物質表現と光表現との間の量子情報変換
構造及び方法によって、光(160)の状態を使用して表される量子情報の、物質系(120)の状態を使用する表現への転換と、物質系(120)の状態によって表される量子情報の、光の状態を使用する表現(134)への転換と、誤りを最小限にするように物質及び光のもつれた状態を使用する量子情報をエラーが起こりにくく符号化することとが可能である。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
量子情報システムの多くの物理インプリメンテーションが提案されてきた。1つの種類の量子システムは、原子、イオン、分子又は他の物質の量子状態を使用してキュービット等の量子情報を表現する。このタイプのいくつかの特に有望な提案は、レーザ駆動光学遷移を介して物質キュービットにおいてユニタリ演算及び読出しを実施する。これらのシステムの例は、J. Cirac及びP. ZollerによってPhys. Rev. Lett. 74, 4091(1995)に記載されているようなイオントラップシステム、Jelezko他によってPhys. Rev. Lett. 92, 076401(2004)に、及びNizovtsev他によってOptics and Spectroscopy 99, 233(2005)に記載されているようなダイアモンドにおける窒素−空孔(N−V)欠陥を使用するシステム、並びにPazy他によってEurophys. Lett 62, 175(2003)に、又はNazir他によってPhys. Rev. Lett. 93, 150502(2004)に記載されているような単一の過剰電子による量子ドットにおけるパウリ−ブロッケード効果を使用するシステムを含む。
【0002】
他の提案された量子情報システムは、光子の量子状態を使用してキュービットを表す。たとえば、Knill、Laflamme及びMilburnは、Nature 409, 26(2001)において、線形光学によって操作される光キュービットを使用する量子計算システムを提案した。電磁誘導透過(EIT)を示すいくつかのシステムにおいて提供されるような非線形光−光相互作用を使用する光量子情報システムもまた開発された。これについては、たとえば、R.G. Beausoleil、W.J. Munro及びT.P. Spiller、Journal of Modern Optics 51, 1559(2004)を参照されたい。
【0003】
物質量子情報システム及び光子量子情報システムにはそれぞれ利点がある。たとえば、量子情報の格納には、本質的に移動する光子より静止した物質系の方が適切である可能性がある。対照的に、分離された物質系間の量子相互作用を実現することは、特に多くのキュービットを含むシステムでは、技術的課題及び構造的課題を提示する可能性がある。対照的に、従来の光学系を使用して、相互作用のために光子を選択し且つ集めることができる光学系を構築することができる。物質及び光子の両方を使用して量子情報を表すか又は伝達するハイブリッドシステムは、物質系の利点及び光子系の利点を使用することができる可能性がある。しかしながら、このようなハイブリッドシステムには、一般に、物質表現と光子表現との間で量子情報を伝達又は転換するための構造及び技法が必要となる。
【発明の開示】
【0004】
本発明の一態様によれば、プロセス及びシステムは、光モードと物質系との間で量子情報を転換することができる。1つのこのようなプロセスでは、光子の入力モードの状態が、物質系に書き込まれる量子情報を表すことができる。プロセスは、物質系を基底状態の組合せである既知の状態で初期化すること、物質系に対し、基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起を印加すること、及び、物質系から放出される光子の入力モード及び放出モードの結合状態を測定することを含む。結合状態の測定は、放出モード及び物質系の状態のもつれが解かれ、物質系の状態が量子情報によって決まるようなものとすることができる。
【0005】
本発明のこの態様によるシステムは、入力モードと、物質系と、励起系と、放出モードと、測定系とを含むことができる。入力モードは、量子情報を表すフォトニック状態のためのものである。物質系は、第1の状態及び基底状態を含む量子状態を有し、励起系は、基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる。放出モードは、物質系が励起状態から遷移するときに物質系から放出される光子のためのものである。測定系は、入力モード及び放出モードの結合状態を測定し、結合状態の測定は、放出モード及び物質系の状態のもつれが解かれ、結果としての物質系の状態が量子情報によって決まるようなものである。
【0006】
本発明の別の態様によれば、プロセスは、最初に、物質系の状態を使用して量子情報を表し、物質系の量子状態は第1の基底状態及び第2の基底状態を含む。そして、プロセスは、物質系に対し、基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起を印加し、光子が励起状態の減衰から放出され、その後放出モードに入る可能性が高い時間を待機し、物質系を対角に基づいて測定する。
【0007】
本発明の別の実施形態によるシステムは、物質系と、励起系と、放出モードと、測定系と、状態訂正系とを含む。物質系は、第1の基底状態及び第2の基底状態を含む量子状態を有し、励起系は、第1の基底状態及び第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる。状態訂正系を通過する放出モードは、物質系が励起状態から遷移するときに物質系から放出される光子のためのものである。測定系を、物質系を測定し状態訂正系を制御することによって、状態訂正系が測定系からの結果に従って選択される動作を実行するように構成することができる。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態は、量子情報を操作するプロセスを提供する。本プロセスは、第1の系の第1の状態及び第2の系の第2の状態を含む積である基底状態を含む表現を使用して、量子情報を符号化することを含む。第1の状態は、特に、第1の物質系及び第1の光子モードのもつれ状態であり、プロセスは第1の光子モードを測定して光子の損失を検出する。
【0009】
異なる図面において同じ参照符号を使用する場合、それらは同様の又は同一の項目を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
光の量子状態を使用して表される量子情報の、物質系の量子状態を使用する表現への転換と、物質系の状態によって表される量子情報の、光の状態を使用する表現への転換と、誤りを最小限にするか又は訂正するように物質及び光のもつれ状態を使用する量子情報の符号化とを可能にする構造及び方法を提供する。光から物質系へ量子情報を転換するプロセスを、本明細書では量子情報を「書き込む」と言う場合があり、物質系から光へ量子情報を転換するプロセスを、本明細書では量子情報を「読み出す」と呼ぶ場合がある。光及び物質のもつれ状態を使用する量子情報の符号化によって、たとえば、量子情報の読出し又は書込み中の光子損失に関連する誤りを最小限にすることができる。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による量子情報システム100の例示的な一実施形態を概略的に示す。システム100は、物質系110と総称する場合がある2つの物質系110−1及び110−2と、キュービット|q〉p又はフォトニック入力モード160の状態によって表される他の量子情報のソース150とを含む。概して、ソース150は、通信システム、量子コンピュータ、又は格納若しくはさらなる操作のために物質系110のうちの一方に書き込まれることが可能なキュービット|q〉pを表す光子状態を生成する任意の量子情報システムの一部とすることができる。キュービット|q〉pのためのモード160は、光子をソース150から光学系170に伝達し、たとえば自由空間光路、導波路又は光ファイバを使用して実装され得る。
【0012】
各物質系110は、量子状態|↑〉及び|↓〉を有し、それらは、物質キュービットの基底状態|0〉又は論理状態|1〉で識別され得る。例示的な一実施形態では、状態|↑〉及び|↓〉は、原子、分子、イオン、結晶欠陥又は他の任意のタイプの物質系に関連する長寿命の低いスピン射影状態である。物質系110に対する適切な状態及び量子エネルギー準位を有することができるいくつかの既知のシステムは、F. Jelezko他によってPhys. Rev. Lett. 92, 076401(2004)に、又はNizovtsev他によってOptics and Spectroscopy 99, 233(2005)に記載されているようなダイアモンドにおけるN−V欠陥、E. Pazy他によってEurophys. Lett. 62, 175(2003)に、又はNazir他によってPhys. Rev. Lett. 93, 150502(2004)に記載されているような単一の過剰電子による量子ドット、及びさまざまなトラップイオンシステム及び原子システムを含む。
【0013】
図2Aは、物質系110の一実施形態に対するエネルギー準位図200を示す。図2Aの実施形態では、各物質系110は、単一の光子の放出/吸収を通じて状態|↑〉及び|↓〉のうちの一方のみに結合する励起状態|e〉を有する。一般性を失うことなく、図2A及び以下の説明は、励起状態|e〉は状態|↓〉に結合し、励起状態|e〉と状態|↑〉との間の遷移は、たとえばエネルギーの保存又は角運動量の保存等の保存法則に基づく選択規則によって禁止されると仮定する。物質系110はまた、状態|e〉と|↑〉との間の結合は存在するが、状態|e〉と|↓〉との間の結合に比較すると弱い場合にも適切であり得る。
【0014】
図2Bは、物質系110の代替的な一実施形態に対するエネルギー準位図250を示す。図2Bの実施形態では、各物質系110の両量子状態|↑〉及び|↓〉は、それぞれ単一の光子の放出/吸収を通じて状態|↑〉及び|↓〉に結合するそれぞれの励起状態|↑e〉及び|↓e〉を有し、放出/吸収される光子は、遷移に関与する特定の状態|↑〉又は|↓〉に応じて異なる偏光を有する。一般性を失うことなく、以下では、励起状態|↑e〉は、水平偏光された光子状態|H〉の放出によって状態|↑〉に遷移し、励起状態|↓e〉は、垂直偏光された光子状態|V〉の放出によって状態|↓〉に遷移するものと仮定する。Lim他著「Repeat-Until-Success Linear Optics Distributed Quantum Computing」(PRL 95, 030505(2005)及びLim他著「Quantum Computing with Distant Single Photon Sources with Insurance」(quant-ph/0408043 v2(2004))は、このような物質系についてさらに記載している。
【0015】
図2A及び図2Bに示す挙動を示す物質系110は、それぞれフォトニックキュービットに対する単一レール表現及び偏光表現を使用するシステムに対して非常に適している。しかしながら、各タイプの表現は、異なる用途において利点を有する場合がある。たとえば、偏光に基づく場合、光子損失に対応する誤りは、W. J. Munro、K. Nemoto、R.G. Beausoleil及びT.P. SpillerによってPhys. Rev. A 71, 033819(2005)に、G.J. Milburn及びD.F. WallsによってPhys. Rev A 30, 56(1984)に、又はN. Imoto、H.A. Haus及びY. YamamotoによってPhys. Rev. A 32, 2287(1985) に記載されているような、偏光保存非吸収光子検出器を使用して比較的容易に識別することができる。
【0016】
物質系110−1及び110−2は、本明細書では光キャビティ120と総称することがある、それぞれの光キャビティ120−1及び120−2内にある。各光キャビティ120は、関連する物質系110の励起状態(複数可)が減衰すると放出される(複数可)光子の波長に対応する共振モードを有することが好ましい。光キャビティ120−1及び120−2はまた、それぞれの放出モード130−1及び130−2に放出光子を優先的に漏らすようにも構成される。光放出の非常に好ましい方向を有する漏れ光キャビティ120を、既知の量子光学技法を使用して構成することができる。光子を伝達するモード130は、自由空間光路、導波路又は光ファイバ等の光学系を含むことができる。
【0017】
図1における励起系140は、物質系110−1及び110−2に対し、物質系110−1及び110−2のうちの一方又は両方の状態を選択的に変化させるように作動する。たとえば、図2Aのエネルギー準位図を有する物質系110の場合、励起系140は、成分状態|↓〉から励起状態|e〉への遷移を誘導するが、成分状態|↑〉から励起状態|e〉への遷移はもたらさないπパルスを生成することができる。図2Bに対応するエネルギー準位を有する物質系110の場合、励起系140は、両状態|↑〉及び|↓〉をそれらのそれぞれの励起状態|↑e〉及び|↓e〉に効率的に駆動するπパルスを生成することができる。励起系140を、たとえば単一キュービット動作に対し、状態|↑〉と|↓〉との間の物質系110−1又は110−2の遷移を誘導するようにも使用することができるが、励起系140は、状態|↓〉と状態|↑〉との間の遷移に関連するエネルギーと、励起状態への遷移に関連するエネルギーとが異なることによって、異なる遷移に対する別々のサブシステムを必要とする場合がある。
【0018】
例示の目的で、以下では、物質系110−1及び110−2に対してダイアモンドにおけるN−V欠陥を使用するシステム100の例示的な一実施形態に重きを置く。N−V欠陥は、炭素(C)原子の代りであると共にダイアモンド結晶の空孔に隣接する窒素(N)原子に対応する。このような欠陥は、スピン−1システムのスピン射影−1、0及び1に対応する三重項接地状態を有することが知られており、接地状態は、第1の励起三重項状態への非常に双極子許容の光学遷移を有する。N−V欠陥に外部磁界を印加することによって、接地状態の縮退を破壊することができ、その後、三重項状態のうちの2つ(たとえば±1スピン射影状態)を、状態|↑〉及び|↓〉として使用することができる。第3のN−V欠陥状態(たとえばスピン射影0を有する)は、通常、物質系110が基底状態として状態|↑〉及び|↓〉を有するキュービットを表す場合、必要でないか又は使用されない。N−V欠陥の励起状態と接地/基底状態との間の遷移によって、光波長を有する光子が生成され、それによって、光学系170における従来の光学要素及びフォトダイオードの使用が可能になる。
