説明

物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の検定方法

【課題】物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力をできるだけ簡便に評価するための検定方法の提供。
【解決手段】物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の検定方法であり、(1)被験物質とPTPR-Eとの接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標を測定する第一工程、及び、(2)第一工程で得られた前記接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値を前記指標の対照値と比較する第二工程、及び、(3)第二工程で比較して得られた差異に基づいて前記被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価する第三工程、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の検定方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
脳由来神経栄養因子(BDNF; Brain-derived neurotrophic factor)は、標的細胞表面上にある特異的受容体であるBDNFレセプター(TrkB)に結合し、神経細胞の生存・成長・シナプスの機能亢進等の生理作用を有する重要な液性タンパク質である。
BDNFが前記特異的受容体に結合すると当該特異的受容体のチロシン残基のリン酸化が惹起され当該特異的受容体は活性化され、そのリン酸化を引き金に細胞内の各種シグナル伝達タンパク質に情報が伝わり、最終的にBDNFの生理作用として出現するものと考えられている。従って、BDNFレセプターにBDNFが結合した際に惹起されるBDNFレセプターの活性化を制御する能力を有する物質は、BDNF作用を調節する作用を有し、内在性のBDNFによる作用を調節することを通じてBDNFが有する各種機能を調節する物質として有用性が期待できる。
現在、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の検定方法としては、例えば、BDNFレセプターのリン酸化状態を、リン酸化されたBDNFレセプターを特異的に認識する抗体で測定する方法(例えば、特許文献1参照)を応用することにより、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力を測定する方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特許第2561604号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来方法を利用した、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の検定方法は、その工程が煩雑で比較的高度な手技が要求されるものであり、特に多数の物質をスクリーニングする際には多大な困難を伴うものであることから、必ずしも十分に満足できるものではなかった。
そこで、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力をできるだけ簡便に評価するための検定方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況の下、本発明者は鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の検定方法であり、
(1)被験物質とタンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプE(Protein tyrosine phosphatase receptor type, E、以下、PTPR-E)との接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標を測定する第一工程、及び
(2)第一工程で得られた前記接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値を前記指標の対照値と比較する第二工程、及び、
(3)第二工程で比較して得られた差異に基づいて前記被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価する第三工程、
を有することを特徴とする方法(以下、本発明検定方法と記すこともある。);
2.PTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標が、以下のいずれかの測定用指標であることを特徴とする前項1記載の方法;
<測定用指標>
(1)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク質単位重量当たりの酵素活性
(2)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク量
3.前記接触系が、BDNFレセプターを有する細胞であって、前記被験物質が投与され、且つ、タンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプEを細胞内で産生する能力を有する細胞であることを特徴とする前項1記載の方法;
4.前記細胞が、PTPR-E遺伝子を含む細胞であることを特徴とする前項3記載の方法;
5.PTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標が、以下の測定用指標であることを特徴とする前項4記載の方法;
<測定用指標>
(1)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク質単位重量当たりの酵素活性
(2)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク量
(3)前記接触系内に含まれるPTPR-E遺伝子の転写量及び/又は翻訳量
6.前記指標の対照値が、被験物質との非接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値であることを特徴とする前項1乃至5のいずれかの前項記載の方法;
7.第三工程において、測定値が対照値の1/2倍以下、又は、対照値と比較し統計学的に有意な低値であることを基準とし、前記被験物質がBDNFレセプターのリン酸化制御能力としてBDNFレセプターの脱リン酸化抑制能力を有するものとして評価することを特徴とする前項6記載の方法;
8.前記被験物質が、RNAi、miRNA及びアンチセンス核酸からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の物質であることを特徴とする前項7記載の方法;
9.前項1乃至8のいずれかの前項記載の方法により評価されたBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準に基づき、BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質を探索する工程を有することを特徴とする物質の探索方法(以下、本発明探索方法と記すこともある。);
10.物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価するための指標を提供する試薬としての、タンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプE若しくはその遺伝子の使用(以下、本発明使用と記すこともある。);
11.前項1乃至8のいずれかの前項記載の方法により評価されたBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段、前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段を具備することを特徴とするシステム(以下、本発明システムと記すこともある。);
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の簡便な検定方法等が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図中の上段にあるパネル(a)は、BDNFを添加しない場合:図中の「BDNF(−)」、BDNFを添加した場合:図中の「BDNF+」のそれぞれの群について、更にはPTPR-E遺伝子をBDNFレセプター遺伝子と共に発現させた場合:図中の「PTPRE+」、PTPR-E遺伝子をBDNFレセプター遺伝子と共に発現させない場合:図中の「PTPRE(-)」、以上の組み合わせの合計4種類の場合について、SK-N-SH細胞の細胞抽出物に含まれるBDNFレセプターのリン酸化状態を、リン酸化されたBDNFレセプターを特異的に認識する抗体を用いてウエスタンブロット法により検討した結果を示す図である。 一方、図中の下段にあるパネル(b)は、EGFを添加しない場合:図中の「EGF(−)」、EGFを添加した場合:図中の「EGF+」のそれぞれの群について、更にPTPR-E遺伝子を内在性のEGFレセプターを有するSK-N-SH細胞に発現させた場合:図中の「PTPRE+」、PTPR-E遺伝子を内在性のEGFレセプターを有するSK-N-SH細胞に発現させない場合:図中の「PTPRE(-)」、以上の組み合わせの合計4種類の場合について、当該SK-N-SH細胞の細胞抽出物に含まれるEGFレセプターのリン酸化状態を、リン酸化されたEGFレセプターを特異的に認識する抗体を用いてウエスタンブロット法により検討した結果を示す図である。
【図2】本発明検定方法により、BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質を検定した結果を示す図である。ここでの「リン酸化制御能力」としては、物質のPTPR-Eの酵素活性阻害作用を測定することにより、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化(活性化)増強能力を評価している。 図中の縦軸は測定された吸光度の値(450nm)である。横軸は各被験物質である。尚、対照として、被験物質を溶解させるための溶媒:「DMSO」(和光純薬)を用いた(終濃度0.1%)。各被験物質の濃度は10μMで(溶媒の終濃度は0.1%)であった。被験物質の種類は「(+)MK801」、「オルトバナジン(V)酸ナトリウム」、「ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム」、「L(+)グルタミン」、「2−メチル-1,4-ナフトキノン」、「D(-)-ソルビトール」、「L(+)-グルタミン酸水素ナトリウム」であった。本発明検定方法により、測定値が対照値と比較して有意に差異があることから、オルトバナジン(V)酸ナトリウムはPTPR-Eの酵素活性阻害作用有り(陽性)と検定された。その他の被験物質は、測定値が対照値と比較して有意な差が認められないことからPTPR-Eの酵素活性阻害作用無し(陰性)と検定された。
【図3】本発明検定方法により、BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質を検定した結果を示す図である。ここでの「リン酸化制御能力」としては、物質のBDNFレセプターのリン酸化増強能力を、BDNFを10ng/ml含む培養液に対照として溶媒又は各被験物質を混合したものでラット初代培養細胞を10分間処理し、処理後の細胞中のBDNFレセプターのリン酸化の程度をリン酸化されたBDNFレセプターを特異的に認識する抗体を用いてウエスタンブロッテイング法により測定することにより、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化(活性化)増強能力を評価している。 図中の横軸は各被験物質である。図中のレーン1:対照:溶媒DMSO、レーン2:(+)MK801、レーン3:オルトバナジン(V)酸ナトリウム、レーン4:ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム、レーン5:L(+)グルタミン、レーン6:2−メチル-1,4-ナフトキノン、レーン7:D(-)-ソルビトール、レーン8:L(+)-グルタミン酸水素ナトリウム、レーン9:対照:溶媒DMSOであった。これらの被験物質のうち、オルトバナジン(V)酸ナトリウムのみが、BDNFによるBDNFレセプターのリン酸化(活性化)を増強する作用が確認された。
【図4】本発明検定方法により、BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質を検定した結果を示す図である。ここでの「リン酸化制御能力」としては、RealTimePCR法により物質が有するPTPR-E量減少作用をmRNA発現レベルで測定することにより、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化(活性化)抑制能力を評価している。 図中の縦軸は相対測定値(対照の測定値(対照値)を1としたときの、各被験物質のそれぞれの場合の相対測定値(N=3)を示す。)である。横軸は各被験物質である。図中のレーン1:物質(1)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300324)、レーン2:物質(2)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300325)、レーン3:物質(3)(Invitorgen社製#PTPR-E-RSS300326)、レーン4:物質(4)(Invitrogen社製#12935-300)、レーン5:物質(5)(Invitrogen社製#12935-112)、レーン6:物質(6)(Invitrogen社製#12935-1139、レーン7:対照:物質の溶解のために用いられた緩衝液(Invitrogen社製1xRNA Annealing buffer#46-8804)であった。
