説明

特にナノアンペアオーダーの電流を生じる電流発生器、およびそのような発生器を用いる電圧調整器

【課題】特にナノアンペアオーダーの電流を生じる電流発生器、およびそのような発生器を用いる電圧調整器を提供する。
【解決手段】電圧調整器は、電流ミラーとして接続されていて、電源Vddに接続可能な3個のトランジスタP1、P2、P3の第1組41と、電流ミラーとして接続された2個のトランジスタN1、N2の第2組であって、各トランジスタが第1組のトランジスタに直列に接続されているトランジスタの第2組とを含み、第2組の第1トランジスタN1が、第1組の最後のトランジスタP3に直列に接続されたトランジスタN4に電流ミラーとして接続されたトランジスタN3Rに直列に接続されている。トランジスタN3Rは自身の線形領域で動作し、発生される電流の値は当該トランジスタの等価抵抗に依存し、2個のトランジスタが超長チャネルを有することにより比率L/Wが極めて大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電流発生器に関する。本発明はまた、そのような発生器を用いる電圧調整器にも関する。これは特に、集積回路における温度および供給電圧の変化に関して準安定な超低電流の発生に応用される。本発明はまた、入力端における電気エネルギー源の如何に関らず、極めて低いドロップアウト電圧を有する直列方式の安定した電圧調整器の製造に適用される。
【背景技術】
【0002】
航空機において搭載ハードウェアの重量は依然として主要な制約である。電気、電子、およびコンピュータシステムの複雑度が増すにつれて、飛行機内の配線量が以前より増大している。このように、数百キロメートルもの銅線ケーブルが飛行機内を引き回され、搭載ハードウェアの総重量の増大に寄与している。配線の長さを前提にすれば、例えばアルミニウムで作られた、より低密度の導線の使用もこの問題の解決には十分でない。効果的解決策は、配線ケーブルをなるべく除去して、各種の構成要素に電力供給する自律エネルギー源を使用することである。例示的な用途は、特に飛行機の様々な場所に置かれた複数のセンサに関する。配線をなくす解決策は次いで、自律エネルギー源を各センサまたはセンサの組に近接して配置することである。
【発明の概要】
【0003】
アビオニクス領域において、電池を使用することは、その寿命が短すぎ、且つ温度性能が低いため不可能である。一つの解決策は、例えば熱トランスデューサ等、周囲エネルギーを回復するエネルギー源を使用することである。従って「ゼーベック」効果または逆ペルティエ効果を利用してトランスデューサを使用することが可能である。これらのトランスデューサは、トランスデューサに蓄電されたある量の水と周囲空気の温度差を利用して電位差を生じさせるが、この温度差は水と空気の熱慣性の差異、または他の任意の温度勾配によりもたらされる。飛行機の場合、水と空気の温度は、これらの熱慣性のために飛行中に異なって発展する。他の種類のトランスデューサ、特に、例えば飛行機の機械的振動を利用する機械式トランスデューサを用いてもよい。これらのトランスデューサは、いくつかに分岐する極めて小さいビームを含んでいて、これらのビームに伝達される振動により電気エネルギーをもたらす。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのトランスデューサが与える電圧または電流は時間が経っても安定しない。従って、電子部品に直接電力を供給することができない。トランスデューサのような不安定な電源への入力で接続されていて、出力として例えば3ボルトの定格電圧を与える電圧または電流調節器を使用することが知られている。上述のトランスデューサにより生じるエネルギーレベルが低いため、特に集積回路として製造する際の制約を考慮しながら、消費するエネルギーレベルが極めて低く、従ってドロップアウト電圧が極めて低く且つバイアス電流が極めて低い調節器を製造することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って本発明の目的は、通常は数ナノワットオーダーのナノ電力領域で、最小限の電流を消費する電子集積回路の製造を可能にすることである。
【0006】
この目的のため、本発明の主題は電界効果トランジスタを用いる電流発生器であって、少なくとも、
− 電流ミラーとして接続されていて、供給電圧Vddに接続可能なQ個のトランジスタP1、P2、P3の第1組と、
− 電流ミラーとして接続されていて、自身のチャネルが第1組のトランジスタとは逆向きの極性を有するQ−1個のトランジスタN1、N2であって、各々が第1組の1個のトランジスタに直列に接続されているトランジスタN1、N2の第2組とを含み、
− 当該第2組の第1トランジスタN1が、同一極性のチャネルを有し且つ電流ミラーとしてトランジスタN4と接続されたトランジスタN3Rに直列に接続されており、当該トランジスタN4が第1組の最後のトランジスタP3に直列に接続されていて、
