説明

物理量センサ

【課題】本発明は、測定誤差が小さいと共に信頼性に優れる物理量センサを提供することを目的とする。
【解決手段】第1基板21と、第2基板31と、第1基板21と第2基板31との間に位置する機能層を有する物理量センサ1において、外部端子に電気的に接続される第1内部配線層37を有し、複数のアンカ部11〜12の少なくとも1つに対して、第1内部配線層37が第2金属層32を平面視で内包するように形成されており、前記第1金属層と前記第2金属層とが接合する面より外縁に位置する第3絶縁層34に設けられる一つまたは複数の接続孔を介して、第2金属層32と第1内部配線層37とが電気的に接続されてなる物理量センサ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン(Silicon)基板を微細加工して形成された加速度センサ等の物理量センサに係り、特に、測定誤差が小さい信頼性に優れる物理量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Silicon)基板を微細加工することで、加速度センサ、衝撃センサ、圧力センサ、または振動型ジャイロ等の物理量センサが製作される。
【0003】
特許文献1及び特許文献2にシリコン基板を微細加工することで形成されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサ(物理量センサ)に関する発明が開示されている。
【0004】
特許文献1は、図11に示すように、支持導通部(アンカ部)210の第2基板310に対向する面に接続金属層(第1金属層)202が形成されている。また、支持導通部210に対向する第2絶縁層334の表面334aに接続電極部(第2金属層)332が形成されている。そして、接続電極部332と接続金属層202とを対面させ、熱処理を施しながら第1基板201と第2基板310とを加圧して、接続電極部332と接続金属層202とを共晶接合あるいは拡散接合する。
【0005】
また、支持導電通部210は、接続金属層202、接合領域350、接続電極部332、及びリード層337を介して、接続パッド(外部端子)(図示していない)に導通されている。
【0006】
特許文献2は、図12に示すように、支持導通部(アンカ部)410の第2基板510に対向する面に接続金属層(第1金属層)402が形成されている。また、支持導通部410に対向する第2絶縁層534の表面534aに接続電極部(第2金属層)532が形成されている。そして、接続電極部532と接続金属層402とを対面させ、熱処理を施しながら第1基板401と第2基板510とを加圧して、接続電極部532と接続金属層402とを共晶接合あるいは拡散接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2010/032820号
【特許文献2】特願2010−69599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される発明では、図11に示すように、接続電極部332と接続金属層202とが接合されてなる接合領域(金属接合層)350の真下にリード層(第1内部配線層)337が配置されている。そして、リード層337は、接合領域350底面の全面ではなく、接合領域350底面の一部分の下のみに位置している。
【0009】
よって、接合領域350内の接合電極部332にリード層337の端部に沿って段差が生じる可能性がある。そのため、接続電極部332と接続金属層202との接合面332aに段差が生じて、接続電極部332と接続金属層202とが接合される際に、接続金属層202の表面に近い接続電極部332の部分が最初に接触し、接続金属層202の表面から遠い接続電極部332の部分が遅れて接触する。近い部分が接触すると、接触による抵抗力によって、遠い部分には十分な加圧がなされないことがあった。よって、接合領域350に不十分な接合強度の部分や接合不良が発生することがあった。ただし、図11には段差は図示されていない。
【0010】
また、接合電極部332に生じる段差によって、接続電極部332と接続金属層202とが接合される際に、接続金属層202の表面に近い接続電極部332の部分は、接続金属層202の表面から遠い接続電極部332の部分に比べて強く加圧されるために、圧縮される量が大きい。そのため、接続金属層202の表面に近い接続電極部332の部分は接続金属層202の表面から遠い接続電極部332の部分に引っ張り応力を働かせ、接続金属層202の表面から遠い接続電極部332の部分は接続金属層202の表面に近い接続電極部332の部分に圧縮応力を働かせる。このように、接合電極部332に段差があると、接合領域350内には互いに反発しあう残留応力が生じてしまう。
【0011】
不十分な接合強度や反発しあう残留応力によって、経時的に接合領域350の電極内にボイドや、剥がれ等の欠陥が成長し、接合領域350を介して電気的に接続される支持導通部210とリード層337との間の電気抵抗が経時的に変化することや、電気抵抗が大きくなり電気信号が設計仕様以下になることや、断線に至って電気信号が出力されない等の信頼性の問題があった。
【0012】
特許文献2に開示される発明では、図12に示すように、接合領域550内に接続孔600が設けられ、この接続孔600の内面に沿って接続電極部532が形成されている。接続孔600が設けられることで、接続電極部532と接続金属層402との接する面積が小さくなるために十分な接合強度が得られないことや、接合不良が発生することがあった。
【0013】
また、接合領域550内に設けられた接続孔600によって空洞が形成されることがある。接合の際に、接続電極部532の主成分であるアルミニウム等の接合物質が前記空洞に流れ込み接合領域550に接合物質が不足することで、接合強度が劣化することがあった。
【0014】
また、加工ばらつきや、膜厚ばらつき等の工程ばらつきを要因として、接合される際に接続電極部532の主成分であるアルミニウム等の接合物質の前記空洞に流れ込む量がばらつくことで、第1基板401と第2基板510との間隔がばらつくために、物理量の測定ばらつきが生じ、測定誤差が大きくなることがあった。
