説明

物質計測装置および物質計測方法

【課題】流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度、量等を高い応答性で高精度に計測すること。
【解決手段】流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測装置であって、流通ガスが流れる計測セルと、測定対象物質の吸収波長を含む波長の範囲で波長を変調したレーザ光を計測セルに入射させる状態と入射させない状態とを切り換えるレーザ光照射ユニットと、計測セルから出射されるレーザ光を受講する受光装置と、計測セルとレーザ光照射ユニットとの間に配置されレーザ光を反射させる第1反射部と、計測セルと前記受光装置との間に配置され、レーザ光を反射させる第2反射部と、レーザ光照射ユニットがレーザ光を計測セルに入射させる状態から入射させない状態に切り換えた受光装置が受光した光の強度の減衰に基づいて、流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する解析装置と、を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内を流れる流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測装置および物質計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関、焼却炉等の燃焼機関から排出されるガスは、種々の物質(ガス状物質、粒子状物質等)が混合した混合ガスとなっている。このように混合ガスに含まれる物質には、種々の物質が含まれる。このため、例えば混合ガスに有毒な物質が含まれているか等、種々の目的で混合ガス内の特定の物質を検知したい場合がある。また、試験、評価等のために、混合ガスに含まれる特定物質の濃度、量を検出したい場合もある。これに対して、複数のガス状物質で構成されている混合ガスの中から特定の物質(測定対象物質)の濃度、量を計測する種々の装置が提案されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、計測セルから漏れた漏れ光の光量を計測し、計測した光量の減衰に基づいて測定対象の物質を計測するキャビティーリングダウン分光法を用いて、測定対象の試料を分析する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−333337公報
【特許文献2】特開2006−138727公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載された装置は、キャビティーリングダウン分光法を用い、測定光を光の経路内で周回させることで、計測セルの全長よりも長い光路長を確保することができ、計測対象の流通ガス(試料)が配置されている領域を通過する距離も長くすることができる。これにより、高い精度での計測を行うことができる。
【0005】
ここで、キャビティーリングダウン分光法は、計測セルに入射させる測定光に測定対象物質の吸収波長の光を用いる。このため、入射した測定光の波長が測定対象物質の吸収波長からずれていると測定誤差が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度、量等を高い応答性で高精度に計測することが可能である物質計測装置および物質計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測装置であって、前記流通ガスが流れる計測セルと、前記測定対象物質の吸収波長を含む波長の範囲で波長を変調したレーザ光を前記計測セルに入射させる状態と入射させない状態とを切り換えるレーザ光照射ユニットと、前記計測セルから出射されるレーザ光を受講する受光装置と、前記計測セルと前記レーザ光照射ユニットとの間に配置されレーザ光を反射させる第1反射部と、前記計測セルと前記受光装置との間に配置され、レーザ光を反射させる第2反射部と、前記レーザ光照射ユニットがレーザ光を前記計測セルに入射させる状態から入射させない状態に切り換えた前記受光装置が受光した光の強度の減衰に基づいて、流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する解析装置と、を有することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記レーザ光照射ユニットは、前記レーザ光の変調周期は、20μs以下であることが好ましい。レーザ光の変調周期を20μs以下とすることで、レーザ光の変調の1周期を、数十μs程度である一般的なリングダウンタイムよりも短くすることができる。
【0009】
また、前記レーザ光照射ユニットは、前記レーザ光の変調周期が1μs以下であることが好ましい。
【0010】
また、前記第1反射部および前記第2反射部は、反射率が99%以上の光学ミラーであることが好ましい。
【0011】
また、前記レーザ光照射ユニットと計測セルとに接続され、前記レーザ光を案内する第1光学部材と、前記受光装置と計測セルとに接続され、前記レーザ光を案内する第2光学部材と、をさらに有することが好ましい。
【0012】
また、前記レーザ光照射ユニットと計測セルとに接続され、前記レーザ光を案内する第1光ファイバと、前記レーザ光照射ユニットと計測セルとに接続され、前記レーザ光を案内する第2光ファイバと、をさらに有し、前記第1反射部は、前記第1光ファイバに配置された複数の高屈折率層で構成されるファイバーブラッググレーティングであり、前記第2反射部は、前記第2光ファイバに配置された複数の高屈折率層で構成されるファイバーブラッググレーティングであることが好ましい。
【0013】
また、一方の端部が前記第1光ファイバに接続され、他方の端部が前記第2光ファイバに接続され、かつ、前記計測セルに挿入される第3光ファイバを有し、前記第3光ファイバは、前記計測セル内の一部にコアが露出している領域を備えることが好ましい。
【0014】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバと前記第3光ファイバは、連結部がない1本の光ファイバであることが好ましい。
【0015】
また、前記レーザ光照射ユニットは、前記レーザ光の通過経路上に配置され、開閉することで前記計測セルに入射させる状態と入射させない状態とを切り換えるシャッターを備えることが好ましい。
【0016】
また、前記レーザ光照射ユニットは、前記レーザ光の出射方向を切り換えて、前記計測セルに入射させる状態と入射させない状態とを切り換える機構を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記解析装置は、前記流通ガスに含まれる前記測定対象物質の濃度を検出することが好ましい。
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、両端に反射部が配置されかつ流通ガスが流れる計測セルの一方の端部からレーザ光を入射させ、前記計測セルの他方の端部から出射されるレーザ光を検出して、前記流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測方法であって、前記計測セルに前記流通ガスを流すステップと、前記測定対象物質の吸収波長を含む波長の範囲で波長を変調したレーザ光を前記計測セルの前記一方の端部から入射させるステップと、前記計測セルに前記レーザ光の入射を停止させるステップと、前記計測セルの他方の端部から出力される前記レーザ光を受光した受光ステップと、レーザ光を前記計測セルに入射させる状態から入射させない状態に切り換えた後に受光した光の強度の減衰に基づいて、流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する検出ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度、量等を高い応答性で高精度に計測することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、濃度計測装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2A】図2Aは、半導体レーザ発振装置から出力されるレーザ光の波長の一例を示す波形図である。
【図2B】図2Bは、半導体レーザ発振装置から出力されるレーザ光の波長と測定対象物質の吸光度との関係を説明するための説明図である。
【図3】図3は、高速レーザ強度変調装置の動作の一例を説明するための説明図である。
【図4】図4は、濃度計測装置の動作を説明するフロー図である。
【図5】図5は、受光装置で検出する受光強度と時間との関係を示すグラフである。
【図6A】図6Aは、半導体レーザ発振装置から出力されるレーザ光の波長と測定対象物質の吸光度との関係を説明する説明図である。