トランジスタN3Rは自身の線形領域で動作可能であって、発生する電流の値は当該トランジスタの等価抵抗Reqに依存し、トランジスタN3R、N4が超長チャネルを有しているため、比率L/Wは少なくとも数百より大きく、ここにLはチャネルの長さ、Wはその幅であって、Wおよび比率L/Wの値は、供給電圧の変動に応じて電流の安定な値を一度且つ同時に取得し、また温度に応じて準安定な電流の値をも取得し、且つ温度に応じて極めて安定なこれら同じトランジスタの電圧VGSを取得すべく決定される。
【0007】
比率L/Wは少なくとも500より大きく、幅Wは0.6μmのオーダーであってよい。
好都合なことに、発生器は電圧基準VRefとして用いることができ、前記基準値はトランジスタN3R、N4のゲートのレベルで提供される。
【0008】
第1組のトランジスタP1、P2、P3は、例えばPチャネル型である。
【0009】
本発明の別の主題は、電界効果トランジスタを用いて入力電圧と出力電圧Vsの間を調整する電圧調整器であって、当該調節器は少なくとも、
− 上述のような電流発生器と、
− 自身のソースで前記調節器の入力電圧に接続されていて、自身のドレインに出力電圧を送るPチャネル電界効果出力トランジスタP5と、
− 自身の負入力で前記発生器の基準電圧に接続された演算増幅器と、
− 電流ミラーとして前記発生器の第1組のトランジスタと接続されたPチャネルトランジスタP4と、
− 電流ミラーとして前記発生器の第2組のトランジスタと接続されたNチャネルトランジスタN5と、
− トランジスタP4とトランジスタN5の間に接続された1対のトランジスタ(N10、P10)とを含み、当該対はNチャネル型の第1トランジスタN10、およびPチャネル型の第2トランジスタP10を含み、第1トランジスタN10のゲートおよびドレインは共に、トランジスタP4のドレインおよび出力トランジスタP5のドレインに接続された第2トランジスタP10のソースに接続されていて、第1トランジスタN10のソースおよび第2トランジスタP10のドレインは共に、演算増幅器の正入力およびトランジスタN5のドレインに接続されていて、第1トランジスタN10のチャネルが極めて長いことにより、比率L/Wが極めて大きく、Lはチャネルの長さでWはその幅であり、
トランジスタN4の両端子間に現れる電圧ステップVRefは、トランジスタN10がON状態に切り替えられた際にその端子間に再現され、トランジスタN10の制御に依存する電圧ステップに応じて出力電圧が増加される。
【0010】
好都合なことに、調節器は例えば、トランジスタP4とトランジスタN5の間に直列に接続されたK個(Kは1より大)のトランジスタ対(N10、P10)、(N11、P11)、(N12、P12)を含み、1個の対の各第1トランジスタN10、N11、N12がオン状態に切り替えられた際にその両端子に前記電圧ステップVRefを生じ、調節器がトランジスタの対の制御手段を含み、出力電圧はトランジスタ対に適用される制御状態の組合せに応じて所与の数の電圧ステップVRefに依存している。
【0011】
本発明の他の特徴および効果は添付の図面に関する以下の記述により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自律電力供給システムの模式図である。
【図2a−2b】例示的な熱トランスデューサおよびその動作を示す図である。
【図2c】例示的な熱トランスデューサおよびその動作を示す図である。
【図3】自律エネルギー源として少なくとも1個のトランスデューサを用いて連続的に調整を行なう自律電力供給システムをより詳細に示す図である。
【図4a−4b】従来技術による極めて低電流の発生例を示す図である。
【図4c−4d】従来技術による極めて低電流の発生例を示す図である。
【図5】本発明で用いる電流を発生させる例示的な回路である。
【図6】電界効果トランジスタの構造を示す参考図である。
【図7】本発明による装置で用いる超長チャネルを有する電界効果トランジスタを示す図である。
【図8a−8b】本発明による発生器で用いる超長チャネルを有する電界効果トランジスタの実施形態をより詳細に示すトポグラフィ図および断面図である。
【図9】本発明による調整器の例示的な実施形態である。
【図10】本発明による調整器の例示的な別の実施形態である。
【図11】自律エネルギー源としてのゼーベック効果熱トランスデューサを有する用途の電圧曲線を示す図である。
【0013】
