説明

物理量センサ

【課題】高精度の物理量検出信号を得ることを可能とした物理量センサを提供する。
【解決手段】外部から印加された物理量を電気信号に変換する振動子20と、振動子を発振させる発振回路30と、振動子からの被検波信号を発振回路からの検波信号に基づいて検波する検波回路60を有する物理量センサ100において、検波回路の前段で発振回路からの検波信号及び振動子からの被検波信号の何れか一方の信号をΔΣ変調し且つ変調信号V26を出力するΔΣ変調器70と、出力電圧が可変な可変電圧源と、可変電圧源の出力電圧を制御する制御部を更に有し、ΔΣ変調器は出力電圧を基準として作成されたフィードバック信号V22を用いてΔΣ変調を行うことを特徴とする物理量センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ΔΣ変調を適用した物理量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション・システムやロボットの姿勢制御等を行うための物理量センサとして、圧電振動素子を用いたジャイロセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来のジャイロセンサの一例を示す図である。
【0004】
図1に示すように、ジャイロセンサ1は、検出電極5及び6を有する水晶振動子2を含む発振回路3と、検出電極5及び6の検出信号に基づいてコリオリの力を検出する検出回路10とによって構成される。検出電極5及び6は、水晶振動子2の検出用枝に形成されており、発振回路3からは水晶振動子2の駆動用枝に形成された駆動電極からの出力に基づいて2値化処理を行い、矩形波である検波クロックCLが出力される。
【0005】
水晶振動子2は、発振回路3によって一定振幅で発振が継続されているが、このとき、水晶振動子2が角速度ωで回転されたとすると、水晶振動子2の駆動用枝の振動方向に対して直角な方向に角速度ωに比例したコリオリの力Fが働く。このコリオリの力Fによる応力によって、水晶振動子2は、駆動周波数に等しい周波数で振動が励起され、この振動によって検出用枝に形成された検出電極5及び6に圧電歪効果による電荷が発生する。
【0006】
この発生した電荷により、検出電極5及び6に微小な逆相の電流である検出電流I1及びI2が流れる。検出回路10のI/V変換回路11及び12は、この検出電流I1及びI2をそれぞれ電流電圧変換して検出電圧V10及びV11を出力し、差動増幅器13は、検出電圧V10とV11の差分を増幅して差動出力V12を出力する。同期検波回路14は、差動出力V12を入力して発振回路3から出力される矩形波である検波クロックCLのタイミングに合わせて同期検波を行い、検波出力V13を出力する。LPF(ローパスフィルタ)15は、検波出力V13の交流成分をカットし、角速度に応じた直流電圧である角速度検出信号V14を出力する。
【0007】
図2は、同期検波回路14における信号例を示す図である。
【0008】
図2(a)は差動増幅器13の差動出力V12が同期検波回路14に入力された場合を示し、図2(b)は差動出力V12の2倍の周期のノイズ1が同期検波回路14に入力された場合を示し、図2(c)は差動出力V12の3倍の周期のノイズ2が同期検波回路14に入力された場合を示している。
【0009】
図2(a)に示すように、差動出力V12は、検波クロックCLで検波されて、検波出力V13を出力し、LPF15で交流成分がカットされ、所定の値を有する直流電圧である角速度検出信号V14として出力される。
【0010】
図2(b)に示すように、差動出力V12の2倍の周期のノイズ1が同期検波回路14に入力された場合には、検波クロックCLによって検波されるが、同期検波出力V13が上下対称の波形となるため、LPF15で交流成分がカットされると、LPF15の出力はO(ゼロ)となり、角速度検出信号V14に悪影響は及ぼさない。しかしながら、図2(c)に示すように、差動出力V12の3倍の周期のノイズ2が同期検波回路14に入力された場合には、検波クロックCLによって検波されると、同期検波出力V13が上下非対称の波形となるため、LPF15で交流成分がカットされても、直流成分が残り、角速度検出信号V14にノイズ成分が残ってしまう。なお、図2(c)は差動出力V12の3倍の周期のノイズについて説明しているが、差動出力V12の奇数倍の高調波ノイズについても同様の問題がある。
【0011】
