説明

物理量測定装置及び物理量測定方法

【課題】伝熱管の物理量を簡易に測定することを目的とする。
【解決手段】物理量測定装置10は、内側に流体が流れ物理量が既知の単管12Aと、内側に流体が流れ、物理量が未知の多重管12Bと、単管12Aの外面及び多重管12Bの外面を加熱する加熱装置14と、単管12Aにおける、加熱装置14で加熱されている部分の外面温度を検出する温度計と、多重管12Bにおける、加熱装置14で加熱されている部分の外面温度を検出する温度計とを備える。そして、物理量測定装置10が備える物理量算出装置40は、温度計によって検出された単管12Aの外面温度、温度計によって検出された多重管12Bの外面温度、並びに加熱装置14からの熱流束を用いて、多重管12Bの物理量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量測定装置及び物理量測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換器等に使用される伝熱管の熱抵抗や熱伝導率等の物理量を測定するためには、種々の方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱抵抗を測定するための方法として、測定サンプルを加熱軸と冷却軸との間に挟み、測定サンプルの表裏面の温度差と熱量から熱抵抗を求める熱抵抗測定装置が記載されている。
【0004】
また熱伝導率を測定する方法として、試料にレーザ光を照射し、裏面の温度履歴曲線を解析することによって、熱拡散率及び比熱を求め、試料の密度と求めた熱拡散率及び比熱の積から熱伝導率を算出するレーザフラッシュ法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−134111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、伝熱管としての多重管は、複数の管が重ね合わされて形成されるが、管と管とを接合するときの圧力等の条件に応じて多重管としての物理量が決定される。すなわち多重管の物理量は未知の場合があり、形成された多重管を実際に測定しなければ、多重管の正確な物理量を特定できない。また、伝熱管としての単管もその処理によっては、処理前後で物理量が変化し、処理後の単管は物理量が未知となる場合がある。
【0007】
このため、伝熱管として使用する単管や多重管の物理量を簡易に測定することが望まれている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、試料を例えば丸棒で作成し、試料内の温度勾配を測定しなければならず、又、レーザフラッシュ法は、例えば円盤状にした試料にレーザを照射しなければならない等、伝熱管をそのまま用いるような簡易な方法で、伝熱管の物理量を測定することができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、伝熱管の物理量を簡易に測定することができる物理量測定装置及び物理量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の物理量測定装置及び物理量測定方法は以下の手段を採用する。
【0011】
すなわち、本発明に係る物理量測定装置は、内側に流体が流れ、物理量が既知の伝熱管である第1の管と、内側に前記流体が流れ、物理量が未知の伝熱管である第2の管と、前記第1の管の外面及び前記第2の管の外面を加熱する加熱手段と、前記第1の管における、前記加熱手段で加熱されている部分の外面温度を検出する第1温度検出手段と、前記第2の管における、前記加熱手段で加熱されている部分の外面温度を検出する第2温度検出手段と、前記第1温度検出手段によって検出された前記第1の管の外面温度、前記第2温度検出手段によって検出された前記第2の管の外面温度、及び前記加熱手段からの熱流束の値を用いて、前記第2の管の物理量を算出する算出手段と、を備える。
【0012】
本発明によれば、加熱手段によって、内側に流体が流れ、物理量が既知の伝熱管である第1の管の外面と、内側に流体が流れ、物理量が未知の伝熱管である第2の管の外面とが加熱される。そして、第1温度検出手段によって、第1の管における、加熱手段で加熱されている部分の外面温度が検出され、第2温度検出手段によって、第2の管における、加熱手段で加熱されている部分の外面温度が検出される。
なお、第1の管は、物理量の測定の対照となる第2の管に対して基準となる管であり、予め各種物理量が特定されている。
【0013】
そして、算出手段によって、第1温度検出手段で検出された第1の管の外面温度、第2温度検出手段で検出された第2の管の外面温度、及び加熱手段からの熱流束の値を用いて、第2の管の物理量が算出される。
【0014】
このように、本発明によれば、第1の管の外面温度、第2の管の外面温度、及び加熱手段からの熱流束の値を用いることにより、第2の管の物理量を算出することで、伝熱管としての第2の管そのものを用いて、伝熱管の物理量を簡易に測定することができる。
【0015】
また、本発明の物理量測定装置は、前記第2の管を、複数の管が重ね合わされて形成される多重管とし、前記算出手段が、前記第1温度検出手段によって検出された前記第1の管の外面温度と前記第2温度検出手段によって検出された前記第2の管の外面温度との温度差を、前記加熱手段からの熱流束の値で除算することによって、前記第2の管の接触熱抵抗を算出してもよい。
【0016】
本発明によれば、第1温度検出手段で検出された第1の管の外面温度と第2温度検出手段で検出された第2の管の外面温度との温度差を、加熱手段からの熱流束の値で除算することによって、多重管である第2の管の接触熱抵抗を算出するので、多重管の接触熱抵抗を簡易に測定することができる。
【0017】
また、本発明の物理量測定装置は、前記算出手段が、前記第1温度検出手段によって検出された前記第1の管の外面温度Tout1、前記第2温度検出手段によって検出された前記第2の管の外面温度Tout2、及び前記加熱手段からの熱流束qに基づき、次式によって前記第2の管の熱伝導率λを算出してもよい。
【数1】

