説明

物質試験加熱炉および該加熱炉を用いた特性評価方法

本加熱炉は、力学的衝撃をシミュレート可能とする、周囲温度及び標本の局所的加熱の双方を発生する、全体加熱手段(7、9)および局所的加熱手段(10)双方を含む。従って、加熱炉は、熱的または力学的なストレスを受ける物質の自己加熱または自動発火特性の良好な評価が可能な、様々な試験に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、物質試験加熱炉と、前記加熱炉を用いた特性評価手法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の特性評価のための加熱試験は、外部加熱作用下での自己発火に対する抵抗に関する。物質の標本は、エンクロージャーに配置可能であり、時間関数としての温度勾配、または所定時間の一定温度維持期間等の、従来の加熱を受ける。測定は視覚可能であり、標本は炎または残り火が見えるまで観察されてもよく、または、適用温度に対して得られるさらなる付加的温度を示す標本の温度測定に基づいてもよい。
【0003】
幾つかの試験の実施形態が存在する。それらの一つは、30分の温度維持期間に曝される加熱板に層状態で置かれる粉末標本を用いる。試験は、残り火、炎の出現、または、維持期間温度に比べて少なくとも摂氏250°の温度上昇が層において観察された場合、ポジティブと見なされる。
【0004】
第二の試験の実施形態は、抵抗により所望の温度に加熱される、主に垂直円筒管から成るGodbert Greenwald加熱炉を用いる。粉末標本は、垂直円筒に通じる水平管に置かれる。高圧システムが、垂直管内に粉末雲を吹き飛ばす。炎が現れた場合に、試験はポジティブである。
【0005】
最後の、第三の試験は、加熱炉の中に配置されるスティールバスケットに標本を配置することに基づく。加熱炉において、所望の温度が設定される。標本の温度が摂氏400度を超える場合、慣例により、試験はポジティブと見なされる。
【0006】
様々な加熱炉及び自己発火温度を評価するために保たれる基準は、この測定の恣意性を証言するものである。中でも、自己発火が物質の全体条件に関係するかは確実ではないが、これは、自己発火が、衝撃や、少量のエネルギーを消散する他の力学的相互作用からしばしば生じ得ることによる。
【0007】
特許文献1、特許文献2、および特許文献3が例を示す、ある数の加熱炉が存在し、これらの文献は、全体加熱手段を備える加熱炉を記述しており、これらの加熱炉は、標本を囲むガス媒体を最初に均一的に加熱することにより、標本に間接的に作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明により、新しい種類の加熱炉が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンクロージャーと、物質の標本を収容するトレイと、エンクロージャーの周囲に広がる、前記トレイの上方の第一の調整可能な全体加熱手段と、トレイに収容され、標本に接するようにトレイの表面を貫通し標本が収容される位置内に伸張する第二の加熱手段とを含む物質試験加熱炉に関する。
【0010】
第二の加熱手段は、第一の手段と独立して調整可能な加熱強度を有するとともに、全体加熱手段により制御されるエンクロージャーの周囲温度とは独立して、所望の条件に従って、付加的なエネルギーを標本に直接適用するための、規定形状(形状および寸法)を有する。このようにして、より現実的な条件が、加熱による物質の熱挙動および特に自己発火適正の特性評価を行うために利用可能となり、第二の加熱手段は、局所的加熱をシミュレートするための縮小された表面領域を有することができ、それらと標本との間の直接接触により保護される。
【0011】
トレイは、トレイに載置されトレイと分離可能なベルからも成るエンクロージャーの一部を形成し、全体加熱手段は、特にトレイ上およびベルの少なくとも一つの下部の周りに広がり、第二の加熱手段は、トレイの上面を越えて延びることが利点である。
【0012】
ベルおよびトレイを備えたこのような実施形態は、製造および取り扱いが特に簡易であり、グローブボックスまたは他の保護壁を介した放射性物質の調査に役立つ。第一の加熱手段の広がりは、標本の均一な加熱をもたらし、第二の加熱手段は、標本のまさに内部に作用し、より現実的な試験と成り得る。