【0015】
本発明の目的は、このような課題を顧みてなされたものであり、測定誤差が小さいと共に信頼性に優れる物理量センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に位置する機能層を有する物理量センサにおいて、前記機能層は可動部と前記可動部を支持する複数のアンカ部とを有し、前記複数のアンカ部の一方の面は前記第1基板と第1絶縁層を介して接合され、前記複数のアンカ部の他方の面は前記第2基板と前記複数のアンカ部側の第1金属層及び前記第2基板側の第2金属層を介して接合されるとともに、前記第2基板は、前記第1基板に対向する面側に第2絶縁層と、その上に設けられる第3絶縁層と、前記第2絶縁層と前記第3絶縁層の間に設けられ、外部端子に電気的に接続される第1内部配線層と、を有し、前記第1内部配線層は前記第2金属層に対して前記第2基板側に位置してなるとともに、前記第1内部配線層は前記複数のアンカ部の少なくとも1つのアンカ部に対して、前記第1内部配線層が前記第2金属層を平面視で内包するように形成されており、前記第1金属層と前記第2金属層とが接合する面より外縁に位置する前記第3絶縁層に設けられる一つまたは複数の接続孔を介して、前記第2金属層と前記第1内部配線層とが電気的に接続されることにより、前記少なくとも1つのアンカ部を介して前記可動部と前記外部端子とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
このような態様であれば、前記第1内部配線層が前記第2金属層を平面視で内包するように形成されるので、前記第1内部配線層によって形成される段差が前記第1金属層と前記第2金属層とが接合する面には位置しない。また、前記一つまたは複数の接続孔が前記第1金属層と前記第2金属層とが接合する面より外縁に位置しているので、前記接続孔によって前記接合する面(接合領域)の面積が小さくなることや、前記接合する面(接合領域)に空洞が形成されることはない。
【0018】
よって、互いに平坦な面を有する前記第1金属層と前記第2金属層とが接合されるので、十分な接合強度が得られると共に、前記接合する面(接合領域)の残留応力は抑制される。そのため、経時的な前記接合する面(接合領域)の電気抵抗の劣化は抑制される。また、前記接合する面(接合領域)の面積を広く確保できることで、十分な接合強度が得られる。また、前記接合する面(接合領域)に空洞が形成されないので、接合物質が前記接合する面(接合領域)から流出することはなく十分な接合強度が得られ、前記流出がないことで前記第1基板と前記第2基板との間隔ばらつきが抑制され測定誤差が小さく抑えられる。
【0019】
よって、本発明によれば、測定誤差が小さいと共に信頼性に優れる物理量センサを提供することができる。
【0020】
前記第2金属層が前記第2基板に設けられた突出部に形成されていることが好ましい。
【0021】
このような態様であれば、前記第2基板に設けられた前記突出部によって、前記第1基板と前記第2基板との間に、前記可動部が可動するキャビティを形成することができる。
【0022】
前記第1内部配線層と同一材料、且つ同一膜厚であると共に、前記第2絶縁層と前記第3絶縁層との間に設けられる第2内部配線層が、前記少なくとも1つのアンカ部以外の前記複数のアンカ部に対向して設けられることが好ましい。
【0023】
このような態様であれば、全ての前記アンカ部に対して、前記アンカ部と前記第2基板との間に、同一膜厚である前記第1内部配線層あるいは前記第2内部配線層が設けられる。そのため、全ての前記アンカ部に対して、前記第1基板と前記第2基板とを接合する際に前記第1金属層と前記第2金属層とが接する面が、前記第1基板と前記第2基板と隔てる方向(Z方向)における位置が同じになる。その結果、前記第1基板と前記第2基板との対向する面が平行な状態で、前記第1基板と前記第2基板が接合される。よって、前記可動部が可動するキャビティを十分に確保できると共に、全ての前記アンカ部に対して均一な接合がなされるので前記第1金属層と前記第2金属層とからなる全ての接合領域に生じる残留応力を抑制できる。
【0024】
前記可動部の周囲を囲む枠体部が前記第1基板の外縁に設けられ、前記枠体部の一方の面は前記第1基板と前記第1絶縁層を介して接合され、前記枠体部の他方の面は前記第2基板と前記枠体部側の前記第1金属層と前記第2金属層とを介して接合されてなり、前記第2内部配線層が前記枠体部に対向して設けられることが好ましい。
【0025】
このような態様であれば、全ての前記アンカ部及び前記枠体部に対して、前記アンカ部及び前記枠体部と前記第2基板との間に、同一膜厚である前記第1内部配線層あるいは前記第2内部配線層が設けられる。そのため、全ての前記アンカ部及び前記枠体部に対して、前記第1基板と前記第2基板とを接合する際に前記第1金属層と前記第2金属層とが接する面が、前記第1基板と前記第2基板と隔てる方向(Z方向)における位置が同じになる。その結果、前記第1基板と前記第2基板との対向する面が平行な状態で、前記第1基板と前記第2基板が接合される。よって、前記可動部が可動するキャビティを十分に確保できると共に、全ての前記アンカ部及び前記枠体部に対して均一な接合がなされるので前記第1金属層と前記第2金属層とからなる全ての接合領域に生じる残留応力を抑制できる。
【0026】
前記第2基板に前記可動部に対向する固定電極層が設けられ、前記第1内部配線層と同一材料、且つ同一膜厚であると共に、前記第2絶縁層と前記第3絶縁層との間に設けられる第3内部配線層が、前記固定電極層に電気的に接続され、且つ外部に電気信号を出力する外部端子に電気的に接続されることが好ましい。
【0027】
このような態様であれば、前記固定電極層からの電気信号が外部端子に出力される。よって、前記可動部から出力される電気信号と合わせて、物理量を算出することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、測定誤差が小さいと共に信頼性に優れる物理量センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態における物理量センサの平面略図である。
