レバークーゼン)(成分E)、0.3部のp−メトキシフェノールおよび0.006部のラウリン酸ジブチル錫を143部のアセトンに溶解した。60℃で、163部の2−ヒドロキシエチルアクリレートの添加を行った。4.1重量%のNCO含量に達した後、混合物を40℃まで冷却し、実施例2のポリエステルの80%強アセトン溶液435部(成分B)、47部のジメチロールプロピオン酸(成分D)、92部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分E)、110部のアセトンおよび0.5部のジブチル錫ジラウレートを添加した。0.9重量%のNCO含量に達するまでこの混合物を60℃で攪拌した後、40℃まで冷却し、25部のジメチルエタノールアミンにより中和し、1400部の水を攪拌しながら添加した。その後、7.0部のエチレンジアミン(成分F)と50部のアセトンとの混合物を、分散体に攪拌しながら添加した。その後、わずかな減圧下、アセトンを分散体から留去した。42重量%の固形分、93nmの平均粒度、および8.6のpH値を有する、本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体7)を得た。
【0101】
実施例8
本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
実施例3のポリエステル927部(成分B)を65℃で融解し、1900部のアセトンに溶解させた。2047部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(成分A)、305部のジメチロールプロピオン酸(成分D)、2236部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分E)および1.5部のジブチル錫ジラウレートを40℃で添加し、この混合物を60℃まで攪拌しながら加熱した。その後、2244部のDesmodur(登録商標)N 3300(HDIトリマー、Bayer AG、ドイツ、レバークーゼン)(成分E)を添加した。0.6重量%のNCO含量に達した後、混合物を40℃まで冷却し、173部のトリエチルアミンにより中和した。この透明な溶液を11350部の水に攪拌しながら添加した。その後、35.5部のエチレンジアミン(成分F)と100部の水との混合物を、分散体に攪拌しながら添加した。その後、わずかな減圧下、アセトンを分散体から留去した。41重量%の固形分、117nmの平均粒度、および8.3のpH値を有する、本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体8)を得た。
【0102】
実施例9:
本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
298部のペンタエリスリトールトリアクリレート(成分A)、116部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(成分A)、実施例2のポリエステルの80%強アセトン溶液1427部(成分B)、および134部のジメチロールプロピオン酸(成分D)を930部のアセトンに溶解させた。その後、269部のヘキサメチレン−ジイソシアネート(成分E)、269部のトルエン−2,4−ジイソシアネート(成分E)および0.4部の2−エチルヘキサン酸錫を添加した。この混合物を攪拌しながら60℃まで加熱した後、0.9重量%のNCO含量に達した後40℃まで冷却した。さらに290部のアセトンで希釈した後、81部のトリエチルアミンにより中和し、23.1部のエチレンジアミン(成分F)を添加した。この透明な溶液に2200部の水を攪拌しながら加えた。その後、わずかな減圧下、アセトンを分散体から留去した。41重量%の固形分、33nmの平均粒度、および7.0のpH値を有する、本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体9)を得た。
【0103】
実施例10:
本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
1595部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(成分A)を、2236部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分E)、2244部のDesmodur(登録商標)N 3300(HDIトリマー、Bayer AG、ドイツ、レバークーゼン)(成分E)および0.75部のジブチル錫ジラウレート/1519部のアセトンの混合物に60℃で量り入れ、8.2重量%のNCO含量に達するまでこの混合物をさらに60℃で攪拌した。その後、421部のアセトンに溶解した1373部の実施例1のポリエステル(成分B)、305部のジメチロールプロピオン酸(成分D)および0.75部のジブチル錫ジラウレートを40℃で添加し、この混合物を攪拌しながら60℃まで加熱した。