図1に、エネルギー回復装置に基づく自律電力供給システムを模式的に示す。これは、入力端において、温度差または振動等の物理的な現象を電気エネルギーに変換するトランスデューサ1を含んでいる。トランスデューサ1の後段に、トランスデューサにより生じた電圧を直流電圧に変換するコンバータ2が配置されている。実際、トランスデューサにより出力された電圧は、連続的、交流、またはより一般的に周期的であってよい。いずれの場合も、コンバータ2により、未だ電子構成部品には使えない直流電圧に変換される。コンバータ2の後段に、例えば極めて高い静電容量を有するコンデンサ等の蓄電素子3が配置されている。最後に、調整器4が、所望の精度レベルに従い所与の変動幅で基準電圧Vを発生させる。
【0014】
図2a、2b、2cに、ゼーベック効果を用いる熱トランスデューサの動作を示す。より正確には、図2aはそのようなトランスデューサの構成要素を示す。これは、例えばトランスデューサが飛行機に搭載された場合の空気流26にさらされる金属壁25に接触する熱電素子24により閉じられた熱絶縁材23で作られた容器に保存された水21および空気22の蓄電器を含んでいる。図2bに、空気および水の温度の変化を時間の関数として2本の曲線28、29で示す。第1の曲線28は、離陸フェーズ201の間、巡航フェーズ202の間、および着陸フェーズ203の間における空気温度の変化を連続的に示す。第2の曲線29に上記と同じフェーズにおける水温の変化を示す。図2cは、第1の曲線271および第2の曲線272により各々空気と水の温度差ΔTの輪郭およびトランスデューサからの出力電圧の輪郭を上述のフェーズ201、202、203について時間の関数として示す。発生電圧272は飛行機の巡航フェーズ全体を通じて1回だけ符号反転する正弦曲線の輪郭を示す。
【0015】
図3に、エネルギー回復用に2個の自律ソースが存在する場合における図1の種類のエネルギー回復連鎖をより詳細に示す。本システムは、図2a〜2cに示すような熱トランスデューサである第1トランスデューサ1を含んでいる。このようなトランスデューサは、下限がマイクロワット(μW)オーダーであって、上限が数ミリワット(mW)オーダーである範囲に含まれる電力を供給することができる。トランスデューサ1により発生した電圧は、出力が電気エネルギー蓄電素子3、例えば蓄電超コンデンサに接続されたコンバータ2により直流電圧に整流される。
【0016】
本システムは更に、第2トランスデューサ10を含んでいる。これは、機械的振動を利用する機械式トランスデューサである。上述のように、この種のトランスデューサは、これに基づいて電気エネルギーを発生させる振動を伝達するビームを含んでいる。このようなトランスデューサ10は、数ナノワット(nW)から数マイクロワット(μW)の範囲の電力を供給することができる。発生した電圧は、コンバータ2により直流電圧に変換される。当該コンバータの出力は、コンバータ2の動作中のダイオード用のエネルギー蓄電器およびプリバイアスとして機能するコンデンサ30を帯電させる。当該コンデンサ30は、関与する電力が小さいことに起因して上述のコンデンサ3よりも静電容量が小さい。蓄電用コンデンサ3、30の出力は調整器の入力に接続されているが、これらの出力は、例えば第1コンデンサ3および第2コンデンサ30の出力分岐に接続されたダイオード回路31により絶縁されている。より具体的には、コンデンサ3、30は絶縁回路31を介して、出力が所望の調整済み電圧、例えば3ボルト、を発生させるMOS型トランジスタ32の入力に接続されている。航空用途において、ビームが正に最初の振動からエネルギーを回復するため、第2トランスデューサ10により飛行機が飛び立った直後に電圧を得ることが可能になる。ゼーベック効果を伴う熱トランスデューサを使用する場合、図2cで示すように発生した電圧が離陸フェーズ201の間に緩慢に蓄積するため、起動時に電圧を得ることができない。
【0017】
調整器のレイアウトは従来通り直列方式である。従って、調整を行う演算増幅器33の出力によりゲートが制御されるトランジスタ32を含んでいる。この目的のため、演算増幅器33の一方の入力がトランジスタ32の出力電圧に接続され、もう一方の入力が所望の調整済み電圧に対応する基準電圧35に接続されている。このように得られる電圧により、例えば1個以上のセンサ34およびオプションとして特にエネルギー管理セル37を含むマイクロプロセッサシステムに電力供給することが可能になる。このセルは例えば、適切なインタフェースにより直列調整器が用いる電圧基準を制御する。
【0018】
回路36は、演算増幅器および低故障ダイオードにバイアス電流を供給する。本発明による回路により、数ナノアンペア(nA)オーダーのバイアス電流を得ることが可能になる。例えば、以下では10nAのバイアス電流を採用する。
【0019】
図4a〜4dは、電流I=10nAの取得を可能にする従来技術によるレイアウトを示す。
【0020】
図4aに示す第1レイアウトにおいて、供給電圧Vddと、ドレインがゲートに接続され、ソースが接地電位に接続された電界効果トランジスタN1との間に抵抗R1が直列に接続されている。以下、従来の用語に従い電界効果トランジスタをMOSトランジスタと呼ぶ。第2のMOSトランジスタN2が、電流ミラー方式のレイアウトに従い、トランジスタN1と共通ゲート接続されている。2個のトランジスタN1、N2のソースは接地電位に接続されている。