【図2】図1に示す物理量センサのII−II線に沿って切断し矢印方向から見た縦断面略図である。
【図3】第1の実施形態における第2金属層の上から見た突出部14近傍の透視平面略図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿って切断し矢印方向から見た縦断面略図である。
【図5】第1の実施形態の物理量センサが無重力下で静止している状態を示す斜視略図である。
【図6】第1の実施形態の物理量センサが動作している状態を示す斜視略図である。
【図7】第1の実施形態における物理量センサの製造工程説明図である。
【図8】第1変形例である物理量センサの縦断面略図である。
【図9】第2の実施形態である物理量センサの縦断面略図である。
【図10】突出部614を囲んで連続的に接続孔が位置する場合の第2金属層の上から見た透視平面略図である。
【図11】特許文献1における物理量センサの部分縦断面略図である。
【図12】特許文献2における物理量センサの部分縦断面略図である
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1の実施形態>
各図に示す物理量センサに関しては、Y方向が左右方向であり、Y1方向が左方向でY2方向が右方向、X方向が前後方向であり、X1方向が前方向でX2方向が後方向である。また、X方向とY方向の双方に直交する方向が上下方向(Z方向;高さ方向)であり、Z1方向が上方向でZ2方向が下方向である。なお、各図面は、見やすくするために寸法を適宜異ならせて示している。
【0031】
第1の実施形態における物理量センサ1は加速度センサである。物理量センサ1は加速度センサに限定されるものではなく、衝撃センサ、圧力センサ、または振動型ジャイロ等も可能である。
【0032】
加速度センサである物理量センサ1は、例えば、自動車等の車両の走行中にタイヤの空気圧やその異常等を監視するタイヤ空気圧監視システム、いわゆるTPMS(Tire Pressure Monitoring System)において、タイヤの回転位置を検知するセンサとして用いられる。
【0033】
そのため、物理量センサ1は厳しい環境に設置されるため、急激な温度変化やタイヤ等から伝わる振動や衝撃等に対する耐久性や信頼性が要求される。よって、物理量センサ1には、振動試験や温度サイクル試験等が実施され、所定の仕様を満足することが要求される。
【0034】
図1に示す物理量センサ1は、例えば、長方形の平板である導電性の機能部(シリコン層)2を有して形成されている。即ち、機能部2に、各部分の形状に対応する平面形状のレジスト層を形成し、レジスト層が存在していない部分で、シリコン基板をRIE(Reactive Ion Etching)等のエッチング工程で切断することで、各部分に分離している。したがって、物理量センサ1の機能部2に形成される各部分は、シリコン層の表面と裏面の厚みの範囲内で構成されている。物理量センサ1が無重力下で静止状態の際は、図5に示すように、可動部3は、表面全体と裏面全体とのそれぞれが同一面上に位置しており、表面及び裏面から突出する部分がない。なお、実際の物理量センサ1は地球上で使用されるため、地球の重力の影響で可動部3は静止状態であっても若干変位を生じている。
【0035】
ただし、図1は第1基板21を透視して機能部2を第1基板21側から眺めた平面略図である。また、図5、図6は第1基板21、第2基板31及び枠体部5を省略している。
【0036】
図1に示すように、物理量センサ1を構成する機能部2は、可動部3と、可動部3の周囲に枠体部5を有している。
【0037】
図1や図5に示すように、可動部3は、高さ方向(Z方向)に平行に変位する錘部4と、錘部4の内側に設けられた回動支持部6、7、8、9を有して構成される。
【0038】
図1に示すように、第1回動支持部6は、前方向(X1)に延びる連結腕6aと、後方向(X2)に延びる脚部6bとが一体に形成されている。また図1に示すように第2回動支持部7は、後方向(X2)に延びる連結腕7aと、前方向(X1)に延びる脚部7bとが一体に形成されている。
【0039】
また、可動部3の内側には、中央アンカ部10、左側アンカ部11、及び右側アンカ部12が設けられている。各アンカ部10〜12は、左右方向(Y)に所定の間隔を空けて設けられる。中央アンカ部10、左側アンカ部11、及び右側アンカ部12の前後方向(X)の幅寸法は略同一である。
【0040】
各連結腕6a、7a及び各脚部6b、7bは各アンカ部10〜12から離れる方向であって、前後方向(X1−X2方向)に平行に所定の幅寸法にて延出する形状で形成されている。
【0041】
各アンカ部10〜12は、図2(図2は図1に示すII−II線に沿って切断し矢印方向から見た縦断面略図である。ただし図2には中央アンカ部10、左側アンカ部11のみが図示されている。)に示すように、第1基板21に酸化絶縁層(SiO)である第1絶縁層23を介して接合されている。
【0042】
また、可動部3の周囲に設けられる枠体部5は、第1基板21に酸化絶縁層(SiO層)である第1絶縁層23を介して接合されている。
【0043】
第1基板21は例えば導電性のシリコン基板である。第1絶縁層23は、可動部3と対向する位置には設けられていない。図1に示す可動部3、アンカ部10〜12、及び枠体部5からなる機能部2と、第1基板21と、第1絶縁層23とは、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板から形成される。第1基板21、第1絶縁層23、及び機能部2でセンサ基板20を構成する。
【0044】
図1に示すように、第1回動支持部6の連結腕6aの先端部と錘部4とが連結部41aによって回動自在に連結されており、第2回動支持部7の連結腕7aの先端部と錘部4とが連結部41bによって回動自在に連結されている。
【0045】