【0013】
加熱炉が、ベルをトレイに合体させるネジと、ネジに対して取り付けられ、エンクロージャーが高圧の場合にベルとトレイとの間の広がりを許容するスプリングとを含む場合、より高い安全性が提供される。
【0014】
最終的に、本発明は、標本の自己発火温度の新たな計測方法に関する。本発明は、物質で消散されるエネルギー量の力学的エネルギーでの評価による、物質の自己発火を生じ易い力学的エネルギーの影響の評価と、上に規定した加熱炉への物質の標本の配置と、標本への影響の観察および測定前の、規定寸法の加熱手段による標本へのエネルギー量の適用と、に基づいている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】加熱炉の斜視図を示す。
【図2】加熱炉の側面図を示す。
【図3】加熱炉の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、加熱炉の斜視図および側面図の2つの図を示す図1および図2と、加熱炉の断面図をより概略的に示す図3とにより説明される。加熱炉は、まず、冷却ガラスが装備された3つの観察ポート2を備えたステンレススティールのベル1から成り、その下方に、垂直運動が電気モーター4により制御されるトレイ3がある。トレイ3は、ベル1の支持部21が滑る垂直柱20を有し、モーター4は、ウォームスクリュー22を回して、一般的な変速機により、トレイ3を上下させる。従って、トレイ3は、ベル1の底部に対して押し付けられ、または離され得る。ベル1とそれを囲む保護フード5との間には、ベル1に隣接する電気抵抗7と、フード5に隣接する絶縁層8とが組み込まれている。抵抗7は、ベル1の少なくとも下方部位へ延びる巻き線である。絶縁層8は、ベル1の全周および上部に広がる。フード5は、その周辺面およびその頂部に広がる液体回路6により冷却される。トレイ3は、その表面の一部に亘って広がる平面形状の電気抵抗9と、中央に、局所的電気抵抗10とを含む。電気抵抗7および9は、共に、第一の全体加熱手段を構成し、トレイ3とベル1とからなるエンクロージャー全体を加熱し、局所的電気抵抗10は、トレイに置かれた小さく局所的な体積の標本に働く、第二の加熱手段を構成する。これは、トレイ3の上面を貫通しトレイの上面と同一平面となる、または、トレイ上面から標本が置かれて収容されるトレイ上面の容器22の位置まで上に延びる、先の尖ったフィラメントに基づいてもよい。これらの加熱手段は、調整可能であり、独立している。また、トレイ3には、熱電対11、圧力センサー13および安全バルブ14が装備されたガス抽出導管12、図示しない流量調整器が装備されたガス供給パイプ15が通っている。供給パイプ15は、試験に所望されるガスでエンクロージャーを満たすことを目的としている。閉鎖中は、トレイ3はベル1を密閉し、ベル1の支持部21にありトレイ3にネジ込まれる3つのネジ16は、エンクロージャーを漏れないように密閉可能である。しかしまた、ガスが高圧である場合にベル1を開けることができるように、スプリング17がネジ16に対して組み込まれ、前記スプリング17を圧縮する。加熱炉は、通常のデータを取得する、内部圧力、標本およびエンクロージャーの温度のレコーダー、光高温計、カメラ、および流量調整弁等の装置が装備されている。この装置は、出口でのガス解析装置、湿りガス発生器、温度カメラ等により、完成されてもよい。これらの装置全ては、ワークステーションに近いコンピュータに集中管理され、所望の温度調整を実施する。エンクロージャーの照明手段が備えられる。
【0017】
加熱炉は、試験に必要な液体、物質の標本、標本を秤量する秤、および他のセンサー等の付属手段を収容するグローブボックスに配置可能である。エンクロージャーの体積は5リッター前後であってもよく、適用温度は摂氏500度前後まで達してもよい。安全バルブは3バールであり、エンクロージャーを開けるためのスプリング17は5バールである。最終的に、エンクロージャーの壁は、10バール以上の圧力に対して寸法が決められて、試験されている。圧力センサーは、1.5バール等の圧力に達すると直ちに、加熱の自動停止を始動可能である。
【0018】
