説明

物質寿命検出機を備えた揮発性物質蒸発器

本発明は、概して、芯を備えた容器を有する揮発性物質蒸発器に関し、容器内に収容された揮発性物質の寿命を効果的に検出するための技術を提供することを目的とする。揮発性物質蒸発器は、下端が容器内に収容され、上端が容器から表出する芯を有する揮発性物質の容器に結合され、容器を安定位置で維持する。蒸発器は、芯の前記上端に光を発するように配置された赤外光エミッターを備え、レセプターが芯の上端で反射された光を捕捉するように配置されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯を備えた容器を有する揮発性物質蒸発器に関し、容器内に収容された揮発性物質の寿命を検出するのに効果的な技術を提供することを目的とる。
【背景技術】
【0002】
芯を備えた散布装置において、利用者が容易に揮発性物質の寿命を検出し、これにより、物質の容器を新たなものに交換する必要があるのを知るようにするニーズがある。これらの装置は、一般的には、目に付かない家庭のコンセントに差し込まれ、このため、一見したところでは、容器内に残る液体面を容易に見ることができない。
【0003】
寿命を、ある種の警告を利用者に対して呈示することのできる指標に変換するためのいくつかの解決策がある。これらのシステムは、電気伝導率、静電容量、重量、温度又は光相互作用のような物理的性質における変化の測定に基づいている。
【0004】
光相互作用に基づく液体検出システムに関して、容器の底部の液体を検出するための検出システムか、芯の内部の液体を検出するための検出システムに区別することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、光透過性により、容器底部の液体を検出する検出システムは以下の欠点を有する。
一般的に用いられているボトルの幾何的な精度の欠如による大きな散乱。
外部環境(日光、反射、・・・)の影響。
液体が依然として芯の内部に存在し、これにより混合物の蒸発が依然として生じているときに、寿命が検出される。
【0006】
他方、芯の上部を通過する光の透過性又は屈折に基づくシステムがある。しかしながら、これらのシステムでは、芯が透光性を有すること、又は、芯内の液体の存在下で十分な量の光が芯の空隙で屈折され、センサーに到達できることが必要である。
【0007】
これらのシステムは以下の欠点を有する。
芳香剤の屈折率に基づいて、光エミッター又はセンサーの位置を調整する必要性
外部環境(日光、反射、・・・)の影響
【0008】
米国特許第7,164,849号明細書には、揮発性液体が赤外線吸収材料を含む装置が記載されている。容器内に十分な揮発性材料が存在するときに、発せられた赤外線は、材料によって赤外線センサーに向かって反射されない。赤外線センサーが赤外光を検出しないように、赤外光は揮発性材料に吸収される。赤外線センサーが赤外光を検出した時に、警報装置が作動させられる。
【0009】
米国特許出願公開第2006019962A1号公報においては、光エミッター及びレセプターは、エミッター及びレセプターは互いに対向するように整列されていれば、芯の周囲の拡散体のいかなる位置にも配置できる。容器が満杯又は所定量の液体を含むときに、エミッターにより放射された光は濡れた多孔質の芯を通して屈折され、これにより、センサーが光を検出するのを可能になる。
【0010】
液体及び芯材料の屈折率は、エミッターにより発せられ、レセプターにより検出される光の量を決定する。例えば、水の屈折率はとても低いため、エミッターから放射された光は芯を通っても屈折されない。これゆえに、芯を通った光を屈折させ、光がセンサーにより検知されることを確実にするため、液体の屈折率は十分に高くなければならない。
【0011】
これに代わる選択肢では、エミッター及び光検出機が容器内に配置される。一方は容器の上部に配置され、他方は容器の下部に配置される。容器が空である時に、光は容器を通過する。しかしながら、液体が存在しているとき、光は屈折又は反射され、センサーには到達しない。
【0012】
他の選択肢では、エミッター及びレセプターは、容器の周囲に配置されるが、整列されていない。液体が存在する場合には、光は、容器を通るときに散乱され、レセプターに到達するが、液体が存在しない場合には、光は真直ぐに進行し、レセプターに到達しない。センサーの位置に応じて、容器が完全に空である時、又は、ほぼ空である時を検出する。
【0013】
これらのシステムの欠点は、以下の通りである。
芯の光の透過は、効率が非常に高いわけではなく、高感度のセンサーが必要である。
光の透過を十分に効率的にするため、特定の芯の性質(孔のサイズ、孔の割合)が要求される。
周囲の光により起こる干渉。
光エミッター及びセンサーは、互いに対向するように整列されなければならず、これにより、位置許容差を減少するのに技術的な困難性を伴う。
【0014】