第1回動支持部6の連結腕6aは、左側アンカ部11と支持連結部51b及び中央アンカ部10と支持連結部51aによって回動自在に連結されている。第2回動支持部7の連結腕7aは、右側アンカ部12と支持連結部52b及び中央アンカ部10と支持連結部52aによって回動自在に連結されている。
【0046】
左側アンカ部11の後方向(X2)に、錘部4及び左側アンカ部11と分離して形成される第3回動支持部8が設けられ、右側アンカ部12の前方向(X1)に、錘部4及び右側アンカ部12と分離して形成される第4回動支持部9が設けられている。
【0047】
第3回動支持部8の先端部と錘部4とは、連結部42aによって回動自在に連結されている。また、第4回動支持部9の先端部と錘部4とは、連結部42bによって回動自在に連結されている。
【0048】
第3回動支持部8と左側アンカ部11とは、支持連結部53aによって回動自在に連結されている。また、第4回動支持部9と右側アンカ部12とは、支持連結部53bによって回動自在に連結されている。
【0049】
第1回動支持部6の連結腕6aと第3回動支持部8との間が、連結部43aを介して連結されている。また、第2回動支持部7の連結腕7aと第4回動支持部9との間が、連結部43bを介して連結されている。
【0050】
各連結部41a、41b、42a、42b、43a、43b及び各支持連結部51a、51b、52a、52b、53a、53bは、シリコン層をエッチングによって薄い板状に切り出すことで、ばね性を有するトーションバー(ばね部)で構成される。
【0051】
可動部3は、錘部4、回動支持部6〜9、連結部41〜43、及び支持連結部51〜53を有して構成される。
【0052】
図2に示すように、物理量センサ1には、錘部4や第1回動支持部6と高さ方向(Z方向)に離れた一方に導電性の第1基板21と他方に第2基板31とが設けられている。配線基板30には、第2基板31の第1基板21に対向する面に、第2絶縁層33が形成され、第2絶縁層33の上に第1内部配線層37や、第3内部配線層39が形成され、その上を第3絶縁層34が覆っている。第3絶縁層34の上に、固定電極層36、突出部13〜16(突出部15は図示していない。)が形成され、突出部13〜16の上に第2金属層32が形成されている。各突出部13〜16に対向する、枠体部5、及びアンカ部10〜12の表面に第1金属層22が形成されている。そして、第1金属層22と第2金属層32を重ねて、熱処理を施しながら圧着することで、第1金属層22と第2金属層32とが接合されてなる接合領域に、金属接合層50(例えば、共晶接合層または拡散接合層)が形成される。このようにして、センサ基板20と配線基板30とは強固に接合される。
【0053】
図2に示すように、センサ基板20側の左側アンカ部11に対向して配置される、配線基板30側の突出部14の真下には第3絶縁層34を介して第1内部配線層37が配置され、突出部14の上には第2金属層32が配置されている。第2金属層32の上から見た突出部14近傍の透視平面略図である図3に示すように、第1内部配線層37は、平面視で突出部14及び第2金属層32を内包するように配置されている。
【0054】
そして、突出部14の周囲の領域に、即ち第1金属層22と第2金属層32とが接合する面(金属接合層50)より外縁に位置するように、第3絶縁層34に4つの接続孔40が形成され、この4つの接続孔40を通して第2金属層32と第1内部配線層37が電気的に接続されている。
【0055】
本実施形態では、4つの接続孔40を設けたが、これに限定されるものではない。接続孔の個数、形、配置される位置等は任意であり、第2金属層32と第1内部配線層37とが電気的に接続されていることと、接続孔40が突出部14の周囲を囲んで連続的に連結されてなく、一つまたは複数の接続孔40と第3絶縁層34とで周囲が囲まれておれば良い。一つまたは複数の接続孔40の全てを内包すると共に突出部14の周囲を囲む最小面積の帯状形状である導通可能領域41(図3、図4に図示する)の面積に対して、一つまたは複数の接続孔40の全面積を35%以下とすることが好ましい。
【0056】
図7は、物理量センサ1の製造工程説明図であり、製造工程中の縦断面略図を示す。
【0057】
図7(a)に示す工程で、センサ基板20を形成する。センサ基板20は、2枚のシリコン基板がシリコン酸化膜(SiO)を介して接合されたSOI基板を加工して得られる。
【0058】
先ず、シリコン基材の一方の表面に、枠体部5とアンカ部10〜12とのそれぞれの形状に対応する平面形状のレジスト層を形成し、レジスト層から露出しているシリコン基材の部分を、RIEなどのイオンエッチング手段で除去し、枠体部5とアンカ部10〜12とを突出した形状に加工する。
【0059】
続いて第1金属層22をスパッタ等で形成する。そして、第1金属層22をレジスト層で覆い、RIEなどのイオンエッチング手段によって枠体部5とアンカ部10〜12との表面以外の第1金属層22を除去する。
【0060】
次に、可動部3、アンカ部10〜12、及び枠体部5のそれぞれの形状に対応する平面形状のレジスト層を形成し、レジスト層から露出しているシリコン基材の部分を、RIEなどのイオンエッチング手段で除去し、可動部3、アンカ部10〜12、及び枠体部5を互いに分離する。ただし、右側アンカ部12は図示していない。
【0061】
このとき、図示していないが、イオンエッチング手段にて可動部3に多数の微細孔を形成しておく。そして、シリコンを溶解せずシリコン酸化膜を溶解できる選択性の等方性エッチング処理を行う。この際、エッチングガスまたはエッチング液は、分離した溝内に浸透し、さらに微細孔から浸透して、シリコン酸化膜を除去する。
【0062】
その結果、アンカ部10〜12及び枠体部5と第1基板21との間のみに第1絶縁層23が残され、可動部3と第1基板21との間の第1絶縁層23は除去される。
【0063】
第1基板21の厚さ寸法は0.2〜0.7mm程度、可動部3、アンカ部10〜12及び枠体部5から構成される機能部2の厚さ寸法は10〜30μm程度、第1絶縁層23の厚さ寸法は1〜3μm程度である。
【0064】
第1金属層22は、ゲルマニウムまたはゲルマニウム合金を主成分とする金属膜である。