0.6重量%のNCO含量に達した後、混合物を40℃まで冷却し、その後147部のトリエチルアミンにより中和し、その後795部のジトリメチロールプロパンテトラアクリレートEbecryl(登録商標)140(Cytec Surface Specialties SA/NY、ドロゲンボス、ベルギー)(成分ii)を添加した。この透明な溶液を12860部の水に攪拌しながら添加した。その後、43.6部のエチレンジアミン(成分F)と100部の水との混合物を、分散体に攪拌しながら添加した。その後、わずかな減圧下、アセトンを分散体から留去した。43重量%の固形分、140nmの平均粒度、および8.4のpH値を有する、本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体10)を得た。
【0104】
実施例11:
本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
1595部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(成分A)を、2236部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分E)、2244部のDesmodur(登録商標)N 3300(HDIトリマー、Bayer AG、ドイツ、レバークーゼン)(成分E)および0.75部のジブチル錫ジラウレート/1519部のアセトンの混合物に60℃で量り入れ、8.2重量%のNCO含量に達するまでこの混合物をさらに60℃で攪拌した。その後、421部のアセトンに溶解した1373部の実施例1のポリエステル(成分B)、305部のジメチロールプロピオン酸(成分D)および0.75部のジブチル錫ジラウレートを40℃で添加し、この混合物を攪拌しながら60℃まで加熱した。0.1重量%のNCO含量に達した後、混合物を40℃まで冷却し、その後147部のトリエチルアミンにより中和した。この透明な溶液を11350部の水に攪拌しながら添加した。その後、わずかな減圧下、アセトンを分散体から留去した。40重量%の固形分、93nmの平均粒度、および8.2のpH値を有する、本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体11)を得た。
【0105】
実施例12:
本発明に従わない紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
実施例4のポリエステル(成分B)1362部を65℃で融解し、2000部のアセトンに溶解させた。2047部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(成分A)、305部のジメチロールプロピオン酸(成分D)、2236部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分E)および1.5部のジブチル錫ジラウレートを40℃で添加し、この混合物を60℃まで攪拌しながら加熱した。その後、2244部のDesmodur(登録商標)N 3300(HDIトリマー、Bayer AG、ドイツ、レバークーゼン)(成分E)を添加した。0.6重量%のNCO含量に達した後、混合物を40℃まで冷却し、173部のトリエチルアミンにより中和した。この透明な溶液を12000部の水に攪拌しながら添加した。その後、35.5部のエチレンジアミン(成分F)と100部の水との混合物を、分散体に攪拌しながら添加した。その後、わずかな減圧下、アセトンを分散体から留去した。35重量%の固形分、74nmの平均粒度、および8.5のpH値を有する、紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体12)を得た。
【0106】
実施例13:
EP704469Aのポリウレタン分散体の調製
47.7部の実施例5のポリエステル、54.6部の2−ヒドロキシエチルアクリレート、22.7部の1,4−ブタンジオール、0.2部のp−メトキシフェノール、0.6部の2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、および0.14部のジブチル錫ジラウレートを、116部のアセトンに溶解し、この溶液を60℃まで加熱した。111部のイソホロン−ジイソシアネートおよびDesmodur(登録商標)N 3300(HDIトリマー、Bayer AG、ドイツ、レバークーゼン)を攪拌しながら2時間かけて量り入れた。1時間半後、1.75重量%の理論NCO含量に達し、43.5部の40%強PUD塩溶液を10分間かけて添加し、さらに20分後329部の水を加え、わずかな減圧下、アセトンを分散体から留去した。36重量%の固形分、104nmの平均粒度、および8.2のpH値を有する、EP704469による紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体13)を得た。
【0107】
【表1】

