説明

物理的反応及び/又は化学反応を助長及び/又は促進する方法、並びにその方法を実施する反応デバイス

複数の物質で満たされる、反応器(13)の反応容積部中で物理的反応及び/又は化学反応を助長及び/又は促進する新しい効果的な方法は、反応容積部を有する反応器(13)を用意するステップと、物理的反応及び/又は化学反応に関与する複数の物質で前記反応器(13)の前記反応容積部を満たすステップと、強磁性体粒子の所定の部分を前記反応容積部内に加えるステップと、インダクタ(11、12)の磁界(H1、H2)が前記反応器(13)の前記反応容積部中で互いに干渉するように、少なくとも2つのインダクタ(11、12)間に反応容積部を有する前記反応器(13)を配置するステップと、所定の振幅及び周波数を有する交番電流を前記インダクタのそれぞれに供給するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解、抽出、乳化、解乳化、均質化、微粉化(粉末化)、再構成(構造の形成)、及び同様のプロセスなどの様々なタイプの反応の間に原子分子レベルで実現される相間物質移動(物質交換)を示す、物理的プロセス及び/又は化学的プロセスの促進に関する。本発明は、製造業、農業、微生物業界、化学業界、生化学業界、食品製造業界、建築業界、冶金業界、及びその他の業界で使用することができ、抽出、乳化、均質化、微粉化(粉末化)、及び表出特性の変化を含む構造の形成によって生成される生成物を含む、植物性原材料から作られる様々な加水分解物、並びに化学及び生化学反応及びプロセスの生成物が、使用される。
【背景技術】
【0002】
媒体中に拡散する磁気的に撹拌される磁気材料による、流体若しくは多層媒体中の物理的反応及び/又は化学反応(physical and/or chemical reactions)の促進が、当技術分野でよく知られている。米国特許第4,338,169号明細書は、流体中で強磁性体粒子などを拡散させ、可変磁界により強磁性体粒子を運動させることによって、反応チャンバ中の流体を撹拌するプロセスを開示する。可変磁界は、反応チャンバを取り囲むコイル構成の様々な電磁コイル間で開閉を行うことによって発生する。
【0003】
米国特許第4,936,687号明細書は、混合装置と、磁気粒子の懸濁を含む、液体薄層中で混合を行う方法とを開示する。装置は、少なくとも1つが電磁石である、少なくとも2つの磁石、又は磁石システムを含む。液体薄層は、磁界が交互に強化及び弱体化する、2つの磁石の結合磁界にさらされる。
【0004】
国際公開第2007/118261(A1)号パンフレットは、分子間及び分子集合体間の反応効率を増大させる装置を教示する。マイクロ又はナノ磁気粒子が、流体反応膜の両側に配置される可変的に送り可能な電磁石により発生する磁界によって、制御された方法で流体反応媒体中を運動するように設定される。電磁石は、膜の一方の側にある多数の微小又はミリ磁気コイルと、膜の他方の側にある1つの大きい磁気コイルとを備える。
【0005】
これら既知の方法及びデバイスは、流体薄膜に制限されるか、又は交互に活性化する電磁石の複雑で開閉可能な構成を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、物理的反応及び/又は化学反応を助長及び/又は促進する方法、並びにデバイスを提供することであり、このデバイスは、簡単な構造であり、薄膜反応領域に制限されることなく、複数の異なる化学的プロセス及び物理的プロセスに適用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による方法は、反応容積部を有する反応器を用意するステップと、物理的反応及び/又は化学反応に関与する複数の物質で前記反応器の前記反応容積部を満たすステップと、強磁性体粒子の所定の部分を前記反応容積部内に加えるステップと、インダクタの磁界が前記反応器の前記反応容積部中で互いに干渉するように、少なくとも2つのインダクタ間に反応容積部を有する前記反応器を配置するステップと、所定の振幅及び周波数を有する交番電流を前記インダクタのそれぞれに供給するステップとを含む。
【0008】
本発明の方法の第1の実施形態によれば、磁界が、0°〜90°の間のそれぞれの磁界ベクトル間の角度で干渉するように、インダクタが方向づけられる。
【0009】
本発明の方法の第2の実施形態によれば、磁界が、平行逆方向に干渉するように、インダクタが方向づけられる。特に、前記物質及び反応生成物が、前記反応器を所定の流れ方向に通過し、前記干渉磁界が、前記流れ方向に平行か、又は前記流れ方向に垂直になる。