【図6B】図6Bは、受光装置で検出する受光強度と時間との関係を示すグラフである。
【図6C】図6Cは、計測結果の一例を説明するための説明図である。
【図7】図7は、受光装置で検出する受光強度と時間との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、計測結果の一例を説明するための説明図である。
【図9】図9は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図10】図10は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図11】図11は、図10に示すFBGを拡大して示す模式図である。
【図12A】図12Aは、レーザ光照射ユニットから出力されるレーザ光の強度と時間との関係を示すグラフである。
【図12B】図12Bは、受光装置で検出する受光強度と時間との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図14】図14は、図13に示す光ファイバを拡大して示す模式図である。
【図15】図15は、レーザ光照射ユニットの一例を示す模式図である。
【図16】図16は、レーザ光照射ユニットの動作の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる物質計測装置および物質計測方法の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。例えば、本実施形態では、物質計測装置および物質計測方法として、流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測するが、本発明はこれに限定されず、ガスに含まれる測定対象物質の量を計測してもよい。物質計測装置および物質計測方法は、管路を流れる種々のガスを流通ガスとすることができる。例えば、物質計測装置をディーゼルエンジンに取付、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを流通ガスとし、流通ガスに含まれる測定対象物質を計測することができる。なお、排ガスを排出する機関、つまり測定対象のガスを排出(供給)する装置は、これに限定されず、ガソリンエンジンや、ガスタービン等種々の内燃機関に用いることができる。また、内燃機関を有する装置としては、車両、船舶、発電機等種々の装置が例示される。さらに、ゴミ焼却炉から排出されるガスを流通ガスとして、流通ガスに含まれる種々の物質を測定対象物質として計測することもできる。
【0022】
[実施形態1]
図1は、本発明の濃度計測装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。濃度計測装置10は、流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測する物質計測装置である。濃度計測装置10は、図1に示すように、計測セルユニット12と、レーザ光照射ユニット14と、受光装置16と、解析装置18と、制御装置20と、第1反射部46と、第2反射部48と、を有する。
【0023】
計測セルユニット12は、流通ガスGを案内する経路および流通ガスが含まれる測定対象物質を計測する計測領域を構成する。計測セルユニット12は、計測セル40と、流入管42と、排出管44と、を有する。
【0024】
計測セル40は、筒形状の部材であり、内部に流通ガスGが流れる。計測セル40の筒形状の一方の端部(図1中左側、筒形状の上面)には第1反射部46が配置され、他方の端部(図1中右側、筒形状の下面)には第2反射部48が配置されている。つまり、計測セル40は、筒形状の上面と下面が、それぞれ第1反射部46と第2反射部48とに塞がれた形状となっている。これにより、計測セル40は、第1反射部46と第2反射部48とが設けられている両端部が、空気が流通しない状態となる。第1反射部46と第2反射部48とについては後述する。
【0025】
流入管(サンプリング配管)42は、測定対象の流通ガスGを計測セル40に供給する配管である。流入管42は、例えば、計測対象配管と接続し、計測対象配管を流れる流通ガスGの一部を捕集する。流入管42は、一方の端部(流通ガスGの流れ方向において上流側の端部)が流通ガスGを供給する供給装置に接続されており、他方の端部(流通ガスGの流れ方向において下流側の端部)が計測セル40の側面(周面)の第1反射部46側に接続されている。排出管44は、一方の端部が、計測セル40の側面(周面)の第2反射部48側に接続され、他方の端部が、より下流側の配管と接続されている。
【0026】
計測セルユニット12は、流入管42に供給された流通ガスGを、流入管42から計測セル40に供給する。また、計測セルユニット12は、計測セル40を流れた流通ガスGを排出管44から外部に排出する。このようにして計測セルユニット12は、測定対象ガスの供給手段から供給される流通ガスGを流入管42、計測セル40、排出管44の順で流す流路を形成する。
【0027】
また、計測セルユニット12は、更に、流通ガスGが流入管42から計測セル40に向けて流れ、計測セル40から排出管44に向けて流れる向きに、空気を吸引するポンプを設けてもよい。この場合、ポンプは、流通ガスGの流れ方向において、計測セル40の下流側となる排出管44に配置することが好ましい。計測セルユニット12は、ポンプで流通ガスGを吸引することで、流通ガスGが流入管42、計測セル40、排出管44の順で流れる流量を適宜調整することができる。
【0028】
第1反射部46および第2反射部48は、光を反射する光学ミラーである。第1反射部46は、第2反射部48と向かい合う面が反射面となる。第2反射部48は、第1反射部46と向かい合う面が反射面となる。具体的には、第1反射部46、第2反射部48は、反射率が99%以上、本実施形態では反射率が約99.99%の光学ミラーである。第1反射部46および第2反射部48は、到達した光(レーザ光)の略全ての光(99%以上の光)を反射し、一部の光(1%未満の光)を透過させる。
【0029】
これにより、計測セル40内で第1反射部46から第2反射部48に向かう光は、第1反射部46で反射して第2反射部48から第1反射部46に向かう光となる。また、計測セル40内で第2反射部48から第1反射部46に向かう光は、第2反射部48で反射して第1反射部46から第2反射部48に向かう光となる。これにより、計測セル40の筒形状に対して略平行に進む光は、第1反射部46と第2反射部48とで反射され、計測セル40を往復する。また、第1反射部46と第2反射部48とを往復する光の一部、第1反射部46または第2反射部48に反射されない1%未満の光は、第1反射部46または第2反射部48から計測セル40の外側に出射される。これにより、計測セル40を往復する光は、第1反射部46または第2反射部48で反射する毎に徐々に第1反射部46または第2反射部48から計測セル40の外側に出射される。この点については、計測動作とともに後述する。
【0030】
次に、レーザ光照射ユニット14について説明する。レーザ光照射ユニット14は、半導体レーザ発振装置22と、レーザ制御装置24と、光ファイバ25と、高速レーザ強度変調装置26と、ビームストッパ28と、を有する。
【0031】
半導体レーザ発振装置22は、測定対象物質が吸収する波長(以下、吸収波長という。)を含む波長のレーザ光を出力する。半導体レーザ発振装置22は、発光素子として半導体レーザ(レーザーダイオード、LD)を有する。なお、本実施形態では、レーザ光を出力する発光装置として、発光素子に半導体レーザを用いた半導体レーザ発振装置22を用いたが、発光装置はこれに限定されない。発光装置は、レーザ光を出力する機構であればよい。半導体レーザ発振装置22は、入力される信号に基づいて出力するレーザ光の波長や強度を調整することができる。
【0032】
レーザ制御装置24は、レーザ制御信号を生成し、半導体レーザ発振装置22に送る。レーザ制御信号は、半導体レーザ発振装置22から出力するレーザ光の波長や強度を制御する信号である。半導体レーザ発振装置22は、レーザ光の波長を周期的に変化させるレーザ制御信号を生成する。半導体レーザ発振装置22は、レーザ制御装置24で生成されるレーザ制御信号に基づいてレーザ光を出力する。これにより、半導体レーザ発振装置22は、波長が周期的に変化するレーザ光を出力する。
【0033】