【0021】
抵抗R1には以下の関係により与えられる電流Iが流れる。
【数1】

ここに、電圧Vdd=3.3Vおよび電圧Vgs=0.8Vであり、VgsはトランジスタN1のゲートとソース間の電圧である。
【0022】
I=10nAを得るには、抵抗値が250Mオームに等しい抵抗R1が必要である。そのような抵抗は必要な面積が大きすぎるため集積回路内に作り込むことができない。更に、電流Iの値は供給電圧Vddに大きく依存する。
【0023】
図4bに示す第2レイアウトにおいて、抵抗R2がトランジスタN1、N2のゲートと接地電位の間に接続されていて、第3のMOSトランジスタN3が抵抗R2と電圧Vddの間に接続されている。トランジスタN3のゲートは、依然として電位Vddに接続されている抵抗R1とトランジスタN1のドレインの間にある位置で接続されている。当該レイアウトにおいて、抵抗R1には以下の関係により与えられる電流Iが流れる。
【数2】

【0024】
依然として電流I=10nAに対して、抵抗R1=170Mオーム、および80Mオームを超える抵抗R2が必要である。これらは依然として余りにも大きい製造面積を必要とするため、その値は依然として大きすぎ、且つ電流Iの値は再び供給電圧Vddに大きく依存する。
【0025】
図4cのレイアウトにおいて、抵抗R1は、電流ミラーとして接続されたPチャネル型の並列な3個のMOSトランジスタP1、P2、P3で置き換えられる。他のレイアウト4a、4bに関して、他のトランジスタはNチャネル型である。3個のPチャネルトランジスタのソースは電圧Vddに接続されていて、それらのゲートは、ゲートがドレインに接続された第3のトランジスタP3のドレインに接続している。第1トランジスタP1のドレインはトランジスタN1のドレインに接続され、第2トランジスタP2のドレインは抵抗R2に接続され、第3のトランジスタP3のドレインはトランジスタN'1のドレインに接続され、トランジスタN'1のゲートはトランジスタN1のドレインに接続されている。電流ミラーのトランジスタを流れる電流Iは以下の関係式で与えられる。
【数3】

【0026】
電流I=10nAを得るには抵抗R2=80Mオームが必要であるが、これは依然として大きすぎる値である。にもかかわらず、電流Iの値は、供給電圧Vddから比較的独立している。
【0027】
図4dに示すレイアウトにおいて、NチャネルトランジスタN'2は、抵抗R2に直列に接続されている。
【0028】
定格として弱反転下で動作するトランジスタの場合、抵抗R2の両端子における電圧VR2の値が以下の関係で与えられることを示すことができる。
【数4】

ここに、SN'2、SP1、SN1、SP2は各々、トランジスタN'2、P1、N1、およびP2の面積を表し、Uは熱電圧を表す。
【0029】
この電圧が50mVに等しいことを考慮して、電流I=10nAを得るには約5Mオームの抵抗を有する抵抗R2が必要である。得られた結果は従って、他の結果より比較的良好であるが、この値も依然として集積回路に組み込むには高すぎる。
【0030】
図5に、抵抗を全く使用しない本発明で用いる例示的な回路の基本構成図を示し、当該回路は特に図3に示すエネルギー回復連鎖におけるバイアス回路35、36として使用可能である。このレイアウトは例えば、図4c、dと同じトランジスタを有する電流ミラー41を含んでいる。このレイアウトにおいて、トランジスタP1のゲートがドレインに接続されている。第1トランジスタP1のドレインは、NチャネルトランジスタN1のドレインに接続されている。第2トランジスタP2のドレインは、トランジスタN1と共通ゲート制御されたNチャネルトランジスタN2のドレインに接続されていて、トランジスタN2のドレインとゲートが接続されている。第3のトランジスタP3のドレインは、NチャネルトランジスタN4のドレインに接続されている。
【0031】
更に電流ミラーの第1トランジスタP1に接続されているトランジスタN1のソースは、トランジスタN3Rのドレインに接続されていて、トランジスタN3Rのゲートは、更に第3のトランジスタP3に接続されたトランジスタN4のゲートに接続されている。トランジスタN4のゲートとドレインは接続されていて、トランジスタN3R、N4は電流ミラーとして配線されている。
【0032】
トランジスタN2、N3R、N4のソースは接地電位50に接続されている。トランジスタN3Rは抵抗として動作する。
【0033】
トランジスタN1およびN2は、弱反転領域で動作すべくバイアスされていて、バイポーラートランジスタとして振舞う。トランジスタN3Rは、強反転領域において、従って線形領域において、極めて弱いドレイン電圧で動作すべくバイアスされている。関係(4)に従い、トランジスタN3Rの両端子における電圧VSN1は以下の関係により与えられる。