【0019】
本発明の例示的な一実施形態におけるN−V欠陥は、高圧高温ダイアモンド(タイプ1b)のナノ微結晶内にある。径を約20nmとすることができるナノ微結晶を、たとえばフォトニック結晶内の欠陥としてウェハ又はダイの中又は上に形成することができる共振空洞120−1及び120−2の中に埋め込むことができる。そして、構造全体を、物質系110の状態に対し所望のコヒーレンス時間を提供する温度で維持することができる。一般に、N−V欠陥のスピン状態は、室温で数ミリ秒から低温(たとえば約2°K)で数秒までコヒーレントであり続けることが知られている。N−V欠陥110−1及び110−2に対する励起系140は、基底状態|↑〉及び|↓〉のうちの一方又は両方を効率的に励起するπパルスに対し短パルスを生成することができるレーザを含むことが好ましい。
【0020】
キュービットソース150は、物質系110のうちの一方に書き込まれるキュービット|q〉pを生成する。式1は、キュービット|q〉pに対する一般形式を示し、式中、c0及びc1は複素定数であり、状態|0〉p及び|1〉pは、任意の所望のフォトニック表現のキュービット基底状態である。たとえば、単一レール表現では、状態|0〉p及び|1〉pは、それぞれ0光子及び1光子を含むフォック状態に対応することができる。別法として、偏光に基づく場合、状態|0〉p及び|1〉pは、それぞれ水平線形偏光及び垂直線形偏光を有する単一光子状態|H〉p及び|V〉pに対応してもよい。
【0021】
【数1】
【0022】
光学系170は、任意選択で、光ネットワーク又はスイッチ152及び154を含む。光ネットワーク152は、物質系110に書き込まれる光キュービットに対し、複数の光入力モード160間で選択することができ、光ネットワーク154は、いずれの物質系110が書込み動作の標的であるかを選択するために放出モード130間で選択することができる。光学系170内の測定系300は、選択された光モード132及び162を、量子情報を選択された物質系110に転換し選択された物質系110からのモード132及び162の状態を分離するように測定する。図3A〜図3Dは、さらに後述する書込みプロセスに対して必要な測定を実行する、いくつかの適切な測定システムの例を示す。
【0023】
図4は、図1のシステム100が、物質系110のうちの一方にフォトニックキュービット|q〉pを書き込むときに実行することができる、書込みプロセス400のフローチャートを示す。プロセス400は、ステップ410において、キュービットが書き込まれる物質系110のうちの一方を選択することによって開始する。システム100において、光ネットワーク154は、放出光子の選択された光学系110−1又は110−2から測定系300への光路を提供することによって、所望の物質系110−1又は110−2を選択する。そして、ステップ420は、選択された物質系110を、式2に示す対角状態|+〉m等の既知の状態に初期化する。以下から理解されるように、別法として、後述する適切な測定値の変更又は状態訂正の適切な変更によって、選択された物質系100の他の既知の状態を使用することができる。
【0024】
【数2】
【0025】
励起系140は、ステップ430において、選択された物質系110に対しπパルスを印加することによって、物質系110の基底状態のうちの一方又は両方を関連する励起状態(複数可)になるように駆動する。例示的な一例として、以下では、物質系110が図2Aのエネルギー準位を有し、それによってステップ430は、選択された物質系が式3に示す状態|+〉'm になるように駆動すると仮定する。図2Bの例によって示すような他のエネルギー準位を有する物質系110を使用するシステムに対する書込みプロセスの変形形態は、本開示を鑑みて当業者には明らかとなろう。
【0026】
【数3】
【0027】
ステップ440中、プロセス400は、高い確率での物質系110の励起状態を提供するために十分な時間を待機することで、光子が放出され、周囲のキャビティ120がいかなる放出光子も放出モード130に解放する。上述したように、物質系110は、光子が結合されるキャビティモード内に光子を放出することによって減衰し、キャビティ120のキャビティパラメータは、高い確率でこのキャビティ光子が対応する放出モード130内に放出されるように設定されることが好ましい。ステップ440の待機時間は、概して、励起状態のいかなる振幅も高い確率で減衰し、キャビティ励起が待機ステップ440の最後までに放出されているようなものである必要がある。式3は、物質系110の減衰と、物質系110の放出モード130への光子の解放とからもたらされる状態を示す。式3において、状態|0〉e及び|1〉eは、選択された物質系110からの放出を含むモード130及び132の基底状態である。ステップ440の割り当てられた時間内に、励起状態が減衰しないか又はキャビティが光子をモード130に解放しないことによってもたらされる誤りを、さらに後述するように量子情報の符号化を通じて検出し訂正することができる。
【0028】
ステップ450は、選択された物質系110に書き込まれるフォトニックキュービットを選択し、選択されたキュービットに関連する光子を、測定系300の入力モード162に向ける。システム100は、選択されたフォトニックキュービットの入力モード162への光路を提供する光ネットワーク152を使用して、この選択を実施することができる。式4は、ステップ450の後の選択された入力モード162と、選択された物質系110と、対応する放出モード132とを含むシステムの状態|Ψ〉を与える。
【0029】
【数4】
【0030】
測定系300は、ステップ460において、モード132及び162の結合された状態を測定することによって、量子情報を物質状態に転換するように、物質状態から光子状態のもつれを解く。図3A、図3B、図3C及び図3Dは、それぞれ、測定ステップ460において選択可能な測定プロセスを実施するのに適している、異なる測定系300A、300B、300C及び300Dを示す。
【0031】
図3Aは、ベル状態測定を実行するベル状態分析器310を含む例示的な測定系300Aを示す。S.D. Barrett、P. Kok、K. Nemoto、R.G. Beausoleil、W.J. Munro及びT.P. SpillerはPhysical Review A, 71, 060302R(2005)において、またK. Nemoto及びW.J. MunroはPhys. Rev. Let. 93, 250502(2004)において、ベル状態分析器のいくつかの適切な実施態様を記載している。モード132及び162に対して実行されるベル状態測定は、式4の状態|Ψ〉を、表1に示すような測定結果によって決まるヒルベルト部分空間に射影する。たとえば、モード132及び162の結合された状態がベル状態(|00〉+|11〉)/√2であると識別する測定結果は、選択された物質系110を所望のキュービット状態c0|↑〉+c1|↓〉に射影する。他のベル状態を識別する測定結果は、選択された物質系110を、選択された物質系110に対して実行される1つ又は複数の単一キュービット動作によって、選択された物質系の所望の状態がもたらされるような状態に射影する。
【0032】
ステップ470は、状態訂正動作を実行して射影状態を変換する。例示的な一実施形態では、訂正動作は、パススルー若しくは無演算、ビット反転若しくは等価にNOT演算、又はZ演算のうちの1つ又は複数を含むことができる単一キュービット演算である。物質系に対するビット反転又はNOT演算は、基底状態を交替させる。たとえば、以下である。
【0033】
【数5】
【0034】
Z演算は、物質系の基底状態間の相対的な符号変更をもたらす。たとえば、|↑〉→|↑〉及び|↓〉→−|↓〉である。表1は、ベル状態測定からの種々の測定結果に対する適切な状態訂正動作を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
ステップ460に対する代替的な測定技法は、図3Bの測定系300Bを使用して、モード132及び162の結合された状態のパリティを測定し、その後、パリティ測定されたモード335及び365の結果としての状態のモード335及び365の対角基底状態への射影を測定する。これらの測定を実施するために、測定系300Bは、モード335及び365のそれぞれの対角基底における測定のために非吸収パリティ検出器320及び検出器325を含む。非吸収パリティ検出器320の動作及び実施態様は、モード132及び162においてキュービットに使用される表現によって決まる。たとえば、光子モード132及び162の両方において単一レール表現を使用することによって、パリティ検出器320は、モード132及び162が一括して整数の光子を含むか又は奇数の光子を含むかを測定することができるが、光子の総数は確定しない。W.J. Munro、K. Nemoto、R.G. Beausoleil及びT.P. Spillerは、Phys. Rev. A 71, 033819(2005) において、このタイプのパリティ測定を実施する技法及びシステムを記載している。パリティ測定は、式4の状態|Ψ〉を、測定結果によって決まるヒルベルト部分空間に射影する。
【0037】
そして、検出器325は、光子モード335及び365をそれぞれの対角基底において測定する。たとえば、モード335の状態の状態|+〉=(|0〉+|1〉)/√2又は|−〉=(|0〉−|1〉)/√2への射影である。対角測定を実行する検出器325の実施態様は、パリティ測定されたモード335及び365で使用される基底によって決まる。基底状態|H〉及び|V〉を有する偏光表現の場合、各検出器325を、単に、水平面から偏光軸45度の偏光子と、単一の光子を検出することができる光子検出器とを使用して実装することができる。単一レールベースの場合、「Quantum Optical State Converter」と題する米国特許出願第10/837,129号に記載されているような光−光変換器が、上述したような測定のためにモード132の状態を偏光表現に変換することができる。別法として、A.P. Lund及びT.C. RelphによってPhys. Rev. A 66, 032307(2004) において記載されているような検出器が、単一レート表現の対角に基づいてモード335又は365を直接測定することができる。
【0038】
パリティ測定及び対角測定の結果は、選択された物質系110を所望の状態にするように実行しなければならない単一キュービット演算(ある場合)ステップ470を示す。たとえば、パリティ測定とそれぞれの状態|+〉に対する射影とを使用して物質状態の光子状態からのもつれを解く例を示す表2は、種々の測定結果に対応する適切な状態訂正を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
図3Cは、制御されたNOTゲート330と検出器332及び334とを使用して、選択された物質系110の状態からの光子モード132及び162の状態のもつれを解く測定系300Cを示す。CNOTゲート330は、式5に示すように結合されたシステム状態|Ψ〉を変換する。そして、検出器332は、標的モード162が状態|0〉pであるか又は|1〉pであるかを判断する。モード162の測定結果0又は1は、システム状態|Ψ〉を表3に示す対応する射影状態に射影する。検出器334は、制御モード132の状態の対角基底状態、たとえば(|0〉e+|1〉e)/√2への射影を測定することによって、選択された物質系110からの光子モード132及び162のもつれを解く。制御モード及び標的モードの測定の結果の4つの異なる組合せは、所望の状態を生成するためにいずれの状態演算が必要であるかを示す。
【0041】
【数6】
【0042】
【表3】
【0043】
図3Dは、測定ステップ460を実行することができるさらに別の測定系300Dを示す。この実施形態では、ステップ460における測定は、モード132及び162を50−50ビームスプリッタ340に向けることで開始し、ビームスプリッタ340は、単一レール表現の光子基底状態に対し、式6に示すように式4のシステム状態|Ψ〉を変換する。非吸収パリティ検出器342は、各モードにおいて、0又は2つのみの光子を有している状態を、ビームスプリッタ340の出力モードのうちの1つにおいて1つの光子を有する状態から区別する。この測定は、システム状態を、式6の右辺の第1の角括弧の項又は第2の角括弧の項のいずれかに射影する。光スイッチ344は、このパリティ検査結果の制御下で、光子モードを、各モードが偶数の光子を有する場合は測定系346に、又は少なくとも1つのモードが正確に1つの光子を有する場合は測定系348に向ける。したがって、測定系346は、式6の角括弧の第1のセットに対応する状態に対して動作し、測定系348は、式6の第2の角括弧のセットに対応する状態に対して動作する。
【0044】
【数7】
【0045】
測定系346は、50−50ビームスプリッタ及びベル状態分析器を含む。0又は2つの光子を有する成分状態は、ビームスプリッタを通過し、状態c0|00〉+c1|11〉をもたらす。したがって、2つ(あり得る4つのうち)のうちの1方のベル状態のみがもたらされる可能性があり、それによって、2つのベル状態を区別するだけでよい測定系346のベル状態分析器は、図3Aのベル状態分析器310よりも複雑でなくてもよいことが分かる。このため、システム346におけるベル状態分析器からの測定結果は、表1における上部2つの状態のうちの1つを区別し、表1の2つの行は、システム346からの測定結果に関連する、結果としての状態及び訂正を与える。
【0046】
測定系348は、スイッチ344からの各光モードを測定する。これらの測定は、式6の基底{|0〉,|1〉}において実行されるべきであり、それは、ビームスプリッタ340の効果のために元の入力モード135及び165の対角に基づいて有効に測定する。システム348によって検出されるのは1つの光子のみであり、したがって、状態|01〉及び|10〉に対応するあり得る測定結果は2つのみであり、システム348は、状態|01〉と|10〉とを区別することができるいかなる検出器も使用することができる。たとえば、システム348は、光子数を解明する検出器を使用することができるが、真空状態と非真空状態とを単に区別する単純な「バケット」検出器であってもよい。システム348において、状態|01〉を識別する測定結果は、表1の行3の射影状態をもたらし、それには、表1の指示される行3のような状態訂正が必要である。他の測定結果は表1の行4の状態をもたらし、それには同様に表1の指示される行4のような状態訂正が必要である。
【0047】