ここで、図2Aは、半導体レーザ発振装置から出力されるレーザ光の波長の一例を示す波形図である。図2Bは、半導体レーザ発振装置から出力されるレーザ光の波長と測定対象物質の吸光度との関係を説明するための説明図である。図2Aに示すグラフは、縦軸をレーザ光の波長λとし、横軸を時間とする。図2Bに示すグラフは、縦軸を測定対象物質の吸光度とし、横軸を波長とする。図2Bに示すグラフは、測定対象物質の吸光度の分布を示す吸収線62に加え、半導体レーザ発振装置22から出力されるレーザ光の波形60を模式的に示す。本実施形態の半導体レーザ発振装置22は、図2Aに示すようにsin波で波長を変調されたレーザ光を出力する。レーザ光は、図2Aに示すように、周期がtとなり、波長変調幅がαとなり、波長中心がλとなる。レーザ光のsin波の波長中心のλは、図2Bに示すように測定対象物質の吸収中心波長(吸収線62の吸光度が最も高い波長、吸光度が最大値hとなる波長)と同一波長である。また、波長変調幅αは、吸収線62のスペクトル幅64よりも広い幅となる。このように半導体レーザ発振装置22は、測定対象物質の吸収中心波長を含み、かつ、吸収線62のスペクトル幅64よりも広い幅の波長幅で変調されるレーザ光を出力する。
【0034】
光ファイバ25は、一方の端部が半導体レーザ発振装置22に連結され、他方の端部が高速レーザ強度変調装置26に連結されている。光ファイバ25は、半導体レーザ発振装置22から出力されるレーザ光を高速レーザ強度変調装置26に案内する。
【0035】
高速レーザ強度変調装置26は、入射された光を出力する方向を切り換える可能な装置である。つまり、高速レーザ強度変調装置26は、入射された光の進行方向を偏向し、複数の方向に出力することができる。高速レーザ強度変調装置26としては、AO偏向器(AOD、AO Deflectors)や、TeO等を圧電素子で変調する音響光学素子(AOM、Acoustic Optics Modulator)や、LiNbO等に直接変調信号印加する電気光学素子(EOM、Electro-Optic Modulator)を用いることができる。また、高速レーザ強度変調装置26としては、直接変調法を用いる装置を用いることもできる。直接変調法を用いる装置は、半導体レーザの出力が注入電流に比例することから、レーザ注入電流に矩形波パルスと変調波を重畳することで出力を変調する。直接変調法を用いる装置は、さらにレーザ波長を素子温度で制御することで、レーザ波長を吸収波長に維持しながら強度変調する。高速レーザ強度変調装置26は、半導体レーザ発振装置22から出力され光ファイバ25で案内されたレーザ光を、計測セル40の第1反射部46が配置されている端部に向けた第1の方向と、ビームストッパ28に向けた第2の方向に出力することができる。つまり、高速レーザ強度変調装置26は、計測セル40の第1反射部46が配置されている端部に入射するレーザ光L1と、ビームストッパ28に入射するレーザ光L2と、を出力することができる。
【0036】
図3は、高速レーザ強度変調装置の動作の一例を説明するための説明図である。高速レーザ強度変調装置26は、制御装置20から図3に示すON/OFFの信号が入力され、入力される信号に基づいてレーザ光を出力する向きを切り換える。本実施形態の高速レーザ強度変調装置26は、信号がOFFのとき計測セル40の第1反射部46が配置されている端部に入射するレーザ光L1を出力し、信号がONのときビームストッパ28に入射するレーザ光L2を出力する。したがって、図3に示す信号の場合、高速レーザ強度変調装置26は、時間tになるまでビームストッパ28に入射するレーザ光L2を出力し、時間tから時間tの間、計測セル40の第1反射部46が配置されている端部に入射するレーザ光L1を出力し、時間t以降ビームストッパ28に入射するレーザ光L2を出力する。
【0037】
ビームストッパ28は、入射されたレーザ光を吸収する装置である。ビームストッパ28は、レーザ光を吸収することで生じる温度上昇を抑制する冷却機構を備える。
【0038】
レーザ光照射ユニット14は、以上のような構成であり、レーザ制御装置24から半導体レーザ発振装置22にレーザ制御信号が送信される。半導体レーザ発振装置22は、レーザ制御信号に基づいて波長が一定周期で変調するレーザ光を出力し、出力したレーザ光を光ファイバ25に入射させる。光ファイバ52は、入射されたレーザ光を案内して、高速レーザ強度変調装置26に入射させる。高速レーザ強度変調装置26は、制御装置20からの信号に基づいて、レーザ光を計測セル40内に入射させる状態と、ビームストッパに入射させる状態とを切り換える。つまり、高速レーザ強度変調装置26は、レーザ光L1を出力する状態と、レーザ光L2を出力する状態とを切り換える。このようにして、レーザ光照射ユニット14は、計測セル40に波長が一定周期で変調するレーザ光L1を入射させる。また、レーザ光照射ユニット14は、計測セル40に波長が一定周期で変調するレーザ光L1を入射させる状態と、入射させない状態とを切り換える。
【0039】
受光装置16は、計測セル40の内部を通過し、第2反射部48から出力されたレーザ光を受光する受光部である。受光装置16は、例えば、フォトダイオード(PD、Photodiode)等の光検出器を備え、光検出器によってレーザ光を受光し、その光の強度を検出する。受光装置16は、受光したレーザ光の強度を受光強度信号として、解析装置18に送る。受光装置16は、受光部が受光した信号から受光装置16が受信した信号からノイズ成分を除去する信号処理部を備えることが好ましい。信号処理部は、信号の高周波成分を低減するローパスフィルタや、所定の周波数成分のみを抽出するロックインアンプ(位相敏感検出器)等を用いることができる。受光装置16は、信号処理部で受光部の受光信号を処理することでノイズを除去した受光強度信号を生成することができる。
【0040】
解析装置18は、受光装置16から送信された受光強度信号に基づいて、つまり受光装置16で検出したレーザ光の強度に基づいて流通ガスGに含まれる測定対象物質の濃度を計測する。解析装置18の濃度の計測方法は、後述する。
【0041】
制御装置20は、解析装置18、レーザ制御装置24、高速レーザ強度変調装置26の動作を制御する制御機能を有し、必要に応じて各部の動作を制御する。具体的には、制御装置20は、レーザ制御装置24で生成する制御信号の周波数、強度、出力タイミング等を制御する。制御装置20は、高速レーザ強度変調装置26がレーザ光を出力させる向きを変更するタイミング、レーザ光を出力させる方向を制御する。また、制御装置20は、解析装置18に解析に必要な条件の設定も実行する。濃度計測装置10は、以上のような構成である。
【0042】
次に、図1および図4を用いて、濃度計測装置10の動作を説明する。図4は、濃度計測装置の動作を説明するフロー図である。濃度計測装置10の制御装置20は、ステップS12として流通ガスの流通を開始する。制御装置20は、ステップS12で流通ガスの流通を開始したら、ステップS14として、レーザ光照射ユニット14を駆動し、レーザ光の出力を開始する。ここで、レーザ光照射ユニット14は、図2Aおよび図2Bを用いて上述したように、波長が所定の周期で変化するsin波のレーザ光Lを出力させる。また、レーザ光照射ユニット14の高速レーザ強度変調装置26は、初期状態でON状態となっている。つまり、高速レーザ強度変調装置26は、レーザ光L2を出力する。これにより、レーザ光照射ユニット14は、ステップS14でレーザ光の出力を開始すると、レーザ光L2をビームストッパ28に入射させる。
【0043】
制御装置20は、ステップS14でレーザ光照射ユニット14を駆動し、レーザ光の出力を開始したら、ステップS16として、高速レーザ強度変調装置(変調装置)26をOFFにする。つまり、制御装置20は、高速レーザ強度変調装置26に送る信号をONからOFFに切り換え、高速レーザ強度変調装置26がレーザ光L2を出力している状態からレーザ光L1を出力する状態とする。これにより、レーザ光照射ユニット14は、レーザ光L1を計測セル40に入射させる。
【0044】
ここで、レーザ光照射ユニット14は、レーザ光L1を第1反射部46に照射し、第1反射部46を通過したレーザ光L1を計測セル40に入射させる。ここで、第1反射部48は、上述したように反射率が高い光学ミラーであるため、計測セル40に入射するレーザ光L3は、レーザ光L1よりも出力が低いレーザ光となる。計測セル40に入射したレーザ光L3は、計測セル40内を進み、第1反射部46と第2反射部48と交互に反射され、計測セル40内を往復移動する。これにより、レーザ光L3は、計測セル40の流通ガスGが充填されている領域を複数回通過する。
【0045】
制御装置20は、ステップS16で変調装置をOFFとし、レーザ光L1を計測セル40に入射させ、計測セル40内へのレーザ光L3の入射を開始したら、ステップS18として、閾値時間≦経過時間であるかを判定する。ここで、経過時間は、高速レーザ強度変調装置26をONにしてからの経過時間であり、閾値時間は、予め設定した時間である。つまり、制御装置20は、時間が予め設定した閾値時間以上、計測セル40(の第1反射部46)にレーザ光L1を入射(照射)させているかを判定する。
【0046】