【0065】
図7(b)に示す工程で、配線基板30を形成する。配線基板30を構成する第2基板31の表面に第2絶縁層33を形成し、第2絶縁層33の表面に第1内部配線層37、第3内部配線層39を形成するための金属材料を同時にスパッタ等で成膜する。そして、前記金属材料をレジスト層で覆い、RIEなどのイオンエッチング手段によって第1内部配線層37と第3内部配線層39との領域以外の前記金属材料を除去する。その上に第3絶縁層34を形成し、複数の第2金属層32の高さ位置を一致させるために化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)等で第3絶縁層34の表面を平坦にする。次に、レジスト層で覆い、RIEなどのイオンエッチング手段によって枠体部5、アンカ部10〜12に対向する位置に突出部13〜16を形成する。ただし、突出部15は図示していない。また、突出部13〜16と第3絶縁層34とはハッチングを異ならせて図示しているが、突出部13〜16は第3絶縁層34から形成されてなる。
【0066】
図3に示すような、例えば4つの接続孔40が突出部14の4隅にある平面形状のレジスト層を形成し、RIEなどのイオンエッチング手段によって、第3絶縁層34を除去する。そして、4つの接続孔40の孔内に第1内部配線層37を露出させる。同様に、第3内部配線層39上の第3絶縁層34にも接続孔を形成する。
【0067】
その上に金属材料をスパッタ等で成膜し、この金属材料を、4つの接続孔40を覆う第2金属層32の平面形状と固定電極層36の平面形状とを含むレジスト層を形成し、RIEなどのイオンエッチング手段によって第2金属層32と固定電極層36とを形成する。
【0068】
このようにして、第1内部配線層37が第2金属層32を平面視で内包するように形成され、第2金属層32の外縁に位置して第3絶縁層34に設けられる4つの接続孔40を介して第2金属層32と第1内部配線層37とが電気的に接続される。
【0069】
また、第1内部配線層37と同一材料、且つ同一膜厚である第3内部配線層39が固定電極層36と電気的に接続されることにより、固定電極層36の電気信号は、第3内部配線層39を介して、外部に電気信号を出力する外部端子(図示していない。)に出力される。
【0070】
第2絶縁層33、第3絶縁層34、及び突出部13〜16は、シリコン酸化膜(SiO)、シリコンナイトライト膜(SiN)、またはアルミナ膜(AlO)等であり、スパッタやCVD等で形成される。
【0071】
第2金属層32、固定電極層36、第1内部配線層37、第3内部配線層39は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主成分とする金属膜であり、スパッタ等により形成することができる。
【0072】
第2基板31は、例えば、その厚さ寸法が0.2〜0.7mm程度のシリコン基板である。突出部13〜16の厚さ寸法は3〜5μm程度、第2絶縁層33、第3絶縁層34の厚さ寸法は1〜3μm程度である。
【0073】
上述のように製造されたセンサ基板20と配線基板30とは、互いに対向させて位置調整をした状態で真空容器に挿入し、真空引きしながら所定の温度(およそ430℃)まで加熱され圧着される。これにより、図7(c)に示す工程で、第1金属層22と第2金属層32とが接合されることで、第1金属層22と第2金属層32とからなる接合領域に金属接合層50が形成されて、センサ基板20と配線基板30とが気密に封止され強固に固定される。この金属接合層50は、ゲルマニウムとアルミニウムとを主成分とする共晶接合層である。
【0074】
本実施形態では、ゲルマニウムとアルミニウムとの共晶点(424℃)より高い温度である430℃付近まで加熱している。
【0075】
本実施形態では、金属接合層50を共晶接合層としたが、これに限定されるものではない。金属接合層50を拡散接合層とすることも可能である。
【0076】
このようにして、外部端子に電気的に接続される第1内部配線層37が、第2金属層32、第1金属層22、左側アンカ部11を介して、可動部3を構成する支持連結部53a、支持連結部51b、第3回動支持部8、第1回動支持部6、連結部41a、連結部42a、錘部4に電気的に接続され、これらを介して可動部3の全体と電気的に接続される。尚、可動部3は、導電性のシリコン基板から形成されている。
【0077】
このようにして、第1内部配線層37が第2金属層32や、突出部14を平面視で内包するように形成されるので、第1内部配線層37によって形成される段差が第1金属層22と第2金属層32とから形成される金属接合層50(接合領域)内には位置しない。4つの接続孔40が第1金属層22と第2金属層32とが接合する面より外縁に位置しているので、接続孔40によって金属接合層50の面積(接合領域の面積)が小さくなることや、金属接合層50(接合領域)内に空洞が形成されることはない。
【0078】
よって、互いに平坦な面を有する第1金属層22と第2金属層32とが接合されるので、接合される全面で均一に接合がなされて十分な接合強度が得られると共に、接合される全面で均一に圧着がなされて金属接合層50(接合領域)に互いに反発しあう残留応力が生じることが抑制された。そのため、経時的な金属接合層50(接合領域)の電気抵抗の劣化は抑制された。また、金属接合層50(接合領域)の面積を広く確保できることで、十分な接合強度が得られた。また、金属接合層50(接合領域)内に空洞が形成されることがないので、アルミニウム等の接合物質が金属接合層50(接合領域)から流出することはなく十分な接合強度が得られ、前記流出がないことで第1基板21と第2基板31との間隔ばらつきが抑制され測定誤差が小さく抑えられた。
【0079】
よって、本発明によれば、測定誤差が小さいと共に信頼性に優れる物理量センサを提供することができる。
【0080】