【数5】

ここにSN2、SP1、SN1、SP2は各々、トランジスタN2、P1、N1、P2の面積を表し、Uは熱電圧を表す。
【0034】
このようにして従来の「バンドギャップ」方式の調整器が得られ、MOSトランジスタN3Rが抵抗として動作し、当該調整器は温度に対して一定且つ供給電圧から独立している電圧を供給し、当該電圧は出力において基準電圧VRefの役割を果たす。当該電圧は、後者のゲートおよびトランジスタN3Rのゲートに接続されたトランジスタN4のドレインのレベルにある箇所Aで利用できる。
【0035】
トランジスタN3Rおよび電流ミラーの他の分岐にも流れる電流Iは
【数6】

に等しく、ここに
【数7】

はトランジスタN3Rの等価抵抗である。
【数8】

【0036】
関係(6)によれば電流は絶対温度に正比例するため、図5の構成図は、PTAT(「Proportional To Absolute Temperature」の略)方式の回路が得られることを示す。
【数9】

【0037】
実際、関係(6)において、絶対温度に直接依存する熱電圧を除いて、全てのパラメータは一定である。
【0038】
図6は、いわゆる「バルク」技術における、本例ではNチャネル型のMOSトランジスタの従来の構造を断面図で再び示す。ソースおよびドレインを形成するドープ領域61、62がシリコン塊63に直接埋め込まれて基板を形成している。ドープ領域61、62に接触する金属界面611、621により外部と電気接続が可能である。ドープ領域61、62の間にあるチャネルに沿って配置されたゲート64はシリコン酸化物(SiO)の層により絶縁されている。
【0039】
チャネルの長さLは、ソースおよびドレインを形成する2個の拡散領域61と62の距離である。チャネルの幅Wは、基板の平面内で垂直な寸法である。MOSトランジスタの従来の構造において、長さは短く、比率L/Wは小さく、通常は図6で示すように1未満である。本発明によれば、所望の等価抵抗Reqを得るには、図5のレイアウトをなすトランジスタN3Rが幅に関して極めて長いチャネルを有し、比率L/Wはより大きいだけでなくて、数百、例えば500個超のオーダーのように極めて高い。同じことがトランジスタN4でも成り立つ。このため図5の説明図は、従来の構造に従うが本発明にも従う、「PTATおよびバンドギャップ」方式の調整器を示し、抵抗は自身の線形領域で動作するMOSトランジスタにより生じ、当該トランジスタは超長チャネルを有する。出願人によりなされた試行により、恐らく0.6μm程度、且つ長さが極めて長く、幅が極めて狭いチャネルを有する当該トランジスタ構造により、供給電圧Vddにおける変動のに応じて、準定電流値を得ることが可能になったことを示した。換言すれば、比率ΔI/ΔVddは極めて小さく、ここにΔIは生成電流の変動であり、ΔVddは供給電圧の変動である。実際、この比率は、1〜2%のオーダーであってよい。この結果は極めて注目に値し、極めて低い電流の発生器の製造に極めて重要であって、温度に応じて、この同じ電流の準一定の変動に関連付けられている。
【0040】
このように、超長チャネルを有する当該構造により、トランジスタN3R、N4内で温度に対して準安定且つ極めて低く、供給電圧の変動に応じての準安定であり、また温度に対して安定な低ゲートソース電圧である電流を得ることが可能になる。図5のレイアウトにおいて、当該電圧は、トランジスタN4のドレインソース両端子における電圧VRefに等しい。当該基準電圧を、以下の記述で示すように電圧調整を行うための電圧ステップとして好都合に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
超長チャネルを有するこのようなトランジスタの構造を以下の図に示す。
【実施例】
【0042】
図7に、本発明による装置で用いるMOSトランジスタの実施形態を示す。図7は、トポグラフィ図を介して、本例におけるいくつかのMOSトランジスタ、Nチャネルを有する集積回路構造を示し、これらのMOSトランジスタは超長チャネルを有する。各々のトランジスタについてソース71、チャネル72およびドレイン73を示している。同図は、トランジスタのチャネルが超長構造であることを示す。各トランジスタは、例えばバルク型構造に従い、Pドープ基板75に埋め込まれたNドープ井戸74内に集積されている。
【0043】
図8a、8bに、図7のMOSトランジスタのうち1個をより正確に示し、図8aは上面図、図8bはバルク型構造についてAAを通る断面図を示すが、他の種類の構造も可能である。図8aは、図示するソース71を有する2個のMOSトランジスタの終端を示し、チャネル72がドレイン側へ方向Dに伸びているが、後者は図示していない。トランジスタは拡散されて井戸74内で絶縁されていて、Pドープ壁81がトランジスタ間の絶縁を確実にする。