【図5】本発明検定方法により、BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質を検定した結果を示す図である。ここでの「リン酸化制御能力」としては、Western blotting法により物質が有するPTPR-E量減少作用をタンパク質存在量レベルで測定することにより、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化(活性化)抑制能力を評価している。 図中の横軸は各被験物質である。図中のレーン1:物質(1)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300324)、レーン2:物質(2)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300325)、レーン3:物質(3)(Invitorgen社製#PTPR-E-RSS300326)、レーン4:物質(4)(Invitrogen社製#12935-300)、レーン5:物質(5)(Invitrogen社製#12935-112)、レーン6:物質(6)(Invitrogen社製#12935-1139、レーン7:対照:物質の溶解のために用いられた緩衝液(Invitrogen社製1xRNA Annealing buffer#46-8804)であった。
【図6】本発明検定方法により、BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質を検定した結果を示す図である。ここでの「リン酸化制御能力」としては、物質のBDNFレセプターのリン酸化増強能力を、BDNFを10ng/ml含む培養液で、各被験物質とBDNFレセプターの発現プラスミドとを一緒に導入したPC12細胞を10分間処理し、処理後の細胞中のBDNFレセプターのリン酸化の程度をリン酸化されたBDNFレセプターを特異的に認識する抗体を用いてウエスタンブロッテイング法により測定することにより、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化(活性化)増強能力を評価している。 図中の横軸は各被験物質である。図中のレーン1:物質(1)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300324)、レーン2:物質(2)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300325)、レーン3:物質(3)(Invitorgen社製#PTPR-E-RSS300326)、レーン4:物質(4)(Invitrogen社製#12935-300)、レーン5:物質(5)(Invitrogen社製#12935-112)、レーン6:物質(6)(Invitrogen社製#12935-1139、レーン7:対照:物質の溶解のために用いられた緩衝液(Invitrogen社製1xRNA Annealing buffer#46-8804)であり、以上の各被験物質とBDNFレセプターの発現プラスミドとを一緒に導入した細胞の場合が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載される発明は記載されている特定の方法論、プロトコ−ル、及び、試薬に限定されず、可変であると考えられる。また、本明細書で用いる用語は単に特定の実施形態を記載するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではないと考えられる。
特に断りの無い限り、本明細書で用いる全ての技術用語、及び、化学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者に共通に理解されているものと同じ意味を持つ。本発明を実施又は試験する上で、本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法、及び、材料のいずれを用いてもよいが、以下、好ましい方法、装置、及び、材料を記載する。
【0009】
本明細書において、DNAの調製やベクターの調製等の分子生物学的な手法、タンパク質の抽出やウエスタン・ブロッテイング等のタンパク質化学的な手法、酵素反応測定の操作等は、特に明記しない限り、Molecular Cloning, A laboratory manual (T. Maniatis et al., Cold spring harbor laboratory (1982)、新生化学実験講座(日本生化学会編;東京化学同人)等の実験書に記載される通常の方法又はそれに準じた方法により行うことができる。
【0010】
本発明は、PTPR-Eの酵素ユニットが増減するとBDNFが結合するときに生じるBDNFレセプターのリン酸化の制御活性が増減するという関係を新たに見出したことに基づくものであり、BDNFレセプターの脱リン酸化を担う分子がPTPR-Eであるという新知見を利用したものである。
【0011】
本発明検定方法は、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の検定方法であり、
(1)被験物質とタンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプE(Protein tyrosine phosphatase receptor type, E、以下、PTPR-E)との接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標を測定する第一工程、及び
(2)第一工程で得られた前記接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値を前記指標の対照値と比較する第二工程、及び、
(3)第二工程で比較して得られた差異に基づいて前記被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価する第三工程、
を有する。
【0012】
本発明における「BDNFレセプター」とは、BDNF(即ち、脳由来神経栄養因子)が結合するレセプターを意味する。
【0013】
本発明における「BDNFレセプターのリン酸化制御能力」とは、BDNFレセプターが有するリン酸化部位におけるリン酸化の割合を増加又は減少させる能力を意味する。当該制御能力は、BDNFレセプターが有するリン酸化部位におけるリン酸化の割合を制御することにより、BDNFレセプターが有する機能を増強又は抑制される。
【0014】
本発明検定方法の第一工程では、被験物質とタンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプE(Protein tyrosine phosphatase receptor type, E、以下、PTPR-E)との接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標を測定する。
ここで「被験物質」としては、例えば、各種の抽出物、天然若しくは人工合成された化合物、ペプチド、タンパク質、核酸、又は、siRNA、miRNA等のRNAi作用を有する核酸、アンチセンス核酸等を挙げることができる。本発明検定方法に供試する好ましい被験物質としては、例えば、脳神経系等の組織部位に存在する細胞に到達しうる物質等を挙げることができる。
本発明検定方法に供試する被験物質の形態は、例えば、固体であっても、液体であってもよい。また、基材との混合物、懸濁液若しくは溶液等の形態であってもよい。被験物質の形態が懸濁液若しくは溶液である場合には、水、pH緩衝液、メチルセルロース溶液、生理食塩水、有機溶媒の水溶液(有機溶媒としては、通常、エタノール、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。)等を媒体として用いることができる。被験物質の形態が基材との混合物である場合には、グリセリン、スクワラン等の油等を基材としては用いることができる。尚、これら媒体の好ましい量は、被験物質とPTPR-Eとの接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標に対して影響を及ぼさない範囲内に設定すればよい。
【0015】
本発明における「タンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプE(Protein tyrosine phosphatase receptor type, E、PTPR-E)」とは、タンパク質チロシンフォスファターゼ膜貫通型(PTPR)遺伝子ファミリーに属する遺伝子であり、タイプEとして分類されているもの(即ち、PTPR-E遺伝子)がコードするタンパク質(フォスファターゼ酵素)を意味する。
上記のPTPR-E遺伝子に関して、例えば、ヒト由来の遺伝子は、Krueger, N.X., et al. EMBO J. 9(10) p3241-3252 (1990) 等に記載された公知な遺伝子である。その塩基配列は、例えば、Genbank accession No. NM_006504として公共データベースに既に登録されている。尚、Genbankに登録されている塩基配列に関する情報は、例えば、National Center for Biotechnology InformationのWEBページ(URL; http://www.ncbi.nlm.nih.gov)から、Genbankによって各遺伝子に付与されている上記の登録番号(Accession No.)をもとに検索を行うことによって入手することができる。因みに、GenBank, DDBL及びEMBLの各データバンクが公開しているデータ全てを誰でも制限無しに利用でき、登録されたデータは科学資料として永久に保存され公開されることは、上記3データバンクで構成される国際塩基配列データベース(International Nucleotide Sequence Databases, INSD)の諮問機関である国際諮問委員会により作成された「DDBL/EMBL/Genbankの登録データの取り扱い」(2002年5月23-24日)で明文化されており、如何なる当業者であっても登録番号(Accession No.)に基づきデータの照会、検索、入手等は可能である。
上記のPTPR-E遺伝子は、勿論、各種スプライシングバリアント、ラットやマウス等の生物種由来のPTPR-Eオーソログであってもよく、上記の公知の塩基配列と全く同一の塩基配列を有する遺伝子のほか、その遺伝子の塩基配列に、生物の種差に留まらない個体差、若しくは、器官、組織間の差異等により天然に生じる変異による塩基の欠損、置換若しくは付加が生じた塩基配列を有する遺伝子であってもよい。
【0016】
本発明における「PTPR-Eの酵素ユニット」としては、具体的には例えば、以下の3つのものを目的・状況等に応じて適宜用いればよい。
(1)第1の「酵素ユニット」は、酵素一分子若しくは酵素単位重量当たりに着目した「酵素ユニット」であり、所謂、「酵素の活性」と呼ばれるものである。このような「酵素ユニット」に対して影響を与える因子としては、例えば、酵素活性の阻害度若しくは活性化度、酵素タンパク質の不安定化度若しくは安定化度等を挙げることができる。
これら因子は、言い換えれば、酵素ユニットと相関関係を有する指標の一例であり、本発明における「測定用指標」である「接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク質単位重量当たりの酵素活性」に相当するものである。
(2)第2の「酵素ユニット」は、接触系内に存在する物質としての量に着目した「酵素ユニット」であり、所謂、「酵素の量」と呼ばれるものである。このような「酵素ユニット」に対して影響を与える因子としては、例えば、酵素タンパク質合成の阻害度若しくは促進度、酵素をコードする遺伝子の転写の阻害度若しくは活性化度、酵素をコードする遺伝子の翻訳の阻害度若しくは活性化度、mRNAの不安定化度若しくは安定化度、酵素タンパク質の分解度若しくは分解抑制度、酵素の存在量等を挙げることができる。
これら因子は、言い換えれば、酵素ユニットと相関関係を有する指標の一例であり、本発明における「測定用指標」である「接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク量」、「接触系内に含まれるPTPR-E遺伝子の転写量及び/又は翻訳量」に相当するものである。
(3)第3の「酵素ユニット」は、接触系内に存在するトータルな触媒力価に着目した「酵素ユニット」であり、所謂、「酵素の力価」と呼ばれるものである。このような「酵素ユニット」に対して影響を与える因子としては、例えば、前記(1)と前記(2)との組み合わせ等を挙げることができる。
因みに、酵素ユニットとは、医薬・臨床化学分野で用いられる酵素の単位である。単位となるユニットは、例えば、特定の条件下(例えば、温度、pH)で一定時間内(例えば、1分間)に「どれだけの働きをするか」(例えば、1マイクロモル(μmol)の基質を変化されること)ができる酵素の単位として表現したものを挙げることができる。