本実施形態では突出部14が設けられているが、これに限定されるものではなく、突出部14が設けられてなくても良い。突出部14が設けられていなくても、第1内部配線層37が第2金属層32を平面視で内包するように形成されておれば、平面視で金属接合層50(接合領域)は第2金属層32より小さいので、第1内部配線層37によって形成される段差は金属接合層50(接合領域)内には位置しない。また、4つの接続孔40が前記第1金属層と前記第2金属層とが接合する面(接合領域)より外縁に位置することで、4つの接続孔40は第1金属層22と第2金属層32との接合層である金属接合層50(接合領域)には位置しないので、接続孔40によって金属接合層50の面積(接合領域の面積)が小さくなることや、金属接合層50(接合領域)に空洞が形成されることはない。
【0081】
前述したように、本実施形態の物理量センサ1は、例えば、タイヤ空気圧監視システムに用いられる。そのため、振動試験や温度サイクル試験等が実施され、高信頼性が要求される。よって、金属接合層50内に反発しあう残留応力があると、振動試験や温度サイクル試験等が実施される際に、荷重された材料が時間とともに変形する所謂クリープ現象によって、金属接合層50の反発しあう残留応力が作用する箇所にボイドや、剥がれ等の欠陥が成長し易くなり、電気抵抗が経時的に変化したり、断線したりすることで、所定の試験仕様を満足できなくなると共に、これらの試験に対する歩留を低下させる。よって、金属接合層50に作用する応力は極力に抑制することが重要である。
【0082】
前記の試験等の歩留が低下すると不良品が増えるので、製造コストが高くなる。よって、本実施形態により製造コストを安くすることができた。
【0083】
また、本実施形態の物理量センサ1が車載に搭載されて使用されている際に、金属接合層50内に反発しあう残留応力が働いている状態で、厳しい使用環境下で急激な温度変化やタイヤ等からの振動等に晒されると、クリープ現象によって金属接合層50にはボイドや、剥がれ等の欠陥が成長し易くなる。そのため、電気抵抗が経時的に変化したり、断線したりすることで、物理量センサ1は故障し易い。このことは、安全性の上で好ましくなく、金属接合層50に生じる反発しあう残留応力は極力に抑制することが重要である。
【0084】
第2金属層32は、図2や図7に示すように、第2基板31から突出する突出部13〜16の表面に形成されている。このように、第1基板21から突出するアンカ部10〜12、枠体部5と、第2基板31から突出する突出部13〜16とを接合することで、第1基板21と第2基板31との間に、可動部3が可動するキャビティを形成することが可能である。
【0085】
共晶接合及び拡散接合に関しては、集束イオンビーム(Focused Ion Beam)等によって断面加工し、この断面をエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X−ray spectroscopy)等で元素分布を計測することで確認される。そして、金属接合層50で構成元素がほぼ一定の比率で分布する場合が共晶接合であり、接合面から互いに元素が拡散し合い元素濃度が変化する場合が拡散接合である。
【0086】
上記のエネルギー分散型X線分析以外にも、オージェ電子分光法(Auger Electron spectroscopy)や二次イオン質量分析法(Secondary Ion−microprobe Mass spectrometer)等による深さ方向元素分布分析によっても確認できる。
【0087】
物理量センサ1は、無重力下で外部から力(加速度等)が作用していない際は、それぞれの各支持連結部51〜53及び各連結部41〜43に設けられたトーションバー(ばね部)の弾性復元力により、図5に示すように、全ての部分の表面が同一平面となった状態を維持している。尚、物理量センサ1を実際に使用する際は、地球の重力の影響で若干変位している。
【0088】
一方、図6に示すように、物理量センサ1に外部から例えば加速度が与えられると、加速度は回動支持部6〜9、錘部4、アンカ部10〜12、固定電極層36等に作用する。この際、それぞれの構成部材の質量の大小に起因する慣性力の差によって、それぞれの構成部材は相対的に移動する。その結果、第1基板21と第2基板31に連結されたアンカ部10〜12や固定電極層36が絶対空間に留まろうとし、錘部4は加速度の作用方向へ相対的に移動する。そのため、錘部4は加速度により図5の静止状態の位置から高さ方向へ向けて移動すべく、第1回動支持部6が支持連結部51a、51bを中心に高さ方向に回動し、第2回動支持部7が支持連結部52a、52bを中心として高さ方向に回動し、第3回動支持部8が支持連結部53aを中心として高さ方向に回動し、第4回動支持部9が支持連結部53bを中心として高さ方向に回動する。その結果、可動部3と固定電極層36とは相対的に移動する。(ただし、図6には構成部材の一部のみが図示されている。)
【0089】
このようにして、本実施形態の物理量センサ1は、可動部3と固定電極層36との間に形成される静電容量の変化によって加速度を検知している。よって、左側アンカ部11や突出部14に位置する第1基板21と第2基板31とがなす間隔がばらつくと、可動部3と固定電極層36との間隔であるキャビティがばらつくことになり、可動部3と固定電極層36との間に形成される静電容量がばらつくことになる。その結果、出力される加速度、即ち、電気信号がばらつくことになり、キャビティばらつきを要因として測定誤差が大きくなる。
【0090】
よって、接合領域に空洞がある構造の物理量センサでは、加工ばらつきや、膜厚ばらつき等の工程ばらつきを要因として、アルミニウム等の接合物質が前記空洞に流れ込む量がばらつくことで、突出部14近傍の第1基板21と第2基板31との間隔がばらつくことで、測定誤差が大きくなる。本実施形態では、図3に示すように、4つの接続孔40を突出部14の4隅に、即ち第1金属層22と第2金属層32とが接合する面(金属接合層50)より外縁に設けることで、アルミニウム等の接合物質が金属接合層50(接合領域)から流出することを防止している。
【0091】
よって、本実施形態によって、左側アンカ部11や突出部14に位置する、第1基板21と第2基板31との間隔のばらつきが抑制されることは、測定誤差が小さい物理量センサ1を提供することを可能にする。
【0092】