量子情報の物質系から光学系への読出しは、上記書込み動作に対して説明したものと同様のシステム及び技法を採用することができる。たとえば、図5は、入力モード160のフォトニック状態|q〉INからの量子情報を物質系110に書き込むことを可能にする構成要素を含む量子コヒーレントシステム500のブロック図である。したがって、システム500において、書込み動作を、たとえば図4のプロセス400を使用して実行することができる。システム500はさらに、物質系110から読み出される情報を表すフォトニックキュービット|q〉OUTを生成することができる。上述したように、システム500の物質系110は、好ましい放出モード130を有するそれぞれの光キャビティ120内に収容される。同様に上述したような励起系140が、励起状態(複数可)、たとえば状態|e〉又は状態|↑e〉及び|↓e〉の減衰によって放出モード130及び対応する物質系110のもつれ量子状態がもたらされるように、物質系110を選択的に励起することができる。図1の光ネットワーク154に代わる光ネットワーク550は、放出モード130のうちの1つを選択することによって読出しプロセス又は書込みプロセスに対して物質系110を選択し、選択された放出モードからの光子を測定系300又は状態訂正系560にルーティングすることによって書込み又は読出しのいずれが実行されるかを選択することができる。
【0048】
システム500は、選択された物質系110の状態を測定することができる測定系540をさらに含む。測定系540の特定の実施態様は、概して、物質系110と、物質系110が量子情報を表すために使用する表現とによって決まる。測定系は、本発明の例示的な実施形態におけるようなNVダイアモンド欠陥を使用する系を含む種々の物質系に対する量子情報処理の分野において既知である。これについては、たとえば、Jelezko他、Phys. Rev. Lett. 92, 076401(2004)及びNizovtsev他、Optics and Spectroscopy 99, 233(2005)を参照されたい。さらに後述する読出し動作中、測定系540からの測定結果は、状態訂正系560が所望の出力光子状態|q〉OUTを生成するようにモード134の状態を変化させるか否かを制御する。
【0049】
図6は、システム500を使用して実行することができる読出しプロセス600のフローチャートである。プロセス600のステップ610において、たとえば、放出光子の選択された物質系110から出力モード134への経路を提供する光ネットワーク550の動作を通じて、物質系110が選択される。選択された物質系110は、読み出されるキュービットを表す状態|q〉mにあるものと仮定される。式7は、物質キュービットの一般形式を示し、式中、c0及びc1は、正規化要件に従う複素係数である。
【0050】
【数8】
【0051】
励起系140は、ステップ620において、πパルスを生成するか、又は他の方法で選択された物質系110を励起し、その後ステップ630は、励起状態の減衰からの光子放出を待つ。励起及び減衰によって、物質系の基底状態のうちの一方が対応する励起状態を有するか又は両方が対応する励起状態を有するかに応じて、式8A又は式8Bに示すような物質系110及び光子モード134のもつれ状態がもたらされる。
【0052】
【数9】
【0053】
ステップ640は、測定系540を使用して、対角に基づき選択された物質系110を測定する。対角に基づく測定が、選択された物質系110が状態(|↑〉+|↓〉)/√2にあることを示す場合、所望の光子状態|q〉OUTは、状態訂正の必要なしに生成されている。対角に基づく測定が、選択された物質系110が状態(|↑〉−|↓〉)/√2にあることを示す場合、状態訂正系560は、光子状態に対してZ演算を実行して所望の光子状態|q〉OUTを生成する。光子状態に対し、Z演算は、使用される基底状態に応じて、基底状態間の符号変化、たとえば|0〉→|0〉及び|1〉→−|1〉又は|H〉→|H〉及び|V〉→−|V〉をもたらす。
【0054】
図7は、2つの光モードのもつれ状態によって表されるキュービットを生成する読出し動作に対する補助光子状態を使用する代替的な量子コヒーレントシステム700を示す。システム700は、上述したような物質系110と、光キャビティ120と、励起系140と、光ネットワーク550と、測定系540とを含む。光子源710が、補助光子を生成し、補助光子は、光子モード715の既知の状態、たとえば|+〉p=(|0〉p+|1〉p)/√2を有する。パリティ検出器720、光子検出器730及び状態訂正系740が、読出しプロセス中に必要に応じて光子モード134及び715を測定及び操作してキュービット読出しを表す所望の出力状態を生成する。
【0055】
図8は、図7のシステム700を使用して実行することができる読出しプロセス800のフローチャートである。読出しプロセス800は、読み出される物質系110を選択するステップ810で開始する。光ネットワーク550は、選択された物質系110を収容するキャビティ120から放出される光子にモード134への経路を提供することによって、物質系110を選択することができる。ステップ820において、励起系140は、選択された物質系110を励起し、選択された物質系110はその後ステップ830中に減衰する。このため、ステップ830において、上記式8A及び式8Bに示すようなもつれた物質−光状態がもたらされる。
【0056】
そして、ステップ840は、光子源710を使用して、既知の状態の補助光子を生成する。式9は、補助光子モードの既知の状態が状態|+〉pである場合の光子モード134及び715における単一レール表現に対するシステム700の結果としての状態を示す。別法として、読出し動作は、補助モード715の他の既知の状態か、又は後述するような後続する測定又は状態訂正に対する適切な変更による代替的なキュービット表現を使用することができる。
【0057】
【数10】
【0058】
非吸収パリティ検出器720は、ステップ850において、光子モード134及び715の結合されたパリティを測定する。パリティ測定は、システム状態|Ψ〉を2つの状態のうちの1つに射影し、パリティ測定結果が状態を識別する。表4は、読出し動作800の一例に対する偶数測定結果及び奇数測定結果に関連する状態を示す。そして、ステップ860は、対角に基づいて選択された物質系110を測定し、それによって、光子モード715及び134の状態から物質系110の状態が分離される。ステップ850及びステップ860の測定の結果として、光子モード715及び134は、特定の状態がパリティ測定及び対角測定の結果によって予告される、4つの状態のうちの1つになる。訂正系740は、ステップ870において、予告された状態をもつれた光子によって表される所望のキュービット状態に変換する動作を実行することができる。表4は、本発明の例示的な実施形態の訂正演算を示す。
【0059】
【表4】
【0060】
上述した読出し及び書込み動作は、単一の物質系に対する書込み又は読出しの例を示した。書込み又は読出しは、他の系の状態ともつれる量子状態に対応する量子情報のものとすることができる。特に、書込み動作及び読出し動作は、書き込まれるか又は読み出される可能性があるか又は可能性のない1つ又は複数のキュービットともつれるキュービットに作用する。また、任意のタイプの他の系(図示せず)ともつれる光子の状態に関連する量子情報を、物質キュービットに書き込むことができ、それによって物質キュービットは他の系ともつれたままになる。同様に、他の系ともつれる物質キュービットを読み出して、他の系ともつれる光子状態を生成することができる。さらに、2つ以上の読出し動作又は書込み動作を、光学系及び物質系において並列に行ってもよく、書き込まれているか読み出されている状態はもつれた状態とすることができる。たとえば、多キュービットフォトニックもつれ状態を、完全に、または部分的に、すなわちフォトニックキュービットのいくつかだけを物質キュービットに書き込んでもよく、一方で書込み動作はもつれを保持する。同様に、多キュービットもつれ物質状態を完全に又は部分的にフォトニックキュービットに読み出すことができる。物質系の励起及び減衰によって、物質系及び光子モードのもつれた状態を単純にもたらすこともできる。
【0061】
本発明のさらなる態様によれば、物質系においてもつれたキュービットを読み出し且つ書き込み、もつれた物質−光状態を生成する能力によって、もつれた物質−光状態におけるキュービット又は他の量子情報の符号化が可能になり、それによって誤り訂正が容易になる。より具体的には、物質−光学系のもつれた状態を使用して量子情報を符号化することができ、それによって、1つ又は複数の光子が失われた場合に物質系の測定を使用して光子状態及び量子情報回復に対する動作を実行することができる。
【0062】
式10は、2つの物質系及び2つの関連する光子放出モードの間でもつれを使用するキュービット符号化の基底状態|0〉L及び|1〉Lの一例を示す。式11は、キュービット係数c0及びc1に関連する量子情報が、符号化状態|q〉Lにあるか又は等価的に密度行列ρを有する基底状態|0〉L及び|1〉Lといかに関連するかを示す。
【0063】
【数11】
【0064】
式11の符号化キュービットを、図9のシステム900等の量子コヒーレントシステムに物理的に組み込むことができる。システム900は、上述したようにそれぞれの放出モード130−1及び130−2を有する物質系110−1及び110−2をキャビティ120内に含む。式10の基底状態のインプリメンテーションを簡略化するために、各物質系110は、図2Bに示すようにそれぞれ状態|↑〉及び|↓〉に関連する2つの励起状態|e↑〉及び|e↓〉を有するタイプのものであり、それによって、物質系110は、励起された後、放出モード130のそれぞれの偏光状態|H〉及び|V〉で光子を放出する。基底状態|0〉Lは、システム900において、物質系130−1及び130−2のそれぞれを状態|+〉mに設定し、励起系140を使用して物質系110を励起し、励起状態が減衰してキャビティが光子を放出モードに解放するのを待つことによって、容易に生成することができる。基底状態|1〉Lは、システム900において、物質系110−1及び110−2のそれぞれを状態|−〉mに設定し、励起系140を使用して物質系110を励起し、励起状態及びキャビティモードが減衰するのを待つことによって、生成することができる。
【0065】
図10は、第1の物質系110−1の状態c0|↑〉1+c1|↓〉1によって表されるキュービットを、物質系及び光学系の状態を使用する符号化に変換するプロセス1000のフローチャートである。プロセス1000は、式11に示すように符号化が2つの物質系及び関連する放出モードを使用する一例を示すが、さらに後述するように、同様の技法を使用して、物質状態及び光状態の他の組合せを使用する他の符号化を構築してもよい。例示的な実施形態では、プロセス1000は、第2の物質系110−2を、第2の物質系110−2の基底状態の組合せである既知の状態、たとえば状態|+〉2=(|↑〉2+|↓〉2)/√2に設定するステップ1010で開始する。
【0066】
ステップ1020は、物質系110−1及び110−2の結合された状態に対しパリティ測定を実行する。パリティ測定を、物質系110の励起の後に放出光子を使用して実行することができ、測定が光子源を区別しない限り、ここでは破壊的な光子測定が許容可能である。偶数パリティ測定結果は、システム110−1及び110−2が状態c0|↑↑〉+c1|↓↓〉にあることを示し、奇数パリティ測定結果は、システム110−1及び110−2が状態c0|↑↓〉+c1|↓↑〉にあることを示す。状態訂正を実行するステップ1030は、パリティ測定1020が奇数パリティを見つけた場合にのみ、物質系110−2に対してビット反転又はNOT演算を実行し、それによって、ステップ1030の後、前回の測定結果に関わらず、物質系110−1及び110−2は状態c0|↑↑〉+c1|↓↓〉にある。
【0067】
ステップ1040は、物質系110−1及び110−2のそれぞれの状態に対してアダマール演算を実行する。そして、物質系110−1及び110−2は、状態
【0068】
【数12】
【0069】
になる。そして、ステップ1050は、物質系110を励起することができ、ステップ1060においてキャビティ120から放出モード130への光子の解放を待った後、式11の所望の符号化キュービットが生成される。
【0070】
プロセス1000を、キュービットの符号化においてより多くの物質系110を使用するように一般化することができる。たとえば、ステップ1010は、N−1個の物質系110−2〜110−Nをもつれ状態(|↑〉2…|↑〉N+|↓〉2…|↓〉N)/√2に設定することができ、その後、このもつれ状態は、ステップ1020のパリティ測定によって、符号化されるキュービットとさらにもつれる。この場合の状態訂正ステップ1030は、状態c0|↑〉1|↑〉2…|↑〉N+c1|↓〉1|↓〉2…|↓〉Nをもたらし、これは、最大N個の物質系110及びN個の関連する放出モード130を使用して符号化に変換することができる。
【0071】
各放出モード130は、例示的な実施形態では、偏光表現の場合、基底状態|H〉及び|V〉を使用する。偏光表現によって、図9の各量子非破壊(QND)検出器950−1又は950−2が、測定されたモード130−1又は130−2の偏光状態が表す量子情報を依然として保持しながら、モード130−1又は130−2が光子を含むか否かを検出することができる。このように、QND検出器950は、たとえば、光子の損失又は割り当てられた時間内での励起状態の減衰の失敗に対応する誤りを検出することができる。W.J. Munro、K. Nemoto、R.G. Beausoleil及びT.P. SpillerによってPhys. Rev. A 71, 033819(2005)に、G.J. Milburn及びD.F. WallsによってPhys. Rev A 30, 56(1984)に、又はN. Imoto、H.A. Haus及びY. YamamotoによってPhys. Rev. A 32 2287(1985) に記載されているような非破壊検出によって、測定は、誤りが検出されない場合の放出モードに対する量子動作を中断させない。
【0072】