【0017】
本発明における「PTPR-Eの酵素ユニットと相関関係を有する指標」としては、上記のように、(1)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク質単位重量当たりの酵素活性、(2)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク量等のような測定用指標を挙げることができる。また、本発明検定方法において、細胞がPTPR-E遺伝子を含む細胞である場合には、「PTPR-Eの酵素ユニットと相関関係を有する指標」としては、上記のように、
(1)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク質単位重量当たりの酵素活性、(2)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク量、(3)前記接触系内に含まれるPTPR-E遺伝子の転写量及び/又は翻訳量等のような測定用指標を挙げることができる。
【0018】
本発明検定方法における「接触系」としては、例えば、哺乳動物から採取された細胞(尚、本発明における「細胞」とは、組織から分離された形態にある細胞のみならず、組織の一部として存在している形態にある細胞をも含む。)又はそれらの内容物が含まれる生体試料(例えば、前記細胞から分離、分画、固定化等の種々の操作により調製された生体試料)を挙げることができる。
また前記細胞としては、例えば、BDNFレセプターを有する細胞であって、前記被験物質が投与され、且つ、タンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプEを細胞内で産生する能力を有する細胞(例えば、PTPR-E遺伝子を含む細胞)等を挙げることができる。このようなPTPR-Eを細胞内で産生する能力を有する細胞は、例えば、内在性のPTPR-E遺伝子を発現する哺乳動物の脳神経系組織由来の細胞であってもよい。具体的には例えば、神経系に関連した培養細胞としては、SK-N-SH細胞やPC12細胞等を挙げることができる。
神経初代培養細胞はPTPR-E(遺伝子)を発現しており、実際の脳内の細胞に近いために好ましい細胞として挙げることができる。尚、このような初代培養細胞は、例えば、「培養細胞実験ハンドブック. 羊土社2004 黒木登志夫ら編ISBN4-89706-884-3」等に従って調製すればよい。
また、外来性のPTPR-E遺伝子を発現する細胞(例えば、PTPR-E(遺伝子)を強制的に発現させた培養細胞・安定形質転換細胞)等であってもよい。
前記生体試料としては、例えば、脳のスライスを挙げることができる。実験用の哺乳動物の脳のスライスはPTPR-E(遺伝子)を発現しており、好ましく挙げることができる。
【0019】
ここで「哺乳動物」として、ヒトを含むいかなる哺乳動物でも用いることができる。このような哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、サル、ヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、マウス、ラット、ウマ等が挙げられる。実験動物としては非ヒト哺乳動物が好ましいが、この中でも、個体発生に要する期間及び生物サイクルが比較的短く、また繁殖が容易なげっ歯類哺乳動物が好ましい。
また「組織」又は「細胞」由来の組織としては、例えば、脳神経系の組織等を好ましく挙げることができる。
【0020】
本発明検定方法においては、まず、被験物質(若しくは対照物質)とPTPR-Eとを接触させる。被験物質(若しくは対照物質)とPTPR-Eとの接触は、例えば、哺乳動物に被験物質を投与することにより行ってもよい。哺乳動物は、天然の動物のほか、トランスジェニック動物、遺伝子ノックアウト動物等であってもよい。哺乳動物への被験物質(若しくは対照物質)の投与方法としては、例えば、経口(強制又は飲料水や餌に混じ)、筋肉内、静脈内、皮下、腹腔内、経気道等により行うことができる。投与量、投与回数及び投与期間は、例えば、全身状態、全身諸器官組織等に重篤な影響を及ぼさない範囲内(例えば投与量は、最大耐量)とすればよい。また、哺乳動物から採取された細胞(尚、組織の一部として存在している形態にある細胞も含む。)又はそれらの内容物が含まれる生体試料に被験物質(若しくは対照物質)を直接注入することにより行ってもよい。
【0021】
本発明検定方法において、被験物質(若しくは対照物質)が核酸である場合には、当該核酸は、例えば、「RNA実験ノート 下 小分子RNAの解析からRNAiへの応用まで. 羊土社2008 稲田利文ら編ISBN978-4-89706-925-8, C3345 」、「RNAi実験プロトコール. 羊土社 2003 多比良和誠ら編 ISBN4-89706-410-4, C3045」、「遺伝子の機能阻害実験法. 羊土社 2001 多比良和誠ら編 ISBN4-89706-956-4, C3047」等に記載される通常の方法に準じて調製してもよく、予備的に選定することにより用意してもよい。また市販のステルスRNA(Invitrogen社製)等の試薬として候補物質を購入してもよい。
【0022】
本発明検定方法において、被験物質(若しくは対照物質)が核酸である場合には、例えば、市販のアデノウイルスベクター(例えば、Invitrogen社ViraPowerアデノウイルス発現システム#K4930-00)、レトロウイルスベクター(例えば、タカラバイオ社Retrovirus Costructive system#6164)、レンチウイルスベクター(例えば、Invitrogen社ViraPower Hiperformレンチウイルス発現システム#K5310-00)等の各種のウイルスベクター、或いは、例えば、ミラー(Miller)、Human Gene Therapy 15〜14(1990);フリードマン(Friedman)、Science 244:1275〜1281(1989);エグリティス(Eglitis)及びアンダーソン(Anderson)、BioTechniques 6:608〜614(1988);トルストシェフ(Tolstoshev)及びアンダーソン(Anderson)、current opinion in Biotechnology 1:55〜61(1990);シャープ(Sharp)、The Lancet 337:1277〜1278(1991);コルネッタ(Cornetta)ら、Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311〜322(1987);アンダーソン(Anderson)、Science 22-:401〜409(1984);モーン(Moen)、Blood Cells 17:407〜416(1991);ミラー(Miller)ら、Biotechniques 7:980〜990(1989);Le Gai La Salleら、Science 259:988〜990(1993);ジョンソン(Johnson)、Chest 107:77S〜83S(1995)等に記載される公知のベクター、ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、N.Engl.J.Med 323:370(1990);アンダーソン(Anderson)ら、米国特許第5,399,346号等に記載されるレトロウイルスベクター等を用いる通常の方法により、哺乳動物から採取された細胞に被験物質(若しくは対照物質)を導入することもできる。
また、例えば、発現miR RNAi法用キット(Invitrogen社製Block it PolII miR RNAi expression kit #K4935-00)、発現shRNA法用キット(Block it inducible H1 RNAi vector kit#K4920-00)等の市販のシステムを用いる発現miR RNAi法又は発現RNAi法により、哺乳動物から採取された細胞(尚、組織の一部として存在している形態にある細胞も含む。)に被験物質(若しくは対照物質)を導入することもできる。
また、核酸の導入法(移入送達手段)としては、非ウイルス的手法を用いることもできる。例えば、フェルグナー(Felgner)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413(1987);オノ(Ono)ら、Neurosci.Lett.117:259(1990);ブライアム(Brigham)ら、Am.J.Med.Sci.298:278(1989);シュタウビンガー(Staubinger)ら、Meth.Enz.101:512,1983)、アシアロソヌコイド・ポリリジン抱合(ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.263:14621,1988;ウー(Wu)ら、J.Biol.Chem.264:16985(1989)等に記載されるリポフェクション、ウォルフ(Wolff)ら、Science 247:1465(1990)等に記載されるマイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法及びプロトプラスト融合法、リポソーム法等を挙げることができる。
【0023】
このようにして調製又は構築された接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標を測定するには、例えば、接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク質単位重量当たりの酵素活性を測定用指標とする場合、一般的なタンパク質チロシンフォスファターゼの酵素活性の測定方法を用いればよい。勿論、市販の各種チロシンフォスファターゼアッセイキット(例えば、タカラバイオ社Universal Tyrosine Phosphatase Assay kit #MK411等)を利用してもよい。
接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素活性を測定するための酵素反応条件としては、具体的には例えば、pH5〜pH11の中性付近のpH範囲に設定された緩衝液(尚、塩濃度は500mMを超えないことが好ましい。)中で、4℃〜45℃の温度範囲で酵素反応を行う条件等を挙げることができる。また基質としては、リン酸化されたチロシンを初めとして種々のチロシンフォスファターゼのユニバーサル基質を挙げることができる。尚、前記基質がPTPR-E以外の他の類似酵素の基質とも成り得る場合には、精製されたPTPR-Eを用いることが好ましい。逆に、PTPR-Eの特異基質を用いる場合には、PTPR-Eは予め精製されていなくてもよい。また、被験物質が前記酵素反応を非特異的に妨害するような不純物を含むことが予想される場合には、当該被験物質に対して当該不純物を除く前処理操作を前記酵素反応に供する前に施すことが好ましい。
反応時間は、接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素の存在量に応じた、反応が飽和状態に達していない時間を設定することが好ましい。例えば、前記酵素のタンパク質濃度を1nM〜100nMとして、1時間を越えない反応時間を好ましく挙げることができる。
【0024】
一般的なタンパク質チロシンフォスファターゼの酵素活性の測定方法としては、例えば、J. Biol. Chem. 1992 Zhang, Z-Y. et al. 「Expression, purification, and physicochemical characterization of a recombinant Yersinia protein tyrosine phosphatase」等に記載されている p-Nitrophenyl phosphate (p-NPP) を基質として用いる方法を挙げることができる。具体的には例えば、酵素反応基質:10mM p-NPP、酵素反応温度:30℃、酵素反応バッファー:100mM Tris HCl (pH 7.5) with 1mM EDTA、150mM NaClとすればよい。
このような酵素反応系に、PTPR-Eを含む試料を添加することにより、酵素反応を開始させる。その際、前記酵素反応系の中に、被験物質や対照物質を共存させる。
酵素反応は、接触系内に1N NaOHを添加することにより停止させればよい。そして酵素反応停止後、接触系内に存在する酵素反応生成物の量を、例えば、405nmの波長の吸光度等を測定することにより算出すればよい。
【0025】
また、例えば、接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク量を測定用指標とする場合、当該タンパク質を特異的に認識するような抗体を用いたタンパク量の測定方法、液体クロマトグラフィーを用いる測定方法等を用いればよい。
抗体を用いたタンパク量の測定方法としては、例えば、タンパク質研究のための抗体実験マニュアル 羊土社2004 高津聖志ら編 ISBN4-89706-414-7等に記載される免疫的測定方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロット、RIA、免疫組織化学的検査等)、二次元電気泳動法、高速液体クロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0026】