市場に出荷された物理量センサ1において第1基板21と第2基板31との間隔にばらつきがあると、市場に出荷された物理量センサ1の測定値にばらつきが生じる。このため、この第1基板21と第2基板31との間隔のばらつきが大きいと、市場での保証値の範囲を広く設定する必要があり好ましくない。
【0093】
図7に示すように、第1基板21側の各アンカ部11〜12、及び枠体部5と、第2基板側の突出部13〜16との間に、熱処理を施しながら加圧することで第1金属層22と第2金属層32との金属接合層50が形成される。ただし、アンカ部12と突出部15は図示されてない。
【0094】
各アンカ部11〜12及び枠体部5が平坦な第1基板21に形成されるため、各アンカ部11〜12及び枠体部5の突出部13〜16と接合される面は平面に形成される。強固な金属接合層50を得るためには、各アンカ部11〜12及び枠体部5と突出部13〜16とがZ方向(高さ方向)に一致する面で接合されることが必要であるので、突出部13〜16の接合する面も平面であることが必要である。
【0095】
第1内部配線層37や、第3内部配線層39上に第3絶縁層34が形成され、第3絶縁層34上に突出部14〜16が形成される。突出部14〜16の接合面を平坦にすると共に、突出部14〜16の接合面をZ方向(高さ方向)に一致させるために、第3絶縁層34は化学機械研磨される。ところが、化学機械研磨においては、広いパターンの中央部の膜厚が減少する、所謂ディッシングが起こることが知られている。このため、段差を完全になくすことは難しく、制御することが難しい微小な段差が残り、この微小な段差を端にパターン中央に向けて傾斜した面が形成される。
【0096】
突出部14の接合面が平面であることの必要性と、化学機械研磨ではディッシングにより制御することが難しい微小な段差が残ることから、本実施形態では、突出部14を平面視で内包するように第1内部配線層37を配置することにした。このようにすることで、化学機械研磨で残る微小な段差が、突出部14の左側アンカ11と接合される面内に形成されることを防止し、突出部14と左側アンカ11との接合される面が互いにZ方向(高さ方向)に一致する平面で形成されるので、強固な金属接合層50を得ることができる。
【0097】
ところが、特許文献1に開示される発明では、図11に示すように、接続電極部332と接続金属層202とが接合される接合領域(金属接合層)350の真下にリード層(第1内部配線層)337が配置されている。そして、リード層337は、接合領域350底面の全面ではなく、接合領域350底面の一部分の下のみに位置している。
【0098】
よって、リード層337によって形成される第2絶縁層334の段差を平坦にしようと化学機械研磨を行っても、ディッシングにより制御することが難しい微小な段差が接合領域350内の第2絶縁層334に残り、その上に形成される接合電極部332にも制御することが難しい微小な段差が残る。よって、接続電極部332と接続金属層202とは強固な接合を得ることができない。
【0099】
図10に、突出部614の周囲全周に沿って第3絶縁層(図示してない)が除去されて接続孔640が形成され、突出部614の真下に第1内部配線層637が形成されている場合を図示する。この場合には、熱処理を施しながら圧着される際に、突出部614が周囲から第3絶縁層により支持されることがなく、第1内部配線層637が押し潰され接続孔640を通して第2金属層632側に押し出される。その結果、この近傍においては、第1基板と第2基板との間隔が短縮される。
【0100】
そのため、短縮が起こらない他の突出部から、短縮された突出部614の金属接合層には引っ張り応力が働くことになり、その接合強度が劣化し易い。
【0101】
また、引っ張り応力が働く突出部614の金属接合層内にクリープ現象によってボイドや、剥がれ等の欠陥が成長し、金属接合層を介して電気的に接続される可動部と第1内部配線層637との間の電気抵抗が経時的に変化することや、電気抵抗が大きくなり電気信号が設計仕様以下になることや、断線に至って電気信号が出力されない等の信頼性の問題が起こる。
【0102】
また、加工ばらつきや、膜厚ばらつき等の工程ばらつきを要因として、第1内部配線層637が押し潰される量がばらつくことで、突出部614近傍の第1基板と第2基板との間隔がばらつき、その結果、物理量の測定ばらつきを生じ、測定誤差が大きくなる。
【0103】
よって、本実施形態では、前記を防止するために、図3に示すように第1金属層22と第2金属層32とが接合する面より外縁に位置させて、外縁の全周に連続して位置しないで第3絶縁層34に設けられる一つまたは複数の接続孔40、即ち4つの接続孔40を突出部14の4隅に設けた。その結果、熱処理を施しながら圧着される際に、接続孔40の間にある第3絶縁層34の絶縁層が突出部14を支える。よって、突出部14の真下にある第1内部配線層37が押し潰され接続孔40を通して第2金属層32側に押し出されることが抑制される。
【0104】
よって、図7(c)に示すように、左側アンカ部11と突出部14との近傍に位置する、第1基板21と第2基板31とがなす間隔が短縮されることが抑制された。
【0105】
図8に、固定電極層36の上や、突出部13〜16と第2金属層32との間に、第4絶縁層35を設けた本実施形態の変形例を示す。このような態様であれば、可動部3が固定電極層36に接触しても、第4絶縁層35によって可動部3と固定電極層36との短絡が防止できる。また、可動部3が固定電極層36に接触しても、第4絶縁層35によって固定電極層36が保護されるので、物理量センサ1の品質を向上させることができる。ただし、突出部15は図示していない。
【0106】
<第2の実施形態>
図9に、本発明の第2の実施形態である物理量センサの縦断面略図を示す。本実施形態では、図9に示すように、突出部14に加えて、突出部13、15、16の真下に第1内部配線層37と同一材料、且つ同一膜厚である第2内部配線層38を設けている。第1内部配線層37と第2内部配線層38とは、スパッタ等で同時に成膜された金属材料から形成されるので、同一材料、且つ同一膜厚である。その結果、複数の第2金属層32に対して、第1金属層22と接合される面をZ方向(高さ方向)で一致させることができる。よって、第2金属層32と第1金属層22との各接合を均一に行うことができることで、強固な接合強度を得ることができる。ただし、突出部15は図示していない。