【数2】

【数3】

in1:第1の管の内面温度、Tin2:第2の管の内面温度、rin1:第1の管の内径の半径、rout1:第1の管の外径の半径、rin2:第2の管の内径の半径、rout2:第2の管の外径の半径
【0018】
本発明によれば、第1温度検出手段で検出された第1の管の外面温度、第2温度検出手段で検出された第2の管の外面温度、及び加熱手段からの熱流束に基づいた上記式を用いて、第2の管の熱伝導率を算出するので、伝熱管の熱伝導率を簡易に測定することができる。
【0019】
また、本発明の物理量測定装置は、前記加熱手段が、輻射熱によって前記第1の管の外面及び前記第2の管の外面を加熱してもよい。
【0020】
本発明によれば、輻射熱により非接触で第1の管の外面及び第2の管の外面を加熱するので、接触により加熱する場合に比べて、より均等に加熱することができる。
【0021】
また、本発明の物理量測定装置は、前記加熱手段が、前記第1の管の外面及び前記第2の管の外面を、間隙をもって金属ブロックで覆い、該金属ブロックを加熱することで、該金属ブロックから発せられる輻射熱によって前記第1の管の外面及び前記第2の管の外面を加熱してもよい。
【0022】
本発明によれば、金属ブロックが一旦均等に加熱され、加熱された金属ブロックによって第1の管の外面及び第2の管の外面の加熱が行われるので、第1の管の外面及び第2の管の外面をより均等に加熱することができる。
【0023】
また、本発明の物理量測定装置は、前記加熱手段によって加熱される前記第1の管の外面、前記第2の管の外面、及び前記金属ブロックの表面に、黒体塗料が塗布されてもよい。
【0024】
本発明によれば、より効率的に第1の管の外面及び第2の管の外面を加熱できる。
【0025】
一方、本発明に係る物理量測定方法は、内側に流体が流れ、物理量が既知の伝熱管である第1の管の外面、及び内側に前記流体が流れ、物理量が未知の伝熱管である第2の管の外面を加熱する第1工程と、前記第1の管における、前記加熱手段で加熱されている部分の外面温度を第1温度検出手段で検出すると共に、前記第2の管における、前記加熱手段で加熱されている部分の外面温度を第2温度検出手段で検出する第2工程と、前記第1温度検出手段によって検出された前記第1の管の外面温度、前記第2温度検出手段によって検出された前記第2の管の外面温度、及び前記加熱手段からの熱流束の値を用いて、前記第2の管の物理量を算出する第3工程と、を含む。
【0026】
本発明によれば、第1の管の外面温度、第2の管の外面温度、及び加熱手段からの熱流束の値を用いることにより、第2の管の物理量を算出することで、伝熱管としての第2の管そのものを用いて、伝熱管の物理量を簡易に測定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、伝熱管の物理量を簡易に測定する、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物理量測定装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る加熱装置の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る物理量算出装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る供試伝熱管内部の温度勾配を示す模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る評価対象管を単管とした場合における、供試伝熱管内部の温度勾配を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る物理量測定装置及び物理量測定方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本第1実施形態に係る物理量測定装置10の構成図であり、物理量測定装置10は、熱交換器等に用いられる伝熱管の物理量を測定するための装置である。
【0031】
物理量測定装置10は、内側に流体が流れる単管12A、内側に流体が流れ、複数の管が重ね合わされて形成された多重管(本第1実施形態では、二重管)12B、単管12Aの外面及び多重管12Bの外面を加熱する加熱装置14、単管12A及び多重管12Bへ流体を送出するポンプ16、並びに単管12A及び多重管12Bを流れた流体を冷却し、冷却した流体をポンプ16へ送出する冷却塔18を備えている。