量子情報、たとえば係数c0及びc1を、光子が光子モード130のいずれか又は両方から失われる場合であっても、符号化キュービット|q〉Lから回復することができる、ということを示すことができる。たとえば、QND検出器950−2が、システム300が最初に式11の密度行列ρに対応するキュービットを符号化したときに、光子がモード130−2から失われていることを識別する場合、システム900は、式12に示す非正規化密度行列ρ’に対応する非コヒーレント状態になる。元の量子情報を含むコヒーレント状態を、物質系110の測定を通じて回復することができる。たとえば、測定系550は、対角に基づいて物質系110−2を測定することができる。測定結果が、物質系110−02が状態|+〉=1/√2(|↑〉+|↓〉)にあることを示す場合、システム900は、コヒーレント状態c0|0〉L1−c1|1〉L1に対応する式13の形式の密度行列ρ+を有することになる。Z演算が、基底状態|0〉L1及び|1〉L1を使用する表現において元の量子情報を回復することができる。対角に基づく測定の結果が、物質系110−2が状態|−〉=1/√2(|↑〉−|↓〉)にあることを示す場合、システム900は、状態c0|0〉L1+c1|1〉L1に対応すると共に元の量子情報を回復する式14の形式の密度行列ρ-を有することになる。
【0073】
【数13】
【0074】
上記式10及び式11の符号化において、各基底状態|0〉L又は|1〉Lは、第1の物質系110−1及びその放出モード130−1のもつれ状態|0〉L1又は|1〉L1と、第2の物質系110−2及びその放出モード130−2のもつれ状態|0〉L2又は|1〉L2との積である。符号化キュービットの同様の基底状態を、3つ以上の状態の積として構築することができ、それらのそれぞれは、物質系110及び関連する放出モード130のもつれ状態である。このタイプの符号化は、2つ以上の光子が損失した後であっても、光子を失った放出モードに関連する物質系に対して対角測定を実行することによって、量子情報を回復することができる。測定結果が識別する状態訂正の後、結果としての状態は、より少ない数のもつれ状態の積である基底を使用して、元の量子情報を符号化する。
【0075】
別の代替的な符号化基底は、式15に示すような物質系のもつれていない状態を含む積を使用してもよい。もつれ放出モードからすべての光子が失われた場合であっても、損失光子ともつれていた物質系を測定して、もつれていない物質系を元の量子情報を表す状態に設定することができる。
【0076】
【数14】
【0077】
本発明について、特定の実施形態に関連して説明したが、この説明は、本発明の適用の一例に過ぎず、限定するものとして解釈されるべきではない。たとえば、他の系ともつれる可能性があるか又はもつれない可能性のあるキュービットに適用する読出しプロセス及び書込みプロセスについて別々に説明したが、それらを組み合わせることができる。特に、光キュービットを物質系に書き込み、その後、異なる物理特性を有し得る他の光キュービットに再び読み出してもよい。同様に、物質キュービットを光に読み出し、その後、異なる物理特性、たとえば異なる場所を有し得る他のいくつかの物質キュービットに再び書き込んでもよい。別法として、キュービットに関して例示した本発明の原理は、2値量子情報に限定されず、キューディット又はキューナット等の他の形態の量子情報に対して一般化することができる。開示した実施形態の特徴のさまざまな他の適応及び組合せは、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】光子状態を使用して表される量子情報を、物質系の量子状態を使用する表現に書き込むことができる、本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図2A】図1のシステムで使用されるいくつかの適切な物質系のエネルギー準位図である。
【図2B】図1のシステムで使用されるいくつかの適切な物質系のエネルギー準位図である。
【図3A】図1のシステムで使用するのに適している選択可能な測定系を示す図である。
【図3B】図1のシステムで使用するのに適している選択可能な測定系を示す図である。
【図3C】図1のシステムで使用するのに適している選択可能な測定系を示す図である。
【図3D】図1のシステムで使用するのに適している選択可能な測定系を示す図である。
【図4】最初に光子状態を使用して表された量子情報を物質系に書き込むプロセスのフローチャートである。
【図5】物質系の量子状態を使用する表現と光子状態を使用する表現との間で量子情報を転換することができる、本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図6】物質系から量子情報を読み出して、光子状態を使用して量子情報を符号化するプロセスのフローチャートである。
【図7】量子情報を読み出すと共に書き込むことができる本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図8】物質系から量子情報を読み出して、もつれ光子状態を使用して量子情報を符号化するプロセスのフローチャートである。
【図9】物質及び光のもつれ状態を使用してキュービットを、エラーが起こりにくく符号化するシステムのブロック図である。
【図10】物質及び光のもつれ状態を使用して量子情報を符号化するプロセスを示すフローチャートである。
【背景技術】
【0001】
量子情報システムの多くの物理インプリメンテーションが提案されてきた。1つの種類の量子システムは、原子、イオン、分子又は他の物質の量子状態を使用してキュービット等の量子情報を表現する。このタイプのいくつかの特に有望な提案は、レーザ駆動光学遷移を介して物質キュービットにおいてユニタリ演算及び読出しを実施する。これらのシステムの例は、J. Cirac及びP. ZollerによってPhys. Rev. Lett. 74, 4091(1995)に記載されているようなイオントラップシステム、Jelezko他によってPhys. Rev. Lett. 92, 076401(2004)に、及びNizovtsev他によってOptics and Spectroscopy 99, 233(2005)に記載されているようなダイアモンドにおける窒素−空孔(N−V)欠陥を使用するシステム、並びにPazy他によってEurophys. Lett 62, 175(2003)に、又はNazir他によってPhys. Rev. Lett. 93, 150502(2004)に記載されているような単一の過剰電子による量子ドットにおけるパウリ−ブロッケード効果を使用するシステムを含む。
【0002】
他の提案された量子情報システムは、光子の量子状態を使用してキュービットを表す。たとえば、Knill、Laflamme及びMilburnは、Nature 409, 26(2001)において、線形光学によって操作される光キュービットを使用する量子計算システムを提案した。電磁誘導透過(EIT)を示すいくつかのシステムにおいて提供されるような非線形光−光相互作用を使用する光量子情報システムもまた開発された。これについては、たとえば、R.G. Beausoleil、W.J. Munro及びT.P. Spiller、Journal of Modern Optics 51, 1559(2004)を参照されたい。
【0003】
物質量子情報システム及び光子量子情報システムにはそれぞれ利点がある。たとえば、量子情報の格納には、本質的に移動する光子より静止した物質系の方が適切である可能性がある。対照的に、分離された物質系間の量子相互作用を実現することは、特に多くのキュービットを含むシステムでは、技術的課題及び構造的課題を提示する可能性がある。対照的に、従来の光学系を使用して、相互作用のために光子を選択し且つ集めることができる光学系を構築することができる。物質及び光子の両方を使用して量子情報を表すか又は伝達するハイブリッドシステムは、物質系の利点及び光子系の利点を使用することができる可能性がある。しかしながら、このようなハイブリッドシステムには、一般に、物質表現と光子表現との間で量子情報を伝達又は転換するための構造及び技法が必要となる。
【発明の開示】
【0004】
本発明の一態様によれば、プロセス及びシステムは、光モードと物質系との間で量子情報を転換することができる。1つのこのようなプロセスでは、光子の入力モードの状態が、物質系に書き込まれる量子情報を表すことができる。プロセスは、物質系を基底状態の組合せである既知の状態で初期化すること、物質系に対し、基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起を印加すること、及び、物質系から放出される光子の入力モード及び放出モードの結合状態を測定することを含む。結合状態の測定は、放出モード及び物質系の状態のもつれが解かれ、物質系の状態が量子情報によって決まるようなものとすることができる。
【0005】
本発明のこの態様によるシステムは、入力モードと、物質系と、励起系と、放出モードと、測定系とを含むことができる。入力モードは、量子情報を表すフォトニック状態のためのものである。物質系は、第1の状態及び基底状態を含む量子状態を有し、励起系は、基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる。放出モードは、物質系が励起状態から遷移するときに物質系から放出される光子のためのものである。測定系は、入力モード及び放出モードの結合状態を測定し、結合状態の測定は、放出モード及び物質系の状態のもつれが解かれ、結果としての物質系の状態が量子情報によって決まるようなものである。
【0006】
本発明の別の態様によれば、プロセスは、最初に、物質系の状態を使用して量子情報を表し、物質系の量子状態は第1の基底状態及び第2の基底状態を含む。そして、プロセスは、物質系に対し、基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起を印加し、光子が励起状態の減衰から放出され、その後放出モードに入る可能性が高い時間を待機し、物質系を対角に基づいて測定する。
【0007】
本発明の別の実施形態によるシステムは、物質系と、励起系と、放出モードと、測定系と、状態訂正系とを含む。物質系は、第1の基底状態及び第2の基底状態を含む量子状態を有し、励起系は、第1の基底状態及び第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる。状態訂正系を通過する放出モードは、物質系が励起状態から遷移するときに物質系から放出される光子のためのものである。測定系を、物質系を測定し状態訂正系を制御することによって、状態訂正系が測定系からの結果に従って選択される動作を実行するように構成することができる。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態は、量子情報を操作するプロセスを提供する。本プロセスは、第1の系の第1の状態及び第2の系の第2の状態を含む積である基底状態を含む表現を使用して、量子情報を符号化することを含む。第1の状態は、特に、第1の物質系及び第1の光子モードのもつれ状態であり、プロセスは第1の光子モードを測定して光子の損失を検出する。
【0009】
異なる図面において同じ参照符号を使用する場合、それらは同様の又は同一の項目を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
光の量子状態を使用して表される量子情報の、物質系の量子状態を使用する表現への転換と、物質系の状態によって表される量子情報の、光の状態を使用する表現への転換と、誤りを最小限にするか又は訂正するように物質及び光のもつれ状態を使用する量子情報の符号化とを可能にする構造及び方法を提供する。光から物質系へ量子情報を転換するプロセスを、本明細書では量子情報を「書き込む」と言う場合があり、物質系から光へ量子情報を転換するプロセスを、本明細書では量子情報を「読み出す」と呼ぶ場合がある。光及び物質のもつれ状態を使用する量子情報の符号化によって、たとえば、量子情報の読出し又は書込み中の光子損失に関連する誤りを最小限にすることができる。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による量子情報システム100の例示的な一実施形態を概略的に示す。システム100は、物質系110と総称する場合がある2つの物質系110−1及び110−2と、キュービット|q〉p又はフォトニック入力モード160の状態によって表される他の量子情報のソース150とを含む。概して、ソース150は、通信システム、量子コンピュータ、又は格納若しくはさらなる操作のために物質系110のうちの一方に書き込まれることが可能なキュービット|q〉pを表す光子状態を生成する任意の量子情報システムの一部とすることができる。キュービット|q〉pのためのモード160は、光子をソース150から光学系170に伝達し、たとえば自由空間光路、導波路又は光ファイバを使用して実装され得る。
【0012】
各物質系110は、量子状態|↑〉及び|↓〉を有し、それらは、物質キュービットの基底状態|0〉又は論理状態|1〉で識別され得る。例示的な一実施形態では、状態|↑〉及び|↓〉は、原子、分子、イオン、結晶欠陥又は他の任意のタイプの物質系に関連する長寿命の低いスピン射影状態である。物質系110に対する適切な状態及び量子エネルギー準位を有することができるいくつかの既知のシステムは、F. Jelezko他によってPhys. Rev. Lett. 92, 076401(2004)に、又はNizovtsev他によってOptics and Spectroscopy 99, 233(2005)に記載されているようなダイアモンドにおけるN−V欠陥、E. Pazy他によってEurophys. Lett. 62, 175(2003)に、又はNazir他によってPhys. Rev. Lett. 93, 150502(2004)に記載されているような単一の過剰電子による量子ドット、及びさまざまなトラップイオンシステム及び原子システムを含む。
【0013】
図2Aは、物質系110の一実施形態に対するエネルギー準位図200を示す。図2Aの実施形態では、各物質系110は、単一の光子の放出/吸収を通じて状態|↑〉及び|↓〉のうちの一方のみに結合する励起状態|e〉を有する。一般性を失うことなく、図2A及び以下の説明は、励起状態|e〉は状態|↓〉に結合し、励起状態|e〉と状態|↑〉との間の遷移は、たとえばエネルギーの保存又は角運動量の保存等の保存法則に基づく選択規則によって禁止されると仮定する。物質系110はまた、状態|e〉と|↑〉との間の結合は存在するが、状態|e〉と|↓〉との間の結合に比較すると弱い場合にも適切であり得る。
【0014】