一方、国際公開第WO2007/138247号公報には、二つ方法に基づいた寿命検知システムが記載されている。
ガラス容器を通した光反射の利用。
全内部反射(屈折及び反射の組合せ)の利用。
【0015】
光源は、赤外線又は可視光を容器に向かって、実質的に、a)液体及び容器の相間の臨界入射角、b)空気と容器の相間の臨界入射角、以内又はこれらの間の角度を示すように適用される。
【0016】
臨界角は、好ましくは、内部全反射の臨界角である。センサーは、容器内に配置された光源から発生られ、容器と容器内の空気との相間で反射された光を受けるような方法で配置されているか、容器に配置された光源から発せられ、容器及び空気の相間で屈折された光を受けるような方法で配置されている。センサーは、光源との関係において、容器の液体が検知高さに存在するように配置されなければならない。エミッター及び検出機は、視線上になければならない。
【0017】
このシステムの欠点は、以下の通りである。
光が容器に所定の角度で入射するように、エミッターの適切な配置を必要とする。
容器はガラス製でなければならない。エミッター/レセプターシステムは、ガラスの厚さ及び純度による。
容器及びエミッター/レセプターシステムを、芯が光路と干渉しないような方法で設計しなければならない。
内部全反射法では、容器内に残った芳香が常に存在し、追加の寿命指示システム(タイマー、・・・)が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、蒸発する物質の寿命を検出するための手段を有する揮発性物質の蒸発器に関する。蒸発器は、物質容器に部分的に沈められ、上端が容器から表出する多孔質の芯を備える揮発性物質の容器に接続され、安定した状態を保持する。
【0019】
芯としては、容器から蒸発領域へ正確に液体を輸送できるあらゆるタイプの適切な毛細管の媒体が挙げられる。円柱状の幾何学的形状を有するセラミック又は繊維の芯が最も一般的な実施形態である。しかし、芯は、平べったい形状を有することもできる。非孔質の固い支持壁に機械加工された毛細管チャンネルであっても、本発明の芯として用いることが可能である。
【0020】
蒸発器は、赤外線と、エミッターと、レセプターを備え、エミッターは、芯の端部又は上部に光を照射するように配置され、レセプターは、芯の上部で反射された光を捕えるように配置されている。これゆえに、検出は、芯の上部の外周面での赤外光の反射によって起こる。
【0021】
装置は、多孔質の芯を備えた揮発性物質の上記の容器に結合される。容器内に収容された揮発性物質は、蒸発器内で蒸発される揮発溶液の混合物の要素として、追加された又は混合された赤外光吸収添加物を含む。
【0022】
赤外線吸収体の溶液は芯の上部まで芯を浸し、ここでエミッターからの赤外光を受け、この赤外光は、乾燥している場合には、芯により反射され、液体を吸収して濡れている場合には、芯により吸収される。反射光の有無は、反射光を受けるように適切に配置された赤外線センサーにより検出される。
【0023】
好ましくは、800nmから2000nmの(近赤外線)範囲内の赤外光の最小化を可能にする顔料又は顔料の組合せが用いられる。同様に、これは、450nmから800nmの範囲内の吸収顔料による可視光の吸収を最小化するのに適している。
【0024】
赤外線エミッターは、赤外線吸収添加材の吸収性が最大になるような波長で最大の放射を生じるように選択されている。波長範囲は、好ましくは800nm及び1500nmである。加えて、誤った検出を防ぐために、赤外線エミッターの画角は40°と等しい、又はこれ以下であるべきである。
【0025】
この記載を補足し、本発明の性質のより良い理解を助けることを目的として、本発明の実施形態の好適な例とともに、一組の図面が、この記載の不可欠な一部として含まれ、以下の図は、例示的で、限定されない方法で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】結合されていない状態の、芯と、赤外エミッター/レセプターと、蒸発器の一部とを備えた容器が示される。(a)は、側面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は斜視図である。
【図2】芯と、赤外エミッター/レセプターと、蒸発器の一部とを備えた容器が通常の使用状態に結合された図1に類似した描写である。(a)は、斜視図であり、(b)は、正面図であり、(c)は側面図であり、(d)は断面図である。
【図3】エミッター及びレセプターが同一平面内に互いに角度をつけて位置する本発明の好適な実施形態の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、容器内に下端(9)を有し、揮発性の液体(10)内に浸された多孔質の芯(2)を従来のものと同様に備えた容器(1)を示す。芯(2)の上端(8)は、揮発性物質の空中への拡散を可能にするために容器から外に出ている。
【0028】