【0044】
これらの図8a、8bは、例えば同一接地基板75上にある同一構造または異なる構造の他のトランジスタに埋め込まれている、例えば図5のレイアウトによるトランジスタN3R、N4の製造を示す。
【0045】
図9に、例えば図8a、8bに従い具現化された超長MOSトランジスタN3R、N4を有し、図5と同一レイアウトを用いた、本発明による調整器の例示的な実施形態を示す。図9の例において、回路は二つの電圧レベル901、902で調整を実行する。電圧ステップは例えば0.8Vであり、従って0.8Vまたは1.6Vが得られる。
【0046】
回路は、図5に対応する部分90を用いる。当該部分90は、例えばエネルギー蓄電装置3に対応するコンデンサ91への入力に接続されている。コンデンサの出力端において、P5で示すPチャネルMOSトランジスタにより電圧調整が行われ、調整済み電圧が、例えば抵抗92に負荷される出力として送られる。トランジスタP5のソースは、コンデンサ91、および電流ミラーのトランジスタP1、P2、P3のソースに接続されている。トランジスタN4のドレインのレベルにおける位置Aは、演算増幅器93の負入力端に接続されていて、その出力は出力トランジスタP5のゲートに接続されている。図5に関して記述するように、位置Aは基準電圧を示す。図9の例において、この電圧は0.8Vに等しい。基準電圧は従って演算増幅器93の負入力端に生じる。
【0047】
Pチャネル型の第4トランジスタP4が電流ミラーとしてトランジスタP1、P2、P3に接続されている。Nチャネル型の第3トランジスタN5が電流ミラーとしてトランジスタN1、N2に接続されている。一対のMOSトランジスタN10、P10がトランジスタP4のドレインとトランジスタN5のドレインの間に接続されている。より具体的には、トランジスタN10のドレインがトランジスタP4のドレインに接続されていて、そのソースがトランジスタN5のドレインに接続されている。
【0048】
トランジスタP10はトランジスタN10に接続されていて、そのソースおよびドレインが各々トランジスタN10のドレインおよびソースに接続されている。トランジスタN10のゲートおよびドレインは共に、自身が調整済み出力電圧Vsを供給するトランジスタP5のドレインに接続されたトランジスタP10のソースに接続されている。トランジスタN10のソースおよびトランジスタP10のドレインは共に演算増幅器の正入力端に接続されている。
【0049】
ミラー効果により、2個のトランジスタP4、N5は同じ電流2Iを搬送する。トランジスタN10がこれら2個のトランジスタ間に接続されている前提で、トランジスタN10はこの同じ電流2Iを、自身をトランジスタN5に接続する自身の分岐内で自身のドレインと自身のソースの間に搬送する。他の分岐上の電流は従ってゼロである。
【0050】
これらの他の分岐、特にトランジスタN10をトランジスタP5に接続している分岐98は次いで、好都合なことに高い等価インピーダンスを示す。このことから、トランジスタN4の両端子における例えば0.8ボルト電位VRefが、トランジスタN10が導通しているときにその端子へ送られる。
【0051】
トランジスタP10の導通は、自身のゲートに印加された制御信号により制御され、電圧ステップを与えることによりトランジスタN10を短絡させる。図3の種類の用途の場合、この信号は、ソフトウェア37により、あるいは電圧vddまたは電気的接地への制御の直結によりハードウェア回路のいずれかにより、例えばエネルギー管理セル37により与えられる。
【0052】
トランジスタN10がオフ状態に切り替えられた場合、出力電圧はトランジスタN4の両端子における電圧である0.8Vに等しい。トランジスタN10がオン状態に切り替えられた場合、上述のようにトランジスタN10の両端子における0.8Vの電圧が加えられて、出力Vsとして1.6Vの電圧を得ることが可能になる。
【0053】
トランジスタN3R、N4と同様に、トランジスタN10は超長チャネルを有するMOSトランジスタである。トランジスタN10は、温度に対して完全な安定性を保証すべくトランジスタN3R、N4と同一である。
【0054】
図9は、電気回路図のトランジスタに対向する模式図(「レイアウト」)を介して、可能な実施形態、より具体的には井戸内のトランジスタの配置モードを示す。これらのトランジスタは、井戸74内におけるそれらの長いチャネルにより表されている。好都合なことに、トランジスタN3R、N4およびN10は、可能な限り双対化され、従って可能な限り近い電気特性を示すように相互嵌合している。
【0055】
ファントム(「ダミー」とも呼ばれる)トランジスタ99が例えば井戸内に挿入されている。これらのダミートランジスタは、端子が短絡されている。
【0056】