図2Bは、物質系110の代替的な一実施形態に対するエネルギー準位図250を示す。図2Bの実施形態では、各物質系110の両量子状態|↑〉及び|↓〉は、それぞれ単一の光子の放出/吸収を通じて状態|↑〉及び|↓〉に結合するそれぞれの励起状態|↑e〉及び|↓e〉を有し、放出/吸収される光子は、遷移に関与する特定の状態|↑〉又は|↓〉に応じて異なる偏光を有する。一般性を失うことなく、以下では、励起状態|↑e〉は、水平偏光された光子状態|H〉の放出によって状態|↑〉に遷移し、励起状態|↓e〉は、垂直偏光された光子状態|V〉の放出によって状態|↓〉に遷移するものと仮定する。Lim他著「Repeat-Until-Success Linear Optics Distributed Quantum Computing」(PRL 95, 030505(2005)及びLim他著「Quantum Computing with Distant Single Photon Sources with Insurance」(quant-ph/0408043 v2(2004))は、このような物質系についてさらに記載している。
【0015】
図2A及び図2Bに示す挙動を示す物質系110は、それぞれフォトニックキュービットに対する単一レール表現及び偏光表現を使用するシステムに対して非常に適している。しかしながら、各タイプの表現は、異なる用途において利点を有する場合がある。たとえば、偏光に基づく場合、光子損失に対応する誤りは、W. J. Munro、K. Nemoto、R.G. Beausoleil及びT.P. SpillerによってPhys. Rev. A 71, 033819(2005)に、G.J. Milburn及びD.F. WallsによってPhys. Rev A 30, 56(1984)に、又はN. Imoto、H.A. Haus及びY. YamamotoによってPhys. Rev. A 32, 2287(1985) に記載されているような、偏光保存非吸収光子検出器を使用して比較的容易に識別することができる。
【0016】
物質系110−1及び110−2は、本明細書では光キャビティ120と総称することがある、それぞれの光キャビティ120−1及び120−2内にある。各光キャビティ120は、関連する物質系110の励起状態(複数可)が減衰すると放出される(複数可)光子の波長に対応する共振モードを有することが好ましい。光キャビティ120−1及び120−2はまた、それぞれの放出モード130−1及び130−2に放出光子を優先的に漏らすようにも構成される。光放出の非常に好ましい方向を有する漏れ光キャビティ120を、既知の量子光学技法を使用して構成することができる。光子を伝達するモード130は、自由空間光路、導波路又は光ファイバ等の光学系を含むことができる。
【0017】
図1における励起系140は、物質系110−1及び110−2に対し、物質系110−1及び110−2のうちの一方又は両方の状態を選択的に変化させるように作動する。たとえば、図2Aのエネルギー準位図を有する物質系110の場合、励起系140は、成分状態|↓〉から励起状態|e〉への遷移を誘導するが、成分状態|↑〉から励起状態|e〉への遷移はもたらさないπパルスを生成することができる。図2Bに対応するエネルギー準位を有する物質系110の場合、励起系140は、両状態|↑〉及び|↓〉をそれらのそれぞれの励起状態|↑e〉及び|↓e〉に効率的に駆動するπパルスを生成することができる。励起系140を、たとえば単一キュービット動作に対し、状態|↑〉と|↓〉との間の物質系110−1又は110−2の遷移を誘導するようにも使用することができるが、励起系140は、状態|↓〉と状態|↑〉との間の遷移に関連するエネルギーと、励起状態への遷移に関連するエネルギーとが異なることによって、異なる遷移に対する別々のサブシステムを必要とする場合がある。
【0018】
例示の目的で、以下では、物質系110−1及び110−2に対してダイアモンドにおけるN−V欠陥を使用するシステム100の例示的な一実施形態に重きを置く。N−V欠陥は、炭素(C)原子の代りであると共にダイアモンド結晶の空孔に隣接する窒素(N)原子に対応する。このような欠陥は、スピン−1システムのスピン射影−1、0及び1に対応する三重項接地状態を有することが知られており、接地状態は、第1の励起三重項状態への非常に双極子許容の光学遷移を有する。N−V欠陥に外部磁界を印加することによって、接地状態の縮退を破壊することができ、その後、三重項状態のうちの2つ(たとえば±1スピン射影状態)を、状態|↑〉及び|↓〉として使用することができる。第3のN−V欠陥状態(たとえばスピン射影0を有する)は、通常、物質系110が基底状態として状態|↑〉及び|↓〉を有するキュービットを表す場合、必要でないか又は使用されない。N−V欠陥の励起状態と接地/基底状態との間の遷移によって、光波長を有する光子が生成され、それによって、光学系170における従来の光学要素及びフォトダイオードの使用が可能になる。
【0019】
本発明の例示的な一実施形態におけるN−V欠陥は、高圧高温ダイアモンド(タイプ1b)のナノ微結晶内にある。径を約20nmとすることができるナノ微結晶を、たとえばフォトニック結晶内の欠陥としてウェハ又はダイの中又は上に形成することができる共振空洞120−1及び120−2の中に埋め込むことができる。そして、構造全体を、物質系110の状態に対し所望のコヒーレンス時間を提供する温度で維持することができる。一般に、N−V欠陥のスピン状態は、室温で数ミリ秒から低温(たとえば約2°K)で数秒までコヒーレントであり続けることが知られている。N−V欠陥110−1及び110−2に対する励起系140は、基底状態|↑〉及び|↓〉のうちの一方又は両方を効率的に励起するπパルスに対し短パルスを生成することができるレーザを含むことが好ましい。
【0020】
キュービットソース150は、物質系110のうちの一方に書き込まれるキュービット|q〉pを生成する。式1は、キュービット|q〉pに対する一般形式を示し、式中、c0及びc1は複素定数であり、状態|0〉p及び|1〉pは、任意の所望のフォトニック表現のキュービット基底状態である。たとえば、単一レール表現では、状態|0〉p及び|1〉pは、それぞれ0光子及び1光子を含むフォック状態に対応することができる。別法として、偏光に基づく場合、状態|0〉p及び|1〉pは、それぞれ水平線形偏光及び垂直線形偏光を有する単一光子状態|H〉p及び|V〉pに対応してもよい。
【0021】
【数1】
【0022】
光学系170は、任意選択で、光ネットワーク又はスイッチ152及び154を含む。光ネットワーク152は、物質系110に書き込まれる光キュービットに対し、複数の光入力モード160間で選択することができ、光ネットワーク154は、いずれの物質系110が書込み動作の標的であるかを選択するために放出モード130間で選択することができる。光学系170内の測定系300は、選択された光モード132及び162を、量子情報を選択された物質系110に転換し選択された物質系110からのモード132及び162の状態を分離するように測定する。図3A〜図3Dは、さらに後述する書込みプロセスに対して必要な測定を実行する、いくつかの適切な測定システムの例を示す。
【0023】
図4は、図1のシステム100が、物質系110のうちの一方にフォトニックキュービット|q〉pを書き込むときに実行することができる、書込みプロセス400のフローチャートを示す。プロセス400は、ステップ410において、キュービットが書き込まれる物質系110のうちの一方を選択することによって開始する。システム100において、光ネットワーク154は、放出光子の選択された光学系110−1又は110−2から測定系300への光路を提供することによって、所望の物質系110−1又は110−2を選択する。そして、ステップ420は、選択された物質系110を、式2に示す対角状態|+〉m等の既知の状態に初期化する。以下から理解されるように、別法として、後述する適切な測定値の変更又は状態訂正の適切な変更によって、選択された物質系100の他の既知の状態を使用することができる。
【0024】
【数2】
【0025】
励起系140は、ステップ430において、選択された物質系110に対しπパルスを印加することによって、物質系110の基底状態のうちの一方又は両方を関連する励起状態(複数可)になるように駆動する。例示的な一例として、以下では、物質系110が図2Aのエネルギー準位を有し、それによってステップ430は、選択された物質系が式3に示す状態|+〉'm になるように駆動すると仮定する。図2Bの例によって示すような他のエネルギー準位を有する物質系110を使用するシステムに対する書込みプロセスの変形形態は、本開示を鑑みて当業者には明らかとなろう。
【0026】
【数3】
【0027】
ステップ440中、プロセス400は、高い確率での物質系110の励起状態を提供するために十分な時間を待機することで、光子が放出され、周囲のキャビティ120がいかなる放出光子も放出モード130に解放する。上述したように、物質系110は、光子が結合されるキャビティモード内に光子を放出することによって減衰し、キャビティ120のキャビティパラメータは、高い確率でこのキャビティ光子が対応する放出モード130内に放出されるように設定されることが好ましい。ステップ440の待機時間は、概して、励起状態のいかなる振幅も高い確率で減衰し、キャビティ励起が待機ステップ440の最後までに放出されているようなものである必要がある。式3は、物質系110の減衰と、物質系110の放出モード130への光子の解放とからもたらされる状態を示す。式3において、状態|0〉e及び|1〉eは、選択された物質系110からの放出を含むモード130及び132の基底状態である。ステップ440の割り当てられた時間内に、励起状態が減衰しないか又はキャビティが光子をモード130に解放しないことによってもたらされる誤りを、さらに後述するように量子情報の符号化を通じて検出し訂正することができる。
【0028】
ステップ450は、選択された物質系110に書き込まれるフォトニックキュービットを選択し、選択されたキュービットに関連する光子を、測定系300の入力モード162に向ける。システム100は、選択されたフォトニックキュービットの入力モード162への光路を提供する光ネットワーク152を使用して、この選択を実施することができる。式4は、ステップ450の後の選択された入力モード162と、選択された物質系110と、対応する放出モード132とを含むシステムの状態|Ψ〉を与える。
【0029】
【数4】
【0030】
測定系300は、ステップ460において、モード132及び162の結合された状態を測定することによって、量子情報を物質状態に転換するように、物質状態から光子状態のもつれを解く。図3A、図3B、図3C及び図3Dは、それぞれ、測定ステップ460において選択可能な測定プロセスを実施するのに適している、異なる測定系300A、300B、300C及び300Dを示す。
【0031】
図3Aは、ベル状態測定を実行するベル状態分析器310を含む例示的な測定系300Aを示す。S.D. Barrett、P. Kok、K. Nemoto、R.G. Beausoleil、W.J. Munro及びT.P. SpillerはPhysical Review A, 71, 060302R(2005)において、またK. Nemoto及びW.J. MunroはPhys. Rev. Let. 93, 250502(2004)において、ベル状態分析器のいくつかの適切な実施態様を記載している。モード132及び162に対して実行されるベル状態測定は、式4の状態|Ψ〉を、表1に示すような測定結果によって決まるヒルベルト部分空間に射影する。たとえば、モード132及び162の結合された状態がベル状態(|00〉+|11〉)/√2であると識別する測定結果は、選択された物質系110を所望のキュービット状態c0|↑〉+c1|↓〉に射影する。他のベル状態を識別する測定結果は、選択された物質系110を、選択された物質系110に対して実行される1つ又は複数の単一キュービット動作によって、選択された物質系の所望の状態がもたらされるような状態に射影する。
【0032】
ステップ470は、状態訂正動作を実行して射影状態を変換する。例示的な一実施形態では、訂正動作は、パススルー若しくは無演算、ビット反転若しくは等価にNOT演算、又はZ演算のうちの1つ又は複数を含むことができる単一キュービット演算である。物質系に対するビット反転又はNOT演算は、基底状態を交替させる。たとえば、以下である。
【0033】
【数5】
【0034】
Z演算は、物質系の基底状態間の相対的な符号変更をもたらす。たとえば、|↑〉→|↑〉及び|↓〉→−|↓〉である。表1は、ベル状態測定からの種々の測定結果に対する適切な状態訂正動作を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
ステップ460に対する代替的な測定技法は、図3Bの測定系300Bを使用して、モード132及び162の結合された状態のパリティを測定し、その後、パリティ測定されたモード335及び365の結果としての状態のモード335及び365の対角基底状態への射影を測定する。これらの測定を実施するために、測定系300Bは、モード335及び365のそれぞれの対角基底における測定のために非吸収パリティ検出器320及び検出器325を含む。非吸収パリティ検出器320の動作及び実施態様は、モード132及び162においてキュービットに使用される表現によって決まる。たとえば、光子モード132及び162の両方において単一レール表現を使用することによって、パリティ検出器320は、モード132及び162が一括して整数の光子を含むか又は奇数の光子を含むかを測定することができるが、光子の総数は確定しない。W.J. Munro、K. Nemoto、R.G. Beausoleil及びT.P. Spillerは、Phys. Rev. A 71, 033819(2005) において、このタイプのパリティ測定を実施する技法及びシステムを記載している。パリティ測定は、式4の状態|Ψ〉を、測定結果によって決まるヒルベルト部分空間に射影する。
【0037】
そして、検出器325は、光子モード335及び365をそれぞれの対角基底において測定する。たとえば、モード335の状態の状態|+〉=(|0〉+|1〉)/√2又は|−〉=(|0〉−|1〉)/√2への射影である。対角測定を実行する検出器325の実施態様は、パリティ測定されたモード335及び365で使用される基底によって決まる。基底状態|H〉及び|V〉を有する偏光表現の場合、各検出器325を、単に、水平面から偏光軸45度の偏光子と、単一の光子を検出することができる光子検出器とを使用して実装することができる。単一レールベースの場合、「Quantum Optical State Converter」と題する米国特許出願第10/837,129号に記載されているような光−光変換器が、上述したような測定のためにモード132の状態を偏光表現に変換することができる。別法として、A.P. Lund及びT.C. RelphによってPhys. Rev. A 66, 032307(2004) において記載されているような検出器が、単一レート表現の対角に基づいてモード335又は365を直接測定することができる。
