説明

物質中の電子密度を双極子状に分布させることで誘電体特性を実現する方法および材料

【課題】従来の強誘電性には、イオン変位を発生の起源としているために、電気信号記憶特性及び蓄電体性能の劣化等の誘電体の機能限界があった。
【解決手段】物質中において、価数の異なるイオンの配列を双極子配置に置くことにより、物質中の平均電荷数に比べ価数の大きい一方のイオンは正の電荷の役割を持たせ、物質中の平均電荷数に比べ価数の小さい一方のイオンは負の電荷の役割を持たせ、これらのイオンが双極子を形成する位置に配置されて電子密度が双極子配置を構成することにより誘電体としての機能を発現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の誘電体とは異なる原理で誘電体を実現する方法を見いだし、その原理に従う具体的な物質を作成した。この新原理により、現在の誘電体の工業利用において困難とされることが克服できる。即ち、本発明の誘電体は、物質中の電子密度を双極子配置を取るように配置させることにより誘電特性を形成させる方法を見いだしたものである。
【背景技術】
【0002】
誘電体の工業的な役割においては、誘電体は(1)電荷をためることができる、(2)高い電圧を遮蔽(絶縁)することができる(誘電率が大きいと言い表せる)、という特徴があり、工業的に大きな役割を持っている。その機能は次のとおりである。
(1) 誘電体は、電圧を加え、その直後にその電圧を取り去っても、表面に現れた電荷がそのまま残るため、電気信号の記憶素子として使われる。
(2) 電気配線回路の中で、交流電圧と交流電流のタイミングを調整するコンデンサーの能力向上をさせるため(超小型高性能なコンデンサーを実現するため)に誘電体が使われる。
(3)現代のICなど極微な電子回路では、非常に狭い空間領域での電気配線において電流が漏れないようにするため、高性能な電気絶縁体領域を形成する。
これのために誘電体を使用する。
【0003】
又、今までの誘電体の機能発現原理としては、誘電体特性は、結晶中でプラスの電荷を帯びた原子(正イオン)とマイナスの電荷を帯びた原子(負イオン)の位置が、自発的に僅かにその位置を変える(変位を起こすと呼ぶ)ことで、プラスとマイナス電荷の中心がずれ、電気双極子と呼ぶ両イオンの重心が離れた配置が発生することが起源である。このイオン変位による電気双極子が、結晶全体に規則配列を実現した状態(誘電相転移を起こしている状態と呼ばれる)が、今まで知られていた誘電体である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今までの強誘電性には、イオン変位を発生の起源としているために、誘電体の機能の限界に関して、次の様な弱点がある。
(1)誘電体特性を必要とする動作環境に於いて、イオンの変位に制限が加わる場合、誘電体特性が充分に発現しない。たとえば誘電体薄膜が基盤の上に成長作成しても、基盤の持つ格子定数と誘電体の持つ格子定数がわずかに異なるだけで、誘電体性能が低下する。
(2)誘電体の特性を用い、電場印加後の分極の向きを電気信号の記録に用いる場合、信号反転過程では、必然的にイオン変位にその位置を変える運動が生じる。このイオン位置の移り変わり過程(分極の反転過程)が繰り返されると、結晶の中にイオンが動きにくくなる部位が生じ、分極の反転が充分に行われず、電気信号記憶特性の劣化が起こる。
(3)誘電体の特性を用いて蓄電体を構成する場合、電荷の充電や放電に伴う分極の反転過程では、必然的にイオン変位にその位置を変える運動が生じる。このイオン位置の移り変わり過程(分極の反転過程)が繰り返されると、結晶の中にイオンが動きにくくなる部位が生じ、分極の反転が充分に行われず、蓄電体性能の劣化が起こる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
工業的に重要な役割を担う誘電体は、現在まですべて、陽イオンと陰イオンの原子変位のペアが作る電気双極子により実現されている。本発明においては、価数の異なる陽イオンの分布に着目し、そこに生じる電子密度分布を電気双極子として用いる誘電体に関するものである。本発明におけるように、価数の異なる陽イオンの分布に着目し、そこに生じる電気密度分布を電気双極子として用いる誘電体は、その存在の可能性は理論的に指摘されていたが、それが実在することが本発明により初めて証明された。
【0006】
即ち、本発明の誘電体の特徴として、誘電性の発生の起源となる電気双極子を、存在するイオンの位置の変化(原子の変位)ではなく、物質中の電子密度を双極子配置をとる様に配置させることで形成させる。具体的には、物質中において、価数の異なるイオンの配列を双極子配置に置くことにより、物質中の平均電荷数に比べ価数の大きい一方のイオンは正の電荷の役割を持ち、物質中の平均電荷数に比べ価数の小さい一方のイオンは負の電荷の役割を持つ。これらのイオンが双極子を形成する位置に配置したとき、電子密度が双極子配置を構成する。これにより誘電体としての機能を発現させる。
【発明の効果】
【0007】
この誘電体は以下の様な特徴的効果を持つ。
(1)電気分極の反転がイオン間の電子の移動で起こる。
(2)電気分極反転に伴うイオン変位の変動がない。
(3)電子密度に起源を持つ誘電体が磁気を帯びた場合、電気双極子を発現する電子のスピンが磁気秩序を形成する。このため磁気秩序が誘電体としての性能を支配する。同時にこの逆過程も存在し、誘電性能の変化が磁気特性に影響を及ぼす。これを磁気特性と誘電体特性が結合すると言う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)本発明の誘電体の特性が、どのように既存の誘電体の困難を克服するかは、次のとおりである。
1)高い誘電率を持つ機能を、イオン変位と関係しないまま実現できる。このため薄膜誘電体を作成しても、基盤との格子定数の整合性を気にせずに誘電体薄膜を作成できる。