このように、単管12A、多重管12B、ポンプ16、及び冷却塔18は、流体が流れる流路19によって接続されている。
なお、多重管12Bとは、より詳しくは、複数の管が入れ子状に組み合わされ、対向する外周面と内周面が密着された状態で重ね合わされて形成された多重管である。
【0032】
本第1実施形態に係る物理量測定装置10は、一例として、1本の単管12Aと、例えば、形成過程が各々異なる4本の多重管12Bとが配置されている。また、本第1実施形態に係る単管12Aは、多重管12Bの物理量を測定するための基準となる管(基準管)であり、単管12Aの物理量は既知とされている。一方、多重管12Bは、物理量が未知であり、物理量が測定される対象となる評価対象管とされる。
【0033】
本第1実施形態では、一例として、単管12Aと多重管12Bの内径及び外径は同一とする。また、単管12A及び多重管12Bの断面は、特に限定されず、丸型であってもよいし、多角形型であってもよい。さらに、単管12Aと多重管12Bの材質は同一とする。
【0034】
なお、以下の説明において、単管12A及び多重管12Bを区別しない場合は、供試伝熱管12と総称する。
【0035】
そして、ポンプ16から送出された流体は、ストレーナ20を通過して、分岐された流路19によって、並列に配置された各供試伝熱管12に均等に流れる。各供試伝熱管12を流れた流体は、流路19が再び集合することによって、集められ冷却塔18へ戻る。
各供試伝熱管12とストレーナ20との間には、各々バルブ21が設けられており、バルブ21を閉じることで、対応する供試伝熱管12への流体の流れを止めることができる。
【0036】
また、ストレーナ20よりも下流側には温度計22Aが設けられており、各供試伝熱管12に分配される前の流体は、温度計22Aによってその温度を測定される。また、各供試伝熱管12の出口毎に、流体の温度を検出する温度計22B、及び流体の流量を検出する流量計24が設けられている。
【0037】
さらに、流路19は、ストレーナ20の配置位置よりも上流側で、バイパス流路26が接続されており、バイパス流路26は冷却塔18に接続されている。そして、バイパス流路26に設けられているバルブ28の開度を調節することで、各供試伝熱管12を流れる流体の流量が制御可能とされている。
【0038】
図2は、本第1実施形態に係る加熱装置14の断面図である。
加熱装置14は、輻射熱により対応する供試伝熱管12の外面を加熱する。加熱装置14は、輻射熱により非接触で供試伝熱管12の外面を加熱するので、接触により加熱する場合に比べて、より均等に加熱することができる。
【0039】
具体的には、本第1実施形態に係る加熱装置14は、供試伝熱管12の外面を、間隙をもって金属ブロック30で覆い、該金属ブロック30を、外周に巻かれたヒータ32によって加熱することで、該金属ブロック30から発せられる輻射熱によって、供試伝熱管12の外面を加熱する。
【0040】
これにより、金属ブロック30が一旦均等に加熱され、加熱された金属ブロック30によって供試伝熱管12の加熱が行われる。そのため、例えば、単にヒータによって各供試伝熱管12の外面を加熱する場合に比べて、各供試伝熱管12の外面をより均等に加熱することができ、後述する多重管の物理量の測定の精度をより高めることができる。なお、本第1実施形態では、一例として金属ブロック30として、熱伝導率の高い銅を用いるが、金属ブロック30として他の金属を用いてもよい。
【0041】
また、加熱装置14によって加熱される供試伝熱管12の外面及び金属ブロック30の表面には、黒体塗料が塗布されている。これにより、より効率的に単管12Aの外面及び多重管12Bの外面が加熱される。なお、黒体塗料は、例えば、黒色等であり、輻射率が高く(例えば、0.9以上)なるものであれば既知の何れでもよい。
【0042】
そして、第1実施形態に係る物理量測定装置10は、各単管12Aにおける加熱装置14で加熱されている部分の外面温度を検出する温度計22C、及び多重管12Bにおける加熱装置14で加熱されている部分の外面温度を検出する温度計22Dを備えている。なお、温度計22C,22Dは、供試伝熱管12における加熱装置14で加熱されている部分の略中心に配置されていることが好ましい。
【0043】
このように、ポンプ16から送出された流体は、同じ状態量(同じ温度及び同じ流速)によって、加熱されている供試伝熱管12へ流れ、供試伝熱管12で加熱され、冷却塔18へ戻ることによって冷却される。なお、供試伝熱管12へ流れる流体は、冷却塔18によって例えば20℃とされ、加熱装置14は、例えば400℃に供試伝熱管12の外面を加熱する。