即ち、検波信号に重畳された高調波ノイズが、同期検波回路に入力されると、角速度検出信号にノイズの影響が反映されてしまうという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−57340(図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決することを目的とした物理量センサを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、高精度の物理量検出信号を得ることを可能とした物理量センサを提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、高精度の角速度検出信号を得ることを可能とした物理量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る物理量センサは、外部から印加された物理量を電気信号に変換する振動子と、振動子を発振させる発振回路と、振動子からの被検波信号を発振回路からの検波信号に基づいて検波する検波回路を有し、検波回路の前段で発振回路からの検波信号及び振動子からの被検波信号の何れか一方の信号をΔΣ変調し且つ変調信号を出力するΔΣ変調器と、出力電圧が可変な可変電圧源と、可変電圧源の出力電圧を制御する制御部を更に有し、ΔΣ変調器は出力電圧を基準として作成されたフィードバック信号を用いてΔΣ変調を行うことを特徴とする。
【0017】
ジャイロセンサは、振動子と、振動子を発振させる発振回路と、発振回路からの検波信号及び振動子からの被検波信号の何れか一方の信号をΔΣ変調するΔΣ変調器と、発振回路からの検波信号及び振動子からの被検波信号の他方の信号をΔΣ変調器の出力信号に基づいて検波する検波回路と、検波回路の出力信号の交流成分を除去するローパスフィルタを有することを特徴とする。
【0018】
また、ジャイロセンサでは、検波回路は、振動子からの被検波信号及び被検波信号の反転信号の何れか一方を、ΔΣ変調器の出力信号に基づいて出力する第1スイッチング回路を更に有することが好ましい。
【0019】
さらに、ジャイロセンサでは、定電圧源と、定電圧源からの電圧信号及び電圧信号の反転信号の何れか一方を、ΔΣ変調器の出力信号に基づいて出力する第2スイッチング回路を更に有し、ΔΣ変調器は、第2スイッチング回路の出力信号を、フィードバック信号として用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る物理量センサでは、基準電圧を可変とすることで、物理量センサに可変利得増幅機能(感度補償機能)を持たせることが可能となった。さらに、専用の可変利得増幅回路がは不要であるので、専用回路による雑音の発生や回路規模の増大といった不具合を防止することが更に可能となった。
【0021】
本発明に係る物理量センサでは、振動子の周囲温度を検出し、検出結果に基づいて基準電圧を可変とすることで、物理量センサに温度補償機能を持たせることが可能となった。
【0022】
ジャイロセンサでは、発振回路からの検波信号及び振動子からの被検波信号の何れか一方の信号をΔΣ変調した変調信号を用いて、発振回路からの検波信号及び前記振動子からの被検波信号の他方の信号の検波を行っているため、検波する信号に重畳された高調波による影響を受けず、高精度の角速度検出信号を得ることが可能となった。
【0023】
また、ジャイロセンサでは,定電圧源を用いてフィードバック信号を生成することにより、電源電圧変動の影響を受けない角速度検出信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のジャイロセンサの一例を示す図である。
【図2】図1に示すジャイロセンサの同期検波回路14における信号例を示す図である。
【図3】本発明に係る物理量センサをジャイロセンサ100を例にして示した図である。
【図4】水晶振動子と各種電極との接続状態とを示す図である。
【図5】ジャイロセンサ100における信号例を示す図である。
【図6】本発明に係る物理量センサに適用可能な加速度センサ用の素子例を示す図である。
【図7】図6に示す素子120と各種電極との接続状態を示す図である。
【図8】本発明に係る物理量センサを更に他のジャイロセンサ200を例にして示した図である。
【図9】本発明に係る物理量センサを更に他のジャイロセンサ201を例にして示した図である。