具体的には例えば、Western法を用いてタンパク質の量を測定する場合には、まずは接触系内から採取された試料を加熱処理(例えば、100℃で5分間程度)する。得られた処理物を、SDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)等を用いた電気泳動によりゲル上で展開する。ゲル上で展開されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)等を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)等の膜へ転写する。転写後に得られた膜を、PBS(-)で50分の1に希釈された膜ブロッキング試薬(ナカライテスク社製)により処理(30分間)した後、得られた膜の上に、例えば、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で1000分の1に希釈されたAnti-PTPR-E抗体(SantaCruz社Anti-PTPε#SC1117)を滴下する。室温で1時間程度以上インキュベートすることにより、膜上での抗原抗体反応を進行させる。次いで、膜をPBS-T液中で15分間2回洗浄した後、得られた膜の上に、PBS-Tで3000分の1程度に希釈されたAnti-goat IgG-HRP(SantaCruz #SC-2020)二次抗体を滴下する。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持する膜を、PBS-T液中で15分2回洗浄した後、得られた膜をECL試薬(アマシャムファルマシア社製)を、当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理する。このようにして得られた膜を、直ちにイメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)等で解析することにより、PTPR-E抗体で認識されたPTPR-Eのゲル上のイメージ像を得る。得られたイメージ像を、前記装
置を用いて定量することにより、前記接触系内に存在するPTPR-Eの量を測定することができる。
【0027】
また、哺乳動物細胞であるCOS7細胞(ATCCより購入)を、10%FCSが添加されたDMEM培地を用いて、10cmプレート上で、37℃、5%CO存在下で培養する。当該プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された培養細胞に、PTPR-E発現プラスミドをリポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)を用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件でトランスフェクションする。トランスフェクション後72時間程度経過した後、培地をプレート一枚当たり1mlのCellLytic M cell lysis reagent (Sigma社製#C2978)と置換し、4℃、10分〜1時間程度インキュベートすることにより、培養細胞を溶解させる。得られた溶解物を、20000gで30分間遠心分離することにより上清を回収する。回収された上清(細胞抽出物)を、10μLのAnti-PTPR-E抗体(SantaCruz社Anti-PTPε#SC1117)を予め結合させておいたProtein G sepharaseビーズ (GEヘルスケア製 #17-0618-01) 50%懸濁液30μlと混合した後、当該混合物を4℃で1時間インキュベートする。得られた混合物を、2000gで1分間遠心分離することにより沈殿画分を得る。得られた沈殿画分を1mlのCellLytic M cell lysis reagent (Sigma社製#C2978)で懸濁した後、当該懸濁液を2000gで1分間遠心分離する。同様な操作(1回の洗浄操作単位)を3回繰り返すことにより、ビーズに結合したPTPR-Eをタンパク質精製物として得る。このような方法を利用することにより、前記接触系内に存在するPTPR-Eの量を測定することができる。
【0028】
また、例えば、接触系内に含まれるPTPR-E遺伝子の転写量及び/又は翻訳量を測定用指標とする場合、PTPR-E遺伝子の転写量を測定する方法としては、PTPR-E遺伝子のmRNA、若しくは、PTPR-E遺伝子のcDNAを測定する方法を挙げることができ、またPTPR-E遺伝子の翻訳量を測定する方法としては、上述のようなタンパク量の測定方法を挙げることができる。
【0029】
ここで、PTPR-E遺伝子のmRNAを測定する方法は絶対量測定でもよいが、接触系内の他のmRNAの量若しくはRNAの量に対するPTPR-E遺伝子のmRNAの存在割合を測定する方法であってもよい。また、測定用指標は、被験物質が作用した結果生じる接触系内でのPTPR-E遺伝子のmRNAの量の増減としてもよい。勿論、mRNA自体の量の増減ではなく、そのmRNAからcDNAに逆転写された結果であるcDNAの量の増減としてもよい。
【0030】
PTPR-E遺伝子のmRNA若しくはcDNAを、他のmRNA若しくはcDNAから特異的に区別する手法としては、例えば、核酸のハイブリダイゼーションに基づく原理を利用した各種手法を挙げることができる。核酸のハイブリダイゼーション法に基づく原理を利用した各種手法では、ハイストリンジェント(High stringent)な条件でのハイブリダイゼーションを採用することが好ましい。
また他の測定方法として、定量的Real Time PCR法(リアルタイム-ポリメラーゼチェイン反応法、RT-PCR法)、PCR法、DNAアレイ法、ノーザンバイブリダイゼーション法を初めとする、特定のmRNA若しくはcDNAの量を測定する通常の方法を挙げることもできる。
このように、PTPR-E遺伝子のmRNA若しくはcDNAは、増幅に基づく方法やハイブリダイゼーションに基づく方法等を使用して測定すればよい。
【0031】
具体的には例えば、まず、PC12細胞(即ち、PTPR-E遺伝子を含む細胞)を、10%血清、ピルビン酸Na液(GIBCO BRL #11360)及びNon-essential amino酸液(GIBCO BRL #11140)を補ったRPMI-1640培養液中、37℃、5%COの通常の培養条件下で培養された培養細胞を準備する。
次いで、当該培養細胞に、被験物質(例えば、Invitrogen社のステルスRNAi#PTPR-E-RSS300324等のPTPR-E遺伝子のmRNAを切断することが期待されるRNAi候補物質等)を、培養細胞へのRNAi導入試薬(例えば、Invitrogen社のLipofectamine RNAiMAX試薬#13778-150等)を用いて導入する。
PTPR-E遺伝子のmRNAが分解されることが期待される時間(例えば、終夜から72時間)後に、前記培養細胞の中に含まれる全RNAを、通常の方法(例えば、市販の精製キット(QIAGEN社のRneasy kit#74106)等を用いる方法等)により回収する。
次いで、回収された全RNAに、例えば、MMLV(東洋紡)等の逆転写酵素を添加した後、反応緩衝液中、0.5mM dNTP及び25μg/mlオリゴdT存在下で42℃、15分間〜1時間反応させることにより、対応するcDNAを調製する。尚、cDNA合成キット(タカラバイオ社)等を用いて対応するcDNAを調製してもよい。
調製されたcDNAを鋳型にして、PTPR-E遺伝子の塩基配列の一部分を有するDNAをプライマーとしてPCRを行う。プライマーとしては、例えば、PTPR-E遺伝子の部分塩基配列を有するプライマーを挙げることができる。PCRの条件としては、例えば、TAKARA taq(タカラバイオ)を使用し、反応緩衝液中、2.5mM dNTP及び[α32P]-dCTP存在下で、例えば、94℃、30秒間、次いで、40℃〜60℃、2分間、更に72℃、2分間の保温を1サイクルとして、これを30〜55サイクル行う条件を挙げることができる。
このようにして増幅されたDNAをポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、分離されたDNAの放射活性量を測定することにより、PTPR-E遺伝子のmRNAの量を測定する。尚、PCRに、SYBR Green PCR Reagents PCR(ABI社)を用いて添付説明書に従ってPCRを行い、増幅されたDNAの蛍光を測定することにより、PRPR-E遺伝子のmRNAの量を測定してもよい。TaqMAN法(ABI社)を用いてPTPR-E遺伝子のTaqMANプローブ(ABI社)を用いて、PTPR-E遺伝子のmRNAの量を測定してもよい。
【0032】
本発明検定方法の第二工程では、第一工程で得られた前記接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値を前記指標の対照値と比較する。
本発明検定方法における「指標の対照値」としては、例えば、被験物質との非接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値等を挙げることができる。
被験物質の代わりに、対照物質となり得るポジテイブコントロール又はネガテイブコントロールを用いて本発明検定方法(又は、後述する本発明探索方法)を実施することにより、場合に応じて本発明検定方法(又は、後述する本発明探索方法)でいう「対照」とすることもできる。ここでいうポジテイブコントロールとは、例えば、本発明検定方法においてPTPR-Eの酵素ユニットの測定値に影響を与える物質を意味する。具体的には例えば、PTPR-Eの酵素活性を阻害する物質、PTPR-E遺伝子の発現時においてその転写若しくは翻訳(即ち、タンパク質合成)を阻害する物質等を挙げることができる。また「ネガテイブコントロール」としては、被験物質に含まれる溶媒、バックグラウンドとなる試験系溶液等が挙げられる。
【0033】
本発明検定方法の第三工程では、第二工程で比較して得られた差異に基づいて前記被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価する。
「対照物質」をネガテイブコントロールとする場合、被験物質の存在下におけるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値が、対照物質の存在下におけるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標よりも大きければ、当該被験物質はBDNFレセプターのリン酸化制御能力を有すると評価すればよい。一方、被験物質の存在下におけるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値が、対照物質の存在下におけるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標と同程度若しくは小さければ、当該被験物質はBDNFレセプターのリン酸化制御能力を有さないと評価すればよい。
また、対照物質をポジテイブコントロールとする場合、被験物質の存在下におけるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値と、対照物質の存在下に
おけるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値とを比較することにより、被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価すればよい。
本発明検定方法の第三工程では、測定値が対照値の1/2倍以下、又は、対照値と比較し統計学的に有意な低値であることを基準とし、前記被験物質がBDNFレセプターのリン酸化制御能力としてBDNFレセプターの脱リン酸化抑制能力を有するものとして評価してもよい。このように評価する場合には、本発明検定方法における「被験物質」としては、例えば、RNAi、miRNA及びアンチセンス核酸からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の物質等を好ましく挙げることができる。
【0034】
本発明探索方法は、本発明検定方法により評価されたBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準に基づき、BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質を探索する工程を有する。
探索されたBDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質は、例えば、BDNF作用を調節する作用を有し、内在性のBDNFによる作用を調節することを通じてBDNFが有する各種機能を調節する物質として利用することもできる。
【0035】
本発明探索方法により探索された被験物質がBDNFレセプターのリン酸化を制御する能力を確かに有することを確認する方法としては、例えば、リン酸化されたBDNFレセプターを特異的に認識する抗体を利用した種々の免疫的測定方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロット、RIA、免疫組織化学的検査等)、二次元電気泳動法、高速液体クロマトグラフィー等を挙げることができる。リン酸化されたBDNFレセプターを認識する抗体は、BDNFレセプターの既知のリン酸化部位、例えば、ヒトBDNFレセプターの516番目のチロシン残基がリン酸化されたヒトBDNFレセプターの一部の合成ペプチドを抗原にして常法に従って作製してもよく、またヒトBDNFレセプターの516番目のチロシン残基がリン酸化されたものを認識できるAnti phospho-TrkA (Tyr490) antibody (Cell Signaling社製 #9141)を初めとする市販の抗体を利用してもよい。