【0044】
さらに、物理量測定装置10は、物理量算出装置40(図1参照)を備えている。
物理量算出装置40は、温度計22Cによって検出された単管12Aの外面温度、温度計22Dによって検出された検出された多重管12Bの外面温度、並びに加熱装置14からの熱流束に基づいて、評価対象管である多重管12Bの物理量を算出する。
【0045】
図3は、本第1実施形態に係る物理量算出装置40の電気的構成を示すブロック図である。
【0046】
本実施形態に係る物理量算出装置40は、物理量算出装置40全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit)42、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)44、CPU42による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)46、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)48を備えている。
【0047】
さらに、物理量算出装置40は、キーボード及びマウス等から構成され、各種操作の入力を受け付ける操作入力部50、各種画像を表示する、例えば液晶ディスプレイ装置等の画像表示部52、及び温度計22A,22B,22C,22Dと接続され、温度計22A,22C,22Dによって検出された温度を示す温度データを受信する外部インタフェース54を備えている。
【0048】
これらCPU42、ROM44、RAM46、HDD48、操作入力部50、画像表示部52、及び外部インタフェース54は、システムバス58を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU42は、ROM44、RAM46、及びHDD48へのアクセス、操作入力部50に対する操作状態の把握、画像表示部52に対する画像の表示、並びに外部インタフェース54を介した温度計22A,22C,22Dからの温度データの受信等を行なうことができる。
【0049】
なお、HDD48には、単管12Aの内径、外径、及び各種物理量、並びに各多重管12Bの内径及び外径等を示す供試伝熱管データが記憶されている。
【0050】
図4は、供試伝熱管12内部の温度勾配を示す模式図である。図4の実線は、単管12Aの温度勾配を示し、破線は、多重管12B(二重管)の温度勾配を示している。
図4に示すように、供試伝熱管12の内面は、流体の温度と略同じであり、外面への加熱によって、その内部において、内面から外面へ向かうに連れて温度が上昇する。
具体的には、単管12Aは、内面から外面に向かい連続的に温度が上昇している。一方、多重管12Bは、管と管との接合面(伝熱管接合面)において、急峻な温度変化が生じている。これは、多重管12Bを構成する管と管との接触により生じる接触熱抵抗の影響によるものである。
【0051】
このように、複数の管が重ね合わされて形成されている多重管12Bは、管と管との接触による接触熱抵抗が生じることとなるが、単一の管で形成されている単管12Aには、接触熱抵抗は生じない。
この接触熱抵抗は、管と管とを接合させる際の圧力等の条件によっても変化すると考えられるが、実際の測定によってでしか正確にその値を特定できない。
【0052】
そこで、本第1実施形態に係る物理量算出装置40は、接触熱抵抗の無い単管12Aを基準として、多重管12Bの接触熱抵抗を算出する。
接触熱抵抗を算出するにあたり、物理量測定装置10は、各加熱装置14のヒータ32へ流す電流値を一致させることによって、各供試伝熱管12への加熱装置14からの熱流速q(W/m)を一致させる。
その後、物理量測定装置10は、単管12Aにおける加熱装置14で加熱されている部分の外面温度を温度計22Cで検出すると共に、多重管12Bにおける加熱装置14で加熱されている部分の外面温度を温度計22Dで検出する。
【0053】
そして、物理量算出装置40が備えるCPU42は、下記式に基づいて、多重管12Bの接触熱抵抗を算出する。
まず、供試伝熱管12の内面温度(℃)をTinとし、供試伝熱管12の外面温度(℃)をToutとした場合、その温度差ΔTは、下記(4)式のように表される。なお、αinは供試伝熱管12の熱伝達率(W/mK)、λは供試伝熱管12の熱伝導率(W/mK)、rinは供試伝熱管12の内径の半径(m)、routは供試伝熱管12の外径の半径(m)、Rは接触熱抵抗(mK/W)であり、各値は供試伝熱管データとしてHDD48に予め記憶されている。
【数4】