【0107】
但し、第2内部配線層38はダミーの配線層であり、第2金属層32と第1金属層22との各接合面の高さを均一にするために設けられたものであり、どこにも電気的に導通されていない。
【0108】
また、第1基板21と第2基板31との対向する面が平行な状態で接合されるので、可動部3が可動するキャビティを十分に確保できると共に、全ての突出部13〜16に対して同様に接合がなされるので、全ての金属接合層50に引っ張り応力が生じることを抑制できる。
【0109】
また、全ての第2金属層32に対して第1金属層22と接合される面がZ方向に一致しているので、第2絶縁層33の表面を化学機械研磨等で平坦にする必要がないので、製造コストを抑えることができる。
【0110】
<第3の実施形態>
第1の実施形態では、第1金属層22をゲルマニウムまたはゲルマニウム合金を主成分とする金属膜とし、第2金属層32、固定電極層36、第1内部配線層37、及び第3内部配線層39をアルミニウムまたはアルミニウム合金を主成分とする金属膜とした。
【0111】
本発明の第3の実施形態では、第1金属層22、固定電極層36、第1内部配線層37、及び第3内部配線層39をアルミニウムまたはアルミニウム合金を主成分とする金属膜とし、第2金属層32をゲルマニウムまたはゲルマニウム合金を主成分とする金属膜とする。
【0112】
ただし、上記以外は、第1の実施形態と第3の実施形態とは同じである。
【0113】
このような態様であれば、第1金属層22と第2金属層32との間に、共晶接合層または拡散接合層を形成することができるので、センサ基板20と配線基板30とを強固に接合することができる。
【0114】
互いに共晶反応する元素の組み合わせとして、アルミニウムと亜鉛、アルミニウムとマグネシウム、金とシリコン、金とインジウム、金とゲルマニウム、金と錫がある。よって、第1金属層22と第2金属層32とを、これらの元素やその合金を主成分とする金属膜の組み合わせから選ぶことも可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 物理量センサ
2 機能部
3 可動部
4 錘部
5 枠体部
6、7、8、9 回動支持部
10、11、12 アンカ部
13、14、15、16 突出部
20 センサ基板
21 第1基板
22 第1金属層
23 第1絶縁層
30 配線基板
31 第2基板
32 第2金属層
33 第2絶縁層
34 第3絶縁層
35 第4絶縁層
36 固定電極層
37 第1内部配線層
38 第2内部配線層
39 第3内部配線層
40 接続孔
41 導通可能領域
50 金属接合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に位置する機能層を有する物理量センサにおいて、前記機能層は可動部と前記可動部を支持する複数のアンカ部とを有し、前記複数のアンカ部の一方の面は前記第1基板と第1絶縁層を介して接合され、前記複数のアンカ部の他方の面は前記第2基板と前記複数のアンカ部側の第1金属層及び前記第2基板側の第2金属層を介して接合されるとともに、前記第2基板は、前記第1基板に対向する面側に第2絶縁層と、その上に設けられる第3絶縁層と、前記第2絶縁層と前記第3絶縁層の間に設けられ、外部端子に電気的に接続される第1内部配線層と、を有し、前記第1内部配線層は前記第2金属層に対して前記第2基板側に位置してなるとともに、前記第1内部配線層は前記複数のアンカ部の少なくとも1つのアンカ部に対して、前記第1内部配線層が前記第2金属層を平面視で内包するように形成されており、前記第1金属層と前記第2金属層とが接合する面より外縁に位置する前記第3絶縁層に設けられる一つまたは複数の接続孔を介して、前記第2金属層と前記第1内部配線層とが電気的に接続されることにより、前記少なくとも1つのアンカ部を介して前記可動部と前記外部端子とが電気的に接続されていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
前記第2金属層が前記第2基板に設けられた突出部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項3】
前記第1内部配線層と同一材料、且つ同一膜厚であると共に、前記第2絶縁層と前記第3絶縁層との間に設けられる第2内部配線層が、前記少なくとも1つのアンカ部以外の前記複数のアンカ部に対向して設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物理量センサ。
【請求項4】
前記可動部の周囲を囲む枠体部が前記第1基板の外縁に設けられ、前記枠体部の一方の面は前記第1基板と前記第1絶縁層を介して接合され、前記枠体部の他方の面は前記第2基板と前記枠体部側の前記第1金属層と前記第2金属層とを介して接合されてなり、前記第2内部配線層が前記枠体部に対向して設けられることを特徴とする請求項3に記載の物理量センサ。
【請求項5】
前記第2基板に前記可動部に対向する固定電極層が設けられ、前記第1内部配線層と同一材料、且つ同一膜厚であると共に、前記第2絶縁層と前記第3絶縁層との間に設けられる第3内部配線層が、前記固定電極層に電気的に接続され、且つ外部に電気信号を出力する外部端子に電気的に接続されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の物理量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−50320(P2013−50320A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186946(P2011−186946)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】