【0010】
本発明の方法の第3の実施形態によれば、磁界が、垂直交差方向に干渉するように、インダクタが方向づけられる。特に、前記物質及び反応生成物が、前記反応器を所定の流れ方向に通過し、前記干渉磁界の一方が、前記流れ方向に平行になる。
【0011】
本発明の方法の第4の実施形態によれば、前記インダクタが、周波数変成器に接続される。
【0012】
本発明の方法の第5の実施形態によれば、前記交番電流の電流振幅及び/又は前記インダクタの方向が、前記反応プロセス中に変化する。
【0013】
本発明の方法の第6の実施形態によれば、前記インダクタが、50〜2000Hzの間の周波数の交番電流を供給される。
【0014】
本発明の方法の第7の実施形態によれば、前記インダクタの磁気誘導の振幅が、0.01〜1.0テスラの間の範囲にある。
【0015】
本発明の方法の第8の実施形態によれば、前記強磁性体粒子が、0.1〜5.0mmの間の直径を有し、磁化率μ≫1の軟質の磁気材料又は硬質の磁気材料から作られる。
【0016】
本発明の方法の第9の実施形態によれば、前記強磁性体粒子が、耐摩耗材料又は物質により覆われる。
【0017】
本発明の方法の第10の実施形態によれば、前記強磁性体粒子が、保護物質により覆われ、化学的に活性な環境から守られる。
【0018】
本発明の方法の第11の実施形態によれば、前記強磁性体粒子が、金属Fe含有反応促進物質として作用するのに適する。
【0019】
本発明の方法の第12の実施形態によれば、前記強磁性体粒子が、金属反応促進物質として作用するのに適する物質により覆われる。
【0020】
本発明の方法の第13の実施形態によれば、化学反応促進物質が、前記反応容積部内に別個に加えられる。
【0021】
本発明の方法の第14の実施形態によれば、前記強磁性体粒子が、前記反応促進物質に対して中性である物質により覆われる。
【0022】
本発明の方法の第15の実施形態によれば、非磁性材料から作られた反応器が、使用される。
【0023】
本発明の反応デバイスは、内部に反応容積部を有する反応器と、それぞれの磁界を発生させる少なくとも2つのインダクタとを備え、前記少なくとも2つのインダクタの磁界が前記反応器の前記反応容積部内で互いに干渉するように、前記反応器が、前記少なくとも2つのインダクタ間に配置され、所定の振幅及び周波数を有する交番電流を供給されるように、前記インダクタが、それぞれの電源に接続される。
【0024】
本発明の反応デバイスの第1の実施形態によれば、前記インダクタが、周波数変成器に接続される。
【0025】
本発明の反応デバイスの第2の実施形態によれば、前記反応器が、非磁性材料から作られている。
【0026】
本発明の反応デバイスの第3の実施形態によれば、前記反応器が、反応容積部内に物質を導く入口と、前記反応容積部から反応生成物を除去する出口とを有する。
【0027】
本発明の反応デバイスの第4の実施形態によれば、前記インダクタを、互いに異なる方向に方向づけることができる。
【0028】
本発明を、添付の図面に関する様々な実施形態に基づいて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本明細書の一実施形態による反応デバイスの斜視図である。
【図2】インダクタの磁界が、平行逆方向に干渉し、流体流方向に平行であり、磁界ベクトルが図平面内にある、本発明の別の実施形態による、反応デバイスの側面図である。
【図3】インダクタの磁界が、平行逆方向に干渉し、流体流方向に垂直であり、磁界ベクトルが図平面に垂直である、本発明の別の実施形態による、反応デバイスの側面図である。
【図4】インダクタの磁界が、垂直交差方向に干渉し、磁界ベクトルの一方が流体流方向に平行である、本発明の別の実施形態による、反応デバイスの側面図である。
【図5】インダクタの磁界が、平行逆方向に干渉し、磁界ベクトルの他方が流体流方向に平行である、本発明の別の実施形態による、反応デバイスの側面図である。
【図6】本発明による方法に使用される、インダクタの典型的な多相巻線構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