【0036】
本発明使用は、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価するための指標を提供する試薬としての、タンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプE若しくはその遺伝子の使用である。
【0037】
本発明検定方法により評価されたBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準に基づき選抜された「BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質」は、当該技術分野で既知の技法に従って、哺乳動物への投与前に、「医薬品」と通常呼ばれる薬学的組成物として調製することができる。従って、本発明は、BDNFレセプターのリン酸化制御剤としての薬学的組成物を包含する。ここで「BDNFレセプターのリン酸化制御剤」としては、例えば、PTPR-Eの酵素ユニットを低下させる能力を有する化合物(具体的には例えば、PTPR-E遺伝子の転写及び/又は翻訳を抑制させる能力を有する化合物、PTPR-Eが有する酵素活性を阻害する能力を有する化合物)を有効成分として含有するBDNFレセプターの脱リン酸化抑制剤、PTPR-Eの酵素ユニットを低下させる能力を有する化合物(具体的には例えば、PTPR-E遺伝子の転写及び/又は翻訳を抑制させる能力を有する化合物、PTPR-Eが有する酵素活性を阻害する能力を有する化合物)を有効成分として含有するBDNFが有する生理活性の亢進剤等を挙げることができる。
【0038】
本発明の薬学的組成物は、少なくとも無菌であり且つ発熱物質がないことを特徴とする。本明細書で使用される場合、薬学的「組成物」又は「製剤」は、ヒト及び獣医学的使用のための製剤を包含する。本発明の薬学的組成物を調製する方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985)に記載されている。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体と混合された少なくとも1つの「BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質」(例えば、0.1〜90重量%)又はその生理的に許容される塩を含む。また、本発明の薬学的組成物は、リポソーム又は薬学的に許容される担体によってカプセル化された少なくとも1つの「BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質」を含んでよい。
【0040】
適切な薬学的に許容される担体としては、例えば、水、緩衝用水、生理食塩液、0.4重量%生理食塩水、0.3重量%グリシン、ヒアルロン酸等を挙げることができる。
【0041】
本発明の薬学的組成物は、従来の薬学的賦形剤及び/又は添加剤を含んでもよい。適切な薬学的賦形剤としては、例えば、安定剤、抗酸化剤、モル浸透圧調整剤、緩衝剤、pH調整剤等を挙げることができる。適切な添加剤としては、例えば、生理的に生体適合性を有する緩衝剤(例えば、塩酸トロメタミン)、キレート剤(例えば、DTPAやDTPA‐ビスアミド)、カルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA‐ビスアミド)の添加剤、場合により、カルシウム塩又はナトリウム塩(例えば、塩酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム)の添加剤等を挙げることができる。本発明の薬学的組成物は、液体形態で使用するためにパッケージすることができ、また凍結乾燥することもできる。
【0042】
本発明の固体の薬学的組成物としては、例えば、従来の無毒性で固体の薬学的に許容される担体(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどの医薬品グレード)等を使用することができる。
【0043】
例えば、経口投与のための固体の薬学的組成物は、上記の担体及び賦形剤のいずれか、並びに10重量%〜95重量%、好ましくは25重量%〜75重量%の少なくとも1つの「肝発癌に係る促進活性若しくは抑制活性を有する物質」を含んでよい。エアゾール(吸入)投与のための薬学的組成物は、0.01重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の、上記の通りのリポソーム及び噴射剤の中にカプセル化した少なくとも1つの「BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質」を含んでよい。また、例えば、鼻腔内送達のためのレシチン等の担体を所望により含んでよい。
【0044】
本発明システムは、本発明検定方法により評価されたBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段(以下、手段aと記すこともある。)、前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段(以下、手段bと記すこともある。)、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段(以下、手段cと記すこともある。)を具備する。
【0045】
まず、手段aについて説明する。手段aは、前記のとおり、本発明検定方法により評価された被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準に係るデータ情報を入力した後、入力された当該情報を蓄積・管理する手段である。かかる情報は、入力手段1により入力され、通常記憶手段2に記憶される。入力手段としては、例えばキーボード、マウス等の当該情報の入力可能なものが挙げられる。当該情報の入力及び蓄積・管理が完了すれば、次の手段bに進む。尚、当該情報の蓄積・管理には、コンピュータ等のハードウェアとOS及びデータベース管理等のソフトウエアとを用いて、データ構造を有する情報を入力し、適当な記憶装置、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体に蓄積することにより、大量のデータを効率良く蓄積し管理すればよい。
【0046】
手段bについて説明する。手段bは、前記のとおり、手段aにより蓄積・管理された前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段である。かかる情報は、入力手段1により照会・検索のための条件が入力され、通常記憶手段2に記憶された上記情報の中で当該条件に合致したものを選択すれば、次の手段cに進む。選択された結果は、通常、記憶手段2に記憶され、更に表示・出力手段3により表示可能となっている。
【0047】
手段cについて説明する。手段cは、前記のとおり、照会・検索された結果を表示・出力する手段である。表示・出力手段3としては、例えばディスプレイ、プリンタ等が挙げられ、当該結果をコンピュータのディスプレイ装置に表示するか、印刷等により紙上に出力するか等すればよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて更に詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
実施例1 (PTPR-Eが有するBDNFレセプターの脱リン酸化作用)
ヒトPTPR-E発現プラスミドは以下のようにして作製した。
配列番号1で示される塩基配列(配列番号1:gagactatagccttcactttccctcggtccaccat)からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号2で示される塩基配列(配列番号2:catgagctttgtgttagtatcttgcagaggcacac)からなるオリゴヌクレオチドをInvitrogen社に委託して通常の方法により合成した。ヒトBrain cDNAライブラリー(タカラバイオ社製#9503)1μLを鋳型として、且つ、前記ポリヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。
当該PCRにおいて、反応液50μl当たり上記のポリヌクレオチド10pmolを添加し、KODplusポリメラーゼ(TOYOBO製)及び当該酵素を含むキットに添付されたバッファーを用いた。PCR反応液の保温は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95℃1分間、次いで、68℃5分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。
次いで、PCR反応液の全量を、低融点アガロースゲル電気泳動(アガロースL:ニッポンジーン)に供した。約2kbのDNAの単一バンドを確認した後、当該DNAを回収した。回収されたDNAの一部(約50ng)を鋳型にして、且つ、配列番号3で示されるオリゴヌクレオチド(配列番号3:ggggctagcgccaccatggagcccttgtgtccactcctgctggtgggttt)及び配列番号4で示されるオリゴヌクレオチド(配列番号4:gggaagcttcatgagctttgtgttagtatcttgcagaggcacac)をプライマーとして、KODplusポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いたPCRを行うことにより、ヒトPTPR-Eをコードする翻訳領域の開始コドンの直前にコザック配列(5'-GCCACC-3')が導入されたDNAを得た。尚、PCRの反応は、95℃1分間、次いで、68℃2分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。
このようにして得られたDNAをT4 kinaseで末端リン酸化した後、低融点アガロースゲル電気泳動(NusieveGTGアガロース;FMCbio社製)に供することにより精製・回収した。精製・回収されたDNAを下記で用いるインサートDNAとした。次いで、pcDNA3.1/Zeo(+)ベクター(Invitrogen社製)をHindIIIで切断した後、BAP処理して、更にDNA bluntingキット(タカラバイオ社製)で平滑末端化したDNAを低融点アガロースゲル電気泳動(AgaroseL;ニッポンジーン社製)に供し、前記DNAを回収した。回収されたDNA(0.1μg)に上記のインサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、ヒトPTPR-Eをコードする翻訳領域の開始コドンの直前にコザック配列が導入されている発現プラスミドを作製した。意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
【0050】
ヒトBDNFレセプター発現プラスミドは以下のようにして作製した。
Accession No. NM_006180のヒトBDNFレセプターの塩基配列を参照して、配列番号5で示される塩基配列(配列番号5:gggatgtcgtcctggataaggtggcatggacccgc)からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号6で示される塩基配列(配列番号6:ttcatcctctcagcccgtctgaggagtacgttggg)からなるオリゴヌクレオチドをInvitrogen社に委託して通常の方法により合成した。ヒトBrain cDNAライブラリー(タカラバイオ社製#9503)1μLを鋳型として、且つ、前記ポリヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。当該PCRにおいて、反応液50μl当たり上記のポリヌクレオチド10pmolを添加し、KODplusポリメラーゼ(TOYOBO製)及び当該酵素を含むキットに添付されたバッファーを用いた。PCR反応液の保温は、PCRsystem9700(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、95℃1分間、次いで、68℃10分間の保温を1サイクルとしてこれを35サイクル行った。
次いで、PCR反応液の全量を、T4kinase(タカラバイオ社製)で末端をリン酸化した後、低融点アガロースゲル電気泳動(アガロースL:ニッポンジーン)に供した。約2.5kbのDNAの単一バンドを確認した後、当該DNAを回収して、ヒトBDNFレセプター翻訳領域全長の塩基配列を含むインサートDNAとした。次いで、pcDNA3.1/Zeo(+)ベクター(Invitrogen社製)をHindIIIで切断した後、BAP処理して、更にDNA bluntingキット(タカラバイオ社製)で平滑末端化したDNAを低融点アガロースゲル電気泳動(AgaroseL;ニッポンジーン社製)に供し、前記DNAを回収した。回収されたDNA(0.1μg)に上記インサートDNA(0.5μg)をT4 Ligaseで結合させることにより、ヒトBDNFレセプターをコードする翻訳領域全長遺伝子を発現するプラスミドを作製した。意図通りに発現プラスミドが構築されており、且つ、そのインサート配列部分に変異が無いことは、PE-Biosystems社製モデル3700DNAシークエンサーによる塩基配列決定により確認された。
【0051】