トランジスタN10、P10を組み合わせて単一のトランジスタとすることができる。
【0057】
図10に、0.8Vの4ステップを有する4個の電圧レベル102を有する本発明による調整器の例示的な実施形態を示すが、他の基準電圧も無論可能である。この目的のために、図9のトランジスタN10、P10の対が、直列に接続された3対のトランジスタ(N10、P10)、(N11、P11)、(N12、P12)を有するレイアウト101で代替されている。レイアウト101は、依然としてトランジスタP4とN5の間に接続されている。トランジスタの対は、図9のレイアウトの対(N10、P10)と同様に互いに接続されている。各対は制御信号により制御されている。図9のレイアウトの場合と同様に、オンまたはオフのいずれであるかに応じて、3個のトランジスタN10、N11、N12のうち1個がその両端子において0.8Vの電圧を示すかまたは示さず、従って出力端Vsで0.8Vの電圧ステップを加えるかまたは加えない。
【0058】
図10の例は、トランジスタP4とトランジスタN5の間にある直列に接続された3対のトランジスタを示す。これとは異なる数Kを想定することも無論可能である。
【0059】
例えば、超長チャネルを有するトランジスタの寸法は、幅Wが0.6μmで長さLが320μmであってよい。超長チャネルの比率L/Wは少なくとも数十のオーダーであって、数百または実際に1000以上の値に到る場合もある。
【0060】
図11に、エネルギー源がゼーベック効果熱トランスデューサ1である場合に図10による調整器を使用する場合を示す。
【0061】
第1の曲線272は、図2cに関して定義したように、飛行機の飛行フェーズ、離陸、巡航飛行および着陸の全体を通じてトランスデューサにより発生される電圧の輪郭を示す。曲線111は、DC/DC電圧変換後に回復した電圧を表す。曲線112は、ソフトウェア制御下で電圧ステップに基づく追跡を用いる場合のトランジスタP5の出力端における調整済み電圧を表す。曲線113は、ハードウェア制御下で単一電圧ステップを用いる場合の出力端における電圧を表す。
【0062】
本発明について、アビオニクス用途の枠内で記述してきた。これは、他の多くの領域に適用することができる。
【0063】
これは、特に宇宙領域の装置で好都合に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 トランスデューサ
2 コンバータ
3 蓄電素子
4 調整器
10 第2トランスデューサ
21 水
22 空気
23 熱絶縁材
24 熱電素子
25 金属壁
26 空気流
28 第1の曲線
29 第2の曲線
30 第2コンデンサ
31 ダイオード回路
32 MOS型トランジスタ
33 演算増幅器
34 センサ
35 基準電圧
36 回路
37 エネルギー管理セル
41 電流ミラー
61,62 ドープ領域
63 シリコン塊
64 ゲート
71 ソース
72 チャネル
73 ドレイン
74 Nドープ井戸
75 Pドープ基板
81 Pドープ壁
90 部分
91 コンデンサ
92 抵抗
93 演算増幅器
98 分岐
99 トランジスタ
101 レイアウト
102 電圧レベル
111,112,113 曲線
201 離陸フェーズ
202 巡航フェーズ
203 着陸フェーズ
271 第1の曲線
272 第2の曲線
611,621 金属界面
901,902 電圧レベル
A 箇所
L 長さ
R1,R2 抵抗
N1,N’1,N2,N’2,N3,N3R,N4,N5,N10,N11,N12,P1,P2,P3,P4、P10、P11,P12 トランジスタ
W 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタを用いる電流(I)発生器であって、少なくとも、
− 電流ミラーとして接続されていて、供給電圧(Vdd)に接続可能なQ個のトランジスタ(P1、P2、P3)の第1組(41)と、
− 電流ミラーとして接続されていて、自身のチャネルが前記第1組のトランジスタとは逆向きの極性を有するQ−1個のトランジスタ(N1、N2)であって、各々が前記第1組(41)の1個のトランジスタに直列に接続されているトランジスタ(N1、N2)の第2組とを含み、
− 前記第2組の第1トランジスタ(N1)が、同一極性のチャネルを有し且つ電流ミラーとしてN4と称するトランジスタと接続されたN3Rと称するトランジスタに直列に接続されており、前記トランジスタN4が前記第1組(41)の最後のトランジスタ(P3)に直列に接続されていて、
トランジスタN3Rは自身の線形領域で動作可能であって、発生する電流(I)の値は前記トランジスタの等価抵抗(Req)に依存し、トランジスタN3R、N4が超長チャネル(72)を有しているため、比率L/Wは少なくとも数百より大きく、ここにLはチャネルの長さ、Wはその幅であって、Wおよび比率L/Wの値は、供給電圧の変動のに応じて電流の安定な値を取得すべく決定されることを特徴とする、電流発生器。