提案する方法の新規特徴は、反応プロセスが、永久磁石、及び/又は、図1に示すように、最低2つのインダクタ間に配置される反応器のチャンバ内に発生する電磁界内で開始及び/又は実施される点にある。図1の反応デバイス10は、2つの平行なインダクタ11及び12間に配置される、内部反応容積部を有する反応器13を備える。複数の異なる物質を含む流体反応媒体が、前記反応器13を通って流れ15の方向に流れ、その流れによって、反応生成物が、出口14を通って反応器13を出る。インダクタ11、12のそれぞれが、速度v=2τf[m/s]でインダクタ11、12の「本体」に沿って走る交番磁界の発生器であり、ここで、τはインダクタの極ピッチ(m)で、fはインダクタ電流の周波数(Hz)である。インダクタ11及び12は、対応する電源16及び17、特に交番供給電流の周波数を変更する周波数変成器18及び19に接続される。インダクタ11及び12のそれぞれの典型的な巻線構成を、図6に模式的に示す。この巻線構成は、端子C1〜C6により多相電源に接続される、複数の重複する巻線W1〜W12を備える。
【0031】
インダクタ11、12の一定の方向(例えば図2〜図5を参照)及び反応器13の反応容積部内の強磁性体粒子(FP)の存在が、前記インダクタ11、12により発生する磁界H1、H2と、強磁性体粒子との間の相互作用又は干渉を起こし、その相互作用が、反応器13の反応容積部を通して局所的に分配される符号可変の永久磁界の2次的発生の(反応器13の環境内での)励起をもたらす。これらの永久磁界は、磁気成分の強度H(誘導してB=μFPH)の振幅の無秩序に変化する値を有する。従って、Eが既知の相関関係E=cB(cは光の速度である)によりBに関係づけられる、rotE=−dB/dtの形式の渦電界の電気成分の強度Eの対応する振幅は、同様に無秩序に変化する値を有する。
【0032】
環境内(即ち反応器13のチャンバ内)の交番振幅B及びEの分配の局所性は、強磁性体粒子が反応器13内に存在しないとき、インダクタの磁界の合成により発生する結果的な電磁界の特性の発現であり、結果的な電磁界は、インダクタ11、12の極上のdivH=0(この位置は、インダクタ間のギャップを暫定的に2分する中央平面上の極間部分の領域(sphere)内に位置する局所線(local line)により示され、同様に励起する逆方向の電磁界を生成し、この状況は、図1に示されるインダクタ11、12の方向に対して示される)からH=Hmax(この状況は、図2及び3に示されるインダクタ11、12の方向に対して示される)を有する成分Hの円形及び/又は楕円形のホドグラフによって示される。
【0033】
環境の容積(反応器13のチャンバ)内のB及びE成分の一定の振幅の無秩序な分布は、強磁性体粒子を反応器13内に加えることにより存在するに至る特性の発現であり、この特性は、以下のものの結果である。即ち、それぞれの強磁性体粒子は、B成分(ここでμpp≫1)の「コンセントレータ(concentrator)」であり、異なるホドグラフHと相互作用し、他の同様の粒子との偶発的な衝突にも関与する。このことは、強磁性体粒子の合計容積内のこの粒子運動の偶発的即ち無秩序な軌跡(経路)につながる。従って、所与の容積内の全ての粒子及びそれぞれの粒子の運動は、通常の無秩序状態によって特徴づけられる。従って、強磁性体粒子(Bの「コンセントレータ」の役割を果たす)が、インダクタの発生電磁界と共に、所与の環境内のB及びE振幅の最終的な分布を形成するプロセスに関与するので、無秩序な運動による強磁性の粒子こそが、所与の環境内にB及びE振幅の無秩序な分布をもたらす。
【0034】
強磁性体粒子の無秩序な運動は、divB=0により表される、(マックスウェルによる)電磁気学の4つの基本法則の1つの必然的な具現化をもたらし、B成分により発生する無秩序な運動空間内の成分Bのベクトル(セクタ(sector))ポテンシャルAの出現につながる。このセクタポテンシャルAも、無秩序に振る舞い、関係rotA=BによりBに関係づけられる。その一方で、セクタポテンシャルAは、波の機構を有する様々なプロセス及び状況における波位相に影響を及ぼし、B=0のときでも現れる。環境中のE成分の発生源が、平均的なdivE=0を無条件に構築するB=μFPH成分と共に、局所的にのみ(それぞれの点でのそれぞれの一定のホドグラフH)、及び空間的に(環境内のホドグラフHの一定の分布)時間的交番を行うと直ちに、強磁性体粒子を含む反応器13内の環境全体が、無秩序な永久磁石発生(独特の「永久磁気嵐」)にさらされることは明らかである。永久磁石発生の一般則は、電磁気学の法則と異なることなく、マックスウェルの方程式の組に集められた4つの基本法則と同じ表現によって表される。
【0035】