制御装置20は、ステップS18で、閾値時間≦経過時間ではない(ステップS18でNo)と判定した場合、ステップS18に進む。つまり、制御装置20は、経過時間が閾値時間以上となるまで、ステップS18の判定を繰り返す。制御装置20は、ステップS18で、閾値時間≦経過時間である(ステップS18でYes)と判定した場合、ステップS20に進む。なお、本実施形態では、閾値時間経過したかを判定の基準とした、判定の基準は特に限定されない。
【0047】
制御装置20は、ステップS18でYesと判定したら、ステップS20として、変調装置をONにする。つまり、制御装置20は、高速レーザ強度変調装置26に送る信号をOFFからONに切り換え、高速レーザ強度変調装置26は、レーザ光L2を出力している状態から、レーザ光L1を出力する状態に切り換える。これにより、レーザ光照射ユニット14は、計測セル40へのレーザ光L1の入射を停止し、レーザ光L2をビームストッパ28に入射させる。
【0048】
制御装置20は、ステップS20で変調装置をONにしたら、ステップS22として、受光強度信号を検出する。つまり、制御装置20は、受光装置16を用いて、受光装置16に入射するレーザ光L4の強度を検出し、受光強度信号を検出する。なお、制御部20は、受光装置16を予め駆動させておき、ステップS20よりも前の段階でも受光強度信号の検出を行っていてもよい。制御装置20は、ステップS20で変調装置をONにした時点およびステップS20で変調装置をONにした後の所定の時間の間に、受光装置16で検出した受光強度信号が解析の対象となる。
【0049】
制御装置20は、ステップS22で受光強度信号の検出を行ったら、ステップS24として、リングダウンタイムから濃度を算出する。なお、リングダウンタイムからの濃度を検出する検出方法は後述する。
【0050】
制御装置20は、ステップS20でレーザ光の強度を検出したら、ステップS22として濃度を検出する。制御装置20は、解析装置18により、ステップS18とステップS20の結果を用いて計測領域を流れる流通ガスGに含まれる測定対象物質の濃度を検出する。
【0051】
制御装置20は、ステップS24で濃度を検出したら、ステップS26で計測終了か(測定対象物質の濃度の検出を終了するか)を判定する。制御装置20は、ステップS26で処理終了ではない(No)と判定した場合、ステップS16に進み、ステップS16からステップS24の処理を実行する。また、制御装置20は、ステップS26で計測終了である(Yes)と判定した場合、本処理を終了する。
【0052】
次に、ステップS24で実行される濃度の検出動作について説明する。図5は、受光装置で検出する受光強度と時間との関係を示すグラフである。なお、図5に示すグラフは、縦軸を受光強度とし、横軸を時間とする。また、図5に示すグラフは、受光強度の最大値を1とした規格化した状態で示す。ここで、制御装置20は、キャビティーリングダウン分光法(CRD分光法、CRDS、Cavity Ring Down Spectroscopy)を用いて、測定対象物質の濃度を計測する。
【0053】
濃度計測装置10は、レーザ光照射ユニット14から計測セル40へのレーザ光L1の入射されている状態が一定時間継続し、安定状態となると、計測セル40内で一定強度のレーザ光L3が往復移動し、第1反射部46、第2反射部48で反射される毎に一定強度のレーザ光が第1反射部46、第2反射部48を通過する。これにより、第2反射部48からレーザ光L4が出力される。
【0054】
濃度計測装置10は、安定状態からレーザ光照射ユニット14から計測セル40へのレーザ光L1の入射が停止されると、新たなレーザ光が計測セル40に入射されない状態となる。濃度計測装置10は、計測セル40へのレーザ光L1の入射が停止される場合でも、計測セル40内で往復移動しているレーザ光L3が第1反射部46、第2反射部48で反射される毎に一部のレーザ光が第1反射部46、第2反射部48を通過する。このため、レーザ光L3の強度は徐々に減衰していき、第2反射部48から出力されるレーザ光L4の強度も徐々に減衰していく。制御装置20は、レーザ光の入射を停止した後に計測セル40の第2反射部48を通過し、受光装置16に入射するレーザ光L4の強度の減衰(受光強度信号の変化)を検出させる。ここで、受光装置16で検出されるレーザ光L4の強度は、図5に示すように徐々に低減していく。なお、図5に示す例は、時間0のときにレーザ光L1の入射を停止し、受光信号の計測を開始している。
【0055】
制御装置20は、このレーザ光L4の強度の減衰の検出結果に基づいて解析装置18による解析を行う。ここで、濃度計測装置10は、計測セル40内の流通ガスGに測定対象物質が含まれている場合、レーザ光が流通ガスGを通過すると、測定対象物質によりレーザ光の吸収波長成分が吸収され、レーザ光の出力が減衰する。また、流通ガスGに含まれる測定対象物質の量が多いほど、つまり濃度が高いほど、レーザ光減衰量が多くなる。このため、図5に示すように、流通ガスG測定対象物質がない場合(図中ガス無)の受光強度も、流通ガスG測定対象物質がある場合(図中波長変調)の受光強度の方がより短時間でより大きく減衰(減少)する。なお、図5では、参考のため、測定対象物質の吸光度の最も高い波長、つまり中心波長で、波長を変調しないレーザ光を用いた場合(図中中心波長)についても示す。
【0056】
解析装置18は、以上の関係に基づいて減衰するレーザ光L4の受光強度を検出し、検出結果からレーザ光L4の強度の減衰率が所定の割合となるまでの時間であるリングダウンタイムを検出する。解析装置18は、予め行った実験等で算出したリングタウンタイムと計測対象物質の濃度との関係を記憶しておき、当該関係と検出したリングダウンタイムとに基づいて計測対象物質の濃度を算出する。
【0057】
濃度計測装置10は、以上のように、レーザ光の経路の両端が反射率の高い反射部で挟まれた計測セル40内に、レーザ光を入射させ、レーザ光の入射を停止した後に生じる計測セル40から出力されるレーザ光の減衰に基づいて、計測セル40内を流れる流通ガスGに含まれる測定対象物質の濃度を、キャビティーリングダウン分光法を用いて、計測する。これにより、濃度計測装置10は、レーザ光が流通ガスを通過する光路長を、計測セル40の長さに対して飛躍的に長くすることができ、例えば計測長が10kmの計測セルと同様の距離分、流通ガスGを通過したレーザ光の出力を検出することができる。これにより、測定対象物質の濃度を高精度で検出することができる。
【0058】
また、濃度計測装置10は、レーザ光出射ユニット14から出力し、計測セル40に入射させるレーザ光を、測定対象物質の吸収波長を含む波長の範囲で波長を変調したレーザ光とすることで、計測をより簡単にすることができ、短時間かつ高い精度で測定対象物質の濃度を計測することができる。
【0059】
ここで、図6Aは、半導体レーザ発振装置から出力されるレーザ光の波長と測定対象物質の吸光度との関係を説明する説明図である。図6Bは、受光装置で検出する受光強度と時間との関係を示すグラフである。図6Cは、計測結果の一例を説明するための説明図である。図6Aから図6Cは、本発明とは異なりレーザ光として、所定波長のパルス波を用いた一例を示している。
【0060】
例えば、レーザ光出射ユニット14から計測セル40に入射させるレーザ光を、図6Aに示すようにレーザ波長70に示すように1つの波長のパルス波とする。この場合、レーザ波長70が吸収線64のピーク(吸光度が最も高い波長)と一致すると、図6Bの波長中心の測定結果に示すように、ガス無しつまり測定対象物質が含まれない場合の測定結果に対して、受光強度の減衰が大きくなる。
【0061】
しかしながら、濃度計測装置は、レーザ光出射ユニット14の状態、例えば光源の温度により出力されるレーザ光の波長が変化したり、測定環境によって吸収波長の中心波長が変化したりする。このため、濃度計測装置10は、レーザ光としてパルス波を用いる場合、たとえab、図6Cに示すように、出力するレーザ光の波長を一定の波長間隔で変更し、各測定点72の波長で濃度の計測を行う。このように、複数の波長についてそれぞれ計測を行うことで、測定対象物質の吸収波長での測定結果を検出することができ、測定対象物質の濃度を計測することができる。
【0062】
これに対して、本実施形態の濃度計測装置10は、上述したように、計測セル40に入射させるレーザ光を、測定対象物質の吸収波長を含む波長の範囲で波長を変調したレーザ光とする。これにより、濃度計測装置10は、レーザ光出射ユニット14の状態、例えば光源の温度により出力されるレーザ光の波長が変化したり、測定環境によって吸収波長の中心波長が変化したりしても、入射するレーザ光を吸収波長の中心波長を含むレーザ光とすることができる。このため、変調するレーザ光の中心波長と測定対象物質の吸収波長の中心波長とがずれた場合でも同様の計測結果を得ることができる。すなわち、条件が変化しても同様の結果を得ることができる。以上より、濃度計測装置10は、一回の測定でも測定対象物質の濃度を高い精度で計測することができる。
【0063】