次いで、ヒトBDNFレセプター(遺伝子)を発現しておらず、且つ、EGFレセプター(遺伝子)を発現している神経系培養細胞であるSK-N-SH細胞(ATCCより入手した)約1×10を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度1×10に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散した。得られた細胞分散液0.4mlに、上記のように作製されたBDNFレセプター発現プラスミド5μgと、PTPR-E発現プラスミド(図表1でPTPR-E+と表示されている実験区)又は親ベクターpCDNA3.1/Zeo(+)ベクター(図表1でPTPR-E-と表示されている実験区)のいずれか5μgを混合した後、得られた混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により200V、950μFの条件でトランスフェクションした。トランスフェクション後、等分して、それぞれを10cmシャーレ2枚ずつに播種し、10%FBSを含むDMEM培地中で24時間培養した。PTPR-E-の実験区の細胞とPTPR-E+の実験区の細胞とを1ペアとして、2群に分けた。片方には水に溶かしたBDNF(和光純薬社製)最終濃度10ng/mlを加え、もう片方にはその対照として溶媒(水)を加えた。このように、合計4種類の実験区に分かれた、その各々について、BDNF添加して10分後に培養上清を除去し、PBS(−)で素早く細胞表面を洗浄した。洗浄後、CellLytic M cell lysis regentにフォスファターゼインヒビターカクテル(Sigma社製 #P2850)が1/100 Vol添加されたものを、10cmシャーレ1枚あたり1mlの割合で細胞表面に加え、室温で45分インキュベートすることにより細胞を溶解させた。細胞溶解物を20000×gで10分間遠心分離することにより上清を回収したものを細胞抽出物として得た。得られた細胞抽出物に、SDSサンプルバッファー(BioRad社製)を1:1の割合で添加した後、これを100℃で5分間程度加熱処理した。得られた処理物を、SDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で展開した。ゲル上で展開されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、25V定電圧の条件で30分間通電することにより、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)等の膜へタンパク質を転写した。転写後に得られた膜を、PBS(-)で2%に希釈されたECL advanceブロッキング試薬(GEヘルスケア社製)により室温でインキュベート(60分間)した後、得られた膜の上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で1万分の1に希釈されたAnti-Phospho TrkA(Tyr490)Antibody (Cell Signaling社製#9141)を滴下した。4℃で一晩以上インキュベートすることにより、膜の上における抗原抗体反応を進行させた。次いで、膜をPBS-T液中で15分間2回洗浄した後、得られた膜の上に、PBS-Tで1万分の1に希釈されたAnti-Rabbit IgG-HRP(GEヘルスケア製#NA934V)二次抗体を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持する膜を、PBS-T液中で15分2回洗浄した後、得られた膜に対して、ECLadvance試薬(GEヘルスケア社製)を、当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理した。このようにして得られた膜を、直ちにイメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、リン酸化されたBDNFレセプターのリン酸化の程度を示すゲル上のイメージ像を得た。得られたイメージ像を図1のパネルaに示した。最終レーンで認められているように、BDNF添加によりBDNFレセプターのリン酸化が認められている。一方、最後から2番目のレーンで認められるように、PTPR-E(遺伝子)が強制発現されているとそのBDNFレセプターのリン酸化を示すバンドが消失していることから、PTPR-EはBDNFレセプターの脱リン酸化作用を有することが明らかとなった。
【0052】
次いで、対照実験として、PTPR-EのEGFレセプターの脱リン酸化作用について検討した。上記と同様なSK-N-SH細胞 約1×10を、10%FBSを含むDMEM培地(日水製薬製)を用いて37℃にて5%CO2存在下に、直径約10cmのシャーレ(ファルコン社製)を用いて培養した。翌日、培養された細胞をトリプシン処理により分散し、FBSを含まないDMEM培地で2回洗浄した後、再度1×10に細胞密度がなるようにFBSを含まないDMEM培地に分散した。得られた細胞分散液0.4mlに、BDNFレセプターの発現プラスミド5μgの代わりに親ベクター5μgに加えてPTPR-E発現プラスミド(図1で「PTPRE+」と表示されている実験区)又は親ベクターpCDNA3.1/Zeo(+)ベクター(図1で「PTPRE(-)」と表示されている実験区)のいずれか5μgを混合した後、得られた混合物をエレクトロポレーション用キュベットに移し、Geneパルサー(BIORAD社製)を用いたエレクトロポレーション法により200V、950μFの条件でトランスフェクションした。トランスフェクション後、等分して、それぞれを10cmシャーレ2枚ずつに播種し、10%FBSを含むDMEM培地中で24時間培養した。PTPR-E-の実験区の細胞とPTPR-E+の実験区の細胞とを1ペアとして、2群に分けた。片方には水に溶かしたEGF(和光純薬社製)最終濃度10ng/mlを加え、もう片方にはその対照として溶媒(水)を加えた。このように、合計4種類の実験区に分かれた、その各々について、EGF添加して10分後に培養上清を捨て、PBS(−)で素早く細胞表面を洗浄した。洗浄後、CellLytic M cell lysis regentにフォスファターゼインヒビターカクテル(Sigma社製 #P2850)が1/100 Vol添加されたものを、10cmシャーレ1枚あたり1mlの割合で細胞表面に加え、室温で45分インキュベートすることにより細胞を溶解させた。細胞溶解物を20000×gで10分間遠心分離することにより上清を回収したものを細胞抽出物として得た。得られた細胞抽出物に、SDSサンプルバッファー(BioRad社製)を1:1の割合で添加した後、これを100℃で5分間程度加熱処理した。得られた処理物を、SDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で展開した。ゲル上で展開されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、25V定電圧の条件で30分間通電することにより、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)等の膜へタンパク質を転写した。転写後に得られた膜を、PBS(-)で2%に希釈されたECL advanceブロッキング試薬(GEヘルスケア社製)により室温でインキュベート(60分間)した後、得られた膜の上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で1万分の1に希釈されたAnti-Phospho EGF receptor (Tyr992) Antibody (Cell Signaling社製#2235)を滴下した。4℃で一晩以上インキュベートすることにより、膜の上における抗原抗体反応を進行させた。次いで、膜をPBS-T液中で15分間2回洗浄した後、得られた膜の上に、PBS-Tで1万分の1に希釈されたAnti-Rabbit IgG-HRP(GEヘルスケア製#NA934V)二次抗体を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持する膜を、PBS-T液中で15分2回洗浄した後、得られた膜に対して、ECLadvance試薬(GEヘルスケア社製)を当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理した。
このようにして得られた膜を、直ちにイメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、リン酸化されたBDNFレセプターのリン酸化の程度を示すゲル上のイメージ像を得た。得られたイメージ像を図1のパネルbに示した。最終レーンで認められているように、EGF添加によりEGFレセプターのリン酸化が認められている。一方、最後から2番目のレーンで認められるように、その際にPTPR-E(遺伝子)が強制発現されていてもそのEGFレセプターのリン酸化を示すバンドは消失しなかったことから、PTPR-EはEGFレセプターの脱リン酸化作用は有しないことが明らかとなり、BDNFレセプターの脱リン酸化作用を選択的に有すると考えられた。
【0053】
実施例2 (BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質の探索(その1:PTPR-Eの「酵素の活性」を測定用指標とする試験)
哺乳動物細胞であるCOS7細胞(ATCCより購入)を、10%FCSが添加されたDMEM培地を用いて、10cmプレート上で、37℃、5%CO存在下で培養した。当該プレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された培養細胞に、実施例1記載のように作製されたPTPR-E発現プラスミド24μg/シャーレを、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)60μL/シャーレの割合で用いて、添付される説明書のデフォルトの基本条件でトランスフェクションした。トランスフェクション後72時間経過した後、培地を除去し、プレート一枚当たり1mlのCellLytic M cell lysis reagent(Sigma社製#C2978)と置換し、4℃、1時間インキュベートすることにより、培養細胞を溶解させた。得られた溶解物を、20000gで30分間遠心分離することにより得られた上清を回収した。回収された上清(細胞抽出物)を分取して、10μLのAnti-PTPR-E抗体(SantaCruz社Anti-PTPε#SC1117)を予め結合させておいたProtein G sepharaseビーズ (GEヘルスケア製 #17-0618-01) 50%懸濁液30μlと混合した後、当該混合物を4℃で1時間インキュベートした。得られた混合物を、2000gで1分間遠心分離することにより沈殿画分を得た。得られた沈殿画分を1mlのCellLytic M cell lysis reagent (Sigma社製#C2978)で懸濁した後、当該懸濁液を2000gで1分間遠心分離する。同様な操作(1回の洗浄操作単位)を3回繰り返すことにより、ビーズに結合したPTPR-Eタンパク質精製物として得た。
【0054】
次いで、上記ビーズをタカラバイオ社製のUniversal Tyrosine Phosphatase assay kitに付属する反応緩衝液に懸濁して、その1万分の1をPTPR-Eタンパク質精製物1単位として、以下の反応系1wellに1単位の割合で用いた。PTPR-Eの酵素活性測定は、前記タカラバイオ社製のUniversal Tyrosine Phosphatase assay kitを用いて以下のように実施した。
予めリン酸化チロシン含有ペプチドを酵素基質として固定してあるキット付属のマイクロタイタープレートの表面に対して、添付されている酵素反応用緩衝液50μLに対して1単位のPTPR-Eタンパク質精製物、及び、被験物質若しくは対照、を添加したものを加えた後、直ちに100rpmで振動させながら37℃で30分間酵素反応を進行させた。この際、各被験物質の濃度は10μM(溶媒の最終濃度0.1%DMSO)であった。対照としては被験物質が混合されていない溶媒(0.1%DMSO)の場合を併行して同様に反応させた。反応終了後、得られた反応液をプレート上から除去し、当該プレート表面を200μLのPBS+0.1%Tween20で4回洗浄した。洗浄後、キットに添付されているブロッキング用緩衝液を100μL/wellずつプレート表面に加え、37℃で30分間インキュベートした。次いで、ブロッキング用緩衝液を除去し、ペーパータオル上にプレートをタッピングして更に完全にプレート上の液を除去した後、キットに添付されているペルオキシダーゼ標識抗リン酸化チロシン抗体液を50μL/wellずつプレート表面に加え、37℃で30分反応させた。反応終了後、得られた反応液を除去し、当該プレート表面をPBS+0.1%Tween20で4回洗浄した。次いで、ペーパータオル上にプレートをタッピングして更に完全にプレート上の液を除去した後、キットに添加されている発色基質液を100μL/wellずつプレート表面に加え、100rpmで振動させながら室温で15分間反応を行った。反応を、1N硫酸を添加することにより停止させた。呈色量を、テカン社製SpectraFluorプレートリーダーを用いて450nmの波長で吸光度を測定した。測定結果を図2に示した。縦軸は測定された吸光度(450nm)の平均値(N=5)である。被験物質は、対照:DMSO(和光純薬)、(+)MK801(Sigma社製#M107)、オルトバナジン(V)酸ナトリウム(和光純薬社製#198-09752)、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム(和光純薬社製#199-02602)、L(+)グルタミン(和光純薬社製#074-00522)、2−メチル-1,4-ナフトキノン(和光純薬社製#132-08132)、D(-)-ソルビトール(和光純薬社製#194-03752)、L(+)-グルタミン酸水素ナトリウム(和光純薬社製#194-02032)であった。前記被験物質のうち、測定値が対照と比較して有意に差異があることから(左から3番目)、オルトバナジン(V)酸ナトリウムは陽性と評価された。その他の被験物質は、測定値が対照と比較して有意な差が認められないことから陰性と評価された。このようにして陽性と評価された被験物質は、BDNFレセプターのリン酸化(活性化)を増強する活性を有する。陰性と評価された被験物質は、BDNFレセプターのリン酸化を増強する活性を有しない。