【図10】本発明に係る物理量センサを更に他のジャイロセンサ202を例にして示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照して、本発明に係る物理量センサについて説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0026】
図3は、本発明に係る物理量センサをジャイロセンサ100を例にして示した図である。
【0027】
ジャイロセンサ100は、発振回路30及び検出回路50を含み、検出回路50は、角速度検出信号V28を出力するよう構成されている。
【0028】
発振回路30は、水晶振動子20、I/V変換回路37、LPF38、自動利得制御回路(以下、AGCと言う)39、利得可変増幅器(以下、VGAと言う)40、位相回路45等を含んで構成されている。
【0029】
図4は、水晶振動子と各種電極との接続状態とを示す図である。
【0030】
水晶振動子20は、二つの駆動用枝20a、20bと一つの検出用枝20cの3本の枝を有する三又振動子である。駆動用枝20a、20bには対となる駆動電極23、24が形成されている。水晶振動子20は、駆動電極23に印加される交流の駆動電圧Voutによって励振し、駆動電極24から交流の出力電流Ioutが出力される。なお、水晶振動子20の構造は、図4に示す三又振動子には限定されず、例えば、他の形状の三又振動子、二又の音叉型振動子等を利用することも可能である。また、振動子の材料は水晶に限定されず、PZTなど他の圧電材料を用いても良い。
【0031】
駆動電極23は、駆動用枝20aの対向する2面に形成される駆動電極23a、23bと、駆動用枝20bの対向する2面に形成される駆動電極23c、23dを含んでいる。また、駆動電極24は、駆動用枝20aの対向する他の2面に形成される駆動電極24a、24bと、駆動用枝20bの対抗する他の2面に形成される駆動電極24c、24dを含んでいる。駆動電極23a、23b、23c、23dはそれぞれ電気的に接続されて駆動電極23として外部と接続され、駆動電極24a、24b、24c、24dもそれぞれ電気的に接続されて駆動電極24として外部と接続される。
【0032】
検出用枝20cには、対となる検出電極25、26が形成されている。検出電極25は、検出用枝20cの対向する面の一部に形成される検出電極25a、25bを含んでいる。また、検出電極26は、検出用枝20cの対向する面の一部に形成される検出電極26a、26bを含んでいる。検出電極25a、25bはそれぞれ電気的に接続されて検出電極25として外部と接続され、また検出電極26a、26bもそれぞれ電気的に接続されて検出電極26として外部と接続される。
【0033】
発振回路30のI/V変換回路37は、水晶振動子20の一方の駆動電極24から流れ出す出力電流Ioutを入力として、交流信号V1を出力する。LPF38は、交流信号V1を入力として、フィルタ出力信号V2を出力する。AGC39は、交流信号V1を入力して、所定の基準電圧と比較し、制御電圧V5を出力する。VGA40は、フィルタ出力信号V2を入力として、制御信号V5に基づいて、駆動電圧Voutを出力し、水晶振動子20の駆動電極23に印加する。
【0034】
位相回路45は、被検波信号である電流I1及びI2の位相と、検波信号V9との位相差が0°となるように、交流信号V1の位相を調整して、検波信号V9を出力する。なお、位相回路45は、駆動電圧Voutに基づいて検波信号V9を出力するようにしても良い。
【0035】
発振回路30の上記構成によって、水晶振動子20は駆動電圧Voutによって駆動され、自励発振が継続される。そして、水晶振動子20が発振を継続すると、駆動用枝20a、20bは矢印X方向(図4参照)に振動し、また、検出用枝20cも駆動用枝20、20bに同期して矢印X方向に振動する。
【0036】
検出回路50は、I/V変換回路51及び52、差動増幅器53、検波回路60、基準電源(不図示)と接続された第2バッファ65及び第2反転増幅器66、第2バッファ65及び第2反転増幅器66の出力を切り替える第2スイッチ67、スイッチ制御部68、ΔΣ変調器70、LPF80等から構成される。
【0037】
検波回路60は、差動増幅器53と接続された第1バッファ61及び第1反転増幅器62、第1バッファ61及び第1反転増幅器62の出力を切り替える第1スイッチ63を含んで構成される。また、ΔΣ変調器70は、加算器71、ループフィルタ72、A/D変換器73、D/A変換器74等を含んで構成される。なお、A/D変換器は1ビットでもよく、その場合には、D/A変換器74が無くとも良い。図5では、A/D変換器が1ビットの場合の波形について示している。