【0054】
接触熱抵抗Rは、単管12Aの場合は、0(零)となる。このため、単管12Aにおける温度の検出結果から、供試伝熱管12における熱伝達率に起因する温度差は、下記(5)式のように表される。なお、供試伝熱管12の内面温度Tinは、温度計22Aと温度計22Bとの平均値から求められる。
【数5】

(5)式における添え字の“1”は、単管12Aを示している。なお、外面温度Tout1は、温度計22Cによって検出された温度であり、内面温度Tin1は、温度計22Aによって検出された温度、すなわち各供試伝熱管12へ流れる流体の温度であり、各供試伝熱管12で共通の温度である。また、熱伝導率λは、単管12A及び多重管12B共に材質が同じであるため、同じであるとする。
【0055】
そして、本第1実施形態に係る物理量算出装置40は、上記(4),(5)式に示される関係から、下記(6)式に表されるように、温度計22Cによって検出された単管12Aの外面温度Tout1と温度計22Dによって検出された多重管12Bの外面温度Tout2との温度差を、加熱装置14からの熱流束qで除算することによって、多重管12Bの接触熱抵抗Rを算出する。なお、熱流速qの値は、ヒータ32へ流される電流値によって、予め特定されている。
【数6】

(6)式における添え字の“2”は、多重管12Bを示している。
【0056】
以上説明したように、本第1実施形態に係る物理量測定装置10は、内側に流体が流れ、物理量が既知の単管12Aと、内側に流体が流れ、物理量が未知の多重管12Bと、単管12Aの外面及び多重管12Bの外面を加熱する加熱装置14と、単管12Aにおける、加熱装置14で加熱されている部分の外面温度を検出する温度計22Cと、多重管12Bにおける、加熱装置14で加熱されている部分の外面温度を検出する温度計22Dとを備える。
そして、物理量測定装置10が備える物理量算出装置40は、温度計22Cによって検出された単管12Aの外面温度、温度計22Dによって検出された多重管12Bの外面温度、並びに加熱装置14からの熱流束を用いて、多重管12Bの物理量を算出する。
従って、本第1実施形態に係る物理量測定装置10は、伝熱管としての多重管の物理量を簡易に測定することができる。
【0057】
また、本第1実施形態に係る物理量測定装置10は、温度計22Cによって検出された単管12Aの外面温度と温度計22Dによって検出された多重管12Bの外面温度との温度差を、加熱装置14からの熱流束で除算することによって、多重管12Bの接触熱抵抗を算出する。
従って、本第1実施形態に係る物理量測定装置10は、多重管12Bの接触熱抵抗を簡易に測定することができる。
【0058】
なお、本第1実施形態では、多重管12Bを二重管とする形態について説明したが、本発明は、これに限らず、多重管12Bを3つ以上の管が重ねあわされた三重管以上としてもよい。この形態の場合、本第1実施形態で算出される接触熱抵抗は、2つ以上の伝熱管接合面で生じる接触熱抵抗の総和となる。
【0059】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、本第2実施形態に係る物理量測定装置10の構成は、図1,2,3に示される第1実施形態に係る物理量測定装置10の構成と同様であるので説明を省略する。
【0060】
本第2実施形態に係る物理量測定装置10は、多重管12Bの熱伝導率(接触熱抵抗を含めた等価熱伝導率)を測定する。
【0061】
まず、基準管となる単管12Aの内面温度と外面温度との温度差ΔTは、下記(7)式のように表される。
【数7】