以上の結果を直接確認するために、ラット大脳の初代培養神経を用いて、それぞれの被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化作用等を以下のようにして測定した。
まず、凍結ラット大脳(住友ベークライト社製 #Sumilon神経細胞CR)を室温で解凍し、次いで、前記脳をハンクス液(HBSS)(Invitrogen社製)4mlで洗浄した後、300gで1分遠心することにより、脳をペレットとして回収した。回収された脳に対して、神経細胞分散液キット(住友ベークライト社製#MB-X9901)付属の酵素液を2.5ml加え、これを37℃で20分間インキュベートした。次いで、軽くピペッテイングして細胞をほぐし、900gで5分間遠心することにより、細胞をペレットとした。次いで、得られたペレットをキット付属の分散液2.5mlに懸濁し、更に得られた懸濁液をキット付属の除去液2.5mlのクッションの下に層を乱さないように加えた。次いで、これを900gで5分間遠心することにより、ペレットとして神経細胞を得た。得られた神経細胞を神経細胞培養液(住友ベークライト社製#MB-X9501)に懸濁した後、25×10/wellの割合でポリLリシンコート6wellプレート(住友ベークライト社製)上に播種した。これを37℃、5%CO存在下で培養した。3日目に培養液を交換し、更に培養を継続し、培養開始から7日目に得られる神経細胞を以下の実験に供した。
このようにして準備された神経細胞の各wellから培養上清を除き、予め37℃に暖めておいた、最終濃度10ng/mlのBDNFが添加された神経細胞培養液(住友ベークライト社製)に対して各被験物質(10μM、溶媒濃度0.1%)又は対照(溶媒:DMSO、濃度0.1%)を混合したものを添加した。神経細胞は、直ちにインキュベータに戻し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、培養上清を除去し、氷冷PBS(−)で素早く細胞表面を洗浄した。洗浄後、CellLytic M cell lysis regentにフォスファターゼインヒビターカクテル(Sigma社製 #P2850)が1/100 Vol添加されたものを、1well当たり200μLの割合で細胞表面に加え、室温で45分インキュベートすることにより細胞を溶解させた。細胞溶解物を20000×gで10分間遠心分離することにより上清を回収したものを細胞抽出物として得た。得られた細胞抽出物に、SDSサンプルバッファー(BioRad社製)を1:1の割合で添加した後、これに100℃で5分間程度加熱処理した。得られた処理物を、SDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で展開した。ゲル上で展開されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、25V定電圧の条件で30分間通電することにより、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)等の膜へタンパク質を転写した。
転写後に得られた膜を、PBS(-)で2%に希釈されたECL advanceブロッキング試薬(GEヘルスケア社製)により室温でインキュベート(60分間)した後、得られた膜の上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1% Tween20(BioRad社製))で1万分の1に希釈されたAnti-Phospho TrkA(Tyr490)Antibody (Cell Signaling社製#9141)を滴下した。4℃で一晩以上インキュベートすることにより、膜の上における抗原抗体反応を進行させた。次いで、膜をPBS-T液中で15分間2回洗浄した後、得られた膜の上に、PBS-Tで1万分の1に希釈されたAnti-Rabbit IgG-HRP(GEヘルスケア製#NA934V)二次抗体を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持する膜を、PBS-T液中で15分2回洗浄した後、得られた膜に対して、ECLadvance試薬(GEヘルスケア社製)を、当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理した。このようにして得られた膜をイメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、リン酸化されたBDNFレセプターのリン酸化の程度を示すゲル上のイメージ像を得た。得られたイメージ像を図3に示した。レーン1:対照:溶媒DMSO、レーン2:(+)MK801、レーン3:オルトバナジン(V)酸ナトリウム、レーン4:ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム、レーン5:L(+)グルタミン、レーン6:2−メチル-1,4-ナフトキノン、レーン7:D(-)-ソルビトール、レーン8:L(+)-グルタミン酸水素ナトリウム、レーン9:対照:溶媒DMSOであった。その結果、オルトバナジン(V)酸ナトリウム(レーン3)だけが、BDNFが10ng/ml存在しているときのBDNFレセプターのリン酸化の程度を、対照と比較して有意に増強させることが確認された。その他の被験物質は、対照と比較して有意な差異を与えなかった。以上、PTPR-Eの酵素活性測定結果により陽性と評価された被験物質がBDNFレセプターのリン酸化を増強させ、陰性と評価された被験物質がBDNFレセプターのリン酸化を増強させないことが確認された。
【0055】
実施例3 (BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質の探索(その1:PTPR-Eの「酵素の量」を測定用指標とする試験)
被験物質として、PTPR-E遺伝子のmRNAを細胞中で分解する作用を有するステルスRNA(Invitrogen社製)の候補物質として、3物質(物質(1)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300324)、物質(2)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300325)、物質(3)(Invitorgen社製#PTPR-E-RSS300326))、更にこれらと塩基配列が異なる物質を3物質(物質(4)(Invitrogen社製#12935-300)、物質(5)(Invitrogen社製#12935-112)、物質(6)(Invitrogen社製#12935-1139)の合計6物質を準備した。対照として、これらの物質を溶解するために用いられた緩衝液(Invitrogen社製1×RNA Annealing buffer#46-8804)を用いた。
【0056】
まず内在性のPTPR-Eを有する培養細胞であるPC12細胞(ATCC)を、10%血清、ピルビン酸Na液(GIBCO BRL #11360)及びNon-essential amino酸液(GIBCO BRL #11140)を補ったRPMI-1640培養液中、37℃、5%COの通常の培養条件で、10cmプレート上で8割コンフルエントの状態になるまで培養された培養細胞を準備した。
次いで、当該培養細胞(それぞれ4枚ずつ(1枚はタンパク質用、もう3枚はRNA用))に、各被験物質600pmol/10cmずつ又は対照を、培養細胞へのRNAi導入試薬(Invitrogen社のLipofectamine RNAiMAX試薬#13778-150)を用いて導入した。当該導入は、当該導入試薬に添付された説明書に記載された標準方法に従って実施された。具体的には、前記被験物質とRNAi導入試薬20μL/10cmとを含むOptiMEM(Invitorgen社製)の2mlを細胞培養上清に添加した後、前記培養細胞をインキュベートした。
次いで、72時間後(PTPR-E遺伝子のmRNAが分解され、そしてPTPR-Eのタンパク質量が低下することが一般に期待される期間)、前記培養細胞中に含まれる全RNA及び全タンパク質をそれぞれ回収した。この際の培養細胞からの全RNA抽出方法は、細胞培養上清を除いた細胞表面に、RNA精製キット(QIAGEN社のRneasy kit#74106)中に含まれる細胞溶解液1mlをそれぞれのプレート1枚の割合で加えた後、培養細胞を5分間インキュベートすることにより、培養細胞を溶解させた。次いで、キット取り扱い説明書の標準操作方法に従って全RNAを調製した。一方、培養細胞からの全タンパク質抽出方法は、細胞培養上清を除いた細胞表面に、プロテアーゼインヒビター(Rocheダイアグノステックス社製#11873580001)を1個/5mlの割合で加えた細胞溶解液(Sigma社 CellLytic M cell lysis reagent)1mlをそれぞれのプレート1枚の割合で加えた後、培養細胞を4℃で45分間インキュベートすることにより、培養細胞を溶解させた。次いで、培養細胞溶解物を20000gで10分間遠心することにより、上清を回収した。
【0057】
次いで、調製されたそれぞれのRNA1μgに、MMLV(東洋紡)逆転写酵素1μLの割合で加え、添付されている反応緩衝液中、0.5mM dNTP及び25μg/mlオリゴdT存在下で42℃、1時間反応させ、対応するcDNAを調製した。次いで、調製されたcDNAの全量の1000分の1量を鋳型にして、PTPR-E遺伝子の塩基配列の一部分を有するオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号7:agctcaaggtcccaaacaggaaacggttaacgact)及び(配列番号8:tactggtagcatttatcctgctctctctcctgcac)それぞれ10pmolづつを用いて、SYBR Green PCR Reagents PCR試薬(ABI社)を用いて添付説明書に従ってABI社製StepOnePlusリアルタイムPCR装置を用いて当該装置の標準プログラムでPCR反応増幅されたDNAの蛍光を測定することにより、PRPR-E遺伝子のmRNA(対応するcDNA)の量を測定した。図4に対照の測定値を1としたときの、各被験物質のそれぞれの場合の相対測定値(N=3)を示した。縦軸は相対測定値である。ここで、レーン1が物質(1)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300324)、レーン2が物質(2)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300325)、レーン3が物質(3)(Invitorgen社製#PTPR-E-RSS300326)、レーン4が物質(4)(Invitrogen社製#12935-300)、レーン5が物質(5)(Invitrogen社製#12935-112)、レーン6が物質(6)(Invitrogen社製#12935-1139)、そしてレーン7が対照であり、これらの物質を溶解するために用いられた緩衝液(Invitrogen社製1×RNA Annealing buffer#46-8804)の場合の結果である。その結果、物質(1)が対照に対して有意な測定値の差異を示したことから、物質(1)は陽性と評価された。その他の物質は全て対照に対して有意な測定値の差異を示さなかったことから、全て陰性と評価された。
【0058】
タンパク質の解析操作は以下のように行った。
それぞれの細胞抽出物に、SDSサンプルバッファー(BioRad社製)を1:1の割合で添加した後、これに100℃で5分間程度加熱処理した。得られた処理物それぞれ5μgを、SDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で展開した。ゲル上で展開されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、25V定電圧の条件で30分間通電することにより、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)等の膜へタンパク質を転写した。