図を単純化するために、加熱手段(伝統的にはPTC抵抗である)を収容するケーシングを含み、蒸発器と容器がともに結合された時に芯の上端(8)が内部に位置する空隙(12)を有する蒸発器を単一の要素で示している。この同じ蒸発器(6)の要素は、また、赤外線エミッター(4)及び赤外線レセプター(5)を含む揮発性物質の存在を検出する手段(3)を収容している。
【0029】
この技術分野ではすでに知られているが、蒸発器と容器は、例えば、螺合されることにより、装置の通常の使用の間、ともに結合された状態に保たれ、芯が安定した位置に維持されるように構成されている。この好適な実施形態では、図2(d)に詳細に示すように、芯の上端(8)は、空隙(12)内に収容され、一方の側が加熱手段(7)の近くに、他方の側が検出手段の近くに配置される。
【0030】
エミッター及びレセプター(4,5)は、芯の上端の同じ側で互いに対向するように、所定の長さに亘って、互いに重なり合う。装置の使用中及び揮発性物質が存在しているときには、芯の全体は、少量の顔料又は赤外線吸収顔料の組合せを含む前記物質を完全に含浸した状態になる。
【0031】
エミッター(4)は、芯の上部(8)の外面に入射する赤外光を連続して発する。これに代えて、前記赤外光は、エミッター及びレセプターの使用可能期間を延ばすことを目的として、パルスにより発せられてもよい。
【0032】
前記光は、赤外線吸収顔料により吸収され、これにより、反射されず、赤外線レセプターに到達しない。しかしながら、芯の上部の揮発性物質の全て又は大部分が消費された場合には、赤外光は、芯の上部により反射され、赤外光の存在を検出するレセプター(5)に到達し、揮発性物質の寿命が来たことが示される。
【0033】
赤外線レセプターは、典型的には、例えば、利用者に物質の寿命を警告するLED又は音響表示器のような表示要素(図示せず)を駆動するため、当業者に知られた方法で用いられる赤外線感知フォトトランジスターを含む。
【0034】
エミッター及びレセプターは、正確な検出を保証するために適切な角度を形成し、芯の外周面に非常に近接している。
【0035】
赤外光エミッター及びレセプターは、図2に示すように、それらの軸線が平行であり、逆に芯の長尺軸に対して垂直であるように配置されている。
【0036】
図3に示す他の実施形態の例では、エミッター及びレセプターの軸が間に、レセプターが芯で反射された赤外光を捕捉するような角度を形成している。
【0037】
芯に対するこれらのエミッター及びレセプターの構成は、当該技術分野で知られた技術におけるように、屈折又は透過の代わりに、赤外光の反射を通じて検出が生じるのを可能にする。このようにして、既知のシステムの上述した欠点が回避される。
【0038】
本発明の好適な実施形態では、ボトル内に含まれる液体は、自然な状態で二相であって、液相(水)と、有機相(芳香剤)とにより構成される。赤外吸収添加物は、液相又は有機相に統合されるとよい。有機相(芳香剤、殺虫剤、・・・)が消耗された時にのみ、液相は芯に到達する。これゆえに、赤外吸収添加剤が液相に存在するときに、芯内に有機相が依然として存在する間は、赤外光は芯により反射される。有機相が消耗されたときに、液相は上端に到達し、赤外光を吸収できる。この場合、赤外線レセプターがもはやレセプター内で赤外光の存在を検出しなくなった時に、物質の寿命が来たことが検出される。
【0039】
反対の場合、すなわち、赤外吸収添加物が有機相に存在する場合には、液相が芯の上端に到達して、赤外光を反射し、赤外光の反射がレセプターに到達した時に、有機相の寿命が来たことが検出される。
【0040】
好ましくは、蒸発器は、前記エミッター及びレセプター(4,5)の直径方向反対に配置された、既知の赤外線吸収/反射特性(11)を有する表面を有する。図2(d)に示すように、芯(8)の上部は、表面(11)と、エミッター及びレセプターとの間に挿入される。これゆえに、エミッター及びレセプターの特定の位置により、装置に接続された容器がないことを検出でき、これゆえに前記状況を利用者に警告することができるという追加の利点を提供できる。
【0041】
赤外光の反射がないことにより寿命がきたことが検出される実施形態の場合では、表面(11)は、赤外光を反射しない材料から形成できる。このような状況では、反射光の存在が、表示手段を駆動する適切に配置された赤外線センサーにより検知されないように、赤外光は吸収材料(11)の表面に直接入射する。
【0042】
本発明の実施形態の逆の可能性が添付の従属項に記載される。
【0043】
この記載及び組となる図面により、当業者は、記載された本発明の実施形態が、本発明の目的の範囲内で多数の方法により組み合わせることを理解できるだろう。本発明は、いくつかのその好適な実施形態により記載されたが、当業者にとって、特許請求された発明の対象を越えることなく好適な実施形態において多数の変更が導かれることは明らかである。