【0038】
水晶振動子20は、発振回路30によって一定振幅で発振が継続されているが、このとき、水晶振動子20が角速度ωで回転されたとすると、水晶振動子20の駆動用枝20a、20bの振動方向(X方向)に対して直角なZ方向に角速度ωに比例したコリオリの力Fが働く(図4参照)。このコリオリの力Fは、F=2・m・ω・Vで表され、mは水晶振動子20の駆動用枝20a、20b又は検出用枝20cの等価質量であり、Vは駆動周波数f0(Hz)で振動する速度である。このコリオリの力Fによる応力によって、水晶振動子20は、Z方向に駆動周波数に等しい周波数で振動が励起され、この振動によって検出用枝に形成された検出電極25及び26に圧電歪効果による電荷が発生する。
【0039】
この発生した電荷により、検出電極25及び26に微小な逆相の電流である検出電流I1及びI2が流れる。検出回路50のI/V変換回路51及び52は、この検出電流I1及びI2をそれぞれ電流電圧変換して検出電圧V10及びV11を出力し、差動増幅器53は、検出電圧V10及びV11の差分を増幅して差動出力V12を出力する。
【0040】
検波回路60の第1バッファ61は、差動出力V12を入力として、差動出力と同じ出力V20を出力し、第1反転増幅器62は、差動出力V12が反転した出力V21を出力する。同様に、第2バッファ65は、基準電源からの基準電圧信号(Vstd)を入力として、基準電圧信号と同じ信号を出力し、第2反転増幅器66は、基準電圧信号が反転した信号を出力する。
【0041】
第2スイッチ67の出力は、D/A変換器74に入力され、アナログ信号V23に変換されて加算器70へ入力される。加算器71では、発振回路30の位相回路45から出力される検波信号V9から、アナログ信号V23が減算され、減算出力信号V24が出力される。ループフィルタ72は、減算出力信号V24を入力とし、これを積分してフィルタ出力信号V25を出力する。A/D変換器73は、フィルタ出力信号V25をデジタル信号V26に変換して出力する。
【0042】
スイッチ制御部68は、デジタル信号V26がHighの場合には、第1スイッチ63を制御して第1バッファ61からの出力V20を出力するように制御し、且つ第2スイッチ67を制御して第2バッファ65からの信号が出力されるように制御する。また、スイッチ制御部68は、デジタル信号V26がLowの場合には、第1スイッチ63を制御して第1反転増幅器62からの出力V21を出力するように制御し、且つ第2スイッチ67を制御して第2反転増幅器66からの出力が出力されるように制御する。
【0043】
図5は、ジャイロセンサ100における信号例を示す図である。
【0044】
図5(a)に示すように、第1バッファ61の出力V20を実線で、第1反転増幅器62の出力21を点線で記載している。なお、出力V20は、差動増幅器53の差動出力V12と同じ電圧波形を示しており、水晶振動子20の検査用枝20cからの信号に基づく被検波信号に相当する。
【0045】
ΔΣ変調器70では、A/D変換器73の出力を制御信号として、元となる検波信号V9より充分高速に第2スイッチ67を切り替え、その出力V22をD/A変換器74によりアナログ信号に変換してD/A変換器出力信号V23を生成している。さらに、加算器71において検波信号V9とD/A変換器74の出力V23とを比較し、その差をループフィルタ72で積算し、A/D変換器73にフィードバックしている。
【0046】
このように、ΔΣ変調器70は、発振回路30の位相回路45から出力される検波信号V9から、ΔΣ変調されたデジタル信号V26(図5(b)参照)を生成している。なお、デジタル信号V26がHighの場合の電圧値は、基準電源の電圧Vstdにほぼ等しい。スイッチ制御部68は、A/D変換器73の出力であるデジタル信号V26に基づいて、第1スイッチ63のスイッチングを行っているが、これは、デジタル信号V26を用いて、被検波信号である差動信号V12を同期検波していることに相当する。LPF80は、第1スイッチ63の出力信号V27(図5(c)参照)の交流成分を除去し、角速度に応じた直流電圧である角速度検出信号V28(図5(d)参照)を出力する。
【0047】
ここで、A/D変換器73の出力であるデジタル信号V26は、被検波信号V9をデジタル信号に変換したものであって、被検波信号V9と、A/D変換器73のサンプリング周波数以外の特定の周波数成分を有していない。したがって、図2(c)で説明したように、V9の奇数倍の高調波が検波信号に重畳されていた場合であっても、角速度検出信号V28に及ぼす影響が極めて少ない。