2)分極反転を行ってもイオン変位を伴わず、電子移動だけで分極の反転ができる。このため、電荷を貯めることを目的とした装置において、充放電特性の劣化が起こらない
3)分極反転を行ってもイオン変位を伴わず、電子移動だけで分極の反転ができる。このため、分極反転による電気信号の記録装置では、記録の繰り返しを行っても記録性能の劣化が起こらない。
4)磁気秩序と誘電体特性が結合するため、誘電体に電圧を加えることで磁気特性を変化させる電子回路素子を作成できる。
5)磁気秩序と誘電体特性が結合するため、誘電体に磁場を加えることで、誘電特性を変化させる電子回路素子を作成できる。
【0009】
(2)本発明の誘電体の一作成例
本原理による誘電性を示す物質の例である、遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;Zn,Ga;M’’=Mn,Fe,CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)のうち、LuFeの作成方法を例として述べる。
【0010】
LuFeを作成する出発物質に、酸化ルテチウム(Lu)、酸化鉄(Fe)を用いる。LuとFeを、モル比で1:2になる様に粉砕混合する。この焼成反応を促進するため一度空気中で仮焼成する。仮焼成温度は800℃である。仮焼成後これを取り出し、再び粉砕混合し原料とする。原料を取り扱いの良い形、たとえばペレット状に整形し、ルツボに入れて酸素分圧調整炉に設置し、1200℃で、酸素分圧10−9気圧の環境で24時間以上焼成する。その後試料を1200℃から急冷し取り出す。
【0011】
この、酸素分圧を調整するための混合ガスを流すことと、試料を1200℃で焼成後、急冷する機能を備えた、酸素分圧調整電気炉(ガス気密型高温炉)の構成図を図19に示す。電気炉炉心管の上部と下部には気密を保つためのフランジ6、7 が取り付けてありガスを流すことができる。試料焼成時の酸素分圧を10−9気圧に調整するために、HガスとCOガスの混合気流か、あるいはCOガスとC0ガスの混合気流を用いる。たとえば、COとC0を用いる場合、COとC0の流量を毎分150CCと100CCにする。流入するガスの混合比は酸素分圧モニターで検量しておくと、作成条件の再現性が良い。この電気炉は炉心管が垂直に設置されており、炉内には試料をおいたルツボ4が吊るされる構造となっている。ルツボを吊るす白金、またはモリブデン線3は、上部フランジ内側に設置した細いニクロム線2に吊るされている。試料を含むルツボは、焼成が終了した時点でニクロム線を通電し焼き切り、吊るしているワイヤーとともに、炉内下部に落下する。下部のフランジ7の内側には、衝撃止めのための石英ウール8を敷きつめてある。これにより1200℃で焼成している試料を急冷しとり出すことができる。
【0012】
取り出した試料の一部は、粉末X線回折法により、空間群R−3mに属する晶系であることと、不純物相を含まないことを確かめる。不純物が含まれた場合は、上記の焼成作業を繰り返す。
得られた結晶は、図23のような結晶となる。図23(a)は、結晶の立体図である。結晶の説明はLuの代わりにYを用いる。このようにYを代用しても、結晶の構造に違いはない。この結晶は、YとFeとOにより構成される三角格子層がc軸方向に層状に積み重なった積層構造をしている。YとFeに注目すると、Yには上下二層のOが八面体型に配位しており(この層をU層と呼ぶ)、FeにはFe層とほとんど同一平面上にあるO層とその上下にある二層のOが三方両錐型に配位ししている(この層をT層と呼ぶ)。すると、全体としてはU層の間に2枚のT層が挟まれた構造となっている。2枚のT層をそれぞれT1層、T2層と呼ぶ。以下、U層に挟まれた2枚のT層(T1およびT2層)をW層と呼ぶ。
図23(b)にU層とT1層、T2層を六方晶のb軸方向から見た図を示す。U層はYとその上下のOの層(530と540)を含む層である。T2層は、Yのc軸上方向にあるFeと、Feとほぼ同一平面状にあるO(520)とそのc軸上下方向のOの層(510と530)からなる。T1層は、T2層のc軸上方向にあるFeと、Feとほぼ同一平面状にあるO(510)とそのc軸上下方向のOの層(500と520)からなる。従って、U層、T1層、T2層の上下の酸素は隣接する層と共有することになる。
このような層状構造が、強い二次元性を示す物性の起源となっている。また、W層に存在する2枚のFeの三角格子層は、三角形の持つ幾何的特徴のため、後述するLuFe2O4の特異な物性の発現機構の主役を担っている。なお、ここでの説明ではT1層とT2層にはどちらもFeが入るとして説明したが、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Gaから選ばれる他の元素であってもよいし、T1及びT2層にはそれぞれ別の元素が入ってもよい。そこで、T1層に入る元素をM1(若しくはM’)とし、T2層に入る元素をM2(若しくはM’’)とする。また、Yで説明したサイトには、Y以外にDy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、In、Scから選ばれる元素であってもよい。
図23(b)はb軸方向から図23(a)を見た図であり、図23(c)は図23(b)をc軸上方から見た図である。積みあがる三角格子層には、A、B、Cの指標をつけてある。これらの3層はc軸方向にA、B、Cの位相が回りながら積みあがるため、c軸上方から見ると図23(c)のように見える。
電気双極子を発生する電荷分布が形成されているか否かという点は、[1−10]方向から電子回折図形を調べることで確認することができる。図24にYFeOの場合の電子線回折図を例示する。図24(a)は、電気双極子を発生する電荷分布が形成されていない場合であり、(b)は電気双極子を発生する電荷分布が形成されている場合を示す。Xの部分に明瞭なスポットが観測されているのがわかる。