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図2a)】

【図2b)】

【図2c)】

【図2d)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯を有する揮発性物質の容器を備え、前記芯の下端は前記容器内に収容され、上端は前記容器から外に出る物質寿命検出器を備えた揮発性物質蒸発器であって、
前記蒸発器は、前記揮発性物質の寿命を検出するための赤外線エミッター及び赤外線レセプターを、また、備え、
前記赤外線エミッターは、前記芯の上端で光を発するように配置され、前記レセプターは、前記芯の前記上端で反射された光を捕捉するように配置され、
前記レセプター内の光又は赤外光が存在しないことに基づき、前記揮発性物質の存在を決定するように形成された前記赤外レセプターに統合された電子手段を有する、ことを特徴とする揮発性物質蒸発器。
【請求項2】
請求項1記載の蒸発器であって、
前記容器は、高い赤外光吸収係数を有する揮発性物質を収容することを特徴とする蒸発器。
【請求項3】
請求項1記載の蒸発器であって、
前記容器は、赤外光吸収添加物を含む揮発性物質を収容することを特徴とする蒸発器。
【請求項4】
請求項1記載の蒸発器であって、
前記エミッター及びレセプター軸は、実質的に互いに平行であり、かつ、芯の長手方向の軸に垂直であることを特徴とする蒸発器。
【請求項5】
請求項1記載の蒸発器であって、
前記エミッター及びレセプターの軸は、前記芯の長手方向の軸に垂直な平面内に、前記レセプターが前記芯で反射された赤外光を捕捉するように、これらの間に適切な角度を形成するように、配置されていることを特徴とする蒸発器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の蒸発器であって、
前記赤外光はパルスで発せられることを特徴とする蒸発器。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の蒸発器であって、
前記揮発性物質は自然な状態で二相であり、有機相及び液相からなり、
前記有機相は、前記赤外線吸収添加物を含むことを特徴とする蒸発器。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の蒸発器であって、
前記揮発性物質は自然な状態で二相であり、有機相及び液相からなり、
前記液相は、前記赤外線吸収添加物を含むことを特徴とする蒸発器。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の蒸発器であって、
前記赤外線エミッター及びレセプターは、800nmと1500nmの間の範囲の波長で作動するために選択されていることを特徴とする蒸発器。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の蒸発器であって、
前記エミッター及びレセプターに面する赤外光反射材料からなる表面を有し、前記芯の上端が前記反射面と、前記エミッター及びレセプターの間に配置されるようになっていることを特徴とする蒸発器。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の蒸発器であって、
前記赤外線検出器と統合された指示要素を有し、
前記指示要素は、前記レセプターが前記芯又は前記表面で反射された赤外光を受けたときに駆動されるようになっていることを特徴とする蒸発器。
【請求項12】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の蒸発器であって、
前記エミッター及びレセプターに面する赤外光非反射材料からなる表面を有し、前記芯の上端が前記反射面と、前記エミッター及びレセプターの間に配置されるようになっていることを特徴とする蒸発器。
【請求項13】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の蒸発器であって、
前記赤外線検出器と統合された指示要素を有し、
前記指示要素は、前記レセプターが前記芯又は前記表面で反射された赤外光を受けなくなったときに駆動されるようになっていることを特徴とする蒸発器。

【図3】
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【公表番号】特表2011−519027(P2011−519027A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505496(P2011−505496)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054792
【国際公開番号】WO2009/130235
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(507208440)
【Fターム(参考)】