上述のこととは別に、無秩序に運動しながら、それぞれの強磁性体粒子は、環境のある一部分の「微小混合器」の役割を果たし、全ての強磁性体粒子は、混合容積全体を通して導入又は入力エネルギーを均一に分配する、環境全体のマクロ混合デバイスの役割を全体として果たすことが考慮されなければならない。そうするときに、単位環境容積内に導入されるエネルギー(エネルギー密度)は、強磁性体粒子のパラメータ(μFP、粒子の形状及びサイズ、単位反応器容積中の粒子の量及び重量)により設定されるが、プロセスは、それぞれの具体的場合で最適なレベルに容易に維持される。最適なレベルが、インダクタ11、12の相電流I及び周波数fを変化させることにより維持及び調整される。この特性が、加水分解、抽出、乳化、均質化、微粉化(粉末化)、再構成(構造の形成)、及び他の同様のプロセスなどの技術的プロセスの自動制御システムと組み合わせた、提案する方法及びデバイスを含むことを可能にし、これらの方法及びデバイス実現は、他の条件が等しければ、物質移動(物質交換)により、及び/又は、物質の混合物中で互いに反応し、様々な状態(即ち気体、液体、固体)で存在する様々な材料の再構成の差により制限されるが、そのことは、そうしたデバイスを使用する利点とみなすこともできる。
【0036】
マクロ混合デバイスとして使用される強磁性体粒子の上述の特性に、別の特性が加えられる。即ち、様々な化学的及び生化学的反応が行われる、高度な触媒表面を有する触媒(促進物質)として強磁性体粒子を使用することが可能である。ある反応中に、鉄系化合物を既知の反応促進物質として使用することができるとき、強磁性体粒子は、そうした促進物質の役割を自動的に果たす。既知の金属又は非金属反応促進物質が使用される、いずれの反応にも、そうした促進物質を、どの方法によっても(例えばプラズマコーティングによって)強磁性体粒子の表面上に前もって積層することができる。そうした方法は、当技術分野でよく知られている。
【0037】
任意の反応促進表面と組み合わせた強磁性体粒子を使用する特徴は、強磁性体粒子の表面上の触媒及び物質移動反応と結合するが、粒子自体は、環境内で集中的に運動し、発達した乱流と境界を接する層を通して表面から環境にエネルギーを移動させている。この層は、触媒及び物質移動の基本領域であり、そのことが、問題のプロセスを促進する理由であることが明らかである。こういうわけで、全ての強磁性体粒子が、それ自体のエネルギーにより、境界層中の発達した乱流を連続的に(休みなく)生成、助長、及び維持し、そうするときに、全ての粒子自体が、境界層が絶えず再生している環境中で集中的に運動している環境を実現する。前記再生の頻度は、粒子衝突の頻度に等しい。最終的に、この頻度が、駆動拡散反応の領域から運動反応の領域に至る様々な反応の移動の可能性をもたらし、様々な反応の移動は、触媒及び物質移動反応のエネルギー的な「形成体及び位置のキャリア」として強磁性体粒子を使用することにより達成される。
【0038】
任意の化学的に活性な環境が促進プロセスに使用されるとき、又はそうした環境から強磁性体粒子の材料(物質)を保護する必要があるとき、比較的保護的な層により強磁性体粒子を覆うことができるが、そうした保護領域は、使用される活性環境に対して不活性であるべきである。
【0039】
強磁性体粒子は、微粉化することなく、及び/又は微粉化して高拡散状態をもたらしながら、高均質(即ち任意量の混合物中の全ての成分の均等な分布)の粉末合成物を生成する作用要素として使用することもできる。合成物が研磨剤成分を含む場合、強磁性体粒子は、粒子の摩耗を妨げる層により覆うことができる。
【0040】
上述のことを考慮すれば、本発明は以下の主要な要素を有する。
a)それぞれのインダクタ及び強磁性体粒子により環境内に上述の発生電磁界を励起し、同時に同じ粒子と同じ電磁界との間の相互作用により環境の集中的な混合を行う。
b)ポイントa)と同じであるが、強磁性体粒子が、促進物質として作用する。
c)ポイントa)及びb)と同じであるが、強磁性体粒子が、層により覆われ化学的に活性な環境から守られる。
d)ポイントa)及びb)と同じであるが、強磁性体粒子が、機械的摩耗から層により覆われる(即ち、強磁性体粒子が、混合及び/又は微粉化により粉末材料を生成するのに作用要素として使用される)。
e)ポイントa)及びb)と同じであるが、強磁性体粒子が、いかなる保護領域もなしに存在する。
【0041】
実際の結果が証明するように、様々なプロセスの促進が、
a)制御プロセスにおける時間と比較して、例えば抽出に必要な時間の1000倍を超える低減により証明される、拡散領域から運動領域に至るいくつかのプロセスの移動により、起こる可能性がある。