電気双極子を発生する電荷分布が形成されているか否かは、作製されたサンプルがRFe4−δであるとすると、わずかな酸素欠損量δがあることが必要である。酸素欠損量δは、Fe2+とFe3+の存在比率によって求める。図25にはFe2+とFe3+の存在比率をメスバウアーによって測定した測定例を示す。実際にこのメスバウアーの測定結果からδを求めるのは、計算式によりモデルを立てて、実験結果を再現することで、Fe2+とFe3+の存在比率を求め、そこからδを求めることとなる。
この酸素欠損量δは、サンプル作成時のCOガスとC0ガスの混合比を変えることによって調整することができる。酸素欠損量δの量がどの程度であれば電気双極子を発生する電荷分布が形成される構造ができるかについては、δが0.005以下であればよいことがわかった。
【0013】
(3)本発明の誘電体の誘電率側定方法の一例
本発明で示す一連の物質は、誘電体となっているために高い誘電率を示す。以下では、この誘電率の測定方法を述べる。この測定は、市販のインピーダンスアナライザーと呼ばれる測定器(アジレントテクノロジー社製)を用いて、試料をコンデンサー状に整形したうえで、コンデンサーとしての特性である静電容量を測定し、その後試料の幾何形状を考慮し逆算することで、比誘電率を求める。この過程は通常行われる誘電率測定と同じである。
【0014】
以下にその誘電率測定法を述べる。
1)誘電体試料への信号配線電気炉で焼成した試料の誘電率測定を行うために、図20に示されるように、試料を円筒状に整形する。円筒の直径は7mm、厚さは0.7mmにする。表と裏の円盤面に、銀ペースト、金ペースト、あるいはカーボンペーストといった導電性接着剤を用いて電極面を形成し、同時に細い導線を接着する。試料からは二本の導線が出ることになる。
2)インピーダンスアナライザーを用いた静電容量と誘電率の測定
試料から出る2本の導線を、図21のように、インピーダンスアナライザーの4本の測定端子(同軸ケーブル)に配線する。この4本の同軸線は、試料付近に来る様に配置する。同軸線の芯線は、それぞれ、交流電流供給のための2本と、交流電圧測定のための2本が存在する。以下ではこの配線をそれぞれ電流H、電流L、電圧H、電圧Lと呼ぶ。図21の様に、試料から出た2本の導線のうち片側を、電流Hと電圧Hの端子に接続する。更に、試料のもう一方を導線を、電流Lと電圧Lの端子に接続する。これにより、インピーダンスアナライザーに、試料のもつ静電容量が表示される。読み取った静電容量について、試料の幾何形状を考慮し、電極の持つ真空中の誘電率との比率から、試料の非誘電率を決定する。
3)誘電率の温度変化測定
実際の誘電率測定では、上記の測定を20Kから300Kの温度範囲で行う。この低温環境を実現するために、図22に示される低温冷凍機(イワタニ社製)を用いた。冷凍機の低温環境部分に、へリウムガスを導入した試料室を設ける。冷凍機外側の室温部分にインピーダンスアナライザーを設置し、この試料室まで、インピーダンスアナラィザーからの同軸線4組を導入配線する。試料室に導入された4本の同軸線は、上記と同様に試料へ配線する。試料への熱伝導を良くするために、試料室にはへリウムガスが満たされている。冷凍機の試料室近傍には温度計とヒーターが取り付けられており、温度調節器に繋がっている。冷凍機の運転時にこの温度調節器を稼働させ、試料室と試料を目的の温度に調整する。冷凍機を運転しながら温度調節機を動作させることで、20K付近から300Kまでの範囲で試料室の温度を変化させ、誘電率の温度変化を測定する。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
図1(a)に価数の異なるイオンが電気双極子を持つ様に配置した例を示す。ここでは遷移金属酸素化合物
RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例として、LuFeの電荷単位格子を示す。下層は、負電荷(Fe2+)が多く、平均電荷から見て負電荷の役割を持つ。上層は、正電荷(Fe3+)が多く、平均電荷から見て正電荷の役割を持つ。この正電荷と負電荷の重心が一致せず電気双極子が現れている。電気双極子の向きは矢印で示してある。細い実線は結晶単位格子の大きさである。電子密度が双極子状に配置するため電荷の単位格子は点線で示す大きさに広がり、超格子構造をとっている。又、図1(b)に、RFeの結晶構造を示す。ここでは、三角格子を形成する鉄イオンが2層になって存在することが示されている。
【0016】
(実施例2)
図2は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを実証するために配置された測定回路の例の図である。試料をペレット状に整形し、ペレット上端面と下端面に電極を形成する。誘電率測定にインピーダンスアナライザーを用い、標準的なキャパシタンス測定を行う。キャパシタンス側定は、交流電圧を印加し流れる電流を測定するAB端子と、交流電圧が一定になるようするためのフィードバック用の電圧測定端子CDとで構成される。この構成図は、広く知られている標準的なインピーダンス側定の物である。
【0017】
(実施例3)
図3は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、強誘電体となり、発生した自発分極の温度変化を示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてLuFeの自発分極の温度変化を示す。自発分極は330K以下から現れる。また自発分極の温度変化は、磁気転移温度である240Kで変化を示し磁気秩序と強誘電秩序が結合していることを示す。
【0018】
(実施例4)