試験は、以下のように実施される。試験を行う物質の標本23が、エンクロージャー内、たとえばトレイ3の中央に形成された容器22に配置され、トレイ3を上昇することによりエンクロージャーが閉じられる。隣接する冷却手段により完成される、環状のシール24により、密閉が保証され、冷却手段は、不図示ではあるが、さらなる液体コイルを含み得る。そして、電気抵抗7および9から成る全体加熱手段が、試験仕様に従い、熱勾配の適用(5℃/分前後)または等温で始動され、周囲温度を決定する。標本23に隣接するトレイ3上の電気抵抗9は、標本を直接加熱しない。標本においてエネルギーを消散させる力学的相互作用がシミュレートされる必要がある場合、エネルギーの量は、計算により、実験的に、または他の方法で評価され、局所的電気抵抗10により行われる。この熱の適用は、標本に実際に接触しているため、また、力学的相互作用に対しても大抵実際どおりの規定寸法の領域で与えられるため、摩擦または衝撃等の力学的相互作用のシミュレートに対してよりふさわしい。そして、提案された、温度上昇計測での標本の光学的検査等の試験結果の判定が、使用者により選択された基準の適用によって得られる。
【0019】
第二の加熱手段は、他の形状または他の表面領域を有してもよく、本発明は局所的加熱に限定されない。第二の加熱手段は、トレイ3の上面を貫通して、それを越えて延び、標本が粉末状であるかまたは分割されている場合、標本23の中に入り、または、特に標本が固体の場合、この面と同一平面で最終的に標本の面に接してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】EP A 1 132 733
【特許文献2】US A 3 987 661
【特許文献3】US A 3 718 437

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンクロージャー(1、3)と、上面に物質の標本を収容するトレイ(3)と、前記エンクロージャーの少なくともある部位の周りに全体的に広がる第一の調整可能な加熱手段(7、9)と、を含む、物質試験加熱炉であって、
規定形状であり、前記トレイの上面を貫通し、標本(23)の収容位置内に伸張する、第二の調整可能な加熱手段(10)をさらに含むこと、を特徴とする。
【請求項2】
前記トレイが、前記トレイに載置され前記トレイと分離可能なベル(1)からも成る前記エンクロージャーの一部を形成し、第一の全体加熱手段は、前記トレイ(3)上および前記ベル(1)の下部の周囲に広がり、前記第二の加熱手段は、前記トレイの上面を越えて延びること、
を特徴とする請求項1に記載の物質試験加熱炉。
【請求項3】
前記ベル(1)を前記トレイ(3)に密閉状態で取り付けるネジと、前記ネジに対して取り付けられ、前記エンクロージャーが高圧の場合に前記ベルと前記トレイとの間の間隔を許容するスプリング(17)とを含むこと、
を特徴とする請求項2に記載の物質試験加熱炉。
【請求項4】
第二の調整可能な加熱手段(10)が、前記トレイの上面を越えて延びる先の尖ったフィラメントに基づくこと、
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の物質試験加熱炉。
【請求項5】
力学的エネルギーの影響下での加熱による物質の特性評価方法であって、
前記力学的エネルギーにより前記物質で使われるエネルギー量を評価し、請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱炉に前記標本を配置し、前記第二の加熱手段により前記標本に対して前記エネルギー量を適用することに基づくこと、
を特徴とする物質の特性評価方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱炉により選択された、一定温度、または温度勾配の影響下での加熱による物質の熱挙動の特性評価方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−508874(P2012−508874A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536031(P2011−536031)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065164
【国際公開番号】WO2010/055140
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】