【0048】
なお、検出回路50の回路構成より、以下の式が成立しているものと考えられる。
((LV9−LV22・DA)・LF+E)・LVstd=LV22
したがって、
LV22=LV9・LF・Vstd/(1+DA・LF・Vstd)+E・Vstd/(1+DA・LF・Vstd)
ここで、ループフィルタ72の伝達関数をIF、D/A変換器73の伝達関数をDA、A/D変換器73での量子化ノイズをe、量子化ノイズeをラプラス変換したものをEとする。第1スイッチ63の出力信号V27をラプラス変換したものをLV27、第2スイッチ67の出力信号V22をラプラス変換したものをLV22、差動信号V12をラプラス変換したものをLV12、検波信号V9をラプラス変換したものをLV9とする。
【0049】
上記において、DA・LF・Vstd>>1となるように設定しておけば、LV22≒LV9/DAであり、DA≒1と考えれば、以下の式(1)の関係が成り立つ。
LV22≒LV9 (1)
【0050】
さらに、検波回路60と、基準電源に接続された第2バッファ65、第2反転増幅器66及び第2スイッチ67の回路の類似性より、LV12とLV27との関係と、VstdとLV22との関係が同じであることは明らかであるので、以下の式(2)の関係が成り立つ。
LV27=LV12・LV22/Vstd (2)
【0051】
式(1)及び(2)から、以下の式(3)の関係が成り立つ。
LV27=LV9・LV12/Vstd (3)
即ち、検出回路50の第1スイッチ63の出力信号V27は、被検波信号である差動信号12と検波信号9との積と比例していることが理解できる。
【0052】
上記のジャイロセンサ100では、同期検波を行う際、ΔΣ変調器70によって、検波信号V9をデジタル信号に変換したものを利用して同期検波を行っているので、高調波、例えば、外部からの周期的機械振動に起因するもの等によって、角速度検出信号V28に誤差が生じるのを防止することが可能となる。また、第1スイッチ63のスイッチングを利用して検波を行っていることから、ジャイロセンサ100全体をCMOS回路で実現できるという利点もある。
【0053】
また、ジャイロセンサ100では、ΔΣ変調器70を利用しているが、ΔΣ変調では、ループフィルタ72を適切に設定することにより、量子化ノイズを高周波側に押し出し、低周波側のノイズを低減することができる(ノイズシェービング)。したがって、ジャイロセンサにおいて重要な検波後の低周波成分に重畳される、A/D変換器73の量子化ノイズを低く抑えることができるという利点もある。
【0054】
図6は、本発明に係る物理量センサに適用可能な加速度センサ用の素子例を示す図である。
【0055】
図6に示す素子120は、第1音叉型水晶振動子121、第2音叉型水晶振動子122、及び結合子123から構成される。駆動側である第1音叉型水晶振動子121は、第1駆動用枝121a及び第2駆動用枝121bを有し、検出側である第2音叉型水晶振動子122は、第1検出用枝122a及び第2検出用枝122bを有している。
【0056】
第1音叉型水晶振動子121の駆動電極に交流電圧を加えて、第1駆動用枝121a及び第2駆動用枝121bをY´軸周りに変位する互いに逆相の捩れ振動を持続させる。この時、XY平面に対して面対称な±Z軸方向に加速度が生じると、第1駆動用枝121a及び第2駆動用枝121bにはコリオリの力によって他のモードの振動が発生する。発生した振動は、結合子123を介して検出側である第2音叉型水晶振動子122に伝播する。伝播した振動によって、第2音叉型水晶振動子122の第1検出用枝122a及び第2検出用枝122bにY´軸周りに変位する互いに逆相の捩れ振動が発生する。この振動によって発生した交流信号を検出することによって生じた加速度に対応した加速度信号を得ることが可能となる。
【0057】
図7は、図6に示す素子120と各種電極との接続状態を示す図である。
【0058】
第1音叉型水晶振動子121の第1駆動用枝121aには、そのZ´軸方向から見て表面に形成された外側駆動用電極124a、中側駆動用電極124b及び内側駆動用電極124cと、そのZ´軸方向から見て裏面に形成された外側駆動用電極124d、中側駆動用電極124e及び内側駆動用電極124fとが形成されている。また、第1音叉型水晶振動子121の第2駆動用枝121bには、そのZ´軸方向から見て表面に形成された外側駆動用電極125c、中側駆動用電極125b及び内側駆動用電極125aと、そのZ´軸方向から見て裏面に形成された外側駆動用電極125f、中側駆動用電極125e及び内側駆動用電極125dとが形成されている。