次に、図7及び図8を用いて、計測結果の一例を説明する。図7は、受光装置で検出する受光強度と時間との関係を示すグラフである。図8は、計測結果の一例を説明するための説明図である。本測定では、流通ガスに測定対象物質がなく、かつ、レーザ光を変調させた場合と、流通ガスに測定対象物質が一定濃度含まれており、かつ、レーザ光を変調させた場合、流通ガスに測定対象物質が一定濃度含まれており、かつ、レーザ光を変調させない(装置の設定上波長を一定に設定した)場合について、それぞれガス濃度の計測を行った。
【0064】
図7に、3つの夫々の条件の計測で検出される受光強度の減衰を示す。図7に示すように、流通ガスに測定対象物質がなく、かつ、レーザ光を変調させた場合(図中対象ガス無、変調有)は、流通ガスに測定対象物質が一定濃度含まれており、かつ、レーザ光を変調させた場合(図中対象ガス有、変調有)よりも受光強度が0となるまでの時間が長くなる。また、図中対象ガス有、変調有の場合は、流通ガスに測定対象物質が一定濃度含まれており、かつ、レーザ光を変調させない(図中対象ガス有、変調無)場合よりも受光強度が0となるまでの時間が長くなる。図7に示すように、検出開始からリングダウンタイムに到達するまでの応答性については、レーザ光を変調して計測を行うよりも、変調をしないで計測を行った方が速くなる。
【0065】
次に、図8に3つの夫々の条件の計測の濃度の計測結果を示す。なお、図8では、それぞれの場合について、同一の流通ガスに対して、一定時間で複数回の計測を行った。図8に示すように、レーザ光を変調させずに計測を行った場合は、レーザ光を変調させて計測を行った場合よりも検出された値に変動が生じる。ここで、測定では、同一濃度の測定対象物質を含んだ流通ガスを用いているため、変動が検出誤差となる。つまり、図8に示すように、レーザ光を変調させて計測を行うことで、検出精度をより高くすることができる。
【0066】
このように、濃度計測装置10は、波長を変調させずに一回の計測で濃度を検出する場合よりも高い精度で濃度を計測することができる。また、濃度計測装置10は、波長を一定波長幅で変更し、それぞれの波長について波長を変調させずに計測を行い、濃度を検出する場合に対して、一回の計測で濃度を検出できるため、短時間で濃度を計測することができる。なお、濃度計測装置10は、波長を一定波長幅で変更し、それぞれの波長について波長を変調させずに計測を行う場合、高い精度で吸収波長の中心波長で測定を行うためには、測定の回数を多くする必要があり測定に時間がかかるが、濃度計測装置10は、一回の計測で同程度の精度で濃度を計測することができる。以上より、濃度計測装置10は、高応答性とロバスト性の両方を高いレベルで実現することができる。
【0067】
また、濃度計測装置10は、レーザ光の波長変調幅αを測定対象物質の吸光線のスペクトル半値幅よりも広く、好ましくは、2.2倍以上とすることで、ロバスト性をより向上させることができる。つまり、レーザ光の波長変調幅αを測定対象物質の吸収線のスペクトル幅よりも十分に広くすることで、レーザ光の変調の中心波長と測定対象物質の吸収線の中心波長(ピークの波長)とのずれが大きくなっても、測定対象物質の吸光度が一定割合以上となる範囲を変調幅に含めることができる。
【0068】
また、濃度計測装置10は、レーザ光の変調の周期tをリングダウンタイムより十分短くしておく必要がある。さらに、濃度計測装置10は、レーザ光の変調の周期tをリングダウンタイムの1/4以下とすることが好ましく、リングダウンタイムの1/20以下とすることがより好ましい。ここで、一般的なリングダウンタイムは、通常、数十μs程度であるため、濃度計測装置10は、レーザ光の変調の周期tを20μs以下とすることで、レーザ光の変調の周期tをリングダウンタイムより十分短くすることができる。濃度計測装置10は、レーザ光の変調の周期tを好ましくは5μs以下、さらに好ましくは1μs以下とすることで、リングダウンタイムまでの時間に対して周期を十分に短くすることができ、複数周期分のレーザ光が入射した状態で、計測を行うことができる。具体的には、レーザ光の変調の周期tを5μs以下とすることで、リングダウンタイムの間に変調されたレーザ光を4周期以上入射させることができる。また、レーザ光の変調の周期tを1μs以下とすることで、リングダウンタイムの間に変調されたレーザ光を20周期以上入射させることができる。これにより計測精度をより高くすることができる。
【0069】
ここで、濃度計測装置10は、装置を調整することで、流通ガスに含まれる種々の物質を測定対象物質とすることができる。また、測定対象物質としては、流通ガスに含まれる種々の物質を対象とすることができる。測定対象物質は、流通ガス中に浮遊粒子状物質(SPM、Suspended Particulate Matter)、粒子状物質(PM、Particulate Matter、Particulate)やガス状物質等として存在する。また、測定対象物質としては、レーザ光で出力可能な波長範囲に吸収波長(吸光度が高くなる波長)がある各種物質を用いることができる。
【0070】
ここで、レーザ光は、近赤外波長域のレーザ光を用いることが好ましい。これにより、流通ガスに測定対象物質以外の成分が混在した状態であっても、測定対象物質の濃度を適切に測ることができる。つまり、測定対象物質以外の成分がノイズとなりにくくすることができる。これにより、フィルタや、除湿の工程をなくすまたは少なくすることができ、流通ガス供給源から流通ガスが供給されてから、計測を行い、計測結果を算出するまでの時間を短時間にすることができる。つまり、計測の時間遅れを少なくすることができる。これにより、応答性を高くすることができる。
【0071】
また、計測セルユニット12は、上述したように、流通ガスGが流入管42から計測セル40に向けて流れ、計測セル40から排出管44に向けて流れる向きに、空気を吸引するポンプを設けてもよい。この場合、ポンプは、流通ガスGの流れ方向において、計測セル40の下流側となる排出管44に配置することが好ましい。計測セルユニット12は、ポンプで流通ガスGを吸引することで、流通ガスGが流入管42、計測セル40、排出管44の順で流れる流量を適宜調整することができる。
【0072】
濃度計測装置は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態とすることができる。以下、図9から図16を用いて、他の実施形態について説明する。
【0073】
[実施形態2]
図9は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図9に示す濃度計測装置100は、計測セルユニット12と、レーザ光照射ユニット104と、受光装置16と、解析装置18と、制御装置20と、第1反射部46と、第2反射部48と、を有する。さらに、濃度測定装置100は、光ファイバ112と、接続光学系114、116と、を有する。ここで、濃度計測装置100は、レーザ光照射ユニット104と、光ファイバ112と、接続光学系114、116との構成を除いて、他の構成は濃度計測装置10と同様である。濃度計測装置100の構成のうち濃度計測装置10と同様の構成については説明を省略する。
【0074】
レーザ光照射ユニット104は、半導体レーザ発振装置22と、レーザ制御装置24と、光ファイバ25と、光シャッター110と、を有する。なお、半導体レーザ発振装置22と、レーザ制御装置24と、光ファイバ25と、は、上述したレーザ光照射ユニット14と同様の構成であるので説明を省略する。
【0075】
高速光シャッター110は、レーザ光照射ユニット14の高速レーザ強度変調装置26とビームストッパ28との機能を備える装装置である。高速光シャッター110は、レーザ光の通過経路上に、レーザ光の通過を遮る状態と、レーザ光を通過させる状態(通過を遮らない状態)とを切り換えることができる機構である。ここで、高速光シャッター110は、例えば、液晶表示装置に用いられる液晶シャッターを用いることができる。高速光シャッター110は、レーザ光の通過を遮る状態とすることで、測定セル40にレーザ光を入射しない状態とし、レーザ光を通過させる状態とすることで、測定セル40にレーザ光を入射させる状態とする。また、高速光シャッター110は、レーザ光の通過を遮る状態が、ON状態となり、レーザ光を通過させる状態がOFF状態となる。
【0076】
レーザ光照射ユニット104は、以上のような構成であり、レーザ制御装置24から半導体レーザ発振装置22にレーザ制御信号が送信される。半導体レーザ発振装置22は、レーザ制御信号に基づいて波長が一定周期で変調するレーザ光を出力し、出力したレーザ光を光ファイバ25に入射させる。光ファイバ52は、入射されたレーザ光を案内して、高速光シャッター110に入射させる。高速光シャッター110は、制御装置20からの信号に基づいて、レーザ光を通過させ、レーザ光を計測セル40内に入射させる状態と、レーザ光を遮り、レーザ光を計測セル40内に入射させない状態とを切り換える。このようにして、レーザ光照射ユニット104も、計測セル40に波長が一定周期で変調するレーザ光を入射させる。また、レーザ光照射ユニット104は、計測セル40にレーザ光を入射させる状態と、入射させない状態とを切り換える。