【0108】
脚注の意味については表2を参照する。
【0109】
【表2】

【0110】
:BYK社(ドイツ、ヴェーゼル)製のポリエーテル変性ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンの溶液
:BYK社(ドイツ、ヴェーゼル)製のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの溶液
:Ciba社(ドイツ、ラムペルトハイム)製の、ベンゾフェノンと(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトンとの混合物
:Ciba社(ドイツ、ラムペルトハイム)製のフェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド
:Cognis社(ドイツ、デュッセルドルフ)製変性ポリジメチルシロキサン
:Heubach社(ドイツ、ランゲルスハイム)製顔料ペースト
:BYK社(ドイツ、ヴェーゼル)製の尿素変性ポリウレタンの溶液
:Barberan社製UV装置、モデルHOK-6/2(約80W/cm)
:反応性を調べるために、様々なベルト速度の関数として、完全硬化後に達した振子秒での硬度を測定する(DIN 53157に従う)。振子硬度が、最も速いベルト速度でさえ100振子秒を超えたままであるならば、被膜は優れた反応性を有する。
【0111】
紫外線硬化後、被覆基材を貯蔵し(木材は50℃で1日間、ガラスはデシケーターにおいて室温で1時間)、その後、試験に付す。
【0112】
【表3】

【0113】
10:フィルム透明性は、フィルムを1枚のガラスに適用し、次いで物理的に乾燥することによって視覚的に評価する。
評価5:透明。曇りまたはヘイズの生成は認められない。
評価4:約10〜20°の観察角で僅かなヘイズ生成が認められる。
評価3:約45〜80°の観察角で僅かな曇り生成が認められる。
評価2:著しく曇り。
評価1:艶なし表面またはザラザラした表面。
【0114】
11:16時間負荷をかけた後、目視検査によって耐性を評価する。
評価5:可視的変化なし(損傷なし)。
評価4:光源が、試験表面において痕跡でまたは痕跡付近で反射し、観察者の目に直接反射する場合にのみ、色の光沢または色合いの僅かな変化が見られるか、あるいは幾つかの限られた痕跡が認められる(膨潤する輪が認められる、または指の爪で軟化は認められない)。
評価3:複数の視角から僅かな痕跡が見える。例えば、ほぼ完全な円または円形部が認められる(膨潤する輪が認められる、または指の爪による掻き傷が認められる)。
評価2:著しい痕跡。しかしながら、表面構造はほとんど変化していない(閉じた膨潤する輪、可視的な掻き傷)。
評価1:著しい痕跡。しかしながら、表面構造はほとんど変化しておらず、痕跡は基材まで達し得る。
評価0:著しい痕跡。表面構造が変化するか、あるいは表面物質が完全または部分的に破壊するか、あるいは濾紙が表面に付着する。
【0115】
12:引掻き後の白化は、硬貨で引掻くことによって試験する。引掻き部位で白化が認められないならば、この結果を優れている(評価5)と評価する。
【0116】
【表4】

【0117】
脚注の意味については表2を参照する。
【0118】
【表5】

【0119】
脚注の意味については表2を参照する。
【0120】
紫外線硬化後、被覆基材を貯蔵し(ガラスはデシケーターにおいて室温で1時間)、その後、試験に付す。
【0121】
【表6】