【0038】
パリティ測定及び対角測定の結果は、選択された物質系110を所望の状態にするように実行しなければならない単一キュービット演算(ある場合)ステップ470を示す。たとえば、パリティ測定とそれぞれの状態|+〉に対する射影とを使用して物質状態の光子状態からのもつれを解く例を示す表2は、種々の測定結果に対応する適切な状態訂正を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
図3Cは、制御されたNOTゲート330と検出器332及び334とを使用して、選択された物質系110の状態からの光子モード132及び162の状態のもつれを解く測定系300Cを示す。CNOTゲート330は、式5に示すように結合されたシステム状態|Ψ〉を変換する。そして、検出器332は、標的モード162が状態|0〉pであるか又は|1〉pであるかを判断する。モード162の測定結果0又は1は、システム状態|Ψ〉を表3に示す対応する射影状態に射影する。検出器334は、制御モード132の状態の対角基底状態、たとえば(|0〉e+|1〉e)/√2への射影を測定することによって、選択された物質系110からの光子モード132及び162のもつれを解く。制御モード及び標的モードの測定の結果の4つの異なる組合せは、所望の状態を生成するためにいずれの状態演算が必要であるかを示す。
【0041】
【数6】
【0042】
【表3】
【0043】
図3Dは、測定ステップ460を実行することができるさらに別の測定系300Dを示す。この実施形態では、ステップ460における測定は、モード132及び162を50−50ビームスプリッタ340に向けることで開始し、ビームスプリッタ340は、単一レール表現の光子基底状態に対し、式6に示すように式4のシステム状態|Ψ〉を変換する。非吸収パリティ検出器342は、各モードにおいて、0又は2つのみの光子を有している状態を、ビームスプリッタ340の出力モードのうちの1つにおいて1つの光子を有する状態から区別する。この測定は、システム状態を、式6の右辺の第1の角括弧の項又は第2の角括弧の項のいずれかに射影する。光スイッチ344は、このパリティ検査結果の制御下で、光子モードを、各モードが偶数の光子を有する場合は測定系346に、又は少なくとも1つのモードが正確に1つの光子を有する場合は測定系348に向ける。したがって、測定系346は、式6の角括弧の第1のセットに対応する状態に対して動作し、測定系348は、式6の第2の角括弧のセットに対応する状態に対して動作する。
【0044】
【数7】
【0045】
測定系346は、50−50ビームスプリッタ及びベル状態分析器を含む。0又は2つの光子を有する成分状態は、ビームスプリッタを通過し、状態c0|00〉+c1|11〉をもたらす。したがって、2つ(あり得る4つのうち)のうちの1方のベル状態のみがもたらされる可能性があり、それによって、2つのベル状態を区別するだけでよい測定系346のベル状態分析器は、図3Aのベル状態分析器310よりも複雑でなくてもよいことが分かる。このため、システム346におけるベル状態分析器からの測定結果は、表1における上部2つの状態のうちの1つを区別し、表1の2つの行は、システム346からの測定結果に関連する、結果としての状態及び訂正を与える。
【0046】
測定系348は、スイッチ344からの各光モードを測定する。これらの測定は、式6の基底{|0〉,|1〉}において実行されるべきであり、それは、ビームスプリッタ340の効果のために元の入力モード135及び165の対角に基づいて有効に測定する。システム348によって検出されるのは1つの光子のみであり、したがって、状態|01〉及び|10〉に対応するあり得る測定結果は2つのみであり、システム348は、状態|01〉と|10〉とを区別することができるいかなる検出器も使用することができる。たとえば、システム348は、光子数を解明する検出器を使用することができるが、真空状態と非真空状態とを単に区別する単純な「バケット」検出器であってもよい。システム348において、状態|01〉を識別する測定結果は、表1の行3の射影状態をもたらし、それには、表1の指示される行3のような状態訂正が必要である。他の測定結果は表1の行4の状態をもたらし、それには同様に表1の指示される行4のような状態訂正が必要である。
【0047】
量子情報の物質系から光学系への読出しは、上記書込み動作に対して説明したものと同様のシステム及び技法を採用することができる。たとえば、図5は、入力モード160のフォトニック状態|q〉INからの量子情報を物質系110に書き込むことを可能にする構成要素を含む量子コヒーレントシステム500のブロック図である。したがって、システム500において、書込み動作を、たとえば図4のプロセス400を使用して実行することができる。システム500はさらに、物質系110から読み出される情報を表すフォトニックキュービット|q〉OUTを生成することができる。上述したように、システム500の物質系110は、好ましい放出モード130を有するそれぞれの光キャビティ120内に収容される。同様に上述したような励起系140が、励起状態(複数可)、たとえば状態|e〉又は状態|↑e〉及び|↓e〉の減衰によって放出モード130及び対応する物質系110のもつれ量子状態がもたらされるように、物質系110を選択的に励起することができる。図1の光ネットワーク154に代わる光ネットワーク550は、放出モード130のうちの1つを選択することによって読出しプロセス又は書込みプロセスに対して物質系110を選択し、選択された放出モードからの光子を測定系300又は状態訂正系560にルーティングすることによって書込み又は読出しのいずれが実行されるかを選択することができる。
【0048】
システム500は、選択された物質系110の状態を測定することができる測定系540をさらに含む。測定系540の特定の実施態様は、概して、物質系110と、物質系110が量子情報を表すために使用する表現とによって決まる。測定系は、本発明の例示的な実施形態におけるようなNVダイアモンド欠陥を使用する系を含む種々の物質系に対する量子情報処理の分野において既知である。これについては、たとえば、Jelezko他、Phys. Rev. Lett. 92, 076401(2004)及びNizovtsev他、Optics and Spectroscopy 99, 233(2005)を参照されたい。さらに後述する読出し動作中、測定系540からの測定結果は、状態訂正系560が所望の出力光子状態|q〉OUTを生成するようにモード134の状態を変化させるか否かを制御する。
【0049】
図6は、システム500を使用して実行することができる読出しプロセス600のフローチャートである。プロセス600のステップ610において、たとえば、放出光子の選択された物質系110から出力モード134への経路を提供する光ネットワーク550の動作を通じて、物質系110が選択される。選択された物質系110は、読み出されるキュービットを表す状態|q〉mにあるものと仮定される。式7は、物質キュービットの一般形式を示し、式中、c0及びc1は、正規化要件に従う複素係数である。
【0050】
【数8】
【0051】
励起系140は、ステップ620において、πパルスを生成するか、又は他の方法で選択された物質系110を励起し、その後ステップ630は、励起状態の減衰からの光子放出を待つ。励起及び減衰によって、物質系の基底状態のうちの一方が対応する励起状態を有するか又は両方が対応する励起状態を有するかに応じて、式8A又は式8Bに示すような物質系110及び光子モード134のもつれ状態がもたらされる。
【0052】
【数9】
【0053】
ステップ640は、測定系540を使用して、対角に基づき選択された物質系110を測定する。対角に基づく測定が、選択された物質系110が状態(|↑〉+|↓〉)/√2にあることを示す場合、所望の光子状態|q〉OUTは、状態訂正の必要なしに生成されている。対角に基づく測定が、選択された物質系110が状態(|↑〉−|↓〉)/√2にあることを示す場合、状態訂正系560は、光子状態に対してZ演算を実行して所望の光子状態|q〉OUTを生成する。光子状態に対し、Z演算は、使用される基底状態に応じて、基底状態間の符号変化、たとえば|0〉→|0〉及び|1〉→−|1〉又は|H〉→|H〉及び|V〉→−|V〉をもたらす。
【0054】
図7は、2つの光モードのもつれ状態によって表されるキュービットを生成する読出し動作に対する補助光子状態を使用する代替的な量子コヒーレントシステム700を示す。システム700は、上述したような物質系110と、光キャビティ120と、励起系140と、光ネットワーク550と、測定系540とを含む。光子源710が、補助光子を生成し、補助光子は、光子モード715の既知の状態、たとえば|+〉p=(|0〉p+|1〉p)/√2を有する。パリティ検出器720、光子検出器730及び状態訂正系740が、読出しプロセス中に必要に応じて光子モード134及び715を測定及び操作してキュービット読出しを表す所望の出力状態を生成する。
【0055】
図8は、図7のシステム700を使用して実行することができる読出しプロセス800のフローチャートである。読出しプロセス800は、読み出される物質系110を選択するステップ810で開始する。光ネットワーク550は、選択された物質系110を収容するキャビティ120から放出される光子にモード134への経路を提供することによって、物質系110を選択することができる。ステップ820において、励起系140は、選択された物質系110を励起し、選択された物質系110はその後ステップ830中に減衰する。このため、ステップ830において、上記式8A及び式8Bに示すようなもつれた物質−光状態がもたらされる。
【0056】
そして、ステップ840は、光子源710を使用して、既知の状態の補助光子を生成する。式9は、補助光子モードの既知の状態が状態|+〉pである場合の光子モード134及び715における単一レール表現に対するシステム700の結果としての状態を示す。別法として、読出し動作は、補助モード715の他の既知の状態か、又は後述するような後続する測定又は状態訂正に対する適切な変更による代替的なキュービット表現を使用することができる。
【0057】
【数10】
【0058】
非吸収パリティ検出器720は、ステップ850において、光子モード134及び715の結合されたパリティを測定する。パリティ測定は、システム状態|Ψ〉を2つの状態のうちの1つに射影し、パリティ測定結果が状態を識別する。表4は、読出し動作800の一例に対する偶数測定結果及び奇数測定結果に関連する状態を示す。そして、ステップ860は、対角に基づいて選択された物質系110を測定し、それによって、光子モード715及び134の状態から物質系110の状態が分離される。ステップ850及びステップ860の測定の結果として、光子モード715及び134は、特定の状態がパリティ測定及び対角測定の結果によって予告される、4つの状態のうちの1つになる。訂正系740は、ステップ870において、予告された状態をもつれた光子によって表される所望のキュービット状態に変換する動作を実行することができる。表4は、本発明の例示的な実施形態の訂正演算を示す。
【0059】
【表4】
【0060】
上述した読出し及び書込み動作は、単一の物質系に対する書込み又は読出しの例を示した。書込み又は読出しは、他の系の状態ともつれる量子状態に対応する量子情報のものとすることができる。特に、書込み動作及び読出し動作は、書き込まれるか又は読み出される可能性があるか又は可能性のない1つ又は複数のキュービットともつれるキュービットに作用する。また、任意のタイプの他の系(図示せず)ともつれる光子の状態に関連する量子情報を、物質キュービットに書き込むことができ、それによって物質キュービットは他の系ともつれたままになる。同様に、他の系ともつれる物質キュービットを読み出して、他の系ともつれる光子状態を生成することができる。さらに、2つ以上の読出し動作又は書込み動作を、光学系及び物質系において並列に行ってもよく、書き込まれているか読み出されている状態はもつれた状態とすることができる。たとえば、多キュービットフォトニックもつれ状態を、完全に、または部分的に、すなわちフォトニックキュービットのいくつかだけを物質キュービットに書き込んでもよく、一方で書込み動作はもつれを保持する。同様に、多キュービットもつれ物質状態を完全に又は部分的にフォトニックキュービットに読み出すことができる。物質系の励起及び減衰によって、物質系及び光子モードのもつれた状態を単純にもたらすこともできる。
【0061】
本発明のさらなる態様によれば、物質系においてもつれたキュービットを読み出し且つ書き込み、もつれた物質−光状態を生成する能力によって、もつれた物質−光状態におけるキュービット又は他の量子情報の符号化が可能になり、それによって誤り訂正が容易になる。より具体的には、物質−光学系のもつれた状態を使用して量子情報を符号化することができ、それによって、1つ又は複数の光子が失われた場合に物質系の測定を使用して光子状態及び量子情報回復に対する動作を実行することができる。
【0062】
式10は、2つの物質系及び2つの関連する光子放出モードの間でもつれを使用するキュービット符号化の基底状態|0〉L及び|1〉Lの一例を示す。式11は、キュービット係数c0及びc1に関連する量子情報が、符号化状態|q〉Lにあるか又は等価的に密度行列ρを有する基底状態|0〉L及び|1〉Lといかに関連するかを示す。
【0063】
【数11】
【0064】
式11の符号化キュービットを、図9のシステム900等の量子コヒーレントシステムに物理的に組み込むことができる。システム900は、上述したようにそれぞれの放出モード130−1及び130−2を有する物質系110−1及び110−2をキャビティ120内に含む。式10の基底状態のインプリメンテーションを簡略化するために、各物質系110は、図2Bに示すようにそれぞれ状態|↑〉及び|↓〉に関連する2つの励起状態|e↑〉及び|e↓〉を有するタイプのものであり、それによって、物質系110は、励起された後、放出モード130のそれぞれの偏光状態|H〉及び|V〉で光子を放出する。基底状態|0〉Lは、システム900において、物質系130−1及び130−2のそれぞれを状態|+〉mに設定し、励起系140を使用して物質系110を励起し、励起状態が減衰してキャビティが光子を放出モードに解放するのを待つことによって、容易に生成することができる。基底状態|1〉Lは、システム900において、物質系110−1及び110−2のそれぞれを状態|−〉mに設定し、励起系140を使用して物質系110を励起し、励起状態及びキャビティモードが減衰するのを待つことによって、生成することができる。
【0065】