【0077】
次に、光ファイバ112は、一方の端部が高速光シャッター110と接続され、他方の端部が接続光学系114と接続されている。また、接続光学系114は、光ファイバ112と第1反射部46とを接続している。接続光学系114は、コネクタ等であり、接続している2つの部材(光ファイバ110と第1反射部46)を、2つの部材の間でレーザ光が通過可能な状態で連結する。このように、高速光シャッター110と第1反射部46とは、光ファイバ112と接続光学系114とで接続されている。これにより、高速光シャッター110から計測セル40に向けて入射されたレーザ光は、光ファイバ112を通過した後、接続光学系114を通過して第1反射部46に入射する。
【0078】
接続光学系116は、第2反射部48と受光装置16とを接続している。接続光学系116は、コネクタ等であり、第2反射部48と受光装置16との間でレーザ光が通過可能な状態で連結する。
【0079】
濃度計測装置100は、高速レーザ強度変調装置26およびビームストッパ28に代えて、高速光シャッター110を設けることで、計測セル40にレーザ光を入射させる状態と、入射させない状態とを切り換える。このように、高速光シャッター110を用いることでも、適切に、計測セル40にレーザ光を入射させる状態と、入射させない状態とを切り換えることができる。また、濃度計測装置100は、高速光シャッター110を用いることで、計測セル40にレーザ光を入射させない場合にレーザ光を外部に出力することを抑制することができる。
【0080】
濃度計測装置100は、高速光シャッター110と計測セル40(に連結している第1反射部46)との間に光ファイバ112および接続光学系114を設けることで、レーザ光照射ユニット104から出力されたレーザ光を光学部材で計測セル40に案内することができる。また同様に計測セル40(に連結している第2反射部48)と受光装置16とを接続光学系116で接続することで、計測セル40から出力されたレーザ光を光学部材で受光装置16に案内することができる。濃度計測装置100は、各構成要素の間のレーザ光の経路に光ファイバまたは光学接続系を設けることで、レーザ光をより高い精度で伝達させることができる。また、レーザ光を光ファイバで案内することで、レーザ光を直線以外の経路でも案内することができる。これにより装置をコンパクト化することができ、かつ、装置の配置を簡単にすることができる。
【0081】
[実施形態3]
図10は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図10に示す濃度計測装200は、計測セルユニット202と、レーザ光照射ユニット104と、受光装置16と、解析装置18と、制御装置20と、FBG(Fiber Bragg Grating、ファイバーブラッググレーティング)220、240と、を有する。さらに、濃度測定装置200は、光ファイバ218、230と、接続光学系114、232、234と、を有する。ここで、濃度計測装置200は、計測セルユニット202と、FBG220、240と、光ファイバ218、230と、接続光学系114、232、234と、の構成を除いて、他の構成は濃度計測装置100と同様である。濃度計測装置200の構成のうち濃度計測装置100と同様の構成については説明を省略する。
【0082】
計測セルユニット202は、流通ガスGを案内する経路および流通ガス含まれる測定対象物質を計測する計測領域を構成する。計測セルユニット202は、計測セル210と、流入管212と、排出管214と、を有する。
【0083】
計測セル210は、中空の四角柱形状の部材であり、内部に流通ガスGが流れる。計測セル210の中空の角柱形状の一方の端部(図10中上側、四角柱の上面)には流入管212が配置され、他方の端部(図10中下側、四角柱の下面)には排出管214が配置されている。つまり、計測セル210は、四角柱形状の上下面が開放されており、それぞれの面に流入管212と排出管214が接続されている。また、計測セル210は、四角柱の1つの側面に接続光学系114が接続され、当該光学部材114が接続されている側面の反対側の側面に接続光学系232が接続されている。ここで、計測セル210は、接続光学系114が接続されている側面と、接続光学系232が接続されている側面とが平行な面となる。
【0084】
流入管(サンプリング配管)212は、測定対象の流通ガスGを計測セル210に供給する配管である。流入管42は、一方の端部が流通ガスGを供給する供給装置に接続されており、他方の端部が計測セル210の上面に接続されている。排出管214は、一方の端部が、計測セル210の下面に接続され、他方の端部が、より下流側の配管と接続されている。
【0085】
計測セルユニット202は、流入管212に供給された流通ガスGを、流入管212から計測セル210に供給する。また、計測セルユニット202は、計測セル210を流れた流通ガスGを排出管214から外部に排出する。このようにして計測セルユニット202は、測定対象ガスの供給手段から供給される流通ガスGを流入管212、計測セル210、排出管214の順で流す流路を形成する。
【0086】
次に、光ファイバ218、230と、接続光学系114、232、234とについて説明する。光ファイバ218と接続光学系114とは、高速光シャッター110と計測セル210との間に配置されている。光ファイバ230と接続光学系323,324とは計測セル210と受光装置16との間に配置されている。
【0087】
光ファイバ218は、一方の端部が高速光シャッター110と接続され、他方の端部が接続光学系114と接続されている。また、接続光学系114は、光ファイバ128と計測セル210の側面とを接続している。接続光学系114は、コネクタ等であり、接続している2つの部材(光ファイバ218と計測セル210)を、2つの部材の間でレーザ光が通過可能な状態で連結する。このように、高速光シャッター110と計測セル210とは、光ファイバ218と接続光学系114とで接続されている。
【0088】
光ファイバ230は、一方の端部が接続光学系232と接続され、他方の端部が接続光学系234と接続されている。また、接続光学系232は、計測セル210の側面と光ファイバ230とを接続している。接続光学系234は、光ファイバ230と受光装置16とを接続している。このように、計測セル210と受光装置16とは、光ファイバ230と接続光学系232、234とで接続されている。
【0089】
次に、FBG(Fiber Bragg Grating、ファイバーブラッググレーティング)220、240について説明する。FBG220は、光ファイバ218の接続光学系114側(つまり計測セル210側)の端部領域に設けられている。FBG220は、第1反射部46と同様の機能を備える光学部材であり、複数の高屈折率層222を有する。FBG240は、光ファイバ230の接続光学系232側(つまり計測セル210側)の端部領域に設けられている。FBG240は、第2反射部48と同様の機能を備える光学部材であり、複数の高屈折率層242を有する。FBG220とFBG240とは、計測セル210を挟んで向かい合う位置に配置されている。また、FBG220とFBG240とは、ともにレーザ光の通過経路である光ファイバ218、230内に設けられているため、レーザ光の通過経路に配置されている。
【0090】
以下、図11を用いて、2つのFBG220、240のうち代表してFBG240について説明する。図11は、図10に示すFBGを拡大して示す模式図である。FBG240は、光ファイバ230のコアにレーザ光の経路方向に所定間隔、離れて複数配置された高屈折率層242を備える。FBG240は、光ファイバ230のコアに複数の高屈折率層242を配置することで、周期的に屈折率を変化させている。このように、FBG240は、レーザ光の通過経路に屈折率の周期的な変化を設け、屈折率の周期的な変化をグレーティング(回折格子)機能させることで、グレーティングの周期が作るブラッグ反射条件を満たす波長の光のみを反射させる。これにより、FBG240は、レーザ光の波長を反射させることができる。また、FBG240は、複数の高屈折率層242の境界で同様の反射で生じる。また、FBG240は、所定の条件を満たすレーザ光は通過させるため、FBG240に到達したレーザ光の一部(1%未満の光)は、FBG240を通過して、受光装置16に到達する。
【0091】