【0122】
脚注の意味については表3を参照する。
【0123】
着色調製物において、本発明の実施例6〜10は、本発明に従わない実施例12および比較実施例13と比べて、著しく良好なコーヒーおよび赤ワインに対する耐汚染性、ならびに良好な耐エタノール性を示す。さらに、実施例6〜10では、極めて顕著な物理的表面乾燥および放射線硬化後の高い振子硬度が達成される。本発明に従わない実施例12は、物理的乾燥後および放射線硬化後の振子硬度のいずれにおいても明らかな減少を示し、コーヒー、赤ワインおよびエタノールに対する低い耐性は、アジピン二酸を含有する実施例4の軟化ポリエステルに起因している。
【0124】
フタル酸を含有するポリエステルに基づく本発明の紫外線硬化性ポリウレタン分散体である実施例8は、着色調製物における耐コーヒー、耐赤ワインおよび耐エタノール性はなお良好であるという結果であるが、実施例6、7、9および10と比べるとやや低い。本発明の系に対するイソフタル酸および/またはテレフタル酸を含むポリエステルの特定の選択はこれに基づく。
【0125】
透明ラッカー調製物において、実施例6は、耐エタノール性について比較例13より優れている。さらに、引掻き後の白化の評価が低下することなく、物理的乾燥後および放射線硬化後の両方で、より高い振子硬度に達する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリレート基を含有するモノヒドロキシ官能性アルコールの1種以上の化合物、
(B)(B1)2個のOH官能基の間に2〜4個の炭素原子を有する脂肪族ジオールおよび/または脂肪族トリオールと、
(B2)芳香族ジカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸
とから得られるポリエステルポリオール、
(C)任意に、(A)および(B)とは異なるポリオール
(D)ポリウレタン分散体に対する分散作用を有し、少なくとも1つのイソシアネート反応性基と、非イオン性基、イオン性基またはイオン性基形成性基であるさらなる基とを含有する1種以上の化合物、
(E)有機ポリイソシアネート、
(F)任意に、(A)〜(D)とは異なり、かつ、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する化合物
を構造成分として含んでなるポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項2】
少なくとも1つのフリーラジカル重合性基を含有する反応性希釈剤を含む成分(ii)をさらに含んでなる、請求項1に記載のポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項3】
構造成分(B)を5〜75重量%の量で使用し、成分(A)〜(F)の総量が100重量%である、請求項1または2に記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項4】
構造成分(B)が20〜500mgKOH/(物質のg)の範囲のOH価を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項5】
構造成分(A)として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エチルメチルヘプタン酸グリシジルエステルの(メタ)アクリル酸による付加生成物および/またはそれらの工業用混合物を使用する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項6】
成分(B1)として、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセロール、および/またはひまし油を使用し、成分(B2)として、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、前記酸の無水物および/またはそれらの混合物を使用する、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項7】
成分(B1)として、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールおよび/またはトリメチロールプロパンを使用し、成分(B2)として、イソフタル酸および/またはテレフタル酸を使用する、請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項8】
構造成分(D)として、2−(2−アミノ−エチルアミノ)エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)プロパン−1−スルホン酸、イソホロンジアミンとアクリル酸との付加生成物(EP916647、実施例1)、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、40モル%以上のエチレンオキシド単位と60モル%以下のプロピレンオキシド単位とを含有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルおよび/または前記化合物の混合物を使用する、請求項1〜7のいずれかに記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項9】
構造成分(E)として、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン−ジイソシアネートまたはIPPD)、4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン、それらの互いの混合物;ビウレット基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基および/またはウレトジオン基を含有する1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン−ジイソシアネートまたはIPPD)および4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタンの同族体またはオリゴマー、それらの同族体またはオリゴマーの互いの混合物;あるいは前記同族体および/または前記オリゴマーと前記ポリイソシアネートとの混合物を使用する、請求項1〜8のいずれかに記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法であって、
ポリウレタンアクリレートプレポリマー(i)が、1以上の反応段階で成分(A)〜(D)と成分(E)との反応によって得られることを特徴とし、プレポリマーの調製前、調製中または調製後に、分散体に必要なイオン性基を形成するための中和剤を添加してよく、その後、プレポリマーに水を添加するかまたはプレポリマーを水層へと移送することにより分散工程を実施し、分散前、分散中または分散後に成分(F)により連鎖延長させてもよい方法。
【請求項11】
成分(E)中のイソシアネート基と成分(A)、(B)、(C)および(D)中のイソシアネート反応性基とのモル比が0.8:1〜2.5:1である、請求項10に記載のポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法。
【請求項12】
さらなる成分として、少なくとも1つのフリーラジカル重合性基を含有する反応性希釈剤(成分ii)を1種以上添加する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の放射線硬化性水性分散体を含んでなる被覆剤、ラッカーまたは接着剤。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体と、アミノ樹脂系架橋剤、ブロックポリイソシアネート、非ブロックポリイソシアネート、ポリアジリジンおよび/またはポリカルボジイミド、および/またはさらなる分散体を含んでなる被覆組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の被覆組成物で被覆された基材。

【公表番号】特表2012−518043(P2012−518043A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549463(P2011−549463)
【出願日】平成22年1月30日(2010.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000567
【国際公開番号】WO2010/091797
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】