図10は、第1の物質系110−1の状態c0|↑〉1+c1|↓〉1によって表されるキュービットを、物質系及び光学系の状態を使用する符号化に変換するプロセス1000のフローチャートである。プロセス1000は、式11に示すように符号化が2つの物質系及び関連する放出モードを使用する一例を示すが、さらに後述するように、同様の技法を使用して、物質状態及び光状態の他の組合せを使用する他の符号化を構築してもよい。例示的な実施形態では、プロセス1000は、第2の物質系110−2を、第2の物質系110−2の基底状態の組合せである既知の状態、たとえば状態|+〉2=(|↑〉2+|↓〉2)/√2に設定するステップ1010で開始する。
【0066】
ステップ1020は、物質系110−1及び110−2の結合された状態に対しパリティ測定を実行する。パリティ測定を、物質系110の励起の後に放出光子を使用して実行することができ、測定が光子源を区別しない限り、ここでは破壊的な光子測定が許容可能である。偶数パリティ測定結果は、システム110−1及び110−2が状態c0|↑↑〉+c1|↓↓〉にあることを示し、奇数パリティ測定結果は、システム110−1及び110−2が状態c0|↑↓〉+c1|↓↑〉にあることを示す。状態訂正を実行するステップ1030は、パリティ測定1020が奇数パリティを見つけた場合にのみ、物質系110−2に対してビット反転又はNOT演算を実行し、それによって、ステップ1030の後、前回の測定結果に関わらず、物質系110−1及び110−2は状態c0|↑↑〉+c1|↓↓〉にある。
【0067】
ステップ1040は、物質系110−1及び110−2のそれぞれの状態に対してアダマール演算を実行する。そして、物質系110−1及び110−2は、状態
【0068】
【数12】
【0069】
になる。そして、ステップ1050は、物質系110を励起することができ、ステップ1060においてキャビティ120から放出モード130への光子の解放を待った後、式11の所望の符号化キュービットが生成される。
【0070】
プロセス1000を、キュービットの符号化においてより多くの物質系110を使用するように一般化することができる。たとえば、ステップ1010は、N−1個の物質系110−2〜110−Nをもつれ状態(|↑〉2…|↑〉N+|↓〉2…|↓〉N)/√2に設定することができ、その後、このもつれ状態は、ステップ1020のパリティ測定によって、符号化されるキュービットとさらにもつれる。この場合の状態訂正ステップ1030は、状態c0|↑〉1|↑〉2…|↑〉N+c1|↓〉1|↓〉2…|↓〉Nをもたらし、これは、最大N個の物質系110及びN個の関連する放出モード130を使用して符号化に変換することができる。
【0071】
各放出モード130は、例示的な実施形態では、偏光表現の場合、基底状態|H〉及び|V〉を使用する。偏光表現によって、図9の各量子非破壊(QND)検出器950−1又は950−2が、測定されたモード130−1又は130−2の偏光状態が表す量子情報を依然として保持しながら、モード130−1又は130−2が光子を含むか否かを検出することができる。このように、QND検出器950は、たとえば、光子の損失又は割り当てられた時間内での励起状態の減衰の失敗に対応する誤りを検出することができる。W.J. Munro、K. Nemoto、R.G. Beausoleil及びT.P. SpillerによってPhys. Rev. A 71, 033819(2005)に、G.J. Milburn及びD.F. WallsによってPhys. Rev A 30, 56(1984)に、又はN. Imoto、H.A. Haus及びY. YamamotoによってPhys. Rev. A 32 2287(1985) に記載されているような非破壊検出によって、測定は、誤りが検出されない場合の放出モードに対する量子動作を中断させない。
【0072】
量子情報、たとえば係数c0及びc1を、光子が光子モード130のいずれか又は両方から失われる場合であっても、符号化キュービット|q〉Lから回復することができる、ということを示すことができる。たとえば、QND検出器950−2が、システム300が最初に式11の密度行列ρに対応するキュービットを符号化したときに、光子がモード130−2から失われていることを識別する場合、システム900は、式12に示す非正規化密度行列ρ’に対応する非コヒーレント状態になる。元の量子情報を含むコヒーレント状態を、物質系110の測定を通じて回復することができる。たとえば、測定系550は、対角に基づいて物質系110−2を測定することができる。測定結果が、物質系110−02が状態|+〉=1/√2(|↑〉+|↓〉)にあることを示す場合、システム900は、コヒーレント状態c0|0〉L1−c1|1〉L1に対応する式13の形式の密度行列ρ+を有することになる。Z演算が、基底状態|0〉L1及び|1〉L1を使用する表現において元の量子情報を回復することができる。対角に基づく測定の結果が、物質系110−2が状態|−〉=1/√2(|↑〉−|↓〉)にあることを示す場合、システム900は、状態c0|0〉L1+c1|1〉L1に対応すると共に元の量子情報を回復する式14の形式の密度行列ρ-を有することになる。
【0073】
【数13】
【0074】
上記式10及び式11の符号化において、各基底状態|0〉L又は|1〉Lは、第1の物質系110−1及びその放出モード130−1のもつれ状態|0〉L1又は|1〉L1と、第2の物質系110−2及びその放出モード130−2のもつれ状態|0〉L2又は|1〉L2との積である。符号化キュービットの同様の基底状態を、3つ以上の状態の積として構築することができ、それらのそれぞれは、物質系110及び関連する放出モード130のもつれ状態である。このタイプの符号化は、2つ以上の光子が損失した後であっても、光子を失った放出モードに関連する物質系に対して対角測定を実行することによって、量子情報を回復することができる。測定結果が識別する状態訂正の後、結果としての状態は、より少ない数のもつれ状態の積である基底を使用して、元の量子情報を符号化する。
【0075】
別の代替的な符号化基底は、式15に示すような物質系のもつれていない状態を含む積を使用してもよい。もつれ放出モードからすべての光子が失われた場合であっても、損失光子ともつれていた物質系を測定して、もつれていない物質系を元の量子情報を表す状態に設定することができる。
【0076】
【数14】
【0077】
本発明について、特定の実施形態に関連して説明したが、この説明は、本発明の適用の一例に過ぎず、限定するものとして解釈されるべきではない。たとえば、他の系ともつれる可能性があるか又はもつれない可能性のあるキュービットに適用する読出しプロセス及び書込みプロセスについて別々に説明したが、それらを組み合わせることができる。特に、光キュービットを物質系に書き込み、その後、異なる物理特性を有し得る他の光キュービットに再び読み出してもよい。同様に、物質キュービットを光に読み出し、その後、異なる物理特性、たとえば異なる場所を有し得る他のいくつかの物質キュービットに再び書き込んでもよい。別法として、キュービットに関して例示した本発明の原理は、2値量子情報に限定されず、キューディット又はキューナット等の他の形態の量子情報に対して一般化することができる。開示した実施形態の特徴のさまざまな他の適応及び組合せは、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】光子状態を使用して表される量子情報を、物質系の量子状態を使用する表現に書き込むことができる、本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図2A】図1のシステムで使用されるいくつかの適切な物質系のエネルギー準位図である。
【図2B】図1のシステムで使用されるいくつかの適切な物質系のエネルギー準位図である。
【図3A】図1のシステムで使用するのに適している選択可能な測定系を示す図である。
【図3B】図1のシステムで使用するのに適している選択可能な測定系を示す図である。
【図3C】図1のシステムで使用するのに適している選択可能な測定系を示す図である。
【図3D】図1のシステムで使用するのに適している選択可能な測定系を示す図である。
【図4】最初に光子状態を使用して表された量子情報を物質系に書き込むプロセスのフローチャートである。
【図5】物質系の量子状態を使用する表現と光子状態を使用する表現との間で量子情報を転換することができる、本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図6】物質系から量子情報を読み出して、光子状態を使用して量子情報を符号化するプロセスのフローチャートである。
【図7】量子情報を読み出すと共に書き込むことができる本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図8】物質系から量子情報を読み出して、もつれ光子状態を使用して量子情報を符号化するプロセスのフローチャートである。
【図9】物質及び光のもつれ状態を使用してキュービットを、エラーが起こりにくく符号化するシステムのブロック図である。
【図10】物質及び光のもつれ状態を使用して量子情報を符号化するプロセスを示すフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力モード(162)のフォトニック状態を生成することであって、前記フォトニック状態は、物質系(120)に書き込まれる量子情報を表す、フォトニック状態を生成することと、
前記物質系(120)を、第1の基底状態と第2の基底状態との組合せである既知の状態に初期化することと、
前記物質系(120)に対し、前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起を印加することと、
前記物質系(120)の前記入力モード(162)と放出モード(132)との結合状態を測定することであって、前記結合状態を測定することは、前記放出モード(132)及び前記物質系(120)の状態のもつれが解かれ、前記物質系(120)の状態が前記量子情報によって決まるようなものである、測定することとを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記結合状態を測定することは、前記結合状態がベル状態であると確定することを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記結合状態を測定することは、
前記結合状態のパリティを測定することと、
前記入力モード(162)及び前記放出モード(132)のうちの一方の状態を対角に基づいて測定することとを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記結合状態を測定することは、
前記入力モード(165)及び前記放出モード(135)のうちの一方を適用することであって、前記入力モード(165)及び前記放出モード(135)のうちの他方が通過するCNOTゲート(330)を制御する、適用することと、
前記入力モード(165)及び前記放出モード(135)のうちの一方の状態を対角に基づいて測定することとを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記結合状態を測定することは、
前記入力モード(132)及び前記放出モード(162)を第1のビームスプリッタ(340)に適用することと、
前記第1のビームスプリッタ(340)の出力モードの状態のパリティを測定することと、
偶数パリティの測定に応じて、前記第1のビームスプリッタ(340)の前記出力モードを第2のビームスプリッタの入力モードに向けて、前記第2のビームスプリッタの出力モードの状態をベル状態に対応するものとして識別することと、
奇数パリティの測定に応じて、前記第1のビームスプリッタ(340)の前記出力モードの状態を測定することとを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記物質系に対し、前記結合状態の前記測定の結果によって識別される状態訂正動作を実行することをさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
量子情報を表すフォトニック状態のための入力モード(162)と、
第1の基底状態及び第2の基底状態を含む量子状態を有する物質系(120)と、
前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起系(140)と、
前記物質系(120)が前記励起状態から遷移する場合に前記物質系(120)から放出される光子のための放出モード(132)と、
前記入力モード(162)と前記放出モード(132)との結合状態を測定することができる第1の測定系(300)であって、前記結合状態の前記測定は、前記放出モード(132)及び前記物質系(120)の状態のもつれが解かれ、前記物質系(120)の結果としての状態が前記量子情報によって決まるようなものである、第1の測定系(300)とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記第1の測定系(300)はベル状態分析器(310)を含むことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の測定系(300)は、
非吸収パリティ検出器(320)と、
前記入力モード(162)及び前記放出モード(132)のうちの一方の対角基底に対応する光子の検出器(325)とを備えることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の測定系(300)は、
CNOTゲート(330)と、
前記入力モード(162)及び前記放出モード(132)のうちの一方の対角基底に対応する光子の検出器(334)とを備えることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記測定系(300)は、
ビームスプリッタ(340)と、
パリティ検出器(342)と、
前記パリティ検出器(342)からの測定結果の制御下で動作する光スイッチ(344)と、
前記光スイッチ(344)の1つの出力経路にある第1の測定部分系(346)と、
前記光スイッチの代替的な出力経路にある第2の測定部分系(348)とを備えることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記物質系(120)を測定するように構成される第2の測定系(540)と、
状態訂正系(560)と、