【0059】
電極124a、124c、124e、125b、125d及び125fがそれぞれ電気的に接続されて駆動電極23として外部と接続されるように構成されている。また、電極124b、124d、124f、125a、125c及び125eがそれぞれ電気的に接続されて駆動電極24として外部と接続されるように構成されている。
【0060】
第2音叉型水晶振動子122の第1検出用枝122aには、そのZ´軸方向から見て表面に形成された電極126a、裏面に形成された電極126c及び両側面に形成された電極126b及び126dを有している。また、第2音叉型水晶振動子122の第2検出用枝122bには、そのZ´軸方向から見て表面に形成された電極127a、裏面に形成された電極127c及び両側面に形成された電極127b及び127dを有している。
【0061】
電極126b、126d、127a及び127cがそれぞれ電気的に接続されて検出電極25として外部と接続されるように構成されている。電極126a、126c、127b及び127dがそれぞれ電気的に接続されて検出電極26として外部と接続されるように構成されている。
【0062】
図3に示す様な発振回路30から、所定の交流電圧Voutを図7に示す駆動電極23及び24に印加することによって、第1駆動用枝121a及び第2駆動用枝121bをY´軸周りに変位する互いに逆相の捩れ振動を持続させることが可能となる。この時、発振回路30の位相回路45から出力される電圧(V9相当)、検出用の第2音叉型水晶振動子122と接続されている検出電極25及び26から出力される電流(I1及びI2相当)を検出回路50に入力することによって、検出回路50の出力V28から、素子120に加わった加速度に対応する信号を出力することができる。このように、図3〜図5に示したジャイロセンサ100に適用した本発明に係る物理量検出センサの構成は、加速度センサにも適用可能である。なお、図6及び図7に加速度センサを構成する素子として示した素子120は一例であってそれに限定されるものではない。
【0063】
図8は、本発明に係る物理量センサを他のジャイロセンサ200を例にして示した図である。
【0064】
図8に示すジャイロセンサ200おいて、図3と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図3に示すジャイロセンサ100と図8に示すジャイロセンサ200との差異は、ジャイロセンサ100の検出回路50の基準電圧信号(Vstd)の代わりに、一定の電圧ではなく可変電圧を出力することができる電源回路220を含む検出回路210を有している点のみである。
【0065】
電源回路220は、基準電源と接続されたデジタルアナログコンバータ(DAC)90、DAC90の出力を設定するための設定信号を出力する制御回路91、複数の設定データを記憶したメモリ92等を含んで構成されている。
【0066】
図3に示すジャイロセンサ100では、上述したように、LPF80において、出力信号V27の交流成分を除去したものが角速度検出信号V28であること及び上記の式(3)より、角速度検出信号V28、被検波信号I1に対応した電圧V10、被検波信号I2に対応した電圧V11、検波信号V9、及び基準電圧信号(Vstd)の関係は以下の式(4)の様に表わすことができる。
V28=(V11−V10)V9/Vstd (4)
【0067】
式(4)より、ジャイロセンサ200において、基準電圧信号(Vstd)の代わりにDAC90の出力電圧V30を用い、その値を可変することによって、角速度検出信号V28のゲイン調整を行うことが可能となる。具体的には、出力電圧V30を高く設定すれば、角速度検出信号V28は低い値を有することとなり、出力電圧V30を低く設定すれば、角速度検出信号V28は高い値を有することとなる。
【0068】
ところで、水晶振動子20には個体差が存在するため、出力される角速度検出信号V28の値に差が生じる。そこで、予想される水晶振動子の特性の個体差を補償できるように、出力電圧V30の出力範囲を設計しておく。そして、ジャイロセンサ100に搭載された水晶振動子20の特性が分かった段階で、メモリ92を書き換えて出力電圧V30を切り替えることで、予想される水晶振動子の特性の個体差を補償する。メモリ92へ書き込む値は、水晶振動子20単体の特性から決定してもよいし、角速度検出信号V28の測定結果から決定してもよい。いずれにしろ、制御回路91は、入力されたタイプに応じて、ジャイロセンサ100に搭載された水晶振動子20のタイプに合った最適な出力電圧30を出力すべく、DAC90を制御することとなる。