転写後に得られた膜を、PBS(-)で2%に希釈されたECL advanceブロッキング試薬(GEヘルスケア社製)により室温でインキュベート(60分間)した後、得られた膜の上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で1万分の1に希釈されたAnti-PTPε抗体 (SantaCruz社#SC-1117)を滴下し、4℃で一晩インキュベートすることにより、膜の上における抗原抗体反応を進行させた。次いで、膜をPBS-T液中で15分間2回洗浄した後、得られた膜の上に、PBS-Tで1万分の1に希釈されたAnti-goat IgG-HRP(SantaCruz社製#SC-2020)二次抗体を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持する膜を、PBS-T液中で15分2回洗浄した後、得られた膜に対して、ECLadvance試薬(GEヘルスケア社製)を当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理した。このようにして得られた膜を直ちにイメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、細胞中のPTPR-Eの存在量を示すゲル上のイメージ像を得た。得られたイメージ像を図5に示した。ここで、レーン1が物質(1)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300324)、レーン2が物質(2)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300325)、レーン3が物質(3)(Invitorgen社製#PTPR-E-RSS300326)、レーン4が物質(4)(Invitrogen社製#12935-300)、レーン5が物質(5)(Invitrogen社製#12935-112)、レーン6が物質(6)(Invitrogen社製#12935-1139、そしてレーン7が対照であり、これらの物質を溶解するために用いられた緩衝液(Invitrogen社製1×RNA Annealing buffer#46-8804)の場合の結果である。その結果、物質(1)が対照に対して有意なPTPR-Eタンパク質バンド濃度の差異を示したことから、物質(1)は陽性と評価された。その他の物質は全て対照に対して有意なバンド濃度の差異を示さなかったことから、全て陰性と評価された。
【0059】
このようにして陽性と評価される被験物質は、BDNFレセプターのリン酸化を増強する活性を有する。陰性と評価される被験物質は、BDNFレセプターのリン酸化を増強する活性を有しない。
以上の結果を直接確認するために、PC12細胞内にそれぞれの被験物質又は対照を導入すると共にその際BDNFレセプター(遺伝子)を発現させたものを用いて、それぞれの被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化作用を以下のようにして測定した。
まず、コラーゲンコート6穴プレート(ファルコン社製)上に、内在性のPTPR-Eを有する培養細胞であるPC12細胞(ATCC)を、10%血清、ピルビン酸Na液(GIBCO BRL #11360)及びNon-essential amino酸液(GIBCO BRL #11140)を補ったRPMI-1640培養液中、37℃、5%COの通常の培養条件でプレート上で3割コンフルエントの状態になるまで培養された培養細胞を準備した。
次いで、当該培養細胞に、各被験物質100pmol/wellずつ又は対照と実施例1で作製されたBDNFレセプター発現プラスミド2μg/wellずつとを混合したものを、培養細胞へのプラスミド及びRNAiの同時導入試薬(Invitrogen社のLipofectamine 2000 #11668-019)を用いて導入した。当該導入は、リポフェクトアミン2000試薬に添付された説明書に記載された標準方法に従って実施された。具体的には、前記被験物質とBDNFレセプター発現プラスミドとRNAi導入試薬10μL/wellを含む0.5mlとを含むOptiMEM(Invitorgen社製)の2mlを細胞培養上清に添加した後、前記培養細胞をインキュベートした。
次いで、72時間後(PTPR-E遺伝子のmRNAが分解され、そしてPTPR-Eのタンパク質量が低下することが一般に期待される期間)、培養細胞が含まれる各wellから培養上清を除き、予め37℃に暖めておいた、最終濃度10ng/mlのBDNFが添加された細胞培養液に置換した。培養細胞は、直ちにインキュベータに戻し、37℃で10分間インキュベートした。
次いで、培養上清を除去し、氷冷PBS(−)で素早く細胞表面を洗浄した。洗浄後、CellLytic M cell lysis regentにフォスファターゼインヒビターカクテル(Sigma社製 #P2850)が1/100Vol添加されたものを、1well当たり200μLの割合で細胞表面に加え、室温で45分インキュベートすることにより細胞を溶解させた。細胞溶解物を20000×gで10分間遠心分離することにより上清を回収したものを細胞抽出物として得た。得られた細胞抽出物に、SDSサンプルバッファー(BioRad社製)を1:1の割合で添加した後、これに100℃で5分間程度加熱処理した。得られた処理物(タンパク質量各5μg)を、SDS-PAGE法用10%アクリルアミドゲル(BioRad社製)を用いた電気泳動によりゲル上で展開した。ゲル上で展開されたタンパク質を、セミドライ型ゲル転写装置(BioRad社製)及びセミドライ転写用Buffer(ナカライテスク社製)を用いて、当該装置に添付された説明書の記載に従って、25V定電圧の条件で30分間通電することにより、電気泳動後のゲルからHybond-P膜(アマシャムファルマシア社製)等の膜へタンパク質を転写した。転写後に得られた膜を、PBS(-)で2%に希釈されたECL advanceブロッキング試薬(GEヘルスケア社製)により室温でインキュベート(60分間)した後、得られた膜上に、PBS-T液(PBS(-)、0.1%Tween20(BioRad社製))で1万分の1に希釈されたAnti-Phospho TrkA(Tyr490)Antibody (Cell Signaling社製#9141)を滴下した。4℃で一晩以上インキュベートすることにより、膜の上における抗原抗体反応を進行させた。次いで、膜をPBS-T液中で15分間2回洗浄した後、得られた膜上に、PBS-Tで1万分の1に希釈されたAnti-Rabbit IgG-HRP(GEヘルスケア製#NA934V)二次抗体を滴下した。室温で1時間インキュベートすることにより生じた複合体を保持する膜を、PBS-T液中で15分2回洗浄した後、得られた膜に対してECLadvance試薬(GEヘルスケア社製)を用いて当該試薬に添付された取扱説明書の記載に従って処理した。このようにして得られた膜を、直ちにイメージアナライザー(LAS-1000; 富士フィルム社製)で解析することにより、リン酸化されたBDNFレセプターのリン酸化の程度を示すゲル上のイメージ像を得た。得られたイメージ像を図6に示した。ここで、レーン1が物質(1)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300324)、レーン2が物質(2)(Invitrogen社製#PTPR-E-RSS300325)、レーン3が物質(3)(Invitorgen社製#PTPR-E-RSS300326)、レーン4が物質(4)(Invitrogen社製#12935-300)、レーン5が物質(5)(Invitrogen社製#12935-112)、レーン6が物質(6)(Invitrogen社製#12935-1139、そしてレーン7が対照(被験物質を溶解するために用いられた緩衝液(Invitrogen社製1×RNA Annealing buffer#46-8804))の場合の結果である。その結果、物質(1)が対照に対して有意なBDNFレセプターのリン酸化(活性化)を増強させ、その他の被験物質がBDNFレセプターのリン酸化(活性化)を増強させないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の簡便な検定方法等が提供可能となる。
【配列表フリーテキスト】
【0061】
配列番号1
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号2
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号3
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号4
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号5
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号6
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号7
リアルタイムPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号8
リアルタイムPCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の検定方法であり、
(1)被験物質とタンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプE(Protein tyrosine phosphatase receptor type, E、以下、PTPR-E)との接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標を測定する第一工程、及び
(2)第一工程で得られた前記接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値を前記指標の対照値と比較する第二工程、及び、
(3)第二工程で比較して得られた差異に基づいて前記被験物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価する第三工程、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
PTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標が、以下のいずれかの測定用指標であることを特徴とする請求項1記載の方法。
<測定用指標>
(1)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク質単位重量当たりの酵素活性
(2)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク量
【請求項3】
前記接触系が、BDNFレセプターを有する細胞であって、前記被験物質が投与され、且つ、タンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプEを細胞内で産生する能力を有する細胞であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が、PTPR-E遺伝子を含む細胞であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
PTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標が、以下の測定用指標であることを特徴とする請求項4記載の方法。
<測定用指標>
(1)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク質単位重量当たりの酵素活性
(2)前記接触系内に含まれるPTPR-Eのタンパク量
(3)前記接触系内に含まれるPTPR-E遺伝子の転写量及び/又は翻訳量
【請求項6】
前記指標の対照値が、被験物質との非接触系内に含まれるPTPR-Eの酵素ユニット若しくはそれと相関関係を有する指標の測定値であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項7】
第三工程において、測定値が対照値の1/2倍以下、又は、対照値と比較し統計学的に有意な低値であることを基準とし、前記被験物質がBDNFレセプターのリン酸化制御能力としてBDNFレセプターの脱リン酸化抑制能力を有するものとして評価することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記被験物質が、RNAi、miRNA及びアンチセンス核酸からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の物質であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの請求項記載の方法により評価されたBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準に基づき、BDNFレセプターのリン酸化制御能力を有する物質を探索する工程を有することを特徴とする物質の探索方法。
【請求項10】
物質が有するBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準を評価するための指標を提供する試薬としての、タンパク質チロシンフォスファターゼレセプタータイプE若しくはその遺伝子の使用。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれかの請求項記載の方法により評価されたBDNFレセプターのリン酸化制御能力の有無及びその水準に係るデータ情報を入力・蓄積・管理する手段、前記データ情報を所望の結果を得るための条件に基づき照会・検索する手段、及び、照会・検索された結果を表示・出力する手段を具備することを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52(P2013−52A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134139(P2011−134139)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】