図4は、価数の異なるイオンが双極子配置成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてLuFeの誘電率を示す。
【0019】
(実施例5)
図 5 は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてErFeの誘電率を示す。
【0020】
(実施例6)
図6は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてYFeの誘電率を示す。
【0021】
(実施例7)
図7は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてYbFeの誘電率を示す。
【0022】
(実施例8)
図8は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてTmFeの誘電率を示す。
【0023】
(実施例9)
図9は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてInFeの誘電率を示す。
【0024】
(実施例10)
図10は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてInFeCuOの誘電率を示す。
【0025】
(実施例11)
図11は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてLuCuFeOの誘電率を示す。
【0026】
(実施例12)
図12は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてYbFe1.6Mn0.4の誘電率を示す。
【0027】
(実施例13)
図13は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてYbFe1.6Ga0.4の誘電率を示す。
【0028】
(実施例14)
図14は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてHoBaCo5.2の誘電率を示す。
【0029】
(実施例15)
図15は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてLu0.5Ca0.5MnOの誘電率を示す。
【0030】
(実施例16)
図16は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてYbCoFeOの誘電率を示す。
【0031】
(実施例17)
図17は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてYbCuFeOの誘電率を示す。
【0032】
(実施例18)
図18は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてLuCoFeOの誘電率を示す。
(実施例19)
図26は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてInCuGaOの誘電率を示す。
(実施例20)
図27は、価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。ここでは遷移金属酸素化合物RM’1+xM’’1−x(R=Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,In,Sc;M’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;M’’=Mn、Fe、CO、Cu、Zn、Ga;添字xは混合比を表しxの範囲は0から1までの範囲である。)の例としてInGaZnOの誘電率を示す。
【産業上の利用可能性】
【0033】
誘電体材料は、電気信号のフィルターデバイス、高性能絶縁体材料、電気信号素子、誘電体等に利用される。しかし、これらの素子はすべて有限な利用寿命がある。その理由は、電気信号符号の繰り返し印加により、物質中にイオン変位が起こりにくくなる部位が生ずるためである。
【0034】
本発明では、このようなことが原理的に起こらないため、製品寿命を飛躍的に延ばすことが可能になる。誘導体薄膜は、メモリーデバイスなど、微小電気回路中での信号の絶縁材料として用いられるが、イオンの変位に制限が加わる場合、誘電体特性が充分には発現しない。例えば、誘電体薄膜が基盤の上に成長しても、基盤の持つ格子定数と誘電体の持つ格子定数がわずかに異なるだけで、誘電体性能が低下する。これは極微小電子回路の表現を妨げる要因として指摘されるが、本発明では、その様なことが原理的に起こらないため、極微小回路の生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1a】価数の異なるイオンが電気双極子を持つ様に配置した例を示す図である。
【図1b】価数の異なるイオンが電気双極子を持つ様に配置した例を示す図である。
【図2】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを実証するために配置された測定回路の例を示す図である。
【図3】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、強誘電体となり、発生した自発分極の温度変化を示す図である。