b)いくつかの反応(例えば、化学的、触媒性、及び酵素性の加水分解を含む植物性原材料の加水分解において)を促進することにより起こる可能性があり、そうするときに、制御加水分解の条件と比較して、ある加水分解生成物の生産が、より低い温度及び圧力を増加させる。
c)微生物(例えばカンジダ属の細胞)を培養するときの細胞呼吸における物質移動の促進及び拡散限界の除去、並びに液体、微生物、及び空気から成る混合物の集中的な混合により、起こる可能性がある(2つの連続する核分裂間の時間が、通常の4〜5時間ではなく5〜6分に短縮される)。
d)固相の分解により、起こる可能性がある。
【0042】
提案するデバイスの新規性は、デバイスの構造が、最低2自由度のインダクタの方向に上述の発生電磁界を誘発することを可能にする点にあり、電磁界は、反平行位置(図2及び3)、及び/又は互いに垂直(図3及び4)に位置することができる。以下の特徴は、位置の変化から生じる。
【0043】
インダクタ11、12の位置のいずれかにおいて、H=0からH=Hmaxの大きさを有する磁界強度Hのホドグラフの分布が、インダクタ11、12の極上に現れる。図2及び3による位置(位置1)において、大きさH=0を有する上述の局所線は、開回路である。寸断位置は、インダクタ11、12の組立構造により規定され、インダクタの側壁間の空間の中央平面にある。その結果、これらの側面領域において、過剰の電力消費をもたらす、いわゆる境界効果が起こり、デバイスが生産性を上げるほど、電力をより消費する。図4及び5による位置(位置2)において、局所線は、閉じており、従って、境界効果は現れず、そうでない場合には位置1では使用されない電力が、強磁性体粒子を機能させるのに使用される。その結果、強磁性体粒子は、より集中的に運動し、粒子の対向衝突の力(F)及び頻度(ω)の増大をもたらす。このことは、F及びωの測定により証明される。
【0044】
プロセス中に位置1から位置2に又はその逆にインダクタ11、12の方向を変更する機会は、提案するデバイスの新しい顕著な特徴を示す。この特徴は、以下のものの調整に同じデバイスを使用することを可能にする。
a)最終生成物に関する生産性の高低。
b)異なる強度(耐久性)特性を有する投入物の再構成(再構築)(生物学的性質を有する軟質物質から、石英化合物を含む硬質の結晶材料に)。
c)特に強磁性体粒子の増大した力及び頻度の下での投入物の超微細微粉化を必要とする、油水又は均質の粉末混合物のような高拡散の乳化剤の生成。
【0045】
インダクタ方向の交互のシーケンスと1つの技術的つながりのある、連続的及び/又は並行する「作用」と、いくつかのデバイスとを結合することにより、1つの設置で以上の全てを達成することができる。
【0046】
加水分解 比較プロセスの説明
投入物(原木、廃木、藁、とうもろこし切株など)を微粉化する既知の加水分解方法、並びにセルロース糖化までの110〜135℃の温度及び3〜7気圧の圧力(以下、絶対気圧)での投入物のさらなる酸性、アルカリ性、又は酵素性のプロセスがある(例えば、Kotovsky LV、Wood as forage、L 1934、34〜40頁を参照)。この方法の総合的欠点は、複雑なデバイスの使用及び追加の生産コストにつながる、高圧力の必要性である。
【0047】
セルロース分解酵素(即ち、セルロースを分解する能力を有する酵素)により、セルロース含有植物性材料を水溶性の糖に分解する既知の方法がある。このプロセスは、2つの段階、即ち1)(2〜4気圧の圧力の下でのセルロース分解微生物の培養による)そうした酵素の生成、2)成分への分割のない微生物の培養物質全体の加水分解に分割される(米国特許第3,990,945号を参照)。この方法は、より高い圧力の下での深い加水分解をもたらすことができない。
【0048】
より高い温度及び圧力の下で、多糖類を含む植物性物質を加水分解する既知の方法がある。投入物が反応器内に進む前に、投入物は、強酸によって処理される。加水分解が、1つの反応器中で2段階で継続的に行われる。反応器の上部で行われる第1の段階の間、気体状態の投入物が、強酸及び水蒸気によって処理される一方、ペントサンが、フロール(フラン−2−カルバルデヒド、人工の蟻油)、酢酸、メタノール、及びアセトンに変化し、ヘキソサンが2糖類及び3糖類に分解される。第2の段階が、反応器の下部で行われ、それによって、液体状態の投入物が、希酸及び水蒸気により処理される一方、第1の段階で生成された2糖類及び3糖類が、単糖類に分解され、糖酸及び脂肪酸も生成される。185℃及び11気圧の圧力で30分間、カバの木の細片(72%のセルロース及び15%の湿分を含む)のような投入物にこの方法を適用することにより、投入物に含まれる91.5%のセルロースを分解し、投入物中のセルロース含有量に関して、16.5%のフロール、12.2%の有機酸、及び20.5%の単糖類を生成することが可能になる。