【0062】
このため、単管12Aにおける温度の検出結果から、供試伝熱管12における熱伝達率に起因する温度差は、下記(8)式のように表される。
【数8】

【0063】
そして、これらの関係から、多重管12Bの熱伝導率λは、下記(9)式から算出される。
【数9】

【0064】
ΔTは、多重管12Bの内面温度と外面温度との温度差であり、下記(10)式から算出される。
【数10】

なお、多重管12Bの内面温度Tin2は、内面温度Tin1と同様に、温度計22Aで検出された温度と温度計22Bで検出された温度の平均値から求められる温度である。
【0065】
以上のことから、本第2実施形態に係る物理量測定装置10は、多重管12Bの接触熱抵抗を含めた等価熱伝導率を簡易に算出することができる。
【0066】
また、本第2実施形態に係る物理量測定装置10は、評価対象管として、多重管12Bの替わりに物理量が未知の単管を用いて、評価対象管としての単管の熱伝導率を算出してもよい。
評価対象管となる単管としては、基準管である単管12Aと異なる材質、又は単管12Aと同じ材質であるが、処理の方法が異なる単管や表面にコーティングがされている単管等、種々の単管が対象となる。
なお、評価対象管を単管とした場合は、図5に示すように、評価対象管を多重管とした場合のような、接触熱抵抗の影響による温度変化は生じない。
【0067】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
例えば、上記各実施形態では、物理量測定装置10を流れる流体として水を用いる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、流体として水以外の他の液体又は気体が用いられる形態としてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、各供試伝熱管12の内面温度を、温度計22Aで検出された温度と温度計22Bで検出された温度との平均値から求める形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各供試伝熱管12の内面(外面温度を検出する温度計22C,22Dに対向する位置)に温度計を設置し、該温度計によって検出された温度を供試伝熱管12の内面温度とする形態としてもよい。
【0070】
また、上記各実施形態では、物理量測定装置10において各供試伝熱管12が並列に配置されている形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各供試伝熱管12が直列に配置される形態としてもよい。この形態の場合、例えば、各供試伝熱管12の入口及び出口には、流体の温度を検出する温度計が配置される。
【符号の説明】
【0071】
10 物理量測定装置
12A 単管
12B 多重管
14 加熱装置
22A 温度計
22B 温度計
22C 温度計
22D 温度計
30 金属ブロック
40 物理量算出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に流体が流れ、物理量が既知の伝熱管である第1の管と、
内側に前記流体が流れ、物理量が未知の伝熱管である第2の管と、
前記第1の管の外面及び前記第2の管の外面を加熱する加熱手段と、
前記第1の管における、前記加熱手段で加熱されている部分の外面温度を検出する第1温度検出手段と、
前記第2の管における、前記加熱手段で加熱されている部分の外面温度を検出する第2温度検出手段と、
前記第1温度検出手段によって検出された前記第1の管の外面温度、前記第2温度検出手段によって検出された前記第2の管の外面温度、及び前記加熱手段からの熱流束の値を用いて、前記第2の管の物理量を算出する算出手段と、
を備えた物理量測定装置。
【請求項2】
前記第2の管は、複数の管が重ね合わされて形成される多重管であり、
前記算出手段は、前記第1温度検出手段によって検出された前記第1の管の外面温度と前記第2温度検出手段によって検出された前記第2の管の外面温度との温度差を、前記加熱手段からの熱流束の値で除算することによって、前記第2の管の接触熱抵抗を算出する請求項1記載の物理量測定装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記第1温度検出手段によって検出された前記第1の管の外面温度Tout1、前記第2温度検出手段によって検出された前記第2の管の外面温度Tout2、及び前記加熱手段からの熱流束qに基づき、次式によって前記第2の管の熱伝導率λを算出する請求項1記載の物理量測定装置。
【数1】

【数2】

【数3】

in1:第1の管の内面温度、Tin2:第2の管の内面温度、rin1:第1の管の内径の半径、rout1:第1の管の外径の半径、rin2:第2の管の内径の半径、rout2:第2の管の外径の半径
【請求項4】
前記加熱手段は、輻射熱によって前記第1の管の外面及び前記第2の管の外面を加熱する請求項1から請求項3の何れか1項記載の物理量測定装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記第1の管の外面及び前記第2の管の外面を、間隙をもって金属ブロックで覆い、該金属ブロックを加熱することで、該金属ブロックから発せられる輻射熱によって前記第1の管の外面及び前記第2の管の外面を加熱する請求項4記載の物理量測定装置。
【請求項6】
前記加熱手段によって加熱される前記第1の管の外面、前記第2の管の外面、及び前記金属ブロックの表面には、黒体塗料が塗布されている請求項4又は請求項5記載の物理量測定装置。
【請求項7】
内側に流体が流れ、物理量が既知の伝熱管である第1の管の外面、及び内側に前記流体が流れ、物理量が未知の伝熱管である第2の管の外面を加熱する第1工程と、
前記第1の管における、前記加熱手段で加熱されている部分の外面温度を第1温度検出手段で検出すると共に、前記第2の管における、前記加熱手段で加熱されている部分の外面温度を第2温度検出手段で検出する第2工程と、
前記第1温度検出手段によって検出された前記第1の管の外面温度、前記第2温度検出手段によって検出された前記第2の管の外面温度、及び前記加熱手段からの熱流束の値を用いて、前記第2の管の物理量を算出する第3工程と、
を含む物理量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−154855(P2012−154855A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15583(P2011−15583)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】