【図4】価数の異なるイオンが双極子配置成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図5】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図6】[図 61 価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図7】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図8】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図9】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図10】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図11】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図12】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図13】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図14】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図15】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図16】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図17】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図18】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図19】本発明の誘電体作成に用いる高温ガス気密電気炉を示す図である。
【図20】円筒状に成形した誘電体に電極と信号導線を取付けた図である。
【図21】インピーダンスアナライザーを用いた静電容量と誘電率の測定のための配線方法を示す図である。
【図22】誘電体の誘電率の温度変化を測定するための装置を示す図である。
【図23】本発明の誘電体の一作成例により得られた結晶の構造図である。
【図24】YFeの電子線回折図である。
【図25】作製されたサンプルYFe4−δのFe2+とFe3+の存在比率を示す測定例である。
【図26】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【図27】価数の異なるイオンが双極子配置を成すことで、高い誘電率を示す物質となることを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1.電極端子
2.ニクロム線
3.吊りモリブデン線
4.ルツボ
5.電気炉発熱体
6.水冷気密フランジ上部
7.水冷気密フランジ下部
8.石英ウール
9.混合ガス気流入口
10.酸素分圧計側計
11.混合ガス出ロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式がRM11+XM21−X4−δで表され、RとM1、M2とOがそれぞれ三角格子面層で積層され、δが0.005以下であり、Xは0から1の実数であり、RはY、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Inから選ばれた元素であり、M1、M2は、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、のうちから重複を許して選ばれた元素である酸化物誘電体。
【請求項2】
前記酸化物誘電体は六方晶を有し、前記三角格子面層は六方晶のab面であり、
U層は、前記Rが構成する層と、前記Rが構成する層に対してc軸方向上下に前記Oが前記Rに対して八面体に配位している層からなり、
T1層は、前記M1が構成する層と、前記M1が構成する層とほぼ同一平面上にあるOからなる層と、前記M1が構成する層に対してc軸方向の上下にあって、前記M1に対してOが五面体型に配位している層からなり、
T2層は前記M2が構成する層と、前記M2が構成する層とほぼ同一平面上にあるOからなる層と、前記M2が構成する層に対してc軸方向の上下にあって、前記M2に対してOが五面体型型に配位している層からなり、
全体としてU層、T1層、T2層若しくはU層、T2層、T1層の繰り返し層構造になっている請求項1記載の酸化物誘電体。
【請求項3】
Rの酸化物とM1の酸化物とM2の酸化物を粉砕混合し混合材料を得る工程と、前記混合材料を酸素分圧10−9気圧の環境で焼成する工程とからなる酸化物誘電体の製造方法。
【請求項4】
前記焼成する工程の前に前記混合材料を空気中で仮焼成する工程を含む請求項3記載の酸化物誘電体の製造方法。
【請求項5】
前記仮焼成の温度は摂氏700度から900度の間である請求項4記載の酸化物誘電体の製造方法。
【請求項6】
前記焼成する工程は、COガスとCOガスの混合気流を流す請求項3記載の酸化物誘電体の製造方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図26】
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【図27】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−223886(P2007−223886A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315083(P2006−315083)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年8月25日 ネイチャー・ジャパン株式会社発行の「nature Vol436」に発表
【出願人】(599112582)財団法人高輝度光科学研究センター (35)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】