【0049】
請求する方法に最も近いのは、過剰圧力及びより高い温度の下での、並びに投入物のリグニン−セルロース結合の分解及び糖化用の強磁性反応促進物質の存在下での投入物の酸性加水分解を含む粗い飼料の加水分解の方法である。投入物は、とうもろこし作物の切株、とうもろこし茎、穀類(小麦、米、カラス麦)藁、木、及び廃木などを通常含む。投入物は、せいぜい0.6cmの最大サイズを有する粒子に微粉化されるが、微粉化は、投入物を粉砕機に入れ、さらに混合器中で混合することにより達成され、有機粒子は、金属及び酸性促進物質を含む水スラリと混合される。促進物質として、鉄(Fe)、又はマンガン(Mn)、又はそれらの誘導体が、投入物乾燥重量の0.4%の量で使用される。いずれかの無毒の酸(例えば、オルトリン酸、酢酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、及び炭酸)を酸性促進物質として使用することができる。通常の圧力及び温度の下で、酸性促進物質は、有機粒子の全体の濃縮をもたらすのに、2〜3時間の間、投入物と接触するべきである。投入物と酸との比は、40:60(Wt%、重量パーセント)と通常は考えられる。平滑化(中和)の後、最終生成物を乾燥する。次に、混合物が、より高い圧力及び温度の下での、酸素の存在下での12〜20分間の燃焼(酸化)に進む。温度は、105〜110℃のレベルに維持され、圧力は、10.5kg/cmに達し、1.2〜2.1kg/cmの近似値の過剰分圧の酸素を得る。燃焼反応中、酸素の量は、投入物乾燥重量の3.75〜5Wt%とするべきである。酸化された混合物は、加水分解に進み、セルロースの糖化が起こるまで行われる。さらに、混合物は、酸性促進物質(様々な物質を使用することができるが、アンモニアが好ましい)による平滑化に進み、pH5.5の値に達する。最終生成物は、後処理することなく飼育に使用される、高含有量の栄養素を含む溶液である。生成物を輸送又は貯蔵することを目的とするとき、生成物を乾燥させる必要がある。この方法の重大な欠点は、より高い圧力下での投入物の処理であり、処理全体を複雑にする一方、加水分解の程度が比較的低く、糖類の生成量が大きくない。
【0050】
請求する発明による加水分解の例
本発明の目的は、過剰圧力を低減し、加水分解の程度を高めることにより、糖類の生産量を増大させることである。
【0051】
本目的は、以下のものにより達成される。植物性投入物の加水分解が、周波数50〜2000Hz、及び磁界成分の強度H(t)=100÷10000エルステッド(誘導してB=0.01÷1.0テスラ)を有する進行電磁波により発生する電磁界内で、1.0〜2.0気圧の過剰圧力の下で処理される。一方、強磁性体粒子は、反応促進物質の役割を果たすために、電磁界が作用する空間内に入れられる。電磁界及び反応の励起が、インダクタ間のギャップ内で行われ、(電磁界の方向間の)角度βが0°〜90°の範囲内、好ましくはβ=0°(逆方向運動の波)及び/又はβ=90°(交差運動の波)となるように方向づけられる。
【0052】
提案する方法は、以下のものを含む。投入物(例として穀類藁、とうもろこし切株、木の切屑又は他の植物性原材料である可能性がある)は、0.1〜1.0mmのサイズを有する粒子が生成されるまで、ある既知の方法によって微細化される。さらに、粒子は、金属及び酸性促進物質を含む水スラリと混合される。0.1〜1.0mmのサイズを有する鉄(Fe)又はマンガン(Mn)粒子が、極めて優秀な金属促進物質として使用され、混合物の混合に使用される強磁性体粒子自体が、鉄促進物質の役割を果たすこともできる。
【0053】
生産物が飼料となることを目的とするとき、オルトリン酸、塩酸、硫酸、及び亜硫酸を酸性促進物質として使用することができる。通常の圧力及び温度の下で、酸性促進物質は、有機粒子の全体の濃縮をもたらすのに、2〜3時間の間、投入物と接触するべきである。次に、混合物は、上述した値(即ち、β=0°又はβ=90°、波の周波数50〜2000Hz、磁界強度100〜10000エルステッド、圧力1.0〜2.0気圧)で電磁波により発生する電磁界の活性領域に進む。さらに、温度は100〜135℃であり、処理は7〜20分かかり、この時間中にそうした条件の下で、混合物は、加水分解及び燃焼(酸化)を同時に受ける。