これにより、濃度計測装置200は、計測セル210を挟んだFBG220とFBG240との間でレーザ光が反射され往復移動する。つまり、FBG220からFBG240に向かう光は、FBG240で反射してFBG240からFBG220に向かう光となる。FBG240からFBG220に向かう光は、FBG220で反射してFBG220からFBG240に向かう光となる。また、FBG220とFBG240とを往復する光の一部、FBG220またはFBG240で反射されない1%未満の光は、FBG220またはFBG240から、計測セル210から離れる方向に外側に出射される。これにより、計測セル212を往復する光は、FBG220とFBG240とで反射する毎に徐々にFBG220とFBG240との間から外側に出射される。
【0092】
濃度計測装置200は、計測セル210を挟んで光を反射させる反射部として、FBG220、240を用いることでも同様に、計測セル210でレーザ光を往復させることができ、キャビティーリングダウン分光法を用いた濃度計測を行うことができる。図12Aは、レーザ光照射ユニットから出力されるレーザ光の強度と時間との関係を示すグラフである。図12Bは、受光装置で検出する受光強度と時間との関係を示すグラフである。ここで、濃度計測装置200は、複数の高屈折率層222、242で構成されるFBG222、240を反射部として用いている。このため、濃度計測装置200は、図12Aに示すように、レーザ光照射ユニットから出力されるレーザ光を時間0で計測セル210に向けて出力している状態から出力していない状態に切り換えると、図12Bに示すように、受光装置16で受光信号が一定の時間間隔で検出され、かつ、検出強度が段階的に減衰する。濃度計測装置200は、図12Bに示すように一定の時間間隔で検出される受光信号を解析することで上記実施形態と同様にリングダウンタイムを検出し、濃度を検出することができる。
【0093】
また、濃度計測装置200は、反射部として光ファイバの内部に配置されたFBG220、240を用いることで、光学ミラーを用いるよりも装置をコンパクトにすることができる。また、計測セルの端部に光学ミラーを設ける必要がないため、計測セルの形状も小型化することができる。計測セルを小型化できることで、流通ガスの量が少ない場合でも好適に計測を行うことができる。
【0094】
[実施形態4]
図13は、濃度計測装置の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図13に示す濃度計測装300は、計測セルユニット302と、レーザ光照射ユニット104と、受光装置16と、解析装置18と、制御装置20と、FBG(Fiber Bragg Grating、ファイバーブラッググレーティング)320、330と、を有する。さらに、濃度測定装置300は、光ファイバ312、接続光学系314、316と、を有する。ここで、濃度計測装置300は、計測セルユニット302と、FBG320、330と、光ファイバ312と、接続光学系314、316と、の構成を除いて、他の構成は濃度計測装置200と同様である。濃度計測装置300の構成のうち濃度計測装置300と同様の構成については説明を省略する。
【0095】
計測セルユニット302は、流通ガスGを案内する経路および流通ガス含まれる測定対象物質を計測する計測領域を構成する。計測セルユニット302は、計測セル310を有する。計測セル310は、中空の配管であり、内部に流通ガスGが流れる。計測セル210の中空の角柱形状の一方から他方に流通ガスGが流れている。また、計測セル310は、内部に光ファイバ312が挿入されている。
【0096】
次に、光ファイバ312と、接続光学系314、316とについて説明する。光ファイバ312は、一方の端部が接続光学系314と接続され、他方の端部が接続光学系316と接続されている。また、光ファイバ312は、一部が計測セル310の内部を通過している。光ファイバ312は、計測セル310内に配置された一部がファイバーセンサ域340となる。ファイバーセンサ域340については後述する。また、接続光学系314は、高速光シャッター110と光ファイバ312とを接続している。接続光学系114は、コネクタ等であり、接続している2つの部材を、2つの部材の間でレーザ光が通過可能な状態で連結する。接続光学系316は、光ファイバ312と受光装置16とを接続している。このように、高速光シャッター110と受光装置16は、計測セル310の内部を通過する光ファイバ312と接続光学系314、316とで接続されている。
【0097】
ここで、図14は、図13に示す光ファイバを拡大して示す模式図である。ファイバーセンサ域340は、光ファイバを構成するコア314とクラッド316とのうち、クラッド316が設けられておらず、コア314が露出した状態となっている。ファイバーセンサ域340は、コア314が露出していることで、レーザ光の一部が漏れ出し、近接場光(エバネッセント光)を照射する。この近接場光(エバネッセント光)は、一定の強度で照射される。また、この近接場光(エバネッセント光)の吸収波長成分は、測定対象物質により吸収される。このため、近接場光(エバネッセント光)を照射している領域に測定対象物質があると光ファイバ312を通過するレーザ光の出力が減衰する。濃度計測装置300は、ファイバーセンサ域340を設けることで、レーザ光を直接計測セル内に入射させなくても、測定対象物質の濃度に基づいてレーザ光の出力を減衰させることができる。これにより、上記実施形態と同様に計測を行うことができる。
【0098】
次に、FBG(Fiber Bragg Grating、ファイバーブラッググレーティング)320、330について説明する。ここで、FBG320、330は、配置される光ファイバが光ファイバ312となった点を除いて、基本的な構成は、FBG220、240と同様である。FBG320は、光ファイバ312のファイバーセンサ域340よりも高速光シャッター110側に設けられている。FBG320は、第1反射部46と同様の機能を備える光学部材であり、複数の高屈折率層322を有する。FBG330は、光ファイバ312のファイバーセンサ域340よりも受光装置16側に設けられている。FBG320は、第2反射部48と同様の機能を備える光学部材であり、複数の高屈折率層332を有する。
【0099】
これにより、濃度計測装置300も、ファイバーセンサ域340を挟んだFBG320とFBG330との間でレーザ光が反射され往復移動する。ファイバーセンサ領域340を往復する光は、FBG320とFBG330とで反射する毎に徐々にFBG320とFBG330との間から外側に出射される。
【0100】
濃度計測装置300は、ファイバーセンサ域340を設けることで、光ファイバでレーザ光を案内している状態を維持して計測を行うことができる。これにより、レーザ光が空間を伝達する距離を短くすることが出来るため、レーザ光の損失をより少なくすることができる。また、1本の光ファイバで高速光シャッター110と受光装置16とを接続できるため、光学部材同士の連結部を少なくすることができ、この点でもレーザ光の損失を少なくすることができる。
【0101】
また、濃度計測装置200は、計測セルの内部に光ファイバを通過させることができるため、計測セルを種々の構造とすることができる。これにより装置をコンパクトにすることができる。また、測定対象の流通ガスGが流れる配管に直接配置することもできるため、計測の応答性をより高くすることができる。
【0102】
(実施形態5)
なお、上記実施形態では、レーザ光照射ユニットの半導体レーザ発振装置を1つとしたが、複数設けてもよい。図15は、レーザ光照射ユニットの一例を示す模式図である。図16は、レーザ光照射ユニットの動作の一例を示す模式図である。図15に示すレーザ光照射ユニット414は、第1半導体レーザ発振装置422aと、第2半導体レーザ発振装置422bと、第3半導体レーザ発振装置422cと、レーザ制御装置424と、第1高速光シャッター432aと、第2高速光シャッター432bと、第3高速光シャッター432cと、合波部436とを有する。レーザ光照射ユニット414は、各部を接続する光ファイバ430a、430b、430c、434a、434b、434c、438を有する。
【0103】
第1半導体レーザ発振装置422aと、第2半導体レーザ発振装置422bと、第3半導体レーザ発振装置422cと、は、出力するレーザ光の波長が互いに異なる点を除いて他の構成、機能は、半導体レーザ発振装置22と同様である。レーザ制御装置424は、第1半導体レーザ発振装置422aと、第2半導体レーザ発振装置422bと、第3半導体レーザ発振装置422cとに制御信号を送り、それぞれから波長を振動させたレーザ光を出力させる。
【0104】
第1高速光シャッター432aと、第2高速光シャッター432bと、第3高速光シャッター432cは、高速光シャッター110と同様に入射されたレーザ光を遮るか遮らないかを切り換える機構である。第1高速光シャッター432aは、光ファイバ430aで第1半導体レーザ発振装置422aと接続されている。また、第1高速光シャッター432aは、光ファイバ434aで合波部436と接続されている。第2高速光シャッター432bは、光ファイバ430bで第1半導体レーザ発振装置422bと接続されている。また、第2高速光シャッター432bは、光ファイバ434bで合波部436と接続されている。第3高速光シャッター432cは、光ファイバ430cで第3半導体レーザ発振装置422cと接続されている。また、第3高速光シャッター432cは、光ファイバ434cで合波部436と接続されている。