前記量子情報を前記物質系(120)に書き込む動作のために放出モード(132)を前記第1の測定系内に向けるように動作可能であると共に、前記第2の測定系(540)からの結果に従って選択される動作に対し前記放出モード(134)を前記状態訂正系(560)に向けるように動作可能な光スイッチとを備えることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記状態訂正系を通過する補助モード(715)の既知の光子状態を生成するように結合されるソース(710)をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
物質系(120)の状態を使用して量子情報を表すことであって、前記物質系(120)の量子状態は第1の基底状態及び第2の基底状態を含む、表すことと、
前記物質系(120)に対し、前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起を印加することと、
前記励起状態が減衰する可能性が高く、且つ前記減衰からもたらされる光子が放出モード(130)に入る可能性が高いような時間を待機することと、
前記物質系(120)を対角に基づいて測定することとを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項15】
前記放出モード(130)に対し、前記物質系(120)の前記測定の結果によって識別される状態訂正動作を実行することをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
補助モード(715)を既知の状態で用意することと、
前記補助モード(715)及び前記放出モード(134)の結合状態を測定することであって、前記結合状態の測定及び前記物質系(120)は、前記放出モード(134)及び前記物質系(120)の状態のもつれが解かれ、前記補助モード(715)及び前記放出モード(134)の前記結合状態が、前記量子情報によって決まるもつれ状態であるようなものである、測定することとをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
第1の基底状態及び第2の基底状態を含む量子状態を有する物質系(120)と、
前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起系(140)と、
前記物質系(120)が前記励起状態から遷移するときに前記物質系(120)から放出される光子のための放出モード(134)と、
前記物質系(120)を測定するように構成される測定系(540)と、
前記放出モード(134)が通過する状態訂正系(560)であって、前記測定系(540)からの結果に従って選択される動作を実行するように結合される状態訂正系(560)とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記状態訂正システムを通過する補助モード(715)の既知の光子状態を生成するように結合されるソース(710)をさらに備えることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
量子情報を操作するプロセスであって、
第1の系の第1の状態及び第2の系の第2の状態を含む積である基底状態を含む表現を使用して、前記量子情報を符号化することであって、前記第1の系は物質系(120)及び光子モード(130)を含み、前記第1の状態は前記第1の物質系(120)及び前記第1の光子モード(130)のもつれ状態である、符号化することと、
光子の損失を検出するために、前記第1の光子モード(130)を測定することとを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項20】
前記第1の光子モード(130)の前記測定が光子の損失を示す場合に、
前記第1の物質系(120)を測定することと、
前記第2の状態に対し動作を実行することであって、前記動作は、前記第1の物質系(120)の前記測定からの結果に従って選択され、前記動作の後、前記第2の状態に関連する系は、前記量子情報を表す状態になる、実行することとをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のプロセス。
【請求項1】
入力モード(162)のフォトニック状態を生成することであって、前記フォトニック状態は、物質系(120)に書き込まれる量子情報を表す、フォトニック状態を生成することと、
前記物質系(120)を、第1の基底状態と第2の基底状態との組合せである既知の状態に初期化することと、
前記物質系(120)に対し、前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起を印加することと、
前記物質系(120)の前記入力モード(162)と放出モード(132)との結合状態を測定することであって、前記結合状態を測定することは、前記放出モード(132)及び前記物質系(120)の状態のもつれが解かれ、前記物質系(120)の状態が前記量子情報によって決まるようなものである、測定することとを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記結合状態を測定することは、前記結合状態がベル状態であると確定することを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記結合状態を測定することは、
前記結合状態のパリティを測定することと、
前記入力モード(162)及び前記放出モード(132)のうちの一方の状態を対角に基づいて測定することとを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記結合状態を測定することは、
前記入力モード(165)及び前記放出モード(135)のうちの一方を適用することであって、前記入力モード(165)及び前記放出モード(135)のうちの他方が通過するCNOTゲート(330)を制御する、適用することと、
前記入力モード(165)及び前記放出モード(135)のうちの一方の状態を対角に基づいて測定することとを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記結合状態を測定することは、
前記入力モード(132)及び前記放出モード(162)を第1のビームスプリッタ(340)に適用することと、
前記第1のビームスプリッタ(340)の出力モードの状態のパリティを測定することと、
偶数パリティの測定に応じて、前記第1のビームスプリッタ(340)の前記出力モードを第2のビームスプリッタの入力モードに向けて、前記第2のビームスプリッタの出力モードの状態をベル状態に対応するものとして識別することと、
奇数パリティの測定に応じて、前記第1のビームスプリッタ(340)の前記出力モードの状態を測定することとを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記物質系に対し、前記結合状態の前記測定の結果によって識別される状態訂正動作を実行することをさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
量子情報を表すフォトニック状態のための入力モード(162)と、
第1の基底状態及び第2の基底状態を含む量子状態を有する物質系(120)と、
前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起系(140)と、
前記物質系(120)が前記励起状態から遷移する場合に前記物質系(120)から放出される光子のための放出モード(132)と、
前記入力モード(162)と前記放出モード(132)との結合状態を測定することができる第1の測定系(300)であって、前記結合状態の前記測定は、前記放出モード(132)及び前記物質系(120)の状態のもつれが解かれ、前記物質系(120)の結果としての状態が前記量子情報によって決まるようなものである、第1の測定系(300)とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記第1の測定系(300)はベル状態分析器(310)を含むことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の測定系(300)は、
非吸収パリティ検出器(320)と、
前記入力モード(162)及び前記放出モード(132)のうちの一方の対角基底に対応する光子の検出器(325)とを備えることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の測定系(300)は、
CNOTゲート(330)と、
前記入力モード(162)及び前記放出モード(132)のうちの一方の対角基底に対応する光子の検出器(334)とを備えることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記測定系(300)は、
ビームスプリッタ(340)と、
パリティ検出器(342)と、
前記パリティ検出器(342)からの測定結果の制御下で動作する光スイッチ(344)と、
前記光スイッチ(344)の1つの出力経路にある第1の測定部分系(346)と、
前記光スイッチの代替的な出力経路にある第2の測定部分系(348)とを備えることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記物質系(120)を測定するように構成される第2の測定系(540)と、
状態訂正系(560)と、
前記量子情報を前記物質系(120)に書き込む動作のために放出モード(132)を前記第1の測定系内に向けるように動作可能であると共に、前記第2の測定系(540)からの結果に従って選択される動作に対し前記放出モード(134)を前記状態訂正系(560)に向けるように動作可能な光スイッチとを備えることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記状態訂正系を通過する補助モード(715)の既知の光子状態を生成するように結合されるソース(710)をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
物質系(120)の状態を使用して量子情報を表すことであって、前記物質系(120)の量子状態は第1の基底状態及び第2の基底状態を含む、表すことと、
前記物質系(120)に対し、前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起を印加することと、
前記励起状態が減衰する可能性が高く、且つ前記減衰からもたらされる光子が放出モード(130)に入る可能性が高いような時間を待機することと、
前記物質系(120)を対角に基づいて測定することとを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項15】
前記放出モード(130)に対し、前記物質系(120)の前記測定の結果によって識別される状態訂正動作を実行することをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
補助モード(715)を既知の状態で用意することと、
前記補助モード(715)及び前記放出モード(134)の結合状態を測定することであって、前記結合状態の測定及び前記物質系(120)は、前記放出モード(134)及び前記物質系(120)の状態のもつれが解かれ、前記補助モード(715)及び前記放出モード(134)の前記結合状態が、前記量子情報によって決まるもつれ状態であるようなものである、測定することとをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
第1の基底状態及び第2の基底状態を含む量子状態を有する物質系(120)と、
前記第1の基底状態及び前記第2の基底状態のうちの少なくとも一方を対応する励起状態まで励起することができる励起系(140)と、
前記物質系(120)が前記励起状態から遷移するときに前記物質系(120)から放出される光子のための放出モード(134)と、
前記物質系(120)を測定するように構成される測定系(540)と、
前記放出モード(134)が通過する状態訂正系(560)であって、前記測定系(540)からの結果に従って選択される動作を実行するように結合される状態訂正系(560)とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記状態訂正システムを通過する補助モード(715)の既知の光子状態を生成するように結合されるソース(710)をさらに備えることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
量子情報を操作するプロセスであって、
第1の系の第1の状態及び第2の系の第2の状態を含む積である基底状態を含む表現を使用して、前記量子情報を符号化することであって、前記第1の系は物質系(120)及び光子モード(130)を含み、前記第1の状態は前記第1の物質系(120)及び前記第1の光子モード(130)のもつれ状態である、符号化することと、
光子の損失を検出するために、前記第1の光子モード(130)を測定することとを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項20】
前記第1の光子モード(130)の前記測定が光子の損失を示す場合に、
前記第1の物質系(120)を測定することと、
前記第2の状態に対し動作を実行することであって、前記動作は、前記第1の物質系(120)の前記測定からの結果に従って選択され、前記動作の後、前記第2の状態に関連する系は、前記量子情報を表す状態になる、実行することとをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載のプロセス。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−515205(P2009−515205A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535519(P2008−535519)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028406
【国際公開番号】WO2007/046906
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028406
【国際公開番号】WO2007/046906
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】
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