【0054】
代わりに、電磁界の活性領域において、1.0〜5.0mmのサイズで、プラスチックによって覆われた強磁性体粒子は、磁界コンセントレータ及び追加の混合要素の両方の役割を果たすように装填することもできる。この場合、いずれの必要な金属促進物質も、反応器内に別個に装填される。
【0055】
燃焼及び加水分解の後、混合物は、平滑化(中和)に進み、平滑化が、様々な物質によって行われるが、アンモニアが好ましい。本方法の適用の結果、15〜20%のフロール、11〜14%の有機酸、18〜24%の単糖類(投入物中のセルロース含有量に関して)を含む溶液が、生成される。
【0056】
生成物を輸送又は貯蔵することを目的とするとき、生成物を乾燥させる必要がある。乾燥後、生成物は、輸送用の適当なパッケージ内に充填される。
【0057】
図1は、使用される反応デバイス10の模式図を示し、図2〜5の断面は、反応デバイスの側面図を示す。本デバイスは、加水分解用の強磁性体粒子を含み、2つのインダクタ11と12との間に配置される反応器13を備える。2つの進行する磁界を加えた結果、インダクタ11、12間のギャップ内に、結果的な電磁界が発生する。この電磁界は、強度H(誘導してB=μFPH)の円形及び/又は楕円形のホドグラフ、並びに上述の他の特徴を有する分布によって特徴づけられる。インダクタ11、12は、異なる周波数の電磁界を発生させるために、電源16及び17、特に周波数変成器18及び19に接続される。電磁界強度の変更は、インダクタコイル(ケージ)の電流を変化させることにより、また同様にインダクタ11、12間の距離を変えることにより達成される。
【符号の説明】
【0058】
10 反応デバイス
11、12 インダクタ
13 反応器(反応容積部を有する)
14 出口
15 流れ方向
16、17 電源
18、19 周波数変成器
C1〜C6 端子
H1、H2 磁界
W1〜W12 巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物質で満たされる、反応器(13)の反応容積部中で物理的反応及び/又は化学反応を助長及び/又は促進する方法であって、
a.反応容積部を有する反応器(13)を用意するステップと、
b.物理的反応及び/又は化学反応に関与する複数の物質で前記反応器(13)の前記反応容積部を満たすステップと、
c.強磁性体粒子の所定の一部分を前記反応容積部内に加えるステップと、
d.インダクタ(11、12)の磁界(H1、H2)が前記反応器(13)の前記反応容積部中で互いに干渉するように、少なくとも2つのインダクタ(11、12)間に反応容積部を有する前記反応器(13)を配置するステップと、
e.所定の振幅及び周波数を有する交番電流を前記インダクタのそれぞれに供給するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記磁界(H1、H2)が、0°〜90°の間のそれぞれの磁界ベクトル間の角度で干渉するように、前記インダクタ(11、12)が方向づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁界(H1、H2)が、平行逆方向に干渉するように、前記インダクタ(11、12)が方向づけられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記物質及び反応生成物が、前記反応器(13)を所定の流れ方向(15)にて通過し、前記干渉磁界(H1、H2)が、前記流れ方向(15)に平行になる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記物質及び反応生成物が、前記反応器(13)を所定の流れ方向(15)にて通過し、前記干渉磁界(H1、H2)が、前記流れ方向(15)に垂直になる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記磁界(H1、H2)が、垂直交差方向に干渉するように、前記インダクタ(11、12)が方向づけられる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記物質及び反応生成物が、前記反応器(13)を所定の流れ方向(15)に通過し、前記干渉磁界(H1、H2)の一方が、前記流れ方向(15)に平行になる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インダクタ(11、12)が、周波数変成器(18、19)に接続される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記交番電流の電流振幅及び/又は前記インダクタ(11、12)の方向が、前記反応プロセス中に変化する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記インダクタ(11、12)が、50〜2000Hzの間の周波数の交番電流を供給される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記インダクタ(11、12)の磁気誘導の振幅が、0.01〜1.0テスラの間の範囲にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記強磁性体粒子が、0.1〜5.0mmの間の直径を有し、磁化率μ≫1の軟質の磁気材料又は硬質の磁気材料から作られる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記強磁性体粒子が、耐摩耗材料又は物質により覆われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記強磁性体粒子が、保護物質により覆われ、化学的に活性な環境から守られる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記強磁性体粒子が、金属Fe含有反応促進物質として作用するのに適する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記強磁性体粒子が、金属反応促進物質として作用するのに適する物質により覆われる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
化学反応促進物質が、前記反応容積部内に別個に加えられる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
同じ前記強磁性体粒子が、前記反応促進物質に対して中性である物質により覆われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
非磁性材料から作られた反応器(13)が使用される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
a.内部に反応容積部を有する反応器(13)と、
b.それぞれ磁界(H1、H2)を発生させる少なくとも2つのインダクタ(11、12)と
を備え、
c.前記少なくとも2つのインダクタ(11、12)の磁界(H1、H2)が前記反応器(13)の前記反応容積部内で互いに干渉するように、前記反応器(13)が、前記少なくとも2つのインダクタ(11、12)間に配置され、
d.所定の振幅及び周波数を有する交番電流を供給されるように、前記インダクタ(11、12)が、それぞれの電源(16、17)に接続される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法を実施する反応デバイス(10)。
【請求項21】
前記インダクタ(11、12)が、周波数変成器(18、19)に接続される、請求項20に記載の反応デバイス。
【請求項22】
前記反応器(13)が、非磁性材料から作られている、請求項20又は21に記載の反応デバイス。
【請求項23】
前記反応器(13)が、前記反応容積部内に物質を導く入口と、前記反応容積部から反応生成物を除去する出口(14)とを有する、請求項20〜22のいずれか一項に記載の反応デバイス。
【請求項24】
前記インダクタ(11、12)を、互いに異なる方向に方向づけることができる、請求項20〜23のいずれか一項に記載の反応デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−523952(P2012−523952A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505172(P2012−505172)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054987
【国際公開番号】WO2010/119108
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(509314965)フィリップ セイント ゲア アーゲー (4)
【Fターム(参考)】