【請求項2】
前記比率L/Wが少なくとも500より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の電流発生器。
【請求項3】
前記幅Wが0.6のμmのオーダーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電流発生器。
【請求項4】
電圧基準(VRef)として用いることが可能であって、前記基準が前記トランジスタN3R、N4のゲート(A)のレベルで提供されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電流発生器。
【請求項5】
前記第1の組(41)のトランジスタ(P1、P2、P3)がPチャネル型であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電流発生器。
【請求項6】
電界効果トランジスタを用いて入力電圧(91)と出力電圧(Vs)の間を調整する電圧調整器であって、少なくとも、
− 請求項4および5に記載の電流発生器(90)と、
− 自身のソースで前記調節器の入力電圧に接続されていて、自身のドレインに前記出力電圧を送るPチャネル電界効果出力トランジスタ(P5)と、
− 自身の負入力で前記発生器の基準電圧に接続された演算増幅器(93)と、
− 電流ミラーとして前記発生器の第1組(41)のトランジスタと接続されたP4と称するPチャネルトランジスタと、
− 電流ミラーとして前記発生器の第2組のトランジスタと接続されたN5と称するNチャネルトランジスタと、
− 前記トランジスタP4と前記トランジスタN5の間に接続された1対のトランジスタ(N10、P10)とを含み、前記対がNチャネル型の第1トランジスタ(N10)、およびPチャネル型の第2トランジスタ(P10)を含み、前記第1トランジスタ(N10)のゲートおよびドレインが共に前記トランジスタP4のドレインおよび前記出力トランジスタ(P5)のドレインに接続された前記第2トランジスタ(P10)のソースに接続されていて、前記第1トランジスタ(N10)のソースおよび前記第2トランジスタ(P10)のドレインが共に前記演算増幅器(93)の正入力および前記トランジスタN5のドレインに接続されていて、前記第1トランジスタ(N10)のチャネルが極めて長いことにより、比率L/Wが極めて大きく、Lはチャネルの長さでWはその幅であり、
前記トランジスタN4の両端子間に現れる前記電圧ステップ(VRef)は、前記トランジスタN10がON状態に切り替えられた際にその端子間に再現され、前記トランジスタN10の制御に依存する電圧ステップに応じて前記出力電圧が増加されることを特徴とする、電圧調整器。
【請求項7】
前記トランジスタP4と前記トランジスタN5の間に直列に接続されたK個のトランジスタ対((N10、P10)、(N11、P11)、(N12、P12))を含み、1個の対の各第1トランジスタ(N10、N11、N12)がオン状態に切り替えられた際にその両端子に前記電圧ステップ(VRef)を生じ、前記調節器がトランジスタの対の制御手段を含み、前記出力電圧は前記トランジスタ対に適用される制御状態の組合せに応じて所与の数の電圧ステップ(VRef)に依存することを特徴とする、請求項6に記載の調整器。
【請求項8】
前記第1トランジスタ(N10、N11、N12)が超長チャネルを有するトランジスタ(71、72、73、74)のブロックに挿入されていることを特徴とする、請求項7に記載の調整器。
【請求項9】
前記第1トランジスタ(N10、N11、N12)が、前記トランジスタN4に対して対称形に配置されていて、前記第1トランジスタ(N10、N11、N12)が前記トランジスタN4と同じ構造を有することを特徴とする、請求項8に記載の調整器。

【図1】
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【図2a−2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4a−4b】
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【図4c−4d】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a−8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−74031(P2012−74031A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−204814(P2011−204814)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】