【0105】
合波部436は、3つの光ファイバ434a、434b、434cと1つの光ファイバ438とを接続するカプラである。合波部436は、3つの光ファイバ434a、434b、434cのそれぞれから入射されたレーザ光を光ファイバ438に入射させる。光ファイバ328は、計測セルと直接または接続光学系を介して接続されている。
【0106】
レーザ光照射ユニット414は、以上のような構成である。制御装置は、レーザ光照射ユニット414の第1高速光シャッター432aと、第2高速光シャッター432bと、第3高速光シャッター432cとのONとOFF、つまりレーザ光の通過、遮断を切り換えることで、合波部436を通過して、計測セルに入射させるレーザ光を切り換えることができる。例えば、図16に示すように、第1高速光シャッター432aにより第1半導体レーザ発振装置422aから出力されるレーザ光のみを通過させ、当該レーザ光により測定対象物質の濃度の計測を行う。その後、第2高速光シャッター432bにより第2半導体レーザ発振装置422bから出力されるレーザ光のみを通過させ、当該レーザ光により他の測定対象物質の濃度の計測を行う。第3高速光シャッター432cにより第3半導体レーザ発振装置422cから出力されるレーザ光を通過させ、当該レーザ光により更に別の測定対象物質の濃度の計測を行う。
【0107】
このように、レーザ光照射ユニット414は、3つの異なる波長のレーザ光を順次入射させることで、流通ガスに含まれる3つの異なる測定対象物質の濃度を計測することができる。また、1度の測定にかかる時間は、流通ガスが計測セルを通過する時間よりも十分に短いので、同一の流通ガスを測定したとみなすことができる。なお、上記実施形態では、半導体レーザ発光装置と高速シャッターとの組み合わせを3つとしたが数は特に限定されない。また、レーザ光の出力を発振装置側で切り換えられる場合は、高速光シャッターを合波部の下流側に設けてもよい。なお、1つの半導体レーザ発振装置で複数の測定対象物質の吸収波長のレーザ光を出力できるようにしてもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、いずれも流通ガスに含まれる測定対象物質の濃度を計測したが、本発明はこれに限定されず、測定対象物質の量を算出することもできる。
【符号の説明】
【0109】
10、100、200、300 濃度計測装置
12、202、302 計測セルユニット
14、104、414 レーザ光照射ユニット
16 受光装置
18 解析装置
20 制御装置
22 半導体レーザ発振装置
24、424 レーザ制御装置
26 高速レーザ強度変調装置
28 ビームストッパ
112、218、230、312、430a、430b、430c、434a、434b、434c、438 光ファイバ
40、210、310 計測セル
42、212 流入管
44、214 排出管
46 第1反射部
48 第2反射部
110 高速光シャッター
114、116、232、234、314、316 接続光学系
220、240、320、330 FBG
222、242、322、332 高屈折率層
314 コア
316 クラッド
340 センサ領域
422a 第1半導体レーザ発振装置
422b 第2半導体レーザ発振装置
422c 第3半導体レーザ発振装置
432a 第1高速光シャッター
432b 第2高速光シャッター
432c 第3高速光シャッター
436 合波部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測装置であって、
前記流通ガスが流れる計測セルと、
前記測定対象物質の吸収波長を含む波長の範囲で波長を変調したレーザ光を前記計測セルに入射させる状態と入射させない状態とを切り換えるレーザ光照射ユニットと、
前記計測セルから出射されるレーザ光を受講する受光装置と、
前記計測セルと前記レーザ光照射ユニットとの間に配置されレーザ光を反射させる第1反射部と、
前記計測セルと前記受光装置との間に配置され、レーザ光を反射させる第2反射部と、
前記レーザ光照射ユニットがレーザ光を前記計測セルに入射させる状態から入射させない状態に切り換えた前記受光装置が受光した光の強度の減衰に基づいて、流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する解析装置と、を有することを特徴とする物質計測装置。
【請求項2】
前記レーザ光照射ユニットは、前記レーザ光の変調周期が20μs以下であることを特徴とする請求項1に記載の物質計測装置。
【請求項3】
前記レーザ光照射ユニットは、前記レーザ光の変調周期が1μs以下であることを特徴とする請求項1に記載の物質計測装置。
【請求項4】
前記第1反射部および前記第2反射部は、反射率が99%以上の光学ミラーであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項5】
前記レーザ光照射ユニットと計測セルとに接続され、前記レーザ光を案内する第1光学部材と、
前記受光装置と計測セルとに接続され、前記レーザ光を案内する第2光学部材と、をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項6】
前記レーザ光照射ユニットと計測セルとに接続され、前記レーザ光を案内する第1光ファイバと、
前記レーザ光照射ユニットと計測セルとに接続され、前記レーザ光を案内する第2光ファイバと、をさらに有し、
前記第1反射部は、前記第1光ファイバに配置された複数の高屈折率層で構成されるファイバーブラッググレーティングであり、
前記第2反射部は、前記第2光ファイバに配置された複数の高屈折率層で構成されるファイバーブラッググレーティングであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項7】
一方の端部が前記第1光ファイバに接続され、他方の端部が前記第2光ファイバに接続され、かつ、前記計測セルに挿入される第3光ファイバを有し、
前記第3光ファイバは、前記計測セル内の一部にコアが露出している領域を備えることを特徴とする請求項6に記載の物質計測装置。
【請求項8】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバと前記第3光ファイバは、連結部がない1本の光ファイバであることを特徴とする請求項7に記載の物質計測装置。
【請求項9】
前記レーザ光照射ユニットは、前記レーザ光の通過経路上に配置され、開閉することで前記計測セルに入射させる状態と入射させない状態とを切り換えるシャッターを備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項10】
前記レーザ光照射ユニットは、前記レーザ光の出射方向を切り換えて、前記計測セルに入射させる状態と入射させない状態とを切り換える機構を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項11】
前記解析装置は、前記流通ガスに含まれる前記測定対象物質の濃度を検出することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の物質計測装置。
【請求項12】
両端に反射部が配置されかつ流通ガスが流れる計測セルの一方の端部からレーザ光を入射させ、前記計測セルの他方の端部から出射されるレーザ光を検出して、前記流通ガスに含まれる測定対象物質を計測する物質計測方法であって、
前記計測セルに前記流通ガスを流すステップと、
前記測定対象物質の吸収波長を含む波長の範囲で波長を変調したレーザ光を前記計測セルの前記一方の端部から入射させるステップと、
前記計測セルに前記レーザ光の入射を停止させるステップと、
前記計測セルの他方の端部から出力される前記レーザ光を受光した受光ステップと、
レーザ光を前記計測セルに入射させる状態から入射させない状態に切り換えた後に受光した光の強度の減衰に基づいて、流通ガスに含まれる前記測定対象物質を検出する検出ステップと、を有することを特徴とする物質計測方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−72730(P2013−72730A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211514(P2011−211514)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】