【0069】
上記のような電源回路220によって、水晶振動子20の固体差に拘らず、ほぼ一定の角速度検出信号V28を出力することが可能となった。即ち、電源回路220は、検出回路210に対して可変利得増幅機能(感度補償機能)を持たせる働きをしているが、専用の可変利得増幅回路が不要であるので、専用回路による雑音の発生や回路規模の増大といった不具合を防止することができるという更なる利点がある。
【0070】
図9は、本発明に係る物理量センサを更に他のジャイロセンサ201を例にして示した図である。
【0071】
図9に示すジャイロセンサ201おいて、図3と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図3に示すジャイロセンサ100と図9に示すジャイロセンサ201との差異は、ジャイロセンサ100の検出回路50の基準電圧信号(Vstd)の代わりに、一定の電圧ではなく可変電圧を出力することができる電源回路221を含む検出回路211有している点のみである。
【0072】
電源回路221は、基準電源と接続されたデジタルアナログコンバータ(DAC)90、DAC90の出力を設定するための設定信号を出力する制御回路91、水晶振動子20の周囲温度を検出して、検出した温度に対応した温度信号を出力する温度センサ93等を含んで構成されている。
【0073】
ところで、水晶振動子20は、温度特性を有しているため、周囲温度が変化すると、それに応じて出力される角速度検出信号V28の値も変化する。そこで、温度センサ93からの出力に応じて、制御回路91がDAC90の出力を可変するように制御する。
【0074】
上記のような電源回路221によって、水晶振動子20の温度特性に拘らず、ほぼ一定の角速度検出信号V28を出力することが可能となった。即ち、電源回路221は、検出回路211に対して温度補償機能を持たせる働きをしている。
【0075】
図10は、本発明に係る物理量センサを更に他のジャイロセンサ202を例にして示した図である。
【0076】
図10に示すジャイロセンサ202おいて、図3と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図3に示すジャイロセンサ100と図10に示すジャイロセンサ202との差異は、ジャイロセンサ100の検出回路50の基準電圧信号(Vstd)の代わりに、一定の電圧ではなく可変電圧を出力することができる電源回路222を含む検出回路212有している点のみである。
【0077】
電源回路222は、基準電源と接続されたデジタルアナログコンバータ(DAC)90、DAC90の出力を設定するための設定信号を出力する制御回路91、複数の設定データを記憶したメモリ92、ジャイロセンサ202の周囲温度を検出して、検出した温度に対応した温度信号を出力する温度センサ93等を含んで構成されている。
【0078】
電源回路222では、水晶振動子20の特性の個体差,および特性の温度依存性を補償するために、水晶振動子の特性に関するデータがメモリ92に記憶され且つ水晶振動子の温度特性を補償するための温度センサ93を有している。したがって、電源回路222からは、メモリ92に書き込まれたデータに対応する、水晶振動子20の特性に応じた電圧を基準に、温度センサ93からの温度信号による補正が加えられた出力電圧30が出力されることとなる。なお、水晶振動子の温度特性にも個体差が生じる場合がある。そこで、制御回路91が、更に、水晶振動子毎の温度特性の個体差を補償するように、温度センサ93からの温度信号による補正をした出力電圧30に対して、更に補正を加えるようにしても良い。
【0079】
上記のような電源回路222によって、水晶振動子20の固体差及び温度特性に拘らず、ほぼ一定の角速度検出信号V28を出力することが可能となった。即ち、電源回路222は、検出回路212に対して可変利得増幅機能(感度補償機能)及び温度補償機能を持たせる働きをしている。
【0080】
上記のジャイロセンサ100、200、201及び202では、検波信号V9をΔΣ変調器70を利用してデジタル信号に変換したものを利用して、被検波信号V12を検波するように構成した。しかしながら、被検波信号V12をΔΣ変調器70を利用してデジタル信号に変換したものを利用して、検波信号V9を検波するように構成しても良い。
【0081】
更に、上記のジャイロセンサ100、200、201及び202において、検波信号V9の反転信号をΔΣ変調器70を利用してデジタル信号に変換したものを利用して、被検波信号V12を検波するように構成しも良いし、被検波信号V12の反転信号をΔΣ変調器70を利用してデジタル信号に変換したものを利用して、検波信号V9を検波するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る物理量センサは、ジャイロセンサ、加速度センサ等の水晶振動子を利用した物理量を測定するセンサに良好に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
20 水晶振動子
30 発振回路
37 I/V変換器
38 LPF
39 AGC
40 VGA
45 位相回路
50、210、211、212 検出回路
51、52 I/V変換器
53 差動増幅回路
60 検波回路
61 第1バッファ
62 第1反転増幅器
63 第1スイッチ
65 第2バッファ
66 第2反転増幅器
67 第2スイッチ
70 ΔΣ変調器
71 加算器
72 ループフィルタ
73 A/D変換器
74 D/A変換器
80 LPF
91 制御回路
92 メモリ
93 温度センサ
220、221、222 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から印加された物理量を電気信号に変換する振動子と、前記振動子を発振させる発振回路と、前記振動子からの被検波信号を前記発振回路からの検波信号に基づいて検波する検波回路と、を有する物理量センサにおいて、
前記検波回路の前段で、前記発振回路からの検波信号及び前記振動子からの被検波信号の何れか一方の信号をΔΣ変調し、変調信号を出力するΔΣ変調器と、
出力電圧が可変な可変電圧源と、
前記可変電圧源の出力電圧を制御する制御部と、を更に有し、
前記ΔΣ変調器は、前記出力電圧を基準として作成されたフィードバック信号を用いてΔΣ変調を行う、
ことを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
振動子に応じたデータを記憶するメモリを更に有し、
前記制御部は、前記データに基づいて前記可変電圧源の出力電圧を制御する、請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項3】
前記振動子の周囲温度を検出するための温度センサを更に有し、
前記制御部は、前記温度センサの出力に基づいて前記可変電圧源の出力電圧を制御する、請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項4】
振動子に応じたデータを記憶するメモリと、
前記振動子の周囲温度を検出するための温度センサを更に有し、
前記制御部は、前記データ及び前記温度センサの出力に基づいて前記可変電圧源の出力電圧を制御する、請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項5】
前記検波回路の出力信号の交流成分を除去するローパスフィルタを更に有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の物理量センサ。
【請求項6】
前記検波回路は、前記振動子からの被検波信号及び前記被検波信号の反転信号の何れか一方を、前記ΔΣ変調器の変調信号に基づいて出力する第1スイッチング回路を更に有する、請求項1〜5の何れか一項に記載の物理量センサ。
【請求項7】
前記可変電圧源からの出力電圧及び前記可変電圧源からの出力電圧の反転出力の何れか一方を、前記ΔΣ変調器の変調信号に基づいて出力する第2スイッチング回路を更に有し、
前記第2スイッチング回路の出力信号をフィードバック信号として用いる、請求項1〜6の何れか一項に記載の物理量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−227038(P2011−227038A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189555(P2010−189555)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】